説明

多孔性ポリオレフィンフィルム

【課題】 高い透気性、空孔率を維持したまま、優れた取扱性を達成し、なおかつ、蓄電デバイスのセパレータに用いた際に、異物を電解液中に遊離させることが少ない多孔性ポリオレフィンフィルムを提供すること。
【解決手段】 二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けてなり、フィルム総厚みが10〜50μmであり、かつ透気抵抗が10〜500秒/100mlである多孔性ポリオレフィンフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高透気性、高空孔率に加えて、工程取扱性として重要な易滑性に優れる多孔性フィルムに関する。詳しくは、多孔性の二軸配向ポリプロピレンフィルム上に、無配向ポリオレフィン層を設けることで滑り性を向上させ、なおかつ高い透気性と空孔率とを維持した多孔性ポリオレフィンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、光学特性により、工業材料用途、包装材料用途、光学材料用途、電機材料用途など多様な用途で使用されている。このポリプロピレンフィルムに空隙を設け、多孔化した多孔性ポリプロピレンフィルムについても、ポリプロピレンフィルムとしての特性に加えて、透過性や低比重などの優れた特性を併せ持つことから、電池や電解コンデンサーのセパレータや各種分離膜、衣料、医療用途における透湿防水膜、フラットパネルディスプレイの反射板や感熱転写記録シートなど多岐に渡る用途への展開が検討されている。
【0003】
ポリプロピレンフィルムを多孔化する手法としては、様々な提案がなされている。多孔化の方法を大別すると湿式法と乾式法に分類することができる。湿式法とは、ポリプロピレンをマトリックス樹脂とし、シート化後に抽出する被抽出物を添加、混合し、被抽出物の良溶媒を用いて添加剤のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を生成せしめる方法であり、種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。一方、乾式法としては、たとえば、溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法(所謂、ラメラ延伸法)が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。また、乾式法として、無機粒子またはマトリックス樹脂であるポリプロピレンなどに非相溶な樹脂を粒子として多量添加し、シートを形成して延伸することにより粒子とポリプロピレン樹脂界面で開裂を発生させ、空隙を形成する方法も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。さらには、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、所謂β晶法と呼ばれる方法の提案も数多くなされている(たとえば、特許文献4〜6参照)。
【0004】
上記した各種方法で製造した多孔性ポリプロピレンフィルムを蓄電デバイス、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータとして用いる場合、特にβ晶法は通常二軸延伸により空隙を形成することから、他の方法に比較して、高い空孔率を達成することができる。そのため、電池の内部抵抗を低くすることができ、特に大電流を必要とする高出力用の蓄電デバイス用のセパレータに適しているとされている(たとえば、特許文献7参照)。しかしながら、β晶法では空孔率が高いゆえに、フィルム表面の開口率が高く、フィブリルが多数存在するため、フィルム同士を重ね合わせたときにフィブリル同士が引っ掛かってしまう傾向があり、結果として摩擦係数が高くなり、加工工程での取扱性に支障をきたすという問題があった。
【0005】
多孔性フィルムにおいて、摩擦係数が高く、滑り性が低いことに起因する取扱性を改善するための提案としては、フィルム中に粒子を添加する方法(たとえば、特許文献8参照)が提案されている。しかしながら、フィルム中に粒子を添加する方法では、フィルムを取り扱っている最中に、内部から粒子が脱落する場合や、セパレータとして使用中に粒子が電解液中で遊離して、電極上に移動してしまい、絶縁してしまう可能性があることから、対策としては不十分であった。
【特許文献1】特開昭55−131028号公報
【特許文献2】特公昭55−32531号公報
【特許文献3】特開昭57−203520号公報
【特許文献4】特開昭63−199742号公報
【特許文献5】特開平6−100720号公報
【特許文献6】特開平9−255804号公報
【特許文献7】国際公開第05/103127号パンフレット
【特許文献8】特開2005−171230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、高い透気性、空孔率を維持したまま、優れた取扱性を達成し、なおかつ、蓄電デバイスのセパレータに用いた際に、異物を電解液中に遊離させることが少ない多孔性ポリオレフィンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けてなり、フィルム総厚みが10〜50μmであり、かつ透気抵抗が10〜500秒/100mlである多孔性ポリオレフィンフィルムによって達成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、リチウムイオン電池用セパレータに好適な優れたイオン電導性と、加工適性に優れており、セパレータとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いる二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムとは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する微細な貫通孔を多数有しているフィルムである。フィルム中に貫通孔を形成する方法としては、二軸配向させ物性を均一化し、薄膜でありながら高い強度を維持する必要があることから、β晶法を用いることが好ましい。
【0010】
β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、ポリプロピレン樹脂中にβ晶を多量に形成させることが重要となるが、そのためにはβ晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いることが好ましい。β晶核剤としては種々の顔料系化合物やアミド系化合物などを挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン樹脂全体を100質量部とした場合、0.05〜0.5質量部であることが好ましく、0.1〜0.3質量部であればより好ましい。
【0011】
本発明で用いる二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が2〜30g/10分の範囲のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが上記した好ましい範囲を外れると二軸延伸フィルムを得ることが困難となる場合がある。より好ましくは、MFRが3〜20g/10分である。
【0012】
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%であれば好ましく、アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。アイソタクチックポリプロピレン樹脂は市販されている樹脂を用いることができる。
【0013】
本発明で用いる二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムにはホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下の範囲で共重合してもよい。なお、ポリプロピレンへのコモノマーの導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
【0014】
また、上記したポリプロピレン樹脂は0.5〜5質量%の範囲で高溶融張力ポリプロピレンを含有させることが製膜性向上の点で好ましい。高溶融張力ポリプロピレンとは高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂中に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐成分を共重合させたりすることで溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であるが、中でも長鎖分岐成分を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。この高溶融張力ポリプロピレンは市販されており、たとえば、Basell社製ポリプロピレン樹脂PF814、PF633、PF611やBorealis社製ポリプロピレン樹脂WB130HMS、Dow社製ポリプロピレン樹脂D114、D206を用いることができる。
【0015】
本発明で用いる二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、延伸時の空隙形成効率が向上し、孔径が拡大することで透気性が向上するため、ポリプロピレン80〜99質量%とエチレン・α−オレフィン共重合体20〜1質量%との混合物とすることが好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体としては直鎖状低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレンを挙げることができ、中でも、オクテン−1を共重合したエチレン・オクテン−1共重合体を好ましく用いることができる。このエチレン・オクテン−1共重合体は市販されている樹脂、たとえば、ダウ・ケミカル製“Engage(エンゲージ)(登録商標)”(タイプ名:8411、8452、8100など)を挙げることができる。
【0016】
本発明で用いる二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムはβ晶法により多孔化することが好ましいため、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のβ晶形成能が40〜80%であることが好ましい。β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。β晶形成能が80%を超えると、粗大孔が形成される場合があり、蓄電デバイス用のセパレータとしての機能を有さなくなる場合がある。β晶形成能を40〜80%の範囲内にするためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用するのはもちろんのこと、上述のβ晶核剤を添加することが好ましい。β晶形成能としては50〜80%であればより好ましい。
【0017】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層が設けられている。二軸配向ポリプロピレン多孔フィルム(以下、二軸配向フィルムということがある)上に無配向ポリオレフィン系樹脂層(以下、無配向樹脂層ということがある)を設ける方法としては、二軸配向フィルムを製造した後、後工程で無配向樹脂層を形成する樹脂を含む塗液を塗布するか、または無配向樹脂層を別途作成し貼り合わせる方法と、二軸配向フィルムの製造工程中に樹脂層を設ける工程を組み込み、少なくとも一軸方向に共延伸したのち、樹脂層のみを熱処理などで無配向化する方法が挙げられる。しかし、前者では二軸配向フィルムを製造後一旦巻き取り、無配向樹脂層を設ける加工工程で巻き出す必要があり、その際に滑り性が悪く、フィルムにしわが入る場合やフィルム破れが起こる場合があり、収率が低くなってしまうこと、後工程での貼り合わせでは無配向樹脂層に貫通孔を設ける工程が別途必要になることなどから、後者の二軸配向フィルム製造工程中に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設ける方法が好ましい。
【0018】
本発明において、無配向ポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂はポリエチレンやポリプロピレンの単独重合体もしくは共重合体からなる樹脂を好ましく用いることができる。特に、本発明においては、二軸配向フィルムの製造工程中にポリオレフィン系樹脂層を設ける工程を組み込み、少なくとも一軸方向に共延伸したのち、当該樹脂層のみを熱処理などで無配向化することが好ましいため、熱処理工程で貫通孔を塞がない程度にフィルム表面で軟化、流動し、無配向層を形成するような軟化温度を有する樹脂を用いることが好ましく、具体的には軟化温度が二軸配向フィルムの(融点−75℃)〜(融点−10℃)であることが好ましく、(融点−55℃)〜(融点−15℃)であればより好ましい。これは融点が175℃のポリプロピレンフィルムの場合は、100〜165℃であることが好ましく、120〜160℃であると特に好ましいということである。
【0019】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは蓄電デバイスのセパレータ用途に好適に用いるため、透気抵抗が10〜500秒/100mlであることが好ましい。ここで、透気抵抗とはJIS P8117(1998年)で規定されている透気抵抗度(ガーレー)であり、本発明では該JISのB形試験機を用いて評価した値である。透気抵抗が10秒/100ml未満ではフィルム強度が低く、セパレータとして用いた際に容易にピンホールが発生し、短絡の原因となる場合や、電池内部に収納するために捲回した際に破れてしまうなど取扱性に劣る場合がある。逆に500秒/100mlを超える透気抵抗ではイオン電導性に劣ってしまう。セパレータとして優れたイオン電導性を発現させる観点で透気抵抗は30〜300秒/100mlであればより好ましく、50〜200秒/100mlであれば特に好ましい。
【0020】
本発明では、二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けるが、上記した透気抵抗を達成するために、無配向ポリオレフィン系樹脂層の平均厚みが0.2μm以下であることが好ましい。無配向ポリオレフィン系樹脂層の平均厚みが0.2μmを超えると樹脂層表面の貫通孔が減少してしまい、透気性が低下する場合がある。無配向ポリオレフィン系樹脂層の平均厚みとしては滑り性発現のためには0.001〜0.2μmであれば好ましく、より好ましくは0.005〜0.17μm、0.01〜0.15μmであれば滑り性と透気性の両立の点で特に好ましい。
【0021】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの無配向ポリオレフィン系樹脂層表面の表面開口率は、フィルム取扱性、特に滑り性の観点から10〜50%であることが好ましい。表面開口率が10%未満では透気性に劣る場合があり、50%を超えると、二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを形成するポリプロピレンフィブリルが表面に露出しすぎるため、滑り性を悪化させ、フィルムの取扱性を阻害する場合がある。表面開口率はより好ましくは10〜40%であり、10〜35%であれば特に好ましい。
【0022】
無配向ポリオレフィン系樹脂層表面の表面開口率をかかる好ましい範囲とする方法としては、当該樹脂層の平均厚みを好ましくは0.2μm以下となるように設けることで実現することができる。具体的には、未延伸のポリプロピレンシートを長手方向に一軸延伸した後、ポリオレフィン系樹脂の水分散液を一軸延伸ポリプロピレンフィルム上に固形分のみの目付で0.01〜1g/cmで塗布し、ポリオレフィン系樹脂の軟化点(または融点)以上の温度で、かつベースとなる一軸延伸ポリプロピレンフィルムの融点以下の温度で幅方向に延伸、熱固定を行い、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを得る方法を採用することが好ましい。上記のような温度範囲において幅方向に延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂層を無配向とすることができる。このような二軸配向フィルムの製造工程中でコーティングにより無配向ポリオレフィン系樹脂層を得るために、使用するポリオレフィン系樹脂としては、市販の水分散ポリオレフィン系粒子を用いることができ、たとえば三井化学(株)のケミパール(タイプ:W100、WP100など)を好ましく用いることができる。
【0023】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムはセパレータとして用いた際のイオン電導性の観点から空孔率が60〜90%であることが好ましい。空孔率が60%未満ではセパレータとして使用したときに電気抵抗が大きくなり、高出力用途に用いると発熱してしまいエネルギーを損失する場合がある。一方、空孔率が90%を超えると、フィルムの強度が低くなってしまい容易にピンホールが発生し、短絡の原因となる場合や、電池内部に収納するために捲回した際に破れてしまうなど取扱性に劣る場合がある。優れた電池特性と強度を両立させる観点からフィルムの空孔率は65〜85%であればより好ましく、70〜82%であれば特に好ましい。
【0024】
フィルムの空孔率をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、β晶法によりポリプロピレンフィルムを多孔化するに際して、上述したように、ポリプロピレン80〜99質量%とエチレン・α−オレフィン共重合体を20〜1質量%の混合物を用いることで達成しやすくなり、さらに、後述する二軸延伸条件を採用することにより特異的に達成することができる。抽出法やラメラ延伸法ではこのような高空孔率で、なおかつ実用化できる強度を有する多孔フィルムを得ることは困難である。
【0025】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、フィルム総厚みが10〜50μmであることが好ましい。総厚みが10μm未満では使用時にフィルムが破断する場合があり、50μmを超えると蓄電デバイス内にしめる多孔性フィルムの容量が多くなりすぎてしまい、高いエネルギー密度を得ることができなくなる。フィルム総厚みは12〜30μmであればより好ましく、14〜25μmであればなお好ましい。
【0026】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.01〜0.5質量部添加することは好ましいことである。
【0027】
以下に本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの製造方法を具体的に説明する。なお、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0028】
まず、二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂94質量部、同じく市販のMFR2.5g/10分高溶融張力ポリプロピレン樹脂1質量部、さらにメルトインデックス18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂5質量部にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部を混合し、二軸押出機を使用して予め所定の割合で混合した原料を準備する。この際、溶融温度は270〜300℃とすることが好ましい。
【0029】
次に、混合原料を単軸の溶融押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。この際、キャストドラムは表面温度が105〜130℃であることが、キャストフィルムのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシートの端部の成形が後の延伸性に影響するため、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態に基づき、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
【0030】
次に得られた未延伸シートを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、高透気性フィルムを得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
【0031】
具体的な延伸条件としては、まず未延伸シートを長手方向に延伸する温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては90〜120℃、さらに好ましくは95〜110℃の温度を採用することが好ましい。延伸倍率としては3〜6倍、より好ましくは3〜5倍である。
【0032】
本発明の特徴である二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けるために、長手方向に延伸後、いったん冷却したフィルムにコロナ放電処理などにより表面の濡れ性を改良後、該濡れ性改良面にポリオレフィン系樹脂が分散した水分散液を塗布する方法を採用することが好ましい。フィルム上への塗布の方法としては、メイヤーバー、ダイコーター、グラビアコーターなど一般的に用いられているコーターを用いることができる。この際、フィルム上への塗布量としては、樹脂固形分量が0.01〜1g/cmように塗布するのが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂の塗布はポリプロピレンフィルムの両面に施してもよい。
【0033】
次に、水分散液を塗布したポリプロピレンフィルムをステンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、好ましくは130〜155℃に加熱して幅方向に6〜12倍、より好ましくは6〜10倍延伸を行う。なお、このときの横延伸速度としては100〜5,000%/分で行うことが好ましく、1,000〜4,000%/分であればより好ましい。ついで、そのままステンター内で熱固定を行うが、その温度は横延伸温度以上160℃以下が好ましい。さらに、熱固定時にはフィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、特に幅方向の弛緩率を7〜12%とすることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。
【0034】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、優れた透気性、機械特性を有するだけでなく、易滑性にも優れることから、特にリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0036】
(1)β晶形成能
樹脂またはフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から240℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
【0037】
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
【0038】
(2)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーのMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定する。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定する。
【0039】
(3)ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂の融点
ポリプロピレンや固体状のポリオレフィン系樹脂はそのまま試料とし、水に分散しているポリオレフィン系樹脂の場合は水分散液を適量採取し、熱風オーブンにて70℃で乾燥させ、固形分のみを採取して試料とする。
【0040】
固形分5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。窒素雰囲気下で室温から200℃まで20℃/分で昇温したときに観察される融解ピークについて、最も高温側のピーク温度をその樹脂の融点とした。
【0041】
なお、ポリオレフィン系樹脂で融点が観察された場合は、その温度を軟化温度とし、非晶性で融点が存在しない場合は、ガラス転移点を軟化温度とした。
【0042】
(4)透気抵抗
フィルムから1辺の長さ100mmの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形のガーレー試験機を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を3回行った。透過時間の平均値をそのフィルムの透気抵抗とした。
【0043】
(5)空孔率
フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
【0044】
次に、測定したフィルムを280℃、5MPaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。なお、後述する実施例においては、いずれの場合も樹脂の比重dは0.91であった。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式により空孔率を算出した。
【0045】
空孔率(%) = 〔( d − ρ ) / d 〕 × 100
(6)フィルム総厚み
フィルム総厚みはダイヤルゲージを用い、JIS K 7130(1992)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚みを測定した。その5ヶ所の値の平均値を10で割り、1枚あたりのフィルム総厚みを算出した。
【0046】
(7)無配向ポリオレフィン系樹脂層の平均厚み
無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けた本発明のフィルム50mの質量から下記式にて算出される重量平均厚みと、無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けない他は同条件で作成したフィルム50m2の質量から下記式にて算出される重量平均厚みとの差をポリオレフィン系樹脂層の平均厚みとした。
【0047】
重量平均厚み(μm) = 〔( W / 50 ) / ρ 〕× 10
ただし、Wはフィルム50mの大きさの質量(kg)、ρはフィルムの密度(g/cm:測定法は上記(5)の比重に準拠し、比重=密度とした)
(8)表面開口率
多孔性ポリオレフィンフィルムの表面を、1,500倍で撮影した走査型電子顕微鏡写真をB4サイズの用紙に印刷し、任意の100mm四方の範囲について、開口していない領域を黒く塗りつぶした。スキャナーでパソコンに取り込み、電子ファイル化した。該画像を画像処理ソフト“Image−Pro Plus”(Media Cybernetics社製)で処理し、黒く塗りつぶした未開口部分と、それ以外の開口部の面積割合を求め、開口部の割合を表面開口率とした。
【0048】
(9)摩擦係数
フィルムの無配向ポリオレフィン系樹脂層面同士を接触させた際の動摩擦係数を、ASTM D−1894(1995)に従い測定した。動摩擦係数を新東科学(株)製表面性測定機HEIDON−14DRを用いて、サンプル移動速度200mm/分、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定し、アナライジングレコーダーTYPE:HEIDON3655E−99で記録し評価した。
【0049】
A級:動摩擦係数が0.2以上0.6未満
B級:動摩擦係数が0.6以上1.0未満
C級:動摩擦係数が0.2未満または1.0以上
動摩擦係数が0.2未満だと巻きズレを起こす場合があり、逆に1.0を超えると、搬送中に表面に傷が入る場合がある。実用上、A級、B級を合格とした。
【0050】
(10)イオン電導性
プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの等容量混合溶媒中、LiPF6 を1モル/Lの割合で溶解した電解液を作製した。この電解液中にニッケル製正・負極および該正・負極間に多孔性ポリオレフィンフィルムを配置し、LCRメーターを用いて、複素インピーダンス法にてコール・コールプロットを測定し、20,000Hzでのインピーダンスの実部を求めイオン電導性の指標とした。測定は、アルゴン雰囲気のグローブボックス中、25℃において行った。
【0051】
A級:インピーダンス(実部)が0.12Ω未満
B級:インピーダンス(実部)が0.12Ω以上0.15Ω未満
C級:インピーダンス(実部)が0.15Ω以上
(実施例1)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX80E4(以下、PP−1と表記、MFR=5)を94質量部、高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell製ポリプロピレンPF−814(以下、HMS−PPと表記、MFR=3)を1質量部、エチレン−オクテン−1共重合体であるダウ・ケミカル製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分、以下、単にPEと表記)を5質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100、以下、単にβ晶核剤と表記)を0.2質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部(以下、単に酸防剤と表記し、特に記載のない限り3:2の質量比で使用)を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0052】
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。冷却後、キャストドラムに接していた面側にコロナ放電処理を施し、表面濡れ性を改良し、そこに、ポリオレフィン系樹脂粒子の水系分散溶液である三井化学(株)製ケミパール(登録商標)WP100(融点145℃)をメタノール水溶液(濃度50質量%)で固形分濃度2質量%に希釈し、メイヤーバー(No.6)を用いてキャストドラムに接していた面に均一に塗布した。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6.5倍に、延伸速度1,300%/分で延伸した。そのまま、幅方向に8%のリラックスを掛けながら150℃で7秒間の熱処理を行い、総厚み20μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0053】
(実施例2)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、PP−1を96質量部、HMS−PPを1質量部、PEを3質量部に加えて、β晶核剤を0.2質量部、さらに酸防剤0.25質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0054】
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから122℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。冷却後、キャストドラムに接していた面側にコロナ放電処理を施し、表面濡れ性を改良し、そこに、ポリプロピレン系粒子の水系分散溶液である三井化学(株)製ケミパール(登録商標)WP100(融点145℃)をメタノール水溶液(濃度50質量%)で固形分濃度5質量%に希釈し、メイヤーバー(No.12)を用いてキャストドラムに接していた面に均一に塗布した。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、135℃で6.5倍に、延伸速度1,300%/分で延伸した。そのまま、幅方向に7%のリラックスを掛けながら140℃で7秒間の熱処理を行い、総厚み18μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0055】
(実施例3)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、PP−1を94質量部、HMS−PPを3質量部、PEを3質量部に加えて、β晶核剤を0.2質量部、さらに酸防剤0.25質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0056】
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに13秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、105℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に3倍延伸を行った。冷却後、キャストドラムに接していた面側にコロナ放電処理を施し、表面濡れ性を改良し、そこに、ポリエチレン系粒子の水系分散溶液である三井化学(株)製ケミパール(登録商標)W100(融点124℃)をメタノール水溶液(濃度50質量%)で固形分濃度1質量%に希釈し、メイヤーバー(No.6)を用いてキャストドラムに接していた面に均一に塗布した。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、135℃で7倍に、延伸速度1,500%/分で延伸した。そのまま、幅方向に8%のリラックスを掛けながら145℃で7秒間の熱処理を行い、総厚み35μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0057】
(実施例4)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、PP−1を78質量部、HMS−PPを2質量部、PEを20質量部に加えて、β晶核剤を0.2質量部、さらに酸防剤0.25質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0058】
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、30μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、95℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。冷却後、キャストドラムに接していた面側にコロナ放電処理を施し、表面濡れ性を改良し、そこに、ポリエチレン系粒子の水系分散溶液である三井化学(株)製ケミパール(登録商標)W100(融点124℃)をメタノール水溶液(濃度50質量%)で固形分濃度10質量%に希釈し、メイヤーバー(No.3)を用いてキャストドラムに接していた面に均一に塗布した。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で7倍に、延伸速度1,500%/分で延伸した。そのまま、幅方向に8%のリラックスを掛けながら145℃で7秒間の熱処理を行い、総厚み25μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0059】
(実施例5)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、PP−1を97質量部、HMS−PPを3質量部に加えて、β晶核剤を0.2質量部、さらに酸防剤0.25質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、290℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0060】
このチップを単軸押出機に供給して230℃で溶融押出を行い、30μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから115℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4倍延伸を行った。冷却後、フィルムの両面にコロナ放電処理を施し、濡れ性を改良し、そこに、ポリプロピレン系粒子の水系分散溶液である三井化学(株)製ケミパール(登録商標)WP100(融点145℃)をメタノール水溶液(濃度50質量%)で固形分濃度5質量%に希釈し、メイヤーバー(No.6)を用いて両面に均一に塗布した。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、135℃で6倍に、延伸速度1,300%/分で延伸した。そのまま、幅方向に7%のリラックスを掛けながら145℃で7秒間の熱処理を行い、総厚み20μmの多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0061】
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂層を設けないほかは実施例1と同様にポリプロピレン多孔フィルムを採取した。なお、キャストドラム面側の表面開口率は70%であった。
【0062】
(比較例2)
実施例2において、ポリオレフィン系樹脂層に用いる樹脂を、ポリプロピレン系粒子である住友精化(株)製フローブレン(登録商標)(融点155℃)を固形分濃度1質量%となるようにメタノール水溶液に分散させ、塗布した以外は実施例2と同様にして製膜を行った。横延伸、熱固定温度に比較して、ポリプロピレン系粒子の融点が高いため無配向層を形成せず粒子として存在しているため、粒子の脱落が起こった。そのため、巻取り装置のロールに粉末が付着し、その粉末が原因でフィルムに欠点が発生した。そのため、実用性がないと判断し、実用特性(摩擦係数、イオン電導性)評価は実施しなかった。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
本発明の要件を満足する実施例では優れた滑り性とイオン電導性を両立することができており、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いることが可能であると考えられる。一方、比較例では、イオン電導性に劣るか、滑り性に劣っており、特に後者の場合、蓄電デバイスの組立工程でのシワや破損の原因となるので、セパレータとして使用できるレベルではなかった。
【0066】
なお、表中のポリプロピレンおよびエチレン・α−オレフィン共重合体の混合比率(質量%)は、ポリプロピレンとエチレン・αーオレフィン共重合体からなるポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときの混合比率を示している。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、リチウムイオン電池用セパレータに好適な優れたイオン電導性と、加工適性に優れており、セパレータとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムの少なくとも片面に無配向ポリオレフィン系樹脂層を設けてなり、フィルム総厚みが10〜50μmであり、かつ透気抵抗が10〜500秒/100mlである多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
無配向ポリオレフィン系樹脂層表面の表面開口率が10〜50%である、請求項1に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
空孔率が60〜90%である、請求項1または2に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のβ晶形成能が40〜80%である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
二軸配向ポリプロピレン多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン80〜99質量%と、エチレン・α−オレフィン共重合体20〜1質量%との混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
無配向ポリオレフィン系樹脂層の平均厚みが0.2μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。

【公開番号】特開2009−226746(P2009−226746A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75135(P2008−75135)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】