外部電気刺激時における生理的信号のモニタリング
【課題】生理的モニタリングに対する刺激アーチファクトの影響を減少できる外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを提供する。
【解決手段】差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択される第1および第2の外部モニタリング用電極は、検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に配置される。該3つ以上のモニタリング用電極は、刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極は異なる距離に位置する2つの電極から選択される。
【解決手段】差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択される第1および第2の外部モニタリング用電極は、検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に配置される。該3つ以上のモニタリング用電極は、刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極は異なる距離に位置する2つの電極から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の外部電気刺激(たとえば、ペーシング)時における患者の体外における生理的信号(たとえば、ECG信号)のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
患者への電気刺激の送出中または送出後に、生理的信号をモニタすることが望ましい場合は多い。たとえば、通常、外部心臓ペーシング中にはECG信号がモニタされる。しかしながら、電気信号により、モニタした信号中に刺激アーチファクトが発生することがある。このようなアーチファクトを小さくするため、故意にモニタリング用電極を刺激用電極から相当の距離に配置することも多い。身体を通じて離すことにより刺激アーチファクトは減衰され、目的の観測生理的信号に与える影響も小さくなる。たとえば、図1には、外部心臓ペーシング中に患者をモニタリングするための標準ECGリード配置を示す。2つのECGリードを胸部高位の各腕部近くに配置し、第3のリードを胸部下位の一脚部近くに配置して、すべてのリードを刺激用電極から相当の距離に配置する。このようにモニタリング用電極を離して配置するためには、典型的には、介護者が患者上に5つの別個の電極を配置して、それぞれのECG電極に別個のモニタリングケーブルを繋ぐ必要がある(通常、刺激用電極には予めケーブルが接続されている)。
【0003】
別個のモニタリング用電極を離して配置することに代えて、刺激用およびモニタリング用の両方に刺激用電極を用いることがある。理論上、モニタリングは刺激用パルス間のインターバル中に可能であるが、通常、そのようなインターバルの大半には大きな刺激アーチファクトが存在するため、ペーシング中のECGモニタリングに刺激用電極を使用することは通常は実用的ではなかった。たとえば、ペーシング用パルスによって誘導されるECG信号は、ペーシング用パルス後200ミリ秒以内に発生することが多く、これは刺激アーチファクトが充分に減衰して適切なモニタリングが可能になる前である。
【0004】
離して配置したモニタリング用電極にてECGを検出するときであっても、ペーシング中の刺激アーチファクトによりECGの解釈は困難となる。一般に、ECGは、ペーシングの有効性を評価し、必要に応じて刺激エネルギーの調整を行えるように、充分にクリーンであることが求められる。刺激アーチファクトが大きいため、そのような評価が困難もしくは不可能となる場合も多い。
【0005】
内部ペーシングでは心臓に直接与えられる電流は非常に小さいので、従来技術において刺激用電極を介したモニタリングが行われてきた。ECG信号における刺激アーチファクトの問題は、主として、より高い電流およびより大きな治療用電極のため充分に離して配置された別個のモニタリング用電極の使用が必要となる外部ペーシングに関して生じる。外部心臓除細動においても同様の問題があるが、ペーシングの場合のように刺激後の数ミリ秒以内にECG信号を検出する必要性は少ない。
【0006】
電気刺激では、電流を身体に送出することが必要である。電流は、一方の刺激用電極から他方の刺激用電極へ流れるので、刺激用パルスの送出に続いて刺激用電極が分極する(2つの電極において逆の極性に帯電する)ことが多い。刺激アーチファクトは、刺激用パルス中および刺激用パルス後の両方にてモニタリング用電極において見られ、通常、刺激アーチファクトの振幅は、2つの刺激用電極の電位の差により発生する電界におけるモニタリング用電極の位置により決まる。
【0007】
通常、生理学的モニタリングシステムはモニタリング用電極の間の電位差を増幅する。
目的とする信号の大きさが、刺激アーチファクトの大きさよりもはるかに小さいことも多い。そのため、刺激アーチファクトにより生理的信号が覆い隠されたり、モニタリングに用いる回路が飽和されてしまうことも多い。用途によっては、刺激中または刺激の直後に生理学的波形を捕捉する必要があり(たとえば、心臓ペーシング)、刺激アーチファクトの存在が問題となる。
【0008】
生理学的モニタリングにおける刺激アーチファクトの影響を軽減するための努力がなされてきた。ウェイ(Way)は、特許文献1および特許文献2において、1つのアセンブリにて刺激用電極から短い距離に別個のモニタリング用電極を配した電極アセンブリを提案している。デュペル(Dupelle)らは、2004年10月5日に出願の特許文献3において、刺激後に脱分極電流を与えて分極アーチファクトを減少させることを教示している。ハウク(Hauck)らは、特許文献4において、埋め込み電極に対する解決策を教示している。この埋め込み電極では、外部電極におけるよりも刺激がはるかに弱く、埋め込みリードの表面積が外部電極のパッドよりもはるかに小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,955,381号明細書
【特許文献2】米国特許第5,080,099号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/958,987号明細書
【特許文献4】米国特許第5,330,512号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
我々は、外部ペーシングにおいて、電極間の電位を測定するための複数の外部モニタリング用電極を、2つのモニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号において刺激アーチファクトがほぼ相殺されるように構成した場合、生理的モニタリングに対する刺激アーチファクトの影響を減少できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。この電極アセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトがほぼ相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成される。
【0012】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含んでよい。第1および第2の外部モニタリング用電極は電気的アーチファクトがほぼ等しい位置に存在してよい。刺激用パルスは心臓刺激用パルスを含み、差分信号はECG信号を含んでよい。心臓刺激用パルスはペーシング用パルスを含んでよい。電極アセンブリは患者の外部に適用される3つ以上のモニタリング用電極を備え、第1および第2のモニタリング用電極は差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択されてよい。第1および第2のモニタリング用電極は使用者により手動で選択されるのではなく、装置により自動的に選択されてよい。第1および第2のモニタリング用電極の自動的な選択は時間に
より変化してよい。3つ以上のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極の選択は異なる距離に位置する2つの電極の間の選択を含んでよい。2つの電極の間の選択は時間により変化してよい。電極アセンブリは少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含んでよい。組み合わせを作成する手法は時間により変化して、第2および第3の電極における電気的アーチファクトの相対的大きさの時間による変化を補償してよい。電極アセンブリは患者の外部に適用される少なくとも第4のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含んでよい。第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとのうちの一方または双方は時間により変化してよい。位置決め要素は外部刺激用電極と第1および第2のモニタリング用電極とを支持する共通基板を含んでよい。位置決め要素は第1および第2のモニタリング用電極の刺激用電極からの距離を規定するワイヤなどの要素を含んでよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極の作用領域と刺激用電極のうちの1つの作用領域との間のエッジ間距離は10センチメートル未満であってよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから等しい距離に位置してよい。電極アセンブリは、分離電極のうちの1つから第1および第2の電極と等しい距離に位置する第3のモニタリング用電極を含んでよい。刺激用パルスの後に刺激用電極が分極したとき、2つの刺激用電極の間に形成される電界においてほぼ等電位であるように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が位置してよい。第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つを支持する第2の基板から離れた第1の基板上に支持されてよい。第1および第2のモニタリング用電極を支持する第1の基板は第2の基板をほぼ包囲してよい。刺激用パルスの後に刺激用電極が分極したとき、2つの刺激用電極の間に形成される電界においてほぼ等力線に沿うように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が位置してよい。第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つを支持する第2の基板から離れた第1の基板上に支持され、第1および第2の基板は患者の所望の相対位置に容易に適用される形状とされてよい。第1の基板は環状であり、第2の基板は円形であり、両基板は両基板の距離が径方向にほぼ等しいようにほぼ同心状に位置してよい。心臓ペーシング用パルスの中断後100ミリ秒以内に測定したECG差分信号における電気的アーチファクト電位は約10ミリボルト未満であってよい。ペーシング用パルスが心臓捕捉用に充分な振幅であるとき、ECG差分信号における電気的アーチファクト電位はQRS振幅の5倍未満であってよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が接続されるインピーダンスマッチング回路を含んでよい。インピーダンスマッチング回路は電極インピーダンスの不均衡を生じさせ、両モニタリング用電極における電気的アーチファクト電位の変化を補償してよい。標準3リードECG信号に相当するECG信号を導出するための変換において用いられる複数の差分信号が存在してよい。
【0013】
第2の態様では、本発明は、心臓の外部モニタリング用および外部刺激用の装置を特徴とする。この装置は、体外に適用されるように構成された第1の極性の刺激用電極および第2の極性の刺激用電極と、少なくとも第1の極性の刺激用電極は刺激用パルス印加用の複数の小電極を備えることと、複数の小電極は刺激用に充分な総領域を有することと、小電極のうちの2つにて検出された電位の間の差を含む差分信号を形成することによりECG電位をモニタリングするための処理回路とからなり、分極による刺激アーチファクトが両小電極においてほぼ等しく、刺激アーチファクトが差分信号においてほぼ相殺されるように、差分信号を形成するために用いられる2つの小電極を配置および構成するように構成される。
【0014】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよ
い。刺激用パルスは胸部の外側に印加される心臓ペーシング用パルスを含んでよい。第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極は1つのアセンブリを形成してよい。第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極の各々の間の距離が一定であるように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極の位置はアセンブリ上に固定されてよい。
【0015】
第3の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。この電極アセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、1つ以上の外部モニタリング用電極と、刺激用電極およびモニタリング用電極を支持する裏張り層と、刺激用電極およびモニタリング用電極の両方と電気接触する共通ゲル層とを備え、外部刺激用電極は刺激用導電板を含み、モニタリング用電極はモニタリング導電板を含み、刺激用導電板とモニタリング導電板とは離間されている。
【0016】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。共通ゲル層は固体ゲルまたはハイドロゲルを含んでよい。
第4の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、1つ以上の外部モニタリング用電極と、刺激用電極およびモニタリング用電極を支持する裏張り層と、刺激用電極と電気接触する第1のゲル層と、モニタリング用電極と電気接触する第2のゲル層とを備え、外部刺激用電極は刺激用導電板を含み、モニタリング用電極はモニタリング導電板を含み、刺激用導電板とモニタリング導電板とは離間されており、第1のゲル層と第2のゲル層とは離間されており、第1のゲル層および第2のゲル層のうちの一方は固体ゲルまたはハイドロゲルを含み、第1のゲル層および第2のゲル層のうちの他方は液体ゲルを含む。
【0017】
第5の態様では、本発明は、患者の外部刺激用またはモニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、電極アセンブリ内に支持された少なくとも第1および第2の電極と、第1の電極に近接配置された第1のゲル層と、第2の電極に近接配置された第2のゲル層とを備え、第1および第2のゲル層の湿分含有量は異なり、第1および第2のゲル層のうちの一方から他方への湿分の移動を遅延させるように寸法決定および配置された防湿材層とを含む。
【0018】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。防湿材は、ポリエステルフィルムからなるものであってよい。防湿材はアルミニウムフィルムからなるものであってよい。電極アセンブリは心臓刺激用に構成されており、第1の電極は刺激用電極を含み、第2の電極はモニタリング用電極を含んでよい。第1のゲル層は液体ゲルを含み、第2のゲル層は固体ゲルを含んでよい。第1のゲル層は第1の湿分含有量の固体ゲルを含み、第2のゲル層は第1の湿分含有量よりも大きい第2の湿分含有量の固体ゲルを含んでよい。防湿材はポリエステルフィルムを含んでよい。防湿材はアルミニウムフィルムを含んでよい。
【0019】
第6の態様では、本発明は、心臓刺激用および心臓モニタリング用の多電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、患者の胸部において電位をモニタするように構成されたモニタリング用電極と、1つ以上の刺激用パルスを患者の胸部に送出するように構成された刺激用電極と、第1および第2のケーブル端を有する電極ケーブルと、第2のケーブル端と刺激用電極との間に電気的に配置された非線形回路要素とを備え、第1のケーブル端は外部心臓装置に接続するように構成され、第2のケーブル端はモニタリング用電極および刺激用電極に接続するように構成され、非線形回路要素は刺激用パルスの送出中に導電し、刺激用パルスの送出後に刺激用電極の残留電位の存在下で導電を遮断するように構
成される。
【0020】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。非線形回路要素は1つ以上のダイオードまたはガス放電管を含んでよい。非線形回路要素は、一方の極性の波形における一方の経路および他方の極性の波形における他方の経路を通じて電流が流れる二相の刺激波形が刺激用電極に送出されるように、両経路に沿って非線形回路要素が逆の極性を有する並列経路をケーブルと刺激用電極との間に形成する2つ以上の非線形回路要素を含んでよい。並列経路のうちの1つにおける1つ以上の非線形回路要素の正味のオフセット電位を予想される残留電位より高く設定することにより、刺激用電極の残留電位の存在下における導電性を同経路に沿って遮断してよい。非線形回路要素は1つ以上のトランジスタを含んでよい。非線形回路要素は一方向の電流を遮断し、他方向の電流を流してよい。電極ケーブルは1つの導電体からなり、第1および第2のケーブル端は同1つの導電体の第1および第2の端部であってよい。電極アセンブリは電極ケーブルとモニタリング用電極との間の電気的な経路に配置され、かつ、刺激用電極への刺激用パルスの送出中にモニタリング用電極に流れる電流を減少させるように構成された高インピーダンス要素を含んでよい。電極アセンブリはモニタリング装置を含み、このモニタリング装置は1つ以上の電極からまたは同電極をモニタリング装置に接続するために使用するコネクタから非標準モニタリング構成を自動的に識別し、非標準モニタリング構成を識別した場合、検出される電位の信号処理を自動的に変更するためのモニタリング装置であってよい。電極アセンブリは体上に配置するための第3の電極を含み、電位から形成される信号は第3の電極に対して第1および第2の電極にて測定された電位の総和を含み、測定された電位において電気的アーチファクトが同等の大きさであり逆の極性を有するため、電気的アーチファクトはほぼ相殺されてよい。少なくとも第1および第2の刺激用電極が存在し、第1のモニタリング用電極は第1の刺激用電極付近に配置され、第2のモニタリング用電極は第2の刺激用電極付近に配置されてよい。時間により変化する手法により信号が形成されてよい。信号は第1および第2のモニタリング用電極における電位の組み合わせを作成することにより形成され、同組み合わせは時間により変化する手法により作成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】刺激用電極およびモニタリング用電極の従来技術の配置を示す概略図。
【図2】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の一実施例の平面図。
【図3】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図4】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図5】2つのモニタリング用電極の間に電位差を生じる差分増幅器の入力に可変インピーダンスが与えられる一実施例の電気図。
【図6】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図7】本明細書に示す電極を用いて検出された非標準ECG信号を変換することにより標準3リードECG信号の推定値を導出する一実施例のブロック図。
【図8】ダイオードを用いて電極アセンブリへの電気リードの数を減少させる一実施例の平面図。
【図9】2つのモニタリング用電極にて検出された信号の間に差を生じるための一実施例の電気図。
【図10】1つのモニタリング用電極を刺激用電極と組み合わせた一実施例の平面図。
【図11】2つの刺激用電極の間の電流の物理と、2つのモニタリング用電極からのECG信号の検出を説明する概略図。
【図12】一方の極性の刺激用電極を3つの小電極に分割した電極実施例の部分概略図。3つの小電極の全てが刺激用であってもよく、小電極のうちの2つがECGモニタリング用であってもよい。
【図13】一方の極性の刺激用電極を2つの小刺激用電極に分割した電極実施例の平面図。
【図14】一方の極性の刺激用電極を2つの小刺激用電極に分割し、小刺激用電極の各々の中央に別個のモニタリング用電極を配置した電極実施例の部分概略図。
【図15】刺激用電極および3つのモニタリング用電極を有する前面アセンブリと、刺激用電極のみを有する背部アセンブリとの2つの胸部電極アセンブリが、刺激用電気コネクタを共有する一実施例の平面図。
【図16】前面電極の構成を示す図15の16−16に沿った分解断面図。
【図17】後部(または背部)電極の構成を示す図15の17−17に沿った分解断面図。
【図18】図2の実施例および標準化3リード電極の配置を示す平面図。
【図19】行列変換を用いて非標準電極位置から合成される標準モニタリングベクトルの一例を示す図。
【図20】内部防湿材を備える一電極実施例の断面図。
【図21】図20の実施例において用いられ得る1つの防湿材の層を示す断面図。
【図22】2つのECGモニタリング信号(上側の2つの信号)およびこれらの信号(下側の信号)のスケーリング後の和を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の多くの利点(そのうちのいくつかは、本発明の様々な態様および実施例のいくつかにおいてのみ達成される)として以下がある。刺激アーチファクトを減少させることで、刺激用電極およびモニタリング用電極を体外に近接して配置することができる。これにより、たとえば、1つの刺激用電極と、1つ以上のモニタリング用電極とを随意で1つのアセンブリ中で組み合わせることが可能となる。複数の電極を1つのアセンブリに組み合わせることにより、電極と刺激用/モニタリング装置との間の配線および接続も改良される。モニタリング用電極と刺激用電極とを1つのアセンブリに組み合わせることにより、電極の適用および接続に要する時間を短縮できることから、緊急の場面において大きな助けとなる。
【0023】
1つの実施例を図2および図15〜17に示す。前面電極14は、中央の刺激用電極18から等距離に配置された3つのモニタリング用電極20を備える。3つすべてのモニタリング用電極20と刺激用電極18とは、共通のアセンブリ上に支持されている。背部電極12は刺激用電極16のみを備えるが、随意で、1つ以上の一体化されたモニタリング用電極を備えてもよい。
【0024】
刺激用電極の作用領域の直径は約10cmである。各モニタリング用電極の作用領域の直径は約2cmである。各モニタリング用電極の作用領域の縁は、隣接する刺激用電極の作用領域の縁から約1cm離れている。
【0025】
電極パッドアセンブリに対しては様々な構成が可能である。図16〜17は、1つの可能な構成を示している。材料は、弾性と皮膚面に対する追従性とを提供するものを選ぶ。図16には、胸部の前面に適用するように構成された電極アセンブリを示す。フォームカバー(即ち、裏張り)層24(たとえば、Voltek Volara(商標))は、電極の背面(患者から遠い方の上面)全体に伸展する。3つのモニタリング用電極の各々は、ニッケルメッキしたブラススナップ21を、フォームカバー層の開口部を通じてAgCl台座22に固定することによって形成される(これに代えて、リードをモニタリング用
電極に接続してもよい)。フォームカバー24の下には、フォームフレーム層28がある。この層には、各AgCl台座(AgClメッキしたガラス充填ABS)が多孔性フォームスポンジ23と接触するための開口部が設けられる。フォームスポンジ23にはECGゲル35(たとえば、Pharmaceutical Innovations(商標)QR)が含浸されている。刺激用電極18は、電極アセンブリの中央にある導電板29(たとえばスズ)によって提供される。導電板はフォームフレーム層28の下側に支持されている。導電板の下には、患者との導電接触を行う導電層30が設けられている。導電層30は、たとえば、ハイドロゲル(たとえば、Ludlow(商標)63Tハイドロゲル)などの固体ゲルなどである。一方の縁部において、導電板の部分38はフォームフレーム層の開口部を通じて延び、25にてリード26に機械的かつ電気的に接続される。リード26は、電気コネクタ40まで延びている。電気コネクタ40には背部電極アセンブリからのリード26も接続されている。
【0026】
導電性の皮膚接触層23,30に対しては様々な代替物を用いることができる。そのようなものとして、以下に限定されないが、固体導電性ゲル(たとえば、ハイドロゲル)、液体ゲルで充填した多孔性材料、および生理食塩水などの導電性溶液を含浸させた多孔性材料などが挙げられる。
【0027】
図17には、胸部の背面に適用するように構成された電極アセンブリを示す。モニタリング用電極を備えること、円形ではなく矩形の刺激用電極を備えること以外は、前面電極と同様の構成を有する。導電板33はフォーム裏張り層32の下面に支持されている。導電層34は患者と接触する。導電層34は、たとえば、前面刺激用電極において使用されたものと同じハイドロゲルなどの固体ゲルである。導電板の部分38は、裏張り層32の開口部を通じて延び、リード26に接続される。絶縁体フォーム裏張り層31はフォーム裏張り層32の上部まで延びる導電板の部分38を覆う。
【0028】
図2および図15〜17の実施例において、モニタリング用電極20はすべて刺激用電極18から等距離に配置されている。刺激用電極間を流れる電流がすべての方向においてほぼ同一である場合、各モニタリング用電極によって測定されるアーチファクトは類似しており、信号の差を取ることにより電位差を生じるときに相殺される。しかしながら、刺激用電極から等距離にモニタリング用電極を配置することにより、3つのモニタリング用電極のすべてにおいて測定される刺激アーチファクトが同一になることが保証される訳ではない。伝播因子、モニタリング用電極のインピーダンス、電流経路、電界の形状および他の変数が、測定されるアーチファクトに影響を与え得る。伝播因子のうちのいくつか、たとえば、呼吸や血流は、時間により変化することもある。電流は、表面特性および体の解剖学的構造による影響を受けることもある。
【0029】
しかしながら、多くの場合、刺激用電極から等距離にモニタリング用電極を配置することで、差分信号(2つのモニタリング用電極間の電位差)において許容可能なまでに刺激アーチファクトを減少させるの充分な相似した刺激アーチファクトが得られる。残りのアーチファクトは、以下に示す他の方法を用いて随意でさらに減少させることができる。
【0030】
これに代えて、モデリング電流、実験結果、または伝播因子に伴う演繹的知識に基づいて、モニタリング用電極の間隔を調整してもよい。モニタリングを行っている電極または医療装置の回路が、ゲインまたはインピーダンスを変更することによって、あるいは他の既知の技術を用いることによって、各電極にて測定されるアーチファクトを均一化してもよい。
【0031】
また、アーチファクトの大きさは類似するが極性が反対である2つのモニタリング用電極の和、たとえば、一方が陽刺激用電極付近に配置され、一方が陰刺激用電極付近に配置
されるモニタリング用電極の共通参照に対する和を取ることにより、アーチファクトを減少させる。
【0032】
図2および図15〜17の実施例において、3つのモニタリング用電極が前面電極アセンブリに対して設けられ、前面電極アセンブリは心臓の上方に配置される。背部電極アセンブリはモニタリング用電極を備えない。他の実施例では、前面アセンブリ上で異なった数のモニタリング用電極を用いてもよく、モニタリング用電極を背部アセンブリ上に含めてもよい。電位差の測定には少なくとも2つの電極が必要である。心臓の上方で3つのモニタリング用電極を刺激用電極と一体化することには、少なくとも2つの利点がある。第1に、多くのECGモニタは第3の電極を使用して、患者へ戻す同相信号を駆動し、電力線干渉などの大きな同相信号の存在下における信号品質を改良している。この第3の電極が同相信号排除のためだけに用いられる場合、刺激用電極に対する第3の電極の位置はあまり重要ではない。第2に、一般的に、3リードモニタリング用のECGモニタは選択された電極対の間の電位差を表示する。電極を右腕、左腕、左脚上の従来の位置に配置するとき、これらの電位差はリードI、リードII、リードIIIと呼ばれる。本発明におけるモニタリング用電極は、標準のリードを表さないものの、ECGモニタの操作者が選択できる3つの可能な電位差を提供する。操作者は、最も臨床的に関連があるビューか、心臓ペーシング中に最小のアーチファクトを含むビューを選択する。電極対の間の3つの電位差を観測する実施例においては、アーチファクト相殺を改良するために3つすべてのモニタリング用電極の位置を選択することができ(たとえば、各々が中央刺激用電極から等距離にあるなど)、したがって刺激アーチファクトを相殺するために用いる最良の2つの電極を選出することができる。3つより多くのモニタリング用電極が提供されてもよい。
【0033】
アーチファクトを減少させる電極アセンブリを検出するためのモニタリングハードウェアを構成してもよい。このモニタリングハードウェアは、そのような電極アセンブリを認識した場合、信号を様々に処理するか、またはディスプレイ、ストリップチャートレコーダ、記憶装置および外部インターフェース上のラベル付けを変更することができる。ラベル付けの変更によって、信号の観察者がこれらを標準電極構成(たとえば、標準3リード)と解釈しようとすることを防止する。いくつかの実施例においては、時間が許す場合、標準モニタリング用電極に切替えられていても電気刺激の継続が許されるため、通常、電極アセンブリの識別は刺激用部分を介してではなく、アセンブリのモニタリング部分を介して行われる。
【0034】
電極アセンブリを識別するためには、たとえば、(1)コネクタピン間の比抵抗をモニタによって検出する、(2)電極アセンブリからモニタに入力された電圧、電流または特定の波形、(3)電極コネクタまたはアセンブリ内に含まれる不揮発メモリまたはマイクロプロセッサに対するインターフェース、(4)未使用のモニタリングチャンネルをケーブルの識別に使用可能な特定の電圧(電流または既知の波形)まで引き上げるなど、様々な方法を用いることができる。第4のオプションの一例は、専用の電極コネクタにより3リードECGケーブルを10ワイヤモニタに接続し、特定の未使用の入力を接地するとともに、他の入力を所定の電圧にて短絡させることである。識別のため、コネクタが定位置に無ければ起こりそうにない任意の条件を用いることができる。
【0035】
図11には、ECG信号からの刺激アーチファクトの大半を相殺するいくつかの実施例にの基礎をなす物理を示す。一対の刺激用電極(治療用パッド)を用いて患者(破線で示した長方形によって示される)に刺激が与えられる。電流は、様々な電流経路に沿って一方の治療用パッドから他方の治療用パッドに流れる。図面は、極端に簡略化したケースを示しており、電流経路が3本しかなく、2本の経路のそれぞれに沿って1つのモニタリング用電極が配置されている。電流経路に沿って示した抵抗器は、個々の経路を流れる電流が受ける抵抗を表している。抵抗器の値は電極の配置および患者の物理的特性によって決
まるが、抵抗器の値が時間によって変化する(たとえば呼吸の結果として)場合もある。
【0036】
各モニタリング用電極は、治療用パルス中に流れる電流によるいくつかの電位を記録する。パルス後、治療用パッドは分極されたままである場合がある。分極は時間をかけて等しくなり、モニタリング用電極は分極による電位差を記録する。分極が両モニタリング用電極に対し等しく影響を与える場合、分極の効果(我々が刺激アーチファクトと呼んできたもの)は相殺されるので、差分信号はECGなど体内の電気的活動によるものとなる。
【0037】
別の可能な実施例を図3に示す。モニタリング用電極20は、刺激用電極18から離れた(本例では、周囲の)共通アセンブリ上に支持されている。図3において、共通アセンブリは、円形の刺激用電極を包囲するように環状であるが、他の形状を用いてもよい。図3において用いた形状の利点は、この形状によって、モニタリング用電極を刺激用電極から等間隔におくことを保証し得ることにある。モニタリング用電極のうちの2つは刺激用電極から等距離に配置される。3つめのモニタリング用電極(図面の上部)は、等距離の位置からは僅かに離れた位置にある。この3番目の電極がECG信号を形成するためではなく、同相信号排除のためだけに用いられる場合、等距離にある必要はない。第3の電極をECG信号の形成に使用することが望まれることもある他の実施例においては、第3の電極を、他の2つのモニタリング用電極と同様に等距離に配置するように決めてもよい。
【0038】
電極の位置決めには他の方法が適する場合もある。電極は、一定の長さのケーブルまたは、所定距離に容易に配置できるようにする治療用パッドへの他の物理的連結部を用いて治療用パッドから設定距離のところで位置決めしてもよい。図4には、刺激用電極の周りのモニタリング用電極の配置を、中央刺激用電極から延びる電極リードワイヤの長さによって調節する実施例を示す。ワイヤを径方向に完全に延ばすと、電極位置は刺激用電極から等距離になる。同様に、ワイヤは、電流に関する演繹的知識に基づいてアーチファクトを均一化するために、わずかに異なる長さであってもよい。これに代えて、モニタリング用電極と刺激用電極との間の距離は、電気リードによってではなく、機械的要素(たとえば、機械的ケーブル)によって規定することもできる。電極は、接着剤または機械的装置(たとえばクリップ、ベルクロ(Velcro(商標))など)によって予め治療用パッドに固定しておいてもよい。
【0039】
別の実施例を図6に示す。3つのグループの複数モニタリング用電極が示されており、各グループの電極は刺激用電極に対して異なる位置に配置されている。図6において、グループA、B、Cの各々に2つのモニタリング用電極20が存在する。2つのグループからの処理された(または加重された)組み合わせの間の差を取ったとき、差分信号におけるアーチファクトがより良好に相殺されるように、アナログまたはデジタル信号処理を用いてグループの電極の組み合わせを作成してよい。この方法は、刺激用電極に由来する電流または電界の不規則性を補償し、呼吸など時間により変化するパラメータを補償するように時間により変化してよい。各グループには3つ以上の電極を設けてもよい。必ずしもすべての位置に、複数の電極の加重組み合わせを形成する必要はない。
【0040】
[合成リード]
アーチファクトの除去にとって良い電極配置が、モニタした信号の分析にとって理想的とは限らない。たとえば、そうした配置では、標準臨床ECG信号が提供されない場合がある。信号処理を用いて、実施のモニタリング用電極から改良型またはより臨床的に標準化された様相の波形を導出または合成することができる。実際に、導出(または合成)モニタリング用電極を実際のモニタリング用電極の組み合わせから作成できる。本手法の心臓ペーシングの一実施例のブロック図を図7に示す。モニタリング用電極(たとえば、図2に示すタイプのうちの1つ)からの信号90を、一方(または両方)の刺激用電極(刺激用パルス間のインターバル中にモニタリング用電極として機能することも可能)からの
信号と随意で組み合わせるとよい。信号処理ブロック92は、図2の非標準電極位置から直接形成される電位差よりも、より使用者に馴染みのある標準ECGベクタの推定値94を与える。
【0041】
好ましい一実施例では、モニタリング用電極(および随意で刺激用電極)からの信号は、ECG電極の標準3リード配置(腕部近くに2つと、脚部近くに1つ)を用いて検出された信号と同等のECG信号に変換される。
【0042】
この変換を行うために、統計学的有意数の患者集団から新規なモニタリング用電極(および刺激用電極)位置および従来の3リード位置の両方によりECG測定値を得て、線形変換行列の係数を導出した。最小二乗フィットを行って、線形変換行列の係数を導出する。
【0043】
先行技術には、より少数の若しくは代替の電極の組からリードを合成するいくつかの方法が教示されている。たとえば、ダワー(Dower)のEASIシステム(米国特許第5,711,304号明細書)は、5つの電極を体上の非標準位置に用いて、12のリードECGの推定値を合成している。ダワーは、配置および12のリード合成を容易にするように選択された体上の位置に、電極を大きく離して配置している。この先行技術は、埋め込みリードから標準リードへの変換についても教示している。埋め込まれた電極の位置は固定されている。標準表面電極を患者に取り付けて、最適な変換を導出することも可能である。
【0044】
図18および以下の考察は、リード合成に対する1つの数学的基礎を提供するものである。図面は、3つの等距離のモニタリング用電極によって包囲された円形の刺激(ペーシング/除細動)用電極を示しており、各モニタリング用電極は互いに120°の角度をなしている。リード合成の目的は、これらの非標準的配置からのモニタリング信号を、標準の右腕(RA)、左腕(LA)、左脚(LL)位置に配置された、図面にも示す電極から導出される標準化リードI、リードII、リードIII差分信号の推定値に変換することである。
【0045】
非標準モニタリング位置から得られる信号は、モニタした電極からのサンプルを含む行列Xによる列ベクトルとして表すことができる。これらの信号は、高域フィルタにかけられ、その平均値がゼロになるように処理される。下記に挙げる例において、XはN×2行列である。Nはサンプル数を示し、2つの列は3つのECG電極で構成される。
【0046】
電極には参照電圧が必要であるので、2つの独立したECGベクトル(Vn)が、これらの3つのモニタリング用電極(En)から作成される。
V1=E1−E2
V2=E2−E3
第3のベクトルは、以下のように他の2つのベクトルから導出されてもよく、下記の方程式の単一条件系または悪条件系を回避するために行列Xから省かれてもよい。
【0047】
V3=V1−V2=E1−E2−(E1−E3)=E1−E3
望ましい標準信号は、平均を除去した列ベクトルとして各々の出力信号を含む行列Yによって示すことができる。たとえば、N×3行列では、列1、2、3がそれぞれリードI、リードII、リードIIIを表す。
【0048】
リード合成の目標は、XC=Yであるような変換行列Cを見つけ出すことである。これを以下のように行列形式で表記することもできる。
【0049】
【数1】
【0050】
測定ECGベクトルYと推定ECGベクトルY’との間の二乗誤差は、誤差=Σ(Y−Y’)2のように算出することができる。二乗誤差は、C=(XTX)−1XTYのようなCを算出することにより最小化される。Y’は、Yの推定値であり、Y’=XCの方程式を用いて算出することができる。
【0051】
一般に、最適変換行列Cは患者によって異なり、電極アセンブリおよび標準3リード電極の相対配置に基づく。しかしながら、行列Cは既知のECG信号のデータベースから推定され、一般的に用いられる。操作者は、最も有用なビューを選択するように、サンプル取得したECGベクトルと合成リードとを切り替えてもよい。
【0052】
図19にはモニタリング信号の一例を示す。「カスタムリード」とラベルを付けた列の信号は、図2のように構成された非標準電極から測定される電位差である。「標準リードI、II、III」とラベルを付けた列は、図1に示すようなモニタリング用電極によって測定されたものである。最も右の列は、行列変換によって非標準信号から合成した標準リードの推定値を含む。標準配置からの信号とは正確には同じでないものの、心拍数の計算などの多くの臨床目的に対して外見上は充分に近い。
【0053】
[電極の構築]
モニタリング用電極および刺激用電極は様々に構成することができる。両方の電極に対して導電性ポリマー材料(「固体ゲル」または「ハイドロゲル」と呼ばれることもある)を用いるのではなく、モニタリング用電極に対して液体ゲルを用い、刺激用電極にのみ導電性ポリマー材料を用いるようにしてもよい。こうすることで、モニタリング用電極を皮膚に適用した後、即座に良質のインピーダンスおよび信号品質が得られるので有益である。通常、導電性ポリマーパッドでは、皮膚がゲルを温めてインピーダンスを減少させるには時間が必要であるが、液体ゲルにはそのような遅延がない。緊急心臓ペーシングまたは除細動を含む多くの状況では時間が非常に重要であるため、液体ゲルを使用することが有益であろう。
【0054】
状況によっては、刺激用電極に対して液体ゲル(または他の導電性物質)を用いることが有益な場合もある。たとえば、刺激用電極が心臓ペーシング専用である場合、液体ゲルが有益であり得る。
【0055】
他の用途では、ゲルではなく導電性面を有する電極(刺激用またはモニタリング)が必要な場合もある。導電性ゲルまたは電極ペーストを、必要に応じて導電性面または皮膚に塗布してもよい。これは、一般には、再利用可能なECGまたはEEG電極に対して好ましい方法である。
【0056】
2つ以上の電極(たとえば、刺激用電極18および1つ以上のモニタリング用電極20)を備える電極アセンブリは、共通ゲル(ポリマーパッドその他)層を介して皮膚と接触する種々の導体(たとえば、スズ層)を備えてもよい。図10には、そのような一実施例
を示す。刺激用に2つの治療用パッドアセンブリを用いる。各パッドアセンブリは刺激用電極を備え、パッドアセンブリのうちの少なくとも1つは1つ以上のモニタリング用電極を備える。電流は、刺激用電極の導電板の間で駆動されるが、この導電板は導電性ゲルを介して皮膚と電気接触している。電気刺激中、導電板間には電位差が生じる。導電板の分極は刺激後しばらく持続し得る。電位差が比較的大きいため、刺激用電極の導電板間の電圧の小さな変化を測定することが困難な場合がある。しかしながら、刺激用電極の導電板と、隣接するモニタリング用電極の導電板との間の電位差は、2つの刺激用電極の導電板間の差よりも小さいため、小さな電圧変化のモニタリングもより容易である。刺激用電極およびモニタリング用電極の相対位置は、たとえば心臓を通じる測定など、目的の測定によって決まる。同じ導電性ゲルシートを用いて刺激用電極の導電板およびモニタリング用電極の導電板を覆う場合、分極効果が類似し、差分信号へのアーチファクトの混入が少なくなる。
【0057】
同じ電極アセンブリが2種類以上のゲルを有するようないくつかの実施例において、防湿材を設けて、1つのゲルから他のゲルへの湿分の移動を抑制してもよい。通常、電極アセンブリは使用するまで梱包中に密封されるが、これにより、密封された梱包内から湿分が出ることは抑制できても、アセンブリ内の湿分移動を防ぐことはできない。ハイドロゲルなど湿分の少ないゲルは、梱包された電極の寿命を通じて、第2の(たとえば液体ゲルまたは別のハイドロゲル)電極から湿分を吸収する場合がある。梱包内の防湿材を用いて、あるゲルの種類を他の種類のゲルから封止して、貯蔵寿命を延ばすことができる。防湿材は、デュエル(Duelle)およびホワイト(White)による米国特許第6,453,205号明細書および米国特許第6,280,463号明細書に記載されている、密閉カップを用いて液体ゲルを収容する方法を含む、様々な様式で実施することができる。
【0058】
防湿材は、マイラー(商標)やアルミニウムなどの広く用いられている材料から作成できる。アルミニウム薄膜層は、アルミワイヤを真空容器中の加熱るつぼ上で蒸発させる、いわゆる熱蒸着法によって蒸着できる。いくつかの実施例では、SiOXの薄膜蒸着(典型的にはスパッタ蒸着による)など、非導電性の不活性材料を用いてもよい。他の防湿材を用いてもよい。
【0059】
防湿材50を備える電極の分解断面図を図20(患者接触面が上側)に示す。電極の外面は、Voltek Volara(商標)など、接着剤で裏張りされた独立気泡フォームの層52からなる。絶縁フォームの第2の層54は、モニタリング(ECG)電極用の凹形ウェルを形成する。薄い防湿材50は、ECGウェルを包囲し、周囲のフォームに付着する。
【0060】
封止を維持するため、ECG電極ワイヤが絶縁防湿材を介してリベット(56)で接合されてもよい。これに代えて、防湿材がスズなどの導電性金属であってもよく、ハンダ付けその他の手段で直接にワイヤが防湿材に接続されてもよい。
【0061】
電極アセンブリ全体が離型ライナー58(たとえば、ケイ素含浸ポリエチレン)上に配置される。防湿材の上部はライナーに対し、防湿材の下部よりも強い接着力を有するので、離型ライナーを剥離することによりECG電極も暴露される。
【0062】
防湿材は様々な方法で構築されてよいが、その1つの可能性を図21に示す。図21では、ポリエステル(たとえば、マイラー(商標))およびアルミニウムからなる2つの層を向き合わせて接着している。
【0063】
[電気回路]
図9には、アーチファクト除去のために使用しうるアナログ電気回路の1つの可能性を示す。2つのモニタリング用電極(電極1および電極2)の各々からの信号は、それぞれ反転増幅器A1,A3を介してバッファされる。バッファされた信号は、低域フィルタを通じて投入される。可変コンデンサを用いて低域フィルタを調整し、時定数を変更してもよい。回路中には可変コンデンサ60を示すが、可変抵抗または調整可能な回路要素のいくつかの他の組み合わせを用いてもよい。信号を差し引くときにアーチファクトからのエネルギーのほとんどが相殺されるように、2つの入力信号中の異なる遅延を調整するようにフィルタを設定してもよい。
【0064】
図9には可変利得増幅器A2,A4も示す。これらの利得増幅器によって、両信号におけるアーチファクトの大きさが同等であり、出力増幅器A5において差し引かれるときに相殺されるように、各電極からの信号のスケーリングを行うことが可能である。プログラム可能な利得増幅器が信号を増幅することに加え減衰することができる場合、信号対雑音比(SNR)が充分であれば、プログラム可能な利得増幅器は1つしか必要でない。
【0065】
スケーリングの一例として、下記のように、一実施例では、3つの電極にて検出された信号から2つのモニタリングベクトルP1,P2が算出される。
P1=(電極1)−(電極3)
P2=(電極2)−(電極3)
次にスケーリング後の出力Yは、以下のように計算される。
【0066】
Y=(c1×P1)+(c2×P2)
いくつかの実施例においては、2つのモニタリングベクトルP1,P2におけるアーチファクトの大きさがほぼ等しく、スケーリング後の出力Yにおいてアーチファクトが相殺されるように、定数c1,c2を選択する。他の実施例においては、ベクトルのうちの一方をスケーリングせずに用いる(したがって定数は必要ない)。
【0067】
図22には、100mAの刺激を用いるいくつかの実施例において、アーチファクトを減少させる手法の一例を示す。スケーリングされていない差分信号(ベクトル)P1,P2(上側2つの信号)の両方は明らかなアーチファクトを含む。しかしながら、スケーリング後の差分信号(下側の信号)は、実質的にアーチファクトが減少され、元の差分信号のいずれよりも低い。定数c1およびc2のうちの少なくとも一方は、アーチファクトを比較することによって数学的に導出されてもよく、アーチファクトを最小にするように操作者により調整(たとえばダイアルを捻るなど)されてもよい。スケーリングは、得られるモニタリング信号の形状に影響を与える場合があるが(たとえば、診断目的に関係する大きさを有しない場合がある)、心拍数またはECGの概略形状を判断するためには有用であろう。スケーリングは、ハードウェアまたはソフトウェアにおいて実施されてよく、定数は、モニタされる各差分信号(ベクトル)におけるアーチファクトの方向に応じて、正または負のいずれであってもよい。
【0068】
回路を新しい患者および新しい電極に迅速に適応させることを可能とするため、いくつかの実施例では、デジタル制御された要素、たとえば(限定されないが)プログラム可能な利得増幅器、デジタル制御された可変抵抗および回路内外に切替可能(たとえばアナログスイッチによって)なコンデンサまたはインダクタを使用することもできる。手動調整可能な要素を用いて、操作者が設定を行うようにしてもよい。
【0069】
図9に示す信号処理は、サンプル取得した信号のデジタル処理もしくはソフトウェア処理を用いて、またはアナログおよびデジタル信号処理の組み合わせを用いて実施されてもよい。好適には、モニタリングのための目的の期間中、アーチファクトが入力増幅器または変換器を飽和することのないように、回路が設計される。デジタル信号処理では、信号
を遅延させる際または信号を処理する際に、さらなる柔軟性を与えることが可能となる。デジタル処理では、共通参照に対する各電極からの未処理の信号をサンプル取得する必要がある。複合フィルタおよび適応利得推定値のうちの少なくとも一方を、デジタル実施例またはアナログ実施例において用いてもよい。
【0070】
[インピーダンス調整および同相除去回路]
2つのモニタリング用電極からの差分信号におけるアーチファクトを減少させるための別の手法は、モニタリング用電極にて電位を検出する電気回路における入力インピーダンスを調整することである。各モニタリング用電極のインピーダンスが等しい場合、アーチファクトは最小となる。電極インピーダンスはアーチファクトから直接的に測定または推定される。低出力もしくは全出力の治療用パルスを印加することにより、または正弦波、チャープもしくはこの目的に適した他の任意の波形を用いることにより、インピーダンスを測定することができる。各モニタリング用電極にて(または2つの電極の間において)測定された電圧または電流の波形を用いて、インピーダンス(またはインピーダンスミスマッチ)を推定することができる。
【0071】
インピーダンス平衡回路の一実施例を図5に示す。図5では、2つの電極における刺激アーチファクトが良好に均一化されることにより、差分信号におけるアーチファクトが減少する。モニタリング用電極のインピーダンスを平衡化することにより、同相除去を補助するために患者駆動電極を接続する必要がなくなる。
【0072】
図5の回路には、2つのモニタリング用電極70,72(左上)と患者駆動電極74(左下)とを示す。各電極をRC要素として示すが、これらの値は時間により(たとえば呼吸のため)変化する場合がある。導電性ゲルの皮膚との接触は各電極で異なり得るので、電極間におけるインピーダンス不均衡が生じる。
【0073】
通常、モニタされる信号は、刺激アーチファクトおよび電力線干渉などの他の同相信号に比べて大きさが小さい。刺激用パルス中または刺激用パルス直後に、2つの刺激用電極の間の電界にて等電位にある2つのモニタリング用電極は、2つの刺激用電極の分極による非常に大きな同相信号、すなわち刺激アーチファクトを測定する。しかしながら、インピーダンスが適切に平衡化されない場合、2つのモニタリング用電極の間の差を測定する回路は、この大きな刺激アーチファクトを除去することができない場合がある。
【0074】
当該技術分野においては同相信号を相殺するためのいくつかの方法が知られており、それらを適用して、刺激アーチファクトの相殺を高め得る。刺激用電極およびモニタリング用電極に向かうリードの各々は、それを包囲するケーブルシールド76を備える。回路は、増幅器A1を介して同相信号によりケーブルシールドを駆動する。これにより、信号およびシールドが類似の電位に維持され、ケーブル容量の影響を減少させる。
【0075】
シールドドライブもまたA2によって積分および変換され、患者に戻される。これには、回路参照を患者の同相に近づけることにより、同相信号を減少させる効果がある。
同相信号による電流は、患者またはシールドドライブを含む様々な戻り経路を通じて患者から流れる場合がある。回路要素は、電極インピーダンスにおける不均衡を補正して、同相信号を減少させるように調整されてもよい。図面には、インピーダンス補償回路78によって制御される可変抵抗およびコンデンサ回路を示す。
【0076】
2つのモニタリング用電極の間に直接配置する場合、インピーダンスマッチング回路がより実施が容易であるが、複雑なケーブル配線が必要であり、実用的でないときもある。
インピーダンスマッチング要素は、トリムポット(登録商標)、手動調整可能なコンデンサ、デジタル制御可変抵抗もしくはコンデンサ、またはアナログスイッチを有する1つ
以上のRC要素を含む(これらに限定されない)、当該技術分野において広く用いられる要素を含んでもよい。インダクタまたは他の受動要素を用いてもよい。
【0077】
インピーダンス補償制御器は、アナログ処理およびデジタル処理のうちの一方または両方を備えてよい。インピーダンスは、正弦波、チャープまたは全出力もしくは低出力の治療用パルスの形態で患者に直接電流を印加することによって測定されてよい。最新技術において周知の他の方法も存在する。また、電力線干渉による不平衡または治療中に送出されるパルスによるアーチファクトを評価することによって間接的に測定されてもよい。制御器がデジタル制御回路要素を調整し、同相アーチファクトにおける変化をモニタするようにしてもよい。これに代えて、インピーダンスが装置操作者により手動で調整されてもよいが、その場合には時間が必要であり、すべての装置操作者により共用されていないような専門技能が必要になる。
【0078】
[ケーブルおよびコネクタ]
刺激用(治療用パッド)およびモニタリング用電極を、それらに関連する医療装置(たとえば、複合型のCPR刺激、除細動およびペーシング装置)に接続するために、様々な構成のケーブルおよびコネクタを用いることができる。たとえば、治療用電極を、治療用コネクタに配線してもよい。ワイヤは任意の導電性材料から作成されてよく、電極に恒久的に取り付けられてもよいし、コネクタを用いて電極のうちの一部または全部に取り付けられてもよい。コネクタによりワイヤを再使用することが可能となるが、その信頼性は低下し、接続に時間が必要である。また、ワイヤを接続し忘れたり、誤った電極にワイヤを接続することによって操作者が間違いを犯す可能性を与えてしまう欠点もある。
【0079】
モニタリング用電極はモニタリングコネクタに配線されてもよい。治療用コネクタおよびモニタリングコネクタは、物理的に離れていてもよいし、統合コネクタ内に統合されていてもよい。統合コネクタは一要素からなるものであってもよいし、コネクタの一方または両方が医療装置に取り付けられるように離したり移動させたりできるモニタリングコネクタおよび治療用コネクタから構成されてもよい。
【0080】
このことは、電極に恒久的に取り付けられた、個々に延びるワイヤ、または1本のケーブル内でコネクタに一緒に取り付けられるワイヤを用いて行うことができる。1つのコネクタを医療装置に取り付けることにより、すべての接続が確実に正しく行われる。しかしながら、これには、医療装置に標準リードを接続するための別個の入力と、電極間の選択または両方のリードの組の表示が可能な内部切替機構とが必要である。
【0081】
これに代えて、別個のコネクタを治療用パッドおよびモニタリング用電極に用いてもよい。この場合、操作者がこれらのケーブルのうちの一方または両方を他のモニタリング用電極またはパッドにより交換できるという利点があり、切替機構が必要なくなる。この種のケーブル配線によって、元来この目的のために設計されていない装置においても、そのような電極を使用することが可能になる。
【0082】
これと同日に出願の(引用により本明細書に援用する)「医療ケーブル(Medical Cable)」と題するピーター エイ.ルンド(Peter A.Lund)らの出願において示されるマルチリードケーブル構成のうちのいくつかを、いくつかの実施例において用いることができる。
【0083】
[治療用電極およびモニタリング用電極において共用されるワイヤ]
ケーブル配線を簡略化し、コストを削減するために、用途によっては治療用パッドワイヤがモニタリング用電極と共用されてもよい。これは特に、治療用パッドにパルスが短時間引加され、この時間中にモニタリングの必要がないような場合に関連する。切替回路ま
たは、以下に限定されないが、ダイオードまたはガス放電管などの非線形回路要素をこの目的のために用いてもよい。
【0084】
ワイヤ共用電極アセンブリの可能な一実施例を図8に示す。ダイオード81,82は、刺激後モニタリング相中、刺激用電極85(ゲル層86を介して患者に伝導する)には電流を流させるが、モニタリングチャンネルへの電流の逆流は阻止する。両方向に配向されたダイオードを用いることにより、分極(たとえばダイオード降下未満の)がモニタリング回路によって測定されることを防止しながら、二相刺激波形の送出を可能とする。高電流を分割するため、またはフォールトトレランスのために、いずれの方向において2つ以上のダイオードが用いられてもよい。随意で、抵抗83または高インピーダンスモニタリング用電極84によって、治療中にモニタリング用電極84を通じる電流を減少させてもよい。図8に示すような実施例および他のワイヤ共用の実施例は、クラッタを減少させ、誤った配線を行う可能性を減少させる利点がある。いくつかの実施例においては、追加のケーブルを除去することでも全製造コストを抑えることができる。
【0085】
[多刺激用電極による相殺]
図14に示す構成では、1つの極性の複数の(2つを示す)刺激用電極を用いる。電流は、1つの陽刺激用電極16から2つの陰刺激用電極18へ流れる。他の実施例においては、陽刺激用電極および陰刺激用電極の両方は2つ以上の電極に分割され得る。モニタリング用電極20を各陰刺激用電極の中央に(接触させずに)配置する。両方の陰刺激用電極を、各々がほぼ等しい電流を受ける(引き出す)ように配置する場合、2つのモニタリング用電極によって測定されるアーチファクトはほぼ等しくなるため、2つの電極の間の差を取ったときに相殺される。
【0086】
同極性の複数の刺激用電極18を用いた他の構成を図12に示す。この実施例においては、一方の極性の電極を3つの刺激用電極18(さらに分割した電極を用いてもよい)に分割し、他の極性を1つの電極16のみによって処理する(これに代えて、この極性も複数の電極により処理されてよい)。同極性の複数の刺激用電極は別個の導電板(たとえばスズ)を備え、導電板の下に共通の導電性ゲルまたは別個のゲル領域を備えてもよい。3つの刺激用電極全てを刺激中に一緒に用い、刺激用電極のうちの2つをモニタリングのために用いる(差分増幅器に繋がる左右の電極により示すように)。モニタリングのために用いる2つの電極は心臓をまたぐように配置され、目的のECGベクトルを生じるように配列される。これらの2つの電極は中央の電極より小さくてもよい。2つの電極の分極はほぼ等しく、同極性であるため、モニタリングのために2つの刺激用電極を用いることが可能である。この3つの電極は、1つのアセンブリの一部であってもよく、配置の柔軟性のために2つまたは3つのアセンブリに分割されていてもよい。3つの電極の組み合わせ領域は、送出する治療(たとえば除細動またはペーシング)用に充分なように作成する。
【0087】
さらに別の実施例を図13に示す。この場合、中央の電極が排除され、一方の刺激極性が心臓の両側に配置された2つの電極18に分割され、目的のECGベクトルを生じるように配列される。両電極は刺激中に用いられ、2電極間の差を形成することによってモニタリングが行われる。
【0088】
[アーチファクトをさらに軽減するための処理]
さらにアナログ信号処理またはデジタル信号処理を用いることによって、刺激アーチファクトを軽減することができる。そのような処理としては、フィルタ入力、ディスプレイまたはストリップチャートレコーダが、ブランク化されるか、ゼロにされるかまたはその他の方法によりアーチファクト中に修飾される、アーチファクトの適応型ブランク化が挙げられる。アルゴリズムまたは適応方法を用いて、測定された信号に基づきブランク化の時間を調整してもよい。これにより操作者は、アーチファクトが迅速に相殺された場合、
モニタされる信号の多くを視認することができるようになり、アーチファクトの消散に長い時間が必要な場合、紛らわしいアーチファクトの表示を防止することができるようになる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の外部電気刺激(たとえば、ペーシング)時における患者の体外における生理的信号(たとえば、ECG信号)のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
患者への電気刺激の送出中または送出後に、生理的信号をモニタすることが望ましい場合は多い。たとえば、通常、外部心臓ペーシング中にはECG信号がモニタされる。しかしながら、電気信号により、モニタした信号中に刺激アーチファクトが発生することがある。このようなアーチファクトを小さくするため、故意にモニタリング用電極を刺激用電極から相当の距離に配置することも多い。身体を通じて離すことにより刺激アーチファクトは減衰され、目的の観測生理的信号に与える影響も小さくなる。たとえば、図1には、外部心臓ペーシング中に患者をモニタリングするための標準ECGリード配置を示す。2つのECGリードを胸部高位の各腕部近くに配置し、第3のリードを胸部下位の一脚部近くに配置して、すべてのリードを刺激用電極から相当の距離に配置する。このようにモニタリング用電極を離して配置するためには、典型的には、介護者が患者上に5つの別個の電極を配置して、それぞれのECG電極に別個のモニタリングケーブルを繋ぐ必要がある(通常、刺激用電極には予めケーブルが接続されている)。
【0003】
別個のモニタリング用電極を離して配置することに代えて、刺激用およびモニタリング用の両方に刺激用電極を用いることがある。理論上、モニタリングは刺激用パルス間のインターバル中に可能であるが、通常、そのようなインターバルの大半には大きな刺激アーチファクトが存在するため、ペーシング中のECGモニタリングに刺激用電極を使用することは通常は実用的ではなかった。たとえば、ペーシング用パルスによって誘導されるECG信号は、ペーシング用パルス後200ミリ秒以内に発生することが多く、これは刺激アーチファクトが充分に減衰して適切なモニタリングが可能になる前である。
【0004】
離して配置したモニタリング用電極にてECGを検出するときであっても、ペーシング中の刺激アーチファクトによりECGの解釈は困難となる。一般に、ECGは、ペーシングの有効性を評価し、必要に応じて刺激エネルギーの調整を行えるように、充分にクリーンであることが求められる。刺激アーチファクトが大きいため、そのような評価が困難もしくは不可能となる場合も多い。
【0005】
内部ペーシングでは心臓に直接与えられる電流は非常に小さいので、従来技術において刺激用電極を介したモニタリングが行われてきた。ECG信号における刺激アーチファクトの問題は、主として、より高い電流およびより大きな治療用電極のため充分に離して配置された別個のモニタリング用電極の使用が必要となる外部ペーシングに関して生じる。外部心臓除細動においても同様の問題があるが、ペーシングの場合のように刺激後の数ミリ秒以内にECG信号を検出する必要性は少ない。
【0006】
電気刺激では、電流を身体に送出することが必要である。電流は、一方の刺激用電極から他方の刺激用電極へ流れるので、刺激用パルスの送出に続いて刺激用電極が分極する(2つの電極において逆の極性に帯電する)ことが多い。刺激アーチファクトは、刺激用パルス中および刺激用パルス後の両方にてモニタリング用電極において見られ、通常、刺激アーチファクトの振幅は、2つの刺激用電極の電位の差により発生する電界におけるモニタリング用電極の位置により決まる。
【0007】
通常、生理学的モニタリングシステムはモニタリング用電極の間の電位差を増幅する。
目的とする信号の大きさが、刺激アーチファクトの大きさよりもはるかに小さいことも多い。そのため、刺激アーチファクトにより生理的信号が覆い隠されたり、モニタリングに用いる回路が飽和されてしまうことも多い。用途によっては、刺激中または刺激の直後に生理学的波形を捕捉する必要があり(たとえば、心臓ペーシング)、刺激アーチファクトの存在が問題となる。
【0008】
生理学的モニタリングにおける刺激アーチファクトの影響を軽減するための努力がなされてきた。ウェイ(Way)は、特許文献1および特許文献2において、1つのアセンブリにて刺激用電極から短い距離に別個のモニタリング用電極を配した電極アセンブリを提案している。デュペル(Dupelle)らは、2004年10月5日に出願の特許文献3において、刺激後に脱分極電流を与えて分極アーチファクトを減少させることを教示している。ハウク(Hauck)らは、特許文献4において、埋め込み電極に対する解決策を教示している。この埋め込み電極では、外部電極におけるよりも刺激がはるかに弱く、埋め込みリードの表面積が外部電極のパッドよりもはるかに小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,955,381号明細書
【特許文献2】米国特許第5,080,099号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/958,987号明細書
【特許文献4】米国特許第5,330,512号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
我々は、外部ペーシングにおいて、電極間の電位を測定するための複数の外部モニタリング用電極を、2つのモニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号において刺激アーチファクトがほぼ相殺されるように構成した場合、生理的モニタリングに対する刺激アーチファクトの影響を減少できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。この電極アセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトがほぼ相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成される。
【0012】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含んでよい。第1および第2の外部モニタリング用電極は電気的アーチファクトがほぼ等しい位置に存在してよい。刺激用パルスは心臓刺激用パルスを含み、差分信号はECG信号を含んでよい。心臓刺激用パルスはペーシング用パルスを含んでよい。電極アセンブリは患者の外部に適用される3つ以上のモニタリング用電極を備え、第1および第2のモニタリング用電極は差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択されてよい。第1および第2のモニタリング用電極は使用者により手動で選択されるのではなく、装置により自動的に選択されてよい。第1および第2のモニタリング用電極の自動的な選択は時間に
より変化してよい。3つ以上のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極の選択は異なる距離に位置する2つの電極の間の選択を含んでよい。2つの電極の間の選択は時間により変化してよい。電極アセンブリは少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含んでよい。組み合わせを作成する手法は時間により変化して、第2および第3の電極における電気的アーチファクトの相対的大きさの時間による変化を補償してよい。電極アセンブリは患者の外部に適用される少なくとも第4のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含んでよい。第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとのうちの一方または双方は時間により変化してよい。位置決め要素は外部刺激用電極と第1および第2のモニタリング用電極とを支持する共通基板を含んでよい。位置決め要素は第1および第2のモニタリング用電極の刺激用電極からの距離を規定するワイヤなどの要素を含んでよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極の作用領域と刺激用電極のうちの1つの作用領域との間のエッジ間距離は10センチメートル未満であってよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから等しい距離に位置してよい。電極アセンブリは、分離電極のうちの1つから第1および第2の電極と等しい距離に位置する第3のモニタリング用電極を含んでよい。刺激用パルスの後に刺激用電極が分極したとき、2つの刺激用電極の間に形成される電界においてほぼ等電位であるように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が位置してよい。第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つを支持する第2の基板から離れた第1の基板上に支持されてよい。第1および第2のモニタリング用電極を支持する第1の基板は第2の基板をほぼ包囲してよい。刺激用パルスの後に刺激用電極が分極したとき、2つの刺激用電極の間に形成される電界においてほぼ等力線に沿うように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が位置してよい。第1および第2のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つを支持する第2の基板から離れた第1の基板上に支持され、第1および第2の基板は患者の所望の相対位置に容易に適用される形状とされてよい。第1の基板は環状であり、第2の基板は円形であり、両基板は両基板の距離が径方向にほぼ等しいようにほぼ同心状に位置してよい。心臓ペーシング用パルスの中断後100ミリ秒以内に測定したECG差分信号における電気的アーチファクト電位は約10ミリボルト未満であってよい。ペーシング用パルスが心臓捕捉用に充分な振幅であるとき、ECG差分信号における電気的アーチファクト電位はQRS振幅の5倍未満であってよい。少なくとも第1および第2のモニタリング用電極が接続されるインピーダンスマッチング回路を含んでよい。インピーダンスマッチング回路は電極インピーダンスの不均衡を生じさせ、両モニタリング用電極における電気的アーチファクト電位の変化を補償してよい。標準3リードECG信号に相当するECG信号を導出するための変換において用いられる複数の差分信号が存在してよい。
【0013】
第2の態様では、本発明は、心臓の外部モニタリング用および外部刺激用の装置を特徴とする。この装置は、体外に適用されるように構成された第1の極性の刺激用電極および第2の極性の刺激用電極と、少なくとも第1の極性の刺激用電極は刺激用パルス印加用の複数の小電極を備えることと、複数の小電極は刺激用に充分な総領域を有することと、小電極のうちの2つにて検出された電位の間の差を含む差分信号を形成することによりECG電位をモニタリングするための処理回路とからなり、分極による刺激アーチファクトが両小電極においてほぼ等しく、刺激アーチファクトが差分信号においてほぼ相殺されるように、差分信号を形成するために用いられる2つの小電極を配置および構成するように構成される。
【0014】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよ
い。刺激用パルスは胸部の外側に印加される心臓ペーシング用パルスを含んでよい。第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極は1つのアセンブリを形成してよい。第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極の各々の間の距離が一定であるように、少なくとも第1および第2のモニタリング用電極ならびに刺激用電極の位置はアセンブリ上に固定されてよい。
【0015】
第3の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。この電極アセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、1つ以上の外部モニタリング用電極と、刺激用電極およびモニタリング用電極を支持する裏張り層と、刺激用電極およびモニタリング用電極の両方と電気接触する共通ゲル層とを備え、外部刺激用電極は刺激用導電板を含み、モニタリング用電極はモニタリング導電板を含み、刺激用導電板とモニタリング導電板とは離間されている。
【0016】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。共通ゲル層は固体ゲルまたはハイドロゲルを含んでよい。
第4の態様では、本発明は、外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、1つ以上の外部モニタリング用電極と、刺激用電極およびモニタリング用電極を支持する裏張り層と、刺激用電極と電気接触する第1のゲル層と、モニタリング用電極と電気接触する第2のゲル層とを備え、外部刺激用電極は刺激用導電板を含み、モニタリング用電極はモニタリング導電板を含み、刺激用導電板とモニタリング導電板とは離間されており、第1のゲル層と第2のゲル層とは離間されており、第1のゲル層および第2のゲル層のうちの一方は固体ゲルまたはハイドロゲルを含み、第1のゲル層および第2のゲル層のうちの他方は液体ゲルを含む。
【0017】
第5の態様では、本発明は、患者の外部刺激用またはモニタリング用の電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、電極アセンブリ内に支持された少なくとも第1および第2の電極と、第1の電極に近接配置された第1のゲル層と、第2の電極に近接配置された第2のゲル層とを備え、第1および第2のゲル層の湿分含有量は異なり、第1および第2のゲル層のうちの一方から他方への湿分の移動を遅延させるように寸法決定および配置された防湿材層とを含む。
【0018】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。防湿材は、ポリエステルフィルムからなるものであってよい。防湿材はアルミニウムフィルムからなるものであってよい。電極アセンブリは心臓刺激用に構成されており、第1の電極は刺激用電極を含み、第2の電極はモニタリング用電極を含んでよい。第1のゲル層は液体ゲルを含み、第2のゲル層は固体ゲルを含んでよい。第1のゲル層は第1の湿分含有量の固体ゲルを含み、第2のゲル層は第1の湿分含有量よりも大きい第2の湿分含有量の固体ゲルを含んでよい。防湿材はポリエステルフィルムを含んでよい。防湿材はアルミニウムフィルムを含んでよい。
【0019】
第6の態様では、本発明は、心臓刺激用および心臓モニタリング用の多電極アセンブリを特徴とする。このアセンブリは、患者の胸部において電位をモニタするように構成されたモニタリング用電極と、1つ以上の刺激用パルスを患者の胸部に送出するように構成された刺激用電極と、第1および第2のケーブル端を有する電極ケーブルと、第2のケーブル端と刺激用電極との間に電気的に配置された非線形回路要素とを備え、第1のケーブル端は外部心臓装置に接続するように構成され、第2のケーブル端はモニタリング用電極および刺激用電極に接続するように構成され、非線形回路要素は刺激用パルスの送出中に導電し、刺激用パルスの送出後に刺激用電極の残留電位の存在下で導電を遮断するように構
成される。
【0020】
本発明のこの態様の好適な実施態様では、以下のうちの1つ以上が組み合わせられてよい。非線形回路要素は1つ以上のダイオードまたはガス放電管を含んでよい。非線形回路要素は、一方の極性の波形における一方の経路および他方の極性の波形における他方の経路を通じて電流が流れる二相の刺激波形が刺激用電極に送出されるように、両経路に沿って非線形回路要素が逆の極性を有する並列経路をケーブルと刺激用電極との間に形成する2つ以上の非線形回路要素を含んでよい。並列経路のうちの1つにおける1つ以上の非線形回路要素の正味のオフセット電位を予想される残留電位より高く設定することにより、刺激用電極の残留電位の存在下における導電性を同経路に沿って遮断してよい。非線形回路要素は1つ以上のトランジスタを含んでよい。非線形回路要素は一方向の電流を遮断し、他方向の電流を流してよい。電極ケーブルは1つの導電体からなり、第1および第2のケーブル端は同1つの導電体の第1および第2の端部であってよい。電極アセンブリは電極ケーブルとモニタリング用電極との間の電気的な経路に配置され、かつ、刺激用電極への刺激用パルスの送出中にモニタリング用電極に流れる電流を減少させるように構成された高インピーダンス要素を含んでよい。電極アセンブリはモニタリング装置を含み、このモニタリング装置は1つ以上の電極からまたは同電極をモニタリング装置に接続するために使用するコネクタから非標準モニタリング構成を自動的に識別し、非標準モニタリング構成を識別した場合、検出される電位の信号処理を自動的に変更するためのモニタリング装置であってよい。電極アセンブリは体上に配置するための第3の電極を含み、電位から形成される信号は第3の電極に対して第1および第2の電極にて測定された電位の総和を含み、測定された電位において電気的アーチファクトが同等の大きさであり逆の極性を有するため、電気的アーチファクトはほぼ相殺されてよい。少なくとも第1および第2の刺激用電極が存在し、第1のモニタリング用電極は第1の刺激用電極付近に配置され、第2のモニタリング用電極は第2の刺激用電極付近に配置されてよい。時間により変化する手法により信号が形成されてよい。信号は第1および第2のモニタリング用電極における電位の組み合わせを作成することにより形成され、同組み合わせは時間により変化する手法により作成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】刺激用電極およびモニタリング用電極の従来技術の配置を示す概略図。
【図2】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の一実施例の平面図。
【図3】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図4】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図5】2つのモニタリング用電極の間に電位差を生じる差分増幅器の入力に可変インピーダンスが与えられる一実施例の電気図。
【図6】刺激用電極付近に配置された複数のモニタリング用電極の別の実施例の平面図。
【図7】本明細書に示す電極を用いて検出された非標準ECG信号を変換することにより標準3リードECG信号の推定値を導出する一実施例のブロック図。
【図8】ダイオードを用いて電極アセンブリへの電気リードの数を減少させる一実施例の平面図。
【図9】2つのモニタリング用電極にて検出された信号の間に差を生じるための一実施例の電気図。
【図10】1つのモニタリング用電極を刺激用電極と組み合わせた一実施例の平面図。
【図11】2つの刺激用電極の間の電流の物理と、2つのモニタリング用電極からのECG信号の検出を説明する概略図。
【図12】一方の極性の刺激用電極を3つの小電極に分割した電極実施例の部分概略図。3つの小電極の全てが刺激用であってもよく、小電極のうちの2つがECGモニタリング用であってもよい。
【図13】一方の極性の刺激用電極を2つの小刺激用電極に分割した電極実施例の平面図。
【図14】一方の極性の刺激用電極を2つの小刺激用電極に分割し、小刺激用電極の各々の中央に別個のモニタリング用電極を配置した電極実施例の部分概略図。
【図15】刺激用電極および3つのモニタリング用電極を有する前面アセンブリと、刺激用電極のみを有する背部アセンブリとの2つの胸部電極アセンブリが、刺激用電気コネクタを共有する一実施例の平面図。
【図16】前面電極の構成を示す図15の16−16に沿った分解断面図。
【図17】後部(または背部)電極の構成を示す図15の17−17に沿った分解断面図。
【図18】図2の実施例および標準化3リード電極の配置を示す平面図。
【図19】行列変換を用いて非標準電極位置から合成される標準モニタリングベクトルの一例を示す図。
【図20】内部防湿材を備える一電極実施例の断面図。
【図21】図20の実施例において用いられ得る1つの防湿材の層を示す断面図。
【図22】2つのECGモニタリング信号(上側の2つの信号)およびこれらの信号(下側の信号)のスケーリング後の和を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の多くの利点(そのうちのいくつかは、本発明の様々な態様および実施例のいくつかにおいてのみ達成される)として以下がある。刺激アーチファクトを減少させることで、刺激用電極およびモニタリング用電極を体外に近接して配置することができる。これにより、たとえば、1つの刺激用電極と、1つ以上のモニタリング用電極とを随意で1つのアセンブリ中で組み合わせることが可能となる。複数の電極を1つのアセンブリに組み合わせることにより、電極と刺激用/モニタリング装置との間の配線および接続も改良される。モニタリング用電極と刺激用電極とを1つのアセンブリに組み合わせることにより、電極の適用および接続に要する時間を短縮できることから、緊急の場面において大きな助けとなる。
【0023】
1つの実施例を図2および図15〜17に示す。前面電極14は、中央の刺激用電極18から等距離に配置された3つのモニタリング用電極20を備える。3つすべてのモニタリング用電極20と刺激用電極18とは、共通のアセンブリ上に支持されている。背部電極12は刺激用電極16のみを備えるが、随意で、1つ以上の一体化されたモニタリング用電極を備えてもよい。
【0024】
刺激用電極の作用領域の直径は約10cmである。各モニタリング用電極の作用領域の直径は約2cmである。各モニタリング用電極の作用領域の縁は、隣接する刺激用電極の作用領域の縁から約1cm離れている。
【0025】
電極パッドアセンブリに対しては様々な構成が可能である。図16〜17は、1つの可能な構成を示している。材料は、弾性と皮膚面に対する追従性とを提供するものを選ぶ。図16には、胸部の前面に適用するように構成された電極アセンブリを示す。フォームカバー(即ち、裏張り)層24(たとえば、Voltek Volara(商標))は、電極の背面(患者から遠い方の上面)全体に伸展する。3つのモニタリング用電極の各々は、ニッケルメッキしたブラススナップ21を、フォームカバー層の開口部を通じてAgCl台座22に固定することによって形成される(これに代えて、リードをモニタリング用
電極に接続してもよい)。フォームカバー24の下には、フォームフレーム層28がある。この層には、各AgCl台座(AgClメッキしたガラス充填ABS)が多孔性フォームスポンジ23と接触するための開口部が設けられる。フォームスポンジ23にはECGゲル35(たとえば、Pharmaceutical Innovations(商標)QR)が含浸されている。刺激用電極18は、電極アセンブリの中央にある導電板29(たとえばスズ)によって提供される。導電板はフォームフレーム層28の下側に支持されている。導電板の下には、患者との導電接触を行う導電層30が設けられている。導電層30は、たとえば、ハイドロゲル(たとえば、Ludlow(商標)63Tハイドロゲル)などの固体ゲルなどである。一方の縁部において、導電板の部分38はフォームフレーム層の開口部を通じて延び、25にてリード26に機械的かつ電気的に接続される。リード26は、電気コネクタ40まで延びている。電気コネクタ40には背部電極アセンブリからのリード26も接続されている。
【0026】
導電性の皮膚接触層23,30に対しては様々な代替物を用いることができる。そのようなものとして、以下に限定されないが、固体導電性ゲル(たとえば、ハイドロゲル)、液体ゲルで充填した多孔性材料、および生理食塩水などの導電性溶液を含浸させた多孔性材料などが挙げられる。
【0027】
図17には、胸部の背面に適用するように構成された電極アセンブリを示す。モニタリング用電極を備えること、円形ではなく矩形の刺激用電極を備えること以外は、前面電極と同様の構成を有する。導電板33はフォーム裏張り層32の下面に支持されている。導電層34は患者と接触する。導電層34は、たとえば、前面刺激用電極において使用されたものと同じハイドロゲルなどの固体ゲルである。導電板の部分38は、裏張り層32の開口部を通じて延び、リード26に接続される。絶縁体フォーム裏張り層31はフォーム裏張り層32の上部まで延びる導電板の部分38を覆う。
【0028】
図2および図15〜17の実施例において、モニタリング用電極20はすべて刺激用電極18から等距離に配置されている。刺激用電極間を流れる電流がすべての方向においてほぼ同一である場合、各モニタリング用電極によって測定されるアーチファクトは類似しており、信号の差を取ることにより電位差を生じるときに相殺される。しかしながら、刺激用電極から等距離にモニタリング用電極を配置することにより、3つのモニタリング用電極のすべてにおいて測定される刺激アーチファクトが同一になることが保証される訳ではない。伝播因子、モニタリング用電極のインピーダンス、電流経路、電界の形状および他の変数が、測定されるアーチファクトに影響を与え得る。伝播因子のうちのいくつか、たとえば、呼吸や血流は、時間により変化することもある。電流は、表面特性および体の解剖学的構造による影響を受けることもある。
【0029】
しかしながら、多くの場合、刺激用電極から等距離にモニタリング用電極を配置することで、差分信号(2つのモニタリング用電極間の電位差)において許容可能なまでに刺激アーチファクトを減少させるの充分な相似した刺激アーチファクトが得られる。残りのアーチファクトは、以下に示す他の方法を用いて随意でさらに減少させることができる。
【0030】
これに代えて、モデリング電流、実験結果、または伝播因子に伴う演繹的知識に基づいて、モニタリング用電極の間隔を調整してもよい。モニタリングを行っている電極または医療装置の回路が、ゲインまたはインピーダンスを変更することによって、あるいは他の既知の技術を用いることによって、各電極にて測定されるアーチファクトを均一化してもよい。
【0031】
また、アーチファクトの大きさは類似するが極性が反対である2つのモニタリング用電極の和、たとえば、一方が陽刺激用電極付近に配置され、一方が陰刺激用電極付近に配置
されるモニタリング用電極の共通参照に対する和を取ることにより、アーチファクトを減少させる。
【0032】
図2および図15〜17の実施例において、3つのモニタリング用電極が前面電極アセンブリに対して設けられ、前面電極アセンブリは心臓の上方に配置される。背部電極アセンブリはモニタリング用電極を備えない。他の実施例では、前面アセンブリ上で異なった数のモニタリング用電極を用いてもよく、モニタリング用電極を背部アセンブリ上に含めてもよい。電位差の測定には少なくとも2つの電極が必要である。心臓の上方で3つのモニタリング用電極を刺激用電極と一体化することには、少なくとも2つの利点がある。第1に、多くのECGモニタは第3の電極を使用して、患者へ戻す同相信号を駆動し、電力線干渉などの大きな同相信号の存在下における信号品質を改良している。この第3の電極が同相信号排除のためだけに用いられる場合、刺激用電極に対する第3の電極の位置はあまり重要ではない。第2に、一般的に、3リードモニタリング用のECGモニタは選択された電極対の間の電位差を表示する。電極を右腕、左腕、左脚上の従来の位置に配置するとき、これらの電位差はリードI、リードII、リードIIIと呼ばれる。本発明におけるモニタリング用電極は、標準のリードを表さないものの、ECGモニタの操作者が選択できる3つの可能な電位差を提供する。操作者は、最も臨床的に関連があるビューか、心臓ペーシング中に最小のアーチファクトを含むビューを選択する。電極対の間の3つの電位差を観測する実施例においては、アーチファクト相殺を改良するために3つすべてのモニタリング用電極の位置を選択することができ(たとえば、各々が中央刺激用電極から等距離にあるなど)、したがって刺激アーチファクトを相殺するために用いる最良の2つの電極を選出することができる。3つより多くのモニタリング用電極が提供されてもよい。
【0033】
アーチファクトを減少させる電極アセンブリを検出するためのモニタリングハードウェアを構成してもよい。このモニタリングハードウェアは、そのような電極アセンブリを認識した場合、信号を様々に処理するか、またはディスプレイ、ストリップチャートレコーダ、記憶装置および外部インターフェース上のラベル付けを変更することができる。ラベル付けの変更によって、信号の観察者がこれらを標準電極構成(たとえば、標準3リード)と解釈しようとすることを防止する。いくつかの実施例においては、時間が許す場合、標準モニタリング用電極に切替えられていても電気刺激の継続が許されるため、通常、電極アセンブリの識別は刺激用部分を介してではなく、アセンブリのモニタリング部分を介して行われる。
【0034】
電極アセンブリを識別するためには、たとえば、(1)コネクタピン間の比抵抗をモニタによって検出する、(2)電極アセンブリからモニタに入力された電圧、電流または特定の波形、(3)電極コネクタまたはアセンブリ内に含まれる不揮発メモリまたはマイクロプロセッサに対するインターフェース、(4)未使用のモニタリングチャンネルをケーブルの識別に使用可能な特定の電圧(電流または既知の波形)まで引き上げるなど、様々な方法を用いることができる。第4のオプションの一例は、専用の電極コネクタにより3リードECGケーブルを10ワイヤモニタに接続し、特定の未使用の入力を接地するとともに、他の入力を所定の電圧にて短絡させることである。識別のため、コネクタが定位置に無ければ起こりそうにない任意の条件を用いることができる。
【0035】
図11には、ECG信号からの刺激アーチファクトの大半を相殺するいくつかの実施例にの基礎をなす物理を示す。一対の刺激用電極(治療用パッド)を用いて患者(破線で示した長方形によって示される)に刺激が与えられる。電流は、様々な電流経路に沿って一方の治療用パッドから他方の治療用パッドに流れる。図面は、極端に簡略化したケースを示しており、電流経路が3本しかなく、2本の経路のそれぞれに沿って1つのモニタリング用電極が配置されている。電流経路に沿って示した抵抗器は、個々の経路を流れる電流が受ける抵抗を表している。抵抗器の値は電極の配置および患者の物理的特性によって決
まるが、抵抗器の値が時間によって変化する(たとえば呼吸の結果として)場合もある。
【0036】
各モニタリング用電極は、治療用パルス中に流れる電流によるいくつかの電位を記録する。パルス後、治療用パッドは分極されたままである場合がある。分極は時間をかけて等しくなり、モニタリング用電極は分極による電位差を記録する。分極が両モニタリング用電極に対し等しく影響を与える場合、分極の効果(我々が刺激アーチファクトと呼んできたもの)は相殺されるので、差分信号はECGなど体内の電気的活動によるものとなる。
【0037】
別の可能な実施例を図3に示す。モニタリング用電極20は、刺激用電極18から離れた(本例では、周囲の)共通アセンブリ上に支持されている。図3において、共通アセンブリは、円形の刺激用電極を包囲するように環状であるが、他の形状を用いてもよい。図3において用いた形状の利点は、この形状によって、モニタリング用電極を刺激用電極から等間隔におくことを保証し得ることにある。モニタリング用電極のうちの2つは刺激用電極から等距離に配置される。3つめのモニタリング用電極(図面の上部)は、等距離の位置からは僅かに離れた位置にある。この3番目の電極がECG信号を形成するためではなく、同相信号排除のためだけに用いられる場合、等距離にある必要はない。第3の電極をECG信号の形成に使用することが望まれることもある他の実施例においては、第3の電極を、他の2つのモニタリング用電極と同様に等距離に配置するように決めてもよい。
【0038】
電極の位置決めには他の方法が適する場合もある。電極は、一定の長さのケーブルまたは、所定距離に容易に配置できるようにする治療用パッドへの他の物理的連結部を用いて治療用パッドから設定距離のところで位置決めしてもよい。図4には、刺激用電極の周りのモニタリング用電極の配置を、中央刺激用電極から延びる電極リードワイヤの長さによって調節する実施例を示す。ワイヤを径方向に完全に延ばすと、電極位置は刺激用電極から等距離になる。同様に、ワイヤは、電流に関する演繹的知識に基づいてアーチファクトを均一化するために、わずかに異なる長さであってもよい。これに代えて、モニタリング用電極と刺激用電極との間の距離は、電気リードによってではなく、機械的要素(たとえば、機械的ケーブル)によって規定することもできる。電極は、接着剤または機械的装置(たとえばクリップ、ベルクロ(Velcro(商標))など)によって予め治療用パッドに固定しておいてもよい。
【0039】
別の実施例を図6に示す。3つのグループの複数モニタリング用電極が示されており、各グループの電極は刺激用電極に対して異なる位置に配置されている。図6において、グループA、B、Cの各々に2つのモニタリング用電極20が存在する。2つのグループからの処理された(または加重された)組み合わせの間の差を取ったとき、差分信号におけるアーチファクトがより良好に相殺されるように、アナログまたはデジタル信号処理を用いてグループの電極の組み合わせを作成してよい。この方法は、刺激用電極に由来する電流または電界の不規則性を補償し、呼吸など時間により変化するパラメータを補償するように時間により変化してよい。各グループには3つ以上の電極を設けてもよい。必ずしもすべての位置に、複数の電極の加重組み合わせを形成する必要はない。
【0040】
[合成リード]
アーチファクトの除去にとって良い電極配置が、モニタした信号の分析にとって理想的とは限らない。たとえば、そうした配置では、標準臨床ECG信号が提供されない場合がある。信号処理を用いて、実施のモニタリング用電極から改良型またはより臨床的に標準化された様相の波形を導出または合成することができる。実際に、導出(または合成)モニタリング用電極を実際のモニタリング用電極の組み合わせから作成できる。本手法の心臓ペーシングの一実施例のブロック図を図7に示す。モニタリング用電極(たとえば、図2に示すタイプのうちの1つ)からの信号90を、一方(または両方)の刺激用電極(刺激用パルス間のインターバル中にモニタリング用電極として機能することも可能)からの
信号と随意で組み合わせるとよい。信号処理ブロック92は、図2の非標準電極位置から直接形成される電位差よりも、より使用者に馴染みのある標準ECGベクタの推定値94を与える。
【0041】
好ましい一実施例では、モニタリング用電極(および随意で刺激用電極)からの信号は、ECG電極の標準3リード配置(腕部近くに2つと、脚部近くに1つ)を用いて検出された信号と同等のECG信号に変換される。
【0042】
この変換を行うために、統計学的有意数の患者集団から新規なモニタリング用電極(および刺激用電極)位置および従来の3リード位置の両方によりECG測定値を得て、線形変換行列の係数を導出した。最小二乗フィットを行って、線形変換行列の係数を導出する。
【0043】
先行技術には、より少数の若しくは代替の電極の組からリードを合成するいくつかの方法が教示されている。たとえば、ダワー(Dower)のEASIシステム(米国特許第5,711,304号明細書)は、5つの電極を体上の非標準位置に用いて、12のリードECGの推定値を合成している。ダワーは、配置および12のリード合成を容易にするように選択された体上の位置に、電極を大きく離して配置している。この先行技術は、埋め込みリードから標準リードへの変換についても教示している。埋め込まれた電極の位置は固定されている。標準表面電極を患者に取り付けて、最適な変換を導出することも可能である。
【0044】
図18および以下の考察は、リード合成に対する1つの数学的基礎を提供するものである。図面は、3つの等距離のモニタリング用電極によって包囲された円形の刺激(ペーシング/除細動)用電極を示しており、各モニタリング用電極は互いに120°の角度をなしている。リード合成の目的は、これらの非標準的配置からのモニタリング信号を、標準の右腕(RA)、左腕(LA)、左脚(LL)位置に配置された、図面にも示す電極から導出される標準化リードI、リードII、リードIII差分信号の推定値に変換することである。
【0045】
非標準モニタリング位置から得られる信号は、モニタした電極からのサンプルを含む行列Xによる列ベクトルとして表すことができる。これらの信号は、高域フィルタにかけられ、その平均値がゼロになるように処理される。下記に挙げる例において、XはN×2行列である。Nはサンプル数を示し、2つの列は3つのECG電極で構成される。
【0046】
電極には参照電圧が必要であるので、2つの独立したECGベクトル(Vn)が、これらの3つのモニタリング用電極(En)から作成される。
V1=E1−E2
V2=E2−E3
第3のベクトルは、以下のように他の2つのベクトルから導出されてもよく、下記の方程式の単一条件系または悪条件系を回避するために行列Xから省かれてもよい。
【0047】
V3=V1−V2=E1−E2−(E1−E3)=E1−E3
望ましい標準信号は、平均を除去した列ベクトルとして各々の出力信号を含む行列Yによって示すことができる。たとえば、N×3行列では、列1、2、3がそれぞれリードI、リードII、リードIIIを表す。
【0048】
リード合成の目標は、XC=Yであるような変換行列Cを見つけ出すことである。これを以下のように行列形式で表記することもできる。
【0049】
【数1】
【0050】
測定ECGベクトルYと推定ECGベクトルY’との間の二乗誤差は、誤差=Σ(Y−Y’)2のように算出することができる。二乗誤差は、C=(XTX)−1XTYのようなCを算出することにより最小化される。Y’は、Yの推定値であり、Y’=XCの方程式を用いて算出することができる。
【0051】
一般に、最適変換行列Cは患者によって異なり、電極アセンブリおよび標準3リード電極の相対配置に基づく。しかしながら、行列Cは既知のECG信号のデータベースから推定され、一般的に用いられる。操作者は、最も有用なビューを選択するように、サンプル取得したECGベクトルと合成リードとを切り替えてもよい。
【0052】
図19にはモニタリング信号の一例を示す。「カスタムリード」とラベルを付けた列の信号は、図2のように構成された非標準電極から測定される電位差である。「標準リードI、II、III」とラベルを付けた列は、図1に示すようなモニタリング用電極によって測定されたものである。最も右の列は、行列変換によって非標準信号から合成した標準リードの推定値を含む。標準配置からの信号とは正確には同じでないものの、心拍数の計算などの多くの臨床目的に対して外見上は充分に近い。
【0053】
[電極の構築]
モニタリング用電極および刺激用電極は様々に構成することができる。両方の電極に対して導電性ポリマー材料(「固体ゲル」または「ハイドロゲル」と呼ばれることもある)を用いるのではなく、モニタリング用電極に対して液体ゲルを用い、刺激用電極にのみ導電性ポリマー材料を用いるようにしてもよい。こうすることで、モニタリング用電極を皮膚に適用した後、即座に良質のインピーダンスおよび信号品質が得られるので有益である。通常、導電性ポリマーパッドでは、皮膚がゲルを温めてインピーダンスを減少させるには時間が必要であるが、液体ゲルにはそのような遅延がない。緊急心臓ペーシングまたは除細動を含む多くの状況では時間が非常に重要であるため、液体ゲルを使用することが有益であろう。
【0054】
状況によっては、刺激用電極に対して液体ゲル(または他の導電性物質)を用いることが有益な場合もある。たとえば、刺激用電極が心臓ペーシング専用である場合、液体ゲルが有益であり得る。
【0055】
他の用途では、ゲルではなく導電性面を有する電極(刺激用またはモニタリング)が必要な場合もある。導電性ゲルまたは電極ペーストを、必要に応じて導電性面または皮膚に塗布してもよい。これは、一般には、再利用可能なECGまたはEEG電極に対して好ましい方法である。
【0056】
2つ以上の電極(たとえば、刺激用電極18および1つ以上のモニタリング用電極20)を備える電極アセンブリは、共通ゲル(ポリマーパッドその他)層を介して皮膚と接触する種々の導体(たとえば、スズ層)を備えてもよい。図10には、そのような一実施例
を示す。刺激用に2つの治療用パッドアセンブリを用いる。各パッドアセンブリは刺激用電極を備え、パッドアセンブリのうちの少なくとも1つは1つ以上のモニタリング用電極を備える。電流は、刺激用電極の導電板の間で駆動されるが、この導電板は導電性ゲルを介して皮膚と電気接触している。電気刺激中、導電板間には電位差が生じる。導電板の分極は刺激後しばらく持続し得る。電位差が比較的大きいため、刺激用電極の導電板間の電圧の小さな変化を測定することが困難な場合がある。しかしながら、刺激用電極の導電板と、隣接するモニタリング用電極の導電板との間の電位差は、2つの刺激用電極の導電板間の差よりも小さいため、小さな電圧変化のモニタリングもより容易である。刺激用電極およびモニタリング用電極の相対位置は、たとえば心臓を通じる測定など、目的の測定によって決まる。同じ導電性ゲルシートを用いて刺激用電極の導電板およびモニタリング用電極の導電板を覆う場合、分極効果が類似し、差分信号へのアーチファクトの混入が少なくなる。
【0057】
同じ電極アセンブリが2種類以上のゲルを有するようないくつかの実施例において、防湿材を設けて、1つのゲルから他のゲルへの湿分の移動を抑制してもよい。通常、電極アセンブリは使用するまで梱包中に密封されるが、これにより、密封された梱包内から湿分が出ることは抑制できても、アセンブリ内の湿分移動を防ぐことはできない。ハイドロゲルなど湿分の少ないゲルは、梱包された電極の寿命を通じて、第2の(たとえば液体ゲルまたは別のハイドロゲル)電極から湿分を吸収する場合がある。梱包内の防湿材を用いて、あるゲルの種類を他の種類のゲルから封止して、貯蔵寿命を延ばすことができる。防湿材は、デュエル(Duelle)およびホワイト(White)による米国特許第6,453,205号明細書および米国特許第6,280,463号明細書に記載されている、密閉カップを用いて液体ゲルを収容する方法を含む、様々な様式で実施することができる。
【0058】
防湿材は、マイラー(商標)やアルミニウムなどの広く用いられている材料から作成できる。アルミニウム薄膜層は、アルミワイヤを真空容器中の加熱るつぼ上で蒸発させる、いわゆる熱蒸着法によって蒸着できる。いくつかの実施例では、SiOXの薄膜蒸着(典型的にはスパッタ蒸着による)など、非導電性の不活性材料を用いてもよい。他の防湿材を用いてもよい。
【0059】
防湿材50を備える電極の分解断面図を図20(患者接触面が上側)に示す。電極の外面は、Voltek Volara(商標)など、接着剤で裏張りされた独立気泡フォームの層52からなる。絶縁フォームの第2の層54は、モニタリング(ECG)電極用の凹形ウェルを形成する。薄い防湿材50は、ECGウェルを包囲し、周囲のフォームに付着する。
【0060】
封止を維持するため、ECG電極ワイヤが絶縁防湿材を介してリベット(56)で接合されてもよい。これに代えて、防湿材がスズなどの導電性金属であってもよく、ハンダ付けその他の手段で直接にワイヤが防湿材に接続されてもよい。
【0061】
電極アセンブリ全体が離型ライナー58(たとえば、ケイ素含浸ポリエチレン)上に配置される。防湿材の上部はライナーに対し、防湿材の下部よりも強い接着力を有するので、離型ライナーを剥離することによりECG電極も暴露される。
【0062】
防湿材は様々な方法で構築されてよいが、その1つの可能性を図21に示す。図21では、ポリエステル(たとえば、マイラー(商標))およびアルミニウムからなる2つの層を向き合わせて接着している。
【0063】
[電気回路]
図9には、アーチファクト除去のために使用しうるアナログ電気回路の1つの可能性を示す。2つのモニタリング用電極(電極1および電極2)の各々からの信号は、それぞれ反転増幅器A1,A3を介してバッファされる。バッファされた信号は、低域フィルタを通じて投入される。可変コンデンサを用いて低域フィルタを調整し、時定数を変更してもよい。回路中には可変コンデンサ60を示すが、可変抵抗または調整可能な回路要素のいくつかの他の組み合わせを用いてもよい。信号を差し引くときにアーチファクトからのエネルギーのほとんどが相殺されるように、2つの入力信号中の異なる遅延を調整するようにフィルタを設定してもよい。
【0064】
図9には可変利得増幅器A2,A4も示す。これらの利得増幅器によって、両信号におけるアーチファクトの大きさが同等であり、出力増幅器A5において差し引かれるときに相殺されるように、各電極からの信号のスケーリングを行うことが可能である。プログラム可能な利得増幅器が信号を増幅することに加え減衰することができる場合、信号対雑音比(SNR)が充分であれば、プログラム可能な利得増幅器は1つしか必要でない。
【0065】
スケーリングの一例として、下記のように、一実施例では、3つの電極にて検出された信号から2つのモニタリングベクトルP1,P2が算出される。
P1=(電極1)−(電極3)
P2=(電極2)−(電極3)
次にスケーリング後の出力Yは、以下のように計算される。
【0066】
Y=(c1×P1)+(c2×P2)
いくつかの実施例においては、2つのモニタリングベクトルP1,P2におけるアーチファクトの大きさがほぼ等しく、スケーリング後の出力Yにおいてアーチファクトが相殺されるように、定数c1,c2を選択する。他の実施例においては、ベクトルのうちの一方をスケーリングせずに用いる(したがって定数は必要ない)。
【0067】
図22には、100mAの刺激を用いるいくつかの実施例において、アーチファクトを減少させる手法の一例を示す。スケーリングされていない差分信号(ベクトル)P1,P2(上側2つの信号)の両方は明らかなアーチファクトを含む。しかしながら、スケーリング後の差分信号(下側の信号)は、実質的にアーチファクトが減少され、元の差分信号のいずれよりも低い。定数c1およびc2のうちの少なくとも一方は、アーチファクトを比較することによって数学的に導出されてもよく、アーチファクトを最小にするように操作者により調整(たとえばダイアルを捻るなど)されてもよい。スケーリングは、得られるモニタリング信号の形状に影響を与える場合があるが(たとえば、診断目的に関係する大きさを有しない場合がある)、心拍数またはECGの概略形状を判断するためには有用であろう。スケーリングは、ハードウェアまたはソフトウェアにおいて実施されてよく、定数は、モニタされる各差分信号(ベクトル)におけるアーチファクトの方向に応じて、正または負のいずれであってもよい。
【0068】
回路を新しい患者および新しい電極に迅速に適応させることを可能とするため、いくつかの実施例では、デジタル制御された要素、たとえば(限定されないが)プログラム可能な利得増幅器、デジタル制御された可変抵抗および回路内外に切替可能(たとえばアナログスイッチによって)なコンデンサまたはインダクタを使用することもできる。手動調整可能な要素を用いて、操作者が設定を行うようにしてもよい。
【0069】
図9に示す信号処理は、サンプル取得した信号のデジタル処理もしくはソフトウェア処理を用いて、またはアナログおよびデジタル信号処理の組み合わせを用いて実施されてもよい。好適には、モニタリングのための目的の期間中、アーチファクトが入力増幅器または変換器を飽和することのないように、回路が設計される。デジタル信号処理では、信号
を遅延させる際または信号を処理する際に、さらなる柔軟性を与えることが可能となる。デジタル処理では、共通参照に対する各電極からの未処理の信号をサンプル取得する必要がある。複合フィルタおよび適応利得推定値のうちの少なくとも一方を、デジタル実施例またはアナログ実施例において用いてもよい。
【0070】
[インピーダンス調整および同相除去回路]
2つのモニタリング用電極からの差分信号におけるアーチファクトを減少させるための別の手法は、モニタリング用電極にて電位を検出する電気回路における入力インピーダンスを調整することである。各モニタリング用電極のインピーダンスが等しい場合、アーチファクトは最小となる。電極インピーダンスはアーチファクトから直接的に測定または推定される。低出力もしくは全出力の治療用パルスを印加することにより、または正弦波、チャープもしくはこの目的に適した他の任意の波形を用いることにより、インピーダンスを測定することができる。各モニタリング用電極にて(または2つの電極の間において)測定された電圧または電流の波形を用いて、インピーダンス(またはインピーダンスミスマッチ)を推定することができる。
【0071】
インピーダンス平衡回路の一実施例を図5に示す。図5では、2つの電極における刺激アーチファクトが良好に均一化されることにより、差分信号におけるアーチファクトが減少する。モニタリング用電極のインピーダンスを平衡化することにより、同相除去を補助するために患者駆動電極を接続する必要がなくなる。
【0072】
図5の回路には、2つのモニタリング用電極70,72(左上)と患者駆動電極74(左下)とを示す。各電極をRC要素として示すが、これらの値は時間により(たとえば呼吸のため)変化する場合がある。導電性ゲルの皮膚との接触は各電極で異なり得るので、電極間におけるインピーダンス不均衡が生じる。
【0073】
通常、モニタされる信号は、刺激アーチファクトおよび電力線干渉などの他の同相信号に比べて大きさが小さい。刺激用パルス中または刺激用パルス直後に、2つの刺激用電極の間の電界にて等電位にある2つのモニタリング用電極は、2つの刺激用電極の分極による非常に大きな同相信号、すなわち刺激アーチファクトを測定する。しかしながら、インピーダンスが適切に平衡化されない場合、2つのモニタリング用電極の間の差を測定する回路は、この大きな刺激アーチファクトを除去することができない場合がある。
【0074】
当該技術分野においては同相信号を相殺するためのいくつかの方法が知られており、それらを適用して、刺激アーチファクトの相殺を高め得る。刺激用電極およびモニタリング用電極に向かうリードの各々は、それを包囲するケーブルシールド76を備える。回路は、増幅器A1を介して同相信号によりケーブルシールドを駆動する。これにより、信号およびシールドが類似の電位に維持され、ケーブル容量の影響を減少させる。
【0075】
シールドドライブもまたA2によって積分および変換され、患者に戻される。これには、回路参照を患者の同相に近づけることにより、同相信号を減少させる効果がある。
同相信号による電流は、患者またはシールドドライブを含む様々な戻り経路を通じて患者から流れる場合がある。回路要素は、電極インピーダンスにおける不均衡を補正して、同相信号を減少させるように調整されてもよい。図面には、インピーダンス補償回路78によって制御される可変抵抗およびコンデンサ回路を示す。
【0076】
2つのモニタリング用電極の間に直接配置する場合、インピーダンスマッチング回路がより実施が容易であるが、複雑なケーブル配線が必要であり、実用的でないときもある。
インピーダンスマッチング要素は、トリムポット(登録商標)、手動調整可能なコンデンサ、デジタル制御可変抵抗もしくはコンデンサ、またはアナログスイッチを有する1つ
以上のRC要素を含む(これらに限定されない)、当該技術分野において広く用いられる要素を含んでもよい。インダクタまたは他の受動要素を用いてもよい。
【0077】
インピーダンス補償制御器は、アナログ処理およびデジタル処理のうちの一方または両方を備えてよい。インピーダンスは、正弦波、チャープまたは全出力もしくは低出力の治療用パルスの形態で患者に直接電流を印加することによって測定されてよい。最新技術において周知の他の方法も存在する。また、電力線干渉による不平衡または治療中に送出されるパルスによるアーチファクトを評価することによって間接的に測定されてもよい。制御器がデジタル制御回路要素を調整し、同相アーチファクトにおける変化をモニタするようにしてもよい。これに代えて、インピーダンスが装置操作者により手動で調整されてもよいが、その場合には時間が必要であり、すべての装置操作者により共用されていないような専門技能が必要になる。
【0078】
[ケーブルおよびコネクタ]
刺激用(治療用パッド)およびモニタリング用電極を、それらに関連する医療装置(たとえば、複合型のCPR刺激、除細動およびペーシング装置)に接続するために、様々な構成のケーブルおよびコネクタを用いることができる。たとえば、治療用電極を、治療用コネクタに配線してもよい。ワイヤは任意の導電性材料から作成されてよく、電極に恒久的に取り付けられてもよいし、コネクタを用いて電極のうちの一部または全部に取り付けられてもよい。コネクタによりワイヤを再使用することが可能となるが、その信頼性は低下し、接続に時間が必要である。また、ワイヤを接続し忘れたり、誤った電極にワイヤを接続することによって操作者が間違いを犯す可能性を与えてしまう欠点もある。
【0079】
モニタリング用電極はモニタリングコネクタに配線されてもよい。治療用コネクタおよびモニタリングコネクタは、物理的に離れていてもよいし、統合コネクタ内に統合されていてもよい。統合コネクタは一要素からなるものであってもよいし、コネクタの一方または両方が医療装置に取り付けられるように離したり移動させたりできるモニタリングコネクタおよび治療用コネクタから構成されてもよい。
【0080】
このことは、電極に恒久的に取り付けられた、個々に延びるワイヤ、または1本のケーブル内でコネクタに一緒に取り付けられるワイヤを用いて行うことができる。1つのコネクタを医療装置に取り付けることにより、すべての接続が確実に正しく行われる。しかしながら、これには、医療装置に標準リードを接続するための別個の入力と、電極間の選択または両方のリードの組の表示が可能な内部切替機構とが必要である。
【0081】
これに代えて、別個のコネクタを治療用パッドおよびモニタリング用電極に用いてもよい。この場合、操作者がこれらのケーブルのうちの一方または両方を他のモニタリング用電極またはパッドにより交換できるという利点があり、切替機構が必要なくなる。この種のケーブル配線によって、元来この目的のために設計されていない装置においても、そのような電極を使用することが可能になる。
【0082】
これと同日に出願の(引用により本明細書に援用する)「医療ケーブル(Medical Cable)」と題するピーター エイ.ルンド(Peter A.Lund)らの出願において示されるマルチリードケーブル構成のうちのいくつかを、いくつかの実施例において用いることができる。
【0083】
[治療用電極およびモニタリング用電極において共用されるワイヤ]
ケーブル配線を簡略化し、コストを削減するために、用途によっては治療用パッドワイヤがモニタリング用電極と共用されてもよい。これは特に、治療用パッドにパルスが短時間引加され、この時間中にモニタリングの必要がないような場合に関連する。切替回路ま
たは、以下に限定されないが、ダイオードまたはガス放電管などの非線形回路要素をこの目的のために用いてもよい。
【0084】
ワイヤ共用電極アセンブリの可能な一実施例を図8に示す。ダイオード81,82は、刺激後モニタリング相中、刺激用電極85(ゲル層86を介して患者に伝導する)には電流を流させるが、モニタリングチャンネルへの電流の逆流は阻止する。両方向に配向されたダイオードを用いることにより、分極(たとえばダイオード降下未満の)がモニタリング回路によって測定されることを防止しながら、二相刺激波形の送出を可能とする。高電流を分割するため、またはフォールトトレランスのために、いずれの方向において2つ以上のダイオードが用いられてもよい。随意で、抵抗83または高インピーダンスモニタリング用電極84によって、治療中にモニタリング用電極84を通じる電流を減少させてもよい。図8に示すような実施例および他のワイヤ共用の実施例は、クラッタを減少させ、誤った配線を行う可能性を減少させる利点がある。いくつかの実施例においては、追加のケーブルを除去することでも全製造コストを抑えることができる。
【0085】
[多刺激用電極による相殺]
図14に示す構成では、1つの極性の複数の(2つを示す)刺激用電極を用いる。電流は、1つの陽刺激用電極16から2つの陰刺激用電極18へ流れる。他の実施例においては、陽刺激用電極および陰刺激用電極の両方は2つ以上の電極に分割され得る。モニタリング用電極20を各陰刺激用電極の中央に(接触させずに)配置する。両方の陰刺激用電極を、各々がほぼ等しい電流を受ける(引き出す)ように配置する場合、2つのモニタリング用電極によって測定されるアーチファクトはほぼ等しくなるため、2つの電極の間の差を取ったときに相殺される。
【0086】
同極性の複数の刺激用電極18を用いた他の構成を図12に示す。この実施例においては、一方の極性の電極を3つの刺激用電極18(さらに分割した電極を用いてもよい)に分割し、他の極性を1つの電極16のみによって処理する(これに代えて、この極性も複数の電極により処理されてよい)。同極性の複数の刺激用電極は別個の導電板(たとえばスズ)を備え、導電板の下に共通の導電性ゲルまたは別個のゲル領域を備えてもよい。3つの刺激用電極全てを刺激中に一緒に用い、刺激用電極のうちの2つをモニタリングのために用いる(差分増幅器に繋がる左右の電極により示すように)。モニタリングのために用いる2つの電極は心臓をまたぐように配置され、目的のECGベクトルを生じるように配列される。これらの2つの電極は中央の電極より小さくてもよい。2つの電極の分極はほぼ等しく、同極性であるため、モニタリングのために2つの刺激用電極を用いることが可能である。この3つの電極は、1つのアセンブリの一部であってもよく、配置の柔軟性のために2つまたは3つのアセンブリに分割されていてもよい。3つの電極の組み合わせ領域は、送出する治療(たとえば除細動またはペーシング)用に充分なように作成する。
【0087】
さらに別の実施例を図13に示す。この場合、中央の電極が排除され、一方の刺激極性が心臓の両側に配置された2つの電極18に分割され、目的のECGベクトルを生じるように配列される。両電極は刺激中に用いられ、2電極間の差を形成することによってモニタリングが行われる。
【0088】
[アーチファクトをさらに軽減するための処理]
さらにアナログ信号処理またはデジタル信号処理を用いることによって、刺激アーチファクトを軽減することができる。そのような処理としては、フィルタ入力、ディスプレイまたはストリップチャートレコーダが、ブランク化されるか、ゼロにされるかまたはその他の方法によりアーチファクト中に修飾される、アーチファクトの適応型ブランク化が挙げられる。アルゴリズムまたは適応方法を用いて、測定された信号に基づきブランク化の時間を調整してもよい。これにより操作者は、アーチファクトが迅速に相殺された場合、
モニタされる信号の多くを視認することができるようになり、アーチファクトの消散に長い時間が必要な場合、紛らわしいアーチファクトの表示を防止することができるようになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
電極アセンブリは患者の外部に適用される3つ以上のモニタリング用電極を備え、第1および第2のモニタリング用電極は差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択され、
3つ以上のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極の選択は異なる距離に位置する2つの電極の間の選択を含む電極アセンブリ。
【請求項2】
2つの電極の間の選択は時間により変化する請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項3】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
組み合わせを作成する手法は時間により変化して、第2および第3の電極における電気的アーチファクトの相対的大きさの時間による変化を補償する電極アセンブリ。
【請求項4】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電
位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
患者の外部に適用される少なくとも第4のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとのうちの一方または双方は時間により変化する請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項5】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
位置決め要素は第1および第2のモニタリング用電極の刺激用電極からの距離を規定するワイヤなどの要素を含む電極アセンブリ。
【請求項6】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
標準3リードECG信号に相当するECG信号を導出するための変換において用いられる複数の差分信号が存在する電極アセンブリ。
【請求項7】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
モニタリング装置を含み、
同モニタリング装置は1つ以上の電極からまたは同電極をモニタリング装置に接続するために使用するコネクタから非標準モニタリング構成を自動的に識別し、非標準モニタリング構成を識別した場合、検出される電位の信号処理を自動的に変更するためのモニタリング装置である電極アセンブリ。
【請求項8】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
時間により変化する手法により信号が形成される電極アセンブリ。
【請求項9】
信号は第1および第2のモニタリング用電極における電位の組み合わせを作成することにより形成され、同組み合わせは時間により変化する手法により作成される請求項8に記載の電極アセンブリ。
【請求項1】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
電極アセンブリは患者の外部に適用される3つ以上のモニタリング用電極を備え、第1および第2のモニタリング用電極は差分信号に対する電気的アーチファクトの影響を減少させるように該3つ以上のモニタリング用電極から選択され、
3つ以上のモニタリング用電極は刺激用電極のうちの1つから異なる距離に位置する2つ以上のモニタリング用電極を含み、第1のモニタリング用電極の選択は異なる距離に位置する2つの電極の間の選択を含む電極アセンブリ。
【請求項2】
2つの電極の間の選択は時間により変化する請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項3】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
組み合わせを作成する手法は時間により変化して、第2および第3の電極における電気的アーチファクトの相対的大きさの時間による変化を補償する電極アセンブリ。
【請求項4】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
少なくとも第3のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1の電極にて検出された電
位と、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
患者の外部に適用される少なくとも第4のモニタリング用電極を含み、差分信号は第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとの間の差を含み、
第1および第4の電極にて検出された電位の組み合わせと、第2および第3の電極にて検出された電位の組み合わせとのうちの一方または双方は時間により変化する請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項5】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
位置決め要素は第1および第2のモニタリング用電極の刺激用電極からの距離を規定するワイヤなどの要素を含む電極アセンブリ。
【請求項6】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
標準3リードECG信号に相当するECG信号を導出するための変換において用いられる複数の差分信号が存在する電極アセンブリ。
【請求項7】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
モニタリング装置を含み、
同モニタリング装置は1つ以上の電極からまたは同電極をモニタリング装置に接続するために使用するコネクタから非標準モニタリング構成を自動的に識別し、非標準モニタリング構成を識別した場合、検出される電位の信号処理を自動的に変更するためのモニタリング装置である電極アセンブリ。
【請求項8】
外部心臓ペーシング用および外部心臓モニタリング用の電極アセンブリであって、
ペーシング用パルスを送出するための1つ以上の外部刺激用電極と、
少なくとも第1および第2の外部モニタリング用電極と、
外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が接続される1つ以上の位置決め要素とを備え、
第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位から形成される信号においてペーシング用パルスに起因する電気的アーチファクトが相殺される位置に第1および第2の外部モニタリング用電極を配置するように、位置決め要素、外部刺激用電極ならびに第1および第2の外部モニタリング用電極が構成されており、
電位から形成される信号は第1および第2の外部モニタリング用電極にて検出された電位間の差からなる差分信号を含み、
時間により変化する手法により信号が形成される電極アセンブリ。
【請求項9】
信号は第1および第2のモニタリング用電極における電位の組み合わせを作成することにより形成され、同組み合わせは時間により変化する手法により作成される請求項8に記載の電極アセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−196581(P2012−196581A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167489(P2012−167489)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2012−85919(P2012−85919)の分割
【原出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504242032)ゾール メディカル コーポレイション (42)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2012−85919(P2012−85919)の分割
【原出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504242032)ゾール メディカル コーポレイション (42)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
【Fターム(参考)】
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