多分岐ポリエーテルポリオール及びウレタン系樹脂組成物
【課題】 ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として、十分な可使時間を確保でき、また、高い硬度を硬化塗膜に付与できると共に、更に、粘度が従来になく低い新規な多分岐ポリエーテルポリオールを提供する。また、当該多分岐ポリエーテルポリオールを含有する作業性と塗膜硬度に優れるウレタン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンと、プロピオンオキサイドとを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオールを、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として使用する。
【解決手段】 3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンと、プロピオンオキサイドとを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオールを、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系樹脂組成物のポリオール成分として有用な新規な多分岐ポリエーテルポリオール、及び、作業性に優れると共に、硬質な硬化物を与えるウレタン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなるウレタン系樹脂組成物は、硬化性や硬化塗膜の伸びが良好であるという特長から建設材料用床材などの被覆材に広く用いられている。しかし乍ら、かかるウレタン系樹脂組成物は、一般に軟質である他、塗膜が吸湿して発泡し易く、被膜外観に劣るという問題を有しており、近年、硬質タイプのウレタン系樹脂組成物が種々検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。一方、被覆材の硬質化を図るには、一般にポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応性を高めればよいが、この場合、両者混合時に速やかにこれらが反応してしまう為、十分な可使時間を確保できないものであった。そこで、従来より、ビスフェノール型エポキシ樹脂に高級脂肪酸を反応させた構造のポリオールと、ひまし油脂肪酸との混合物をポリオール成分として用い、かつ、ピュアMDIとポリメリックMDIとを所定割合で配合したものをポリイソシアネート成分として用いることによって、可使時間を十分に確保し乍らも硬質で、かつ、高温多湿下であっても発泡し難い硬質タイプのウレタン系被服用樹脂組成物が知られている(下記、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、このビスフェノール型エポキシ樹脂に高級脂肪酸を反応させた構造のポリオールと、ひまし油との混合物をポリオール成分として用い、かつ、ポリイソシアネート成分としてピュアMDIとポリメリックMDIとを所定割合で配合したものを用いる技術は、確かに可使時間が長く、かつ、硬質な塗膜が形成されるものの、とりわけポリオール成分の粘度が著しく高いため、刷毛塗りやローラー塗り、スプレー塗布といった、熟練を要することなく、かつ、表面仕上がりに斑の生じない塗工方法への適用が困難なものであった。
【特許文献1】特開昭57−92015号公報
【特許文献2】特開2001−187863
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として、十分な可使時間を確保でき、また、高い硬度を硬化塗膜に付与できると共に、更に、粘度が従来になく低い新規な多分岐ポリエーテルポリオール、及び、これを含有する作業性と塗膜硬度に優れるウレタン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを開環反応によって共重合させて得られる多分岐構造を有し、かつ、1級水酸基と2級水酸基とを有し、更に、所定の全水酸基量及び分子量を有する化合物をウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として用いることにより、可使時間も長く且つ硬化時の架橋密度も高くなると同時に、当該化合物の慣性半径が小さくなり、低粘度化を図ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオールに関する。
【0007】
また、本発明は、ポリオール成分(A)、及びポリイソシアネート成分(B)とを必須成分とするウレタン系樹脂組成物であって、前記多分岐ポリエーテルポリオールをポリオール成分(A)として用いることを特徴とするウレタン系樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として、十分な可使時間を確保でき、また、高い硬度を硬化塗膜に付与できると共に、更に、粘度を従来になく低くいポリエーテルポリオールを提供できる。よって、これを含有するウレタン系樹脂組成物は、優れた作業性と塗膜硬度とを兼備させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールである。本発明では、このような構造を有することから、当該多分岐ポリエーテルポリオールの慣性半径が小さくなって、分子同士の絡みが少なくなる結果、粘度が低くなる。
【0010】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)は、下記一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0011】
【化1】
ここで、一般式(1)中、R1は、メチレン基、エチレン基、若しくはプロピレン基であり、一方、R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、又は炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。また、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0012】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタンの中でも、慣性半径がより小さくなって粘度低減に効果的であり、また、硬化物の硬度も良好となる点から、R1がメチレン基であり、かつ、R2が炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物、とりわけ3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンが好ましい。
【0013】
次に、上記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と開環反応させる1官能性エポキシ化合物(a2)は、オレフィンエポキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル等が挙げられる。
【0014】
ここで、オレフィンエポキサイドは、具体的には、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシドが挙げられる。
【0015】
アルキルグリシジルエーテルは、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0016】
アルキルグリシジルエステルは、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。
【0017】
これらの中でも特に、塗膜硬度が良好であり、また、分子量が小さくなる点からオレフィンエポキサイドが好ましく、とりわけプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、又は1−ヘキセンオキサイドが好ましい。
【0018】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させる方法は、具体的には、以下の(方法1)〜(方法3)が挙げられる。
【0019】
(方法1)
方法1は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合し、これらをパーオキサイドフリーの有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、又はジオキソランで、原料成分/有機溶剤の質量比が1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で溶解する。
【0020】
得られた溶液を−10℃〜−15℃まで攪拌しながら冷却、次いで、重合開始剤を単独で、或いは溶液状態で、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.5時間かけて滴下する。ここで、重合開始剤は、原料モノマーの全質量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.75〜0.3質量%なる割合で使用できる。また、重合開始剤を溶液状態で使用する場合、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、特に25〜50質量%であることが好ましい。ついで、この重合溶液を25℃になる迄攪拌し、次いで、リフラックスする温度まで加熱し、0.5〜3時間かけて原料成分を全て反応するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。
【0021】
重合後、得られた前記多分岐ポリエーテルポリオールは、前記重合開始剤と当量の水酸化アルカリ水溶液による攪拌、又は、前記重合開始剤と当量のナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドの添加によって中和する。中和後、濾過し、溶媒で目的物を抽出後、減圧下に溶媒を留去し、目的とする多分岐ポリエーテルポリオールを得ることができる。
【0022】
(方法2)
方法2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、70℃以上の沸点を有する炭化水素系溶媒中に溶解する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、原料モノマーと炭化水素系溶媒との比率は、前者:後者が1:1〜1:10、特に1:2.5〜1:3.5であることが好ましい。
【0023】
この混合物の温度は、0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持され、次いで、攪拌下に原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%の重合開始剤を一度に加える。
重合開始剤の添加直後、系内は不均一系になって25〜40℃まで系内温度が上昇する。一旦、15〜25℃まで冷却した後、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0024】
(方法3)
方法3は、原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%となる量の重合開始剤を、70℃以上の沸点を有する炭化水素系有機溶媒に溶解し、これを0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、該炭化水素系溶媒中の重合開始剤濃度は、0.01〜1質量%、特に0.025〜0.25質量%であることが好ましい。
【0025】
この溶液に対して、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、混合した混合物を、系内の温度が20〜35℃になるように連続的に滴下する。滴下終了後も系内の温度が20〜25℃になるまで攪拌を行う。次いで、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0026】
ここで用いる重合開始剤は、H2SO4、HCl、HBF4、HPF6、HSbF6、HAsF6、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4などのルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールイオドニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールイオドニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネートなどのオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステルなどのアルキル化剤が挙げられる。
【0027】
これらのなかでも特に、HPF6、HSbF6、HAsF6、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが活性に優れる点から好ましく、特にHPF6及びトリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0028】
このようにして得られる多分岐ポリエーテルポリオールは、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴としている。
【0029】
即ち、本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐構造を有することから該多分岐ポリエーテルポリオールの慣性半径が小さくなり、更に、数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500という低い値を有することから、従来になく流動性が極めて良好となり、ウレタン系樹脂組成物として作業性が飛躍的に改善される。また、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであり、分子量が小さい割に多くの水酸基を有することから硬化時の架橋密度が高くなって、硬質の塗膜を形成できる。
【0030】
更に、分子構造中に1級水酸基(H1)のみならず、2級水酸基(H2)を有することから、該2級水酸基(H1)の反応遅延性に起因して可使時間を長時間確保することができる。本発明においてこのような反応性の低い2級水酸基(H2)を有しながらも、最終的な硬化物の硬度が良好となるのは、当該多分岐ポリエーテルポリオールの分子構造が球状形状をとり、該球状体の外側に向けて水酸基が存在するため、反応速度が低下しても、最終的には殆どの水酸基が十分に反応に寄与し、硬化物の架橋密度が極めて高くなるためである。このような可使時間と硬化物硬度とのバランスの点から特に前記2級水酸基(H2)の存在割合が全水酸基数に対して20〜70%となる割合であることが好ましい。
【0031】
なお、多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステルとを反応させた後、19F−NMRで測定することによって特定することができる。
【0032】
このような多分岐ポリエーテルポリオールの具体的構造は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる種々の構造が含まれる。具体的には、下記一般式(1)
【0033】
【化2】
(ここで、一般式(1)中、R1及びR2は、前記したものと同一である。)
で表されるヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、下記一般式(2)
【0034】
【化3】
(ここで、一般式(2)中、R3は前記1官能性エポキシ化合物(a2)のエポキシ基の他の構造を表す。)で表される1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させた場合、下記の構造で表される繰り返し単位、および、末端構造単位の中から適宜選択される構造単位で前記多分岐ポリエーテルポリオールは構成されることになる。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
ここで、前記各構造単位において実線部分は当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、他の構造単位とエーテル結合を形成する単結合を示す。また、前記OR1〜OR3、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)に起因する構造単位であって、OR1〜OR3は繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は末端構造単位を表す。
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記1官能性エポキシ化合物(a2)に起因する構造単位であって、ER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は末端構造単位を表す。
【0038】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、前記OR1〜OR3及びER1から選択される繰り返し単位によって多分岐構造が形成され、末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有するものである。なお、これらの繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していてもよいし、OR1〜OR3が分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであってもよい。なお、本発明では2級水酸基(H2)が必須であることから、前記EE1は必須の構造単位として多分岐ポリエーテルポリオール中に存在する。
【0039】
本発明のウレタン系樹脂組成物は、ポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)との二成分系硬化性組成物であって、当該ポリオール成分(A)として、前記多分岐ポリエーテルポリオールを用いることを特徴としている。
本発明では、ポリオール成分(A)として、前記多分岐ポリエーテルポリオールに加え、水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを併用することが、2液混合状態での混合物の疎水性が高まり硬化時の発泡を抑制できる点から好ましい。
【0040】
かかる水酸基含有脂肪酸アルキルエステルとは、ステアリン酸、リノール酸等の高級脂肪酸を、グリコール及びグリセリンなどの多価アルコールと水酸基が残存するように反応させた水酸基含有のエステル化合物、リシノール酸などの水酸基含有高級脂肪酸をモノアルコール、グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどと反応させたエステル化合物などの他、ひまし油等の水酸基含有天然油脂が挙げられる。
また、椰子油、大豆油などの水酸基を実効量含有しない天然油脂であっても、これらを多価アルコールとエステル交換反応させて水酸基を導入したものであってもよい。
【0041】
更に、上記した水酸基含有脂肪酸アルキルエステルのうち、アルキル鎖に二重結合を含むものは、更に疎水性を高めるべく、ジシクロペンタジエンで変性したものも好ましく用いることができる。これらのなかでも特に、塗膜の疎水性向上の効果が顕著である点から、水酸基価100〜300mg・KOH/g、かつ、アルキル鎖部分の炭素原子数10〜25のものがとりわけ好ましい。
【0042】
なお、ポリオール成分(A)中において、多分岐ポリマーポリオールと水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルとの使用割合は、前者/後者の質量比で、3/7〜9/1であることが発泡抑制の効果の点から好ましい。
【0043】
前記ポリオール成分(A)としては、更に本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用のエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、トリメチロールプロパン等の単鎖ポリオール類、これら単鎖ポリオール類とアルキレンオキサイド類(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等)を重合させたポリアルキレンエーテルポリオール類あるいはフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ヘット酸、コハク酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸と前述の単鎖グリコール類とのエステル化反応によって得られるポリエステルポリオール類、ポリオール類に付加重合させたイプシロンカプロラクトンのポリオールやポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂等を用いることができる。
【0044】
次に、本発明のウレタン系樹脂組成物において前記ポリオール成分(A)と組み合わされる、ポリイソシアネート成分(B)は、例えば、公知の脂肪族系ポリイソシアネート及び芳香族系ポリイソシアネートを用いることができる。
【0045】
ここで、脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する。)などのアルキレンジイソシアネート、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネート、ビューレット変性HDI及びイソシアヌレート変性HDIなどのジイソシアネート化合物の3量体、並びにHDIとトリメチロールプロパンとの付加反応化合物などが挙げられる。
【0046】
次に、芳香族系ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略称する。)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、「ポリメリックMDI」と略記する。)、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する。)、あるいは、ウレチジオン変性TDIなどのジイソシアネート化合物の2量体などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも特に硬化物の硬度に優れる点から、芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、とりわけポリメリックMDIが硬度の改善効果が顕著である点から好ましい。ここで、ポリメリックMDIは、アニリンとホルマリンとの重縮合によって得られる高分子量体をイソシアネート化したものであり、MDI、及びそれ以上の核体数を有するものの混合物として用いられる。通常、核体数が増加するに従い、硬化物の硬度は高まるものの増粘しやすくなり、その一方で、核体数が低下するに従い、ポリオール成分(A)との相溶性が良好で、粘度は低くなるものの、結晶化しやすくなって低温での安定性に劣る。そこで、本発明ではポリメリックMDIに占める前記MDIの割合、即ち、2官能性成分の割合を50〜80質量%となる割合に調節することがこれらの性能バランスの点から好ましい。とりわけこの物性バランスに優れ、かつ、被膜面の色斑防止といった、所謂、仕上がり性が良好となる点から60〜70質量%であることが好ましい。
【0048】
なお、ポリイソシアネート成分(B)として、単独で使用されるMDI、或いは、ポリメリックMDIにおける核体数の調整の為に使用されるMDIは、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,2’−MDI」と略記する。)(イ)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,4’−MDI」と略記する。)(ロ)及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「4,4’−MDI」と略記する。)(ハ)から構成される。ここで、MDI中の2,2’−MDI(イ)と2,4’−MDI(ロ)の合計質量((イ)+(ロ))が少なくなると、低温でポリイソシアネート成分(B)が結晶化しやすく、逆に、前記合計質量((イ)+(ロ))が多くなると、硬化物の硬度が発現し難くなる傾向にある。従って、これら(イ)〜(ハ)の質量比は、((イ)+(ロ)):(ハ)=5:95〜40:60、とりわけ((イ)+(ロ)):(ハ)=10:90〜30:70の範囲であることが、ポリイソシアネート成分(B)の低温安定性、及び硬化物硬度の点から好ましい。
【0049】
また、本発明ではポリイソシアネート成分(B)として、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いた場合、その硬化皮膜は硬質であり乍ら、適度な柔軟性を発現し、ひび割れに対する十分な追従性を発現する。また、芳香族系ポリイソシアネートを用いた場合に生じやすい紫外線劣化による黄変を低減させることができ、意匠性に優れた被覆面を形成することができる。
【0050】
かかる、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートは、具体的には、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジメタノナフタレンジイソシアネート、及び、これらとポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
ここで使用し得るポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、トリメチロールプロパン等のアルキレンジオール、或いは、これらのアルキレンジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを重合させたポリアルキレンエーテルポリオールが挙げられる。また、前記アルキレンジオールに、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ヘット酸、コハク酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸とのエステル化反応によって得られるポリエステルポリオール類、前記アルキレンジオールにイプシロンカプロラクトンを共重合させたポリオール等が挙げられる。
これらに中でも特に、硬化被膜の硬度と柔軟性とのバランスが顕著に良好となる点からノルボルネンジイソシアネート、及びジメタノナフタレンジイソシアネートが好ましい。
【0051】
本発明では、上記した脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いることにより、硬化被膜の硬度がショアーD75以上と硬質であり、かつ伸度が60%以上と高伸度となる。よって、本発明において脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いたウレタン系樹脂組成物は、下地基材のひび割れに十分に追従し、信頼性の高い被覆性能を得ることができる。また、高い耐候性を有し、優れた黄変防止性を有しているため、意匠性を長期保持することの出来る被覆面を提供することが出来る。
【0052】
また、本発明では、ポリイソシアネート成分(B)として前記脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いる場合、前記した水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを併用することにより、硬度を保持し乍ら柔軟性をより高めることができる。
【0053】
本発明のウレタン系樹脂組成物を被覆材に用いる場合、前記ポリオール成分(A)及び前記ポリイソシアネート成分(B)に、更に充填材、及び必要に応じてその他各種の添加剤を加えて目的とする被覆材を調整できる。なお、本発明の組成物から得られる被覆材は、ショアーD硬度70以上の硬質被覆材として、機械強度のみならず低粘度で作業性に優れるという顕著な性能を発現する。即ち、本発明では、ポリオール成分(A)とイソシアネート成分(B)とを混合した場合の粘度が、ローラー塗布が可能となる1000mPa・s以下になるという特長を有する。
【0054】
ここで充填材としては、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルクなどが挙げられる。
【0055】
また、他の添加剤成分としては、活性アルミナ粉末、合成ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、消石灰、生石灰、水酸化マグネシウム、無水石膏、塩化カルシウム、合成ハイドロタルサイト、活性炭、活性白土の如き吸湿剤、アゾ系、銅フタロシアニン系、弁柄、黄鉛、酸化チタン、亜鉛華またはカーボンブラックの如き有機ないしは無機系の着色顔料、および、鉛丹、鉛白、塩基性クロム酸塩、塩基性硫酸鉛、ジンククロメート、亜鉛末またはMIOの如き防錆顔料、さらには、チキソ付与剤、レベリング剤、吸湿剤、シランあるいはチタネート系カップリング剤などの各種助剤が挙げられる。さらに必要に応じ、ジブチルチンジラウレートまたはジブチルチンジアセテートの如き有機金属化合物や各種アミン類などの硬化触媒を始め、ジオクチルフタレート、アスファルト、またはタールの如き可塑剤成分や、重油または芳香族炭化水素の如き石油系希釈剤成分などを、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0056】
上記の充填材、添加物等は、主にポリオール成分(A)に常法により、あらかじめ練り合わせて使用することができる。
【0057】
本発明の組成物から調整された被覆材を用いて塗工する方法は、ポリオール成分(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び必要に応じて充填材やその他の添加剤成分を所定の混合比で混合(常温)し、可使時間内に下地、例えばコンクリート、金属、プラスチック、FRP、木質物等に塗布して硬化させる方法が挙げられる。本発明によれば、低粘度かつ十分な可使時間を発現することから、作業性に優れた被覆材が得られる。よって、熟練を要するコテ塗りのみならず、ローラー塗りまたは刷毛塗りといった、熟練不要の方法により塗工でき、更にスプレー塗装も可能となる。
【実施例】
【0058】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また本文中「部」とあるのは、質量部を示すものである。
なお、実施例1〜4、及び実施例6中の多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステルとを反応させた後、19F−NMRによって測定した。
【0059】
実施例1<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 92.8g(0.8モル)と、プロピレンオキサイド 46.4g(0.8モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの200mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 97gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。
その後、樹脂溶液からジエチルエーテルを留去し、生成物をKOH2.8gと水400mlの水溶液で洗浄した。単離した有機層は、次いで、非イオン水400mlで洗浄し、再度、ジエチルエーテルを除去し、透明で高粘性の多分岐ポリエーテルポリオール136gを得た。収率94%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,390g/mol、Mw=2,520g/mol、OHV=320mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、27.6%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第1図に、プロトンNMRのチャート図を第2図に示す。
【0060】
実施例2<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した2リットル三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 348g(3モル)と、プロピレンオキサイド 348g(6モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの1リットルのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 5.5gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。次いで、前記開始剤は、NaOMe9gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。濾過した後、メンブレンポンプ吸引機でバス温度75℃でジエチルエーテルを除去した。ジエチルエーテルを完全に除去した後、多分岐ポリエーテルポリオール667gを得た。収率89%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,440g/mol、Mw=3,350g/mol、OHV=265mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、39.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第3図に、プロトンNMRのチャート図を第4図に示す。
【0061】
実施例3<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 69.6g(0.6モル)と、プロピレンオキサイド 104.4g(1.8モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの250mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 1.46gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を4時間還流した。その後、樹脂溶液からジエチルエーテル300mlを留去し、生成物をKOH2.8gと水400mlの水溶液で洗浄した。
単離した有機層は、次いで、非イオン水400mlで2回洗浄し、再度、ジエチルエーテルを除去し、低粘性の透明多分岐ポリエーテルポリオール163.2gを得た。収率94%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,750g/mol、Mw=3,630g/mol、OHV=199mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:2.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、46.3%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第5図に、プロトンNMRのチャート図を第6図に示す。
【0062】
実施例4<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 139.2g(1.2モル)と、プロピレンオキサイド 208.8g(3.6モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの500mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 2.92gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を4時間還流した。次いで、前記開始剤は、NaOMe3.2gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。ジエチルエーテルを完全に除去した後、粘性の多分岐ポリエーテルポリオール310gを得た。収率89%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,580g/mol、Mw=3,710g/mol、OHV=224mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:3であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、45.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第7図に、プロトンNMRのチャート図を第8図に示す。
【0063】
実施例5<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した250ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 11.6g(0.1モル)と、プロピレンオキサイド 11.6g(0.2モル)とを、50mlの乾燥シクロヘキサンに溶解し、次いで、このフラスコを10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 0.76g(モノマー成分に対して0.25モル%)の60質量%水溶液を10mlのジエチルエーテルに溶解し、これを一度にフラスコに加えた。その後、反応混合物は直ちに白濁した。HPF6を加えて1時間内に、反応温度は36℃に上昇した。次いで、該反応混合物はオイルバスで54〜60℃に1時間加熱し、更に、室温で一晩攪拌した。
次いで、前記開始剤は、NaOMe0.3gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。次いで、この白濁した反応混合物をpH6になるまで4時間攪拌した。
反応混合物の下層の白濁層を分離し、シクロヘキサンを完全に除去した後、透明で低粘性の多分岐ポリエーテルポリオール18.7gを得た。収率79%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=2,160g/mol、Mw 6,310g/mol、OHV=224mgKOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。
一方、反応混合物中、透明シクロヘキサン層を乾燥し、低粘性の多分岐ポリエーテルポリオール1.2gを得た。この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=500g/mol、Mw=950g/molであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:2.1であることが判明した。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第9図に、プロトンNMRのチャート図を第10図に示す。
【0064】
実施例6<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 58.0g(0.5モル)と、プロピレンオキサイド 106.0g(1.5モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの500mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 1.0g(モノマー成分に対して0.25モル%)の60質量%水溶液を30分かけて滴下した。その後、反応混合物は僅かに白濁した。反応混合物を室温で一晩攪拌した。ついで、反応溶液をジエチルエーテル250mlで希釈し、次いで、200mlの水で、エーテル層が透明になるまで3回洗浄した。有機層を分離した後、該有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、エーテルを留去し、目的とするポリエーテルポリオール149.3gを得た。収率90%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,540g/モル、Mw=3,200g/モル、OHV=178mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:3であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、47.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第11図に、プロトンNMRのチャート図を第12図に示す。
【0065】
参考例1<ポリオール成分の調製>
前記実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオール212部と水酸基当量350のひまし油788部を混合し、平均水酸基当量が316のポリオール成分(A−1)を得た。
【0066】
参考例2<ポリオール成分の調製>
前記実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオール120部と水酸基当量350のひまし油880部を混合し、平均水酸基当量が325のポリオール成分(A−2)を得た。
【0067】
参考例3<ポリオール成分の調製>
前記実施例5の白濁層から抽出された多分岐ポリエーテルポリオール438部と水酸基当量350のひまし油562部を混合し、平均水酸基当量が256のポリオール成分(A−3)を得た。
【0068】
参考例4<ポリオール成分の調製>
エポキシ当量が188なるビスフェノールA型エポキシ樹脂の40重量部と、ひまし油脂肪酸の60重量部とを、トリフェニルフォスフィンの0.2重量部の存在下に、窒素バブリングしながら110℃で15時間反応させて得られる酸価0.1、水酸基当量265のエポキシエステルの340重量部と、水酸基当量350のひまし油の660重量部をブレンドして、平均水酸基当量316のポリオール成分(A−4)を得た。
【0069】
参考例5<ポリオール成分の調製>
ソルビトールのプロピレンオキサイド付加物である水酸基当量112、官能基数6のエクセノール500SO(旭硝子(株)社製)330部と水酸基当量350のひまし油670部を混合し、平均水酸基当量206のポリオール成分(A−5)を得た。
【0070】
参考例6<ポリオール成分の調製>
トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物である水酸基当量138、官能基数3のエクセノール400MP(旭硝子(株)社製)240部と水酸基当量350のひまし油760部を混合し、平均水酸基当量256のポリオール成分(A−6)を得た。
【0071】
参考例7<ポリオール成分の調製>
芳香環を持つ水酸基当量200のポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂ニカノールK−140(三菱ガス化学(株)社製)490部と水酸基当量350のひまし油510部を混合し、平均水酸基当量256のポリオール成分(A−7)を得た。
【0072】
参考例8<イソシアネート成分の調製>
MDIが40質量%、MDI中の4,4’−MDIが97質量%である市販のクルードMDI(ミリオネートMR200:日本ポリウレタン工業(株)製)100重量部、
4,4’−MDIが50質量%、2,4’−MDIが50質量%であるMDI(ルプラネートMI:BASF INOACポリウレタン(株)製)を26重量部、及び、
4,4’−MDI(ミリオネートMT:日本ポリウレタン工業(株)製)を24重量部加え、イソシアネート成分(B)を得た。
【0073】
実施例7
参考例1で得られたポリオール成分(A−1)500部、炭酸カルシウム460部、顔料25部をプラネタリーミキサーを用い真空脱泡しながら均一混合したコンパウンドと、、参考例8で得られたイソシアネート成分(B)とをイソシアネート当量と水酸基当量の比率1.15となる割合で用いて、下記の各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0074】
<混合粘度及び可使時間評価試験>
(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合し、25℃の恒温水層につけた。BM型粘度計ローターNo.4、6rpmにて5分後の粘度を測定し、その値を混合粘度とした。その後測定を続け、50,000mPa・sに到達した時間を可使時間とした。
【0075】
<塗膜の物性評価試験>
(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合後、25℃×7日間養生したシートを用いて、ショアーD硬度(JIS K−6253)、引張強度(JIS K−6251)、伸び率(JIS K−6251)、引裂強度(JIS K−6252)の評価を行った。
【0076】
<被覆面の表面発泡性の試験>
スレート板上に湿気硬化型ウレタン系プライマー(プライアデックT−150−35、大日本インキ化学工業(株)製)を塗布、乾燥後、(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合後、塗布量1.5kg/m2となるようにプライマー層上にコテ塗りで塗工、35℃80%の条件下で硬化させて、その表面に発生する気泡の有無の評価を行った。
【0077】
実施例8
参考例2のポリオール成分(A−2)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0078】
比較例1
参考例3のポリオール成分(A−4)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0079】
比較例2
参考例4のポリオール成分(A−5)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
第1表に示す通り、本発明のウレタン系樹脂組成物は、低粘度であり、かつ、高温、多湿環境下でも発泡せず平滑性に優れ、更に硬質の被覆面を形成する。これに対し、芳香族系ポリオールを含有する硬質ウレタン被覆材の場合(比較例1)、混合粘度が高く、ローラー塗布には適さない。また、線状多官能ポリオールを用いた場合(比較例2)も、混合粘度が高く、さらには、高温多湿下において被覆面に発泡が見られ、平滑性という点においても乏しい。
【0082】
実施例9
参考例3で得られたポリオール成分(A−3)500部、炭酸カルシウム460部、顔料25部、コンパウンド中625ppmとなるジブチル錫ジラウレートをプラネタリーミキサーを用い真空脱泡しながら均一混合したコンパウンドにノルボルネンジイソシアネート(以下、「NBDI」と略記する。)をイソシアネート当量と水酸基当量の比率1.15となる割合で用いて、実施例7と同様にして混合粘度及び可使時間の評価、並びに塗膜の物性評価試験を行った。更に、下記の方法に従い、ひび割れ追従性評価試験、及び耐候性試験を行った。これらの結果を第2表に示す。
【0083】
<ひび割れ追従性評価試験>
日本道路公団コンクリート塗装材の品質規格試験法に準拠し、ひび割れ追従性試験を実施した。評価結果は、ひび割れ追従性が0.8mm以上を◎、0.4mm以上を○、0.4mm未満を×とした。
【0084】
<耐候性試験>
物性評価方法にて作製したシートから20mm×50mmの試験片を切り出し、耐候試験片を作製した。耐候試験法としては、サンシャインウエザメーター(スガ試験機(株)製WEL-SUN-HCH-B型)を用いて促進耐候試験を行った。
試験条件:温度 63±3℃、 サイクル 120分中18分降雨、時間1000hrs
評価項目:色差(ΔE)、被覆材はグレー色を使用
【0085】
実施例10
イソシアネート成分として水添MDIである「デスモジュールW」(住友バイエルウレタン(株)製)を用いた以外は、実施例9と同様にして各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0086】
比較例3
参考例6のポリオール成分(A−6)を用いた以外は、実施例9と同様に各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0087】
比較例4
参考例7のポリオール成分(A−7)を用い、イソシアネート成分としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるミリオネートMR200(日本ポリウレタン(株)製)を使用し、ジブチルチンジラウレートを添加しない以外は、実施例9と同様に各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0088】
【表2】
第2表に示す通り、本発明のウレタン系樹脂組成物は、低粘度であり、硬質の被覆面を形成し、更に、ひび割れ追従性に優れる。また、紫外線劣化による黄変を低減し、意匠性にも優れるという特長を有する。これに対して、多官能ポリオールの官能基数が少ない場合(比較例3)、ひび割れ追従性は優れているものの、硬質化は困難であり、硬質被覆材としての性能を満たさない。また、芳香族イソシアネートを使用した場合(比較例4)、ポリオール成分に問わずひび割れ追従性に乏しく、被覆面が極度に黄変し、意匠性を損なう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1図は、実施例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図2】第2図は、実施例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図3】第3図は、実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図4】第4図は、実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図5】第5図は、実施例3で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図6】第6図は、実施例3で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図7】第7図は、実施例4で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図8】第8図は、実施例4で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図9】第9図は、実施例5で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図10】第10図は、実施例5で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図11】第11図は、実施例6で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図12】第12図は、実施例6で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系樹脂組成物のポリオール成分として有用な新規な多分岐ポリエーテルポリオール、及び、作業性に優れると共に、硬質な硬化物を与えるウレタン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなるウレタン系樹脂組成物は、硬化性や硬化塗膜の伸びが良好であるという特長から建設材料用床材などの被覆材に広く用いられている。しかし乍ら、かかるウレタン系樹脂組成物は、一般に軟質である他、塗膜が吸湿して発泡し易く、被膜外観に劣るという問題を有しており、近年、硬質タイプのウレタン系樹脂組成物が種々検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。一方、被覆材の硬質化を図るには、一般にポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応性を高めればよいが、この場合、両者混合時に速やかにこれらが反応してしまう為、十分な可使時間を確保できないものであった。そこで、従来より、ビスフェノール型エポキシ樹脂に高級脂肪酸を反応させた構造のポリオールと、ひまし油脂肪酸との混合物をポリオール成分として用い、かつ、ピュアMDIとポリメリックMDIとを所定割合で配合したものをポリイソシアネート成分として用いることによって、可使時間を十分に確保し乍らも硬質で、かつ、高温多湿下であっても発泡し難い硬質タイプのウレタン系被服用樹脂組成物が知られている(下記、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、このビスフェノール型エポキシ樹脂に高級脂肪酸を反応させた構造のポリオールと、ひまし油との混合物をポリオール成分として用い、かつ、ポリイソシアネート成分としてピュアMDIとポリメリックMDIとを所定割合で配合したものを用いる技術は、確かに可使時間が長く、かつ、硬質な塗膜が形成されるものの、とりわけポリオール成分の粘度が著しく高いため、刷毛塗りやローラー塗り、スプレー塗布といった、熟練を要することなく、かつ、表面仕上がりに斑の生じない塗工方法への適用が困難なものであった。
【特許文献1】特開昭57−92015号公報
【特許文献2】特開2001−187863
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として、十分な可使時間を確保でき、また、高い硬度を硬化塗膜に付与できると共に、更に、粘度が従来になく低い新規な多分岐ポリエーテルポリオール、及び、これを含有する作業性と塗膜硬度に優れるウレタン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを開環反応によって共重合させて得られる多分岐構造を有し、かつ、1級水酸基と2級水酸基とを有し、更に、所定の全水酸基量及び分子量を有する化合物をウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として用いることにより、可使時間も長く且つ硬化時の架橋密度も高くなると同時に、当該化合物の慣性半径が小さくなり、低粘度化を図ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオールに関する。
【0007】
また、本発明は、ポリオール成分(A)、及びポリイソシアネート成分(B)とを必須成分とするウレタン系樹脂組成物であって、前記多分岐ポリエーテルポリオールをポリオール成分(A)として用いることを特徴とするウレタン系樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウレタン系樹脂組成物におけるポリオール成分として、十分な可使時間を確保でき、また、高い硬度を硬化塗膜に付与できると共に、更に、粘度を従来になく低くいポリエーテルポリオールを提供できる。よって、これを含有するウレタン系樹脂組成物は、優れた作業性と塗膜硬度とを兼備させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールである。本発明では、このような構造を有することから、当該多分岐ポリエーテルポリオールの慣性半径が小さくなって、分子同士の絡みが少なくなる結果、粘度が低くなる。
【0010】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)は、下記一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0011】
【化1】
ここで、一般式(1)中、R1は、メチレン基、エチレン基、若しくはプロピレン基であり、一方、R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、又は炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。また、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0012】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタンの中でも、慣性半径がより小さくなって粘度低減に効果的であり、また、硬化物の硬度も良好となる点から、R1がメチレン基であり、かつ、R2が炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物、とりわけ3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンが好ましい。
【0013】
次に、上記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と開環反応させる1官能性エポキシ化合物(a2)は、オレフィンエポキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル等が挙げられる。
【0014】
ここで、オレフィンエポキサイドは、具体的には、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシドが挙げられる。
【0015】
アルキルグリシジルエーテルは、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0016】
アルキルグリシジルエステルは、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。
【0017】
これらの中でも特に、塗膜硬度が良好であり、また、分子量が小さくなる点からオレフィンエポキサイドが好ましく、とりわけプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、又は1−ヘキセンオキサイドが好ましい。
【0018】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させる方法は、具体的には、以下の(方法1)〜(方法3)が挙げられる。
【0019】
(方法1)
方法1は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合し、これらをパーオキサイドフリーの有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、又はジオキソランで、原料成分/有機溶剤の質量比が1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で溶解する。
【0020】
得られた溶液を−10℃〜−15℃まで攪拌しながら冷却、次いで、重合開始剤を単独で、或いは溶液状態で、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.5時間かけて滴下する。ここで、重合開始剤は、原料モノマーの全質量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.75〜0.3質量%なる割合で使用できる。また、重合開始剤を溶液状態で使用する場合、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、特に25〜50質量%であることが好ましい。ついで、この重合溶液を25℃になる迄攪拌し、次いで、リフラックスする温度まで加熱し、0.5〜3時間かけて原料成分を全て反応するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。
【0021】
重合後、得られた前記多分岐ポリエーテルポリオールは、前記重合開始剤と当量の水酸化アルカリ水溶液による攪拌、又は、前記重合開始剤と当量のナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドの添加によって中和する。中和後、濾過し、溶媒で目的物を抽出後、減圧下に溶媒を留去し、目的とする多分岐ポリエーテルポリオールを得ることができる。
【0022】
(方法2)
方法2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、70℃以上の沸点を有する炭化水素系溶媒中に溶解する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、原料モノマーと炭化水素系溶媒との比率は、前者:後者が1:1〜1:10、特に1:2.5〜1:3.5であることが好ましい。
【0023】
この混合物の温度は、0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持され、次いで、攪拌下に原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%の重合開始剤を一度に加える。
重合開始剤の添加直後、系内は不均一系になって25〜40℃まで系内温度が上昇する。一旦、15〜25℃まで冷却した後、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0024】
(方法3)
方法3は、原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%となる量の重合開始剤を、70℃以上の沸点を有する炭化水素系有機溶媒に溶解し、これを0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、該炭化水素系溶媒中の重合開始剤濃度は、0.01〜1質量%、特に0.025〜0.25質量%であることが好ましい。
【0025】
この溶液に対して、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2))=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、混合した混合物を、系内の温度が20〜35℃になるように連続的に滴下する。滴下終了後も系内の温度が20〜25℃になるまで攪拌を行う。次いで、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0026】
ここで用いる重合開始剤は、H2SO4、HCl、HBF4、HPF6、HSbF6、HAsF6、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4などのルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールイオドニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールイオドニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネートなどのオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステルなどのアルキル化剤が挙げられる。
【0027】
これらのなかでも特に、HPF6、HSbF6、HAsF6、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが活性に優れる点から好ましく、特にHPF6及びトリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0028】
このようにして得られる多分岐ポリエーテルポリオールは、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴としている。
【0029】
即ち、本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐構造を有することから該多分岐ポリエーテルポリオールの慣性半径が小さくなり、更に、数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500という低い値を有することから、従来になく流動性が極めて良好となり、ウレタン系樹脂組成物として作業性が飛躍的に改善される。また、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであり、分子量が小さい割に多くの水酸基を有することから硬化時の架橋密度が高くなって、硬質の塗膜を形成できる。
【0030】
更に、分子構造中に1級水酸基(H1)のみならず、2級水酸基(H2)を有することから、該2級水酸基(H1)の反応遅延性に起因して可使時間を長時間確保することができる。本発明においてこのような反応性の低い2級水酸基(H2)を有しながらも、最終的な硬化物の硬度が良好となるのは、当該多分岐ポリエーテルポリオールの分子構造が球状形状をとり、該球状体の外側に向けて水酸基が存在するため、反応速度が低下しても、最終的には殆どの水酸基が十分に反応に寄与し、硬化物の架橋密度が極めて高くなるためである。このような可使時間と硬化物硬度とのバランスの点から特に前記2級水酸基(H2)の存在割合が全水酸基数に対して20〜70%となる割合であることが好ましい。
【0031】
なお、多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステルとを反応させた後、19F−NMRで測定することによって特定することができる。
【0032】
このような多分岐ポリエーテルポリオールの具体的構造は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる種々の構造が含まれる。具体的には、下記一般式(1)
【0033】
【化2】
(ここで、一般式(1)中、R1及びR2は、前記したものと同一である。)
で表されるヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、下記一般式(2)
【0034】
【化3】
(ここで、一般式(2)中、R3は前記1官能性エポキシ化合物(a2)のエポキシ基の他の構造を表す。)で表される1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させた場合、下記の構造で表される繰り返し単位、および、末端構造単位の中から適宜選択される構造単位で前記多分岐ポリエーテルポリオールは構成されることになる。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
ここで、前記各構造単位において実線部分は当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、他の構造単位とエーテル結合を形成する単結合を示す。また、前記OR1〜OR3、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)に起因する構造単位であって、OR1〜OR3は繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は末端構造単位を表す。
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記1官能性エポキシ化合物(a2)に起因する構造単位であって、ER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は末端構造単位を表す。
【0038】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、前記OR1〜OR3及びER1から選択される繰り返し単位によって多分岐構造が形成され、末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有するものである。なお、これらの繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していてもよいし、OR1〜OR3が分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであってもよい。なお、本発明では2級水酸基(H2)が必須であることから、前記EE1は必須の構造単位として多分岐ポリエーテルポリオール中に存在する。
【0039】
本発明のウレタン系樹脂組成物は、ポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)との二成分系硬化性組成物であって、当該ポリオール成分(A)として、前記多分岐ポリエーテルポリオールを用いることを特徴としている。
本発明では、ポリオール成分(A)として、前記多分岐ポリエーテルポリオールに加え、水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを併用することが、2液混合状態での混合物の疎水性が高まり硬化時の発泡を抑制できる点から好ましい。
【0040】
かかる水酸基含有脂肪酸アルキルエステルとは、ステアリン酸、リノール酸等の高級脂肪酸を、グリコール及びグリセリンなどの多価アルコールと水酸基が残存するように反応させた水酸基含有のエステル化合物、リシノール酸などの水酸基含有高級脂肪酸をモノアルコール、グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどと反応させたエステル化合物などの他、ひまし油等の水酸基含有天然油脂が挙げられる。
また、椰子油、大豆油などの水酸基を実効量含有しない天然油脂であっても、これらを多価アルコールとエステル交換反応させて水酸基を導入したものであってもよい。
【0041】
更に、上記した水酸基含有脂肪酸アルキルエステルのうち、アルキル鎖に二重結合を含むものは、更に疎水性を高めるべく、ジシクロペンタジエンで変性したものも好ましく用いることができる。これらのなかでも特に、塗膜の疎水性向上の効果が顕著である点から、水酸基価100〜300mg・KOH/g、かつ、アルキル鎖部分の炭素原子数10〜25のものがとりわけ好ましい。
【0042】
なお、ポリオール成分(A)中において、多分岐ポリマーポリオールと水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルとの使用割合は、前者/後者の質量比で、3/7〜9/1であることが発泡抑制の効果の点から好ましい。
【0043】
前記ポリオール成分(A)としては、更に本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用のエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、トリメチロールプロパン等の単鎖ポリオール類、これら単鎖ポリオール類とアルキレンオキサイド類(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等)を重合させたポリアルキレンエーテルポリオール類あるいはフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ヘット酸、コハク酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸と前述の単鎖グリコール類とのエステル化反応によって得られるポリエステルポリオール類、ポリオール類に付加重合させたイプシロンカプロラクトンのポリオールやポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂等を用いることができる。
【0044】
次に、本発明のウレタン系樹脂組成物において前記ポリオール成分(A)と組み合わされる、ポリイソシアネート成分(B)は、例えば、公知の脂肪族系ポリイソシアネート及び芳香族系ポリイソシアネートを用いることができる。
【0045】
ここで、脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する。)などのアルキレンジイソシアネート、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネート、ビューレット変性HDI及びイソシアヌレート変性HDIなどのジイソシアネート化合物の3量体、並びにHDIとトリメチロールプロパンとの付加反応化合物などが挙げられる。
【0046】
次に、芳香族系ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略称する。)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、「ポリメリックMDI」と略記する。)、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する。)、あるいは、ウレチジオン変性TDIなどのジイソシアネート化合物の2量体などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも特に硬化物の硬度に優れる点から、芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、とりわけポリメリックMDIが硬度の改善効果が顕著である点から好ましい。ここで、ポリメリックMDIは、アニリンとホルマリンとの重縮合によって得られる高分子量体をイソシアネート化したものであり、MDI、及びそれ以上の核体数を有するものの混合物として用いられる。通常、核体数が増加するに従い、硬化物の硬度は高まるものの増粘しやすくなり、その一方で、核体数が低下するに従い、ポリオール成分(A)との相溶性が良好で、粘度は低くなるものの、結晶化しやすくなって低温での安定性に劣る。そこで、本発明ではポリメリックMDIに占める前記MDIの割合、即ち、2官能性成分の割合を50〜80質量%となる割合に調節することがこれらの性能バランスの点から好ましい。とりわけこの物性バランスに優れ、かつ、被膜面の色斑防止といった、所謂、仕上がり性が良好となる点から60〜70質量%であることが好ましい。
【0048】
なお、ポリイソシアネート成分(B)として、単独で使用されるMDI、或いは、ポリメリックMDIにおける核体数の調整の為に使用されるMDIは、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,2’−MDI」と略記する。)(イ)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,4’−MDI」と略記する。)(ロ)及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「4,4’−MDI」と略記する。)(ハ)から構成される。ここで、MDI中の2,2’−MDI(イ)と2,4’−MDI(ロ)の合計質量((イ)+(ロ))が少なくなると、低温でポリイソシアネート成分(B)が結晶化しやすく、逆に、前記合計質量((イ)+(ロ))が多くなると、硬化物の硬度が発現し難くなる傾向にある。従って、これら(イ)〜(ハ)の質量比は、((イ)+(ロ)):(ハ)=5:95〜40:60、とりわけ((イ)+(ロ)):(ハ)=10:90〜30:70の範囲であることが、ポリイソシアネート成分(B)の低温安定性、及び硬化物硬度の点から好ましい。
【0049】
また、本発明ではポリイソシアネート成分(B)として、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いた場合、その硬化皮膜は硬質であり乍ら、適度な柔軟性を発現し、ひび割れに対する十分な追従性を発現する。また、芳香族系ポリイソシアネートを用いた場合に生じやすい紫外線劣化による黄変を低減させることができ、意匠性に優れた被覆面を形成することができる。
【0050】
かかる、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートは、具体的には、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジメタノナフタレンジイソシアネート、及び、これらとポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
ここで使用し得るポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、トリメチロールプロパン等のアルキレンジオール、或いは、これらのアルキレンジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを重合させたポリアルキレンエーテルポリオールが挙げられる。また、前記アルキレンジオールに、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ヘット酸、コハク酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸とのエステル化反応によって得られるポリエステルポリオール類、前記アルキレンジオールにイプシロンカプロラクトンを共重合させたポリオール等が挙げられる。
これらに中でも特に、硬化被膜の硬度と柔軟性とのバランスが顕著に良好となる点からノルボルネンジイソシアネート、及びジメタノナフタレンジイソシアネートが好ましい。
【0051】
本発明では、上記した脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いることにより、硬化被膜の硬度がショアーD75以上と硬質であり、かつ伸度が60%以上と高伸度となる。よって、本発明において脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いたウレタン系樹脂組成物は、下地基材のひび割れに十分に追従し、信頼性の高い被覆性能を得ることができる。また、高い耐候性を有し、優れた黄変防止性を有しているため、意匠性を長期保持することの出来る被覆面を提供することが出来る。
【0052】
また、本発明では、ポリイソシアネート成分(B)として前記脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートを用いる場合、前記した水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを併用することにより、硬度を保持し乍ら柔軟性をより高めることができる。
【0053】
本発明のウレタン系樹脂組成物を被覆材に用いる場合、前記ポリオール成分(A)及び前記ポリイソシアネート成分(B)に、更に充填材、及び必要に応じてその他各種の添加剤を加えて目的とする被覆材を調整できる。なお、本発明の組成物から得られる被覆材は、ショアーD硬度70以上の硬質被覆材として、機械強度のみならず低粘度で作業性に優れるという顕著な性能を発現する。即ち、本発明では、ポリオール成分(A)とイソシアネート成分(B)とを混合した場合の粘度が、ローラー塗布が可能となる1000mPa・s以下になるという特長を有する。
【0054】
ここで充填材としては、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルクなどが挙げられる。
【0055】
また、他の添加剤成分としては、活性アルミナ粉末、合成ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、消石灰、生石灰、水酸化マグネシウム、無水石膏、塩化カルシウム、合成ハイドロタルサイト、活性炭、活性白土の如き吸湿剤、アゾ系、銅フタロシアニン系、弁柄、黄鉛、酸化チタン、亜鉛華またはカーボンブラックの如き有機ないしは無機系の着色顔料、および、鉛丹、鉛白、塩基性クロム酸塩、塩基性硫酸鉛、ジンククロメート、亜鉛末またはMIOの如き防錆顔料、さらには、チキソ付与剤、レベリング剤、吸湿剤、シランあるいはチタネート系カップリング剤などの各種助剤が挙げられる。さらに必要に応じ、ジブチルチンジラウレートまたはジブチルチンジアセテートの如き有機金属化合物や各種アミン類などの硬化触媒を始め、ジオクチルフタレート、アスファルト、またはタールの如き可塑剤成分や、重油または芳香族炭化水素の如き石油系希釈剤成分などを、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0056】
上記の充填材、添加物等は、主にポリオール成分(A)に常法により、あらかじめ練り合わせて使用することができる。
【0057】
本発明の組成物から調整された被覆材を用いて塗工する方法は、ポリオール成分(A)、ポリイソシアネート成分(B)、及び必要に応じて充填材やその他の添加剤成分を所定の混合比で混合(常温)し、可使時間内に下地、例えばコンクリート、金属、プラスチック、FRP、木質物等に塗布して硬化させる方法が挙げられる。本発明によれば、低粘度かつ十分な可使時間を発現することから、作業性に優れた被覆材が得られる。よって、熟練を要するコテ塗りのみならず、ローラー塗りまたは刷毛塗りといった、熟練不要の方法により塗工でき、更にスプレー塗装も可能となる。
【実施例】
【0058】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また本文中「部」とあるのは、質量部を示すものである。
なお、実施例1〜4、及び実施例6中の多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステルとを反応させた後、19F−NMRによって測定した。
【0059】
実施例1<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 92.8g(0.8モル)と、プロピレンオキサイド 46.4g(0.8モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの200mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 97gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。
その後、樹脂溶液からジエチルエーテルを留去し、生成物をKOH2.8gと水400mlの水溶液で洗浄した。単離した有機層は、次いで、非イオン水400mlで洗浄し、再度、ジエチルエーテルを除去し、透明で高粘性の多分岐ポリエーテルポリオール136gを得た。収率94%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,390g/mol、Mw=2,520g/mol、OHV=320mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、27.6%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第1図に、プロトンNMRのチャート図を第2図に示す。
【0060】
実施例2<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した2リットル三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 348g(3モル)と、プロピレンオキサイド 348g(6モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの1リットルのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 5.5gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。次いで、前記開始剤は、NaOMe9gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。濾過した後、メンブレンポンプ吸引機でバス温度75℃でジエチルエーテルを除去した。ジエチルエーテルを完全に除去した後、多分岐ポリエーテルポリオール667gを得た。収率89%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,440g/mol、Mw=3,350g/mol、OHV=265mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、39.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第3図に、プロトンNMRのチャート図を第4図に示す。
【0061】
実施例3<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 69.6g(0.6モル)と、プロピレンオキサイド 104.4g(1.8モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの250mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 1.46gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を4時間還流した。その後、樹脂溶液からジエチルエーテル300mlを留去し、生成物をKOH2.8gと水400mlの水溶液で洗浄した。
単離した有機層は、次いで、非イオン水400mlで2回洗浄し、再度、ジエチルエーテルを除去し、低粘性の透明多分岐ポリエーテルポリオール163.2gを得た。収率94%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,750g/mol、Mw=3,630g/mol、OHV=199mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:2.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、46.3%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第5図に、プロトンNMRのチャート図を第6図に示す。
【0062】
実施例4<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 139.2g(1.2モル)と、プロピレンオキサイド 208.8g(3.6モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの500mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 2.92gの60質量%水溶液を10分で滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を4時間還流した。次いで、前記開始剤は、NaOMe3.2gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。ジエチルエーテルを完全に除去した後、粘性の多分岐ポリエーテルポリオール310gを得た。収率89%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,580g/mol、Mw=3,710g/mol、OHV=224mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:3であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、45.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第7図に、プロトンNMRのチャート図を第8図に示す。
【0063】
実施例5<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した250ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 11.6g(0.1モル)と、プロピレンオキサイド 11.6g(0.2モル)とを、50mlの乾燥シクロヘキサンに溶解し、次いで、このフラスコを10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 0.76g(モノマー成分に対して0.25モル%)の60質量%水溶液を10mlのジエチルエーテルに溶解し、これを一度にフラスコに加えた。その後、反応混合物は直ちに白濁した。HPF6を加えて1時間内に、反応温度は36℃に上昇した。次いで、該反応混合物はオイルバスで54〜60℃に1時間加熱し、更に、室温で一晩攪拌した。
次いで、前記開始剤は、NaOMe0.3gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。次いで、この白濁した反応混合物をpH6になるまで4時間攪拌した。
反応混合物の下層の白濁層を分離し、シクロヘキサンを完全に除去した後、透明で低粘性の多分岐ポリエーテルポリオール18.7gを得た。収率79%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=2,160g/mol、Mw 6,310g/mol、OHV=224mgKOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。
一方、反応混合物中、透明シクロヘキサン層を乾燥し、低粘性の多分岐ポリエーテルポリオール1.2gを得た。この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=500g/mol、Mw=950g/molであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:2.1であることが判明した。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第9図に、プロトンNMRのチャート図を第10図に示す。
【0064】
実施例6<多分岐ポリエーテルポリオールの合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 58.0g(0.5モル)と、プロピレンオキサイド 106.0g(1.5モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの500mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF6 1.0g(モノマー成分に対して0.25モル%)の60質量%水溶液を30分かけて滴下した。その後、反応混合物は僅かに白濁した。反応混合物を室温で一晩攪拌した。ついで、反応溶液をジエチルエーテル250mlで希釈し、次いで、200mlの水で、エーテル層が透明になるまで3回洗浄した。有機層を分離した後、該有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、エーテルを留去し、目的とするポリエーテルポリオール149.3gを得た。収率90%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,540g/モル、Mw=3,200g/モル、OHV=178mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:3であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、47.0%であった。この多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図を第11図に、プロトンNMRのチャート図を第12図に示す。
【0065】
参考例1<ポリオール成分の調製>
前記実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオール212部と水酸基当量350のひまし油788部を混合し、平均水酸基当量が316のポリオール成分(A−1)を得た。
【0066】
参考例2<ポリオール成分の調製>
前記実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオール120部と水酸基当量350のひまし油880部を混合し、平均水酸基当量が325のポリオール成分(A−2)を得た。
【0067】
参考例3<ポリオール成分の調製>
前記実施例5の白濁層から抽出された多分岐ポリエーテルポリオール438部と水酸基当量350のひまし油562部を混合し、平均水酸基当量が256のポリオール成分(A−3)を得た。
【0068】
参考例4<ポリオール成分の調製>
エポキシ当量が188なるビスフェノールA型エポキシ樹脂の40重量部と、ひまし油脂肪酸の60重量部とを、トリフェニルフォスフィンの0.2重量部の存在下に、窒素バブリングしながら110℃で15時間反応させて得られる酸価0.1、水酸基当量265のエポキシエステルの340重量部と、水酸基当量350のひまし油の660重量部をブレンドして、平均水酸基当量316のポリオール成分(A−4)を得た。
【0069】
参考例5<ポリオール成分の調製>
ソルビトールのプロピレンオキサイド付加物である水酸基当量112、官能基数6のエクセノール500SO(旭硝子(株)社製)330部と水酸基当量350のひまし油670部を混合し、平均水酸基当量206のポリオール成分(A−5)を得た。
【0070】
参考例6<ポリオール成分の調製>
トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物である水酸基当量138、官能基数3のエクセノール400MP(旭硝子(株)社製)240部と水酸基当量350のひまし油760部を混合し、平均水酸基当量256のポリオール成分(A−6)を得た。
【0071】
参考例7<ポリオール成分の調製>
芳香環を持つ水酸基当量200のポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂ニカノールK−140(三菱ガス化学(株)社製)490部と水酸基当量350のひまし油510部を混合し、平均水酸基当量256のポリオール成分(A−7)を得た。
【0072】
参考例8<イソシアネート成分の調製>
MDIが40質量%、MDI中の4,4’−MDIが97質量%である市販のクルードMDI(ミリオネートMR200:日本ポリウレタン工業(株)製)100重量部、
4,4’−MDIが50質量%、2,4’−MDIが50質量%であるMDI(ルプラネートMI:BASF INOACポリウレタン(株)製)を26重量部、及び、
4,4’−MDI(ミリオネートMT:日本ポリウレタン工業(株)製)を24重量部加え、イソシアネート成分(B)を得た。
【0073】
実施例7
参考例1で得られたポリオール成分(A−1)500部、炭酸カルシウム460部、顔料25部をプラネタリーミキサーを用い真空脱泡しながら均一混合したコンパウンドと、、参考例8で得られたイソシアネート成分(B)とをイソシアネート当量と水酸基当量の比率1.15となる割合で用いて、下記の各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0074】
<混合粘度及び可使時間評価試験>
(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合し、25℃の恒温水層につけた。BM型粘度計ローターNo.4、6rpmにて5分後の粘度を測定し、その値を混合粘度とした。その後測定を続け、50,000mPa・sに到達した時間を可使時間とした。
【0075】
<塗膜の物性評価試験>
(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合後、25℃×7日間養生したシートを用いて、ショアーD硬度(JIS K−6253)、引張強度(JIS K−6251)、伸び率(JIS K−6251)、引裂強度(JIS K−6252)の評価を行った。
【0076】
<被覆面の表面発泡性の試験>
スレート板上に湿気硬化型ウレタン系プライマー(プライアデックT−150−35、大日本インキ化学工業(株)製)を塗布、乾燥後、(A)成分を含む前記コンパウンドと(B)成分を混合後、塗布量1.5kg/m2となるようにプライマー層上にコテ塗りで塗工、35℃80%の条件下で硬化させて、その表面に発生する気泡の有無の評価を行った。
【0077】
実施例8
参考例2のポリオール成分(A−2)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0078】
比較例1
参考例3のポリオール成分(A−4)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0079】
比較例2
参考例4のポリオール成分(A−5)を用いた以外は、実施例7と同様にして各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
第1表に示す通り、本発明のウレタン系樹脂組成物は、低粘度であり、かつ、高温、多湿環境下でも発泡せず平滑性に優れ、更に硬質の被覆面を形成する。これに対し、芳香族系ポリオールを含有する硬質ウレタン被覆材の場合(比較例1)、混合粘度が高く、ローラー塗布には適さない。また、線状多官能ポリオールを用いた場合(比較例2)も、混合粘度が高く、さらには、高温多湿下において被覆面に発泡が見られ、平滑性という点においても乏しい。
【0082】
実施例9
参考例3で得られたポリオール成分(A−3)500部、炭酸カルシウム460部、顔料25部、コンパウンド中625ppmとなるジブチル錫ジラウレートをプラネタリーミキサーを用い真空脱泡しながら均一混合したコンパウンドにノルボルネンジイソシアネート(以下、「NBDI」と略記する。)をイソシアネート当量と水酸基当量の比率1.15となる割合で用いて、実施例7と同様にして混合粘度及び可使時間の評価、並びに塗膜の物性評価試験を行った。更に、下記の方法に従い、ひび割れ追従性評価試験、及び耐候性試験を行った。これらの結果を第2表に示す。
【0083】
<ひび割れ追従性評価試験>
日本道路公団コンクリート塗装材の品質規格試験法に準拠し、ひび割れ追従性試験を実施した。評価結果は、ひび割れ追従性が0.8mm以上を◎、0.4mm以上を○、0.4mm未満を×とした。
【0084】
<耐候性試験>
物性評価方法にて作製したシートから20mm×50mmの試験片を切り出し、耐候試験片を作製した。耐候試験法としては、サンシャインウエザメーター(スガ試験機(株)製WEL-SUN-HCH-B型)を用いて促進耐候試験を行った。
試験条件:温度 63±3℃、 サイクル 120分中18分降雨、時間1000hrs
評価項目:色差(ΔE)、被覆材はグレー色を使用
【0085】
実施例10
イソシアネート成分として水添MDIである「デスモジュールW」(住友バイエルウレタン(株)製)を用いた以外は、実施例9と同様にして各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0086】
比較例3
参考例6のポリオール成分(A−6)を用いた以外は、実施例9と同様に各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0087】
比較例4
参考例7のポリオール成分(A−7)を用い、イソシアネート成分としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるミリオネートMR200(日本ポリウレタン(株)製)を使用し、ジブチルチンジラウレートを添加しない以外は、実施例9と同様に各種の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0088】
【表2】
第2表に示す通り、本発明のウレタン系樹脂組成物は、低粘度であり、硬質の被覆面を形成し、更に、ひび割れ追従性に優れる。また、紫外線劣化による黄変を低減し、意匠性にも優れるという特長を有する。これに対して、多官能ポリオールの官能基数が少ない場合(比較例3)、ひび割れ追従性は優れているものの、硬質化は困難であり、硬質被覆材としての性能を満たさない。また、芳香族イソシアネートを使用した場合(比較例4)、ポリオール成分に問わずひび割れ追従性に乏しく、被覆面が極度に黄変し、意匠性を損なう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1図は、実施例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図2】第2図は、実施例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図3】第3図は、実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図4】第4図は、実施例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図5】第5図は、実施例3で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図6】第6図は、実施例3で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図7】第7図は、実施例4で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図8】第8図は、実施例4で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図9】第9図は、実施例5で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図10】第10図は、実施例5で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【図11】第11図は、実施例6で得られた多分岐ポリエーテルポリオールの13C−NMRのチャート図である。
【図12】第12図は、実施例6で得られた多分岐ポリエーテルポリオールのプロトンNMRのチャート図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記多分岐ポリエーテルポリオールが、その分子構造中に2級水酸基(H2)を、全水酸基数に対して20〜70%の割合で有するものである請求項1記載の多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項3】
前記1官能性エポキシ化合物(a2)が、オレフィンエポキサイドである請求項1又は2記載の多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項4】
ポリオール成分(A)、及びポリイソシアネート成分(B)とを必須成分とするウレタン系樹脂組成物であって、請求項1〜3の何れか1つに記載の多分岐ポリエーテルポリオールを前記ポリオール成分(A)として用いることを特徴とするウレタン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート成分(B)が、ポリメリックMDIである請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ポリメリックMDIが、MDIを50〜80質量%となる割合で含有するものである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート成分(B)が、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートである請求項4記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリオール成分(A)が、前記多分岐ポリエーテルポリオールに加え、水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを含有する請求項4〜7の何れか一つに記載の組成物。
【請求項1】
ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1000〜3500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴とする多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記多分岐ポリエーテルポリオールが、その分子構造中に2級水酸基(H2)を、全水酸基数に対して20〜70%の割合で有するものである請求項1記載の多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項3】
前記1官能性エポキシ化合物(a2)が、オレフィンエポキサイドである請求項1又は2記載の多分岐ポリエーテルポリオール。
【請求項4】
ポリオール成分(A)、及びポリイソシアネート成分(B)とを必須成分とするウレタン系樹脂組成物であって、請求項1〜3の何れか1つに記載の多分岐ポリエーテルポリオールを前記ポリオール成分(A)として用いることを特徴とするウレタン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート成分(B)が、ポリメリックMDIである請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ポリメリックMDIが、MDIを50〜80質量%となる割合で含有するものである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート成分(B)が、脂環式炭化水素構造含有ジイソシアネートである請求項4記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリオール成分(A)が、前記多分岐ポリエーテルポリオールに加え、水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステルを含有する請求項4〜7の何れか一つに記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−282698(P2006−282698A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100813(P2005−100813)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]