多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの製法
本発明は、エピトープ集合ライブラリー免疫法(EALI)と称される、多価エピトープ遺伝子ワクチンを作成する方法に関する。本発明は、多価エピトープのキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングするために、遺伝子シャッフリング及びランダムな集合を用いて、異なるサイズと長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーを作成することに関する。本発明の遺伝子ライブラリーを用いて個体を免疫することにより、高レベルの特異的抗体、特定の種類のサイトカイン、及び個体防御を誘導できた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遺伝子ワクチンを人工的に作成する方法に関し、この方法をエピトープ集合ライブラリー免疫法(EALI)と称する。本発明による方法は、一般的に多価エピトープのキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングするために、遺伝子シャッフリング及びランダムな集合を用いて、異なるサイズと長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの構築に関与する。
【背景技術】
【0002】
Stemmerにより開発されたDNAシャッフリング技術が1994年にScienceに掲載されて以来、様々な改良された遺伝子シャッフリングのプロトコール(非特許文献1〜3)、付着伸長プロセス法(非特許文献4)、融合酵素作成のための漸増的短縮(incremental truncation法)(非特許文献5)及び一時的鋳型上のランダムなキメラ生成(非特許文献6)等を用いた遺伝子の人工的進化に関する多くの分子育種技術が発展した(非特許文献7)。今日まで、多くの成功例において、分子進化技術の基本原理が、抗生物質の力価を改良するための一般的な生物学的プロテアーゼ、環境汚染物質の分解、ウィルスの再構成、及び医薬品の開発に至る分野で遺伝子を作成又は改変するために適用された。しかしながら、第3世代ヒトワクチンであるDNAワクチンの分野への適用は少ない。多くの専門家は、遺伝子ワクチンに遺伝子シャッフリング技術が成功すれば、がん、自己免疫疾患、及びヒトの健康に深刻に有害な感染症のような疾患に広く適用できると予想しているが(非特許文献8〜10)、実質的進歩を示す関係文献、特許はない。
【0003】
遺伝子ワクチンは1990年代に進歩した新しい免疫理論と技術を代表し、弱力化したウィルスワクチン及びサブユニットワクチンに次ぐ第3世代のワクチンである(非特許文献11)。遺伝子ワクチンの技術は、外来性のタンパク質をコードする塩基配列を持つプラスミドDNAを体内に直接注入し、体内で外来性タンパク質を直接発現させ、免疫応答を誘導させることから成り立つ。遺伝子ワクチンは旧来のワクチンと比較すると、長期にわたる免疫応答、体液性免疫と細胞傷害性のT細胞応答を同時に引き起こすこと、調製の簡単なこと、利便性、低価格、抗原の安定性、及び移送の便利さ、等々多くの利点を有する。遺伝子ワクチンは、組み換え型サブユニットワクチンで証明された安全性、及び一般的な免疫応答の誘導に対する弱力化したウィルスが持つ高い効率を有するばかりでなく、体内に特異的な免疫応答を誘導する。現在に至るまで、遺伝子ワクチンは、新生児のアレルギー応答や免疫寛容の治療ばかりではなく、ウィルス、バクテリア、及び原虫による感染症、及び癌などの治療に対しても広く使われてきた。インフルエンザ、AIDS、狂犬病、B型肝炎、結核症、マラリア及びリーシュマニア症の治療に対しても有益な進歩がある(非特許文献12)。ヒトの健康に深刻な影響を持つ、マラリア原虫、HIV及び他の非常に変異性に富むウィルスに関しては、非常に有効なワクチンは存在しない。
【0004】
ワクチン研究によれば、高い変異性を持つ病原体に対しては、様々な期間、様々な抗原を用いることが必要とされている(非特許文献13)。複数抗原のワクチンに対して、多くの報告及び特許があり、これらは複数の抗原をもつ単一の合成又は組み換えワクチン、及び多価エピトープのタンパク質ワクチン、又は限られた種類のこのような合成又は組み換えワクチンの組み合わせに集中している。更に、ポリペプチドワクチンの合成は非常に高価であり、このことが実際的な応用を妨げている。今や、幾つかの文献により、多価エピトープのキメラ遺伝子ワクチンが報告されているが、多価エピトープ遺伝子間の人工的及び単一キメラパターンに重点が置かれおり、ポリペプチドワクチンより優れた免疫防御効果は達成されてない。多価組み換えDNAワクチンの構築の際、Plasmodium falciparum(MSA−1,NKND及びCST3)の3個の抗原性エピトープが選ばれたことを考慮し、本発明の発明者等は、前もって設計した組み合わせパターンに従い、多価エピトープ遺伝子の異なった構築と組み合わせを行い、多価エピトープの組み合わせには最適の集合があることを見出した(非特許文献14)。この結果によれば、数個のエピトープ(3以下)の組み合わせの場合は、最適な組み合わせは、個々の集合と構築から手作業で得ることができることが分かった。しかしながら多くのエピトープ(3以上)の組み合わせには多くの可能性があり、上記の方法では複雑で、費用がかかり、多くの作業を必要とするので、実際上集合及び構築を行うことは非現実的である。従って、如何に有効に多価エピトープ遺伝子を設計し、病原体の多変異性を克服するかということが遺伝子ワクチンの開発に要求される(非特許文献15〜18)。
【0005】
ヒト健康に危険な影響を与える悪性マラリアを引き起こすPlasmodium falciparumの生活環(ライフサイクル)は複雑であり、ヒトにおける無性生殖と有性生殖、及び蚊における有性生殖とスポロゾイト形成からなる4段階を有する。ヒトにおいて、赤血球外(肝)及び赤血球段階があり、蚊において生殖母細胞及びスポロゾイト段階がある。Plasmodium falciparumはこの様に複雑な生物学的な形質を持つので、宿主及び医薬品の免疫防御に対し非常に変異性の高い応答を示し、その結果単一の防御的抗原性ワクチンではマラリアに対し有効ではない。
【0006】
【非特許文献1】Huimin Z.他、Nucleic Acids Research,25(6),1307-1308(1997)
【非特許文献2】Andreas C.他、Nature,391(15),288-291(1998)
【非特許文献3】Miho K. 他、Gene,236,159-167(1997)
【非特許文献4】Huimin Z.他、Nature Biotechnology,16,258-261 (1998)
【非特許文献5】Marc O.他、Nature Biotechnology,17,1205-1209(1999)
【非特許文献6】Wayne M.C. 他、Nature Biotechnology,19, 354-359(2001)
【非特許文献7】Juha P.Int Arch Allergy Immunology,121,173-182(2000)
【非特許文献8】Dewey D.Y.R 他、Biotechnology Progress,16(1),2-16(2000)
【非特許文献9】Phillip A P.他、Current Opinion in Biotechnology,8, 724-733(1997)
【非特許文献10】Robert G.W.他、Curr Opin Mol Ther,3(1),31-36(2001)
【非特許文献11】Wolff J.A.他、Science,247,1465-8(1990)
【非特許文献12】Lai W.C.他、Crit Rev Immunol,18(5),449-84(1998)
【非特許文献13】Doolan D.L.他、Int J Parasitol,31(8),753-62(2001)
【非特許文献14】Lin C.T.Chinese J of Biochemistry and Molecular Biology,1999,15(6):974-977
【非特許文献15】Yu Z.他、Vaccine,16(7),1660-7(1998)
【非特許文献16】Kumar S.他、Trends Parasitol,18(3),129-35(2002)
【非特許文献17】Hoffman S.L.他、Dev Biol,104,121-32(2000)
【非特許文献18】Li M.他、Chin Med J(Engl),112(8),691-7(1999)
【非特許文献19】Jiang Y.他、Chin Med J(Engl),112(8),686-90(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラスモディウムによる臨床的症候は、主に宿主の赤血球細胞内の無性生殖に依っている。赤血球段階ワクチンは、プラスモディウムの特徴的な病原段階を直接狙って設計したものである。マラリアワクチンは、弱力化されたスポロザイト周囲ワクチン、サブユニットワクチン及び合成ペプチドワクチンから成り立つが、多くのワクチンが標的とする多くの抗原が充分な防御効果を持たないのでこれらのワクチンは成功してない。従って、同業者の間で良く認められている様に、望みの防御効果を得るためには、マラリアワクチンを構築する際、多段階で多価のエピトープの組み合わせが必要である。しかしながら、手作業で多段階で多価のワクチンを構築する際、ポリペプチドをコードする遺伝子の量と、連結次数を決める事は困難であり、またエピトープDNAワクチンによる体液性免疫の誘導は、一般的に満足のいくものではなく、これらは解決しなければならない問題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1態様としては、多価エピトープキメラワクチンの調製方法の提供であり、この方法は、新しい遺伝子ワクチンを構築するために、ランダムライブラリーにおける遺伝子再結合を用いるもので、以下の諸工程から成る:
a)それぞれが、対象である抗原の単一エピトープをコードする、多数の核酸分子を選択し、合成し、ベクターにクローニングする工程、
b)アイソコーダマー連結を用いて、工程a)で得たベクター中にランダムに連結した2価エピトープをコードする核酸分子を構築する工程、
c)工程b)で得た2価エピトープをコードする核酸分子から、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てる工程、
d)異なる長さ域に従って多価エピトープキメラ遺伝子を抽出し、精製し、増幅し、その後、これらの多価エピトープキメラ遺伝子を発現ベクターにサブクローニングし、原核宿主に形質導入し、夫々対応する長さ域の多価エピトープキメラ遺伝子発現ライブラリーを得る工程、
e)各発現ライブラリー内の多価エピトープキメラ遺伝子の差異を検知して、遺伝子ライブラリーの高い多様性を確認する工程、
f)各多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーを用いて動物を免疫し、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー中の遺伝子発現産物の免疫原性を検出する工程、
g)工程e)及び工程f)の結果に従い、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを含む1ないし2以上の遺伝子ライブラリーを決定する工程、及び
h)高処理能力免疫化学的方法により、工程g)で得た遺伝子ライブラリーから高い免疫原性を持つ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングする工程。
【0009】
本発明の方法によれば、異なるエピトープ間の直列再結合の不均一性を増すために、工程c)において異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てることを、以下の2操作を同時に行うことによって実行することができる:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応、及び2)ランダムに組み立てるためのベクター内のアイソコーダマー連結。
【0010】
本発明の1態様によれば、本発明は本発明の方法により調製した多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを提供するものであり、前記の多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンは、Plasmodium falciparumに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の原理は図1に説明されている。
本発明の方法によると、所定の抗原は様々な感染症、腫瘍、あるいは自己免疫疾患に関係する如何なる抗原でも良い。抗原エピトープの多くの配列は、本技術分野において既知であり、これらの配列に基づき、工程a)において、各核酸分子が所定の抗原の単一エピトープをコードする多数の核酸分子を合成することができる。
【0012】
所定の抗原の単一エピトープをコードする核酸分子をベクター中にクローン化した後、アイソコーダマー技術を用いる本発明の方法により、単一エピトープをコードするこれらの遺伝子をランダムに組み立て、2価エピトープ遺伝子を作成する。本技術分野において様々なアイソコーダマーが既知であり、これらを本発明の方法において用いる。
【0013】
本発明の方法によると、2価エピトープを得た後、これらをランダムに組み立てて多価エピトープキメラ遺伝子を作成しなければならない。異なるエピトープ間の直列再結合の不均一性を増すために、本発明の一つの好ましい態様として、以下の2操作を同時に行い、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てた:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応;及び2)ベクター中のアイソコーダマー部位を利用したランダムな連結。
【0014】
このようにして得られた、ランダムに組み立てられた異なる長さを有する多価エピトープキメラ遺伝子を様々な長さ域に従い分離したが、この長さ域は要求に従い設定されるものであり、また通常数百から数千塩基対の長さである。本発明の1態様において、夫々300,800,1200,2000及び4000bpを持つ5群のランダムに組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子を分離した。当業者は好みの長さ域を設定できると考えられる。次に、これらの分離した多価エピトープキメラ遺伝子群を、精製し増幅した後、本技術分野で既知の適切な発現ベクターにクローン化することができて、また適切な宿主細胞を形質転換のために用いて、多価エピトープキメラ遺伝子の幾つかの発現ライブラリーを得ることができる。
【0015】
本発明によると、多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーを得た後、ライブラリーの多様性及びライブラリーの発現産物の免疫原性を検出し、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンから成立する1あるいは2以上の遺伝子ライブラリーを更なるスクリーニングのために選択し、多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを作成する。ライブラリーの多様性が85%以上であることが好ましい。適切な組み立てを決定する基準は、ライブラリーの高い多様性と発現産物の高い免疫原性である。更に、特異的免疫型、及び検定したライブラリーによって体内に誘導され作られたサイトカイン、又は動物モデルで引き起こされた交叉防御効果等の、所定の抗原エピトープに関係する免疫的特性を、この基準に含めても良い。
【0016】
本発明の実施例において、発明者等は、Plasmodium falciparum(表1)に対し高い免疫原性を持つことが文献的に証明されている抗原エピトープアミノ酸配列を選択し、ヒト特異的コードンを用いて、エピトープアミノ酸配列に対応するコード配列を作成した(表2及び3)。14個のエピトープ断片は繰り返されており、ランダムに結合することで異なる長さを有する人工的抗原ライブラリーを構築できて、ここで各ライブラリーは、何千という異なる組み合わせの人工的抗原を含む。マウスを多価エピトープ遺伝子ライブラリーで免疫した後、血清中に非常に高レベルの特異的抗体を得た。Plasmodium yoeliiマウスモデルを用いて、これらの人工的抗原は交叉免疫防御を引き起こすことが示され、このことは本発明の方法により構築した発現ライブラリーは、現存のライブラリーの難点を克服し、また理想的多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの基礎を築いたことを示す。実施例6のライブラリーを使った最初のスクリーニング結果から、高処理能力免疫化学的方法により高い免疫原性を有する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンが得られることが分かった。
【0017】
cDNA発現ライブラリーとは異なり、本発明に記載されたキメラ遺伝子発現ライブラリーにより個体を免疫することの利点は、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーはcDNA発現ライブラリー利用に伴う非エピトープDNA配列の干渉を持たず(Shibui A.他、Res Commun Mol Pathol Pharmacol,109(3-4),147-57(2001);Smooker P.M.他、Vaccine,18(23),2533-40(2000);Johnston S.A.他、Vaccine,15(8),808-9(1997))、また遺伝子ワクチンの安全性を改善している、と言うところにある。また、当業者は、遺伝子機能の解析を容易にするために、遺伝子免疫への標的を選択でき、より早く遺伝子ワクチンを調製でき、また本当に防御効果のあるライブラリー内の遺伝子を認識できる。
【0018】
以下の実施例において、悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを調製した。これらの実施例は、発明を説明することだけを意図したものであり、発明の範囲を制限するものではない。当業者は本発明の方法は、悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの調製に限られるものではなく、様々な感染症、腫瘍又は自己免疫疾患に対する遺伝子ワクチンの調製に使うことができると理解する。
本発明を更に以下の図及び実施例によって詳しく説明する。
【実施例1】
【0019】
<Plasmodium falciparumのエピトープ遺伝子断片の機能的断片のクローニングと配列解析>
1.異なる生活環におけるB細胞及びTh細胞のエピトープをコードするDNA配列の修飾。
Plasmodium falciparumの増殖をより有効に阻害し、マラリアのPlasmodium yoelii動物モデルにおける防御をテストするために、Plasmodium yoeliiの様々な生活環で見出されるものと相同なPlasmodium falciparumの様々な生活環で見出される9個の表面抗原MSP−1,RESA,MSA−2,AMA−1,EBA−175,LSA−1,CS.T3,NKND及び MAg−1から14個のエピトープを、報告された文献から選択したが(表1)、ここでエピトープのアミノ酸配列に対応する塩基配列を、ヒト特異的コードンを用いて作成した(表2及び3,塩基配列は太活字で表す)。
【0020】
2.エピトープ遺伝子断片のためのプライマーの設計と合成。
a)上記工程1で作成したエピトープ遺伝子配列に基づき、完全な相補的3’末端を持つ2個のプライマーを設計した(表2及び3,相補的配列は2個のプライマー間の重なり配列である)、またBclI及びBamHIのアイソコダマー部位を、夫々、エピトープ遺伝子配列に対する上流及び下流プライマーに導入した。
b)エピトープ連結の立体的自由度を増すために、様々に連結した抗原エピトープのBclI及びBamHI連結部位の近傍にGLy−Pro−Gly−Pro(G−P−G−P)(配列番号1)の構造を導入した。
c)より長いエピトープ遺伝子断片(E3(MSA2)及びE6(MSA1)のような)に対しては、2度のアニーリングと伸長により遺伝子の全長を得るために4個のプライマーを用いた。
【0021】
3.エピトープ遺伝子断片のクローニングと配列解析。
a)2個の相補的なプライマー間で一致した配列を、94℃,30秒間,45−60℃(異なるプライマーのTmに依存する),30秒間及び72℃,40秒間,40サイクルと言うPCR条件下でアニール及び伸長を行った。
b)増幅産物を1/10容積の10M酢酸アンモニウム及び2倍量の純アルコールにより沈殿させ、その後超純度水に溶かし、BclI及びBamHIで消化し、等量のフェノール処理を行い、12000rpm、5分間遠心した。上清を1/10容積の3M酢酸ナトリウムと2倍量の純エタノールにより沈殿させ、超純度水に溶かした。
c)消化した産物を、同じ酵素で消化したベクターVR1012(Vical INc)に連結し、その後E.coliSK383株(GATCメチル化欠損株)に形質導入した。BclI及びBamHI切断により標的クローンを選択した。
d)標的クローンを、5’−CCAGACATAATAGCTGAC−3’(配列番号2)の配列を持ち、またベクターVR1012のマルチクローニング部位の上流配列でもある、プライマーC038Pを用いて配列決定した。
【実施例2】
【0022】
<Plasmodium falciparumのエピトープ遺伝子のランダムな組み立て>
1.ランダムに組み立てた2価エピトープ遺伝子の構築。
非常に相同性の低いエピトープ遺伝子間の一致した領域を作り出すために、HindIII部位と共にBclI及びBamHIのアイソコーダマー部位を使い、実施例1の工程3でクローン化した個々の単一エピトープ遺伝子を連結して2価エピトープ遺伝子を作った。簡単に説明すると、連結のランダム化と効率改良のために、様々な単一遺伝子を等量混合し、2等分した。一方をBclI及びHindIIIで切断し、他方をBamHI及びHindIIIで切断した。エピトープ遺伝子を含む2個の消化物からの断片を混合し、連結し、その後E.coli SK383株に電気形質導入し、2価エピトープ遺伝子のランダム集合を含むクローンを得た。
【0023】
2.ランダムに組み立てた異なる長さの多価エピトープ遺伝子の構築。
異なるエピトープの再結合の不均一性を増すために、ポリメラーゼ連鎖反応及びアイソコーダマーのランダム連結という2つのプロトコールを用いて、ランダムに組み立てた2価エピトープ遺伝子を構築し、最後にこれら2つのプロトコールからの産物を混合し、異なる長さを持つ5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリー(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)を構築した。
a)ポリメラーゼ連鎖反応による構築
上記工程1に述べた2価エピトープ組み換えプラスミドを混合し、その後BclI及びBamHIで切断し、低融点アガローズゲル上で電気泳動に付した。小断片をDNA抽出キット(Promega)を用いて回収し、濃度を知るためにOD260/OD280を測定した。
【0024】
プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応の反応システム(50μl)を下記の構成要素により調製した:
混合2価エピトープDNA 1μl
ExTaq DNA polymerase(5U/μl) 2U
10X緩衝液 5μl
dNTP 8μl
d2H2O 36μl
【0025】
反応条件(25,35,45,55,65,75又は85サイクル)は下記の通りである。第1の工程:94℃,3分間;94℃,30秒間;42−55℃,30秒間;72℃,30秒間;25サイクル;及び72℃,10分間。第2の工程:94℃,3分間;94℃,45秒間;50−55℃,45秒間;72℃,30秒間,1秒間/サイクル;10サイクル;及び72℃,10分間。プライマーフリー増幅産物の1%アガローズゲル電気泳動を行い、結果を第2図に示すが、これにより組み立てた多価エピトープ遺伝子断片の長さはサイクル数の増加に伴い増加した。異なる長さの5個のDNA断片(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)をゲルから回収し、上流プライマー5’−ACATCATGCCTGATCA−3’(配列番号2)及び下流プライマー5’−TTAGCTAGCGGATCC−3’(配列番号4)を用いて、従来型のPCR反応を行った。反応系はプライマーフリーPCRと同じであり、工程:94℃,3分間;94℃,30秒間;50℃,30秒間;72℃,30秒間;30サイクル;及び72℃10分間を用いた。 増幅産物を精製し、Wizard PCR Prep Purification Kit (Promega)を用いて濃縮し、BclIで切断し、EcoRV及びBclIで切断したベクターVR1012に連結し、連結混合物をE.coliSK383株に電気導入した。方法と結果を図1及び図2に示す。
【0026】
b)アイソコーダマーを用いたランダムな連結
上記工程1の2価エピトープ組み換えプラスミドを混合した。BclI/BamHIで切断した小断片(エピトープ遺伝子を含む)をBamHI/HindIIIで切断した大断片(エピトープ遺伝子を含む)と連結し、その後連結混合物を感応細胞SK383に電気導入し、ランダムに組み立てた4価エピトープライブラリーを作成する。同様に、異なる長さを持つ多価エピトープ遺伝子の5個のランダムライブラリー(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)を構築した。
【実施例3】
【0027】
<Plasmodium falciparumの多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの構築>
1.夫々、Kozak配列と終結コードンを持つ真核生物発現ベクターVR10AとVR10Tの構築。
真核生物Kozak配列を含むプライマー(1A:5’−GATCACCATGGAATTCG−3’ (配列番号5)及び1B:5’−GATCCGAATTCCATGGT−3’ (配列番号6))を設計し、自己アニールと伸長を行わせた。PCR産物をBclI及びBamHIで切断し、E.coliSK383株を受容菌株とするベクターVR1012にクローン化し、これにより組み換えプラスミドVR10Aを得ることができ、Takaraバイオテク会社に配列決定を委託した。
【0028】
次ぎに行うランダム構築後の多価エピトープ遺伝子の機能解析を容易にするために、終結コードンTAATAAをエピトープE6(MSA−1)の下流に置いた(表2及び3,遺伝子E6のプライマー6D)。プライマー6A,6B,6C及び6Dを合成し自己アニールと伸長を行わせた。PCR産物をBclI及びBglIIで切断し、受容菌株をE.coliSK383株とするベクターVR1012にクローン化し、これにより組み換えプラスミドVR10Tを得ることができ、Takaraバイオテク会社に配列決定を委託した。
【0029】
2.異なる長さの多価エピトープ遺伝子の5個の発現ライブラリーの構築。
a)実施例2の工程2で調製した異なる長さを持つ5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーからのプラスミドDNAをBclI及びHindIIIで切断した。得られた断片(エピトープ遺伝子を含む)を回収し、夫々をBamHI及びHindIIIで切断したプラスミドVR10A(開始コドンを含む)に連結し、その後組み換えプラスミドを得るために感応細胞SK383に電気導入した。
b)同様に工程a)における5個の組み換えプラスミドは、BclI/HindIII及びBamHI/HindIIIで切断し、終結コドンを持つ上記工程1のベクターVR10TのDNA断片と連結し、図4に示す様に、異なる長さの多価エピトープ遺伝子(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)の5個の発現ライブラリー(夫々、No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5)を構築した。
【0030】
3.多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの遺伝子多様性の解析。
No.3及びN0.4ライブラリーについて一本鎖高次構造多型(PCR−SSCP)を調べた。その結果、図5に示す様に、両ライブラリーのキメラ遺伝子の多様性は95%(夫々、24/25及び25/25)以上であった。この検査の工程を以下に記す:
a)ライブラリーから無作為に25クローンを選択し、ベクターVR1012のマルチクローニング部位の上流配列のプライマー(C038P:5’−CCAGACATAATAGCTGAC−3’(配列番号7))、及びベクターVR1012のマルチクローニング部位の下流配列のプライマー(C039P:5’−GATGGCTGGCAACTAGAA−3’(配列番号8))を用いてPCR(増幅条件:94℃,30秒間;55℃,30秒間,72℃,1分間,30サイクル)を行った。増幅産物を沸騰水中で10分間インキュベートし、10分間氷上で冷却し、その後10X試料緩衝液と混合した。
【0031】
b)上記試料を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、5V/cmで泳動した。電気泳動後、ゲルはガラス上に固定した。
c)ゲルの付いたガラスをペトリ皿に置き、固定緩衝液(10%氷酢酸v/v)を加え、ゲルを少なくとも20分間水平に浸けゆっくり振とうさせた。固定後、固定緩衝液を回収し、現像後の固定液として用いた。
d)ゲルを再蒸留水で3回濯いだ。
e)染色液(2gAgNO3、3mlの37%ホルムアルデヒド/2Lの脱イオン水)を加えて、ペトリ皿を30分間ゆっくり振とうした。
f)ゲルを再蒸留水で20秒間濯いだ(注意:濯ぎ時間は余り長すぎない様)。
g)予冷した現像液(60gNa2CO3、3mlの37%ホルムアルデヒド、400μlの10mg/mlチオ硫酸ナトリウム溶液を2Lの脱イオン水に加え、温度が10−12℃になるまで水槽に置いた)を加え、ゲル中のバンドが見えるまでペトリ皿をゆっくり振とうさせた(通常5−6分間)。
h)現像反応を中止させるために等量の固定液をペトリ皿に加え、ペトリ皿を2−3分間ゆっくり振とうした。
i)ゲルを再蒸留水で3回濯いだ。
j)ゲルを空気乾燥させ、ランプ下で検出した。
【実施例4】
【0032】
<5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーの免疫原性の検出>
1.異なるライブラリーの多価エピトープ遺伝子を持つ組み換えプラスミドの調製
実施例3の工程2で構築した、異なる長さを持つ多価エピトープ遺伝子ライブラリー(No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5)を含むバクテリアを、夫々プレートから洗い入れ、対応する抗生物質の入ったLB液体培地中で培養した。その後、対応する抗生物質の入った1LのLB液体培地に、1:100の割合で少量の接種菌を加えて接種し、バクテリアは対数期増殖に至るまで培養した。バクテリアを集菌した。プラスミドをWizard Megaprepsプラスミド抽出キット(Promega)を用いて抽出した。DNA濃度はDU70紫外分光器(Beckman)を用いてOD260/OD280から計算した。
【0033】
2.多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーで免疫したマウスの抗血清の調製。
上記工程1で得た遺伝子ワクチンライブラリーの組み換えプラスミドの各種DNA100μgを、無菌化した生理食塩水を使って、各種DNA溶液が等量になるよう調製した。Balb/cマウスのグループを、各グループ3匹の動物を使い、等量の上記DNA溶液を両足の上腕骨(大腿骨)四頭筋に注入し免疫した。対照として空のベクター及びDNAなしのブランクを使った。免疫は2週間ごとに合計3回追加免疫を行った。免疫後、各グループから血液試料を摂り出し、ポリクローナル抗血清を集めた。
【0034】
3.酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)による異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより作られた抗体レベルの検出。
陽性対照、陰性対照及びブランク対照存在下に、コーティング抗原として混合エピトープ合成ペプチドを用いた。試験する抗血清の二倍稀釈系列(400,800,1600,3200,6400,12800,25600及び51200の様な)を用いた。図6に示す様に、異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーで免疫した後の抗血清の最高稀釈(力価)をELISAで検知した。この結果、異なる長さの遺伝子ライブラリーは異なる免疫原性を有し、高力価の抗体が産生された。検定のそれぞれの工程を以下に記す:
【0035】
a)コーティング:単一又は混合したエピトープの合成ペプチドをコーティング抗原として用い、0.1M炭酸塩、pH9.2のコーティング緩衝液で望みの濃度(200ng/100μl/ウェル)まで稀釈した。ピペットを用いて、各ウェルに100μl加えた後、加湿環境下に4℃一晩又は37℃4時間プレートを靜置した。プレートを傾けPBSTで5回濯いだ。
b)ブロッキング:200μlの1%BSAを各ウェルに加え、プレートを37℃1時間インキュベートした。
c)プレートをPBSTで5回濯いだ。
d)検査するマウスから得た抗血清の添加:PBS溶液で検査する抗血清の2倍稀釈系列を作り、各濃度の稀釈抗血清100μlを各ウェルに加えたもの各3検体準備し、4℃一晩インキュベートした。
e)プレートをPBSTで5回濯いだ。
f)ホースラッディシュペルオキシダーゼでラベルした抗体、即ち馬−抗マウスIgG−HRPの添加:100μlのラベルした抗体のPBS/BSA(1:1000)稀釈液を各ウェルに添加し、加湿環境で37℃2時間インキュベートした。
g)プレートをPBSTで5回濯いだ。
h)発色:各ウェルに100μlの基質発色緩衝液を加え、プレートを室温で10分間靜置した。
i)反応停止のために各ウェルに50μlの1M H2SO4を加えた。
j)450nmの吸光度をLabsystems Genesis V3.03系で読み、結果を解析した。
【0036】
基質発色緩衝液(pH5.0)
溶液A:1.92gのクエン酸塩(無水)をddH2Oに加え最終容積を100mlとした。
溶液B:7.16gのNa2HPO4(12結晶水を含む)をddH2Oに加え最終容積を100mlとした。
2.43mlの溶液A、2.57mlの溶液B及び5mlの水を混合し、10mlのリン酸−クエン酸緩衝液、pH5.0を作った。
発色反応の前に、新鮮な発色緩衝液を調製するために、0.015mlの30%過酸化水素及び0.004gのTMBを10mlのリン酸−クエン酸緩衝液に加えた。
【0037】
4.天然型タンパク質を異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーで産生したポリクローナル抗血清で認識するための間接免疫蛍光検定(IFA)の検出結果。
異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清が、Plasmodium falciparum 及びPlasmodium yoeliiの天然型タンパク質を認識するか否か決定するために、間接的免疫蛍光検定(IFA)を用いた。図7及び8に結果を示す様に、陽性対照存在下で、抗体の認識可能な最大稀釈を決定し、また共焦点顕微鏡を用いて抗体の結合部位を決定した。この検定の個々の工程を以下に記す:
【0038】
1)Plasmodium falciparumの天然型タンパク質の認識。
a)赤血球段階Plasmodium falciparum 3D7(又はFCC1)(感染率約2%)を含む赤血球細胞を均一にスライド上に広げ、スライドを室温で空気乾燥させた。
b)100%アセトンを用いて10分間で細胞を固定した。
c)スライドを室温で空気乾燥させ、蛍光マークペンでマークし、PBS中1%BSAを用い30分室温処理でブロックを行った。
d)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
e)異なる稀釈率(1:500,1:1000,1:2000,1:4000)の一次抗血清(上記同様マウスからの抗血清)を加え、スライドを加湿環境下、室温で30分間インキュベートした。MAbM26−32を陽性対照として用いた。
f)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
g)1:100に稀釈したFITCでラベルした馬−抗マウスIgGを加え、スライドを加湿環境下で37℃30分間インキュベートした。
h)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
i)50%グリセロールを用いてスライドをカバースリップで封じ、蛍光顕微鏡又は共焦点蛍光顕微鏡を用いて視覚化した。
【0039】
2)Plasmodium yoeliiの天然型タンパク質の交叉認識。
a)Plasmodium yoelii(感染率約50%保有)を含む赤血球細胞を均一にスライド上に広げ、スライドを室温で空気乾燥した。
b)他の工程は、上記1)項のPlasmodium falciparumの天然型タンパク質の認識の場合と同じである。
【0040】
5.様々な多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清のウェスタンブロットによる検出。
様々な多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清がPlasmodium falciparumの天然型抗原を認識することを示すために、実施例4,工程2の抗血清を稀釈し、スパニン処理したPlasmodium falciparumからSDS−PAGEで抽出した寄生体タンパク質を用いたウェスタンブロットに付した。本実施例では多価エピトープライブラリーNo.3を用い、得られた結果からライブラリーNo.3の遺伝子ワクチンで産生した抗血清は、様々なサイズの10個以上の寄生体タンパク質を認識し、高濃度の抗体を有することが分かった。結果を図9に示した。本実施例の個々の工程は下記の通りである:
【0041】
a)試料の処理:1又は2培養皿のPlasmodium falciparum 3D7株を遠心で集め、PBSで2回洗浄し、赤血球細胞を壊すために最終濃度0.2%のスパニン処理を行った。その後、沈殿物を2回PBSで洗浄し、PBSに可溶化し、10X試料緩衝液と混合し、沸騰水槽中で10分間インキュベートした。
b)免疫ブロッティング:処理した試料を分離のためにSDS−PAGE電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に電気的に移行(electrotransfer)させ、その膜を3%BSAにより室温1時間ブロックし、PBSで3回濯いだ。次ぎに、BSAで稀釈した遺伝子ライブラリーで産生した一定量の抗血清を加え、膜を室温で1時間インキュベートした。膜をPBSで3回洗浄後、アルカリホスファターゼでラベルした2次抗体である馬−抗マウスIgG(Ap−IgG)を加え、室温で1時間インキュベートした。膜を3回PBSで洗浄した。最後に膜をアルカリホスファターゼ緩衝液(100mmol/L Tris−HCl(pH9.5),100mmol/L NaCl,5mmol/L MgCl2)で1度濯いだ。
c)発色と発色の停止:5mlのアルカリホスファターゼ緩衝液につき33μlのニトロブルーテトラゾリウム(70%ジメチルスルフォキシド中に50mg/ml)及び16.5μlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インド−リル−ホスフェート溶液(100%ジメチルスルフォキシド中に10mg/ml)を加えた。10分後、停止緩衝液(20mmol/L Tris−HCl(pH8),5mmol/L EDTA)を加えて反応を停止させた。
【実施例5】
【0042】
<異なるライブラリーからの多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンによるP.yoeliiに対する交叉防御>
悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをより効率よく構築するために、発明者等は本発明の遺伝子ワクチンのP.yoelii動物モデルにおける防御効果をテストした。その結果、5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーは全て、程度は異なるが、防御性があることを示し(図10)、このことがPlasmodium falciparumに対する人工的にシャッフルした遺伝子ワクチンの防御効果に関するin vivo防御モデルに対する基礎を築いた。本実施例の各々の工程を以下に記す:
a)P.yoeliiの試料を液体窒素から取り出し、37℃水槽中で解凍した。試料500μlをBalb/cマウスの腹腔内に注入した。数日後、血液試料を摂り、スライド上に塗布し、メタノールで固定し、ギムザ染色した。感染率を顕微鏡下で計数した。
b)P.yoeliiに感染したマウスの血液を尾から集め、CPBS緩衝液(NaCl 3.2g,KCl 0.08g,Na2HPO4(12H2O 1.16g,KHPO4 0.08g,クエン酸ナトリウム 3.8gを水に溶かし(pH7.2)500mlに調製)中に落とした。寄生体に感染した赤血球細胞の濃度を血球計算板で計数した。
c)実施例4の工程2で免疫したBalb/cマウス腹腔に上記の工程で得た血液をマウス当たり2X105感染赤血球の投与量で注入した。
d)3日ごとに、マウス尾から抗血清を集め、スライド上に塗布し、感染率を計算した。更に、対照及び実験群の生存率を観察した。
【実施例6】
【0043】
<高処理能力免疫化学的方法により得た高い免疫原性を有する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンのin vivoテスト>
多価エピトープ遺伝子ライブラリー(実施例4)のin vivo免疫原性テスト、及びP.yoelii感染に対する防御テストの結果(実施例5)から、高レベルの免疫応答及び防御力を有する多価エピトープ遺伝子ライブラリーを選択した。高処理能力免疫化学的方法のスクリーニングプロトコールに従い、高い免疫原性を有する幾つかの陽性クローンを得ることができた。陰性遺伝子クローン及び無作為に選んだ空ベクターの存在下で、原核生物発現に対するウェスタンブロットによる検出を行い、マウスの免疫応答に関与するサイトカインCD4及びCD8を検査した。
【0044】
1.原核生物発現物のウェスタンブロット検出
この結果により、発現した対応するタンパク質をスクリーニングすることで、高い免疫原性のある遺伝子SP312及びSP352を得たことが分かる。これら2個の遺伝子を用いて産生した抗体を高稀釈した後でも、尚ウェスタンブロッティングによって陽性のハイブリダイゼーションバンドが検出されるが、低い免疫原性の遺伝子SN33,SN34及びSN36及び陰性対照の空のベクターを用いた場合、シグナルのあるバンドは検出されなかった。このことは、多価エピトープ遺伝子SP312及びSP352は、遺伝子SN33,SN34及びSN36に比べ、高い力価の抗体を産生することを示す(図11)。
【0045】
2.マウスの免疫応答に関与するサイトカインCD4及びCD8の検出。
得られた陽性(高免疫原性)遺伝子クローンSP312,SP352及びSP462をin vivo免疫により確認した。陰性(低免疫原性)遺伝子クローン及び空ベクターの存在下で、Balb/cマウスを3回免疫し、脾臓リンパ球を採取し、フローサイトメトリーを用いてサイトカインCD4及びCD8の検出を行った。この結果、陽性(高免疫原性)遺伝子クローンSP312,SP352及びSP462は顕著にサイトカインCD4の産生、及び一定レベルのサイトカインCD8の産生を誘導したが、ここで陽性多価エピトープ遺伝子SP312は、SP352又はSP462より著しく高いレベルのサイトカインを産生した。これに対し、陰性多価エピトープ遺伝子は、空ベクターと同じ効果を示し、より高い免疫原性をもつ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンは、高処理能力免疫化学的方法によって得ることができることを示した(図12)。
【0046】
表1 本発明で用いた異なる生活環におけるPlasmodium falciparumの抗原のB−及びTh−細胞エピトープのアミノ酸配列。
【表1】
【0047】
表2.エピトープ遺伝子クローニングのためのプライマー配列(その1)
【表2】
【0048】
表3.エピトープ遺伝子クローニングのためのプライマー配列(その2)
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】多価エピトープ遺伝子のランダムな組み立てを示す概念図である。図において、1:幾つかの単一エピトープ遺伝子の取得;2:ランダムな組み立てによる2価エピトープの構築;3:プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応;4:異なる長さのDNA断片の抽出と精製、及びキメラ遺伝子ライブラリーの樹立。
【図2】プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応を用い、異なる条件下でランダムに構築した多価エピトープ遺伝子のグラフであり、以下の様にして得たものである:鋳型としてランダムに集めた2価エピトープ遺伝子の混合物の使用(0.5μg/μlの濃度の試料を夫々、0.5μl,1.0μl,及び2.0μl)、また50μlの系において、プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応は、夫々25,35,45,55,65,75,及び85サイクル行った。この結果によると、鋳型量が0.5(l(250ng)以下の場合サイクル数が増加するに従い、主要増幅産物のサイズは増加した。65−75サイクルを使うと、長さは約2kbであり、85サイクル以上では、断片長は4kb以上であった。
【図3】ある真核発現ベクター内の多価エピトープキメラ遺伝子の遺伝子構造を示す。遺伝子発現分析のために、共通のエピトープ配列(即ち、E6(MSA−1))を各多価エピトープ遺伝子の下流に挿入できる。
【図4】異なる多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー内の遺伝子長の比較を示す。ここでM,(/HindIII;1,No.1ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;2,No.2ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;3,No.3ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;4,No.4ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;5,No.5ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子。
【図5】異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーの遺伝子の多様性解析を示す。AはNo.3遺伝子ライブラリーの遺伝子の構造的多様性は、96%(24/25)であることを示し、BはNo.4遺伝子ライブラリーの遺伝子の構造的多様性は、100%(25/25)であることを示す。両ライブラリーより25組み換えクローンをランダムに選択し、ベクターVR1012のマルチクローニングサイト上流、下流のプライマーによるPCRを行った。増幅産物を100℃、10分間変性し、10分間氷上に置き、その後ポリアクリルアミドゲル電気泳動(10%)のための10X試料緩衝液と混合し、バンド間の差異を分析した。
【図6】異なる長さの遺伝子ライブラリーの多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの混合物で免疫したマウスにおける抗体レベルを示す。8エピトープ(E2(NKND),E3(MSA−2),E5(EBA−175),E6(MSA−1),E7(LSA−1),E8(CS.T3/CSP),E9(MSP−1)及びE11(AMA−1))を混合し、ウェル当たり200ngでミクロプレートの表面を覆った。5個の混合遺伝子ライブラリーを用いて、抗血清を得るために、100μgDNA量でデンドリマーPAMAN G9(1:6.5,w/w)を用いてBalb/cマウスを免疫した。OD450当たりの抗体値を測定するために抗血清を2X稀釈した。陽性値は対照値の少なくとも二倍の値を持つ。
【図7】異なる長さを持つライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンにより作られた対応する抗体の稀釈物中のIFA検出を示す。5個の遺伝子ライブラリーを用いてBalb/cマウスを2度100μgDNAの濃度で免疫し2X稀釈の抗血清を得た。陰性対照を標準として用い、陽性値は対照の蛍光強度より著しく異なる蛍光強度を有した。
【図8】共焦点顕微鏡の結果を示す。No.4ライブラリーの混合エピトープ遺伝子ワクチンに対する抗体は、異なるプラスモディウムの天然型の抗原を認識することを示す。A.Plasmodium falciparum 3D7の血液の塗布標本;B.Plasmodium falciparum FCC1の血液の塗布標本;C.Plasmodium yoeliiの血液の塗布標本。
【図9】ウェスタンブロットの結果を示す。No.3ライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンに対する対応する抗血清は、プラスモディウム3D7株の天然型の抗原を認識することを示す。1.Spanin非処理の3D7株の培養;2.Spanin処理の3D7株の培養;3.対照としての赤血球細胞培養;M.低分子量マーカー(97,66,45,30,20.5,14.4kDa)。この結果は、No.3ライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンに対する抗血清を3000X稀釈後、抗血清は尚Spanin処理した様々な3D7抗原を認識できたことを示す。
【図10】Plasmodium yoeliiに対する、異なるライブラリーからの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンによる交叉防御を示す。併行した対照として空のベクターと生理食塩水存在下で、異なるライブラリーからの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン(ライブラリーNo.2,No.3,No.4及びNo.5)を用いて、2X105感染性Plasmodium yoeliiを腹膜注射する前に、Balb/cマウス(各群7匹)を3回免疫した。3日に一度死亡マウスを観察した。この結果は、No.2,No.3及びNo.4ライブラリーは防御効果を引き起こし、No.3ライブラリー(約1200bpを有する)からの多価エピトープ遺伝子の防御率は42.8%までになったことを示す。
【図11】高い免疫原性を有する抗原遺伝子の原核生物における発現のウェスタンブロットを示す。図11A.SDS−PAGE;図11B.ハイブリダイゼーション膜。1.選択した陽性クローンSP312;2.ベクター;3.陰性クローンSN33;4.SN34;5.SP352;6.SN36.
【図12】ライブラリーからスクリーニングした陽性(SP)及び陰性(SN)クローンにより誘導されたin vivo免疫応答に関与するサイトカインの検出を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は、遺伝子ワクチンを人工的に作成する方法に関し、この方法をエピトープ集合ライブラリー免疫法(EALI)と称する。本発明による方法は、一般的に多価エピトープのキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングするために、遺伝子シャッフリング及びランダムな集合を用いて、異なるサイズと長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの構築に関与する。
【背景技術】
【0002】
Stemmerにより開発されたDNAシャッフリング技術が1994年にScienceに掲載されて以来、様々な改良された遺伝子シャッフリングのプロトコール(非特許文献1〜3)、付着伸長プロセス法(非特許文献4)、融合酵素作成のための漸増的短縮(incremental truncation法)(非特許文献5)及び一時的鋳型上のランダムなキメラ生成(非特許文献6)等を用いた遺伝子の人工的進化に関する多くの分子育種技術が発展した(非特許文献7)。今日まで、多くの成功例において、分子進化技術の基本原理が、抗生物質の力価を改良するための一般的な生物学的プロテアーゼ、環境汚染物質の分解、ウィルスの再構成、及び医薬品の開発に至る分野で遺伝子を作成又は改変するために適用された。しかしながら、第3世代ヒトワクチンであるDNAワクチンの分野への適用は少ない。多くの専門家は、遺伝子ワクチンに遺伝子シャッフリング技術が成功すれば、がん、自己免疫疾患、及びヒトの健康に深刻に有害な感染症のような疾患に広く適用できると予想しているが(非特許文献8〜10)、実質的進歩を示す関係文献、特許はない。
【0003】
遺伝子ワクチンは1990年代に進歩した新しい免疫理論と技術を代表し、弱力化したウィルスワクチン及びサブユニットワクチンに次ぐ第3世代のワクチンである(非特許文献11)。遺伝子ワクチンの技術は、外来性のタンパク質をコードする塩基配列を持つプラスミドDNAを体内に直接注入し、体内で外来性タンパク質を直接発現させ、免疫応答を誘導させることから成り立つ。遺伝子ワクチンは旧来のワクチンと比較すると、長期にわたる免疫応答、体液性免疫と細胞傷害性のT細胞応答を同時に引き起こすこと、調製の簡単なこと、利便性、低価格、抗原の安定性、及び移送の便利さ、等々多くの利点を有する。遺伝子ワクチンは、組み換え型サブユニットワクチンで証明された安全性、及び一般的な免疫応答の誘導に対する弱力化したウィルスが持つ高い効率を有するばかりでなく、体内に特異的な免疫応答を誘導する。現在に至るまで、遺伝子ワクチンは、新生児のアレルギー応答や免疫寛容の治療ばかりではなく、ウィルス、バクテリア、及び原虫による感染症、及び癌などの治療に対しても広く使われてきた。インフルエンザ、AIDS、狂犬病、B型肝炎、結核症、マラリア及びリーシュマニア症の治療に対しても有益な進歩がある(非特許文献12)。ヒトの健康に深刻な影響を持つ、マラリア原虫、HIV及び他の非常に変異性に富むウィルスに関しては、非常に有効なワクチンは存在しない。
【0004】
ワクチン研究によれば、高い変異性を持つ病原体に対しては、様々な期間、様々な抗原を用いることが必要とされている(非特許文献13)。複数抗原のワクチンに対して、多くの報告及び特許があり、これらは複数の抗原をもつ単一の合成又は組み換えワクチン、及び多価エピトープのタンパク質ワクチン、又は限られた種類のこのような合成又は組み換えワクチンの組み合わせに集中している。更に、ポリペプチドワクチンの合成は非常に高価であり、このことが実際的な応用を妨げている。今や、幾つかの文献により、多価エピトープのキメラ遺伝子ワクチンが報告されているが、多価エピトープ遺伝子間の人工的及び単一キメラパターンに重点が置かれおり、ポリペプチドワクチンより優れた免疫防御効果は達成されてない。多価組み換えDNAワクチンの構築の際、Plasmodium falciparum(MSA−1,NKND及びCST3)の3個の抗原性エピトープが選ばれたことを考慮し、本発明の発明者等は、前もって設計した組み合わせパターンに従い、多価エピトープ遺伝子の異なった構築と組み合わせを行い、多価エピトープの組み合わせには最適の集合があることを見出した(非特許文献14)。この結果によれば、数個のエピトープ(3以下)の組み合わせの場合は、最適な組み合わせは、個々の集合と構築から手作業で得ることができることが分かった。しかしながら多くのエピトープ(3以上)の組み合わせには多くの可能性があり、上記の方法では複雑で、費用がかかり、多くの作業を必要とするので、実際上集合及び構築を行うことは非現実的である。従って、如何に有効に多価エピトープ遺伝子を設計し、病原体の多変異性を克服するかということが遺伝子ワクチンの開発に要求される(非特許文献15〜18)。
【0005】
ヒト健康に危険な影響を与える悪性マラリアを引き起こすPlasmodium falciparumの生活環(ライフサイクル)は複雑であり、ヒトにおける無性生殖と有性生殖、及び蚊における有性生殖とスポロゾイト形成からなる4段階を有する。ヒトにおいて、赤血球外(肝)及び赤血球段階があり、蚊において生殖母細胞及びスポロゾイト段階がある。Plasmodium falciparumはこの様に複雑な生物学的な形質を持つので、宿主及び医薬品の免疫防御に対し非常に変異性の高い応答を示し、その結果単一の防御的抗原性ワクチンではマラリアに対し有効ではない。
【0006】
【非特許文献1】Huimin Z.他、Nucleic Acids Research,25(6),1307-1308(1997)
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【非特許文献3】Miho K. 他、Gene,236,159-167(1997)
【非特許文献4】Huimin Z.他、Nature Biotechnology,16,258-261 (1998)
【非特許文献5】Marc O.他、Nature Biotechnology,17,1205-1209(1999)
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【非特許文献9】Phillip A P.他、Current Opinion in Biotechnology,8, 724-733(1997)
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【非特許文献17】Hoffman S.L.他、Dev Biol,104,121-32(2000)
【非特許文献18】Li M.他、Chin Med J(Engl),112(8),691-7(1999)
【非特許文献19】Jiang Y.他、Chin Med J(Engl),112(8),686-90(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラスモディウムによる臨床的症候は、主に宿主の赤血球細胞内の無性生殖に依っている。赤血球段階ワクチンは、プラスモディウムの特徴的な病原段階を直接狙って設計したものである。マラリアワクチンは、弱力化されたスポロザイト周囲ワクチン、サブユニットワクチン及び合成ペプチドワクチンから成り立つが、多くのワクチンが標的とする多くの抗原が充分な防御効果を持たないのでこれらのワクチンは成功してない。従って、同業者の間で良く認められている様に、望みの防御効果を得るためには、マラリアワクチンを構築する際、多段階で多価のエピトープの組み合わせが必要である。しかしながら、手作業で多段階で多価のワクチンを構築する際、ポリペプチドをコードする遺伝子の量と、連結次数を決める事は困難であり、またエピトープDNAワクチンによる体液性免疫の誘導は、一般的に満足のいくものではなく、これらは解決しなければならない問題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1態様としては、多価エピトープキメラワクチンの調製方法の提供であり、この方法は、新しい遺伝子ワクチンを構築するために、ランダムライブラリーにおける遺伝子再結合を用いるもので、以下の諸工程から成る:
a)それぞれが、対象である抗原の単一エピトープをコードする、多数の核酸分子を選択し、合成し、ベクターにクローニングする工程、
b)アイソコーダマー連結を用いて、工程a)で得たベクター中にランダムに連結した2価エピトープをコードする核酸分子を構築する工程、
c)工程b)で得た2価エピトープをコードする核酸分子から、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てる工程、
d)異なる長さ域に従って多価エピトープキメラ遺伝子を抽出し、精製し、増幅し、その後、これらの多価エピトープキメラ遺伝子を発現ベクターにサブクローニングし、原核宿主に形質導入し、夫々対応する長さ域の多価エピトープキメラ遺伝子発現ライブラリーを得る工程、
e)各発現ライブラリー内の多価エピトープキメラ遺伝子の差異を検知して、遺伝子ライブラリーの高い多様性を確認する工程、
f)各多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーを用いて動物を免疫し、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー中の遺伝子発現産物の免疫原性を検出する工程、
g)工程e)及び工程f)の結果に従い、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを含む1ないし2以上の遺伝子ライブラリーを決定する工程、及び
h)高処理能力免疫化学的方法により、工程g)で得た遺伝子ライブラリーから高い免疫原性を持つ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングする工程。
【0009】
本発明の方法によれば、異なるエピトープ間の直列再結合の不均一性を増すために、工程c)において異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てることを、以下の2操作を同時に行うことによって実行することができる:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応、及び2)ランダムに組み立てるためのベクター内のアイソコーダマー連結。
【0010】
本発明の1態様によれば、本発明は本発明の方法により調製した多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを提供するものであり、前記の多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンは、Plasmodium falciparumに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の原理は図1に説明されている。
本発明の方法によると、所定の抗原は様々な感染症、腫瘍、あるいは自己免疫疾患に関係する如何なる抗原でも良い。抗原エピトープの多くの配列は、本技術分野において既知であり、これらの配列に基づき、工程a)において、各核酸分子が所定の抗原の単一エピトープをコードする多数の核酸分子を合成することができる。
【0012】
所定の抗原の単一エピトープをコードする核酸分子をベクター中にクローン化した後、アイソコーダマー技術を用いる本発明の方法により、単一エピトープをコードするこれらの遺伝子をランダムに組み立て、2価エピトープ遺伝子を作成する。本技術分野において様々なアイソコーダマーが既知であり、これらを本発明の方法において用いる。
【0013】
本発明の方法によると、2価エピトープを得た後、これらをランダムに組み立てて多価エピトープキメラ遺伝子を作成しなければならない。異なるエピトープ間の直列再結合の不均一性を増すために、本発明の一つの好ましい態様として、以下の2操作を同時に行い、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てた:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応;及び2)ベクター中のアイソコーダマー部位を利用したランダムな連結。
【0014】
このようにして得られた、ランダムに組み立てられた異なる長さを有する多価エピトープキメラ遺伝子を様々な長さ域に従い分離したが、この長さ域は要求に従い設定されるものであり、また通常数百から数千塩基対の長さである。本発明の1態様において、夫々300,800,1200,2000及び4000bpを持つ5群のランダムに組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子を分離した。当業者は好みの長さ域を設定できると考えられる。次に、これらの分離した多価エピトープキメラ遺伝子群を、精製し増幅した後、本技術分野で既知の適切な発現ベクターにクローン化することができて、また適切な宿主細胞を形質転換のために用いて、多価エピトープキメラ遺伝子の幾つかの発現ライブラリーを得ることができる。
【0015】
本発明によると、多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーを得た後、ライブラリーの多様性及びライブラリーの発現産物の免疫原性を検出し、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンから成立する1あるいは2以上の遺伝子ライブラリーを更なるスクリーニングのために選択し、多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを作成する。ライブラリーの多様性が85%以上であることが好ましい。適切な組み立てを決定する基準は、ライブラリーの高い多様性と発現産物の高い免疫原性である。更に、特異的免疫型、及び検定したライブラリーによって体内に誘導され作られたサイトカイン、又は動物モデルで引き起こされた交叉防御効果等の、所定の抗原エピトープに関係する免疫的特性を、この基準に含めても良い。
【0016】
本発明の実施例において、発明者等は、Plasmodium falciparum(表1)に対し高い免疫原性を持つことが文献的に証明されている抗原エピトープアミノ酸配列を選択し、ヒト特異的コードンを用いて、エピトープアミノ酸配列に対応するコード配列を作成した(表2及び3)。14個のエピトープ断片は繰り返されており、ランダムに結合することで異なる長さを有する人工的抗原ライブラリーを構築できて、ここで各ライブラリーは、何千という異なる組み合わせの人工的抗原を含む。マウスを多価エピトープ遺伝子ライブラリーで免疫した後、血清中に非常に高レベルの特異的抗体を得た。Plasmodium yoeliiマウスモデルを用いて、これらの人工的抗原は交叉免疫防御を引き起こすことが示され、このことは本発明の方法により構築した発現ライブラリーは、現存のライブラリーの難点を克服し、また理想的多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの基礎を築いたことを示す。実施例6のライブラリーを使った最初のスクリーニング結果から、高処理能力免疫化学的方法により高い免疫原性を有する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンが得られることが分かった。
【0017】
cDNA発現ライブラリーとは異なり、本発明に記載されたキメラ遺伝子発現ライブラリーにより個体を免疫することの利点は、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーはcDNA発現ライブラリー利用に伴う非エピトープDNA配列の干渉を持たず(Shibui A.他、Res Commun Mol Pathol Pharmacol,109(3-4),147-57(2001);Smooker P.M.他、Vaccine,18(23),2533-40(2000);Johnston S.A.他、Vaccine,15(8),808-9(1997))、また遺伝子ワクチンの安全性を改善している、と言うところにある。また、当業者は、遺伝子機能の解析を容易にするために、遺伝子免疫への標的を選択でき、より早く遺伝子ワクチンを調製でき、また本当に防御効果のあるライブラリー内の遺伝子を認識できる。
【0018】
以下の実施例において、悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを調製した。これらの実施例は、発明を説明することだけを意図したものであり、発明の範囲を制限するものではない。当業者は本発明の方法は、悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの調製に限られるものではなく、様々な感染症、腫瘍又は自己免疫疾患に対する遺伝子ワクチンの調製に使うことができると理解する。
本発明を更に以下の図及び実施例によって詳しく説明する。
【実施例1】
【0019】
<Plasmodium falciparumのエピトープ遺伝子断片の機能的断片のクローニングと配列解析>
1.異なる生活環におけるB細胞及びTh細胞のエピトープをコードするDNA配列の修飾。
Plasmodium falciparumの増殖をより有効に阻害し、マラリアのPlasmodium yoelii動物モデルにおける防御をテストするために、Plasmodium yoeliiの様々な生活環で見出されるものと相同なPlasmodium falciparumの様々な生活環で見出される9個の表面抗原MSP−1,RESA,MSA−2,AMA−1,EBA−175,LSA−1,CS.T3,NKND及び MAg−1から14個のエピトープを、報告された文献から選択したが(表1)、ここでエピトープのアミノ酸配列に対応する塩基配列を、ヒト特異的コードンを用いて作成した(表2及び3,塩基配列は太活字で表す)。
【0020】
2.エピトープ遺伝子断片のためのプライマーの設計と合成。
a)上記工程1で作成したエピトープ遺伝子配列に基づき、完全な相補的3’末端を持つ2個のプライマーを設計した(表2及び3,相補的配列は2個のプライマー間の重なり配列である)、またBclI及びBamHIのアイソコダマー部位を、夫々、エピトープ遺伝子配列に対する上流及び下流プライマーに導入した。
b)エピトープ連結の立体的自由度を増すために、様々に連結した抗原エピトープのBclI及びBamHI連結部位の近傍にGLy−Pro−Gly−Pro(G−P−G−P)(配列番号1)の構造を導入した。
c)より長いエピトープ遺伝子断片(E3(MSA2)及びE6(MSA1)のような)に対しては、2度のアニーリングと伸長により遺伝子の全長を得るために4個のプライマーを用いた。
【0021】
3.エピトープ遺伝子断片のクローニングと配列解析。
a)2個の相補的なプライマー間で一致した配列を、94℃,30秒間,45−60℃(異なるプライマーのTmに依存する),30秒間及び72℃,40秒間,40サイクルと言うPCR条件下でアニール及び伸長を行った。
b)増幅産物を1/10容積の10M酢酸アンモニウム及び2倍量の純アルコールにより沈殿させ、その後超純度水に溶かし、BclI及びBamHIで消化し、等量のフェノール処理を行い、12000rpm、5分間遠心した。上清を1/10容積の3M酢酸ナトリウムと2倍量の純エタノールにより沈殿させ、超純度水に溶かした。
c)消化した産物を、同じ酵素で消化したベクターVR1012(Vical INc)に連結し、その後E.coliSK383株(GATCメチル化欠損株)に形質導入した。BclI及びBamHI切断により標的クローンを選択した。
d)標的クローンを、5’−CCAGACATAATAGCTGAC−3’(配列番号2)の配列を持ち、またベクターVR1012のマルチクローニング部位の上流配列でもある、プライマーC038Pを用いて配列決定した。
【実施例2】
【0022】
<Plasmodium falciparumのエピトープ遺伝子のランダムな組み立て>
1.ランダムに組み立てた2価エピトープ遺伝子の構築。
非常に相同性の低いエピトープ遺伝子間の一致した領域を作り出すために、HindIII部位と共にBclI及びBamHIのアイソコーダマー部位を使い、実施例1の工程3でクローン化した個々の単一エピトープ遺伝子を連結して2価エピトープ遺伝子を作った。簡単に説明すると、連結のランダム化と効率改良のために、様々な単一遺伝子を等量混合し、2等分した。一方をBclI及びHindIIIで切断し、他方をBamHI及びHindIIIで切断した。エピトープ遺伝子を含む2個の消化物からの断片を混合し、連結し、その後E.coli SK383株に電気形質導入し、2価エピトープ遺伝子のランダム集合を含むクローンを得た。
【0023】
2.ランダムに組み立てた異なる長さの多価エピトープ遺伝子の構築。
異なるエピトープの再結合の不均一性を増すために、ポリメラーゼ連鎖反応及びアイソコーダマーのランダム連結という2つのプロトコールを用いて、ランダムに組み立てた2価エピトープ遺伝子を構築し、最後にこれら2つのプロトコールからの産物を混合し、異なる長さを持つ5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリー(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)を構築した。
a)ポリメラーゼ連鎖反応による構築
上記工程1に述べた2価エピトープ組み換えプラスミドを混合し、その後BclI及びBamHIで切断し、低融点アガローズゲル上で電気泳動に付した。小断片をDNA抽出キット(Promega)を用いて回収し、濃度を知るためにOD260/OD280を測定した。
【0024】
プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応の反応システム(50μl)を下記の構成要素により調製した:
混合2価エピトープDNA 1μl
ExTaq DNA polymerase(5U/μl) 2U
10X緩衝液 5μl
dNTP 8μl
d2H2O 36μl
【0025】
反応条件(25,35,45,55,65,75又は85サイクル)は下記の通りである。第1の工程:94℃,3分間;94℃,30秒間;42−55℃,30秒間;72℃,30秒間;25サイクル;及び72℃,10分間。第2の工程:94℃,3分間;94℃,45秒間;50−55℃,45秒間;72℃,30秒間,1秒間/サイクル;10サイクル;及び72℃,10分間。プライマーフリー増幅産物の1%アガローズゲル電気泳動を行い、結果を第2図に示すが、これにより組み立てた多価エピトープ遺伝子断片の長さはサイクル数の増加に伴い増加した。異なる長さの5個のDNA断片(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)をゲルから回収し、上流プライマー5’−ACATCATGCCTGATCA−3’(配列番号2)及び下流プライマー5’−TTAGCTAGCGGATCC−3’(配列番号4)を用いて、従来型のPCR反応を行った。反応系はプライマーフリーPCRと同じであり、工程:94℃,3分間;94℃,30秒間;50℃,30秒間;72℃,30秒間;30サイクル;及び72℃10分間を用いた。 増幅産物を精製し、Wizard PCR Prep Purification Kit (Promega)を用いて濃縮し、BclIで切断し、EcoRV及びBclIで切断したベクターVR1012に連結し、連結混合物をE.coliSK383株に電気導入した。方法と結果を図1及び図2に示す。
【0026】
b)アイソコーダマーを用いたランダムな連結
上記工程1の2価エピトープ組み換えプラスミドを混合した。BclI/BamHIで切断した小断片(エピトープ遺伝子を含む)をBamHI/HindIIIで切断した大断片(エピトープ遺伝子を含む)と連結し、その後連結混合物を感応細胞SK383に電気導入し、ランダムに組み立てた4価エピトープライブラリーを作成する。同様に、異なる長さを持つ多価エピトープ遺伝子の5個のランダムライブラリー(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)を構築した。
【実施例3】
【0027】
<Plasmodium falciparumの多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの構築>
1.夫々、Kozak配列と終結コードンを持つ真核生物発現ベクターVR10AとVR10Tの構築。
真核生物Kozak配列を含むプライマー(1A:5’−GATCACCATGGAATTCG−3’ (配列番号5)及び1B:5’−GATCCGAATTCCATGGT−3’ (配列番号6))を設計し、自己アニールと伸長を行わせた。PCR産物をBclI及びBamHIで切断し、E.coliSK383株を受容菌株とするベクターVR1012にクローン化し、これにより組み換えプラスミドVR10Aを得ることができ、Takaraバイオテク会社に配列決定を委託した。
【0028】
次ぎに行うランダム構築後の多価エピトープ遺伝子の機能解析を容易にするために、終結コードンTAATAAをエピトープE6(MSA−1)の下流に置いた(表2及び3,遺伝子E6のプライマー6D)。プライマー6A,6B,6C及び6Dを合成し自己アニールと伸長を行わせた。PCR産物をBclI及びBglIIで切断し、受容菌株をE.coliSK383株とするベクターVR1012にクローン化し、これにより組み換えプラスミドVR10Tを得ることができ、Takaraバイオテク会社に配列決定を委託した。
【0029】
2.異なる長さの多価エピトープ遺伝子の5個の発現ライブラリーの構築。
a)実施例2の工程2で調製した異なる長さを持つ5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーからのプラスミドDNAをBclI及びHindIIIで切断した。得られた断片(エピトープ遺伝子を含む)を回収し、夫々をBamHI及びHindIIIで切断したプラスミドVR10A(開始コドンを含む)に連結し、その後組み換えプラスミドを得るために感応細胞SK383に電気導入した。
b)同様に工程a)における5個の組み換えプラスミドは、BclI/HindIII及びBamHI/HindIIIで切断し、終結コドンを持つ上記工程1のベクターVR10TのDNA断片と連結し、図4に示す様に、異なる長さの多価エピトープ遺伝子(夫々、約300,800,1200,2000及び4000bp)の5個の発現ライブラリー(夫々、No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5)を構築した。
【0030】
3.多価エピトープキメラ遺伝子の発現ライブラリーの遺伝子多様性の解析。
No.3及びN0.4ライブラリーについて一本鎖高次構造多型(PCR−SSCP)を調べた。その結果、図5に示す様に、両ライブラリーのキメラ遺伝子の多様性は95%(夫々、24/25及び25/25)以上であった。この検査の工程を以下に記す:
a)ライブラリーから無作為に25クローンを選択し、ベクターVR1012のマルチクローニング部位の上流配列のプライマー(C038P:5’−CCAGACATAATAGCTGAC−3’(配列番号7))、及びベクターVR1012のマルチクローニング部位の下流配列のプライマー(C039P:5’−GATGGCTGGCAACTAGAA−3’(配列番号8))を用いてPCR(増幅条件:94℃,30秒間;55℃,30秒間,72℃,1分間,30サイクル)を行った。増幅産物を沸騰水中で10分間インキュベートし、10分間氷上で冷却し、その後10X試料緩衝液と混合した。
【0031】
b)上記試料を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、5V/cmで泳動した。電気泳動後、ゲルはガラス上に固定した。
c)ゲルの付いたガラスをペトリ皿に置き、固定緩衝液(10%氷酢酸v/v)を加え、ゲルを少なくとも20分間水平に浸けゆっくり振とうさせた。固定後、固定緩衝液を回収し、現像後の固定液として用いた。
d)ゲルを再蒸留水で3回濯いだ。
e)染色液(2gAgNO3、3mlの37%ホルムアルデヒド/2Lの脱イオン水)を加えて、ペトリ皿を30分間ゆっくり振とうした。
f)ゲルを再蒸留水で20秒間濯いだ(注意:濯ぎ時間は余り長すぎない様)。
g)予冷した現像液(60gNa2CO3、3mlの37%ホルムアルデヒド、400μlの10mg/mlチオ硫酸ナトリウム溶液を2Lの脱イオン水に加え、温度が10−12℃になるまで水槽に置いた)を加え、ゲル中のバンドが見えるまでペトリ皿をゆっくり振とうさせた(通常5−6分間)。
h)現像反応を中止させるために等量の固定液をペトリ皿に加え、ペトリ皿を2−3分間ゆっくり振とうした。
i)ゲルを再蒸留水で3回濯いだ。
j)ゲルを空気乾燥させ、ランプ下で検出した。
【実施例4】
【0032】
<5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーの免疫原性の検出>
1.異なるライブラリーの多価エピトープ遺伝子を持つ組み換えプラスミドの調製
実施例3の工程2で構築した、異なる長さを持つ多価エピトープ遺伝子ライブラリー(No.1,No.2,No.3,No.4及びNo.5)を含むバクテリアを、夫々プレートから洗い入れ、対応する抗生物質の入ったLB液体培地中で培養した。その後、対応する抗生物質の入った1LのLB液体培地に、1:100の割合で少量の接種菌を加えて接種し、バクテリアは対数期増殖に至るまで培養した。バクテリアを集菌した。プラスミドをWizard Megaprepsプラスミド抽出キット(Promega)を用いて抽出した。DNA濃度はDU70紫外分光器(Beckman)を用いてOD260/OD280から計算した。
【0033】
2.多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーで免疫したマウスの抗血清の調製。
上記工程1で得た遺伝子ワクチンライブラリーの組み換えプラスミドの各種DNA100μgを、無菌化した生理食塩水を使って、各種DNA溶液が等量になるよう調製した。Balb/cマウスのグループを、各グループ3匹の動物を使い、等量の上記DNA溶液を両足の上腕骨(大腿骨)四頭筋に注入し免疫した。対照として空のベクター及びDNAなしのブランクを使った。免疫は2週間ごとに合計3回追加免疫を行った。免疫後、各グループから血液試料を摂り出し、ポリクローナル抗血清を集めた。
【0034】
3.酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)による異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより作られた抗体レベルの検出。
陽性対照、陰性対照及びブランク対照存在下に、コーティング抗原として混合エピトープ合成ペプチドを用いた。試験する抗血清の二倍稀釈系列(400,800,1600,3200,6400,12800,25600及び51200の様な)を用いた。図6に示す様に、異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーで免疫した後の抗血清の最高稀釈(力価)をELISAで検知した。この結果、異なる長さの遺伝子ライブラリーは異なる免疫原性を有し、高力価の抗体が産生された。検定のそれぞれの工程を以下に記す:
【0035】
a)コーティング:単一又は混合したエピトープの合成ペプチドをコーティング抗原として用い、0.1M炭酸塩、pH9.2のコーティング緩衝液で望みの濃度(200ng/100μl/ウェル)まで稀釈した。ピペットを用いて、各ウェルに100μl加えた後、加湿環境下に4℃一晩又は37℃4時間プレートを靜置した。プレートを傾けPBSTで5回濯いだ。
b)ブロッキング:200μlの1%BSAを各ウェルに加え、プレートを37℃1時間インキュベートした。
c)プレートをPBSTで5回濯いだ。
d)検査するマウスから得た抗血清の添加:PBS溶液で検査する抗血清の2倍稀釈系列を作り、各濃度の稀釈抗血清100μlを各ウェルに加えたもの各3検体準備し、4℃一晩インキュベートした。
e)プレートをPBSTで5回濯いだ。
f)ホースラッディシュペルオキシダーゼでラベルした抗体、即ち馬−抗マウスIgG−HRPの添加:100μlのラベルした抗体のPBS/BSA(1:1000)稀釈液を各ウェルに添加し、加湿環境で37℃2時間インキュベートした。
g)プレートをPBSTで5回濯いだ。
h)発色:各ウェルに100μlの基質発色緩衝液を加え、プレートを室温で10分間靜置した。
i)反応停止のために各ウェルに50μlの1M H2SO4を加えた。
j)450nmの吸光度をLabsystems Genesis V3.03系で読み、結果を解析した。
【0036】
基質発色緩衝液(pH5.0)
溶液A:1.92gのクエン酸塩(無水)をddH2Oに加え最終容積を100mlとした。
溶液B:7.16gのNa2HPO4(12結晶水を含む)をddH2Oに加え最終容積を100mlとした。
2.43mlの溶液A、2.57mlの溶液B及び5mlの水を混合し、10mlのリン酸−クエン酸緩衝液、pH5.0を作った。
発色反応の前に、新鮮な発色緩衝液を調製するために、0.015mlの30%過酸化水素及び0.004gのTMBを10mlのリン酸−クエン酸緩衝液に加えた。
【0037】
4.天然型タンパク質を異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーで産生したポリクローナル抗血清で認識するための間接免疫蛍光検定(IFA)の検出結果。
異なる多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清が、Plasmodium falciparum 及びPlasmodium yoeliiの天然型タンパク質を認識するか否か決定するために、間接的免疫蛍光検定(IFA)を用いた。図7及び8に結果を示す様に、陽性対照存在下で、抗体の認識可能な最大稀釈を決定し、また共焦点顕微鏡を用いて抗体の結合部位を決定した。この検定の個々の工程を以下に記す:
【0038】
1)Plasmodium falciparumの天然型タンパク質の認識。
a)赤血球段階Plasmodium falciparum 3D7(又はFCC1)(感染率約2%)を含む赤血球細胞を均一にスライド上に広げ、スライドを室温で空気乾燥させた。
b)100%アセトンを用いて10分間で細胞を固定した。
c)スライドを室温で空気乾燥させ、蛍光マークペンでマークし、PBS中1%BSAを用い30分室温処理でブロックを行った。
d)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
e)異なる稀釈率(1:500,1:1000,1:2000,1:4000)の一次抗血清(上記同様マウスからの抗血清)を加え、スライドを加湿環境下、室温で30分間インキュベートした。MAbM26−32を陽性対照として用いた。
f)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
g)1:100に稀釈したFITCでラベルした馬−抗マウスIgGを加え、スライドを加湿環境下で37℃30分間インキュベートした。
h)スライドを3回、各10分間、PBSで濯ぎ、空気乾燥した。
i)50%グリセロールを用いてスライドをカバースリップで封じ、蛍光顕微鏡又は共焦点蛍光顕微鏡を用いて視覚化した。
【0039】
2)Plasmodium yoeliiの天然型タンパク質の交叉認識。
a)Plasmodium yoelii(感染率約50%保有)を含む赤血球細胞を均一にスライド上に広げ、スライドを室温で空気乾燥した。
b)他の工程は、上記1)項のPlasmodium falciparumの天然型タンパク質の認識の場合と同じである。
【0040】
5.様々な多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清のウェスタンブロットによる検出。
様々な多価エピトープ遺伝子ライブラリーにより産生した抗血清がPlasmodium falciparumの天然型抗原を認識することを示すために、実施例4,工程2の抗血清を稀釈し、スパニン処理したPlasmodium falciparumからSDS−PAGEで抽出した寄生体タンパク質を用いたウェスタンブロットに付した。本実施例では多価エピトープライブラリーNo.3を用い、得られた結果からライブラリーNo.3の遺伝子ワクチンで産生した抗血清は、様々なサイズの10個以上の寄生体タンパク質を認識し、高濃度の抗体を有することが分かった。結果を図9に示した。本実施例の個々の工程は下記の通りである:
【0041】
a)試料の処理:1又は2培養皿のPlasmodium falciparum 3D7株を遠心で集め、PBSで2回洗浄し、赤血球細胞を壊すために最終濃度0.2%のスパニン処理を行った。その後、沈殿物を2回PBSで洗浄し、PBSに可溶化し、10X試料緩衝液と混合し、沸騰水槽中で10分間インキュベートした。
b)免疫ブロッティング:処理した試料を分離のためにSDS−PAGE電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に電気的に移行(electrotransfer)させ、その膜を3%BSAにより室温1時間ブロックし、PBSで3回濯いだ。次ぎに、BSAで稀釈した遺伝子ライブラリーで産生した一定量の抗血清を加え、膜を室温で1時間インキュベートした。膜をPBSで3回洗浄後、アルカリホスファターゼでラベルした2次抗体である馬−抗マウスIgG(Ap−IgG)を加え、室温で1時間インキュベートした。膜を3回PBSで洗浄した。最後に膜をアルカリホスファターゼ緩衝液(100mmol/L Tris−HCl(pH9.5),100mmol/L NaCl,5mmol/L MgCl2)で1度濯いだ。
c)発色と発色の停止:5mlのアルカリホスファターゼ緩衝液につき33μlのニトロブルーテトラゾリウム(70%ジメチルスルフォキシド中に50mg/ml)及び16.5μlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インド−リル−ホスフェート溶液(100%ジメチルスルフォキシド中に10mg/ml)を加えた。10分後、停止緩衝液(20mmol/L Tris−HCl(pH8),5mmol/L EDTA)を加えて反応を停止させた。
【実施例5】
【0042】
<異なるライブラリーからの多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンによるP.yoeliiに対する交叉防御>
悪性マラリアに対する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをより効率よく構築するために、発明者等は本発明の遺伝子ワクチンのP.yoelii動物モデルにおける防御効果をテストした。その結果、5個の多価エピトープ遺伝子ライブラリーは全て、程度は異なるが、防御性があることを示し(図10)、このことがPlasmodium falciparumに対する人工的にシャッフルした遺伝子ワクチンの防御効果に関するin vivo防御モデルに対する基礎を築いた。本実施例の各々の工程を以下に記す:
a)P.yoeliiの試料を液体窒素から取り出し、37℃水槽中で解凍した。試料500μlをBalb/cマウスの腹腔内に注入した。数日後、血液試料を摂り、スライド上に塗布し、メタノールで固定し、ギムザ染色した。感染率を顕微鏡下で計数した。
b)P.yoeliiに感染したマウスの血液を尾から集め、CPBS緩衝液(NaCl 3.2g,KCl 0.08g,Na2HPO4(12H2O 1.16g,KHPO4 0.08g,クエン酸ナトリウム 3.8gを水に溶かし(pH7.2)500mlに調製)中に落とした。寄生体に感染した赤血球細胞の濃度を血球計算板で計数した。
c)実施例4の工程2で免疫したBalb/cマウス腹腔に上記の工程で得た血液をマウス当たり2X105感染赤血球の投与量で注入した。
d)3日ごとに、マウス尾から抗血清を集め、スライド上に塗布し、感染率を計算した。更に、対照及び実験群の生存率を観察した。
【実施例6】
【0043】
<高処理能力免疫化学的方法により得た高い免疫原性を有する多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンのin vivoテスト>
多価エピトープ遺伝子ライブラリー(実施例4)のin vivo免疫原性テスト、及びP.yoelii感染に対する防御テストの結果(実施例5)から、高レベルの免疫応答及び防御力を有する多価エピトープ遺伝子ライブラリーを選択した。高処理能力免疫化学的方法のスクリーニングプロトコールに従い、高い免疫原性を有する幾つかの陽性クローンを得ることができた。陰性遺伝子クローン及び無作為に選んだ空ベクターの存在下で、原核生物発現に対するウェスタンブロットによる検出を行い、マウスの免疫応答に関与するサイトカインCD4及びCD8を検査した。
【0044】
1.原核生物発現物のウェスタンブロット検出
この結果により、発現した対応するタンパク質をスクリーニングすることで、高い免疫原性のある遺伝子SP312及びSP352を得たことが分かる。これら2個の遺伝子を用いて産生した抗体を高稀釈した後でも、尚ウェスタンブロッティングによって陽性のハイブリダイゼーションバンドが検出されるが、低い免疫原性の遺伝子SN33,SN34及びSN36及び陰性対照の空のベクターを用いた場合、シグナルのあるバンドは検出されなかった。このことは、多価エピトープ遺伝子SP312及びSP352は、遺伝子SN33,SN34及びSN36に比べ、高い力価の抗体を産生することを示す(図11)。
【0045】
2.マウスの免疫応答に関与するサイトカインCD4及びCD8の検出。
得られた陽性(高免疫原性)遺伝子クローンSP312,SP352及びSP462をin vivo免疫により確認した。陰性(低免疫原性)遺伝子クローン及び空ベクターの存在下で、Balb/cマウスを3回免疫し、脾臓リンパ球を採取し、フローサイトメトリーを用いてサイトカインCD4及びCD8の検出を行った。この結果、陽性(高免疫原性)遺伝子クローンSP312,SP352及びSP462は顕著にサイトカインCD4の産生、及び一定レベルのサイトカインCD8の産生を誘導したが、ここで陽性多価エピトープ遺伝子SP312は、SP352又はSP462より著しく高いレベルのサイトカインを産生した。これに対し、陰性多価エピトープ遺伝子は、空ベクターと同じ効果を示し、より高い免疫原性をもつ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンは、高処理能力免疫化学的方法によって得ることができることを示した(図12)。
【0046】
表1 本発明で用いた異なる生活環におけるPlasmodium falciparumの抗原のB−及びTh−細胞エピトープのアミノ酸配列。
【表1】
【0047】
表2.エピトープ遺伝子クローニングのためのプライマー配列(その1)
【表2】
【0048】
表3.エピトープ遺伝子クローニングのためのプライマー配列(その2)
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】多価エピトープ遺伝子のランダムな組み立てを示す概念図である。図において、1:幾つかの単一エピトープ遺伝子の取得;2:ランダムな組み立てによる2価エピトープの構築;3:プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応;4:異なる長さのDNA断片の抽出と精製、及びキメラ遺伝子ライブラリーの樹立。
【図2】プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応を用い、異なる条件下でランダムに構築した多価エピトープ遺伝子のグラフであり、以下の様にして得たものである:鋳型としてランダムに集めた2価エピトープ遺伝子の混合物の使用(0.5μg/μlの濃度の試料を夫々、0.5μl,1.0μl,及び2.0μl)、また50μlの系において、プライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応は、夫々25,35,45,55,65,75,及び85サイクル行った。この結果によると、鋳型量が0.5(l(250ng)以下の場合サイクル数が増加するに従い、主要増幅産物のサイズは増加した。65−75サイクルを使うと、長さは約2kbであり、85サイクル以上では、断片長は4kb以上であった。
【図3】ある真核発現ベクター内の多価エピトープキメラ遺伝子の遺伝子構造を示す。遺伝子発現分析のために、共通のエピトープ配列(即ち、E6(MSA−1))を各多価エピトープ遺伝子の下流に挿入できる。
【図4】異なる多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー内の遺伝子長の比較を示す。ここでM,(/HindIII;1,No.1ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;2,No.2ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;3,No.3ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;4,No.4ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子;5,No.5ライブラリー/EcoRI+BglIIの遺伝子。
【図5】異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーの遺伝子の多様性解析を示す。AはNo.3遺伝子ライブラリーの遺伝子の構造的多様性は、96%(24/25)であることを示し、BはNo.4遺伝子ライブラリーの遺伝子の構造的多様性は、100%(25/25)であることを示す。両ライブラリーより25組み換えクローンをランダムに選択し、ベクターVR1012のマルチクローニングサイト上流、下流のプライマーによるPCRを行った。増幅産物を100℃、10分間変性し、10分間氷上に置き、その後ポリアクリルアミドゲル電気泳動(10%)のための10X試料緩衝液と混合し、バンド間の差異を分析した。
【図6】異なる長さの遺伝子ライブラリーの多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの混合物で免疫したマウスにおける抗体レベルを示す。8エピトープ(E2(NKND),E3(MSA−2),E5(EBA−175),E6(MSA−1),E7(LSA−1),E8(CS.T3/CSP),E9(MSP−1)及びE11(AMA−1))を混合し、ウェル当たり200ngでミクロプレートの表面を覆った。5個の混合遺伝子ライブラリーを用いて、抗血清を得るために、100μgDNA量でデンドリマーPAMAN G9(1:6.5,w/w)を用いてBalb/cマウスを免疫した。OD450当たりの抗体値を測定するために抗血清を2X稀釈した。陽性値は対照値の少なくとも二倍の値を持つ。
【図7】異なる長さを持つライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンにより作られた対応する抗体の稀釈物中のIFA検出を示す。5個の遺伝子ライブラリーを用いてBalb/cマウスを2度100μgDNAの濃度で免疫し2X稀釈の抗血清を得た。陰性対照を標準として用い、陽性値は対照の蛍光強度より著しく異なる蛍光強度を有した。
【図8】共焦点顕微鏡の結果を示す。No.4ライブラリーの混合エピトープ遺伝子ワクチンに対する抗体は、異なるプラスモディウムの天然型の抗原を認識することを示す。A.Plasmodium falciparum 3D7の血液の塗布標本;B.Plasmodium falciparum FCC1の血液の塗布標本;C.Plasmodium yoeliiの血液の塗布標本。
【図9】ウェスタンブロットの結果を示す。No.3ライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンに対する対応する抗血清は、プラスモディウム3D7株の天然型の抗原を認識することを示す。1.Spanin非処理の3D7株の培養;2.Spanin処理の3D7株の培養;3.対照としての赤血球細胞培養;M.低分子量マーカー(97,66,45,30,20.5,14.4kDa)。この結果は、No.3ライブラリーの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンに対する抗血清を3000X稀釈後、抗血清は尚Spanin処理した様々な3D7抗原を認識できたことを示す。
【図10】Plasmodium yoeliiに対する、異なるライブラリーからの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンによる交叉防御を示す。併行した対照として空のベクターと生理食塩水存在下で、異なるライブラリーからの混合多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン(ライブラリーNo.2,No.3,No.4及びNo.5)を用いて、2X105感染性Plasmodium yoeliiを腹膜注射する前に、Balb/cマウス(各群7匹)を3回免疫した。3日に一度死亡マウスを観察した。この結果は、No.2,No.3及びNo.4ライブラリーは防御効果を引き起こし、No.3ライブラリー(約1200bpを有する)からの多価エピトープ遺伝子の防御率は42.8%までになったことを示す。
【図11】高い免疫原性を有する抗原遺伝子の原核生物における発現のウェスタンブロットを示す。図11A.SDS−PAGE;図11B.ハイブリダイゼーション膜。1.選択した陽性クローンSP312;2.ベクター;3.陰性クローンSN33;4.SN34;5.SP352;6.SN36.
【図12】ライブラリーからスクリーニングした陽性(SP)及び陰性(SN)クローンにより誘導されたin vivo免疫応答に関与するサイトカインの検出を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程から成る多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの製法:
a)それぞれが、対象である抗原の単一エピトープをコードする、多数の核酸分子を選択し、合成し、ベクターにクローニングする工程、
b)アイソコーダマー連結を用いて、工程a)で得たベクター中にランダムに連結した2価エピトープをコードする核酸分子を構築する工程、
c)工程b)で得た2価エピトープをコードする核酸分子から、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てる工程、
d)異なる長さ域に従って多価エピトープキメラ遺伝子を抽出し、精製し、増幅し、その後、これらの多価エピトープキメラ遺伝子を発現ベクターにサブクローニングし、原核宿主に形質導入し、夫々対応する長さ域の多価エピトープキメラ遺伝子発現ライブラリーを得る工程、
e)各発現ライブラリー内の多価エピトープキメラ遺伝子の差異を検知して、遺伝子ライブラリーの高い多様性を確認する工程、
f)各多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーを用いて動物を免疫し、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー中の遺伝子発現産物の免疫原性を検出する工程、
g)工程e)及び工程f)の結果に従い、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを含む1ないし2以上の遺伝子ライブラリーを決定する工程、及び
h)高処理能力免疫化学的方法により、工程g)で得た遺伝子ライブラリーから高い免疫原性を持つ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングする工程。
【請求項2】
工程c)において、異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てることを、次の2方法を同時に行うことにより実行する請求項1に記載の製法:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応、及び2)ランダムに組み立てるためのベクター内のアイソコーダマー連結。
【請求項3】
工程a)における対象である抗原が、感染症、腫瘍又は自己免疫疾患に関係する抗原である請求項1に記載の製法。
【請求項4】
工程a)における対象である抗原が、Plasmodium falciparumの抗原である請求項3に記載の製法。
【請求項5】
請求項1の製法で得られた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン。
【請求項6】
悪性マラリアに対する遺伝子ワクチンである請求項5に記載の多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン。
【請求項1】
以下の工程から成る多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンの製法:
a)それぞれが、対象である抗原の単一エピトープをコードする、多数の核酸分子を選択し、合成し、ベクターにクローニングする工程、
b)アイソコーダマー連結を用いて、工程a)で得たベクター中にランダムに連結した2価エピトープをコードする核酸分子を構築する工程、
c)工程b)で得た2価エピトープをコードする核酸分子から、異なる長さの多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てる工程、
d)異なる長さ域に従って多価エピトープキメラ遺伝子を抽出し、精製し、増幅し、その後、これらの多価エピトープキメラ遺伝子を発現ベクターにサブクローニングし、原核宿主に形質導入し、夫々対応する長さ域の多価エピトープキメラ遺伝子発現ライブラリーを得る工程、
e)各発現ライブラリー内の多価エピトープキメラ遺伝子の差異を検知して、遺伝子ライブラリーの高い多様性を確認する工程、
f)各多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリーを用いて動物を免疫し、多価エピトープキメラ遺伝子ライブラリー中の遺伝子発現産物の免疫原性を検出する工程、
g)工程e)及び工程f)の結果に従い、適切に組み立てた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンを含む1ないし2以上の遺伝子ライブラリーを決定する工程、及び
h)高処理能力免疫化学的方法により、工程g)で得た遺伝子ライブラリーから高い免疫原性を持つ多価エピトープキメラ遺伝子ワクチンをスクリーニングする工程。
【請求項2】
工程c)において、異なる長さを持つ多価エピトープキメラ遺伝子をランダムに組み立てることを、次の2方法を同時に行うことにより実行する請求項1に記載の製法:1)ポリメラーゼ連鎖反応とプライマーフリーポリメラーゼ連鎖反応、及び2)ランダムに組み立てるためのベクター内のアイソコーダマー連結。
【請求項3】
工程a)における対象である抗原が、感染症、腫瘍又は自己免疫疾患に関係する抗原である請求項1に記載の製法。
【請求項4】
工程a)における対象である抗原が、Plasmodium falciparumの抗原である請求項3に記載の製法。
【請求項5】
請求項1の製法で得られた多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン。
【請求項6】
悪性マラリアに対する遺伝子ワクチンである請求項5に記載の多価エピトープキメラ遺伝子ワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−509837(P2007−509837A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507345(P2005−507345)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000620
【国際公開番号】WO2005/012528
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506032129)中国医学科学院基礎医学研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000620
【国際公開番号】WO2005/012528
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506032129)中国医学科学院基礎医学研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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