説明

多出力水晶発振器

【課題】 水晶振動子とICとが1つずつ搭載された発振器において、複数の周波数を出力して種々の電子機器に対応可能とし、消費電力の増大を防ぐことができる多出力水晶発振器を提供する。
【解決手段】 1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力に複数の分周回路2を直列に接続し、発振回路1及び各分周器の分岐された出力にそれぞれスイッチ4とバッファ3を設け、スイッチ4によって選択された周波数を発振器出力として出力する多出力水晶発振器としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器に係り、特に単一の振動子及び発振回路を用いて多種類の周波数を出力して、種々の電子機器に対応可能とし、消費電力の増大を防ぐことができる多出力水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
水晶発振器に対する小型化の要求は強く、超小型水晶発振器は、1つの水晶片(振動子)と発振回路を含む1つのICチップとが電気的に接続されて、セラミックパッケージに格納されている。
そのため、従来の小型水晶発振器は、1種類の周波数を出力するものであり、複数の周波数が必要な電子機器では、基本的には周波数の数だけ水晶発振器が必要である。
【0003】
[関連技術]
尚、水晶発振器に関する技術としては、特開2006−303609号公報「信号発振器」(出願人:松下電器産業株式会社、特許文献1)、特開2001−53607号公報「周波数シンセサイザ及び装置」(出願人:富士通株式会社、特許文献2)がある。
特許文献1には、電圧制御発振器からの出力に分周器を多段に備え、複数の周波数を出力する信号発振器が記載されている。
また、特許文献2には、基準信号に基づいて中間信号を生成する第1のPLL回路と、第1のPLL回路の出力を基準信号としてシンセサイザ出力を得る第2のPLL回路を備えた周波数シンセサイザが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303609号公報
【特許文献2】特開2001−53607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水晶片とICが1つずつ搭載された水晶発振器は、1個につき1種類の周波数しか出力できず、複数の周波数が必要な電子機器では、周波数の数だけ水晶発振器が必要であり、機器の小型化の妨げになるという問題点があった。
【0006】
また、複数の発振器を使用すると複数の発振回路を駆動することになり、消費電流が増大してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、水晶振動子とICとが1つずつ搭載された発振器において、複数の周波数を出力して種々の電子機器に対応可能とし、消費電力の増大を防ぐことができる多出力水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、発振回路と各分周回路の出力を入力し、外部からの制御信号に従って発振回路又は分周回路からの出力を選択して、特定の出力端子に出力させるセレクタとを備えたことを特徴としている。
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、分岐された発振回路及び各分周回路の出力に設けられたスイッチとを備え、発振回路及び複数の分周回路を前段と後段の2つのグループに分割して、グループ毎に複数のスイッチの出力を並列に接続し、スイッチが、前段のグループの発振回路又は分周回路の出力の1つを選択して第1の出力端子に出力させ、後段のグループの分周回路の出力の1つを選択して第2の出力端子に出力させることを特徴としている。
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、2分周回路と3分周回路とを並列に接続した回路を発振回路の出力に直列に多段に接続し、段毎に並列接続の2分周回路又は3分周回路のいずれかを選択してそれぞれ特定の出力端子に出力させるスイッチを有することを特徴としている。
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、2つに分岐された前記発振回路の出力の一方に直列に接続された複数の2分周回路と、分岐された他方に直列に接続された複数の3分周回路と、発振回路の出力と、各2分周回路の出力及び各3分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えたことを特徴としている。
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、発振回路及び各分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えたことを特徴としている。
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記多出力水晶発振器において、発振回路又は分周回路からの出力を、バッファを介して出力端子に出力させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、発振回路と各分周回路の出力を入力し、外部からの制御信号に従って発振回路又は分周回路からの出力を選択して、特定の出力端子に出力させるセレクタとを備えた多出力水晶発振器としているので、ユーザが複数の周波数の中から任意の複数周波数を選択して出力させることができ、単一の発振器で種々の電子機器に対応可能とし、機器の小型化を妨げず、消費電力の増大を防ぐことができる効果がある。
【0015】
また、本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、分岐された発振回路及び各分周回路の出力に設けられたスイッチとを備え、発振回路及び複数の分周回路を前段と後段の2つのグループに分割して、グループ毎に複数のスイッチの出力を並列に接続し、スイッチが、前段のグループの発振回路又は分周回路の出力の1つを選択して第1の出力端子に出力させ、後段のグループの分周回路の出力の1つを選択して第2の出力端子に出力させる多出力水晶発振器としているので、ユーザが原振に近いグループと高次に分周されたグループの中から1つずつ周波数を選択して出力させることができ、外部から容易に選択可能として使い勝手を向上させることができ、機器の小型化を妨げず、消費電力の増大を防ぐことができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、2分周回路と3分周回路とを並列に接続した回路を発振回路の出力に直列に多段に接続し、段毎に並列接続の2分周回路又は3分周回路のいずれかを選択してそれぞれ特定の出力端子に出力させるスイッチを有する多出力水晶発振器としているので、スイッチで選択する分周回路の組み合わせによって種々の周波数を生成することができ、単一の発振器で多様な電子機器に対応可能とし、機器の小型化を妨げず、消費電力の増大を防ぐことができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、2つに分岐された前記発振回路の出力の一方に直列に接続された複数の2分周回路と、分岐された他方に直列に接続された複数の3分周回路と、発振回路の出力と、各2分周回路の出力及び各3分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えた多出力水晶発振器としているので、原振周波数と、2分周系列の周波数と、3分周系列の周波数の中から所望の周波数を出力させることができ、単一の発振器で種々の電子機器に対応可能とし、機器の小型化を妨げず、消費電力の増大を防ぐことができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、発振回路及び各分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えた多出力水晶発振器としているので、単一の発振器で複数の周波数を生成して所望の周波数を出力でき、種々の電子機器に対応可能とし、機器の小型化を妨げず、消費電力の増大を防ぐことができる効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、発振回路又は分周回路からの出力を、バッファを介して出力端子に出力させる上記多出力水晶発振器としているので、発振器出力を安定させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、水晶片と、発振回路を含むICとを1つずつ備え、発振回路からの出力に複数の分周回路を直列に接続し、発振回路及び各分周回路の出力をそれぞれ分岐して、スイッチ及びバッファを介して出力可能とした構成であり、発振回路及び複数の分周回路の内、スイッチをオンとした発振回路又は分周回路からの出力周波数を発振器出力として取り出すことができ、1つの発振器で、ユーザのニーズに応じて所望の周波数を出力して、種々の電子機器に対応可能とし、消費電力の増大を防ぐことができるものである。
【0022】
また、本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、水晶片と、発振回路を含むICとを1つずつ備え、発振回路からの出力に複数の2分周回路を直列に接続し、発振回路及び各分周回路の出力をそれぞれ分岐して、スイッチ及びバッファを介して出力可能とした構成であり、発振回路の出力周波数(原振)又は2分周、4分周、8分周、16分周、…2n分周の周波数を生成して、それらの中からニーズに応じて所望の周波数を発振器出力とすることができるものである。
【0023】
また、本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、発振回路からの出力に直列に、2分周回路と3分周回路とを交互に接続したものであり、2分周回路のみの場合とは異なる周波数を出力可能とし、ニーズに応じて種々の周波数を出力することができるものである。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、発振回路からの出力を2つに分岐し、一方に複数の2分周回路を直列に接続し、他方に複数の3分周回路を直列に接続しており、ニーズに応じて種々の周波数を出力することができるものである。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、発振回路からの出力に複数の分周回路を直列に接続し、原振又は前段の複数の分周回路出力のいずれかを第1の出力端子に出力し、後段の複数の分周回路出力のいずれかを第2の出力端子に出力するようにしており、使用機器に応じて周波数を容易に選択可能としている。
【0026】
また、本発明の実施の形態に係る多出力水晶発振器は、発振回路からの出力に複数の分周回路を直列に接続し、発振回路出力及び各分周回路の出力をそれぞれ分岐してセレクタに入力し、セレクタが、外部からの制御信号に基づいて、指定された発振回路又は分周回路からの出力を選択して出力端子に出力するものであり、ニーズに応じて外部からの指示で容易に発振器出力の周波数を切り替えることができ、種々の電子機器に対応可能である。
【0027】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る多出力水晶発振器について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る多出力水晶発振器(第1の多出力水晶発振器)は、水晶振動子10と、発振回路1と、発振回路1の出力に直列に接続されたn個の分周回路2-1,2-2,…,2-nと、それぞれ分岐された発振回路1及び各分周回路2の出力に設けられたスイッチ(SW)4-1,4-2,…4-n+1と、各周波数を取り出すバッファ3-1,3-2,…,3n+1とを備えている。
【0028】
第1の多出力水晶発振器の特徴部分である、発振回路1の後段に設けられた分周回路2、スイッチ4、バッファ3は、全て発振回路1と同一のICに集積して形成され、ワンチップで構成されている。
また、発振器出力を取り出す出力電極は、第1の多出力水晶発振器が収納されたケースの裏面に設けられ、生成可能な周波数の数と同数の電極が設けられている。
【0029】
第1の多出力水晶発振器の特徴部分について説明する。
複数の分周回路2-1,2-2,…,2-nは、入力された周波数を1/2にする回路であり、分周回路2-1の出力周波数は発振回路1からの出力周波数(原振)の2分周出力、分周回路2-2の出力周波数は原振の4分周出力となり、…以下同様にして、8分周、16分周…、分周回路2-nからの出力周波数は原振の2n分周の周波数となる。
【0030】
スイッチ4-1,4-2,…4-n+1は、発振回路1及び各分周回路2で生成する周波数を分岐して、発振器出力として取り出すためのスイッチである。
図1の例では、スイッチ4-1は原振出力を取り出すためのスイッチであり、スイッチ4-2は2分周出力を取り出すためのスイッチであり、以下同様にしてスイッチ4-n+1は2n分周出力を取り出すスイッチである。
【0031】
ここでは、予めユーザのニーズに合わせて、取り出したい周波数を生成する発振器1又は分周回路2に対応するスイッチ4をオンに設定しておく。スイッチ4は、複数オンとすることが可能である。
これにより、単一の水晶振動子10及び発振回路1を用いた構成で、複数周波数を出力可能な発振器を実現するものである。
【0032】
スイッチ4を設けたことにより、個々のスイッチ4のオン/オフの設定以外の構成は前もって製作しておき、ユーザ毎の要求に応じてスイッチ4のオン/オフを設定することにより、短時間且つ低コストでユーザのニーズに合わせた複数の周波数を出力する発振器を提供することができるものである。
但し、最初からn+1種類の周波数全てを出力させることが要求されている場合には、スイッチ4を設けない構成としても構わない。
【0033】
バッファ3-1,3-2,…,3n+1は、出力周波数を安定させるものであり、バッファ3-1,3-2,…,3n+1を介して、出力電極に接続されている。そして、対応するスイッチ4がオンとなっているバッファから、それぞれ原振出力又は特定の分周出力周波数が出力端子に供給されるものである。
尚、分周回路2が多段に接続されているため遅延が発生するが、各バッファ3間でタイミングを合わせる必要はない。
【0034】
また、複数の分周回路2-1,2-2,…,2-nを、全て2分周回路にせず、一部3分周回路としてもよい。例えば、2分周回路と3分周回路とを交互に直列接続することが考えられる。この場合は、原振出力、2分周出力、6分周出力、12分周出力、36分周出力…が得られる。つまり、ニーズに合わせて所望の周波数が生成可能となるよう、2分周回路と3分周回路の配列を任意に決定すればよい。
これにより、2分周回路のみで構成する場合とは異なる周波数を生成でき、ユーザのニーズに合わせて種々の周波数を発振器出力とすることができるものである。
【0035】
[第1の多出力水晶発振器の動作:図1]
次に、第1の多出力水晶発振器の動作について図1を用いて説明する。
発振回路1から出力された原振周波数は、直列に接続された分周回路2によって、順次2分周される。つまり、原振周波数は、分周回路2-1で2分周され、後段の分周回路2-2で更に2分周されて4分周周波数となり、分周回路2-3で更に2分周されて8分周周波数に変換され、…以下同様にして分周回路2-nで2n分周周波数が生成される。
【0036】
また、各スイッチ4は、ユーザのニーズに合わせてオン又はオフに設定されている。具体的には、出力すべき周波数に対応する分周回路2の出力に接続されたスイッチはオンに設定され、それ以外はオフに設定されている。オンにするスイッチの数(出力周波数の数)は、適用される機器に応じて任意に設定する。
【0037】
そして、発振回路1及び各分周回路2の出力は、それぞれ分岐されて、スイッチ4-1,4-2,…4-n+1の内、オンに設定されているスイッチ4に接続されるバッファ3に出力され、発振器出力として取り出される。例えば、スイッチ4-1と4-4がオンになっている場合には、原振出力と、8分周出力が発振器出力としてそれぞれ出力される。
このようにして第1の多出力水晶発振器の動作が行われるものである。
【0038】
[具体例]
例えば、原振52MHzの水晶振動子10を用いて、スイッチ4-1とスイッチ4-2をオンとすれば、52MHzと2分周出力の26MHzとを同時に出力させることができるものである。
更に、スイッチ4-3、スイッチ4-4をオンとすれば、13MHz、6.5MHzが出力されるものである。
同様にして、3分周回路が混ざった構成であっても、所望の周波数を生成する分周回路の出力におけるスイッチをオンとすることで、ニーズに応じた周波数を出力させることができるものである。
【0039】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る多出力水晶発振器によれば、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力に直列に接続されたn個の分周回路2-1,2-2,…,2-nと、分岐された発振回路1及び各分周回路2の出力に設けられたスイッチ4-1,4-2,…4-n+1と、各周波数を安定して取り出すバッファ3-1,3-2,…,3n+1とを備え、予め所望の周波数を生成する発振回路1又は分周回路2の出力に設けられたスイッチ4をオンに設定し、他のスイッチをオフに設定しておくことにより、1つの発振器から複数の周波数を出力させることができ、複数の水晶発振器を用いずに済み、適用される機器の小型化及び低消費電力化を図ることができる効果がある。
【0040】
また、第1の多出力水晶発振器によれば、同一の構成でも、ユーザのニーズに応じてスイッチ4のオン/オフを切り替えることにより、種々の組み合わせの複数周波数を出力することができ、低コスト且つ短時間で多様なユーザのニーズに対応することができる効果がある。
【0041】
[第2の実施の形態:図2]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る多出力水晶発振器について図2を用いて説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
図2に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る多出力水晶発振器(第2の多出力水晶発振器)は、発振回路1の出力を2つに分岐して、一方にn個の2分周回路21-1,21-2,…,21-nを直列に接続し、他方にn個の3分周回路22-1,22-2,…,22-nを直列に接続した構成である。
尚、第1の多出力水晶発振器と同様に、発振回路1及び各分周回路21,22の出力は分岐されて、それぞれ、スイッチ4,41,42及びバッファ3,31,32を介して発振器出力に接続されている。
【0042】
第2の多出力水晶発振器では、2分周回路21-1,21-2,…,21-nの系列からは、原振の2分周出力、4分周出力、8分周出力、…2n分周出力が得られる。また、3分周回路22-1,22-2,…,22-nの系列からは、3分周出力、9分周出力、…3n分周出力が得られる。
【0043】
そして、第1の多出力水晶発振器と同様に、ユーザのニーズに合わせて予めスイッチ4,41,42のオン/オフを設定しておき、原振、2分周系列、3分周系列の中から所望の複数の周波数を出力することができるものである。
【0044】
尚、第2の多出力水晶発振器においても、水晶振動子10は1つであり、発振回路1及び後段の分周回路21,22、スイッチ4,41,42、バッファ31,32はワンチップのICで構成されている。
また、生成可能な全ての周波数を出力する場合には、スイッチ4,41,42は設けなくても構わない。
【0045】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る多出力水晶発振器によれば、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力を2つに分岐し、一方にn個の2分周回路21-1,21-2,…,21-nを直列に接続し、他方にn個の3分周回路22-1,22-2,…,22-nを直列に接続し、分岐された発振回路1及び各分周回路21,22の出力に設けられたスイッチ4,41,42と、各周波数を安定して取り出すバッファ3,31,32とを備え、予め所望の周波数を生成する発振回路1又は分周回路21又は22の出力に設けられたスイッチ4をオンに設定し、他のスイッチをオフに設定しておくことにより、1つの発振器で、原振周波数と2分周系列の周波数と3分周系列の周波数の中から所望の複数の周波数を出力させることができ、複数の水晶発振器を用いずに済み、適用される機器の小型化及び低消費電力化を図ることができる効果がある。
【0046】
[第3の実施の形態:図3]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る多出力水晶発振器について図3を用いて説明する。図3は、本発明の第3の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
図3に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る多出力水晶発振器(第3の多出力水晶発振器)は、2分周回路21と3分周回路22とを並列に接続し、スイッチ4によって一方を選択して後段及び出力用のバッファ3に出力する構成を、多段に直列接続したものである。
具体的には、並列接続された2分周回路21-1と3分周回路22-1の分岐点に設けられたスイッチ4-1が、いずれかの分周回路に接続して、当該分周回路の出力を後段のスイッチ4-2に接続すると共にバッファ3-2に出力する。次の段では、スイッチ4-2が、2分周回路21-2と3分周回路22-2の一方に接続して後段のスイッチ4-3及びバッファ3-3に出力し、以下同様にしてn段目では2分周回路21-n又は3分周回路22-nのいずれかが選択されてバッファ3-n+1に出力されるようになっている。
そして、各バッファ3からの出力は、それぞれ特定の出力端子から出力される。
また、各バッファ3の出力側にスイッチを設けて、出力を選択するようにしてもよい。
【0047】
これにより、第3の多出力水晶発振器では、ユーザのニーズに応じて所望の周波数を生成するようにスイッチ4で2分周回路21又は3分周回路23のいずれかを選択して、生成した周波数をバッファ3を介して発振器出力として出力することができ、また、選択される分周回路の組み合わせによって異なる種類の周波数を生成でき、多様なユーザのニーズに応じることができるものである。
尚、第3の多出力水晶発振器においては、各スイッチ4は予め2分周回路21側又は3分周回路22側に切り替えて設定されている。
【0048】
[第3の多出力水晶発振器の効果]
本発明の第3の実施の形態に係る多出力水晶発振器によれば、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、1組の2分周回路21と3分周回路22とを並列に接続し、スイッチ4によって一方を選択して後段及び出力用のバッファ3に出力する構成を、多段に直列接続して、各段毎に2分周回路21又は3分周回路22のいずれかをスイッチ4によって接続するようにしているので、接続される2分周回路21と3分周回路22の組み合わせによって、様々な周波数を生成することができ、多様なユーザのニーズに応じた発振器とすることができる効果がある。
【0049】
[第4の実施の形態:図4]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る多出力水晶発振器について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第4の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
電子機器の種類によっては、多くの周波数が必要なこともあれば、少ない種類(2種類程度)の周波数で十分な場合もある。本発明の第4の実施の形態に係る多出力水晶発振器(第4の多出力水晶発振器)は、このようなユーザにとって使い勝手のよい多出力水晶発振器を提供するものである。
【0050】
第4の多出力水晶発振器では、予め発振器出力の周波数の数を2つに限定し、発振回路及び分周回路を、前段部分と後段部分の2つのグループに分割し、当該グループの中からそれぞれスイッチによって1つの周波数を選択するものであり、発振器の完成後に、ユーザが外部から容易に所望の2種類の周波数を選択可能としたものである。
【0051】
図4に示すように、第4の多出力水晶発振器は、第1の多出力水晶発振器と同様に、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力に直列に接続された分周回路2-1,2-2,…,2-5と、発振回路1及び各分周回路2の出力に設けられたスイッチ4-1,4-2,…,4-6と、各スイッチ4に接続されたバッファ3-1,3-2,…,3-6とを備えている。
そして、第4の多出力水晶発振器の特徴として、発振回路1及び分周回路2を前段のグループと後段のグループの2つに分け、各グループ毎に発振回路1及び分周回路2の出力を並列接続して、グループ毎に1つの周波数を選択して出力するものである。
【0052】
図4の例では、前段の発振回路1、分周回路2-1,2-2の出力は端子Aに接続され、後段の分周回路2-3,2-4,2-5の出力は端子Bに接続されるようになっている。そして、外部からスイッチ4-1,4-2,…,4-6のオン/オフを制御することにより、並列接続された前段/後段のグループで各1つずつの周波数が選択されてそれぞれ端子A、端子Bに出力されるものである。つまり、同一の端子に接続するスイッチ4の内の1つだけがオンとなるよう制御する。スイッチ4のオン/オフの制御は、例えば、ICの裏面に設けられた電極に特定の信号を与えることにより行われる。
【0053】
これにより、第4の多出力水晶発振器では、原振に近い周波数の組と、高次に分周された周波数の組の中からユーザの設定によりそれぞれ1つずつ、合計2つの周波数を出力することができるものである。
2種類の周波数を必要とするユーザにとって使い勝手のよい多出力水晶発振器を低コストで提供することができるものである。
【0054】
[第4の実施の形態の効果]
本発明の第4の実施の形態に係る多出力水晶発振器によれば、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力に複数の分周回路2を直列に接続し、発振回路1及び各分周器の分岐された出力にそれぞれスイッチ4を設け、発振回路1及び分周回路2を前段と後段の2つのグループに分割し、外部からの操作でスイッチ4を制御して、各グループの中から1つの周波数を選択して出力端子に出力するものであり、ユーザが2種類の周波数を任意に選択することができ、使い勝手を向上させることができる効果がある。
【0055】
[第5の実施の形態:図5]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る多出力水晶発振器について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第5の実施の形態に係る多出力水晶発振器の構成ブロック図である。
図5に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る多出力水晶発振器(第5の多出力水晶発振器)は、水晶振動子10と、発振回路1と、発振回路1の出力に直列に接続されたn個の分周回路2-1,2-2,…,2-nと、それぞれ分岐された発振回路1及び各分周回路2の出力に設けられたバッファ3-1,3-2,…,3n+1と、第5の多出力水晶発振器の特徴部分であるセレクタ5とを備えている。
【0056】
セレクタ5は、各バッファ3から入力される信号の内、発振器出力として2つの周波数信号を選択して端子Aと端子Bに出力する。ここで、セレクタ5は、外部から入力される制御信号に従って、端子A用に指定されたバッファ3を端子Aに接続し、端子B用に指定されたバッファ3を端子Bに接続し、それぞれ発振器出力とする。
また、セレクタ5も発振回路1及び分周回路2と同一のICチップ内に作成することが可能である。
これにより、ユーザは発振回路1及び分周回路2で生成される複数の周波数信号の中から、ニーズに合わせて2つの周波数を選択して出力させることができるものである。
また、ここでは発振器出力端子を2つとしているが、必要に応じて端子の数を増やして、出力周波数の数を多くしてもかまわない。
【0057】
[第5の実施の形態の効果]
本発明の第5の実施の形態に係る多出力水晶発振器によれば、1つの水晶振動子10及び発振回路1を備えた水晶発振器において、発振回路1の出力に複数の分周回路2を接続し、発振回路1及び各分周器の分岐された出力にそれぞれバッファ3を設け、各バッファ3からの出力信号をセレクタ5に入力し、セレクタ5が外部からの制御信号に基づいて選択されたバッファ3の出力を発振器出力として端子A又は端子Bに出力するようにしているので、ユーザは、2種類の周波数を外部から任意に選択することができ、使い勝手を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、特に単一の振動子及び発振回路を用いて多種類の周波数を出力して種々の電子機器に対応可能とし、消費電力の増大を防ぐことができる多出力水晶発振器に適している。
【符号の説明】
【0059】
1…発振回路、 2…分周回路、 3,31,32…バッファ、 4,41,42…スイッチ、 5…セレクタ、 10…水晶振動子、 21…2分周回路、 22…3分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、
前記発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、
前記発振回路と前記各分周回路の出力を入力し、外部からの制御信号に従って前記発振回路又は前記分周回路からの出力を選択して、特定の出力端子に出力させるセレクタとを備えたことを特徴とする多出力水晶発振器。
【請求項2】
水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、
前記発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、
分岐された前記発振回路及び前記各分周回路の出力に設けられたスイッチとを備え、
前記発振回路及び前記複数の分周回路を前段と後段の2つのグループに分割して、前記グループ毎に前記複数のスイッチの出力を並列に接続し、前記スイッチが、前記前段のグループの前記発振回路又は前記分周回路の出力の1つを選択して第1の出力端子に出力させ、前記後段のグループの分周回路の出力の1つを選択して第2の出力端子に出力させることを特徴とする多出力水晶発振器。
【請求項3】
水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、
2分周回路と3分周回路とを並列に接続した回路を前記発振回路の出力に直列に多段に接続し、
前記段毎に前記並列接続の2分周回路又は3分周回路のいずれかを選択してそれぞれ特定の出力端子に出力させるスイッチを有することを特徴とする多出力水晶発振器。
【請求項4】
水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、
2つに分岐された前記発振回路の出力の一方に直列に接続された複数の2分周回路と、
前記分岐された他方に直列に接続された複数の3分周回路と、
前記発振回路の出力と、前記各2分周回路の出力及び前記各3分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えたことを特徴とする多出力水晶発振器。
【請求項5】
水晶振動子と発振回路とを1つずつ備えた多出力水晶発振器であって、
前記発振回路からの出力に直列に接続された複数の分周回路と、
前記発振回路及び前記各分周回路の出力に設けられ、出力を選択する複数のスイッチとを備えたことを特徴とする多出力水晶発振器。
【請求項6】
発振回路又は分周回路からの出力を、バッファを介して出力端子に出力させることを特徴とする請求項1乃至5記載の多出力水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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