説明

外部固定具

骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を固定及び/又は修復するための骨固定具。骨固定具は、特に、(1)中手首骨、あるいは他の手の骨に取り付けられるように形状構成された遠位取付部材、(2)橈骨、尺骨 、あるいは他の腕の骨に取り付けられるように形状構成された近位取付部材、(3))遠位取付部材に固定されるように形状構成された遠位部材、(4)近位取付部材に固定されるように形状構成された近位部材、及び/又は(5)遠位部材の近位部材に対する固定、並びに屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成された、近位部材と遠位部材を連結するカップリングを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2003年3月12日に出願された米国仮特許出願第60/454,217号に基づき、かつ米国特許法第119条下での利益を主張する、2003年12月10日に出願された米国特許出願第10/734,017号の継続出願である。これらの優先権出願の両方はあらゆる目的のためにそれら全体の内容を参考文献として本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、整形外科学、より詳細には、遠位橈骨及び手関節の骨折を修復するための外部骨固定具に関する。
【背景技術】
【0003】
外部骨固定具は骨折部位における骨部片の整合を再定立し、及び治療を促進させるために骨折を減じ且つ安定化するために開発された。こうした固定具は一般的に骨折の反対両側の骨に取り付けられる。
【0004】
外部固定具は自由度数、すなわち、これらが提供する関節と、これらの関節の、機械的及び幾何学的の両方の、相対的独立と、において異なるものとし得る。長骨の中心近くの骨折を治療するように構成された固定具は、通常、相対的に幾つかの自由度である関節を具備する。これに対して、ジョイント近くの骨折を治療するように構成された固定具は、通常、より多くの自由度を与える。骨折部とジョイントとの間の骨折した骨にピンを配置する余地があまりにもない箇所では、これらの更なる自由度は重要である。何故なら、整合は、骨折部から離れたジョイントの側に配置されたピンを使用して定立しなければならないからである。手首関節のように回転、曲げ、及び外転することができるジョイント近くの骨折を治療するためには、固定具は骨格ジョイントの柔軟性に合致する幾つかの等価な調節を与えるべきである。その結果、外科医はジョイントによって伝えられる力を使用して適切な骨折部整合を定立することができる。
【0005】
最近の固定具は、様々な種類の、多数の関節を与える傾向がある。ボール・ジョイントは最も普通の関節である。ボール・ジョイントは1つの回転及び2つの回動自由度を与えられる。これらの3つの自由度は単一の止めねじ又は他の錠止機構を同時に使用して固定し得る。残念ながら、ボール・ジョイントは、他の自由度で動かすように緩められずに1自由度のみの運動に対して緩めることはできない。したがって、外科医は、他の回動及び回転設定に影響を与える変更を潜在的に導くことなく、それを一方向に少量だけ回動させるためにボール・ジョイントを僅かに緩めることはできない。
【0006】
これらの制限に取り組むために、幾つかの固定具は、必要な柔軟性を与えるために独立した関節の組合せを代わりに信頼して、ボール・ジョイントを削除する。こうしたシステムの利益は、各自由度が1自由度毎に機械的に独立しているということである。したがって、外科医は、他の関節の設定に影響を与えずに固定具内で単一の関節の位置を調節することができる。残念ながら、骨折部サイトにおける単数又は複数の骨の骨折した端部の所与の幾何学的再調整は何れか単一の関節に対応し得ない。代わりに、適切な再調整は、外科医が幾つかの別々の関節を調節して、独立した関節の利益を減じるか又は削除することを要し得る。さらにまた、1つの関節の運動は、別の関節によって以前に定立された骨端部の整合を変更し得る。
【0007】
単純なピボット又はスライドのような単一の自由度のみを有する関節は、通常、(1)自由、及び(2)ギヤ駆動という2つの基本的調節技術を含む。自由な関節は、或るタイプの錠止が選択された設定で関節を固定するために加えられるまで自由に調節可能とし得る。錠止を緩めることは、外科医が結合された部材に力を加える時に関節を相対的に自由に動かすことを可能にする。これに対して、ウォーギヤ及びラック又は類似の構造物のような調節機構の制御下でギヤ駆動関節が動き、これは機械的利点を与える。例えば、ウォームギヤを回して該ウォームギヤの回転に従って関節を斬進的に動かす。ギヤ駆動関節は、一般的に、微調整をする時に外科医により高い精度及び制御を与えるが、迅速な全体補正を妨げる。自由とギヤ駆動特性の両方を有する関節を提供することは可能である。しかしながら、関節の自由運動を許容するために、ギヤ減速機によって提供された機械的利点はむしろ最小でなければならない。残念ながら、僅かな機械的利点は調節の精度を減じ、ギヤ駆動装置が第1位置で使用されるであろうまさにその目的を無効にする。
【0008】
殆どの固定具は、骨折の反対側にあるピン間で長手方向間隔の制御を可能にするように、延伸可能/伸縮可能な関節を含む。このタイプの並進自由度は、様々な寸法の個々に合致し、並びに必要に応じて骨折部を引っ張るために使用することもできる。さらに、特定の骨折のために構成されたものでない、一般的目的の固定具に対して、適切なピン配置を許容するために骨折部の両側にどのような間隔が必要であるかを作り出すために並進自由度を使用することができる。
【0009】
固定具は一般的目的又は骨折部特定用途のために構成し得る。一般目的の固定具は、通常、多くの異なるタイプの骨折に合致するためにかなりの柔軟性を有して構成される。これに比して、骨折部特定の固定具は特定の骨折で使用するために少ない自由度で構成される。これらの関節は特定の骨折部の移動を補正するため、及びジョイント位置を変えるために、骨折部の両側にピン配置を可能にするためにジョイントに極めて近接した骨折のために特別に誂え得る。ジョイントの運動に対応する関節はジョイントを快適な位置に設定し、並びに骨折部位における骨の両端を整合させるためにも使用し得る。
【0010】
固定具は、拡げた手の落下物から、通常、生じる遠位橈骨の骨折であるコリース骨折(Colles' fractures)を含む様々な骨折を治療するのに使用し得る。コリース骨折では、骨折線は、通常、橈骨の遠位頭部に極めて近く、空間不足、この領域の腱及び神経の数、及び/又は典型的に貧弱な骨質により、橈骨のピンを骨折の遠位側に取り付けることが難しいか又は不可能である。したがって、こうした骨折は、通常、中間骨に設置された第1対のピン及び骨折の近位側の橈骨に設置された第2対のピンを使用して減じられる。腱及び神経に対するダメージを減じるため、橈骨ピンは、通常、橈骨の4分の3、すなわち、橈骨の遠位半体の近位半体に設置される。ピンは手首関節ジョイントの反対側に設置されるから、固定具は手首関節ジョイントによって伝えられる力を使用して骨折を減じるために十分に有機的に構成しなければならない。
【0011】
手首関節ジョイントは手が前腕に対して3自由度で動くことを可能にする。第1に、手は回外及び回内、すなわち、前腕の長手方向軸線の回りに回転して動くことができる。第2に、手は内転及び外転、すなわち、手のひらに直角な軸線回りに回動して動くことができる。最後に、手は屈曲及び延伸、すなわち手のひらの平面にあり、かつ前腕の長手方向軸線に直角な軸線回りに回動して動くことができる。
【0012】
殆どの手首関節固定具は、内部で骨が多くの小部片に壊れる、複雑骨折を安定化するために定位置に置かれる。これらのケースでは、固定具は壊れた骨の適切な長さを達成及び/又は維持するために使用し得る。外部手首関節固定具は、手首関節ジョイントを貫通して延びる腱及び神経に干渉することなく手首関節に大きな引張を加えることができる場合、こうしたケースにおける重要な利点を一般的に与える。
【0013】
残念ながら、外部固定具で治療した骨折は治療するのに長い時間を取り得る。例えば、手首関節の骨折の場合、外部固定具は2週間の間、定位置に残し得るものであり、損傷した手首関節の強度を取り戻すための内科医の治療が1年まで引き続く。特に治療の後者の間に、結合部に或る程度の可動性を許容することが好ましい。その結果、手首関節は曲げることができ、リハビリテーションの必要性を減じて回復時間を短くする。
【0014】
1つ以上のボール・ジョイントを組み込んだ手首関節固定具は以前から詳しく説明されてきた。ここで、手首関節固定具は、ボール・ジョイント静的固定のための位置内に錠止し得るか、あるいは手首関節の制限された運動を可能にするために解放される。残念ながら、こうした手首関節固定具は、通常、以下に説明するような幾つかの欠点を有する。
【0015】
第1に、ボール・ジョイント解放時に骨折の引張りを減じるために、ボールの中心は手首関節の中心、通常、月状骨と小頭骨との間の触診可能な溝、に正確に整合しなければならない。しかしながら、固定具の初期の取付は複雑骨折に対しては複雑となり得る。何故なら、手首関節はしばしば膨らんでおり、月状骨と小頭骨の結合部の位置を同定することが難しいためである。不適切なボール・ジョイントの整合は、結局、骨折を破壊させ得るものであり、治療プロセスを延長させ、及び患者に対する不快さを潜在的に増大させる。
【0016】
第2に、以前、使用された手首関節固定具で採用したボール・ジョイントは上述したような、運動の自由度が斬進的に増加するこが許されていない。錠止されると、ボール・ジョイントは不動である。しかしながら、ボール・ジョイントが錠止されていないと、90%までの範囲のボール・ジョイントの運動は突然取り戻し得る。完全な運動の突然の戻りは弱まった手首関節を損傷させ得るか、あるいは少なくとも弱まった手首関節の回復を緩慢にし得る。
【0017】
第3に、ボール・ジョイントを組み込んだ手首関節固定具は回復の間に尺骨偏倚(手の外転)を許容することはできない。再び、この運動は固定具が除去されるまで患者には十分に役立たない。この点で、手首関節の十分な可動性が回復すると、潜在的な不快さ又は弱まった結合部への損傷に帰着する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、遠位橈骨の骨折を不動且つ引っ張るが、手の回外運動及び回内運動、手の屈曲及び延伸、及び或る程度の尺骨偏倚を含む、手首関節の自由度の斬進的且つ調節可能な増加を与えることができる手首関節固定具に対する需要がある。好ましい手首関節固定具は手首関節ジョイントとの整合する柔軟性を許容し、より流線形をしており、かつ少ない取付プロセスを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を固定及び/又は修復するための骨固定具を提供する。骨固定具は、特に、(1)中手首骨、あるいは他の手の骨に取り付けられるるように形状構成された遠位取付部材、(2)橈骨、尺骨 、あるいは他の腕の骨に取り付けられるように形状構成された近位取付部材、(3)遠位取付部材に固定されるように形状構成された遠位部材、(4)近位取付部材に固定されるように形状構成された近位部材、及び/又は(5)遠位部材の近位部材に対する固定、並びに屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成された、近位部材と遠位部材を連結するカップリングを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を固定及び/又は修復するための外部骨固定具を含むシステムを提供する。骨固定具は、とりわけ、(1)中手首骨、あるいは他の手の骨に取り付けられるように形状構成された遠位取付部材、(2)橈骨、尺骨 、あるいは他の腕の骨に取り付けられるように形状構成された近位取付部材、(3))遠位取付部材に固定されるように形状構成された遠位部材、(4)近位取付部材に固定されるように形状構成された近位部材、及び/又は(5)遠位部材の近位部材に対する固定、並びに屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成された、近位部材と遠位部材を連結するカップリングを含み得る。
【0021】
本発明により提供される骨固定具は、外科医が遠位橈骨骨折をより正確且つ迅速に減じることを可能にする一方で、ジョイントの可撓性を改善することによってより迅速なリハビリテーション及び患者の快適性を容易にする。特に、本願明細書に記載された骨固定具は手首関節の可撓性及び取付ピンの不正確な配置に合致するに十分な可動範囲を有する一方で、依然として骨折を減じるに十分な移動を保持する。さらに、骨固定具の設置は、これらの骨固定具が自己整合するために、簡易化し得る。したがって、手首関節と固定具の可撓性部分を正確に整合させることはもはや必要ない。
【0022】
本発明により提供される、(I)第1例示実施形態、(II)第2例示実施形態、及び、特に、(III)これらの実施形態の設置及び用途を含む、これら及び他の態様を以下に説明する。各実施形態を、少なくとも、(A)近位部材、(B)カップリング、及び(C)遠位部材を具備することに関して記載する。セクションIは図1及び図2を特に参照して説明し、セクションIIはは図3〜図7を特に参照して説明し、及びセクションIIIは図8〜図11を特に参照して説明する。
【0023】
I.第1例示実施形態
図1及び図2は、本発明の態様による、骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を固定及び/又は修復するための外部骨固定具の第1例示実施形態を示す。骨固定具は、とりわけ、(1)中手首骨、あるいは他の手の骨に取り付けられるように形状構成された遠位取付部材、(2)橈骨、尺骨 、あるいは他の腕の骨に取り付けられるように形状構成された近位取付部材、(3))遠位取付部材に固定されるように形状構成された遠位部材、(4)近位取付部材に固定されるように形状構成された近位部材、及び/又は(5)遠位部材の近位部材に対する固定、並びに屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成された、近位部材と遠位部材を連結するカップリングを含み得る。一般的に、取付要素は、特に、(経皮性の)ピン、クランプ、及び/又はブラケットを含む、骨固定具を対応する骨に取り付けるための、単数又は複数の何れかの適切な機構を備える。カップリングは、遠位部材(及び協働する中手首骨)を近位部材(及び協働する橈骨)に対して固定するため、並びに遠位部材の近位部材に対する屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするための、何れか適切な単数又は複数の機構を備える。
【0024】
I.A.近位部材
近位部材18は、近位取付ブロック24を貫通して延在する長手方向に直角な開口22a、22bのような何れかの適切な機構によってピン14a、14b(あるいは他の適切な近位取付部材)に取り付け得る。長手方向に直角な開口22a、22bの各々は協働する止めねじ26及び/又は半径方向ピン14a、14bを固定する他の保持機構を含み得る。遠位開口22bの上側部分は、続いて、中間ブロック30と相互作用し得るものであり、かつピボット・ガイドに亘って嵌合且つ該ガイドの周りに回動する、ピボット・ガイド28によって包囲し得る。
【0025】
ピン取付ブロック24の遠位端は、中間ブロック30内で合致するピボット・スロット33に受容された弓形状リップ32を含み得る。ピボット・スロット内のリップ32の相互作用は、中間ブロック30をピン取付ブロック24に固定する支援をし得る。さらにまた、ピン取付ブロック24の近位端に固定され、かつ突出する棚部36に亘って延在する保持プレート34は、さらに、中間ブロック30をピン取付ブロック24に固定し得る。
【0026】
中間ブロック30の近位端は、棚36の端部上に形成された弓形状ラック38を含み得る。弓形状ラック38はウォームギヤーと協働して、中間ブロック30に回動可能に連結された、ピン取付ブロック24の位置を制御する。ウォームギヤー40は、ピン取付ブロック24内に形成された1対のU字形状ガイド44に載る各端部の近くの支持面42を含む。各端部でのフレアが付されたヘッド46は、ウォームギヤー40がピン取付ブロック24内で側部から側部に移動するのを防ぐ。
【0027】
固定具は、相対的に小さいか又は大きな前腕を有し得る様々なサイズの患者に使用し得る。特に、近位部材18の入れ子式作用と、ボール・ジョイント48の回動作用と、の組合せは、近位部材と遠位部材との間の適切な間隔及び角度を作ることを可能にする。近位部材18は上述した細長中間ブロック30、及び自身の遠位端でボール52を有するボール・ロッド50を含む。カップリング20は、ボール・ジョイント・キャップ56を具備するボール52を受容且つ保持するように形状構成された、外側にねじが切られた壁54を具備する半球形カップ53を備えるカップリング・ブラケット70を含む。ボール・ジョイント・カップ56は内側にねじが切られ、かつ外側にねじが切られた壁54に亘ってねじで留められている。キャップ56がカップ53上に完全に着座する場合、ボール・ロッド50が、ボール52の中心における頂点と、遠位部材16の軸線から約20°〜30°の側部角度と、を有する円錐内の何れの場所に位置付けることを可能にしながら、ボール・ジョイント48はより相対的に移動すべきである。ボール・ロッド50は、ボール・ジョイント48内に、好ましくは制限せずにその軸線回りで回転することもできる。止めねじ57はカップ53の底部内に遠位部材16の一部を貫通して延在する。止めねじ57の軸線は、カップ53によって画定された球の中心と交差するように整合される。止めねじ57は、十分に締め付けられた場合にはボール・ジョイント48の動きに或る抵抗を作り出す一方で、単に軽く締め付けられた場合には依然として或る動きを可能にするように、ボール・ジョイント48の配向を固定するために使用し得る。
【0028】
ボール52は、中間ブロック30内で長手方向穴60に入れ子式に係合するシャフト58に取り付けられて中間組立体18の長さを調節可能にする。穴60は、穴に平行且つ該穴上に開放する細長開口62によって中間ブロック30の上側表面からアクセス可能である。シャフト58の近位端に取り付けられた止めねじ64は、開口62内で摺動し、所望時に定位置にボール・ロッド50を錠止する働きをする。止めねじ64は、ボール・ロッド50が穴60内で回転するのも防ぐ。組立体は、例えば、中間ブロック30内にグリップ66を組み込むことによって穴60全体に亘って外科医の指を収容するように、組立、設置、及び/又は調節の間に保持されるように形状構成し得る。
【0029】
I.B.カップリング
カップリング20は、カップリング・ブラケット70、ボール52を受容するように形状構成された半球状カップ53、及び少なくとも極めて曲げ易く、続けて、遠位部材16に連結される可撓性ワイヤー72を含む。遠位部材16は、少なくとも遠位部材の一部がカップリング・ブラケット70のアーム間に位置するようにワイヤー72に配置される。カップリング20は複数のスペーサー74及び錠止ディスク76(あるいは他の錠止機構)を含み得る。スペーサー74は、カップリング・ブラケットと遠位部材との間のワイヤー72に配置し得る。遠位部材とカップリング・ブラケットとの間で圧縮されなかったならば、スペーサー74はワイヤー72に沿って自由に摺動するように寸法づけられる。こうした圧縮は、通常、遠位部材、及び、従って、錠止ディスク76によって、ワイヤー72にも配置されたスペーサーに加えられる。ワイヤー、スペーサー、及び/又はカップリングの他の構成要素の機能は、より一般的には、カップリングの可撓性を制御可能に変更又は調節することができる何れかの機構によって、個々又は全体的に増加及び/又は交換し得る。
【0030】
ワイヤー72は、通常、少なくとも実質的に曲げ易いものである。ワイヤー72の可撓性は寸法、横断面積、及び/又はワイヤーの特性を変更することによって調節し得る。その結果、一方向における曲げ特性は別方向における曲げ特性とは異なるものとし得る。幾つかの実施形態では、”超弾性(superelastic)”ワイヤーを使用することによって(例えば、実質的に超弾性状態を有する金属合金を含むワイヤー)、所望の程度の可撓性を達成し得るここで、”超弾性”は、ワイヤーが極端に高い弾性限界を有し、永久変形無しに、大量の屈曲(曲げ)、及び/又は繰り返し屈曲を可能にすることを意味する。例示的超弾性金属合金は、ニッケル(55重量%)及びチタニウムのほぼ均等な混合物を含有する金属間材料族である、ニチノール(ニッケル・チタニウム・海軍・兵器・研究所 (Nlckel Tltanium Naval Ordnance Laboratory)を含む。ニチノール(及び他の超弾性金属は可能にする)の特性は少量の他の成分を含めることによって調節又は”チューニング(tuned)”し得る。
【0031】
スペーサー74は、該スペーサーの長手方向の圧力がワイヤーの可撓性(すなわち、ワイヤーの撓み易さ)を阻止するように、ワイヤー72上に配置され、かつ形状構成される。この阻止は部分的又は完全なものとし得る。スペーサーは何れか適切な形状又は形状構成を有し得る。例えば、スペーサー74は、特に、実質的に丸、円筒、正方形、あるいは矩形とし得る。さらに、スペーサー74は、平ら、かつ、ボール−ソケット、円錐/逆円錐、及び/又は捕捉的幾何形状を含むスペーサーとスペーサーとの間隔を有し得る。好ましいスペーサー幾何形状は圧縮下でのカップリングの固定を向上させる。カップリング20に1つ以上のスペーサーを利用することは好ましいが、スペーサーの数は同様に可変である。スペーサー74は、遠位部材16を除去する必要無しに1つ以上のスペーサーがワイヤー72から取り除き得ることにより手の内転を可能にするように形状構成し得る。
【0032】
錠止ディスク76の位置は、ワイヤー72に対する錠止ディスクの止めねじ77をしっかりと締めることによって調節及び次いで錠止し得る。錠止ディスクは、遠位部材に対する並進自由度を徐々に増加させるために、ワイヤー72に沿って漸進的に位置付け得る。別様に、あるいは加えて、ワイヤー72は、錠止リングのワイヤーに沿う位置が錠止リングを遠位部材に近接又は離れるようにねじを締め付けることによって調節し得る、ねじが切られた表面を含み得る。柔軟性の相対的増加は、例えば、錠止リングを単位時間当り所定量(例えば、一日あたり、2分の1又は1回転)だけ回転させることによって定量化し得る。
【0033】
カップリング・ブラケット70は、ブラケット・ねじ80a、80bを更に含む、アーム78a、78bを含み得る。これらのブラケット・ねじは、遠位部材16に対して進める時、遠位部材を固定する働きをし得る。ブラケット・ねじは即座の調節のために形状構成し得る、その結果、患者は固定具の柔軟性を暫進的に調節し得る。別様に、あるいは加えて、ブラケット・ねじは、患者が内科医の支援無しにブラケット・ねじの張力を調節するのを妨げる錠止機構を組み込み得る。
【0034】
I.C.遠位部材
遠位部材16は、遠位ピン取付ブロック84を貫通して延材する、長手方向に直角な開口82a、82bのような、何れか適切な機構によってピン12a、12bに取り付け得る。長手方向に直角な開口82a、82bの各々は協働する止めねじ85a、85b及び/又は遠位ピン12a、12bを固定する他の保持機構を含み得る。幾つかの実施形態では、遠位部材16は、遠位ピンと遠位部材との間の角度の調節を可能にする、遠位ピン12a、12bを固定するための調節可能な組立体を含み得る。この組立体は、例えば、遠位ピンを受容する両端部に形成される長手方向に直角な溝が形成された固締プレートを含み得る。ここで、固締プレートは、遠位ピンを捕捉する、ねじ又は他の留め機構によって、往復動棚に対して付勢される。結果として生じるピン・クランプ組立体は、遠位ブロックの長さに沿った長手方向の移動及び/又は固締プレートの平面内でのピボットの再配向のために形状構成し得る。
【0035】
遠位ブロック84は、(1)ワイヤー72を受容するために、長手方向に直角な開口に直交する長手方向の開口86と、(2)カップリング・ブラケット70の腕78a、78bの内側表面に面するように構成された2つの湾曲した面88a、88bと、を含む様々な他の構造的及び機能的特徴を含み得る。長手方向の開口86及び長手方向に直角な開口82a、82bは、遠位ピン12a、12b及びワイヤー72が遠位ブロック84内で交差しないように、或る程度、偏倚させ得る。
【0036】
II.第2例示実施形態
図3〜図7は、本発明の態様に従う、外部骨固定具110の第2例示実施形態を示す。骨固定具は、(1)中手首骨、あるいは他の手の骨に取り付けられるるように形状構成されたピン12a、12bのような少なくとも1つの遠位取付部材、(2)橈骨、尺骨 、あるいは他の腕の骨に取り付けられるように形状構成されたピン14a、14bのような少なくとも1つの近位取付部材、(3)単数又は複数の遠位取付部材(12a、12b)に固定されるように(あるいは固定可能に)形状構成された遠位部材116、(4)単数又は複数の近位取付部材(14a、14b)に固定されるように(あるいは固定可能に)形状構成された近位部材118、及び(5)遠位部材と近位部材を連結するカップリング120を、含み得る。取付要素は、前述したように、取付要素12a、12b及び14a、14bに対応する。カップリング120は、一般的に、遠位部材(及び協働する中手首骨)の近位部材(及び協働する橈骨)に対する固定を可能にし、並びに、遠位部材の近位部材に対する選択的に調節可能な屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成される。
【0037】
II.A.近位部材
近接部材118は、近位ピン取付ブロック124を貫通して延在する、長手方向に直角な開口122a、122bのような何れか適切な機構によってピン14a、b(あるいは他の適切な近位取付部材)に取り付け得る。長手方向に直角な開口122a、122bの各々は、協働する止めねじ126及び/又は半径方向ピン114a、114bを固定する他の保持機構を含み得る。
【0038】
外部固定具10は、近位部材18の伸縮作用及び/又はボール・ジョイント48の回動作用によって様々な患者に取り付け得る。外部固定具110は、同様に、調節可能な部材130によって近位部材と遠位部材との間に適切な空間及び角度を作り出すために調節し得る。図4に示すように、調節可能な部材130は、遠位部材と近位部材との間の頂角を調節するために、回転軸線132の回りに回転し得る。所望の角度を定める際、部材130の回転はねじ134に引っ張ることによって錠止し得る。ここで、ねじ134は回転軸線132と一致する。部材130の回転は、特に、偏倚軸線ねじ又はボルトを含む、多数の等価な機構の何れかによって調節又は錠止し得る。調整可能な部材は、軸線132の回りの回転の増分調節を可能にする機構を含み得る。
【0039】
固定具の全長、特に近位部材と遠位部材との間の距離は、例えば、図5に示す機構を含む何れか適切な態様で調節し得る。調節可能な部材130は長さ調節器136を含み得る。長さ調節器136は、調節可能部材130によって摺動可能に係合される細長部材138を含み得る。細長部材は、調節可能な部材の動きを制限し、及び、従って、細長部材上でピン取付ブロックの動きを制限するためのねじ142が係合し得る細長スロット140を含み得る。ねじ142は細長部材に係合し得るか、あるいは、例えば、細長部材の真下のナット(視認できず)のようなねじ用受容器に係合する細長部材を貫通し得る。一旦、固定具用の所望長さが得られると、近位部材の長さはねじ142の締め付けることによって錠止し得る。長さ調節器は、固定具の長さの増分調節を可能にする機構を含み得る。
【0040】
細長部材(及び/又はこの部材の他の構成要素及び/又は他の固定具)は、長さ、配向、及び/又は近位部材の柔軟性(及び/又は固定具の他の構成要素)を設定する支援をするための、参照マーキング143、及び/又は他のしるしを含み得る。これらのマーキングは、近位部材及び/又は固定具の絶対及び/又は相対長さを示すように選択された参照線、シンボル、及び/又は同種のものを含み得る。マーキングは、例えば、インク及び/又は転写マークのような表面の特徴、及び/又は、圧痕鋳造及び/又は固定具内への切込みのような構造的特徴とし得る。
【0041】
細長部材138は、次いで、長手方向に直角な移動アジャスター144によってカップリング120に取り付けられる。この実施形態では、図3、図6及び図7に示すように、第1及び第2ピボット点はねじ146及び148と合致し、かつ画定される箇所で、アジャスター144は近位部材とカップリングとの間に2つのピボット点を与える。ねじ146及び148は上側プレート150及び下側プレート152を貫通して延在する。これにより、近位部材118及び120は上側及び下側プレート間で固締し得る。第1ピボット点の回りの回転、第2ピボット点回りの回転、及び/又は、両方の組合せによって、遠位部材は、図6に示すように、近位部材に対して所望角度角で設置し得る。別様に、あるいは加えて、第2ピボット点回りの比例する反対回転と組み合わせた第1ピボット点回りの回転は、遠位部材が、図7に示すように、近位部材に対して長手方向に直角に移動するのを可能にし得る。アジャスター144は、ねじ146及び148を締め付け、上側及び下側プレート150及び152を定位置内に錠止することによって、所望の角度及び/又は長手方向に直角な移動の程度内に錠止し得る。別様のアジャスター機構は、例えば、錠止ねじが1つ以上のピボット点の回転軸線に直交する箇所に、別々のピボット及び錠止手段を含み得る。同様に、別様のアジャスター機構は、例えば、長手方向に直角なスライド、あるいは上述したように、特に、ユニバーサル・ジョイント又はボール・ジョイントを含む、回転及び長手方向に直角な移動の何れかの組合せを含み得る。アジャスター144は、近位部材とカップリングとの間の長手方向に直角な角度及び/又は長手方向に直角な移動の増分調節を可能にする機構を含み得る。
【0042】
II.Bカップリング
カップリング120は、調整可能なカップリング・ブラケット154と、遠位部材116に次いで連結される少なくとも極めて曲げ易いワイヤー156と、を含む。遠位部材116は、遠位部材の少なくとも一部がカップリング・ブラケット154の腕157a、157bの間に位置するように、ワイヤー156に配置し得る。カップリング120複数のスペーサー158と、錠止ディスク160のような錠止機構と、を含む。スペーサー158は、スペーサー74に関して上述したように、カップリング・ブラケットと遠位部材との間のワイヤー156上に配置し得るものであり、かつ遠位部材とカップリング・ブラケットとの間で圧縮されなければ、例えば、錠止ディスク160によって、ワイヤーに沿って自由に摺動するように寸法づけられる。
【0043】
ワイヤー156、スペーサー158、及び/又は錠止ディスク160は、少なくとも実質的に、ワイヤー72、スペーサー74、及び錠止ディスク76、のそれぞれに関し、このために記載した全ての実施形態及び変形例を含む、上述したようなものとし得る。
【0044】
ブラケット・アーム157a、157bはねじ162によって固定具に調節可能に連結される。その結果、固定具10のカップリング・ブラケットと比べて、各ブラケット・アームの位置は独立して調整し得る。従って、ブラケット・ポスト164a、164b間の空間は調節し得る。固定具は、ブラケット・アームのボルト170a、170bに係合する弓形状トラック168a、168bを含むカップリング・ブラケット・ガイド166を含む。ねじ162及びボルト170a、170bを緩めることによって所望のブラケット形状構成を得ることができる。従って、ねじ162及びボルト170a、170bをしっかりと締めることによって、ブラケット間隔及び配向は所望の形状構成に錠止し得る。特に、ブラケット間隔が、ブラケット・ポスト164a、164bが遠位部材にしっかりと接触するように選択される箇所では、遠位部材は不動にし得るものである、これにより、手首関節の実質的な屈曲及び/又は延伸を阻止する。しかしながら、弓形状トラック168a、168b及びボルト170a、170bを使用してブラケット・アーム間隔の増分調節をすることによって、患者は固定具の曲げ易さを斬進的に調節することができる。別様に、あるいは加えて、カップリング・ブラケットは、患者が内科医の助け無くしてブラケット・アーム間隔を調節することを防ぐ錠止機構を組み込み得る。1つのブラケット・アームのみの調節を可能にするカップリング120の能力は、固定具を、例えば、手首関節の延伸ではなく屈曲を可能にするように形状構成することを可能にする。弓形状トラック及び/又は固定具の協働は、特に屈曲及び/又は延伸を設定する支援をするために、参照マーキング171a、171b及び/又は他のしるしを含み得る。
【0045】
II.C.遠位部材
遠位部材116は、制限することなく、遠位部材に関して実質的に上述したように形状構成される。
【0046】
III.設置及び用途
本発明による固定具は、一般的に、何れかの適切な方法によって設置及び使用し得る。本願明細書に記載したような固定具の患者への取付は、通常、遠位ピン12a、12bを患者の中手首骨の1つに配置し、橈骨ピン14a、14bを隣接する橈骨に配置することによって始まる。これらのピンはドリルガイド、好ましくは2つの離隔配置された平行なガイド穴が形成された1つのドリルガイドによって設置し得るものである。こうしたドリルガイドは各穴内の2つのピンが適切な距離だけ互いに対して分離されることを保証しする一方で、互いに対して少なくとも実質的に平行であり、かつ骨の長手方向軸線に対して少なくとも実質的に直角であることを保証する支援をし得る。適切なピンは患者の骨に十分に挿入され、かつ該骨内に保持し得る何れかのピンを含み得る。好ましいピンは自己タッピングであり、その結果、これらのねじは骨にこれら自身のねじを切る。
【0047】
各ピン対のピン間の好ましい間隔は、他と関係なく、幾つかの競合する要因に依存し得る。例えば、ピンを互いにより近接して配置することは、ピン配置に要する切込みの寸法を減じ得るものであり、かつより小さな患者の処理を可能にする一方で、ピンを更に話して配置することは骨折を減少させるためにより良好な堅固さを与え得る。各対内の例示的なピンとピンとの間隔は、特に、約10〜40mm、約20〜30mm、あるいは約25mmとし得る。
【0048】
ピンが適切に設置された後で、固定具の残りの部分はピン12a、12b及び14a、14bに取り付け得る。取付を促進するために、固定具の長さ及び可撓性を制限する様々な止めねじ及び/又は他の機構の幾つか又は全てを緩めることが望ましい。例えば、全てのこうした関節を緩めた状態で、固定具10及び110は全く容易に曲がり、こうした取付ピンにこれらの固定具を設置するタスクを比較的迅速且つ容易にする。一旦、固定具がピンに取り付けられると、遠位部材と近位部材の相対位置は、患者の手が骨折の減少及び固定のために適切に配向されるように、調整し得る。例えば、図8及び図9を参照のこと。
【0049】
骨固定具の長さ及び配向、及びその構成要素は、設置中に設定、及び設置後に調節し得る。例えば、固定具10の長さ(及び協働する骨折の伸延)は、中間ブロック30から突出する入れ子式部材50の延伸部を調節することによって設定し得る。また、固定器110の長さは細長部材138の調節部材130の位置を調節することによって設定し得る。同様に、固定具10に関して、遠位部材の近位部材の配向(及び橈骨/尺骨ひび整合)は、図8及び図9にそれぞれ示すように、外転角度68及び/又は延伸角度80を調節するためにボール・ジョイントを使用して設定し得る。あるいは、固定具110に関しては、図4〜図7に示すように、調節可能な部材130の回転、及び側方角度/移動調節器144の形状構成によって設定し得る。 内転角度は好ましくは約10〜20°であり、より好ましくは約14°である。外転角度は好ましくは約10〜20°であり、より好ましくは約15°である。骨固定具10の設置は、設置手順を簡略化する、屈曲/延伸軸線に亘ってボール・ジョイント48が正確に整合されることを必要としない。
【0050】
固定具カップリングは、通常、固定具を不動にするように最初は形状構成される。特に、遠位ブロックはスペーサー74(固定具10)又はスペーサー158(固定具110)に対してしっかりと付勢され得るものであり、かつ錠止リングを使用して定位置に固定され得るものである。これにより、遠位部材の可撓性ワイヤーに沿う並進を防ぎ、ワイヤーの屈曲を付随的に阻止する。固定具10の場合、ブラケットねじ80a、80bは遠位ブロックの湾曲面88a、88bに対してしっかりと締め付けられ、遠位部材が回転又は撓む能力を減じるか又は削除する。固定具110の場合、ブラケット・アーム160a、160bは、ブラケット・ポスト164a、164bが遠位部材の側部に対してしっかりと付勢されることにより遠位部材を少なくとも実質的に固定するように、位置付けられる。
【0051】
初期の固定後、損傷したジョイントの運動は患者の回復を容易にするために斬進的に制御された態様で回復させ得る。このため、固定具は、カップリング・ワイヤーの長手方向の並進、回転、及び/又は屈曲の組合せを含む、遠位部材の近位部材に対する選択的且つ調節可能な、運動を可能にするように形状構成し得る。例えば、ブラケットねじ80a、80b、及び/又はブラケット160a、160bを僅かに緩めることによって、ワイヤーの周りの遠位部材の回転を許容し得る。特に、遠位ブロックの湾曲した面はワイヤ上の遠位部材の妨げられていない回転を可能にし得る。遠位部材は、例えば、ブラケットねじが従動するようなリップ又はトラックのような回転制限器を組み込むことによって、制限された範囲の回転を与える面を含み得る。ブラケットねじ及び/又はブラケット・アームを緩めることは遠位部材を自由にもしてカップリング・ワイヤーを撓ませ、図10及び図11に示すように、手首関節の屈曲及び延伸並びに手の内転及び外転を可能にする。カップリング・ワイヤーの屈曲は上述したようなスペーサーの存在によって制限し得る。加えて、手の内転及び外転は、図11に特に示すように、可撓性ワイヤーに沿った遠位部材の並進を同時に可能にすることなく可能にし得ない。
【0052】
許容された程度の屈曲、回転、及び並進が全て同時及び斬進的に増加する場合に、手の動きは殆ど中立である。適切な漸進的運動はブラケットねじ80a、80bを僅かに緩めることによって固定具10を使って達成し得る一方で、錠止リング76の止めねじ77を同時に緩め、錠止リングをワイヤーに沿って僅かに並進させ、及び止めねじ77を再錠止する。結果として、患者は僅かな程度の回外、回内、及び手の外転を許容され得る。ワイヤー72に沿って近位部材に向かう遠位部材の並進が可能でない時、1つ以上のスペーサーが除去されなければ、手の外転は依然として制限し得る。しかしながら、スペーサーの除去は更なる自由度(すなわち、制限された手の外転)に寄与する。手首関節をリハビリテーションし続け、そして手首関節の大幅な動きが所望される時、ブラケットねじは更に後退し得るものであり、及び錠止リング76は更にワイヤー72を下げるように動き得る。
【0053】
遠位部材がワイヤー72に沿って並進可動性を増加させることが許容される時、固定具は対応して尺骨に大幅な偏倚量を与え得る。 これに対して、特にボール・ジョイントを組み込んだ以前の固定具は、尺骨の偏倚を容易にすることができず、結果として患者に対する不快さに帰着し、リハビリテーションへの進行を邪魔する。
【0054】
本願明細書に記載の固定具によって与えられる運動の自由度はカップリング・ワイヤーの屈曲から主に生じるから、上述したように、固定具のボール・ジョイントを手首関節のジョイントと整合させる上で高い精度はもはや必要ではない。幾つかの実施形態では、固定具は、手首関節の屈曲/延伸軸線がワイヤーの少なくとも一部と整合するように整合し得る。他の実施形態では、ワイヤーの可撓性は、固定具の特別な整合にも拘わらず、不可欠なリハビリテーションの運動を可能にし得る。
【0055】
骨固定具は、固定及び/又は遠位橈骨の骨折のような、骨のひびを修復するキットとして内科医に提供し得る。このキットは、実質的に上述した骨固定具及び/又はピンを含み得るものであり、遠位及び/又は近位取付ピンを適切な間隔及び配向で挿入するための、テンプレート、あるいはドリルガイドを更に含み得る。このキットは、止めねじ及び/又はギヤーあるいは骨固定具に関する他の調節機構を調節するための駆動装置のような、許容された屈曲、回転、及び並進パラメータの1つ以上を調節するための1つ以上のツールを含み得る。
【0056】
図1に示すように、キットは固定具カバー90も含み得る。固定具のネガティブな視覚的及び/又は心理学的な衝撃−特にピンが患者の皮膚を貫通する光景−は固定具カバーを設けることによって軽減し得る。このカバーは好ましくは固定具を覆い、かつ布又は薄い可撓性プラスチックのような何れか適切な材料から構成し得る。カバーは、カバーの長さを、固定具の長さを患者に取り付けるように合致するように調整されることを可能にする。固定具カバーは単一部片又は2つ以上の(入れ子式)部片を備え得る。面ファスナー及び/又は他のファスナー94は、固定具カバーを固定具に取り付けるために使用し得る。
【0057】
本願明細書に記載された開示事項は、各々独立した効果を有する1つ以上の顕著な発明を包含し得る。これらの発明はそれぞれの好ましい単数又は複数の形態で開示されているが、本願明細書に開示且つ説明されたその特定実施形態は限定的な意味合いで考慮されるべきではない。何故なら、多数の変形が可能であるためである。本発明の主題は種々の要素、特徴、機能、及び/又は本願明細書に開示された特性から成る全ての新規且つ非自明な組合せ及び副組合せを含む。添付の特許請求の範囲に記載の請求項は新規且つ非自明とみなされる或る組合せ及び副組合せを規定且つ特に指摘する。要素、特徴、機能、及び/又は特性の他の組合せ及び副組合せは本願特許請求の範囲の補正及び/又は本願又は関連出願の新請求項の提出によって請求し得る。こうした請求項は、これらの請求項が同じ発明に向けられているか又は異なる発明に向けられているものであれ、及びこれらの請求項が出願当初の特許請求の範囲に対して範囲が広いか、狭いか、等しいか、あるいは異なるものであれ、単数又は複数の発明の主題内に含まれるものとしてもみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の態様による骨固定具の等角図である。
【図2】図1の固定具の組立分解等角図である。
【図3】本発明の態様による固定具の別実施形態の等角図である。
【図4】近位及び遠位部材間の直立角度をどのように調節し得るかを示す、図3の固定具の部分的側面図である。
【図5】近位及び遠位部材間の距離をどのように調節し得るかを示す、図3の固定具の部分的平面図である。
【図6】近位及び遠位部材間の長手方向に直角な角度をどのように調節し得るかを示す図3の固定具の部分的平面図である。
【図7】近位及び遠位部材間の長手方向に直角な移動をどのように調節し得るかを示す図3の固定具の部分的平面図である。
【図8】図示する固定具が患者の腕の側に少なくとも実質的に取り付けられた状態の、図1の固定具の側面図であり、かつ患者の腕の平面図である。
【図9】図示する固定具が患者の腕の側に少なくとも実質的に図8におけるように取り付けられた状態の、図1の固定具の平面図であり、かつ患者の腕の側面図である。
【図10】腕の屈曲及び/又は延伸が遠位部材を結合部材に対してどのように動かすかを示す、図1の固定具の部分的平面図である。
【図11】腕の内転及び/又は外転が遠位部材を結合部材に対してどのように動かすかを示す、図1の固定具の部分的側面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 外部固定具
12a、12b ピン
14a、14b ピン
16 遠位部材
18 近位部材
20 カップリング
22a、22b 開口
24 近位取付ブロック
26 止めねじ
28 ピボット・ガイド
30 中間ブロック
32 弓形状リップ
33 ピボット・スロット
34 保持プレート
36 棚部
38 弓形状ラック
40 ウォームギヤー
42 支持面
44 U字形状ガイド
46 ヘッド
48 ボール・ジョイント
50 ボール・ロッド
52 ボール
53 半球形カップ
54 壁
56 キャップ
57 止めねじ
58 シャフト
60 長手方向穴
62 細長開口
64 止めねじ
66 グリップ
68 外転角度
70 カップリング・ブラケット
72 ワイヤー
74 スペーサー
76 錠止ディスク
77 止めねじ
78a、78b アーム
80 延伸角度
80a、80b ブラケット・ねじ
82a、82b 開口
84 取付ブロック
85a、85b 止めねじ
86 開口
88a、88b 湾曲面
90 固定具カバー
94 ファスナー
110 外部固定具
114 近位部材
114a、114b 半径方向ピン
116 遠位部材
118 近位部材
120 カップリング
122a、122b 開口
126 止めねじ
130 調節可能な部材
132 回転軸線
134 ねじ
136 長さ調節器
138 細長部材
140 細長スロット
142 ねじ
143 参照マーキング
144 移動アジャスター
146、148 ねじ
150 上側プレート
152 下側プレート
154 カップリング・ブラケット
156 ワイヤー
157a、157b ブラケット・アーム
158 スペーサー
160 錠止ディスク
162 ねじ
164a、164b ブラケット・ポスト
166 カップリング・ブラケット・ガイド
168a、168b 弓形状トラック
170a、170b ボルト
171a、171b 参照マーキング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を修復するための骨固定具であって、
中手首骨に取り付けられるるように形状構成された少なくとも1つの遠位取付要素;
橈骨に取り付けられるように形状構成された少なくとも1つの近位取付要素;
前記遠位取付要素を自身に固定するように形状構成された遠位部材;
前記近位取付要素を自身に固定するように形状構成された近位部材;及び
前記近位部材と前記遠位部材を連結し、前記遠位部材の前記近位部材に対する固定、並びに調節可能な屈曲、回転、及び/又は並進を可能にするように形状構成されたカップリング;を備える骨固定具。
【請求項2】
前記カップリングは前記近位部材に調節可能に固定され、その結果、前記近位部材と前記遠位部材との間の角度及び距離の両方を調整し得る、請求項1に記載の骨固定具。
【請求項3】
前記カップリングはボール及びソケット・ジョイントを含む、請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記遠位部材の前記近位部材に対する並進及び屈曲が独立して調整可能である、請求項1に記載の固定具。
【請求項5】
前記カップリングは、超弾性部分及び1つ以上の硬化要素を含み、前記硬化要素は前記遠位部材の前記近位部材に対する並進及び屈曲の少なくとも1つを調節可能に制限する、請求項1に記載の固定具。
【請求項6】
前記硬化要素は前記遠位部材の前記超弾性部分に対する並進を調節可能に制限するように形状構成された並進錠止部を含む、請求項5に記載の固定具。
【請求項7】
前記カップリングの超弾性部分は、超弾性金属ワイヤーを含み、前記硬化要素は前記遠位要素の屈曲及び回転を選択的に制限するように形状構成されたカップリング・ブラケットを含む、請求項5に記載の固定具。
【請求項8】
前記カップリング・ブラケットは独立して調節可能なブラケット・アームを含む、請求項7に記載の固定具。
【請求項9】
前記長さ、配向、及び前記固定具の柔軟性を設定する支援をするように形状構成された少なくとも1つの参照マーキングを更に備える、請求項1に記載の固定具。
【請求項10】
骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を修復するための骨固定具であって、
中手首骨に取り付けられるるように形状構成された少なくとも1つの遠位取付要素;
橈骨に取り付けられるように形状構成された少なくとも1つの近位取付要素;
前記遠位取付要素を自身に固定するように形状構成された遠位部材;
前記近位取付要素を自身に固定するように形状構成された近位部材;及び
前記近位部材と前記遠位部材を連結するように形状構成され、超弾性屈曲することができる一部を含むカップリング;を備える骨固定具。
【請求項11】
前記骨固定具は前記手首関節を動的に固定することができる、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項12】
前記超弾性部分は超弾性金属を含む、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項13】
前記超弾性部分は超弾性金属を含み、前記ワイヤーは前記遠位部材の遠位取付要素に対して実質的に直交する、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項14】
前記遠位部材は前記超弾性部分に沿った選択的併進を可能にするように形状構成される、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項15】
前記骨固定具は、前記遠位部材が固定される際に前記手首関節の静的固定を与えるように形状構成される、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項16】
前記骨固定具は、前記遠位部材が実質的に固定されない際に前記手首関節の動的固定を与えるように形状構成される、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項17】
前記カップリングは1つ以上の硬化要素を含み、前記硬化要素は前記超弾性部分の屈曲を調節可能に制限する、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項18】
前記硬化要素は前記遠位要素の屈曲及び回転の少なくとも1つを選択的に制限するように形状構成されたカップリング・ブラケットを含む、請求項17に記載の骨固定具。
【請求項19】
前記超弾性部分は超弾性ワイヤーを含み、前記硬化要素は前記ワイヤーに配置された複数のスペーサーを含み、その結果、前記スペーサーの圧縮は前記ワイヤーの屈曲を制限する、請求項17に記載の骨固定具。
【請求項20】
前記硬化要素は前記遠位部材の前記超弾性部分に対する並進を調節可能に制限するように形状構成された並進錠止部を含む、請求項19に記載の骨固定具。
【請求項21】
前記超弾性部分はニッケル・チタニウム合金を含む、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項22】
前記カップリングは前記近位部材に調節可能に固定され、その結果、前記近位部材と前記遠位部材との間の角度及び距離の両方を調整し得る、
【請求項23】
前記カップリングは、前記近位部材と前記遠位部材との間の対頂角及び側方角が独立して調節し得るように、前記近位部材に調節可能に固定される、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項24】
前記長さ、配向、及び前記固定具の柔軟性の少なくとも1つを設定する支援をするように形状構成された少なくとも1つの参照マーキングを更に備える、請求項10に記載の骨固定具。
【請求項25】
骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の欠陥を治療するための装置であって、
前記骨折の遠位側の骨内に固定するための少なくとも1つの遠位要素と;
前記橈骨に固定するための少なくとも1つの遠位要素と;
前記骨折の力学的固定を可能にする超弾性領域を有する、前記遠位及び前記近位要素に取り付けられた固定具と、を備える装置。
【請求項26】
骨折及び/又は遠位橈骨の他の転位を治療するための方法であって、
離隔配置され且つ少なくとも実質的に平行な経皮性ピンの近位対を前記骨折の近位側の前記橈骨内に取り付ける段階と、
離隔配置され且つ少なくとも実質的に平行な経皮性ピンの遠位対を前記骨折の遠位側の前記中間骨内に取り付ける段階と、
外部固定具を前記ピンに取り付ける段階であって、前記外部固定具は前記遠位ピンに取り付けられる遠位部分と、前記近位ピンに取り付けられる近位部分と、を具備し、前記部分はカップリングによって連結され、前記カップリングは前記遠位部材の前記近位部材に
対する調節可能な屈曲、回転、及び並進を可能にするように形状構成される前記段階と、
前記外部固定具を利用して前記ピンを手動操作して前記骨折を減じる段階と、を備える方法。
【請求項27】
前記骨折を減じる段階は前記カップリングを固定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記遠位部材の前記近位部材に対する前記屈曲、回転、及び並進の1つ以上の自由度を漸進的に増加させる段階を更に備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記遠位部分の並進自由度を増加させる段階は、前記遠位部分を前記ワイヤーに沿って並進させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記遠位部分の屈曲自由度を増加させる段階は、前記ワイヤーの可逆屈曲を可能にすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記遠位部分の回転自由度を増加させる段階は、前記ワイヤーに基づく前記遠位置部分の可逆回転を可能にすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
骨折及び/又は遠位橈骨及び手首関節の他の転位を修復用骨固定具を取り付けるためのキットであって、
中間骨に取り付けられるるように形状構成された少なくとも1つの遠位取付要素;
前記橈骨に取り付けられるように形状構成された少なくとも1つの近位取付要素;
前記遠位取付要素を自身に固定するように形状構成された遠位部材;
前記近位取付要素を自身に固定するように形状構成された近位部材;及び
前記遠位部材の前記近位部材に対する調節可能な屈曲、回転、及び並進を可能にするように形状構成されたカップリング;を備える骨固定具。
【請求項33】
前記中間骨に前記遠位取付要素を配置するための遠位テンプレートと、前記橈骨に前記近位取付要素を配置するための近位テンプレートと、の中の少なくとも1つを更に備える、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記遠位取付部材及び前記近位取付部材は自己穿孔ピンを備える、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記遠位部材の前記近位部材に対する許容された前記屈曲、回転、及び並進の1つ以上を調節するための1つ以上のツールを更に備える、請求項32に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−519662(P2006−519662A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507100(P2006−507100)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/007505
【国際公開番号】WO2004/080344
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505026479)アキュームド・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】