説明

外部寄生虫の制御のための、メタフルミゾンを含む多目的高充填濃縮組成物

メタフルミゾン、架橋剤(必要に応じて)、界面活性剤および適切なキャリア溶媒を含む、高充填濃縮組成物。これらの組成物は、動物に局所投与され得、温血動物における外部寄生虫の外寄生を長期間にわたり予防または処置するのに有用である。また、これらの組成物は、更に希釈されて、局所投与にも経口投与にも使用可能な他の処方物を提供し得る。本発明は、局所投与用の高充填濃縮組成物であって、重量対容量ベースで、約5%〜約25%のメタフルミゾン、約0%〜約15%の架橋剤、約2%〜約15%の界面活性剤、および約50%〜約80%のキャリア溶媒を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、同時係属中の2005年5月24日出願の米国仮出願第60/683,949号による優先権を主張しており、その開示内容全体が、本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
一般に温血動物に感染する節足動物外部寄生虫としては、マダニ、ダニ、シラミ、ノミ、クロバエ類、ヒツジの外部寄生虫であるLucilia sp.、刺咬性昆虫(ヒツジシラミバエ(Melophagus ovinus)を含む)および体内移行性の双翅類の幼虫(例えば、ウシ中のHypoderma sp.およびDermataobia、ウマ中のGastrophilus、ならびに齧歯動物中のCuterebra sp.)が挙げられる。
【0003】
メタフルミゾン(metaflumizone)は、温血動物における外部寄生虫による感染の予防および制御に有用である。この活性物質の局所投与が、この化合物を投与するための好ましい方法である。
【0004】
温血動物における外部寄生虫の感染または外寄生に対する有用な保護を提供するためには、比較的高い充填量(high load)の活性物質を有する処方物を使用することが望ましいが、そのような処方物は、処方物の物性に関しても、また、その活性物質の化学的安定性に関しても安定でなければならない。メタフルミゾンは、動物上の、特に、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコおよびウマ)および家畜(例えば、ウシ、ヒツジおよびヤギ)上のノミおよびマダニの制御に対する特定の用途が見出された数種の有用な殺虫剤のうちの1種である。メタフルミゾンは、コンパニオンアニマルにおけるノミおよびマダニから4〜6週間の保護を提供し得る点で特に有利であるが、適切な処方物が開発され得るならば、多くの他の種に対しても潜在的に有用である。それにもかかわらず、メタフルミゾンは、多くの溶媒におけるその不溶性、および第一級アルコールの存在下でのその不安定性により、処方が難しくなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的高い充填量のメタフルミゾンを含み、外部寄生虫の外寄生からの保護を提供する局所投与用の多目的組成物を提供することが、本発明の目的である。最も好都合には、この処方物は、濃縮物として機能し得、簡単な改変により、多種多様な他の動物のための使用に拡張され得る。したがって、この濃縮された処方物は、小容量のスポットオン(spot−on)処方物として、例えば、コンパニオンアニマルの保護のために利用され得るのに対し、更なる希釈物が、家畜用の慣習的なプア−オン(pour−on)生成物として利用され得、更なる希釈物が、多様な投薬容量でエアゾールスプレーもしくはポンプスプレーを通じて送達される乳化散布剤および/または飼料への適用に利用可能である。
【0006】
動物において、特に温血動物において、本発明の組成物を使用して、コナダニの外寄生または節足動物外部寄生虫の外寄生を予防または処置するための方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0007】
投与に対する皮膚の副作用を避けるのに十分に穏やかで強くないが、保護に必要とされる期間にわたり動物の皮膚および/または外被に保持される能力を有する処方物を用い、局所的に適用される活性物質により温血動物におけるそのような昆虫の繁殖を長期間にわたり低減または制御することが、本発明の別の目的である。
【0008】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下および別添の特許請求の範囲に提示される本発明についての記載から、より明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、局所投与用の高充填濃縮組成物であって、重量対容量ベースで:
約5%〜約25%のメタフルミゾン;
約0%〜約15%の架橋剤;
約2%〜約15%の界面活性剤;および
約50%〜約80%のキャリア溶媒
を含む組成物を提供する。
【0010】
本発明は、温血動物における外部寄生虫の感染または外寄生を予防または処置するための方法を更に提供し、この方法は、殺コナダニ有効量または殺節足動物外部寄生虫有効量の本発明の組成物を、上記動物に局所投与する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明に従い、高充填濃縮組成物は、メタフルミゾン;必要に応じて、架橋剤または経皮吸収促進剤、界面活性剤、およびキャリア溶媒を含む。本発明はまた、上記処方物の局所投与により、温血動物におけるコナダニまたは節足動物外部寄生虫の感染または外寄生を予防または処置するための方法を提供する。
【0012】
本発明の好ましい高充填濃縮組成物は、重量対容量ベースで:
約5%〜約25%のメタフルミゾン;
約0%〜約15%の架橋剤;
約2%〜約15%、特に約2%〜約8%の界面活性剤;および
約50%〜約80%のキャリア溶媒
を含む。
【0013】
特定の実施形態において、約15%〜約25%(例えば、約20%)のメタフルミゾンが組成物中に含まれる。特定の実施形態において、約5%〜約15%(例えば、約10%)の架橋剤が含まれる。特定の実施形態において、約50%〜約60%のキャリア溶媒が含まれる。
【0014】
特定の理論により縛られることを望まないが、本発明の組成物は、界面活性剤とメタフルミゾンとの間の物理的および/または化学的相互作用のおかげで必要な安定性を有している。その相互作用の正確な性質は知られていないが、得られる処方物が、活性物質の効力を喪失することなく確実に長期にわたり望ましい物理的性質を保持するように、界面活性剤が、溶液中のメタフルミゾンを安定させると思われる。更に、この処方物は、望ましい期間にわたり、動物の皮膚および/または毛の上または内に保持され、放出されるのに十分な粘性を有する。
【0015】
特徴的に、これらの高充填濃縮組成物が、種々の他の様式での適用のための、すなわち、大型動物用のプア−オンとして、大型動物用すなわち戸外での使用のための散布剤として、および処置下にある動物の飼料および/または水への添加用の水による希釈可能な(water−dilutable)処方物としての使用のために、更に薄めた組成物を調製するために更に利用され得ることが見出された。これは、希釈および使用のために最終使用者に送られ得る濃縮処方物を提供する、または組成物を調製するために中間処方業者に送られ得る濃縮処方物を提供する、という二重の利点を有する。したがって、この処方物中のメタフルミゾンの高充填は、「スポットオン」処方物(例えば、コンパニオンアニマル用、特にネコ用)として使用するための小容量の処方物を提供する。次いで、この濃縮物は、プア−オンとしての使用または散布剤中での使用のために適切な有機溶媒により希釈され得、あるいは水で希釈されて飼料/水用の添加物を提供し得る。
【0016】
メタフルミゾンならびに獣医学的適用におけるその使用は、米国特許第5,543,573号および米国公開出願第2004−0122075A1号に記載されており、これらは共に、本明細書中で参考として援用される。化学的には、メタフルミゾンは、(EZ)−2−[2−(4−シアノフェニル)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]−N−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]ヒドラジンカルボキサミドとして知られている。
【0017】
【化1】

本発明の組成物における使用に適した架橋剤または経皮吸収促進剤としては、アルキルメチルスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシドおよびテトラデシルメチルスルホキシド);ピロリドン(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン);ラウロカプラム(laurocapram);および種々雑多な溶媒(例えば、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフルフリルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。他の架橋剤としては、両親媒性物質(例えば、L−アミノ酸および脂肪酸)が挙げられる。更なる架橋剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition(1995),pp.1583)に開示されている。最終用途が、局所適用のためである場合は、典型的に架橋剤は、処方物の約10%w/vのレベルで使用されるが、これは、特にその組成物の最終用途が経口投与である場合に変化し得る。
【0018】
本発明で利用される界面活性剤は、単一の界面活性剤、または2種以上の界面活性剤の混合物であり得、これも、組成物の最終用途が局所であるかまたは経口であるかにある程度依存する。界面活性剤は、非刺激性および非毒性であるべきである。非イオン性低泡界面活性剤(例えば、アルコールアルコキシレート界面活性剤)が好ましく、Uniqemaにより商品名Synperonic(登録商標)NCA810、830および850で販売されているものが特に適している。他の有用な界面活性剤は、ノニルフェノールエトキシレートであり、商品名Tergitol(登録商標)NPでthe Dow Chemical Companyにより販売されているものが好ましい。更なる界面活性剤(適切に選択された陰イオン界面活性剤および陽イオン界面活性剤を含む)もまた、本発明の処方物に利用され得る。特に有用な特性は、陰イオン界面活性剤(例えば、ジオクチルスルホサクシネート塩)に見出される。
【0019】
典型的に、界面活性剤は、組成物の約2%〜約15%w/v、特に、約2%〜約8%w/vのレベルで利用されるが、このレベルは、組成物の最終用途によりいくらか変化し得る。この濃縮物の最終用途がスプレー処方物としての場合、または水分散性の飼料/水用の添加物としての場合、希釈された処方物を1つの相にするために更なる界面活性剤を加えることが望ましくあり得る。これにより、散布剤がスプレーノズルを塞がないことを確実にし、活性物質が希釈された生成物中に等しく分散されることを確実にする。その場合、更なる界面活性剤を、濃縮処方物に加えるかまたは希釈溶媒を含む最終用途の処方物に加え得る。有機溶媒希釈物との使用に特に有用な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤(例えば、商品名Cremophor(登録商標)で販売されているポリオキシル35ヒマシ油)である。
【0020】
本発明の組成物のためのキャリア溶媒は、単一の溶媒または溶媒の混合物であり得る。第一級アルコールの存在下でのメタフルミゾンの不安定性により、好ましい溶媒は、非ヒドロキシル基含有溶媒、特に、γ−ヘキサラクトン(γ−カプロラクトン;エチルブチロラクトン;γ−エチル−n−ブチロラクトン;ヘキサノリド−1,4(hexanolide−1,4);4−ヒドロキシヘキサン酸γ−ラクトンまたはトンカリド(tonkalide)としても知られている)等である。必要に応じて、他のそのような溶媒(例えば、N,N−ジエチル−m−トルアミド、オイカリプトール、ジメチルイソソルビド、アジピン酸ジイソプロピルおよび/または酢酸1−メトキシ−2−プロピル)が、キャリア溶媒を含めるためにγ−ヘキサラクトンと組み合わせて利用され得る。
【0021】
本発明の高充填濃縮組成物を製造するために、メタフルミゾンをキャリア溶媒または溶媒に溶解させ、界面活性剤および架橋剤(望ましい場合)をこの混合物に加える。次いで、この組成物は高充填スポットオンとして利用され得るか、または更なる使用のために更に希釈され得る。
【0022】
温血動物への局所投与用に特に好ましい組成物は、重量対容量ベースで約5%〜約25%のメタフルミゾン;約10%の架橋剤(特に、ジメチルスルホキシド);約2%〜8%の非イオン性低泡界面活性剤;および約50%〜60%のキャリア溶媒(特に、γ−ヘキサラクトン)を含む。
【0023】
本発明の高充填濃縮組成物は、当該技術分野において公知の他の薬剤(例えば、保存剤(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、着色剤、酸化防止剤など)を更に含み得る。一般的に、これらの薬剤は、重量対容量ベースで約2%までの量で組成物中に存在する。
【0024】
局所的に投与される場合、本発明の組成物は、温血動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、シカ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、トリ等)における外部寄生虫の感染および外寄生を予防または処置するのに、長期間にわたり非常に有効である。コンパニオン動物への適用のための代表的な投薬量は、例えば、イヌについては20mg/kg、そしてネコについては40mg/kgであるが、5mg/kgまで下げた低投薬量でも、大型動物(例えば、ウマおよびウシ)に対して効力を示す。
【0025】
本発明の更なる理解を促進するために、以下の実施例が、主にその特定の実施形態を例示するために提示される。本発明は、特許請求の範囲において規定される通りである場合を除き、実施例により制限されると考えるべきではない。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
(スポットオン剤としての使用に適したメタフルミゾン高充填濃縮物の調製)
10gのDMSOに、40gのγ−ヘキサラクトンを加える。この溶媒混合物に、20gのメタフルミゾンを加える。穏やかな熱(40℃)を使用して、溶解のプロセスを促進し得る。得られた溶液に、攪拌しながら、6gのSynperonic(登録商標)NCA830という銘柄のアルコールアルコキシレート界面活性剤を加える。γ−ヘキサラクトンで100mlにする。
【0027】
こうして処方された組成物は、ネコに対する「スポットオン」(局所的小用量)処置として適用され得る。
【0028】
この処方物の効力を、以下の効力の表に示す。
【0029】
【表1】

(実施例2)
(実施例1の高充填濃縮物からのメタフルミゾンプア−オンの調製)
実施例1で調製された高充填濃縮物25mlに、全量100mlとなるように適量のγ−ヘキサラクトンを加える。これは、200Kgの体重の5頭のウシを各5mg/kgの用量割合で処理するのに十分なメタフルミゾンおよび容量を有するプア−オン処方物を提供する。
【0030】
(実施例3)
(メタフルミゾン散布剤または飼料/水用の補給物を調製するための濃縮物としての使用のための高充填濃縮物の調製)
12.59gのメタフルミゾンを穏やかな熱(約40℃)を用いてジメチルイソソルビドに加える。この溶液に、攪拌しながら、109.92gのCremophor(登録商標)EL(Basf Aktiengesellschaftより販売されるポリエトキシ化されたヒマシ油)を加え、続いて、全量200mlとなるように適量の酢酸1−メトキシ−2−プロピルを加える。得られた溶液を使用直前まで保管し、使用の際に、この溶液を、散布剤(17mlの濃縮物を3500mlの水で希釈)としての使用のために、または飼料/水用添加物(ほぼ同様な比率で希釈)としての使用のために水で希釈し得る。
【0031】
この処方物を、体重1kg当たり10mgのメタフルミゾン濃縮物を水で希釈し、メタフルミゾンのハジラミに対する効果を試験するために、1動物当たり1500mlでヒツジに適用した。
【0032】
【表2】

(実施例4)
(種々の界面活性化学物質および溶媒系を用いたスポットオン処方物の調製、%w/v)
【0033】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与用の組成物であって、重量対容量ベースで:
約5%〜25%のメタフルミゾン;
約0%〜約15%の架橋剤;
約2%〜約15%の界面活性剤;および
約50%〜80%のキャリア溶媒
を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、約15%〜25%のメタフルミゾンを含む、組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物であって、前記界面活性剤が、非イオン性低泡性界面活性剤である、組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記界面活性剤が、約2%〜約8%w/vのレベルで存在する、組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、前記架橋剤が、ジメチルスルホキシドである、組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャリア溶媒が、γ−ヘキサラクトンである、組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャリア溶媒が、酢酸1−メトキシ−2−プロピルである、組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物であって、1種以上の保存剤、着色剤、酸化防止剤または安定剤を更に2%まで含む、組成物。
【請求項9】
温血動物における外部寄生虫の感染または外寄生を予防または処置する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の有効量を該動物に局所投与する工程を包含する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記動物が、ウシ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、シカ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコおよびトリからなる群より選択される、方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の方法であって、前記組成物が、約5%〜25%のメタフルミゾン;約10%の架橋剤;約2%〜約8%の非イオン性低泡性界面活性剤;および約50%〜60%のキャリア溶媒を含む、方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法であって、前記組成物が、キャリア溶媒としてγ−ヘキサラクトンを含む、方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記組成物が、プア−オン組成物としての使用のために更に希釈される、方法。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法であって、前記組成物が、前記キャリア溶媒として、酢酸1−メトキシ−2−プロピルを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記組成物が、散布剤または飼料/水用の添加物としての使用のために更に希釈される、方法。

【公表番号】特表2008−542271(P2008−542271A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513550(P2008−513550)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019284
【国際公開番号】WO2006/127399
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】