説明

外部電極蛍光ランプ用外套容器

【課題】 外部電極ランプの外套容器として要求される諸特性、具体的には熱膨張係数α、液相粘度logη、誘電率ε、誘電正接tanδ、体積抵抗率logρを全て満足する外部電極ランプ用外套容器を提供する。
【解決手段】 外面に電極が設けられた構造を有する外部電極蛍光ランプの作製に用いられる外套容器であって、質量%で、SiO2 45〜60%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜9%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜13%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜3%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 20〜40%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O) 5〜9.8%含有するガラスからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部電極蛍光ランプ用外套容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は自己発光しないため、ノート型パソコン、TVモニター、パーソナルコンピュータ(PC)モニター、車載用計器等の用途に使用される場合、専用の照明装置(以下バックライトユニット)を使用することが広く行われている。
【0003】
従来使用されているバックライトユニットの光源となる蛍光ランプはコンパクトで長寿命の冷陰極管が使用されている。冷陰極管の発光原理は、一般の照明用蛍光ランプと同様である。すなわち、ガラス外套容器内に封入されたジュメット線、コバール金属、タングステン金属等を介して内部の電極に電力を供給し、電極間に放電を起こさせる。この電極間の放電によって、外套容器内に封入された水銀(Hg)やキセノン(Xe)が励起し、紫外線が放射される。この放射された紫外線によって外套容器の内壁面に塗られた蛍光体が可視光線を発光する。蛍光ランプの発光中の電流量をコントロールするために、冷陰極管ユニットは、ランプ1本毎に電圧を上げるインバーターと、電流をコントロールするコンデンサーを必要とする。
【0004】
近年、液晶表示装置が大型化してきており、これに伴って十分な明るさを確保するためにバックライトユニットに冷陰極管を複数本使用するようになってきている。例えばTVモニターでは、液晶表示装置の裏側に蛍光ランプを約1〜5cm間隔で複数本均等に並べて発光させ、拡散板を通して均質な光を取り出すバックライトユニットが主に使用されている。このような表示装置では、ランプの本数分だけ電源を搭載するので、表示装置内で電源が占める容積が大きくなる。その結果、表示装置の薄型化が困難になるだけでなく、価格も高くなる。それゆえユニットの電源を一つに統合することが期待されているが、コンデンサーが省略できないため従来不可能であった。
【0005】
また、従来の冷陰極ランプは、点灯中に金属電極がHgと反応して合金を構成し、Hgを消費する。Hgは発光に寄与する成分であるため、冷陰極ランプは徐々に暗くなり、やがては使用に耐えなくなる。このように冷陰極管の寿命には限界がある。その寿命はTVモニター用としては十分に長いとは言えない。
【0006】
このような事情から、寿命に影響しやすい内部電極がなく、ランプ外套管外周面の両端近傍部分に電極を配置した外部電極蛍光ランプ(EEFL)が検討されている。(例えば特許文献1、非特許文献1)また、複数の放電空間を有する平面型の外部電極ランプも提案されている(例えば特許文献2、3)。外部電極蛍光ランプの電力供給方法は、冷陰極ランプのように電子を電極から直接的に放出させるのではなく、ガラス外套容器のガラス部分を誘電体として機能させ、その誘電特性により管内面から電子を放出させるものである。つまり、ランプ外套容器を利用してコンデンサーの代替機構を構築するものである。その結果、コンデンサーが不要となり電源の統合が可能になる。基本的な発光原理は従来の蛍光ランプ同様、HgまたはXeにより紫外線を発生させ、蛍光体を光らせるものである。
【0007】
平面型外部電極ランプでは、光を取り出す面と反対側のランプ外面に電極を有する構造をとる。例えば、図1に示すように、背面板1の板ガラスの肉厚が誘電体として、1対の帯状電極3(外部電極)が一方の電極として、ランプ内部のHg蒸気やXeがもう一方の電極として機能する。この構造はコンデンサーと同様である。光は前面板2を透過して取り出される。
【0008】
外套容器は、背面板1と前面板2からなる。背面板1はフロート法、オーバーフロー法、スリットダウン法など一般に知られているガラス板製造方法によって製造される。前面板2は、フロート法、オーバーフロー法、スリットダウン法など一般に知られているガラス板製造方法によって製造された後、所定の金型により熱軟化プレス成形によって作製される。または溶融ガラスを金型に流し込み所定の金型により直接プレス成形されて作製される。これらのガラス板の製造方法においては熱膨張係数αが重要なファクターとなる。つまり熱膨張係数αが大きすぎると製造工程中の冷却過程においてサーマルショックによりガラス板が破損し連続的に製造することが困難となる。また、プレス成形過程においてもプレス後の冷却過程においてサーマルショックにより成形ガラスが破損する頻度が高くなる。さらに、近年、液晶表示装置の大型化に伴い、より大型の外套容器が要求され、より大型のガラス板を製造する必要があり、サーマルショックによる破損の頻度がさらに増すことが考えられる。
【0009】
管型の外部電極ランプでは、外套容器外周面に電極を有する構造をとる。図2に示すように、ガラス管(外套管)6のガラスの肉厚が誘電体として、外部電極3が一方の電極として、ランプ内部のHg蒸気やXeがもう一方の電極3として機能する。この構造はコンデンサーと同様である。複数のランプL1、L2を一つの電源10につなぐ場合、電圧は各ランプとも等しくなる。
【0010】
外套容器はガラス管6からなる。ガラス管6はダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法など一般に知られているガラス管製造方法によって製造される。ガラス管製造工程においても熱膨張係数αが重要なファクターとなる。熱膨張係数αが大きすぎると製造工程中の冷却過程においてサーマルショックによりガラス管が破損し連続的に製造することが困難となる。また、蛍光ランプ製造工程においてガラス管を熱軟化し封止した後の冷却過程、あるいはガラス管を熱軟化し曲げなどの熱加工後の冷却過程において破損頻度が高くなると考えられる。
【0011】
このため何れの形態の外套容器においても、外套容器を構成するガラスの熱膨張係数αが高すぎないこと、具体的には90×10-7/℃以下であることが望まれる。なお外部電極蛍光ランプはジュメット線、コバール金属、タングステン金属等の電極とガラスを封着する必要がない。このため外套容器に用いられるガラスの熱膨張係数αは任意であるが、上記理由から熱膨張係数αは低いほど望ましい。
【0012】
また溶融ガラスからガラス板、ガラス管への成形においては成形粘度で結晶析出による失透が起こらないことが重要である。結晶が析出する粘度は液相粘度logηで示され、この液相粘度logηが成形粘度より大きいと成形可能であると言える。通常のガラス板、ガラス管の成形においては液相粘度logηが5.2以上であることが望ましい。
【0013】
また、外部電極蛍光ランプではランプへの電力供給は、上述したコンデンサー機構を交流電源で駆動することによって行なわれる。ランプの明るさは電力量で決まる。コンデンサーの電力量(電荷Q)は静電容量Cと電圧V(下記)で求められる。
【0014】
Q=C×V − 式1
[Q:電荷 C:静電容量 V:端子電圧]
式1から明らかなように、静電容量Cが電荷Qを決定すると言ってもよい。静電容量Cは、誘電率εと面積Sと厚みdの逆数の積である。(下記式)
C=ε×S×(1/d) − 式2
[C:静電容量 ε:誘電体誘電率 S:電極面積 d:誘電体厚み]
式1および式2より、式3が導き出せる。
【0015】
Q=ε×S×(1/d)×V − 式3
式3から明らかなように、端子電圧V、電極面積Dおよび誘電体厚みdが一定であれば、誘電率εが高いほど電荷Qが大きくなり、外部電極蛍光ランプのランプ効率が高くなる。また、電荷Qを一定とすれば、誘電率εが高いほど端子電圧Vが少なくてよく省電力化できる。外部電極蛍光ランプの外套容器はガラスの肉厚が誘電体として作用するため、ガラスの誘電率εが高いこと、具体的には1MHz、常温での誘電率εが6.5以上であることが望まれる。
【0016】
また、誘電正接tanδが大きいと誘電損失が大きくなる。誘電損失は熱エネルギーに変わるため、誘電損失が大きいとガラス自身が発熱しはじめる。発熱が続くとガラスを熱軟化させランプの電極部に穴があく危険性がある。このため誘電正接が小さいこと、具体的には1MHz、常温での誘電正接tanδが0.003以下であることが望まれる。
【0017】
さらに、蛍光ランプは周波数40KHzから100KHzで使用されるため、この周波数領域での誘電特性も重要である。誘電正接tanδは周波数が高くなるほど小さくなる傾向がある。つまり40KHzの誘電正接tanδの方が100KHzのそれよりも高くなる。よって40KHzの値で外套容器用ガラスの誘電特性を規定することができる。40KHzにおける誘電率εは7.0以上、誘電正接tanδは、150℃で0.01以下、250℃で0.02以下、350℃で0.1以下であることがそれぞれ望まれる。なお150℃はランプの通常の作動温度に相当する。250℃はランプ内部で発生する可能性のある温度に相当する。さらに350℃は安全面から考慮すべき温度である。これらの温度の中で、蛍光ランプで考えられる最高温度は250℃程度であるため、この温度における値が最も重視される。
【0018】
また、外部電極蛍光ランプでは端子電圧が高い。このためガラスの体積抵抗率logρが低いとガラスに電流が流れてしまい、ランプ効率が下がるほか、ジュール熱により外套容器の変形や、周辺部材の発火などの危険性がある。従って体積抵抗率logρが高いこと、具体的には9.5以上であることが望まれる。
【特許文献1】特開2002−8408
【特許文献2】特表2002−508574
【特許文献3】特開2000−156199
【非特許文献1】照明学会誌 vol.87 No.1 2003 p18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来、外部電極ランプの外套容器としては、冷陰極ランプの外套管として用いられる市販のホウケイ酸系ガラス管やソーダガラス管が転用されていた。この種のホウケイ酸系ガラスは、冷陰極ランプの電極に使用されるコバール金属やタングステン金属と封着可能な、30〜60×10-7/℃程度の熱膨張係数αを有している。また上記ソーダガラスは、冷陰極ランプの電極として使用されるジュメット金属と封着可能な、90〜100×10-7/℃程度の熱膨張係数αを有するものである。
【0020】
ところが冷陰極ランプの外套管を利用して作製した外部電極ランプは、外套容器ガラスが適切な誘電特性を有していないため、高性能のランプを得ることができなかった。つまりホウケイ酸系ガラス管を用いた場合、誘電率が低いため、ランプ効率が悪いという問題がある。またソーダガラス管を用いた場合は、ランプ効率は高いが、誘電損失が大きいため、ガラスの発熱によって電極部分に穴あきが発生してしまうという不具合が生じる。
【0021】
本発明の目的は、外部電極ランプの外套容器として要求される諸特性、具体的には熱膨張係数α、液相粘度logη、誘電率ε、誘電正接tanδ、体積抵抗率logρを全て満足する外部電極ランプ用外套容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は種々の検討を行った結果、特定範囲内のガラス組成を選択することにより、上記目的が達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0023】
即ち、本発明の外部電極ランプ用外套容器は、外面に電極が設けられた構造を有する外部電極蛍光ランプの作製に用いられる外套容器であって、質量%で、SiO2 45〜60%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜9%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜13%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜3%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 20〜40%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O) 5〜9.8%含有するガラスからなることを特徴とする。
【0024】
なお、以降は特に断りがない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の外部電極ランプ用外套容器は、外套容器として要求される諸特性(具体的には30〜380℃における熱膨張係数αが70〜90×10-7/℃、液相粘度logηが5.2以上、1MHz、室温の誘電率εが6.5以上、誘電正接tanδが0.003以下、250℃における体積抵抗率logρが9.5以上、40KHz、150℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.01以下、40KHz、250℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.02以下、40KHz、350℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.1以下)を全て満たすことが可能なガラスで構成されているため、外套容器の製造工程において、ガラスの失透や破損が生じにくい。しかもこの外套容器を用いて作製された外部電極ランプはランプ効率が高く、また点灯中にガラス発熱による電極部分の穴あきが発生してしまうという不具合も生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の外套容器は、外面に電極が設けられた構造を有する外部電極蛍光ランプの作製に用いられる外囲器である。容器形状はランプ形状に適した形状とすることができる。
【0027】
例えば管型ランプの場合、外套容器は管形状を有する。ここで管形状とは、断面が真円に限られるものではなく、楕円等、種々の断面形状を有する柱状体であることを意味する。
【0028】
平面型ランプの場合、外套容器は、一つ又は複数の放電空間を形成するように略箱形の形状を有する。外套容器は、製造上の制約から、複数の部材から構成されていることが好ましく、例えば背面部分と前面部分とを別々の部材、即ち前面板及び背面板で構成することができる。複数の放電空間を形成する場合には、例えば前面板及び/又は背面板に複数の凹部又は凸部を設けておけばよい。
【0029】
本発明の外套容器は、質量%で、SiO2 45〜60%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜9%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜13%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜3%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 20〜40%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O) 5〜9.8%含有するガラスからなる。ガラスの組成範囲を上記のように限定した理由を以下に述べる。
【0030】
SiO2は、ガラスの骨格を構成するために必要な主成分であり、含有量が増えるほどガラスの機械的強度が向上する。一方で、粘度を上げる傾向があるため、多すぎるとガラスの溶融や成形が困難となる。その含有量は45%以上、好ましくは48%以上である。また60%以下、好ましくは58%以下である。SiO2が45%以上であれば、使用可能なレベルの機械的強度が確保できる。48%以上であればガラス板およびガラス管製造工程での連続生産を耐えられる機械的強度を得ることができる。またSiO2が60%以下であればガラス溶融に長時間を要することがないため生産性に支障をきたすことがない。58%以下であればガラス板のプレス成形過程や、蛍光ランプの製造過程での熱加工を円滑に行うことができる。
【0031】
23は、ガラスの骨格を構成する成分であるが、融解温度が低いためガラスの溶融性の向上、粘度の低下のために有効な成分である。一方で含有量が多すぎるとガラスが分相しガラス成形が困難となる。その含有量は10%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは7.5%以下である。B23の含有量が10%以下であればガラス板およびガラス管の製造工程で分相することなく生産ができ、8%以下であればさらに長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。
【0032】
Al23は、ガラスの骨格を構成する成分であり、ガラスの安定性を改善し、またガラスの分相を抑制する効果がある。一方で、粘度を上げる傾向があるため、多すぎるとガラスを成形することが困難となる。その含有量は10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下である。Al23が10%以下であればガラス融液の粘度が高くなりすぎず、ガラスの溶融、ガラス板およびガラス管の成形が容易となる。7%以下であればガラス板のプレス成形過程や、蛍光ランプの製造過程での熱加工を円滑に行うことができる。
【0033】
MgOとCaOは、ガラス骨格の隙間に充填される成分である。ガラスの熱膨張係数αを大きく上げることなくガラスの溶融性を向上させる効果があり、また誘電特性の向上に効果がある。その一方で結晶傾向を強めるため、ガラスを失透しやすくする成分である。また、含有量が多すぎると熱膨張係数αを大きくする。
【0034】
MgO及びCaOの含有量はそれぞれ10%以下であり、好ましくはそれぞれ8%以下である。MgOやCaOの含有量がそれぞれ10%以下であるとガラス板およびガラス管の製造工程での失透が起こりにくくなり、工業レベルでの生産が可能となる。また熱膨張係数αも大きくなりすぎないためサーマルショックによる破損の頻度も低くなる。MgOやCaOの含有量がそれぞれ8%以下であるとさらに長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。また熱膨張係数αの増大がさらに抑制され、サーマルショックによる破損の頻度もさらに低くなる。
【0035】
SrO及びBaOはガラス骨格の隙間に充填される成分である。ガラスの熱膨張係数αを大きく上げることなくガラスの溶融性を向上させる効果があり、また誘電特性を向上する効果がある。特にBaOは誘電特性を向上する効果が大きい。一方で結晶を析出しガラスを失透しやすくする成分である。また含有量が多すぎると熱膨張係数αを大きくする。
【0036】
SrOの含有量は9%以下であり、好ましくは8%以下である。SrOの含有量が9%以下であるとガラス板およびガラス管の製造工程での失透が起こりにくくなり、工業レベルでの生産が可能となる。また熱膨張係数αも大きくなりすぎないため、サーマルショックによる破損の頻度も低くなる。8%以下であると失透が見られず、長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。また熱膨張係数αの増大がさらに抑制され、サーマルショックによる破損の頻度もさらに低くなる。なおSrOは必須成分ではないが、0.5%以上、特に1%以上含有させることが好ましい。
【0037】
BaOの含有量は5%以上、好ましくは7.5%以上である。また25%以下、好ましくは23%以下、より好ましくは22.5%以下である。BaOの含有量が5%以上であると誘電率εを上げ、誘電正接tanδを下げる効果が得られる。7.5%以上であると誘電率εを上げ、誘電正接tanδを下げる効果が著しく向上する。BaOの含有量が25%以下であるとガラス板およびガラス管の製造工程での失透が抑制され、工業レベルでの生産が可能になる。また熱膨張係数αが大きくなりすぎないため、サーマルショックによる破損の頻度も低くなる。23%以下であると長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。また熱膨張係数αの増大がさらに抑制され、サーマルショックによる破損の頻度もさらに低くなる。
【0038】
ZnOはガラス骨格の隙間に充填される成分であり、アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)とSiO2との結晶が析出するのを抑制する成分である。また誘電特性の向上にも効果のある成分である。一方でZnOの含有量が多すぎるとZnOを含む結晶を析出し易くなるため、ガラスの失透傾向が強くなる。ZnOの含有量は13%以下であり、好ましくは12%以下である。ZnOの含有量が13%以下であるとガラス板およびガラス管の製造工程での失透が抑制され、工業レベルで生産することができる。12%以下であると長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。なおZnOは必須成分ではないが、0.5%以上、特に1%以上含有させることが好ましい。
【0039】
ΣRO(MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの合量)により、ガラスの誘電特性を大まかに予測できる。即ち、この合量が多くなるほど誘電率εが高くなり、誘電正接tanδが小さくなるため、誘電特性が向上する。一方で合量が多すぎると結晶が析出しやすくなる。ΣROは20%以上であり、好ましくは25%以上である。ΣROが20%以上であると外部電極ランプ用外套容器として必要な誘電特性を満たすことができる。25%以上であると充分高い誘電率を得ることができるため、ランプ端子への投入電力が少なくてよく省電力化できる。一方、ΣROが40%以下であるとガラス板およびガラス管の製造工程での失透を抑制することができ、工業レベルで生産することができる。38%以下であると長期にわたって連続的な安定生産を行うことができる。
【0040】
Li2O、Na2O、K2Oなどのアルカリ金属酸化物はガラス骨格の隙間に充填される成分である。ガラス原料を溶けやすくする融材として働き、ガラス溶融を容易にする効果がある。また誘電率εを向上させる傾向をもつ成分である。一方で含有量が多くなると誘電正接tanδが高くなり、体積電気抵抗logρが低くなり、熱膨張係数αが大きくなる。このためこれらの成分の合量Li2O+Na2O+K2O(=ΣR2O)は5%以上、9.8%以下である。ΣR2Oが5%以上であるとガラス溶融で原料を溶かすに支障がなく生産が安定し、誘電率εを向上させる傾向も大きくなる。また、9.8%以下であると熱膨張係数αが大きくなりすぎず、誘電正接tanδ、体積抵抗率logρも大きくなり過ぎない。
【0041】
なおアルカリ含有量を低下させずに誘電正接tanδや体積抵抗率logρの増大を抑制するには、アルカリ混合効果を利用すればよい。そのためには、各成分の含有量をLi2O 0〜5%、好ましくは0〜3%、Na2O 0.1〜8%、好ましくは0.3〜5%、K2O 0.5〜8%、特に1〜7%の範囲に調節することが好ましい。
【0042】
またアルカリ金属酸化物の中で、特にLi2OとNa2Oの含有量が大きくなりすぎると体積抵抗率logρが大きくなる。そこでより的確にアルカリ混合効果を得るためにLi2O/ΣR2Oを0.4以下、Na2O/ΣR2Oを0.6以下に調節することが望ましい。これらの比が上記の範囲であると体積抵抗率ρの上昇を抑制する効果が大きく好ましい。
【0043】
また(ΣRO+ΣR2O)/(SiO2+B23+Al23)によりガラスの誘電率εを予測できる。即ち、この比が大きいほど誘電率が高くなる。ガラスの誘電率εを向上させるためにはガラス骨格の隙間にアルカリ金属イオン(Liイオン、Naイオン、Kイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(Mgイオン、Caイオン、Srイオン、Baイオンなど)、或いはZnイオンなどを密に充填させることが有効である。(ΣRO+ΣR2O)/(SiO2+B23+Al23)の比は0.55以上であることが好ましい。この比が0.55より小さいと誘電率εを向上させる効果が小さい。ただし0.85より多いと熱膨張係数αが大きくなりすぎるため好ましくない。
【0044】
なお、原子番号の大きい元素ほど誘電率εを向上させる効果が大きい。即ち、R2O中では、K2Oが最も誘電率を向上させる効果が大きく、次いでNa2Oである。RO中では、BaOが最も効果が大きく、次いでSrOやZnOである。それゆえこれらの成分を優先的に選択して使用することが好ましい。
【0045】
TiO2はアルカリ土類酸化物と共存すると誘電率εを向上させる効果を発揮する成分である。またランプから発生する紫外線を遮蔽する効果のある成分である。一方で含有量が多すぎるとTiO2の結晶を析出するためガラス成形の支障となる。TiO2の含有量が5%以下であればTiO2の結晶を析出することがなく安定したガラス成形を行うことができる。
【0046】
CeO2はランプから発生する紫外線を遮蔽する効果のある成分である。またガラスの溶融時の泡切りを良くする清澄剤成分である。一方で含有量が多くなるとガラスが黄色に着色するため外套容器としては好ましくない。それゆえCeO2の含有量は3%以下に制限される。3%より多いとガラスが著しく黄色に着色するため好ましくない。
【0047】
なおWO3、Nb25もランプから発生する紫外線を遮蔽する効果のある成分であり、必要に応じてそれぞれ3%まで添加することができる。また、これらの成分はガラス骨格の隙間に充填されるため誘電率εの向上にも効果がある。ただし3%より多いとガラスが失透するため好ましくない。
【0048】
上記以外にもガラス骨格の隙間に充填され、誘電率ε向上に効果があると考えられるZrO2、Fe23、Sb23、As23、PbO、Y23、Ga23、MoO3、希土類酸化物、ランタノイド酸化物種々の成分を添加可能である。また、清澄剤としてSO2、Cl2などをそれぞれ1%以下含有することができる。
【0049】
本発明の外套容器において、容器を構成するガラスの好ましい組成範囲は、質量%で、SiO2 45〜60%、B23 0〜8%、Al23 0〜8%、MgO 0〜8%、CaO 0〜8%、SrO 0〜8%、BaO 7.5〜25%、ZnO 0〜12%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜3%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 25〜40%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O) 5〜9.8%であり、特に望ましい範囲は質量%で、SiO2 48〜58%、B23 0〜7.5%、Al23 0〜7%、MgO 0〜8%、CaO 0〜8%、SrO 0〜8%、BaO 7.5〜22.5%、ZnO 0〜12%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜2%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 25〜38%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O)5〜9.8%である。
【0050】
次に本発明の外部電極蛍光ランプ用外套容器の製造方法を説明する。
【0051】
まず管形状の外套容器を製造する場合について述べる。
【0052】
上記組成となるように原料を調合し、混合した後、溶融炉にて溶融する。このとき必要に応じてガラス中の水分量を調整する。次に溶融ガラスをダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法等の管引き法を利用して管状に成形する。その後、管状ガラスを所定の寸法に切断し、必要に応じて後加工することにより、外部電極蛍光ランプ用外套容器を得ることができる。
【0053】
次に平面型の外套容器を製造する方法を述べる。
【0054】
上記組成となるように原料を調合し、混合した後、溶融炉にて溶融する。このとき必要に応じてガラス中の水分量を調整する。次に溶融ガラスをオーバーフロー法、フロート法、スロットダウン法等の方法で板引き成形する。その後、板状ガラスを所定の寸法に切断し、必要に応じて後加工することにより、背面板を得る。また同様にして作製した板ガラスをプレス加工等により再成形することによって、放電空間となる一つ又は複数の凹部を形成する。このようにして前面板を得る。その後、封着材等を用いて前面板と背面板を封着する。なお、予め前面板及び背面板の所定箇所に蛍光体を塗布しておいてもよい。このようにして一つ又は複数の放電空間を有する平面型外部電極蛍光ランプ用外套容器を得ることができる。
【0055】
得られた外套容器を用い、常法に従って外部電極蛍光ランプを作製することができる。なお蛍光ランプを組み立てるに先立って、外套容器外面、例えば管形状の外套容器であればその両端近傍に、また平面型の外套容器であれば背面板に、それぞれ電極を形成しておくことができる。
【実施例1】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。表1〜3は本発明の外套容器を構成するガラスの実施例(試料No.1〜13)を、表4〜6は比較例(No.14〜24)を示している。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
まず、表の組成となるようにガラス原料を調合した後、白金坩堝を用いて1500℃で5時間溶融した。溶融後、融液を所定の形状に成形、加工して各ガラス試料を作製した。なお原料は、天然鉱物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩等が使用可能であり、原料の分析値を考慮して調合すればよく、原料の種類は限定されない。
【0064】
次に得られたガラス試料について種々の特性を評価した。結果を表7〜12に示す。
【0065】
【表7】

【0066】
【表8】

【0067】
【表9】

【0068】
【表10】

【0069】
【表11】

【0070】
【表12】

【0071】
なお1MHz、室温での誘電率εと誘電正接tanδ、250℃における体積抵抗率logρについては、各ガラス試料から50×50×3tmmの大きさの板状試料を作製し、30mmφの電極を貼り付け、LCRメーターで測定した。誘電率εと誘電正接tanδの測定条件は1MHz、25℃とした。
【0072】
40KHzでの誘電率εと誘電正接tanδの評価は次のようにして行った。まず図3に示すように、#1000仕上げの直径20mm、厚さ1mmの円盤状試料Gを用意し、その片面に、外径14.5mmの主電極aと、主電極aの外側に同心状に設けられた外径20mm、内径16mmのガイド電極bとをそれぞれ金蒸着にて作製した。また試料のもう一方の面には、その全面に対電極cを金蒸着にて作製した。
【0073】
測定装置は、図4に示すように、ヒーター100と、試料測定室110と、LCRメーター(図示せず)とを有する構造になっている。ヒーターは無誘電巻きしたテープヒーターを使用している。試料測定室110は、ヒーター100の影響による電磁誘導を避けるために、シールド(金属筒)120内に設置されている。また試料測定室110には、試料Gの主電極aと接するための主電極用端子111、及びガード電極bと接するためのガード電極用端子112とが一体的に昇降可能に設けられている。主電極用端子111はLCRメーターの端子と、ガード電極用端子112はLCRメーターのガード端子と、それぞれ導線を介して接続されている。また試料測定室110内の上部には、試料Gの対電極cと接するための対電極用端子113が設けられている。対電極用端子113は、LCRメーターの端子に導線を介して接続されている。また対電極用端子113の導線と主電極用端子111の導線との間での影響がないように、両者間にはシールド(アルミニウム箔、図示せず)が設けられている。また試料測定室110内に保持される試料Gの近傍には、サーモメーターに接続された熱電対114が設置されており、試料温度が測定できるようになっている。
【0074】
上記測定装置を用いて試料Gの誘電特性を測定するには、まず、試料Gを主電極用端子111及びガード電極用端子112上に載置する。次いで両端子を上方へ移動させ、上部に設置された対電極用端子113に押しつけられた状態で試料Gを保持する。続いてヒーター100で試料Gを加熱し、所定温度になったときの誘電特性を、LCRメーターによって測定する。このようにして、室温−1MHz、40KHz−150℃、40KHz−250℃、40KHz−350℃の条件で誘電正接を測定した。
【0075】
熱膨張係数αは、熱膨張測定器にて測定した。
【0076】
液相粘度は次のようにして求めた。まず、粒径0.1mm程度に粉砕したガラスをボート状の白金容器に入れ、温度勾配炉に24時間保持した後、取り出した。この試料を顕微鏡で観察して結晶の初相が出る温度(液相線温度)を測定し、次いで予め測定しておいた当該ガラスの温度と粘度の関係から、初相の温度に対応する粘度(液相線粘度logρ)を求めた。
【0077】
粘度に相当する温度は、ASTM C336、ASTM C338及び球引き上げ法によって求めた。
【実施例2】
【0078】
実施例1で使用したガラス試料と同一組成を有するガラスを用いて管型の外部電極蛍光ランプ用外套容器を作製する方法を述べる。
【0079】
まず各試料と同等のガラスとなるように調製した原料を耐火物窯で、1500℃、24時間溶融する。その後、ガラス融液をダンナー成形装置に供給して管引きし、切断することにより、外径3.0mm、肉厚0.3mm、長さ800mmの管ガラスを得、これを外套容器とすることができる。
【0080】
このようにして得られる外套容器は、管型外部電極蛍光ランプの製造に供される。
【実施例3】
【0081】
実施例1で使用したガラス試料と同一組成を有するガラスを用いて平面型外部電極蛍光ランプ用外套容器を作製する方法を述べる。
【0082】
まず各試料と同等のガラスとなるように調製した原料を耐火物窯で、1500℃で溶融する。その後、ガラス融液を、フロート成形装置に供給して板引きし、切断することにより、300×200mm、肉厚0.9mmの板ガラスを得、これを外套容器用背面板とする。また同様にして作製した300×200mm、肉厚0.9mmの板ガラスを金型によりプレス加工して放電空間形成用の凹部を形成し、外套容器用前面板を得る。
【0083】
このようにして得られる背面板及び前面板は、予め接合されて箱形(外套容器)とされた後、平面型外部電極蛍光ランプの製造に供される。或いはランプの製造工程の途中で、或いは最終工程で接合されて平面型外部電極蛍光ランプの外套容器を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】平面型の外部電極蛍光ランプを示す説明図である。
【図2】管型の外部電極蛍光ランプを示す説明図である。
【図3】誘電特性を測定する試料を示す説明図であり、(a)は試料を側面から見た図を、(b)は試料を底面側から見た図を示している。
【図4】誘電特性を測定する装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 外套容器用背面板
2 外套容器用前面板
3 電極
4 蛍光体
5 スペーサー
6 外套管
10 電源
L、L1、L2 外部電極蛍光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に電極が設けられた構造を有する外部電極蛍光ランプの作製に用いられる外套容器であって、質量%で、SiO2 45〜60%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜9%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜13%、TiO2 0〜5%、CeO2 0〜3%、ΣRO(=MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO) 20〜40%、ΣR2O(=Li2O+Na2O+K2O) 5〜9.8%含有するガラスからなることを特徴とする外部電極ランプ用外套容器。
【請求項2】
質量比で、Li2O/ΣR2Oが0.4以下であることを特徴とする請求項1の外部電極ランプ用外套容器。
【請求項3】
質量比で、Na2O/ΣR2Oが0.6以下であることを特徴とする請求項1又は2の外部電極ランプ用外套容器。
【請求項4】
質量比で、(ΣRO+ΣR2O)/(SiO2+B23+Al23)が0.55〜0.85であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項5】
30〜380℃における熱膨張係数αが70〜90×10-7/℃であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜4の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項6】
1MHz、室温の誘電率εが6.5以上、誘電正接tanδが0.003以下であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜5の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項7】
250℃における体積抵抗率logρが9.5以上であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜6の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項8】
40KHz、150℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.01以下であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜7の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項9】
40KHz、250℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.02以下であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜8の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項10】
40KHz、350℃の誘電率εが7以上、誘電正接tanδが0.1以下であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜9の何れかの外部電極ランプ用外套容器。
【請求項11】
液相粘度logηが5.2以上であるガラスからなることを特徴とする請求項1〜10の何れかの外部電極ランプ用外套容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−182366(P2007−182366A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317923(P2006−317923)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】