説明

多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素またはそのエステルのクロロヒドリンへの変換

本発明は、少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換する方法であって、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを塩化水素と接触させる少なくとも1つの反応ステップ、続いて該反応ステップの流出物を処理する少なくとも1つの下流処理ステップ、を含み、該下流処理ステップを、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する該流出物が温度120℃未満で維持されるような条件で実施する方法に関する。本発明は、塩化水素化反応の生成物からの塩化水素の遊離を最小化することによって、下流設備の腐食を低減させ、そして高コストの耐食性物質の使用の必要性を低減させることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素またはそのエステルをクロロヒドリンに変換する方法に関する。クロロヒドリンは、次にはエポキシド,例えばエピクロロヒドリンの製造において有用である。
【背景技術】
【0002】
エピクロロヒドリンはエポキシレジンへの広く使用される前駆体である。エピクロロヒドリンは、パラビスフェノールAのアルキル化のために一般的に使用されるモノマーであり;得られるジエポキシド(フリーのモノマーまたはオリゴマー性ジエポキシドのいずれとしても)は、高分子量レジン(これは例えば電気ラミネート、缶コーティング、自動車トップコートおよびクリアコートにおいて使用される)に進むことができる。
【0003】
エピクロロヒドリンの製造のための公知の方法は、塩化アリルを次亜塩素酸化してジクロロヒドリンを形成することを含む。苛性物でのジクロロヒドリン混合物の閉環は、エピクロロヒドリン(これは高純度(>99.6%)に蒸留される)を与える。このクロロヒドリン法は、エピクロロヒドリンの分子当たり2当量の塩素および1当量の苛性物を必要とする。
【0004】
エピクロロヒドリンを製造するための別の公知の方法において、第1ステップは、プロピレンのアリル位の酸素を、酢酸中の分子酸素のパラジウム触媒反応を介して導入することを含む。次いで、得られる酢酸アリルを加水分解し、塩素化し、そして初期のジクロロヒドリンが苛性物でエピクロロヒドリンに閉環する。この方法は、塩化アリルの生成を回避することによって塩素の使用が少ない(1当量のみ)。
【0005】
上記の、エピクロロヒドリンを製造するための両者の公知の方法は、塩素の犠牲的な使用を必要とし、そして工業用途および次亜塩素酸(HOCl)の発生に関連する厄介な問題が工業スケールで悪化する可能性があり、そしてこれらの方法は、実質量の塩素化副生成物を生成することが公知である。特に、塩化アリルの次亜塩素酸化が1,2,3−トリクロロプロパンおよび他の不所望の塩素化エーテルおよびオリゴマー(RCl)を生成することが周知である。RCl問題は、製造の増大するコストとして扱われる。より大きいグローバルな製造に適応させるために新たな資本が加えられ、これらの不所望の副生成物への適応および修正のために下流処理におけるかなりの投資を加えなければならない。これらの同じ問題は、プロピレンおよびエチレンクロロヒドリンへのHOClルートにおいて類似し、従ってこれらのルートの実施は少ない。
【0006】
代替の方法(これはHOClの発生を回避する)は、例えば、国際公開第WO2002/092586号および米国特許第6,288,248号に記載される通りであり、チタンシリカライト触媒を過酸化水素とともに用いる塩化アリルの直接エポキシ化を含む。HOClの発生を低減させる利点はあるが、塩化アリルはまだ中間体である。塩化アリルを使用することの不都合は2倍である:(1)プロピレンから塩化アリルへのフリーラジカル塩素化はあまり選択的でなく、そして相当多い割合(>15モル%)の1,2−ジクロロプロパンが生成する。(2)プロピレンは炭化水素原料であり、長期間、プロピレン価格の世界的見通しは上昇し続けている。制御された塩素系酸化化学およびRCl発生の厄介な問題を回避する、エピクロロヒドリンの製造の新規で経済的に実行可能なプロセスが望ましい。非炭化水素で再生可能な原料を含む、エピクロロヒドリンを発生させるためのプロセスのための工業における必要性が存在する。
【0007】
グリセリンは低コストで再生可能な原料と考えられており、これは燃料添加剤を製造するためのバイオディーゼルプロセスの共生成物である。他の再生可能な原料,例えばフルクトース、グルコースおよびソルビトールを水素化分解して隣接ジオールおよびトリオール,例えばグリセリン、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール等の混合物を生成できることが公知である。
【0008】
グリセリンまたは混合グリコールに富み低コストで、経済的に魅力的な、グリセリンまたは混合グリコールの塩化水素化のためのプロセスが望ましい。このようなプロセスが、RClの生成なく隣接クロロヒドリンに対して高度に化学選択的であれば有利である。
【0009】
グリセロール(本明細書で「グリセリン」ともいう)をジクロロプロパノール(本明細書で「ジクロロヒドリン」ともいう)の混合物、化合物IおよびII(下記スキーム1に示すもの)に変換するための方法が公知である。反応は、無水HClおよび酢酸(HOAc)触媒の存在下で水を除去しながら行なう。両化合物IおよびIIは、次いで、エピクロロヒドリンに、苛性物での処理を介して変換される。
【0010】
【化1】

【0011】
スキーム1における上記の化学物質を使用する種々の方法が先行技術において報告されてきた。例えば、エピクロロヒドリンは、ジクロロプロパノール,例えば2,3−ジクロロプロパン−1−オールまたは1,3−ジクロロプロパン−2−オールを塩基と反応させることにより調製できる。ジクロロプロパノールは、次には、大気圧でグリセロール、無水塩酸、および酸触媒から調製できる。大過剰の塩化水素(HCl)ガスが、反応の過程の間に形成される水の共沸除去の促進のために推奨される。
【0012】
例えば、Gibson,G.P.,Chemistry and Industry 1931,20,949−975;およびConantら,Organic Synthesis CV 1,292−294,およびOrganic Synthesis CV 1,295−297;は、ジクロロヒドリン,上記スキーム1における化合物IおよびIIについて、大過剰の無水HCl(最大7当量)を、グリセロールおよび有機酸触媒の撹拌した溶液に通すパージによる、70%を超えるジクロロヒドリンの蒸留収率を報告している。上記文献に記載される方法は、大気圧のHCl(これは、蓄積水を除去するための共沸剤として使用される)の使用を必要とする。他の共沸混合物が公知である。例えば、米国特許第2,144,612号は、n−ブチルエーテルを過剰の塩化水素(HCl)ガスとともに使用して反応性蒸留および水の除去を促進することを記載する。事実、全ての先行技術は、共沸混合物を水とともに蒸発させて高変換を与えることを教示し、そしてプロセスは、大気圧未満または大気圧の条件を、水除去の実現のために必要とする。米国特許第2,144,612号は、添加される共沸剤(例えばn−ブチルエーテル)を有利に使用して反応性共沸蒸留および水の除去を促進することを議論し、繰り返すが過剰のHClを大気条件で使用する。水の減圧除去を用いる類似の取組みが、ドイツ国特許第1075103号で教示されている。
【0013】
ドイツ国特許第197308号は、クロロヒドリンを、無水塩化水素を用いたグリセリンの触媒的塩化水素化で調製する方法を教示する。この文献は、大気条件での水の分離を伴うバッチプロセスを教示する。ドイツ国特許第197308号は、塩化水素化反応プロセスを高い圧力で実施することは教示しない。
【0014】
クロロヒドリンを製造するための全ての公知の先行技術は、水がプロセスから共生成物として除去される塩化水素化プロセスを報告する。特に、国際公開第WO2005/021476号は、一連の塩化水素化反応(ここで反応の水が、大気圧または大気圧未満のプロセスで反応性蒸留により除去される)を教示する。類似の技術が、国際公開第WO2005/054167号で、より高い全圧(HCl分圧は特定されていない)下で実施される反応が反応率を改善するという追加の教示とともに教示されている。しかし、国際公開第WO2005/054167号は、HCl分圧の使用およびそのプロセスにおけるその効果を何ら開示していない。国際公開第WO2005/054167号はまた、水を除去して高い変換および選択性を大気圧または大気圧未満の圧力で実現する必要性を例示する。国際公開第WO2005/021476号および国際公開第WO2005/054167号のいずれも、これらのプロセスにおける水除去の何らの利点も、または水の除去が不所望のクロロエーテルおよびRClの形成に寄与することも教示していない。
【0015】
極めて大過剰量の塩化水素(HCl)ガスの使用は、経済的に問題があり、そして未反応塩化水素の水の本来的な混入は、容易に再循環できない水性塩化水素流をもたらす。さらに、24〜48時間の反応時間が、グリセリンの完了には程遠い変換の実現のために必要である;しかし、生成物はしばしば顕著な量の不所望の過度に塩素化されたトリクロロプロパンおよび塩素化エーテルを含む。他のプロセスもまた、アルコールを塩化物に変換する試薬を使用するが、これは水をin situで捕捉することが公知である。例えば、Carre,Mauclere C.R.Hebd.Seances Acad.Sci. 1930,192に記載されるように、塩化チオニルを使用してグリセリンをクロロヒドリンに変換でき、そして選択的であることができるが、ストイキオメトリー量のSO2を生成する。この試薬のコストおよび値段は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素由来のエピクロロヒドリンまたは任意の他のクロロヒドリンの工業的製造には許容できるものではない。同様に、Gomezら. Tetrahedron Letters 2000,41,6049−6052に記載されるように、穏やかで効果的な他の塩化水素化試薬はこの転換のためには高価で特殊であると考えられる。他の低温プロセスは、アルコールをより良い脱離基(例えばメシレート)に変換し、そしてモル過剰で使用されるイオン液体を介して塩化物の可溶な形態を与える(Leadbeaterら Tetrahedron 2003,59,2253−58に記載されるように)。繰り返すが、無水条件、ストイキオメトリー試薬および塩化物の高価な形態に対する要求は、上記プロセスの工業的な検討を阻む。さらに、これらの試薬は多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の完全な塩素化の原因になる可能性があり、繰り返すが、不所望のRCl副生成物を招来する(Viswanathanら Current Science, 1978, 21, 802−803に記載されるように)。
【0016】
要約すると、クロロヒドリンをグリセリンまたは任意の他の隣接ジオール、トリオールまたは多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素から調製するための上記公知の取組みの全てに対して少なくとも5つの主要な不都合が存在する:(1)グリセリンまたは任意のジオールの塩化水素化のための大気圧プロセスは大過剰のHCl、しばしば7〜10倍モル過剰を必要とする。大気圧プロセスにおいて、過剰の無水HClには、次いで、水が混入する。(2)上記公知プロセスの変形は極めて遅いバッチ型の反応であり、これらにはしばしば100℃超の温度で24〜48時間かかり、そして所望の1種または複数種のクロロヒドリン生成物への80〜90%変換を超えない。(3)特殊な塩化水素化試薬は、水を捕捉することにより反応を推進できるが、しばしば商品の経済的な製造に反する副生成物を生成する。(4)上記取組みの全てが、より高レベルの不所望のRClを生成する(上記でグリセリン塩化水素化について規定するように)。(5)反応を高い圧力で行なって反応器内容物の蒸発を制御する際、低分圧のHClは低い変換または遅い反応速度をもたらす。
【0017】
先行技術は、グリセリンのジクロロヒドリンへの完全な変換を促進するためには水の除去が必要であると結論付ける。この水除去の要求を実現するために、先行技術の反応は、共沸もしくは反応性蒸留または抽出条件の下で行ない、これはプロセスに対して共溶媒または追跡物およびかなりの資本追加を必要とする。全ての先行技術は、反応混合物中の水の存在によって、この変換に対して平衡限界が存在すると結論付けている。
【0018】
工業においては、先行技術の全ての不備を解決する、高純度のクロロヒドリンを多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素から製造するための塩化水素化プロセスを与えることが所望される。従って、ジオールおよびトリオールをクロロヒドリンに転換する単純でかつ費用効率が良い方法を発見することはクロロヒドリン化学の技術における進歩である。
【0019】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の方法が腐食性の媒体を形成することもまた公知である。例えば、国際公開第WO2006/020234号は、塩化水素化反応のために有用な設備は、当該分野における任意の周知の設備であることができ、そして反応混合物を塩化水素化の条件で収容できるのがよいことを開示する。好適な設備は、プロセス成分による腐食に耐える物質で組立てることができ、そして例えば、金属,例えばタンタル、好適な金属合金,例えばハスタロイ(Hastalloy)C(商標)、またはガラスライニングされた設備を挙げることができる。
【0020】
塩化水素を、特に水および/またはアルコールの存在下で用いるプロセスが腐食性の媒体を形成すること、またこのようなプロセスが耐食性物質を使用して適切に反応混合物を収容することを必要とすることもまた公知である。例えば、米国特許第4,701,226号は、タンタルおよびガラスライニングされた設備が酸性環境に対して耐性であることを開示する(コラム1、第26行)。この同じ文書は、より早期の文献(RufおよびTsuei(J.of Applied Physics,Vol.54,No.10,第5703頁,(1983))による)(これは、非晶クロムが12N塩酸によって急速に腐食されるが、ホウ素をクロムに添加することによって極めて耐食性の合金が与えられることを報告する)を要約する。塩酸に対して室温で耐食性が現れる場合がある合金がより高温では好適でない可能性があることもまた報告されている(コラム2、第27行)。
【0021】
Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Edition,John Wiley and Sons,publishers,1980(参照により本明細書に組入れる)は、殆どの物質は水性塩酸と反応すること、および腐食の速度は種々の因子,例えば温度、酸の濃度、阻害剤の存在および金属表面の性質に左右されることを報告する(第12巻、第1003頁)。第1003頁では、タンタルおよびジルコニウムがHClに耐えると報告されているが、後者は第二鉄イオンまたは第二銅イオンの存在下では奏効しない。ニッケル合金、特にニッケル−モリブデン合金,ハステロイ(Hastelloy)(商標)(High Performance Alloys,Inc.の商標)等は、高温供給に推奨される(第1003頁)。タングステンおよびモリブデンは、良好な室温耐食性を示すが100℃では奏効しないことが報告されている。第831頁では、表が、種々の金属およびグラファイトの塩酸に対する耐性を報告している。一般的なプラスチックおよびエラストマーが塩酸に対して、物質の温度限界内で優れた耐性を示すこともまた報告されている(同書、第1003頁)。塩酸に対して何らかの耐性を示すことが報告されているポリマーとしては、天然ゴム、ネオプレン、ニトリル、ブチル、クロロブチル、ハイパーロン(hyperlon)、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、サラン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)およびフッ化炭素プラスチックが挙げられる。フッ化炭素プラスチックは、塩酸に対する極めて高い耐性および操作の高い温度限界を有するものとして特定される。フェノールレジン、エポキシレジンまたはフランレジンの含浸によって不浸透性になる炭素およびグラファイトは、最大170℃の塩酸供給のために好適なものとして特定される。これらの炭素またはグラファイトの物質を、熱交換および遠心ポンプにおいて使用するために使用することが開示されている。
【0022】
ガラスライニングおよびセラミックライニングされた設備、およびアルミナ、シリカ、ジルコニアおよびクロム−アルミナの耐火物もまた、塩酸供給のための好適な物質として記載されている。
【0023】
Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,2nd Edition,John Wiley and Sons publishers,1966 volume 11は、塩酸および塩化水素の供給において使用できる多くの金属および非金属の耐食性の広範囲な議論を提供する(第11巻、第323−327頁)。
【0024】
従って、塩化水素および塩酸が多くの金属物質に対して耐食性であることが当該分野で周知である。塩酸または塩化水素ガスを使用するプロセスは、一般的に、このような化学プロセスにおいてしばしば存在する腐食性媒体に対して耐性の設備を使用しなければならない。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のクロロヒドリンへの、塩酸または塩化水素ガスによる塩化水素化は、腐食性媒体を形成するプロセスの例である(例えば、国際公開第WO2005/054167号および第WO2006/020234号に教示されるように)。これらの出願は、塩化水素化剤、塩化水素に対して耐性の塩化水素化反応器内の物質(ガラスライニングされたスチール、タンタル、貴金属,例えば金、およびポリマーが挙げられる)の使用を開示する。国際公開第WO2005/054167号は、「本発明に係る塩素化された有機化合物を製造するための方法は、概略的には、反応条件下で塩素化剤、特に塩化水素に対して耐性の物質で形成またはコートされた反応器内で実施する」と開示する(第6頁、第4行)。これに続いて好適な物質が列挙されている。
【0025】
国際公開第WO2006/020234号は、「塩化水素化反応のために有用な設備は、当該分野における任意の周知な設備であることができ、そして反応混合物を塩化水素化の条件で収容可能であるのがよい。好適な設備は、プロセス成分による腐食に対して耐性である物質で組立てることができ、そして例えば金属,例えばタンタル、好適な金属合金,例えばハステロイ(Hastelloy)(C)、またはガラスライニングされた設備を挙げることができる。好適な設備としては、例えば、単一または複数の撹拌タンク、管もしくはパイプまたはこれらの組合せを挙げることができる。」と開示する(第21頁、第28行)。
【0026】
さらに、国際公開第WO2006/100317号は、塩化水素を用いる多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化のためのプロセスにおいて、腐食が塩化水素化プロセス自体の下流の設備において生じる可能性があることを開示する。国際公開第WO2006/100317号における実験データは、幾つかの金属(例1)が0.8質量%のHClによって幾つかの塩化水素化反応生成物の水性混合物中で溶解することを示す。例2は、PTFE(ポリ(テトラフルオロエチレン))、グラファイトおよび琺瑯スチールが同じ混合物によっては溶解しないことを示す。この媒体によって影響されない物質は、先行技術において塩化水素に対して耐性であると既に開示されている物質である。
【0027】
特に、国際公開第WO2006/100317号は、塩化水素化プロセスの塩化水素化ステップの上のステップは、腐食を被り、よって好ましくは耐食性物質で形成または被覆された設備内で実施するのがよいことを教示する。
【0028】
供給における(ここで腐食物への曝露が生じ、例えばここで塩酸または塩化水素を含有することが公知のプロセス流と接触する)耐食性物質の使用は、プロセス流における設備の溶解を最小化し、プロセス流への設備腐食生成物の混入を最小化し、そして保守および交換のコストを最小化することが所望される。
【0029】
一方、腐食を被らない設備内に耐食性物質を使用することは、このような耐食性物質で形成される設備の増大するコストにより望ましくない。加えて、このような設備、例えばガラスライニングされた反応器およびパイプは、従来の非耐性物質から組立てられた設備よりも脆弱であり、そして物理事象,例えば動作によって、従来の設備よりも大きい欠陥率を被る場合がある。
【0030】
従って、耐食性物質は、設備の許容できないレベルの腐食の原因となるプロセス流との接触によりこれらが必要な箇所のみに採用することが望ましい。腐食原因のプロセス流,例えば塩酸または塩化水素と接触することがないことにより耐食性物質が必要ない箇所では、より安価な従来の物質から組立てられた設備を採用することが好ましい。
【0031】
最後に、フッ化水素がガラスと反応して四フッ化シリコンを生じさせることは当該分野で公知であり(Kirk−Othmer,3rd Edition,Jon Wiley publishers,Volume 10,第746頁)、これはガラスまたはガラスライニングされた物質の溶解を招来する。塩化水素化プロセスにおいて、フッ化水素は、フッ化物イオンと酸(例えば硫酸または塩酸)との反応から形成できる。よって、塩化水素化プロセスの全ての段階でフッ化水素形成を回避することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
発明の要約
本発明の1つの側面は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化のための方法の生成物が酸性溶液の形成に対して安定である条件の特定である。
【0033】
本発明の第2の側面は、生成物を貯蔵する条件またはこれらの熱履歴に応じて、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の生成物を収容するために採用される構造物の適切な物質から組立てられた設備の使用である。
【0034】
本発明の第3の側面は、その熱履歴に起因して酸性媒体を形成した多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の生成物を処理して、その酸性度を低減させ、これを構造物の非耐性物質に対してより腐食性が少ない状態にする方法である。
【0035】
本発明の第4の側面は、プロセス混入物,例えばフッ素を制御して、塩化水素化プロセスの全体に亘って設備の溶解を防ぐことである。
【0036】
発明の説明
我々は、驚くべきことに、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の生成物が加熱時に酸性になることを発見した。理論に拘束されることを望まないが、塩化水素化プロセス生成物が塩化水素を加熱時に遊離させると考える。この遊離された塩化水素は、塩化水素化プロセス生成物を、酸性で、該物質と接触する非耐性物質に対して腐食性の状態にする。よって、該生成物の酸性度、従って腐食性は、生成物流の温度履歴に左右される。
【0037】
我々は、驚くべきことに、下流設備が、プロセスの生成物が維持される条件に応じ、使用の条件下で腐食に対する耐性を必要としないことを発見した。好ましい条件下で、塩化水素化生成物の安定性は、腐食物の観察されるレベルが塩化水素化のプロセスまたは生成物に対して不利でなく、そして耐性物質の下流プロセス設備の組立ての増大するコストが、塩化水素化剤に対して完全よりは低い耐性を示す物質への選択を妥当にしないようなものである。
【0038】
ここで、我々は、塩化水素の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素からの遊離を招来する条件、および、逆に、塩化水素の遊離が制限される条件を決定した。塩化水素の遊離が制限される場合、これらのプロセス流と接触する下流設備はより耐性が低いかまたは非耐性の物質の構造物の材料から、プロセスまたは生成物への不利な影響なく組立てることができる。このような下流プロセス設備において、腐食はなお生じる場合があるが、その発生は、これらの増大するコスト、組立ての困難性および保守の増大するコストにより、構造物の耐性物質の導入を妥当にするものではない。
【0039】
水性溶液の酸性度は、一般的にpHスケールによって測定される。水性溶液のpHは、水素イオン濃度の10を底とする対数の負をとったものである。よって水性塩化水素のpHを測定することにより、HClの濃度を容易に決定できる。例えば、塩化水素の水中の0.8質量%溶液は、pH0.66を与える。pH1を示す塩化水素の水性溶液は0.37質量%の塩化水素を含有する。
【0040】
塩化水素の濃度が、ガスとしてまたは溶液中でのいずれかで約0.8質量%未満(水性pH0.7超に対応)であるプロセス流においては、耐性物質の採用は必要でない場合がある。塩化水素は存在してもよい。これは意図して添加されるからであり、これはプロセスの前部分もしくは後部分から持越されるか、または加熱時の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の生成物からの遊離によって形成される場合があるからである。
【0041】
我々は、塩化水素の遊離が、塩化水素化のための塩化水素化プロセスカルボン酸触媒またはそのエステルの存在下および不存在下で温度120℃およびそれ以上で生じることを見出した。同様に、温度が120℃未満に下がるのに従い、塩化水素の、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化の生成物からの遊離は最小化する。
【0042】
水が塩化水素の腐食作用を悪化させる場合があり、そしてその低減が腐食作用を軽減することがさらに公知である。下流設備において水の濃度を最小化することが有利である場合がある。これは非耐性物質の腐食の速度の増大に寄与する場合があるからである。
【0043】
さらに、我々は、塩化水素化反応の生成物の酸性度を0.8質量%未満の塩化水素(水性pH0.66超に対応)に、または構造物の非耐性物質がその後に採用できるレベルまで、低減させるのがよいことを見出した。
【0044】
最後に、我々は、塩化水素化プロセスにおけるフッ化物濃度を可能な限り低く維持して、塩化水素化プロセスの全体に亘って設備の溶解を防止することが重要であり、特にこれをガラスライニングまたはコーティングによって保護することを見出した。特に、プロセスにおける総フッ化物濃度は50質量ppm未満に制限するのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本明細書でワンススルー、非再循環プロセスという本発明の方法の1態様を示すプロセスフローチャートである。
【図2】図2は、本明細書で触媒および中間体再循環プロセスという本発明の方法の別の態様を示すプロセスフローチャートである。
【図3】図3は、本明細書でトランスエステル化を伴う触媒および中間体再循環プロセスという本発明の方法の別の態様を示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
1つの広範な側面において、本発明は、少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換する方法であって、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを塩化水素と接触させる少なくとも1つの反応ステップ、続いて該反応ステップの流出物を処理する少なくとも1つの下流処理ステップ、を含み、該下流処理ステップを、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する該流出物が温度120℃未満で維持されるような条件で実施する、方法に関する。
【0047】
第2の側面において、本発明は、少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換する塩化水素化反応ゾーンの下流に位置する設備における腐食を低減させる方法であって、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する反応ゾーンの流出物を温度120℃未満で維持する、方法に関する。
【0048】
第3の側面において、本発明は、少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換するための取付装置であって、少なくとも1つの反応ユニットであって、その中でクロロヒドリンおよび/またはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを塩化水素と接触させる反応ユニットを含み、前記反応ユニットは、少なくとも1つの下流処理ユニットに接続されており、該下流処理ユニットの中で反応ユニットの流出物が処理および/または貯蔵され、前記下流処理ユニットにおいて使用する設備は、当該設備が流出物の総質量に対する総塩化水素濃度0.8質量%超である前記流出物と接触する領域のみにおいて耐食性物質で形成または被覆されている、取付装置に関する。
【0049】
本発明の有利な態様に従い、クロロヒドリンまたはそのエステルを含有する、塩化水素化反応ステップの流出物は、温度100℃未満、より好ましくは90℃未満で維持する。
【0050】
反応ステップからのクロロヒドリンまたはそのエステルをさらに処理する温度を可能な限り低く維持することにより、本発明は、塩化水素のこのような生成物からの遊離を最小化することができ、よって下流設備の腐食を低減させ、そしてこのような設備の耐用寿命を長くできる。さらに、下流設備の腐食が低減されるに従い、本発明は高コストの耐食性物質の使用の必要性を低減させる。
【0051】
本発明の第1の態様に従い、前記下流処理ステップにおいて使用される下流処理設備は、当該下流処理設備が流出物(該流出物の総塩化水素濃度が前記流出物の総質量に対して0.8質量%超である)と接触する領域のみにおいて耐食性物質で形成または被覆されている。
【0052】
この第1の態様に従い、下流処理設備が流出物(該流出物の総塩化水素濃度が0.8質量%未満である)と接触する領域において、前記下流処理設備は、耐食性物質で形成または被覆されていない。よって、下流処理設備は、これが、総塩化水素濃度が前記流出物の総質量に対して0.8質量%超である流出物と接触する箇所のみで、耐食性物質で形成または被覆されている。
【0053】
本明細書で用いる用語「反応ステップの流出物」は、反応ステップから直接的または間接的に得られる任意の化合物または化合物の混合物を意味する。流出物は、例えば、限定されないが、クロロヒドリン、クロロヒドリンのエステル、水、触媒、残存する多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステル、残存する塩化水素、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有できる。一般的に、1つまたは複数の塩化水素化反応器から直接出て来る流出物は、上記化合物の混合物を含有することになる。この第1の流出物は、少なくとも1つの下流処理ステップ,例えば化学的または物理的な処理、分離、貯蔵を受けることになる。分離ステップを実施する場合、第1の流出物は、任意に少なくとも2種の流出物に分けてもよく、これらはまた、各々が本発明に係る反応ステップの流出物を構成してもよい。
【0054】
本明細書で用いる用語「下流処理設備」は、反応ステップの1種以上の流出物を処理するために使用される任意の装置を意味し、例えば任意の種類の容器、反応器、分離装置(例えば、ストリッピング容器、蒸留カラム、抽出ユニット、ろ別装置、フラッシュ、エバポレーター、遠心分離機、撹拌器が挙げられる)、コンデンサー、管、パイプ、熱交換器、貯蔵タンク、ポンプ、コンプレッサー、バルブ、フランジ、さらにこのような装置内で使用される任意の内部要素,例えばカラムパッキン、および1つまたは複数の塩化水素化反応器の出口からの生成物を処理して、該プロセスの場所または別のプロセスにおけるその消費の場所からクロロヒドリンを離脱させるのに必要な任意の他の設備またはコネクターが挙げられる。
【0055】
本発明の第2の態様に従い、下流処理ステップにおいて、水を実質的に反応ステップの流出物から除去する。前記流出物中の水の濃度を最小化することによって、下流処理設備における非耐性物質の腐食が低減される。任意の方法を採用して流出物中に存在する水を除去でき、例えば任意の反応、極低温、抽出、共沸、吸収または蒸発のin−situ法もしくはex−situ法または水除去のための任意の公知の技術が挙げられる。
【0056】
本発明の第3の態様に従い、下流処理ステップにおいて、反応ステップの流出物中の塩化水素の濃度は、0.8質量%未満(水性pH0.66超に対応)に、または構造物の非耐性物質が採用できるレベルまで、低減される。従って、用いる処理としては、限定するものではないが、希釈、中和、ストリッピング、抽出、吸収、および蒸留が挙げられる。
【0057】
本発明の第4の態様に従い、各プロセス流または供給物流における総フッ化物濃度は、50質量ppm未満、好ましくは10質量ppm未満、より好ましくは5質量ppm未満、および最も好ましくは2質量ppm未満に制限される。
【0058】
フッ化物は、採用される塩化水素源中の混入物として、採用される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/もしくはそのエステル源の混入物として、または他のプロセス材料,例えば水もしくは不活性ガスにおける混入物として、プロセスに入る場合がある。本発明の第4の態様に従い、塩化水素、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステル、または採用される他のプロセス材料は、塩化水素化プロセスにおいて、塩化水素化自体において、ならびに反応器の上流および下流の両者で採用される構造物の材料の安定性を落とすよりも低いフッ化物レベルを含有するのがよい。当然ながら、フッ化物濃度はプロセスの部分で、蒸留、フラッシングおよび抽出等のプロセスによって局所的に増大する場合があり、そして続いて局所的な腐食性プロセスをもたらす。いずれにしても、本態様に従い、プロセスの部分でフッ化物が局所的に濃縮される手順は回避するのがよく、または、より高い局所的な濃度のフッ化物の、構造物の材料に対する作用を軽減するステップをとるのがよい。
【0059】
この態様に従い、プロセス流または供給物流における総フッ化物濃度が50質量ppm超、好ましくは10質量ppm超、より好ましくは5質量ppm超、および最も好ましくは2質量ppm超である場合、このようなプロセス流または供給物流を処理して、フッ化物濃度を、構造物の材料の品位が落ちないレベルまで低減させる。特に、このようなプロセス流または供給物流は、不均一性または均一性のフッ化物捕捉剤を用いて処理できる。例えば犠牲的なガラス板、カラムまたは管を採用できる。他の可能なフッ化物捕捉剤は、任意にプロセスに、前処理ステップまたはプロセスを通じてのいずれでもin situで添加できる。これらとしては、犠牲ガラスビーズまたは充填シリカゲル床が挙げられる。代替として、使用するシリカゲルは、焼成された球またはシリンダー形のペレット,例えば不均一触媒支持体として作られるものでもよい。当業者に公知であるように、シリカ支持体の多様な表面積が、異なるメッシュサイズのシリカを作ることにより可能である。これらのような不均一捕捉剤は、微量のフッ化物を除去するための工業プロセスのために好ましい。しかしその上均一性のフッ化物捕捉剤を使用することがあり得る。これらとしては、犠牲試薬,例えばヘキサメチルシロキサン、メチルトリメトキシシランまたは任意の可溶性または部分的に可溶性のシリコン試薬であってケイ素−酸素結合を含有するものが挙げられる。
【0060】
本発明の好ましい態様に従い、反応ステップは、超大気分圧の塩化水素で実施する。
【0061】
別の好ましい態様に従い、反応ステップは、実質的に水の除去なしで実施する。
【0062】
本発明の特に好ましい態様に従い、反応ステップは、超大気分圧の塩化水素で、かつ実質的に水除去なしで実施する。
【0063】
本明細書の「実質的に水除去なし」は、1つまたは複数の塩化水素化ステップの間にプロセス中に存在する水(例えば、反応の水または1種もしくは複数種の供給物成分とともに導入される水のいずれか)を除去するための何らの方法も、該塩化水素化ステップの間に採用しないことを意味する。これらの方法としては、任意の反応、極低温、抽出、共沸、吸収もしくは蒸発のin−situ法もしくはex−situ法または水除去のための任意の公知の技術を挙げることができる。
【0064】
本明細書の「超大気分圧の塩化水素」は、塩化水素分圧が、大気圧より大きい、すなわち15psia以上であることを意味する。
【0065】
本明細書で用いる用語「耐食性物質」は、設備の構成要素の質量損失、または設備を通して処理される反応媒体中での物質の少なくとも1つの構成成分の少なくとも一部の溶解がプロセス流中の物質の10質量ppm未満を与えること、によって測定した場合に、塩化水素化反応媒体に1年間に亘って影響されない物質または物質の混合物を意味する。逆に、非耐性は、1年間に亘って、設備の構成要素の質量において測定できる損失が存在するか、または設備を通して処理される反応媒体中での物質の少なくとも1つの構成成分の少なくとも一部の溶解が生じることを意味する。
【0066】
本発明に従い、塩化水素または塩酸による腐食に対して耐性の任意の物質を耐食性物質として採用できる。腐食に対して耐性の限定しない物質としては、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyから参照により組入れられるもの、特に、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,2nd Edition,John Wiley and Sons,publishers,1966 volume 11およびKirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Edition,John Wiley and Sons,publishers,1980,volume 12に開示されるものが挙げられる。
【0067】
好適な耐食性物質としては、金属,例えばタンタル、ジルコニウム、白金、チタン、金、銀、ニッケル、ニオブ、モリブデンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
好適な耐食性物質としては、さらに、上記金属のうち少なくとも1種を含有する合金が挙げられる。特に好適な合金としては、ニッケルおよびモリブデンを含有する合金が挙げられる。ハステロイ(Hastelloy)(商標)またはハスタロイ(Hastalloy)(商標)の名称で販売される耐食金属合金を特に言及でき、これらは主含有成分としてのニッケルを基にし、他の含有成分を伴い、これらの性質およびパーセントは、特定の合金に応じ、例えばモリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、カーボン、タングステン等がある。
【0069】
さらに好適な耐食性物質としては、セラミックまたは金属セラミック、耐火物質(refractory material)、グラファイト、ガラスライニングされた物質(glass-lined material),例えば琺瑯スチール(enameled steel)等が挙げられる。
【0070】
他の好適な耐食性物質としては、ポリマー,例えばポリオレフィン(例えばポリプロピレンおよびポリエチレン)、フッ素化ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンおよびポリパーフルオロプロピルビニルエーテル)、硫黄および/または芳香族化合物を含有するポリマー(例えばポリスルホンまたはポリスルフィド)、レジン(例えばエポキシレジン、フェノールレジン、ビニルエステルレジン、フランレジン)等が挙げられる。
【0071】
耐食性物質を使用して、本発明に係る腐食から保護されることが必要な下流処理設備装置の実体を形成できる。耐食性物質はまた、このような装置の表面のコーティングによって使用できる。
【0072】
例えば、レジンから形成されるコーティングに言及できる。特定部分,例えば熱交換器について、グラファイト(含浸されているかされていないかのいずれか)が特に好適である。
【0073】
本明細書で用いる用語「多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素」は、別個の飽和炭素原子に付いている少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する炭化水素を意味する。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、これらに限定されるものではないが、2〜約60個の炭素原子を含有できる。
【0074】
ヒドロキシル(OH)官能基を有する多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の任意の単一の炭素は、1個以下のOH基を有さなければならず、そしてsp3混成でなければならない。OH基を有する炭素原子は、1級、2級または3級であることができる。本発明において使用される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、各々がOH基を有する少なくとも2つのsp3混成炭素を含有しなければならない。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、炭化水素(高次の近接(contiguous)または隣接(vicinal)の繰返し単位を包含する)を含有する任意の隣接−ジオール(1,2−ジオール)またはトリオール(1,2,3−トリオール)が挙げられる。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の定義はまた、例えば1種以上の1,3−、1,4−、1,5−および1,6−ジオール官能基を同様に包含する。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素はまた、ポリマー,例えばポリビニルアルコールであってもよい。例えばジェミナルジオールはこの分類の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物から排除される。
【0075】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は芳香族部分またはヘテロ原子,例えばハライド、硫黄、リン、窒素、酸素、ケイ素、およびホウ素のヘテロ原子;ならびにこれらの混合物等を含有できることを理解すべきである。
【0076】
「クロロヒドリン」は、本明細書において、別個の飽和炭素原子に付いている少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つの塩素原子を含有する化合物を説明するために用いる。少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するクロロヒドリンは多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素でもある。従って、本発明の出発物質および生成物は、各々クロロヒドリンであることができ;その場合、生成物クロロヒドリンは出発クロロヒドリンよりも高度に塩素化され、すなわち出発クロロヒドリンよりも多くの塩素原子および少ないヒドロキシル基を有する。好ましいクロロヒドリンは、高度に塩素化されたクロロヒドリン,例えばジクロロヒドリンである。特に好ましいクロロヒドリンは、1,3−ジクロロプロパン−2−オールおよび2,3−ジクロロプロパン−1−オールならびにこれらの混合物である。
【0077】
本発明において有用な多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、例えば、1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;l−クロロ−2,3−プロパンジオール;2−クロロ−1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;シクロヘキサンジオール;1,2−ブタンジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,2,3−プロパントリオール(「グリセリン("glycerin", "glycerine")」または「グリセロール」としても公知、そして本明細書において互換的に用いる)およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明において使用する多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素としては、例えば1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;および1,2,3−プロパントリオール;が挙げられ、1,2,3−プロパントリオールが最も好ましい。
【0078】
本発明において有用な多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルの例としては、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロパンジオールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジアセテートおよびこれらの混合物が挙げられる。1態様において、このようなエステルは、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素と完全にエステル化された多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物,例えばグリセロールトリアセテートとグリセロールとの混合物から形成できる。
【0079】
本発明の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、任意の望ましい限定されない濃度で使用できる。一般的に、より高い濃度が経済的な理由で好ましい。本発明のために有用な濃度としては、例えば約0.01モル%〜約99.99モル%、好ましくは約1モル%〜約99.5モル%、より好ましくは約5モル%〜約99モル%、および最も好ましくは約10モル%〜約95モル%を挙げることができる。
【0080】
本発明で用いる塩化水素源は、好ましくはガス、液体、もしくは溶液中もしくは混合物中、またはこれらの混合物中,例えば塩化水素と窒素ガスとの混合物等として(必要な分圧の塩化水素が本発明のプロセスに供給される限りにおいて)導入する。
【0081】
最も好ましい塩化水素源は、塩化水素ガスである。塩化物の他の形態は、必要な分圧の塩化水素が発生することを条件に本発明において採用できる。塩化物は、特に、任意の数のカチオン,例えば相間移動試薬(4級アンモニウムまたはホスホニウム塩(例えばテトラブチルホスホニウムクロリド)等)に関連するものとともに導入できる。代替として、n−ブチル−2−メチルイミダゾリウムクロリドのようなイオン液体を、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素からのOHの酸触媒置換を促進するための共力剤として使用できる。
【0082】
これらの他のハロゲン化物源が、アルコールの塩化水素化のための共触媒として作用できることも公知である。この点において、触媒量のヨウ化物または臭化物を、これらの反応を加速するために使用できる。これらの試薬は、ガス、液体として、または対イオン塩として、相間移動またはイオン液体の方式を用いて導入できる。試薬はまた、金属塩として導入でき、ここでアルカリまたは遷移金属の対イオンは、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の酸化を促進しない。これらの共触媒の制御された塩化水素化プロセスにおける使用においては注意を払わなければならない。RCl形成の可能性が増大する場合があるからである。異なる源のハロゲン化物の混合物、例えば塩化水素ガスおよびイオン性塩化物(例えばテトラアルキルアンモニウムクロリドまたは金属ハライド)を採用できる。例えば、金属ハライドは、塩化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等であることができる。
【0083】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素が出発物質である本発明の態様において、出発物質としての多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとは逆に、クロロヒドリンの形成が触媒の存在によって促進されることが好ましい。本発明の別の態様において、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル,好ましくは部分エステルを出発物質として使用する場合、触媒はエステル中に本来的に存在し、従って別個の触媒成分の使用は任意である。しかし、所望の生成物への変換をさらに促進するために、追加の触媒を本発明の方法になお包含させることができる。追加の触媒はまた、出発物質がエステル化および非エステル化の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の組合せを包含する場合に使用できる。
【0084】
本発明の態様に従い、触媒は、本発明の方法の反応ステップにおいて使用し、触媒は、例えば、カルボン酸;無水物;酸クロリド;エステル;ラクトン;ラクタム;アミド;金属有機化合物,例えば酢酸ナトリウム;またはこれらの組合せであることができる。カルボン酸または官能化カルボン酸に、本発明の反応条件下で変換可能な任意の化合物もまた使用できる。
【0085】
好ましいカルボン酸は、ハロゲン、アミン、アルコール、アルキル化アミン、スルフヒドリル、アリール基もしくはアルキル基またはこれらの組合せからなる官能基を有する酸であり、ここでこの部分はカルボン酸基の立体障害とならない。この本発明の方法のために好ましい酸は酢酸である。
【0086】
本発明における触媒としてのカルボン酸の有用性の例としては、酢酸、プロピオン酸、4−メチル吉草酸、アジピン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、6−クロロヘキサン酸、4−アミノ酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、4−ジメチルアミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、4−アミノフェニル酢酸、4−トリメチルアンモニウム酪酸クロリド、ポリアクリル酸、アクリル酸でグラフトされたポリエチレン、ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
無水物の例としては、無水酢酸、無水マレイン酸およびこれらの混合物が挙げられる。酸クロリドの例としては、アセチルクロリド、6−クロロヘキサノイルクロリド、6−ヒドロキシヘキサノイルクロリドおよびこれらの混合物が挙げられる。エステルの例としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、メチルピバレート、メチルブチレート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロパンジオールモノアセテート、プロパンジオールジアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、カルボン酸のグリセリンエステル(グリセリンモノ−、ジ−およびトリ−エステルを包含する)ならびにこれらの組合せが挙げられる。最も好ましいラクトンの例としては、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびこれらの混合物が挙げられる。ラクタムの例は、ε−カプロラクタムである。酢酸亜鉛は、金属有機化合物の例である。
【0088】
本発明において使用する好ましい触媒は、カルボン酸、カルボン酸のエステル、またはこれらの組合せであり、特に、反応混合物中で形成される所望の最も沸点が高いクロロヒドリンよりも高い沸点を有するエステルまたは酸であり、これにより、触媒の除去なしでクロロヒドリンを取出せる。この規定に合致し、かつ本発明において有用な触媒としては、例えば、ポリアクリル酸、カルボン酸のグリセリンエステル(グリセリンモノ−、ジ−およびトリ−エステルを包含する)、アクリル酸でグラフトされたポリエチレン、6−クロロヘキサン酸、4−クロロブタン酸、カプロラクトン、ヘプタン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−アミノフェニル酢酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、4−アミノ酪酸、4−トリメチルアンモニウム酪酸クロリド、ステアリン酸、5−クロロ吉草酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、4−アミノフェニル酢酸、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0089】
式RCOOHのカルボン酸は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のクロロヒドリンへの塩化水素化を触媒する。本発明の方法のために選択される特定のカルボン酸触媒は、多くの因子に基づくことができ、例えば、その触媒としての効率、その腐食性、そのコスト、その反応条件に対する安定性、およびその物理特性が挙げられる。特定のプロセス、およびプロセススキーム(ここで触媒が採用されることになる)はまた、特定の触媒の本発明の方法のための選択における因子である場合がある。カルボン酸の「R」基は、水素またはヒドロカルビル基,例えばアルキル、アリール、アラルキルおよびアルカリルから選択できる。ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖または環状であることができ、そして置換または非置換であることができる。許容できる置換基としては、触媒の性能と不利に干渉しない任意の官能基が挙げられ、そしてヘテロ原子を包含してもよい。許容できる官能基の限定されない例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ヒドロキシル、フェノール、エーテル、アミド、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム、スルホネート、スルホン酸、ホスホネート、およびホスホン酸が挙げられる。
【0090】
本発明において有用なカルボン酸は、モノ塩基,例えば酢酸、ギ酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オレイン酸、もしくはステアリン酸;または多塩基,例えばコハク酸、アジピン酸、もしくはテレフタル酸であることができる。アラルキルカルボン酸の例としては、フェニル酢酸および4−アミノフェニル酢酸が挙げられる。置換カルボン酸の例としては、4−アミノ酪酸、4−ジメチルアミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、4−アミノフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、乳酸、グリコール酸、4−ジメチルアミノ酪酸、および4−トリメチルアンモニウム酪酸が挙げられる。加えて、反応条件下でカルボン酸に変換できる物質、例えば、カルボン酸ハライド(例えば塩化アセチル);無水カルボン酸,例えば無水酢酸;カルボン酸エステル,例えば酢酸メチル;多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素アセテート,例えばグリセロール1,2−ジアセテート;カルボン酸アミド,例えばε−カプロラクタムおよびγ−ブチロラクタム;そしてカルボン酸ラクトン,例えばγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトン等もまた本発明において採用できる。カルボン酸の混合物もまた本発明において使用できる。
【0091】
本発明において使用できる幾つかのカルボン酸触媒は、本発明の塩化水素化プロセスにおいて他の触媒よりも効果が低く,例えば、カルボン酸基に近い立体的に難しい置換基を有するもの(例えば2,2−ジメチル酪酸)、立体障害がある2−置換安息香酸(2−アミノ安息香酸および2−メチルアミノ安息香酸等)である。この理由で、カルボン酸基の周りが立体的に邪魔されないカルボン酸がより好ましい。
【0092】
本発明の方法において、本発明において使用する好ましい酸触媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−アミノフェニル酢酸、4−アミノ酪酸、4−ジメチルアミノ酪酸、4−トリメチルアンモニウム酪酸クロリド、コハク酸、6−クロロヘキサン酸、6−ヒドロキシへキサン酸、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0093】
本発明の別の側面に従い、反応ステップ(ここで、クロロヒドリンまたはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素またはそのエステルが塩化水素と接触する)は、触媒の存在下で実施し、ここで前記触媒は、(i)2〜約20個の炭素原子を有し、そしてアミン、アルコール、ハロゲン、スルフヒドリル、エーテル、エステル、またはこれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの官能基を含有する、カルボキシレート誘導体であり、ここで該官能基はアルファ炭素よりも近くなく酸官能に付いている;またはその前駆体であり;(ii)クロロヒドリン、クロロヒドリンのエステルまたはその混合物よりも揮発性が小さく;そして(iii)へテロ原子置換基を含有する。
【0094】
本発明のこの側面において、本発明の触媒構造の1態様は、一般的に、以下に示す式(a)によって表され、ここで官能基「R’」としては、アミン、アルコール、ハロゲン、スルフヒドリル、エーテル、エステルを含む官能基、またはアルキル、アリールもしくはアルカリル基(1〜約20炭素原子、前記官能基を含有する);またはこれらの組合せが挙げられ;そして官能基「R」としては、水素、アルカリ、アルカリ土類もしくは遷移金属または炭化水素官能基が挙げられる。
【0095】
【化2】

【0096】
本発明のこの側面に従い、特定の触媒はまた、超大気圧、大気圧または大気圧未満で、特に、水を継続的または定期的に反応混合物から除去して所望のより高レベルへの変換を推進する状況で有利に採用できる。例えば、グリセロール反応の塩化水素化は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素と触媒との混合物に通して塩化水素ガスを散布することにより実施できる。このようなプロセスにおいて、揮発性触媒,例えば酢酸は、反応溶液から、該溶液に通して散布される塩化水素ガスによって少なくとも部分的に除去し、反応媒体からなくすことができる。従って、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の所望のクロロヒドリンへの変換は、触媒濃度が低下することにより遅くなる場合がある。このようなプロセスにおいて、より揮発性が低い触媒,例えば6−ヒドロキシヘキサン酸、4−アミノ酪酸;ジメチル4−アミノ酪酸;6−クロロへキサン酸;カプロラクトン;カルボン酸アミド,例えばε−カプロラクタムおよびγ−ブチロラクタム;カルボン酸ラクトン,例えばγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトン;カプロラクタム;4−ヒドロキシフェニル酢酸;6−アミノカプロン酸;4−アミノフェニル酢酸;乳酸;グリコール酸;4−ジメチルアミノ酪酸;4−トリメチルアンモニウム酪酸;およびこれらの組合せ等の使用が好ましい場合がある。これらの大気条件下または大気圧未満条件下で触媒を採用することが最も望ましく、これは生成する所望のクロロヒドリンよりも揮発性が低い。さらに、触媒は、採用される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素と完全に混和性であることが望ましい。触媒が完全に混和性でない場合、第2の相を形成して完全な触媒効果を実現できない場合がある。この理由で、触媒は極性へテロ原子置換基,例えばヒドロキシル、アミノもしくは置換アミノ、またはハロゲン化物基(これは触媒を多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素,例えばグリセロールと混和性にする)を含有することが望ましい。
【0097】
本発明の方法で使用するための触媒,例えばカルボン酸触媒の選択はまた、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩化水素化のために採用される特定のプロセススキームによって支配できる。例えば、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素を所望の可能な限り高い変換まで所望のクロロヒドリンに反応させ、次いでこれを触媒から分離することなく他の生成物にさらに変換するワンススループロセスにおいて、カルボン酸触媒は、続いてさらに利用しない。このようなプロセススキームにおいて、カルボン酸は、効果的であることに加え高価でないことが望ましい。このような場合において好ましいカルボン酸触媒は、例えば酢酸である。
【0098】
再循環プロセスにおいて、例えば、生成するクロロヒドリンがカルボン酸触媒から、さらなる処理または使用の前に分離される場合、カルボン酸触媒は、追加的に、触媒、およびそのエステル(反応生成物を伴う)の、所望のクロロヒドリン生成物からの分離の容易性に基づいて選択される。このような場合、重い(すなわち揮発性がより低い)酸を採用することによって、さらなる反応のために、未反応グリセロールまたは中間モノクロロヒドリンとともに反応器に容易に再循環できるようにすることが好ましい。本発明において有用な好適な重い酸としては、例えば、4−ヒドロキシフェニル酢酸、ヘプタン酸、4−アミノ酪酸、カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸、6−クロロヘキサン酸、4−ジメチルアミノ酪酸、4−トリメチルアンモニウム酪酸クロリドおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
酸、またはそのエステルであって多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素が塩化水素化されるもの、またはそのエステルであって反応中間体または反応生成物が反応溶液中で混和性であるもの、もまた好ましい。この理由で、これらの溶解性の制約を考慮してカルボン酸触媒を選択することが望ましい場合がある。よって、例えば、塩化水素化される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素が極めて極性である(例えばグリセロール)場合、幾つかのカルボン酸触媒は、完全よりも低い溶解性を示し、そして2相を混合時に形成する。このような場合、より混和性の酸触媒,例えば酢酸または4−アミノ酪酸が望ましい場合がある。
【0100】
本発明において有用な触媒は、広範囲の濃度,例えば、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素のモル基準で約0.01モル%〜約99.9モル%、好ましくは約0.1モル%〜約67モル%、より好ましくは0.5モル%〜約50モル%、および最も好ましくは約1モル%〜約40モル%に亘って効果的である。本発明において採用する触媒の特定の濃度は、本発明において採用する特定の触媒およびこのような触媒を採用するプロセススキームに左右される場合がある。
【0101】
例えば、触媒を1度のみ使用し、次いで廃棄するワンススループロセスにおいて、低濃度の高度に活性な触媒を採用することが好ましい。加えて、高価でない触媒を採用することが好ましい。このようなプロセスにおいて、濃度は、例えば、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素基準で約0.01モル%〜約10モル%を用いることができ、好ましくは約0.1モル%〜約6モル%、より好ましくは約1モル%〜約5モル%である。
【0102】
例えば触媒を再循環し、そして繰返し使用するプロセススキームにおいては、廃棄する触媒よりも高い濃度を採用することが望ましい場合がある。このような再循環される触媒は、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素基準で約1モル%〜約99.9モル%、好ましくは約5モル%〜約70モル%、より好ましくは約5モル%〜約50モル%で使用できるが、これらの濃度は非限定的と考えるべきである。より高い触媒濃度を望ましく採用して、反応時間を低減させ、プロセス設備のサイズを最小化し、そして不所望の触媒されていない副生成物の形成を低減させることができる。
【0103】
本発明の好ましい態様に従い、本発明の方法の塩化水素化反応ステップは、超大気圧条件下で実施する。本明細書で「超大気圧」は、塩化水素(HCl)分圧が大気圧超,すなわち15psia以上であることを意味する。一般的に、本発明の方法の反応ステップにおいて採用される塩化水素分圧は、少なくとも約15psia以上である。好ましくは、本発明の方法の反応ステップの塩化水素分圧は、約25psia以上、より好ましくは約35psiaHCl以上、および最も好ましくは約55psia以上であり;そして好ましくは約1000psia以下、より好ましくは約600psia以下、および最も好ましくは約150psia以下である。
【0104】
本発明において使用する塩化水素は、最も好ましくは無水物である。塩化水素組成は、100体積%塩化水素〜約50体積%塩化水素の範囲であることができる。好ましくは、塩化水素供給物組成は、約50体積%超の塩化水素、より好ましくは約90体積%超の塩化水素,および最も好ましくは約99体積%超の塩化水素である。
【0105】
本発明の方法の反応ステップの実施において有用な温度は、経済的な反応速度を与えるのに十分であるが、出発物質、生成物または触媒の安定性が落ち始める程には高くない。さらに、高温は、不所望の触媒されていない反応,例えば非選択的な過剰の塩素化の速度を増大させ、そして増大した設備腐食速度をもたらす可能性がある。本発明において有用な温度は、一般的に、約25℃〜約300℃、好ましくは約25℃〜約200℃、より好ましくは約30℃〜約160℃、さらにより好ましくは約40℃〜約150℃、および最も好ましくは約50℃〜約140℃である。
【0106】
本発明の超大気圧プロセスの反応は、有利には急速であり、そして約12時間未満、好ましくは約5時間未満、より好ましくは約3時間未満、および最も好ましくは約2時間未満の時間実施できる。より長い反応時間,例えば約12時間超では、プロセスは、RClおよび他の過剰に塩素化された副生成物を形成し始める。
【0107】
驚くべきことに、高い一回通過収率(per-pass yield)および高い選択性が、本発明の超大気圧プロセスを用いて実現できることを発見した。例えば、クロロヒドリンについての、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素基準の一回通過収率約80%超、好ましくは約85%超、より好ましくは約90%超、および最も好ましくは約93%超を本発明によって実現できる。例えば、約80%超、好ましくは約85%超、より好ましくは約90%超、および最も好ましくは約93%超の高い選択性のクロロヒドリンを本発明の方法によって実現できる。無論、収率は反応中間体を再循環させることにより増大できる。
【0108】
例えば、本発明において使用する多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールである場合、再循環中間体モノクロロヒドリンは、実現されるジクロロヒドリンの最終収率を増大させることができる。さらに、先行技術の方法の多くと異なり、水除去は、クロロヒドリンを形成する反応の実施において本発明の方法の必須の特徴ではない。事実、本発明の反応は、水除去,例えば水の共沸除去を伴わずに優先的に実施される。
【0109】
本発明の超大気圧プロセスにおいて、混入物(例えば水、塩または多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素以外の有機不純物)を含まない出発物質の使用もまた必要でない。従って、出発物質は、一般的に、約50質量パーセント以下のこのような混入物を含有できる。例えば、水(約5質量%〜約25質量%)、アルカリ(例えば、ナトリウムもしくはカリウム)もしくはアルカリ土類(例えば、カルシウムもしくはマグネシウム)金属塩(約1質量%〜約20質量%)および/またはアルカリカルボキシレート塩(約1質量%〜約5質量%)を含有する場合がある粗1,2,3−プロパントリオール(粗グリセロール)もまた、本発明において効果的に使用して所望の生成物を生成できる。それ故本発明の方法は特に経済的な取組みである。
【0110】
本発明の方法の1態様において、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)を閉じた容器内に入れ、そして塩化水素ガスの雰囲気下で、上記触媒量のカルボン酸またはそのエステルの存在下で加熱および加圧する。該方法の好ましい条件下で、主要な生成物は1,3−ジクロロプロパン−2−オール(例えば、90%超収率)であり、少量(例えば、10%未満総収率)の以下の生成物:1−クロロ−2,3−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオールおよび2,3−ジクロロプロパン−1−オール;ならびに測定できない量(200ppm未満)の1,2,3−トリクロロプロパンを有する。有利には、主および副の両者のジ塩素化生成物(1,3−ジクロロプロパン−2−オールおよび2,3−ジクロロプロパン−1−オール)は、エピクロロヒドリンの前駆体である。ジ塩素化生成物は、当該分野で公知であるように、塩基との反応によってエピクロロヒドリンに容易に変換できる。
【0111】
本発明は、種々のプロセススキームを包含でき、例えば、バッチ、半バッチまたは連続が挙げられる。
【0112】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、ストレート(neat)または適切な溶媒中で希釈して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水およびアルコールを挙げることができる。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、これを塩化水素化反応において用いる前に、混入物(水、有機物質または無機物質が挙げられる)を使用前に除去することにより精製することが好ましい場合がある。この精製としては、周知の精製技術,例えば蒸留、抽出、吸収、遠心分離、または他の適切な方法を挙げることができる。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、一般的には、プロセスに液体として供給するが、これは絶対に必要ではない。
【0113】
プロセスにおいて用いる塩化水素は好ましくはガス状である。しかし、塩化水素は、所望の場合、溶媒,例えばアルコール(例えばメタノール);またはキャリアガス(例えば窒素)中で希釈できる。任意に、塩化水素は、使用前に精製して任意の不所望の混入物を除去できる。塩化水素は、実質的に無水物であることが好ましいが、幾らかかの量(例えば約50モル%未満、好ましくは約20モル%未満、より好ましくは約10モル%未満、さらにより好ましくは約5モル%未満、最も好ましくは約3モル%未満)の、塩化水素中に存在する水は、過度に不利ではない。塩化水素は、プロセス設備に任意の好適な様式で供給する。プロセス設備は、本発明の方法において採用する塩化水素化反応器の全体に亘って塩化水素の良好な分散を確保するように設計することが好ましい。従って、単一または複数のスパージャー、バッフルおよび有効な撹拌機構が望ましい。
【0114】
採用する触媒は、プロセス設備に、独立に、または多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素もしくは塩化水素の供給物との混合物もしくはその成分として、供給できる。
【0115】
本発明の塩化水素化反応ステップのために有用な設備は、当該分野の任意の周知の設備であることができ、そして反応混合物を塩化水素化の条件で収容できるのがよい。
【0116】
本発明の好ましい態様に従い、反応ステップを実施するために使用する設備は、上記のように、少なくとも部分的に耐食性物質で形成または被覆されている。本発明の特に好ましい態様に従い、反応ステップを実施するのに使用する設備は、上記のように、全体的に耐食性物質で形成または被覆されている。
【0117】
バッチプロセスの例示において、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および塩化水素化触媒を反応器に充填する。次いで、塩化水素を、所望の圧力に、そして、所望温度まで所望の長さの時間加熱された反応器内容物に添加する。次いで、反応器内容物を反応器から取出し、そして少なくとも1つの下流処理ステップ(例えば分離、精製および/または貯蔵等)を行なう。
【0118】
例示の半バッチプロセスにおいて、反応の全体に亘る時間をかけて1種以上の試薬を反応器に供給し、一方他の試薬を反応開始時のみに供給する。このようなプロセスにおいて、例えば、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および触媒は、単一バッチで塩化水素化反応器に供給でき、次いでこれを反応条件で好適な時間保持し、一方、塩化水素は、反応の全体に亘って好適な速度で連続的に供給し、これは一定流量または一定圧力であることができる。反応後、塩化水素供給を終了させることができ、そして反応器内容物を少なくとも1つの下流処理ステップ(例えば分離、精製および/または貯蔵)に取出すことができる。
【0119】
化学物質の大スケールの製造において、連続プロセスを用いることがしばしば望ましい。そうすることの経済的な利点が通常バッチ処理よりも大きいからである。連続プロセスは、例えば、単一パスまたは再循環プロセスであることができる。単一パスプロセスにおいて、1種以上の試薬がプロセス設備を1回通過し、そして次いで得られる反応器からの流出物を、下流処理(例えば分離、精製および/または貯蔵)のために送る。このようなスキームにおいて、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および触媒は、設備および添加する塩化水素に、所望のように、単一の点または複数の点で、プロセス設備(連続の撹拌タンク反応器、管、パイプまたはこれらの組合せが挙げられる)の全体に亘って供給できる。
【0120】
代替として、採用される触媒は、プロセス設備内に、フィルターまたは同等の装置によって保持される固体であることができる。試薬および触媒は、プロセス設備内の滞留時間が、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の生成物への所望の変換を実現するのに適切であるような速度で供給する。プロセス設備を出る物質は、下流処理(例えば分離、精製および/または貯蔵等)に送る。このようなプロセスにおいて、可能な限り多くの多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素を所望の生成物に変換することが一般的に望ましい。
【0121】
連続再循環プロセスにおいて、プロセス設備から出る1種以上の未反応多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素、反応中間体、塩化水素、または触媒は、プロセスにおけるより早期の点まで再循環して戻す。この様式においては、原料効率を最大化するか、または触媒を再使用する。触媒は、このようなプロセススキームで再使用するため、触媒は、これらがしばしば廃棄される単一パスプロセスにおいて用いるよりも高濃度で用いることが望ましい場合がある。これは、より速い反応、またはより小さいプロセス設備をもたらすことができ、これは採用する設備のためのより低い資源コストをもたらす。
【0122】
所望の生成物を触媒または他のプロセス成分から除去することは、種々の手法で実現できる。分離を、例えば、連続式での蒸発で、塩化水素化反応器から直接、または設備の別個の構成要素,例えば揮発器もしくは蒸留カラムのいずれかで実現することが可能である。このような場合において、所望の生成物よりも揮発性が少ない触媒を採用し、これにより触媒をプロセス設備内に保持することができる。代替として、固体触媒を採用でき、そして分離を、例えば、ろ別、遠心分離または蒸発によって実現できる。液体抽出、吸収または化学反応もまた、幾つかの場合において採用して、触媒または反応中間体を再循環できる。
【0123】
本発明の1態様において、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、所望の塩化水素化生成物よりも揮発性が少ないように選択した塩化水素化触媒を用いて塩化水素化する。塩化水素化反応の後、追加の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素を反応生成物、過剰の出発物質、反応中間体および触媒に添加する。これは幾らかかの所望の塩化水素化生成物(これは触媒のエステルとして存在していたものであることができる)を遊離し、これにより所望の生成物を反応溶液から蒸発によってより完全に回収できると考えられる。所望の塩化水素化生成物の回収後、残りのプロセス流は、塩化水素化流に再循環できる。このプロセススキームはまた、損なわれる塩化水素の量を最小化する利点を有することができる。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の添加後にプロセス流中に残存するものの多くは、新たに添加される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素との反応によって消費されるからである。
【0124】
採用される特定のプロセススキームは、多くの因子に左右される場合があり、例えば、塩化水素化される多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素の素性、コストおよび純度、採用される特定のプロセス条件、生成物を精製するために必要な分離、ならびに他の因子が挙げられる。本明細書で記載するプロセスの例は、本発明を限定するものと考えるべきではない。
【0125】
図1、2および3は、本発明の塩化水素化方法の3つの限定しない態様を示す。図1、2および3に示す本発明の方法を示す例は、本発明の好ましい態様に過ぎない。
【0126】
図1は、例えば、数10によって示される本発明の方法を示し、ここで多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素(例えばグリセロール)の供給物流11を、反応容器15内に導入する。反応容器15は、任意の周知の好適な種類であることができ、例えば、1つ以上の連続撹拌タンク反応器(CSTR)もしくは管型反応器;またはこれらの組合せが挙げられる。
【0127】
また、容器15には、塩化水素供給物流12、およびカルボン酸またはカルボン酸前駆体の触媒供給物流13を導入する。流れ12および13は、容器15内に、別個にまたは一緒にのいずれかで導入できる。加えて、任意に、流れ11,12および13の全てを1つの供給物流に一緒に組合せることができる。流れ11,12または13のいずれも、容器15の単一の点または複数の点で導入できる。容器15において、グリセロールは、部分的または全体的にそのエステルに、カルボン酸触媒、モノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンならびにこれらのエステルで変換する。反応ステップの流出物は、例えば、容器15を流れ14として出る、ジクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、未反応グリセロール、およびこれらのエステル、水、未反応塩化水素および触媒を含み、そして次いで下流処理設備(例えば貯蔵、分離、精製)に送り、そして次いで任意に、さらなる反応(例えばエピクロロヒドリンを形成するための塩基との反応等)のための他の設備に送る。
【0128】
図2は、一般的に数20で示される本発明の方法の別の態様を示し、ここで多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素,例えばグリセロールを含有する供給物流21を反応容器26に供給し、これは1つ以上のCSTRもしくは管型反応器、またはこれらの組合せであることができる。容器26には塩化水素を含有する供給物流22も供給する。容器26には、容器27から再循環された、例えば未反応グリセロール、モノクロロヒドリンおよびそのエステルを触媒とともに含む再循環流25も供給し、これもこの流れ25において再循環させる。
【0129】
反応容器26において、グリセロールをモノクロロヒドリンおよびそのエステルに変換し;そしてモノクロロヒドリンをジクロロヒドリンおよびそのエステルに変換する。流れ23(例えばジクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、未反応グリセロールおよびそのエステルを、カルボン酸触媒、水、未反応塩化水素および触媒とともに含有する)は、容器26を出て、そして下流処理容器27に供給される。容器27において、所望のジクロロヒドリン、水、および未反応塩化水素の少なくとも幾らかかを、流れ24としてモノクロロヒドリンおよびそのエステルから分離し、未反応グリセロールおよびそのエステルならびに触媒を、再循環流25として容器26に再循環させる。流れ25はまた、任意に、幾らかかの残存ジクロロヒドリンおよびそのエステルを含有することができる。
【0130】
容器27は、任意の周知の好適な分離容器を含むことができ、1つ以上の蒸留カラム、フラッシュ容器、抽出もしくは吸収カラム、または当該分野で公知の任意の好適な公知の分離装置が挙げられる。本発明に従い、容器27において、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を120℃未満で維持する。
【0131】
次いで、生成物流24を、貯蔵に送って、120℃未満で維持することを条件にさらに処理(例えば精製)できる。
【0132】
生成物流24はまた、さらなる反応(例えばエピクロロヒドリンへの変換)に送ることができる。このプロセススキームの1つの例において、触媒は、その化学的または物理的な特性が触媒またはそのエステルの所望のジクロロヒドリンからの容易な分離をもたらすように選択できる。例えば、このプロセススキームのために選択される触媒は、6−クロロヘキサン酸、カプロラクトン、4−クロロ酪酸、ステアリン酸、または4−ヒドロキシフェニル酢酸であることができる。
【0133】
図3は、一般的に数30によって示される本発明の方法の別の態様を示し、ここで反応容器36に、塩化水素を含有する供給物流31を供給し;そしてグリセロール、グリセロールエステル、モノクロロヒドリンおよびそのエステルならびに触媒を含有する再循環流を、流れ35経由で供給する。容器36(これは1つ以上のCSTR、1つ以上の管型反応器またはこれらの組合せを含むことができる)において、グリセロールおよびモノクロロヒドリンをジクロロヒドリンに変換する。流れ32(例えばジクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、グリセロールおよびこれらのエステル、触媒、未反応塩化水素および水を含有する)は、容器36を出てユニット37に供給される。ユニット37には、グリセロールを含有する供給物流33も供給される。
【0134】
ユニット37は反応部および下流処理分離部を収容する。少なくとも1つの反応容器,例えば撹拌タンク、管型反応器、またはこれらの組合せ等を包含するユニット37の反応部において、グリセロールはモノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンのエステルと反応してフリーのモノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンを実質的に遊離してグリセロールエステルを形成する。加えて、ユニット37に流れ32経由で入る未反応塩化水素の少なくとも幾らかかもまた消費されて主にモノクロロヒドリンを形成する。ユニット37はまた、所望のジクロロヒドリンを未反応モノクロロヒドリンおよびグリセロールならびにこれらのエステルから分離する手段としても働き、従って少なくとも1つの下流処理設備,例えば1つ以上の蒸留カラム、フラッシュ容器、抽出器、または任意の他の分離設備等を包含する。
【0135】
本発明に従い、ユニット37の下流処理分離部において、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を温度120℃未満で維持する。次いで、生成物流34(これはユニット37を出て、ジクロロヒドリン、水および残留塩化水素を含有する)を、さらなる処理(例えば精製)または貯蔵に、これを温度120℃未満で維持することを条件に、送ることができる。生成物流34はまた、さらなる反応のためのプロセス(例えば、エピクロロヒドリンを調製するための反応プロセス)に送ることができる。
【0136】
流れ35(これは、グリセロールおよびモノクロロヒドリンおよびこれらのエステルならびに触媒を含有する)は、容器37を出て、流れ35として、容器36に再循環される。
【0137】
図3のプロセス構成において、比較的大量,例えばグリセロール基準で約10モル%〜約70モル%の触媒を使用することによって容器36内の塩化水素化反応の速度を極めて速くし、それ故に設備が小さいことが望ましい場合がある。触媒が、図3のプロセス構成において、ユニット37内での分離を促進するような化学的または物理的な特性を有することも好ましく、例えば最も低い沸点のジクロロヒドリンが沸騰する温度よりも実質的に下の温度で沸騰する触媒の使用が好ましい場合がある(分離法が蒸留である場合)。このような触媒の例としては、6−クロロヘキサン酸、ヘプタン酸、および4−ヒドロキシフェニル酢酸が挙げられる。
【0138】
実験
実験は、水冷コンデンサーを備える、磁気撹拌された、丸底ガラスフラスコで実施した。特記がない限り、実験は空気下で行なった。所望量の試薬を混合し、室温で数分撹拌した後、初期組成を評価するためにサンプリングした。次いで、フラスコを、所望温度に加熱した油浴中に浸漬した。試料を規定時点での分析のために採取した。温度読取りの略式の観察は、浴温度のばらつきが実験全体に亘って±2℃以下であることを示唆した。試料をガスクロマトグラフィにより分析した。殆どの化学物質は、商業的な供給元からのものであった。グリセロール、1,3−ジクロロプロパン−2−オール(1,3−ジクロロヒドリン、1,3−DCH)および3−クロロプロパン−1,2−ジオール(1−モノクロロヒドリン、1−MCH)をAldrich Chemicalから、カプロラクトンをTCIから得た。蒸留水を用いた。
【0139】
「腐食金属」は、濃塩酸中のハステロイ(Hastelloy)B4の小片を加熱して、数日後に全ての金属が溶解するまで還流させることによって溶解させることにより得た。濃塩酸は、この時間の間定期的に補充した。得られる溶液を減圧オーブン中で乾燥させて、光沢のある濃緑色固体を得た。
【0140】
例1および2
以下の混合物を形成した。これはグリセロールの塩化水素化反応の流出物の組成を代表するものである。
【0141】
混合物♯1
1,3−ジクロロプロパン−2−オール 5g
1−クロロプロペン−2,3−ジオール 5g
グリセロール 1g
水 1g
【0142】
混合物♯2
1,3−ジクロロプロパン−2−オール 5g
1−クロロプロペン−2,3−ジオール 5g
グリセロール 1g
水 1g
カプロラクトン 1g
【0143】
各混合物を実質的に以下に示す熱処理に供し、pHを湿ったpH紙を用いて測定した。結果は各溶液について同じであった。
【0144】
増分
時間(時間) 温度(℃) pH
0.5 50 3
0.5 50 3
0.5 75 3
0.75 75 2
0.75 100 2
0.75 120 1
0.75 120 1
0.75 140 1
0.5 140 1
0.75 150 1
0.75 150 1
冷却
50 1
【0145】
これらの結果は、塩化水素化反応の流出物の酸性度が、温度の上昇とともに増大し、そして一旦熱処理されると、酸性度は冷却時に低減しないことを示す。
【0146】
例3〜7
計量した金属片をFisher−Porter管反応器に充填した。幾つかの場合で、2つの片を同じ管に充填し、そしてこれらの場合において、Teflon(登録商標)スペーサーも添加して、異種金属間の接触を防止した。
【0147】
腐食試験のための反応混合物を調製するために、グリセロールおよびカプロラクトンを管に充填して片をちょうど覆い、そして設備を組立てた。管内の雰囲気は、HClで、3加圧/排気サイクルで置換し、HCl圧力を約30psiまで上昇させ、そして容器を所望温度まで加熱した。この所望温度に達した時点で、HClを所望の最終圧力で要求に応じて供給した。ガス相からのHClを液相中で吸収させ、そしてグリセロールと反応させて、ジクロロヒドリン、モノクロロヒドリンおよびこれらのエステル、水、HClならびに触媒を含む反応混合物を得た。所望の腐食試験の後、反応器を減圧し、内容物を取出して片を水およびアセトンで洗浄し、乾燥させ、そして計量していずれの質量損失をも評価した。
【0148】
表1:腐食試験−条件:125時間130℃にて130psigHCl、次いで96時間25℃にて20psigHCl
【0149】
【表1】

【0150】
反応の間、マニホールドからの腐食金属が反応溶液を汚染したことが明らかであった。
【0151】
例8〜10
第2の組の実験を、第1と同じ様式で行ない、130℃温度、130psig圧力の条件を161時間維持した。第2の実験の目的は、ハステロイ(Hastelloy)Bおよびハステロイ(Hastelloy)Cの腐食速度を同一条件下でタンタルと比較するために必須であった。マニホールドからの腐食金属は、繰り返すが、試験溶液を汚染した。結果を下表に示す。
【0152】
表2:腐食試験−条件:161時間130℃にて130psigHCl
【0153】
【表2】

【0154】
結果は、ハステロイ(Hastelloy)Bについての腐食速度が実質的にハステロイ(Hastelloy)Cについての腐食速度よりも遅いことを示した。
【0155】
例11〜14
第3の組の実験において、2つの等級のハステロイ(Hastelloy)(登録商標)C3およびB4を、グリセロール塩化水素化反応流出物(主にジクロロヒドリン、水および溶解したHClを含有する)中に浸漬した。これらの反応流出物は、ハステロイ(Hastelloy)C反応器内で厳しい条件下で形成し、そしてそれ故に既に腐食金属、特に塩化ニッケルで汚染されていた。試験片を含有する流出物を開放容器内で温度140℃または165℃のいずれかまで加熱し、そして付いている水冷却還流コンデンサーによって凝結していないいずれの物質も、試験の過程の間に脱出させた。結果を下表に示す。
【0156】
表3:腐食試験−条件:グリセロール塩化水素化反応生成物(DCH,HCl,水)中で168時間
【0157】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換する方法であって、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを塩化水素と接触させる少なくとも1つの反応ステップ、続いて該反応ステップの流出物を処理する少なくとも1つの下流処理ステップ、を含み、該下流処理ステップを、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する該流出物が温度120℃未満で維持されるような条件で実施する、方法。
【請求項2】
クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を温度100℃未満で維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を温度90℃未満で維持する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記下流処理ステップで使用する下流処理設備は、当該下流処理設備が流出物の総質量に対する総塩化水素濃度0.8質量%超である前記流出物と接触する領域のみにおいて耐食性物質で形成または被覆されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
下流処理ステップにおいて、水を実質的に反応ステップの流出物から除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水を、反応、極低温、抽出、共沸、吸収または蒸発のin−situ法またはex−situ法によって除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
下流処理ステップにおいて、反応ステップの流出物中の塩化水素の濃度を0.8質量%より低く低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応ステップの流出物中の塩化水素の濃度を、希釈、中和、ストリッピング、抽出、吸収、または蒸留によって低減させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各々のプロセス流または供給物流における総フッ化物濃度を50質量ppm未満に制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
各々のプロセス流または供給物流における総フッ化物濃度を10質量ppm未満に制限する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各々のプロセス流または供給物流における総フッ化物濃度を5質量ppm未満に制限する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
各々のプロセス流または供給物流における総フッ化物濃度を2質量ppm未満に制限する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
フッ化物濃度を、不均一性または均一性のフッ化物捕捉剤を用いる処理によって低減させる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
反応ステップを、超大気分圧の塩化水素で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
反応ステップを、実質的に水の除去なしで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
反応ステップを、超大気分圧の塩化水素で、かつ実質的に水の除去なしで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
塩化水素源が塩化水素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
クロロヒドリンがジクロロヒドリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
クロロヒドリンが、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、もしくは2,3−ジクロロプロパン−1−オール、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素が、1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;1−クロロ−2,3−プロパンジオール;2−クロロ−1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;シクロヘキサンジオール;1,2−ブタンジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,2,3−プロパントリオール;およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素が、1,2,3−プロパントリオールである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
反応ステップにおいて触媒を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
触媒が、カルボン酸;無水物;酸クロリド;エステル;ラクトン;ラクタム;アミド;金属有機化合物;またはこれらの組合せから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
触媒が、ハロゲン、アミン、アルコール、アルキル化アミン、スルフヒドリル、アリール基もしくはアルキル基またはこれらの組合せからなる官能基を有する酸であり、この部分がカルボン酸基の立体障害とならない、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
触媒が、カルボン酸、カルボン酸のエステル、またはこれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
触媒が酢酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
触媒が、カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸、6−クロロヘキサノイック、これらのエステル、またはこれらの混合物から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
耐食性物質が、タンタル、ジルコニウム、白金、チタン、金、銀、ニッケル、ニオブ、モリブデン、およびこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項29】
耐食性物質が、タンタル、ジルコニウム、白金、チタン、金、銀、ニッケル、ニオブ、モリブデンおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の金属を含有する合金から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項30】
耐食性物質が、ニッケルおよびモリブデンを含有する合金から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
耐食性物質が、セラミックまたは金属−セラミック、耐火物質、グラファイト、ガラスライニングされた物質から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項32】
耐食性物質が、琺瑯スチールから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項33】
耐食性物質が、ポリオレフィン、フッ素化ポリマー、硫黄および/または芳香族化合物を含有するポリマー、エポキシレジン、フェノールレジン、ビニルエステルレジン、フランレジンから選択されるポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項34】
耐食性物質を使用して、腐食から保護されることが必要な下流処理設備装置の実体を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項35】
耐食性物質を、腐食から保護されることが必要な下流処理設備装置の表面のコーティングとして使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項36】
反応ステップを、塩化水素の分圧約15psia〜約1000psiaで行なう、請求項14に記載の方法。
【請求項37】
反応ステップを、塩化水素の分圧約35psia〜約600psiaで行なう、請求項14に記載の方法。
【請求項38】
反応ステップを、塩化水素の分圧約55psia〜約150psiaで行なう、請求項14に記載の方法。
【請求項39】
反応ステップを、塩化水素の分圧約20psia〜約120psiaで行なう、請求項14に記載の方法。
【請求項40】
反応ステップを、温度約25℃〜約300℃で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
反応ステップを、温度約25℃〜約200℃で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
反応ステップを、温度約30℃〜約160℃で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
反応ステップを、温度約40℃〜約150℃で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
反応ステップを、温度約50℃〜約140℃で行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
反応ステップを実施するために使用する設備が、少なくとも部分的に耐食性物質で形成または被覆されている、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
反応ステップを実施するために使用する設備が、全体的に耐食性物質で形成または被覆されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換する塩化水素化反応ゾーンの下流に位置する設備における腐食を低減させる方法であって、クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する反応ゾーンの流出物を温度120℃未満で維持する、方法。
【請求項48】
クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を温度100℃未満で維持する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
クロロヒドリンおよび/またはそのエステルを含有する流出物を温度90℃未満で維持する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
水を実質的に反応ゾーンの流出物から除去する、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを少なくとも1種のクロロヒドリンおよび/またはそのエステルに変換するための取付装置であって、少なくとも1つの反応ユニットであって、その中でクロロヒドリンおよび/またはそのエステルを生成する反応条件下で多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素および/またはそのエステルを塩化水素と接触させる反応ユニットを含み、前記反応ユニットは、少なくとも1つの下流処理ユニットに接続されており、該下流処理ユニットの中で反応ユニットの流出物が処理および/または貯蔵され、前記下流処理ユニットにおいて使用する設備は、当該設備が流出物の総質量に対する総塩化水素濃度0.8質量%超である前記流出物と接触する領域のみにおいて耐食性物質で形成または被覆されている、取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−523702(P2010−523702A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503223(P2010−503223)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/059977
【国際公開番号】WO2008/128011
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】