説明

外部の化学剤に対して抵抗性のあるケーブルの製造方法

【課題】
【解決手段】次のステップ、すなわち(a)少なくとも1つの導電体を押出成形機まで搬送するステップと、(b)上記少なくとも1つの導電体に対して半径方向外方にて絶縁被覆層を押出し成形するステップと、(c)少なくとも1つの接着剤被覆層を半径方向外方の位置にて支承する金属テープを上記押出し成形した絶縁被覆層の回りにて長手方向に折り重ねるステップと、(e)少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える少なくとも1つの連続的な被覆層を前記折り重ねた金属テープの回りにて且つ該折り重ねた金属テープと接触する状態にて押出し成形するステップとを備え、ステップ(e)は、2.5以下、好ましくは、1.2ないし2.0ののドローダウン比(DDR)にて実行される、ケーブルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の化学剤に対して抵抗性のあるケーブルの製造方法に関する。
より具体的には、本発明は、ケーブル、特に、少なくとも1つの導電体と、少なくとも1つの接着剤被覆層にて被覆された少なくとも1つの金属テープと、少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を有する少なくとも1つの被覆層とを備える低電圧、中電圧又は高電圧の送電及び(又は)分電用の電気ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲において、「低電圧」とは通常、1kV以下の電圧を意味し、「中電圧」とは1kVないし35kVの範囲の電圧を意味し、「高電圧」とは35kV以上の電圧を意味する。
【0003】
電気ケーブルは、全体として、半導性及び絶縁性の重合系材料にて個々に被覆され且つ、同様に、重合系材料で出来た保護被覆層にて被覆された1つ又はより多くの導電体を備えている。
【0004】
例えば、精油所、貯油所、沖合施設のような危険を伴う環境にて敷設されるケーブルにおいて、水分、特に例えば、炭化水素及び溶剤のような有機質系、及び例えば、酸及び塩基のような無機質系双方の攻撃的な化学剤が上記の重合系ケーブル被覆層に侵入することにより重大な問題が生ずることが知られている。上記の要素がケーブルの内部に侵入することは、機械的性質及び電気的性質の双方の点にてケーブルの全体的な寿命性能を損なうことになる。
【0005】
上記の要素に対する従来の保護は、全体として、鉛シースを取り付けることにより実現される。その結果、鉛シースは、一般に、例えば、紙/油絶縁体、又はエチレン−プロピレンゴム絶縁体又は架橋結合したポリエチレン絶縁体のような、固体誘電体を有する絶縁線導電体上に見られる。鉛は、可撓性、密閉的密封作用を提供し且つ長い長さにて押出し成形することが比較的容易であると考えられる。この型式のケーブルは、例えば、オコナイトカンパニー(Okonite Company)からのソリッド型PILC型ケーブルとして商業的に知られている。
【0006】
鉛シースに代えて、ケーブルの保護効果を提供するものとして、溶接波形アルミニウム(又は銅)シースも知られている。これらのアルミニウムシースは、比較的軽量であり、密閉的密封機能を提供し、また、電力ケーブル上に配置されたとき、中性の導電体として作用することができる。この型式のケーブルは、例えば、オコナイトカンパニーからC−L−X(登録商標名)型ケーブルとして商業的に知られている。
【0007】
しかし、かかるシースは、依然として、顕著な重量の増加をもたらす。
鉛シース及び上述した波形アルミニウムシースの双方の使用を避けるため、当該技術にて異なる解決策が既に提案されている。
【0008】
米国特許明細書4,125,739号には、その少なくとも一側部に緊密に接着させた重合系樹脂状材料の第一の接着剤層と、第一の接着剤層に剥離可能に接着された重合系樹脂状材料の結合制御層とを有する金属片を備える型式のケーブル遮蔽テープが開示されている。かかる遮蔽テープを利用するプラスチックジャケット付きの電力ケーブル及び通信ケーブルも開示されている。結合制御層を形成するため使用することのできる材料は、ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、1,4−ジメチルペンテンポリマー、エチレン/プロピレン共重合体及び立体規則性ポリスチレンを含む。接着剤層を形成するため使用することのできる材料は、ポリマーを含み又は反応性カルボン酸基を有するモノマーによって変性させたエチレンの共重合体を含む。かかるケーブルの外側プラスチックジャケットは、通常の使用状態の下での層剥離に耐えるといわれているが、ジャケットを除去した後、腐食に対する保護のため接着剤層が金属片に緊密に接着されたままであるから、容易に除去でき、接地及び接合方法を容易にすることができる。
【0009】
米国特許明細書4,327,248号には、管及び電気ケーブルの遮蔽体が開示されており、該管及び電気ケーブルの遮蔽体は、その少なくとも1つの側部に結合させた反応性カルボキシ群を有するモノマーを備えるエチレン共重合体の被覆を有する可撓性の金属テープにて出来ており、該被覆に対し接着剤が結合され、該接着剤は被覆を可撓性又は半剛性の非オレフィン系重合系材料に結合し得るようにされている。使用可能な可撓性又は半剛性の非オレフィン系重合系材料は、例えば、ポリ塩化ビニル又は非結晶塩素化ポリエチレン又はポリウレタン又は合成ゴムのようなエラストマー的材料である。接着剤はポリアミド系接着剤から選ぶことができる。
【0010】
米国特許明細書4,675,471号には、導電性コアと、金網とを備え、該金網は高曲げ弾性率及び高引っ張り強度及び高融点のその性質のため選ばれたポリマー層と、接着剤層とを備える同時押出し成形したフィルムにて被覆されている、電気ケーブルが開示されている。ポリマー層は、ポリアミド、コポリアミド又はコポリエステルである。接着剤は、オレフィンと、重合化可能、エチレン系不飽和カルボキシ酸又は酸無水化物又はその誘導体である少なくとも1つのコモノマーとの共重合体であり、又はこれと代替的に、接着剤は、共重合体及びポリオレフィンの接着剤ブレンドを備えるものとする。
【0011】
長手方向に折り重ねたポリエチレン被覆アルミニウムテープ(PE/AL/PE)を含むシーシングシステムを備えるケーブルは、既知であり且つピレリー(Pirelli)によりドライラム(Drylam)(登録商標名)シーシングシステムの商標名にて商業化されている。ポリエチレンジャケットを上記アルミニウムテープに押出し成形する間、上記長手方向に折り重ねたアルミニウムテープの重なり合う領域に存在するポリエチレン被覆は、重なり合う端縁を共に密封して、水分に対する優れた不透過性を提供する。更に、アルミニウムテープは、電磁的干渉に対する保護効果を提供する。ポリエチレンジャケットを押出し成形する間、アルミニウムテープに存在するポリエチレン被覆は、金属遮蔽体をポリエチレン外装に結合してケーブルに対し優れた機械的性質を与える。更に、ポリエチレンジャケットは、酸及び塩基のような無機質化学剤に対し極めて抵抗性がある。変性ポリアミド被覆層がポリエチレンジャケットに密着接着状態に施される。この材料は、炭化水素及び溶剤のような有機質化学剤に対し極めて抵抗性があり、無外装ケーブルの場合、白あり防止及び齧歯類抵抗の性質をも提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該出願人は、例えば、上述した米国特許明細書4,675,471号に開示されたエチレン系接着剤被覆層及びポリアミド被覆層にて被覆された積層した金属テープから出来たシースを使用することは、ケーブルを水分及び化学剤の双方の外的攻撃から保護する点にて望ましい程に効果的ではないことが分かった。特に、当該出願人は、上記積層した金属テープが絶縁した導電体の回りに長手方向に折り重ねられるとき、特に、上記金属テープの端縁が重ね合わされる場合、上記重なり合う端縁に存在するポリアミドは重なり合う端縁を効果的に結合することを許容しないから、ケーブル内部への水分及び化学剤の双方の侵入の危険性は、極めて大きいことが分かった。この侵入は、重なり合う領域の結合が不十分であること、及び重なり合う端縁領域内で厚さを通じて接着剤及びポリアミド被覆層が拡散することの双方に起因する。更に、上記積層した金属テープは、ケーブルの重量及びケーブルの外径の双方を増大させる顕著な厚さを有する。
【0013】
上記に開示したドライラム(登録商標名)シーシングシステムを使用することは、ポリエチレン被覆したアルミニウムテープの重なり合う端縁にてポリアミドが存在するのを回避するのを許容し、これにより重なり合う端縁における結合程度を向上させる。しかし、被覆したアルミニウムテープとポリアミド層との良好な接着を保証するため、ポリエチレン被覆したアルミニウムテープの回りにポリエチレン被覆層が存在し、且つポリエチレン被覆したアルミニウムテープと接触することが必要であり、これによりケーブルの全体的な直径を増大させることになる。
【0014】
このため、当該出願人は、上記追加的なポリエチレン被覆層を使用することを回避するという課題に取り組んだ。上記ポリエチレン被覆層を解消することは、ケーブルの外径を更に減少させ且つ製造過程の簡略化及び開始材料のコスト削減の双方のため、ケーブルをより経済的な方法にて製造することを許容することになる。
【0015】
しかし、当該出願人は、エチレン系接着剤被覆層にて被覆された金属テープとポリアミド被覆層との間にカレンダリング法によって良好な接着状態を得ることが可能であるが、押出し成形法によって同一の接着状態は得ることはできないことが分かった。特に、当該出願人は、エチレン系接着剤被覆層にて被覆された長手方向に折り重ねた金属テープにポリアミド被覆層を押出し成形することは、被覆した金属テープとポリアミド被覆層との間の効果的な接続状態を許容しないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
当該出願人は、エチレン系接着剤被覆した金属テープを重なり合わせた領域を有する状態でケーブル絶縁体の回りに折り重ね、ポリアミド被覆層を上記折り重ねたアルミニウムテープの回りにて直接押出し成形することにより、水分及び化学剤の双方の侵入に対する効果的なシールを有するケーブルを得ることが可能であることが分かった。特に、当該出願人は、被覆した金属テープとポリアミド層との間の接続は、特定の条件下にて押出し成形を実行することにより著しく向上することが分かった。より特定的には、当該出願人は、上記ポリアミド被覆層の押出し成形はドローダウン比(DDR)を制御して実行しなければならないことが分かった。
【0017】
更に、当該出願人は、上記エチレン系接着剤被覆金属テープ及び上記ポリアミド被覆層を使用すること、また、このようにして得られた水分及び化学剤の双方に対する効果的な保護効果のため、膨張重合系材料で出来た保護被覆層によってケーブルに対し効果的な機械的保護効果を提供することが可能であることも分かった。さもなければ、膨張重合系材料で出来た上記保護被覆層は、水分及び化学剤の双方の侵入により劣化してしまうであろう。このようにして、偶発的な衝撃に起因する損傷の可能性から保護し得るよう商業的に入手可能なケーブルに通常、取り付けられる金属外装を不要にすることができる。
【0018】
特に、当該出願人は、金属テープに対して半径方向内方の位置にて、十分な厚さ及び曲げ弾性率を有する膨張重合系材料で出来た保護被覆層をケーブル構造体内に挿入することにより、高衝撃強度を有するケーブルを得ることができ、これにより上記保護金属外装を使用することを回避することが可能であることが分かった。この型式の保護被覆層を有するケーブルは、保護金属外装を有する商業的ケーブルに優る色々な利点を有しており、その利点は、例えば、より容易な製造方法、完成したケーブルの重量及び寸法の軽減、その寿命サイクルが終了したならば、ケーブルのリサイクルに関する環境への影響の軽減である。
【0019】
このため、第一の形態において、本発明は、ケーブルの製造方法であって、
(a)少なくとも1つの導電体を押出成形機まで搬送するステップと、
(b)上記少なくとも1つの導電体の半径方向外方にて絶縁被覆層を押出し成形するステップと、
(c)少なくとも1つの接着剤被覆層を半径方向外方の位置にて支承する金属テープを上記押出し成形した絶縁被覆層の回りにて長手方向に折り重ねるステップと、
(d)少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える少なくとも1つの連続的な被覆層を上記折り重ねた金属テープの回りにて且つ該折り重ねた金属テープと接触する状態にて押出し成形するステップとを備え、
ステップ(d)は、2.5以下、好ましくは、1.2ないし2.0のドローダウン比(DDR)にて実行される上記ケーブルの製造方法に関する。
【0020】
好ましくは、上記ステップ(d)は、220℃ないし300℃の範囲、より好ましくは、230℃ないし270℃の範囲の温度にて実行されるものとする。
好ましくは、金属テープを折り重ねる上記ステップ(c)は、上記金属テープの端縁を重ね合わせるステップを備えるものとする。この場合、好ましくは、金属テープを折り重ねる上記ステップ(c)は、上記金属テープの重なり合う端縁を結合する追加的なステップを備えるものとする。
【0021】
好ましくは、上記金属テープは、半径方向内方の位置にて少なくとも1つの更なる接着剤被覆層を支承するものとする。
好ましくは、上記方法は、膨張重合系材料で出来た少なくとも1つの被覆層を上記金属テープに対する半径方向内方位置にて施す更なるステップを備えるものとする。好ましくは、上記被覆層は押出し成形により施されるものとする。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲において、「ドローダウン比」(DDR)という用語は、押出成形機の2つの隣接するダイの間に画成されて、被覆材料が通過するための断面を画成する断面積(この面積は押出ヘッドの出口断面にて計算される)と効果的な堆積した被覆材料の断面積との間の比を意味する。
【0023】
第二の形態において、本発明は、ケーブルであって、
少なくとも1つの導電体と、
上記少なくとも1つの導電体の回りの少なくとも1つの絶縁被覆層と、
前記少なくとも1つの絶縁導電体の回りにて長手方向に折り重ねられた少なくとも1つの金属テープであって、その外方向を向く面にて少なくとも1つの接着剤被覆層を支承する上記少なくとも1つの金属テープと、
上記少なくとも1つの接着剤被覆層に対して半径方向外方位置にて少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える少なくとも1つの連続的な被覆層であって、上記少なくとも1つの接着剤被覆層と接触している上記少なくとも1つの連続的な被覆層とを備える、上記ケーブルに関する。
【0024】
好ましくは、上記長手方向に折り重ねた金属テープは重なり合う端縁を有するものとする。
好ましくは、上記金属テープは、0.05mmないし1.0mm、より好ましくは0.1mmないし0.5mmの範囲の厚さを有するものとする。
【0025】
好ましくは、上記接着剤被覆層は、0.01mmないし0.1mm、より好ましくは0.02mmないし0.08mmの範囲の厚さを有するものとする。
好ましくは、上記連続的な被覆層は、0.5mmないし3.0mm、より好ましくは0.8mmないし2.5mmの範囲の厚さを有するものとする。
【0026】
1つの好ましい実施の形態に従い、上記ケーブルは、上記少なくとも1つの金属テープに対して半径方向内方位置にて少なくとも1つの更なる接着剤被覆層を備え、該少なくとも1つの接着剤被覆層は上記少なくとも1つの金属テープと接触している。
【0027】
更なる好ましい実施の形態に従い、上記ケーブルは、上記少なくとも1つの金属テープに対する半径方向内方位置にて、膨張重合系材料で出来た少なくとも1つの被覆層を更に備えている。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲において、「導電体」という用語は、中実なロッド又は複数のワイヤーのストランドとして形成され、金属材料で出来ていることが好ましい細長い形状、円形又は扇形の形態のような導電性要素を意味する。便宜であるならば、上記導電性要素は、例えば、中電圧又は高電圧の送電及び(又は)分電用の電気ケーブルの場合のように少なくとも1つの半導性被覆層にて被覆される。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲において、「連続的な被覆層」という用語は、軸方向及び周方向の双方にて、ケーブルの長さまで伸びる均一で且つ実質的に連続的な被覆層を意味するものと理解される。このことは、連続的な被覆層は長手方向又はら旋状の重なり又は隣接する部分を何も示さないことを意味する。
【0030】
1つの好ましい実施の形態に従い、上記導電体は銅又はアルミニウムで出来ている。
1つの好ましい実施の形態に従い、上記絶縁被覆層は、少なくとも1つの架橋結合したエチレン/プロピレン(EPR)又は好ましくは架橋結合したエチレン/プロピレン(EPR)共重合体からのエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)エラストマー的共重合体を備えることができる。
【0031】
これと代替的に、上記絶縁被覆層は、少なくとも1つの架橋結合し又は非架橋結合ポリオレフィン系重合系材料を備えるようにしてもよい。好ましくは、ポリオレフィン系重合系材料は、ポリオレフィン、異なるオレフィンの共重合体、オレフィンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体、ポリエステル、ポリアセテート、セルロースポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミン又はそれらの混合体から選ばれるものとする。適宜なポリマーの例は、ポリエチレン(PE)、特に低密度PE(LDPE)、中密度PE(MDPE)、高密度PE(HDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE);ポリプロピレン(PP);例えば、エチレン/酢酸ビニル(EVA)のようなエチレン/ビニルエステル共重合体;エチレン/アクリレート共重合体、特に、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)、及びエチレン/ブチルアクリレート(EBA);エチレン/α−オレフィン熱可塑性共重合体;ポリスチレン;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂;ハロゲン化ポリマー、特に、ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン(PUR);ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)のような芳香族ポリエステル;及びそれらの共重合体;又はそれらの混合体から選ばれるものとする。
【0032】
本発明によるケーブルに対して絶縁被覆層を形成するとき、抗酸化剤、加工助剤、水トリー抑制剤、又はそれらの混合体のようなその他の従来の成分を上記に開示した絶縁性材料に添加することができる。
【0033】
この目的に適した従来の抗酸化剤は、例えば、チオプロピオン酸ジステアリル又はチオプロピオン酸ジラウリル及びペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩]、又はそれらの混合体である。
【0034】
絶縁材料に添加することのできる加工助剤は、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸又はそれらの混合体を含む。
1つの好ましい実施の形態に従い、上記金属テープは、アルミニウム、アルミニウム合金、合金クラッドアルミニウム、銅、青銅、スチール、無錫スチール、ブリキスチール、アルミニウム被覆スチール、ステンレススチール、銅−クラッドステンレススチール、ターンプレートスチール、亜鉛めっきスチール、クロム又はクロム処理スチール、鉛、マグネシウム、錫、又はそれらの混合体で出来たものとすることができる。アルミニウムが好ましい。
【0035】
1つの好ましい実施の形態に従い、接着剤被覆層は、エチレン又はプロピレンとエチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとの少なくとも1つの共重合体を備えることができる。
【0036】
好ましくは、エチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとエチレン又はプロピレンとの上記共重合体は、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸の全コポリマー重量に対して好ましくは、重量比にて1%ないし30%、より好ましくは、重量比にて2%ないし20%のエチレン又はプロピレンの主要な部分及び少量の部分を有する共重合体から選ぶことができる。
【0037】
モノ塩基酸及びポリ塩基酸、酸無水化物及びポリ塩基酸の部分エステルを含み、また、本発明の目的のため望ましいように使用することのできるエチレン系不飽和カルボン酸の特定の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル酸マレイン酸塩、エチレングリコロールモノフェニルエーテル酸マレイン酸塩、又はそれらの混合体である。好ましくは、カルボン酸コモノマーは、例えば、1分子当たり3ないし8つの炭素原子を有するα,β−エチレン系不飽和モノ及びポリカルボン酸及び酸無水化物、また、かかるポリカルボン酸の部分エステルから選ぶことができ、ここで、酸部分は、少なくとも1つのカルボン酸基を有し、また、アルコール部分は、1ないし20の炭素原子を有するものとする。
【0038】
好ましくは、上記共重合体は、基本的にエチレン又はプロピレン及び上述した1つ又はより多くのエチレン系不飽和酸コモノマーから成るものとし、又はエチレンと重合化可能な少量の異なるコモノマーを含むこともできる。このように、共重合体は、アクリル酸のエステルを含むその他の共重合化可能なコモノマーを含むことができる。より好ましくは、上記共重合体は、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体又はエチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体であるものとする。
【0039】
上記共重合体は、ブロック、ランダム又はグラフト共重合体から選ぶことができる。これら型式の共重合体は、当該技術にて既知の方法に従って作成することができる。例えば、上記共重合体は、通常、約90℃ないし約300℃、好ましくは、120℃ないし約280℃の高温度及び通常1,000大気圧以上、好ましくは、1,000大気圧ないし3,000大気圧の高圧力に、好ましくは、酸素、過酸素、化合物又はアゾ化合物のような遊離基開始剤の存在下にて開始モノマーの混合体を曝すことにより作成することができる。
【0040】
本発明に従って使用可能であり、また、商業的に入手可能であるエチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとエチレンとの共重合体の例は、バゼル(Basell)からのルカレン(Lucalen)(登録商標名)という名称にて知られた製品である。
【0041】
1つの好ましい実施の形態に従い、例えば、ポリアミド又はその共重合体は、例えば、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような少なくとも1つのアミノ酸、又は、例えば、カプロラクタム、エナントラクタム(oenantholactam)、ラウリルラクタムのような少なくとも1つのラクタム、又は例えば、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンのような、ジアミンの少なくとも1つの塩又はジアミンと、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸のような少なくとも1つの二塩基酸との混合体;又はコポリアミドに至るこれら全てのモノマーの混合体の凝縮製品から選ぶことができる。
【0042】
本発明に従って望ましいように使用することができるポリアミド又はそれらの共重合体の特定の例は、ナイロン6、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12又はそれらの混合体である。
【0043】
1つの好ましい実施の形態に従い、上記ポリアミド又はその共重合体は、少なくとも1つのポリオレフィンとのブレンドにて使用される。
「ポリオレフィン」という語は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン又はそれらの高級同族体のようなオレフィン単位体を備えるポリマーを意味するものと理解すべきである。
【0044】
本発明に従って望ましいように使用することができるポリオレフィンの特定の例は、
これらの製品は、例えば、無水マレイン酸のような不飽和カルボン酸無水物、又は例えば、メタクリル酸グリシジル又はその混合体のような不飽和エポキシドにて選択的にグラフトされる、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−オレフィンとエチレンの共重合体と;
(i)不飽和カルボン酸、その塩又はそのエステル、(ii)飽和カルボン酸のビニルエステル;(iii)不飽和ジカルボン酸、その塩、そのエステル、その半エステル、又はその無水化物;(iv)不飽和エポキシドであって、上記エチレン共重合体が不飽和ジカルボン酸無水化物又は不飽和エポキシドにて選択的にグラフトされた上記から不飽和エポキシドから選ばれた少なくとも1つの製品とエチレンとの共重合体と;
選択的にマレイン化したスチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)と;又はそれらのブレンドとである。
【0045】
好ましくは、以下のポリオレフィンを望ましいように使用することができる。
ポリエチレン;
エチレンとα−オレフィンとの共重合体;
エチレン/アルキル(メタ)アクリレート共重合体;
無水マレイン酸はグラフト又は共重合化された、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体;
グリシジル(メタ)アクリレートはグラフト又は共重合化された、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;
ポリプロピレン。
【0046】
ポリアミド/ポリオレフィンブレンドの形成を改良するため、特に、ポリオレフィンはポリアミドとのその相溶化を促進することのできる機能基が極めて少なく、又は全く含まない場合、相溶化剤を添加することが好ましい。
【0047】
本発明に従って望ましいように使用することのできる相溶化剤の特定の例は、その製品の全てが無水マレイン酸又はグリシジルメタクリル酸塩によりグラフトされた、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体;
無水マレイン酸がグラフトされ又は共重合化された、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体;
無水マレイン酸がグラフトされ又は共重合化された、エチレン/酢酸ビニル/無水マレイ酸共重合体;
無水マレイン酸がグリシジル(メタ)アクリレートにて置換された上記2つの共重合体;
エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体及びそれらの塩;
これらのポリマーはアミンと反応する部分を有する製品にてグラフトされた、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−プロピレン共重合体であって、次に、このグラフトした共重合体は単一のアミン端末基を有するポリアミド又はポリアミドオリゴマーにて凝縮された上記ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−プロピレン共重合体である。
【0048】
好ましくは、ポリアミド/ポリオレフィンのブレンドは、
重量比にて55部分ないし重量比にて95部分のポリアミドと、
重量比にて5部分ないし重量比にて45部分のポリオレフィンとを備えるものとする。
【0049】
相溶化剤は、ポリオレフィンを小塊の形態にてポリアミド内で分散させるのに十分な量にて存在することができる。好ましくは、相溶化剤は、重量比にてポリオレフィンの20%まで示すものとする。
【0050】
ポリアミド/ポリオレフィンのブレンドは、ポリアミド、ポリオレフィン及び選択的に相溶化剤が存在する状態にて標準的な溶融体混合技術により混合することで得ることができる。溶融体混合は、例えば、2軸押出成形機、バス、単軸押出成形機により実行することができる。
【0051】
上述したポリアミド/ポリオレフィンのブレンドに関するより詳細な情報は、例えば米国特許明細書5,342,886号に見ることができる。
本発明に従って使用可能であり、また、商業的に入手可能であるポリアミド/ポリオレフィンのブレンドの例は、アトフィナ(Atofina)からオルガロイ(Orgalloy)(登録商標名)という名称にて知られた製品である。
【0052】
上記に開示したように、本発明に従ったケーブルは、膨張重合系材料で出来た少なくとも1つの被覆層を備えることができる。
膨張重合系材料は、例えば、ポリオレフィン、異なるオレフィンの共重合体、オレフィンとエチレン系不飽和エステルの共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、尿素樹脂、又はそれらの混合体から選ぶことができる少なくとも1つの膨張可能なポリマーを備えることができる。適宜なポリマーの例は、ポリエチレン(PE)、特に、低密度PE(LDPE)、中密度PE(MDPE)、高密度PE(HDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE);ポリプロピレン(PP);エラストマー的エチレン/プロピレン共重合体(EPR)又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM);天然ゴム;ブチルゴム;エチレン/ビニルエステル共重合体、例えば、エチレン/酢酸ビニル(EVA);エチレン/アクリレート共重合体、特に、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)及びエチレン/ブチルアクリレート(EBA);エチレン/α−オレフィン熱可塑性共重合体;ポリスチレン;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂;ハロゲン化ポリマー、特に、ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン(PUR);ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)のような芳香族ポリエステル;及びそれらの共重合体;又はそれらの混合体である。
【0053】
好ましくは、上記膨張可能なポリマーは、ポリオレフィンポリマー又はエチレン及び(又は)プロピレン系の共重合体から選ぶことができるものとする。より好ましくは、上記膨張可能なポリマーは、
(i)不飽和エステルの量が全体として重量比にて5%ないし重量比にて80%の範囲、好ましくは、重量比にて10%ないし重量比にて50%の範囲にある、例えば、酢酸ビニル又は酢酸ブチルのようなエチレン系不飽和エステルとエチレンとの共重合体;
(ii)全体として次の組成、すなわち35%ないし90%モルのエチレン、10%ないし65%モルのα−オレフィン、0%ないし10%モルのジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン又は5−エチリデン−2−ノルボルネン)を有する、少なくとも1つのC−C12α−オレフィン、及び選択的にジエン、好ましくはエチレン/プロピレン(EPR)又はエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)の共重合体とエチレンとのエラストマー的共重合体;
(iii)全体として0.86g/cmないし0.90g/cmの密度を有し、また、次の組成すなわち75%ないし97%モルのエチレン;3%ないし25%モルのα−オレフィン;0%ないし5%モルのジエンを有する少なくとも1つのC−C12α−オレフィン、好ましくは1−ヘキセン又は1−オクテン、及び選択的にジエンとエチレンとの共重合体;
(iv)エチレン/C−C12α−オレフィン共重合体にて変性させたポリプロピレンであって、ポリプロピレンとエチレン/C−C12α−オレフィン共重合体との間の重量比が90/10ないし10/90の範囲、好ましくは80/20ないし20/80の範囲にある上記変性ポリプロピレンから選ぶことができる。
【0054】
例えば、商業的製品エルバックス(Elvax)(登録商標名)(デュポン(DuPont))、レバプレン(levapren)(登録商標名)(バイエル(Bayer))及びロトリル(Lotryl)(登録商標名)(エルフ・アトケム(Elf−Atochem))は、クラス(i)に属し、製品デュートラル(Dutral)(登録商標名)(エニケム(Enichem))又はノーデル(Nordel)(登録商標名)(ダウ・デュポン(Dow−Dupont))はクラス(ii)に属し、また、クラス(iii)に属する製品は、エンゲージ(Engage)(登録商標名)(ダウ・デュポン)又はイザクト(Exact)(登録商標名)(エクソン(Exxon))である一方、エチレン/α−オレフィン共重合体(iv)にて変性させたポリプロピレンは、モプレン(Moplen)(登録商標名)又はハイファックス(Hifax)(登録商標名)(バゼル(Basell))又はフィナ・プロ(Fina−Pro)(登録商標名)(フィナ(Fina))という商標名にて商業的に入手可能である。
【0055】
クラス(iv)にて特に好ましいものは、例えば、ポリプロピレンのような熱可塑性ポリマーと、例えば、熱可塑性マトリックス内に分散させた架橋結合したEPR又はEPDMのような硬化したエラストマー的ポリマーの微細な粒子(全体として1μmないし10μmの程度の直径を有する)との連続的なマトリックスを備える熱可塑性エラストマーである。エラストマー的ポリマーは、非硬化状態にて熱可塑性マトリックス内に含め、次に、加工する間、適宜な量の架橋結合剤を添加することにより、動的に架橋結合することができる。これと代替的に、エラストマー的ポリマーは、別個に硬化させ、次に、微細な粒子の形態にて熱可塑性マトリックス内に分散させてもよい。この型式の熱可塑性エラストマーは例えば、米国特許明細書4,104,210号又は欧州特許出願明細書324,430号に記載されている。作用温度の全範囲に亙ってケーブルの熱サイクルの間、半径方向力を弾性的に吸収する点にて特に効果的であることが判明しているから、これらの熱可塑性エラストマーは好ましい。
【0056】
本明細書の目的のため、「膨張した」ポリマーという用語は、その構造体内における「空隙」容積(すなわち、ポリマーは存在せずに気体又は空気が存在する空間)の比率が典型的に、上記ポリマーの全容積の10%以上であるポリマーを意味するものと理解される。
【0057】
全体として、膨張したポリマー内の自由容積の比率は、膨張度(G)の表現にて表わされる。本明細書において、「ポリマーの膨張度」は、次のようにして決定されたポリマーの膨張を意味するものと理解される。
【0058】
G(膨張度)=(d/d−1)x100
ここで、dは、非膨張ポリマー(すなわち実質的に空隙容積が無い構造体のポリマー)の密度を示し、dは、膨張したポリマーについて測定した見掛け密度を示す。
【0059】
好ましくは、上記膨張したポリマー被覆層の膨張度は、20%ないし200%の範囲、より好ましくは、25%ないし130%の範囲にて選ぶことができるものとする。
上述した膨張した重合系材料に関するより詳細は、例えば、欧州特許明細書981,821号に見ることができる。
【0060】
上記に既に説明したように、導電体は、半導性被覆層にて被覆された導電性要素を備えることができ、望ましくは、絶縁被覆層の外側に更なる半導性被覆層が存在するものとすることができる。
【0061】
半導性の性質を有するケーブル被覆層は、既知の技術に従って製造することができ、また、望ましくは、半導性重合系材料を備えるものとする。好ましくは、上記重合系材料は、良好な接着を保証し、従って部分的放電を発生させ、最終的にケーブルに穴を開けるであろう剥離を回避し得るよう、電気的絶縁性質を有する被覆層に対して使用されるものと同一型式のものとする。
【0062】
半導性層を形成することを欲する場合、全体として、導電性フィラーは、重合系材料、特に炭素黒内にて上記材料に対し半導性の性質を付与し得るような量(すなわち室温にて5Ω.m以下の抵抗率が得られるような量)にて分散させる。上記量は、最終組成物の全重量に対し重量比にて5%ないし80%の範囲、好ましくは、重量比にて10%ないし50%の範囲にあるものとする。
【0063】
更に、本発明によるケーブルは、網を備えることができ、該網は、絶縁被覆層の外側に位置する半導性被覆層の回りに配置されたら旋状に巻いた導電性ワイヤー又はテープから成るものとすることができる。
【0064】
更に、上述した被覆層に加えて、本発明によるケーブルは、通常、例えば、可撓性ポリ塩化ビニル(PVC)、非架橋結合ポリエチレン、特に、中密度ポリエチレン(MDPE)、又は非架橋結合ホモポリマー又はプロピレンの共重合体のような熱可塑性材料を備える外部保護シース(以下「外側シース」と称する)の機能を有する少なくとも1つの被覆層を備えることができる。これと代替的に、上記外側シースは自己消火の性質を有し、また、次のものを備える難燃性組成物で出来たものとしてもよい。
【0065】
例えば、ポリオレフィン、色々なオレフィン共重合体、オレフィンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテル/ポリエステル共重合体又はそれらの混合体から選ばれた少なくとも1つのポリマーと、
例えば、水酸化物、水和酸化物、特に水酸化マグネシウム、三水和アルミナ、水和炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水和カルシウム及び炭酸マグネシウム、カルシウム及び炭酸マグネシウム、又はそれらの混合体のような金属の塩又は金属の水和塩から選ばれた少なくとも1つの無機質フィラーと、また、選択的に、
例えば、少なくとも1つのエチレン系不飽和物を保持するシラン化合物;エチレン系不飽和物を保持するエポキシド;モノカルボン酸又は好ましくは、少なくとも1つのエチレン系不飽和物又はその誘導体、特に無水物又はエステル或いはその混合体を有するジカルボン酸とから選ばれた少なくとも1つの結合剤とを備えるものである。
【0066】
上述した難燃性組成物に関するより詳細は、例えば、米国特許明細書6,162,548号及び米国特許明細書6,495,760号、欧州特許明細書998,747号、欧州特許明細書893,802号、欧州特許明細書1,116,244号及び国際出願明細書00/39810号に見ることができる。
【0067】
更なる詳細は、以下の説明、添付図面に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
図1を参照すると、三極型の低電圧ケーブル1は、その各々が例えば、架橋結合したエチレン/ポリプロピレンゴム又は上記に開示したものから選ぶことのできる架橋結合し又は非架橋結合ポリオレフィン系重合系材料で出来た絶縁性被覆層3によって被覆された3つの導電体2を備えている。絶縁した導電体2及び3つの裸の銅アース線4は互いに束ねられ、絶縁した導電体2の間の隙間にはフィラー材料5が充填され、該フィラー材料は、実質的に円筒の形状を有する連続的な構造体を形成する。フィラー材料5は、全体として、エラストマー的混合体又はポリプロピレンファイバで出来ており、より好ましくは、難燃性材料で出来たものとする。更に、ケーブル1は、内側から外側への順序にて、上記に開示したものから選ぶことのできる膨張重合系材料で出来た被覆層6と、接着剤層7にて被覆された金属テープ、好ましくは、エチレン/アクリレート共重合体を備える接着剤層にて被覆されたアルミニウムテープと、少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体、好ましくは、ポリアミド/ポリオレフィンのブレンドを備える連続的な被覆層8と、熱可塑性材料、好ましくは、中密度ポリエチレン又はポリ塩化ビニル又は上記に開示したものから選ぶことのできる難燃性組成物で出来た外側シース9とを備えている。
【0069】
図2を参照すると、単極型の低電圧ケーブル1bは、金属導電体2と、例えば、架橋結合したエチレン/プロピレンゴム又は上述に開示したものから選ぶことのできる架橋結合し又は非架橋結合ポリオレフィン系重合系材料で出来た絶縁被覆層3と、上記に開示したものから選ぶことのできる膨張重合系材料で出来た被覆層6と、接着剤層7にて被覆された金属テープ、好ましくは、エチレン/アクリレート共重合体を備える接着剤層にて被覆されたアルミニウムテープと、少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体、好ましくは、ポリアミド/ポリオレフィンのブレンドを備える連続的な被覆層8と、熱可塑性材料、好ましくは中密度ポリエチレン又は上記に開示したものから選ぶことのできる難燃性組成物で出来た外側シース9とを備えている。
【0070】
図3を参照すると、三極型の中電圧ケーブル1aは、図1と同一の参照番号で表示した、図1のケーブルと同一の要素を備えているが、内側から外側に導電体2の回りにて内側半導性被覆層3a、絶縁被覆層3、外側半導性被覆層3b、全体として外側半導性被覆層3bの回りに配置されたら旋状に巻いた導電性線又はテープから成る網3cとが存在する点にて相違する。
【0071】
図4を参照すると、単極型の中電圧ケーブル1cは、中心から外方の順序にて導電体2と、内側半導性被覆層3aと、例えば架橋結合したエチレン/プロピレンゴム又は上記に開示したものから選んだ架橋結合し又は非架橋結合ポリオレフィン系重合系材料で出来た絶縁被覆層3と、外側半導性被覆層3bと、全体として、外側半導性被覆層3bの回りに配置されたら旋状に巻いた導電性線又はテープから成る網3cと、ポリエステルで出来たものであることが好ましいテープ10と、上記に開示したものから選ぶことのできる膨張重合系材料6で出来た被覆層と、接着剤層7にて被覆された金属テープ、好ましくはエチレン/アクリレート共重合体を備える接着剤層にて被覆されたアルミニウムテープと、少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体、好ましくはポリアミド/ポリオレフィンのブレンドを備える連続的な被覆層8と、熱可塑性材料、好ましくは中密度ポリエチレン又はポリ塩化ビニル又は上記に開示したものから選ぶことができる難燃性組成物で出来た外側シース9とを備えている。
【0072】
図3及び図4の内側及び外側半導性被覆層3a、3bは、上述したように、好ましくは絶縁被覆層及び炭素黒に対して使用したものと同一型式の重合系材料を備える組成物にて出来たものとすることができる。
【0073】
図5を参照すると、本発明に従ったケーブルを製造する製造ラインが概略図的な形態にて示されている。
上述した工程を特徴付ける主要なステップについて、単極型のケーブル(例えば、図2又は図4に開示したもののような)を製造するため必要とされる場合に関して以下に説明する。
【0074】
より具体的には、図5には、加工ライン20の概略図が示されている。
導電体2は、任意の既知の技術に従って供給リール22から巻き戻され、且つ押出成形機23の押出ヘッドに向けて搬送され、該押出ヘッドによって絶縁被覆層3は導電体2の上方にて押出し成形され、この装置は、例えばスクリュー型の押出成形機とする。
【0075】
望ましくは、導電体2は、絶縁被覆層3を規則的に押出し成形することを保証するため必要とされるように、導電体の制御された送り込み速度を提供する送り込みシステム24を通じて送り込まれるものとする。
【0076】
典型的に、導電体2の前進速度は、絶縁被覆層の厚さ、導電体の直径、製造すべきケーブルの型式等に依存して、0.2m/分ないし1500m/分の範囲にある。例えば、低電圧ケーブルに対して、導電体の前進速度は、典型的に、15m/分ないし1500m/分の範囲にある一方、中電圧ケーブルに対するその速度は、典型的に、2m/分ないし30m/分の範囲にある。
【0077】
押出成形機23は、絶縁被覆層3を押出し成形するのに適している(半導性被覆層が存在する場合、2つの更なる押出成形機が存在し、これらの押出成形機は、連続的に配置することができ、各々は、それ自体の押出成形機ヘッドを有し、又は、好ましくは、これらは、全て、共通の三重押出ヘッドに接続されて、上記3層の同時押出し成形を実現する)。
【0078】
押出し成形した絶縁被覆層3に対して冷却ステップが行われ、この冷却ステップは、冷却流体が流れる細長い開放した管路又は通路から成るものとすることのできる冷却部分26内にて実行される。水は、かかる冷却流体の好ましい例である。かかる冷却部分の長さ、冷却流体の性質、温度及び流量は、工程の後続のステップに適した最終温度を提供するように決定される。
【0079】
乾燥機(図1に図示せず)は、後続の部分内に入る前に、便宜に挿入することができ、上記乾燥機は、特に、かかる残留物がケーブルの全体性能にとって有害であることが判明する場合、湿気又は水滴のような、冷却流体の残留物を除去するのに有効である。
【0080】
次に、絶縁ケーブルの導電体29は、金属テープ取り付け部分30に搬送される。
1つの好ましい実施の形態において、取り付け装置30は、成形機を有しており、該成形機によって、外方を向いたその面にて接着剤被覆層7を支承する金属テープは、長さ方向に管状の形態に折り重ねられ、貫通して前進する絶縁ケーブルの導電体を取り囲み、長手方向に折り重ねられた金属テープを形成する。この型式の成形機は当該技術の当業者に周知である。
【0081】
これと代替的に、金属テープ7は、その外方を向いた面及びその内方を向いた面の双方にて接着剤被覆層を支承してもよい。望ましくは、接着剤被覆層が金属テープの外方を向いた面にのみ存在する場合、適宜な密封及び接着剤は、接着剤塗布器(図1に図示せず)によって金属テープの端縁の重なり合う領域に供給することができる。上記密封及び接着剤は、熱溶融型接着剤から、より好ましくは、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリオレフィン又はそれらの混合体から選ばれることが好ましい。この型式の熱溶融型接着剤は、例えば、米国特許明細書5,281,757号に開示されている。
【0082】
通常、接着剤被覆層を支承する金属テープ7は、商業的に入手可能である。これと代替的に、金属テープは、例えば、カレンダリング装置によって、ケーブルの製造中、インラインで接着剤被覆層にて被覆し、又は、ケーブル製造装置付近にてオフラインで被覆してもよい。
【0083】
膨張重合系材料6で出来た被覆層6が存在する場合、更なる押出成形機23aは、関連する冷却器26aと共に、金属テープの取り付け部分30から上流に配置されて、金属テープ7が取り付けられる前、被覆層を形成する膨張重合系材料を取り付ける。これと代替的に、本発明の方法は、上述したように、膨張重合系材料で出来た被覆層6を有するケーブル絶縁導電体を製造するステップと、その後、このようにして得られたケーブル導電体を集めリール上に格納するステップとを含むようにしてもよい。その後、このようにして得られ且つ格納した絶縁ケーブル導電体は、金属テープ取り付け部分30に送り込まれる。
【0084】
金属テープの取り付け装置30の後、長手方向に折り重ねられた金属テープにて被覆された絶縁導電体は、連続的な被覆層を施すため、更なる押出成形機32に搬送され、次に、冷却器26bに搬送される。
【0085】
次に、長手方向に折り重ねられた金属テープ及び押出し成形した連続的な被覆層33を有する絶縁導電体は、押出成形機32及び冷却器26bを去って、オーバシース押出成形機35と、その冷却器26cとを有する外側保護シースの押出し部分34を通過することにより仕上げられ、完成したケーブルが得られる。
【0086】
更に、図5には、ケーブルを冷却通路26c内にて多数回通すためのシステム27が図示されており、このシステムは、例えば、一定であり且つ予め設定された値に等しいケーブルの前進速度を保証するのに十分な程度にてケーブルが蓄積するのを保証することのできる、製造ラインに対する貯蔵装置から成る。
【0087】
最後に、この冷却段階から下流にて、ケーブルは、送風機(図5に図示せず)により乾燥され、次に、集めリール28に巻かれ且つ貯蔵領域に送られることが好ましい。
使用済みの被覆材料が架橋結合可能な型式のものである場合、上述した関連する押出し成形段階の後、架橋結合工程を提供することができる。上記の架橋結合工程は、例えば、カテナリー曲線上にて実施することができる。
【0088】
多極型のケーブル(例えば、図1及び図3に開示したようなもの)を製造すべき場合、導電体(所望の数にて)は、上述した方法に従って1つ又は複数の関連する絶縁層にて被覆し、絶縁した導電体は、別個に、関連するリールに巻かれる。次に、所望の数の絶縁導電体が共に束ねられ且つ、フィラー材料5にて被覆され、その後、上記に開示したように実行されるであろう後続の方法ステップのため、押出成形機23a又は金属テープの取り付け部分30に供給される。
【0089】
本明細書は、主として、低電圧、中電圧又は高電圧の送電及び(又は)分電用ケーブルに重点を置いて説明したが、例えば、制御ケーブル、信号伝送ケーブル、計器ケーブル、銅データケーブル、電気通信用ケーブル又は電力/電気通信の併用ケーブルのような異なる型式のケーブルを本発明に従って製造することができる。
【0090】
本発明は、以下の実施例にて更に説明するが、これらの実施例は、主として、説明のためであり、本発明を限定するものと何らかの仕方にてみなすべきではない。
実施例1
ケーブルの製造
3極型の中電圧ケーブルを、図3に掲げた製造方法に従って作成した。
【0091】
上記ケーブルが保持する3つのコアの各々は、0.8mm厚さの内側半導性被覆層と、5.5mm厚さの絶縁被覆層と、0.5mm厚さの外側半導性被覆層にて押出し成形ライン上にて被覆された銅導電体(断面積は150mmに等しい)から成っており、3つの被覆層は、架橋結合したエチレン/プロピレンゴム系化合物で出来たものとした。押出し成形は、内側半導性被覆層に対する80mm、25Dの単軸押出成形機と、絶縁被覆層に対する150mm、25D単軸押出成形機と、外側半導性被覆層に対する90mm、25D単軸押出成形機とを備える三重押出し成形ラインによって実行した。押出成形機の色々な領域内の温度は、それぞれ、以下のものとした。すなわち、50−100−110−120−120℃、押出しヘッド115℃、80−90−95−100−100−100℃、押出しヘッド115℃、50−100−110−120−120℃、押出しヘッド115℃とした。
【0092】
上記の被覆層は、カテナリー曲線上にて過酸化物−架橋結合した。その後、導電線のテープを絶縁した導電体の各々の回りにら旋状に巻いた。
このようにして得られた絶縁導電体及び3本の裸の銅アース線を互いの回りに巻き、また、次の組成、すなわち重量比にて10%のエチレン−プロピレンエラストマー的共重合体、重量比にて10%のパラフィン油、重量比にて80%の炭酸マグネシウム:炭酸カルシウム混合体(50:50)(重量比による率は、組成物の全重量に対して表わしたもの)で出来た充填材料の層を上記絶縁導電体(各々が約27.5mmの外径を有するものとした)の上で及び上記裸の銅アース線の上で押出し成形した。上記充填層の厚さは、上記コアの半径方向外方、すなわちこれらのコアの外側領域の上で約0.8mmとした。充填層の押出し成形は、120mm、20D単軸押出成形機によって実行した。押出成形機の色々な領域内の温度は、次のようにした、すなわち、60−80−100−100−100℃、押出ヘッドの温度は105℃とした。
【0093】
後続のステップにて、膨張重合系材料で出来た被覆層をこのようにして得られた充填層にて押出し成形した。より特定的には、上記被覆層は、エチレン/プロピレン共重合体(ハイファックス(Hifax)(登録商標名)SD817−バゼル)で変性させたプロピレンで出来たものとした。上記被覆層は、2.5mmの厚さを有し、押出し成形は、120mm、25D単軸押出成形機を使用して実行した。押出成形機の色々な領域内の温度は、次のものとした、すなわち150−180−200−200−200℃、押出ヘッドの温度は200℃とした。
【0094】
ボエリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)が製造する膨張剤ハイドロセロール(Hydrocerol)(登録商標名)BIH40(カルボン酸/重炭酸ナトリウム)を重量比にて1.2%(全重量に対して)をホッパー内に添加することにより、膨張被覆層を化学的に膨張させた。
【0095】
押出ヘッドから去るケーブルは、25℃の水中で冷却させ、次に、乾燥させ、その後、アルミニウム成形装置内に入るようにした。
次に、このようにして得られたケーブルを厚さ0.3mmのアルミニウムテープと共に長手方向に折り重ね、外側及び内側の双方を厚さ0.06mmのエチレン/アクリレートコポリマーフィルム(バゼルからのルカレン(Lucalen)(登録商標名)A3110M)にて被覆した。重なり合う端縁の結合は、コポリマーを熱風にて溶融させることにより実行した。
【0096】
後続のステップにて、厚さ約1.8mmのポリアミド6/線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ブレンド(アトフィナ(Atofina)からのオルガアロイ(Orgalloy)(登録商標名)LE6000)で出来た連続層をアルミニウムテープ上に押出し成形した。押出し成形は、150mm、25D単軸押出成形機によって実行した。押出成形機の色々な領域内の温度は、次の通りとした、すなわち210−250−260−270−270℃とし、押出ヘッドの温度は270℃とし、ドローダウン比(DDR)は1.7とした。
【0097】
後続のステップにおいて、表1に記載した組成から出来た外側保護シース(色々な成分の量は、重合系基部の重量に対し100部分当たりの重量の部分にて表わしてある)を上記に開示した連続的な被覆層に押出し成形した。上記シースの厚さは、約3.2mmとした。押出し成形は150mm、25D単軸押出成形機により実行した。押出成形機の色々な領域内の温度は、次の通りとした、すなわち150−160−165−165−165℃とし、押出ヘッドの温度は165℃とした。
【0098】
次に、ケーブルを水中にて冷却させ且つ格納リールに巻いた。
表1
例 1
エンゲージ(Engage)(登録商標名)8003 80.00
モプレン(Moplen)(登録商標名)EP1X35HF 10.00
オレバック(Orevac)(登録商標名)18303 10.00
イルガノックス(Irganox)(登録商標名)1010 0.50
ロードシル(Rhodorsil)(登録商標名)MF175U 1.50
ハイドロファイ(Hydrofy)(登録商標名)G−2.5 160.00
合計 262.00
エンゲージ(登録商標名)8003:メタロセン触媒によって得られたエチレン/1−オクテン共重合体:エチレン/1−オクテン重量比=82/18(1−オクテンのモルにて5.5%);(ダウ・デュポン)
モプレン(登録商標名)EP1X35HF:プロピレン/エチレンランダム結晶状コポリマー(バゼル);
オレバック(登録商標名)18303:無水マレイン酸(MA)にてグラフトしたLLDPE:(エルフアトケム(Elf Atochem));
イルガノックス(登録商標名)1010:テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン(抗酸化剤チバ・ガイギー(Ciba−Geigy));
ロードシル(登録商標名)MF175U:共助剤/潤滑剤(シリコーンゴム−ローン・ポーレンク(Rhone−Poulenc));
ハイドロファイG2.5:ステアリン酸にて表面処理した自然の過酸化マグネシウム(ヌエオバシマ(Nuova Sima))。
【0099】
成分の全ては、95%の容積充填にて閉じたバンバリー(Banbury)ミキサー(混合チャンバの容積:1200cm)内にて混合させた。混合は、合計、10分間、180℃の温度にて実行した(ロータ速度:44回転/分)。
【0100】
油及び燃料抵抗性試験
UL1072に従って操作して油及び燃料抵抗性試験を行った。
この目的のため、長さ0.3mのケーブルのサンプルを次のものに浸漬させた。
【0101】
燃料Cに対し23℃にて30日間;
IRM902油に対し75℃にて60日間;
IRM902油に対し100℃にて96時間。
【0102】
次に、サンプルを燃料又は油から除去し、絶縁層を有する3つの導電体の1つを回収し、標準DIN53504S2に従ってダイカットした試料を絶縁層から得た。得られた試料を使用して50mm/分の牽引速度にてインストロン(Instron)計器により破断伸び(E.B.)及び破断応力(S.B.)を決定した(標準CEI EN60811−1−1に従って)。得られたデータは表2に掲げてある。特に、表2には、絶縁被覆層の破断伸び(E.B.)及び破断応力(S.B.)並びに老化前(当初性質)及び老化後の上記機械的性質の変化率(%Δ)が示されている。
【0103】
表2

当初の性質
E.B.(%) 380
S.B.(Mpa) 17.6
老化後の性質
燃料C
23℃にて30日
E.B.(%) 375
S.B.(Mpa) 17.4
%ΔE.B. −1%
%ΔS.B. −1%
IRM902油
75℃にて60日
E.B.(%) 360
S.B.(Mpa) 17.8
%ΔE.B. −5%
%ΔS.B. 1%
IRM902油
100℃にて96時間
E.B.(%) 330
S.B.(Mpa) 16.0
%ΔE.B. −13%
%ΔS.B. −9%
上記に掲げたデータは、老化後の破断伸び(E.B.)及び破断応力(S.B.)の双方の%変化率(%Δ)は極めて低いことを示す。
【0104】
例2
ケーブルを例1に開示したように製造したが、その唯一の相違点は、ポリアミド6/線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ブレンド(アトフィナからのオーガロイ(登録商標名)LE6000)で出来た連続的な層を4.0のドローダウン比(DDR)にて押出し成形した点である。
【0105】
接着(剥離)試験
接着剤層及び次の寸法すなわち10mm幅×100mm長さの連続的な被覆層を有する金属テープの試験片をケーブルから得た。同一直径の試験片も例1のケーブルから得た。
【0106】
上記試験片に対し、インストロン4202ダイナモメータを使用して標準EDF NF C33−223に従って剥離試験を行い、このダイナモメータのクランプを一端にて金属テープに取り付け、また、他端にて連続的な被覆層に取り付けた(両端はクランプを取り付ける前に手で剥離した)。次に、50mm/分の牽引速度を作用させ、このようにして測定した剥離力(PF)値を、ニュートン(N)で表わして以下に掲げてあり、その各々は、4つの試験片について計算した平均値である。
【0107】
例2のケーブル:10 N;
例1のケーブル:25 N;
ドローダウン比(DDR)と剥離力(PF)との間の関係、及び試験結果が図6に表わしてある。図面により示すように、ドローダウン比(DDR)は、連続的な被覆層を金属テープに接着させるために極めて重要であることが判明し、また、ドローダウン比(DDR)の値を臨界的な値以下に維持することによってのみ、満足し得る剥離力(PF)の値(例えば、20N以下)を得ることができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の1つの実施の形態に従った三極型の低電圧ケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の更なる実施の形態に従った単極型の低電圧ケーブルの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の更なる実施の形態に従った三極型の中電圧ケーブルの一例を示す断面図である。
【図4】その構造を明らかにするよう、段内の部分を除去したある長さの単極型の中電圧ケーブルの一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の方法を実施するのに適した生産ラインを示す側面図である。
【図6】ドローダウン比(DDR)と剥離力(PF)との間の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの製造方法において、
(a)少なくとも1つの導電体を押出成形機まで搬送するステップと、
(b)前記少なくとも1つの導電体の半径方向外方にて絶縁被覆層を押出し成形するステップと、
(c)少なくとも1つの接着剤被覆層を半径方向外方の位置にて支承する金属テープを前記押出し成形した絶縁被覆層の回りにて長手方向に折り重ねるステップと、
(d)少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える少なくとも1つの連続的な被覆層を前記折り重ねた金属テープの回りにて且つ該折り重ねた金属テープと接触する状態にて押出し成形するステップと
を備え、
前記ステップ(d)は、2.5以下のドローダウン比にて実行される、ケーブルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ステップ(d)は、1.2ないし2.0の範囲のドローダウン比にて実行される、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記ステップ(d)は、220℃ないし300℃の範囲の温度にて実行される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記ステップ(d)は、230℃ないし270℃の範囲の温度にて実行される、方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つの項に記載の方法において、金属テープを折り重ねる前記ステップ(c)は、前記金属テープの端縁を重ね合わせるステップを備える、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、金属テープを折り重ねる前記ステップ(c)は、前記金属テープの重なり合う端縁を接着する追加的なステップを備える、方法。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つの項に記載の方法において、前記金属テープは、半径方向内方の位置にて少なくとも1つの接着剤被覆層を支承する、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、膨張重合系材料で出来た少なくとも1つの被覆層を前記金属テープに対する半径方向内方位置にて施す更なるステップが実行される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、膨張重合系材料で出来た前記被覆層は押出し成形により施される、方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1つの項に記載の方法において、絶縁被覆層は、少なくとも1つの架橋結合したエチレン/プロピレン(EPR)又はエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)エラストマー的共重合体を備える、方法。
【請求項11】
請求項1ないし9の何れか1つの項に記載の方法において、絶縁被覆層は、ポリオレフィン、異なるオレフィンの共重合体、オレフィンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体、ポリエステル、ポリアセテート、セルロースポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミン又はそれらの混合体から選ばれた、少なくとも1つの架橋結合し又は非架橋結合ポリオレフィン系重合系材料を備える、方法。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1つの項に記載の方法において、金属テープは、アルミニウム、アルミニウム合金、合金クラッドアルミニウム、銅、青銅、スチール、無錫スチール、ブリキスチール、アルミニウム被覆スチール、ステンレススチール、銅−クラッドステンレススチール、ターンプレートスチール、亜鉛めっきスチール、クロム又はクロム処理スチール、鉛、マグネシウム、錫、又はそれらの混合体で出来ているものである、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、金属テープはアルミニウムで出来ている、方法。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか1つの項に記載の方法において、金属テープは、0.05mmないし1.0mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、金属テープは、0.1mmないし0.5mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1つの項に記載の方法において、接着剤被覆層は、エチレン又はプロピレンとエチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとの少なくとも1つの共重合体を備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、エチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとエチレン又はプロピレンとの共重合体は、エチレン系不飽和カルボン酸の全コポリマー重量に対して重量比にて1%ないし30%のエチレン又はプロピレンの主要な部分及び少量の部分を有する共重合体から選ばれる、方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の方法において、エチレン系不飽和カルボン酸は、モノ塩基酸及びポリ塩基酸、酸無水化物及びポリ塩基酸の部分エステルを含み、また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル酸マレイン酸塩、エチレングリコロールモノフェニルエーテル酸マレイン酸塩、又はそれらの混合体である、方法。
【請求項19】
請求項16ないし18の何れか1つの項に記載の方法において、エチレン系不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1つのコモノマーとエチレン又はプロピレンとの共重合体は、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体又はエチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体である、方法。
【請求項20】
請求項1ないし19の何れか1つの項に記載の方法において、接着剤被覆層は、0.01mmないし0.1mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、接着剤被覆層は、0.02mmないし0.08mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項22】
請求項1ないし21の何れか1つの項に記載の方法において、ポリアミド又はその共重合体は、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような少なくとも1つのアミノ酸、又はカプロラクタム、エナントラクタム(oenantholactam)、ラウリルラクタムのような少なくとも1つのラクタム、又はヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンのような、ジアミンの少なくとも1つの塩又はジアミンと、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸のような少なくとも1つの二塩基酸との混合体;又はこれら全てのモノマーの混合体の凝縮製品から選ばれる、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、ポリアミド又はその共重合体は、ナイロン6、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12又はそれらの混合体である、方法。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の方法において、ポリアミド又はその共重合体は、少なくとも1つのポリオレフィンとのブレンドにて使用される、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、ポリオレフィンは、
これらの製品は、無水マレイン酸のような不飽和カルボン酸無水物、又はメタクリル酸グリシジル又はその混合体のような不飽和エポキシドにて選択的にグラフトされる、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−オレフィンとエチレンと、
(i)不飽和カルボン酸、その塩又はそのエステル、(ii)飽和カルボン酸のビニルエステル;(iii)不飽和ジカルボン酸、その塩、そのエステル、その半エステル、又はその無水化物;(iv)不飽和エポキシドから選ばれた少なくとも1つの製品とエチレンとの共重合体であって、不飽和ジカルボン酸無水化物又は不飽和エポキシドにて選択的にグラフトされた前記エチレンの共重合体と、
選択的にマレイン化したスチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)と又はそれらのブレンドとから選ばれる、方法。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の方法において、ポリアミド又はその共重合体と少なくとも1つのポリオレフィンとのブレンドは、
その製品の全てが無水マレイン酸又はグリシジルメタクリル酸塩によりグラフトされた、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体;
無水マレイン酸がグラフトされ又は共重合化された、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体;
無水マレイン酸がグラフトされ又は共重合化された、エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体;
無水マレイン酸がグリシジル(メタ)アクリレートにて置換された前記2つの共重合体;
エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体及びそれらの塩;
これらのポリマーはアミンと反応する部分を有する製品にてグラフトされた、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−プロピレン共重合体であって、次に、このグラフトした共重合体は単一のアミン端末基を有するポリアミド又はポリアミドオリゴマーにて凝縮された、前記ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−プロピレン共重合体から選ばれた少なくとも1つの相溶化剤を更に備える、方法。
【請求項27】
請求項24又は25に記載の方法において、ポリアミド又はその共重合体と少なくとも1つのポリオレフィンとのブレンドは、
重量比にて55部分ないし重量比にて95部分のポリアミドと、
重量比にて5部分ないし重量比にて45部分のポリオレフィンとを備える、方法。
【請求項28】
請求項1ないし27の何れか1つの項に記載の方法において、連続的な被覆層は、0.5mmないし3mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、連続的な被覆層は、0.8mmないし2.5mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項30】
請求項8又は9に記載の方法において、膨張重合系材料で出来た被覆層は、ポリオレフィン、異なるオレフィンの共重合体、オレフィンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、尿素樹脂、又はそれらの混合体から選ばれる少なくとも1つの膨張可能なポリマーを備える、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記膨張可能なポリマーは、
(i)不飽和エステルの量が重量比にて5%ないし重量比にて80%の範囲にある、酢酸ビニル又は酢酸ブチルのようなエチレン系不飽和エステルとエチレンとの共重合体;
(ii)次の組成、すなわち35%ないし90%モルのエチレン、10%ないし65%モルのα−オレフィン、0%ないし10%モルのジエンを有する、少なくとも1つのC−C12α−オレフィン、及び選択的にジエンとエチレンとのエラストマー的共重合体;
(iii)0.86g/cmないし0.90g/cmの密度を有し、また、次の組成すなわち75%ないし97%モルのエチレン;3%ないし25%モルのα−オレフィン;0%ないし5%モルのジエンを有する少なくとも1つのC−C12α−オレフィン、及び選択的にジエンとエチレンとの共重合体;
(iv)エチレン/C−C12α−オレフィン共重合体にて変性させたポリプロピレンであって、ポリプロピレンとエチレン/C−C12α−オレフィン共重合体との間の重量比が90/10ないし10/90の範囲にある前記変性ポリプロピレンから選ばれる、方法。
【請求項32】
ケーブルにおいて、
少なくとも1つの導電体と、
前記少なくとも1つの導電体の回りの少なくとも1つの絶縁被覆層と、
前記少なくとも1つの絶縁導電体の回りにて長手方向に折り重ねられた少なくとも1つの金属テープであって、その外方向を向く面にて少なくとも1つの接着剤被覆層を支承する前記少なくとも1つの金属テープと、
前記少なくとも1つの接着剤被覆層に対して半径方向外方位置にて少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える少なくとも1つの連続的な被覆層であって、前記少なくとも1つの接着剤被覆層と接触している前記少なくとも1つの連続的な被覆層とを備える、ケーブル。
【請求項33】
請求項32に記載のケーブルにおいて、導電体は銅又はアルミニウムで出来ている、ケーブル。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のケーブルにおいて、絶縁被覆層は請求項10又は11に記載したものである、ケーブル。
【請求項35】
請求項32ないし34の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、長手方向に折り重ねた金属テープは重なり合う端縁を有する、ケーブル。
【請求項36】
請求項32ないし35の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、金属テープは請求項12ないし15の何れか1つの項に記載したものである、ケーブル。
【請求項37】
請求項32ないし36の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、接着剤被覆層は請求項16ないし21の何れか1つの項に記載したものである、ケーブル。
【請求項38】
請求項32ないし37の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、少なくとも1つのポリアミド又はその共重合体を備える連続的な被覆層は請求項22ないし29の何れか1つの項に記載したものである、ケーブル。
【請求項39】
請求項32ないし38の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、前記少なくとも1つの金属テープに対して半径方向内方位置にて少なくとも1つの更なる接着剤被覆層を備え、前記少なくとも1つの接着剤被覆層は前記少なくとも1つの金属テープと接触している、ケーブル。
【請求項40】
請求項32ないし39の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、前記少なくとも1つの金属テープに対する半径方向内方位置にて、膨張重合系材料で出来た少なくとも1つの被覆層を更に備える、ケーブル。
【請求項41】
請求項40に記載のケーブルにおいて、膨張重合系材料で出来た被覆層は、請求項30又は31に記載したものである、ケーブル。
【請求項42】
請求項32ないし41の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、
前記絶縁被覆層に対する半径方向内方の半導性被覆層と、
前記絶縁被覆層に対する半径方向外方の半導性被覆層と、を更に備える、ケーブル。
【請求項43】
請求項42に記載のケーブルにおいて、ら旋状に巻いた導電性ワイヤー又はテープから成る網は、前記絶縁被覆層に対し半径方向外側にて半導性被覆層の回りに配置される、ケーブル。
【請求項44】
請求項32ないし43の何れか1つの項に記載のケーブルにおいて、前記に記載した被覆層に加えて、外部保護シースの機能を有する少なくとも1つの被覆層が存在する、ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−535111(P2007−535111A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510665(P2007−510665)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/011259
【国際公開番号】WO2005/114677
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506006153)プリスミアン・カビ・エ・システミ・エネルジア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (10)
【Fターム(参考)】