説明

多孔質シンチレータ結晶体

【課題】光散乱が抑制された空間分解能の高い多孔質シンチレータ結晶体を提供することである。
【解決手段】空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体であって、
前記多孔質構造は、相分離構造に空隙を形成した構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料を有し、かつ前記多孔質構造中に前記多孔質シンチレータ結晶体の主面に垂直な方向に延びる前記空隙を少なくとも一つ以上有する多孔質シンチレータ結晶体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
放射線による励起で発光を呈する材料であるシンチレータに関し、その発光を光検出器に導波する機能を有する多孔質シンチレータ結晶体およびその製造方法に関する。また、その多孔質シンチレータ結晶体を用いる放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場で用いられているX線フラットパネルディテクタ(FPD)装置では、被写体を通過したX線をシンチレータで受け、そのシンチレータが発した光を光検出器で検出している。また、こうした光検出器は2次元アレイとして配置されており、各々のシンチレータは光のクロストークが生じないように空隙で分離されている。シンチレータ内部で発光した光は、空隙との境界で光の反射を繰り返すので、光の進行方向に垂直な平面方向への光の散乱が抑えられ、その結果、鮮鋭性に優れた放射線画像を得ることができる(特許文献1から3)。
【0003】
例えば、特許文献1では、蛍光体原料を水に分散させたスラリーを基板に塗布し、凍結させてスラリー中に氷柱を形成し、その後氷柱を除去して焼成し、蛍光体スラリー中に空隙を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−155485号公報
【特許文献2】特公平7−18958号公報
【特許文献3】特開2007−303876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では空隙を有するシンチレータ部分が微粒子の焼結体となっているため、シンチレータで発生した光は検出器に到達するまでに複数回に渡り結晶粒界を通過する。その結果、その界面において光散乱を生じ、シンチレータの空間分解能の低下を招いてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、単一の結晶からなる結晶体(相分離構造体)中に空隙を形成することで光散乱を抑制し、空間分解能の高いシンチレータ結晶体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は本発明の以下の構成により解決できる。
本発明は、空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体であって、前記多孔質構造は、相分離構造に空隙を設けた構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料を有し、かつ前記多孔質構造中に面に垂直な方向に延びる前記空隙を少なくとも一つ以上有する多孔質シンチレータ結晶体を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、光検出器と、前記光検出器に対向して配置される多孔質シンチレータ結晶体とを有する放射線検出器であって、前記多孔質シンチレータ結晶体は、空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体であって、前記多孔質構造は、相分離構造に空隙を設けた構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料を有し、かつ前記多孔質構造中に前記多孔質シンチレータ結晶体の面に垂直な方向に延びる前記空隙を少なくとも一つ以上有する多孔質シンチレータ結晶体であり、該多孔質シンチレータ結晶体は、前記光検出器に前記空隙が垂直に対向するように配置されることを特徴とする放射線検出器を提供するものである。
【0009】
さらに、本発明は、一方向性を有する複数の第一の結晶相と、前記第一の結晶相の側面を覆う第二の結晶相とからなる相分離構造を有する構造体を形成する工程と、前記構造体の前記第一の結晶相を除去する工程と、により製造される多孔質シンチレータ結晶体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単一の結晶からなる結晶体(相分離構造体)中に空隙が形成されたシンチレータ結晶体を得ることができる。その結果、光の散乱を誘起する結晶界面を有しておらず、シンチレータ結晶体で発生した光は効率良く光検出器に導光され、鮮鋭性に優れた放射線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の多孔質シンチレータ結晶体の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の多孔質シンチレータ結晶体の他の例を示す模式図である。
【図3】本発明の多孔質シンチレータ結晶体を製造する装置の断面図である。
【図4】CuI−KCl系の相分離構造を有する構造体断面の走査型電子顕微鏡による観察画像である。
【図5】本発明の多孔質シンチレータ結晶体断面の走査型電子顕微鏡による観察画像である。
【図6】CuI系多孔質シンチレータ結晶体のX線による励起で発光する発光スペクトルである。
【図7】本発明の放射線検出器の断面模式図である。
【図8】本発明の多孔質シンチレータ結晶体の発光伝搬特性である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面などを用いて本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明を実施するための形態としては、様々な形態(様々な構成や、様々な材料)があるが、全ての実施形態に共通することは、空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体であって、前記多孔質構造は、相分離構造に空隙を設けた構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料を有し、かつ前記多孔質構造中に前記多孔質シンチレータ結晶体の主面に垂直な方向に延びる前記空隙を少なくとも一つ以上有する多孔質シンチレータ結晶体を提供するものである。こうした構成によって、多孔質シンチレータ結晶体内を伝播する光は、多孔質シンチレータ結晶体の多孔質構造を構成する空隙によって全反射される。その結果、光は多孔質シンチレータ結晶内を導波しながら進む。多孔質シンチレータ結晶体は、相分離構造体に空隙を設けることにより製造される。相分離構造は単一の結晶として製造することが可能であり、完全な単一の結晶であれば光の散乱を起こす結晶界面が結晶内にないことになる。つまり、多孔質シンチレータ結晶体が有する多孔質構造は、空隙を設けた相分離構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料の一方を含み、かつ単一の結晶(単結晶)を構成していること好ましい。また、互いに同一面上に位置しない第一の主面と第二の主面とに単一の結晶が露出する部分を有する。これら露出する部分は、空隙の周囲を取り囲むように連続したマトリックスを形成し、空隙が第一の主面または第二の主面に垂直な方向に延びるため、光の導波(光ガイディング)は、第一の主面または第二の主面に向けて行われる。これらは換言すると、多孔質シンチレータ結晶体内で生じた光は、多孔質シンチレータ結晶体内に閉じ込められながら(つまり光が広がることなく)、第一の主面または第二の主面に向けて進行するといえる。このようにして、本発明の全ての実施形態は、多孔質シンチレータ結晶体自体が、光の導波機能(光ガイディング機能)を有する。
【0013】
尚、以下に説明する各実施形態においては、空隙は、第一の主面と第二の主面とに露出する部分を有し、多孔質シンチレータ結晶体の第一の主面に対して垂直に伸張し、第一の主面から第二の主面まで貫通した構成が好ましい。また、単一の結晶性(単結晶性)は、多孔質構造体全体体積に対して90%以上を構成していること好ましい。より好ましくは100%である。こうした構成によって、多孔質シンチレータ結晶体内の光を、より確実に、第一の主面または第二の主面に、広がることなく導波(光ガイディング)することが可能となる。
【0014】
[多孔質シンチレータ結晶体の構成]
図1に本発明の多孔質シンチレータ結晶体の一例の模式図を示す。
本発明の空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体は、互いに同一面上に位置しない第一の主面18および第二の主面19を有し、第一の主面18および第二の主面19は、その双方で単一の結晶が露出する部分を有する。そして、この多孔質シンチレータ結晶12の内部に、多孔質シンチレータ結晶体12の第一の主面18に垂直な方向に延びる空隙11を少なくとも一つ以上有することを特徴とする。多孔質構造は、相分離構造の共晶組成からなる。また、空隙の直径13は、50nm以上30μm以下の範囲であることが好ましく、空隙の最近接距離14の平均距離は500nm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。ここで、多孔質シンチレータ結晶体内で発生した光は空隙との界面で反射しながら光検出器に到達するが、このとき、光の波長よりも空隙の構造周期が小さい場合は光が反射せずに透過してしまう成分が多くなってしまう。そのため、空隙の最近接距離14の下限値は、発生する光の波長よりも大きいことが望ましい。本発明では、特に波長500nm以上の光に感度を持つような光検出器を用いるために、空隙の最近接距離14が500nm以上であることが望ましい。また、空隙の最近接距離14が光検出器の1画素よりも大きくなってしまうと、1画素内に光を閉じ込める効果が低下してしまうため、空隙の最近接距離14の上限値は光検出器の1画素のサイズよりも小さいことが望ましい。本発明では、特に、1画素が50μm角の画素サイズを持つ光検出器を用いるために、空隙の最近接距離14が50μm以下であることが望ましい。一方、空隙の直径13に関しては、空隙の最近接距離14に対応して決定される。空隙の最近接距離14に対して空隙の直径13が大きいほど、光を閉じ込める効果が大きくなるため、空隙が最密充填となるように、最近接距離の60%程度の直径であることが望ましい。空隙の最近接距離14が上限値の50μmである場合は、空隙の直径13が30μmであることが望ましい。また空隙の最近接距離14が下限値の500nmである場合は、空隙の直径13が大き過ぎると、光の反射面となる空隙界面の構造周期が光の波長よりも小さくなり、光が反射せずに透過してしまう成分が多くなってしまう。そのため、空隙の最近接距離14が下限値の500nmである場合は、空隙の直径13が50nmであることが望ましい。以上より、空隙の直径13は、50nm以上30μm以下の範囲であることが好ましく、空隙の最近接距離14の平均距離は500nm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。
ただし、本発明の多孔質シンチレータ結晶体と検出器または検出器アレイと組み合わせた場合、こうした光検出器の受光部領域上に多数の空隙が対向して配置されるような構造サイズを有した多孔質シンチレータ結晶体を組み合わせることが好ましい。ここで、空隙の最近接距離とは、隣り合う空隙の中心線を最短距離で結ぶ直線の距離をいう。例えば、受光部領域が正方で一辺が20μmであった場合、空隙の直径5μm、空隙の最近接距離の平均距離8μmの構造サイズを有する多孔質シンチレータ結晶体を組み合わせる。従って、受光部領域の大きさに応じて、受光部領域の大きさよりも小さい構造サイズを有する多孔質シンチレータ結晶体を組み合わせることが好ましい。
【0015】
さらに、多孔質シンチレータ結晶体の厚さ15に関しては、製法にも依存するが、任意の厚さに調整することが可能である。実質的には、空隙は、空隙の厚さ方向16に沿って直線的に連続していることが好ましい。しかしながら、空隙が、途中で途切れたり、枝分かれしたり、複数の空隙が一体化したり、空隙の直径が変化したり、直線的でなく非直線部分が含まれたりするような場合を排除するものではない。多孔質シンチレータ結晶体の厚さ15に対して、空隙の形成される厚さ17は任意の厚さに調整することが可能である。図1に示すように、空隙11が多孔質シンチレータ結晶体12の第一の主面18から第二の主面19まで貫通した構成にすることも可能である。また、図2の本発明の多孔質シンチレータ結晶体の他の例の模式図で示されるように、多孔質シンチレータ結晶体の厚さ15に対して空隙の形成される厚さ17が小さく、多孔質シンチレータ結晶体の一部に空隙を有するような構成であってもよい。空隙は、第一の主面18および第一の主面18とは同一面上に位置しない第二の主面19のどちらか一方から任意の厚さだけ導入することもできるし、また双方から導入してもよい。図2の多孔質シンチレータ結晶体の一部に空隙を有するような構成の場合、空隙はX線が入射する主面側から導入されていることが好ましい。X線が多孔質シンチレータ結晶体12に入射すると、X線は多孔質シンチレータ結晶体の厚さの方向に沿って指数関数的に吸収され、多孔質シンチレータ結晶体はX線による励起で発光する。このとき、より多くの発光を示す領域であるX線の入射側にさえ空隙が導入されていれば、本願発明の十分な効果が得られ、発光の広がりが抑えられるようになるためである。
【0016】
本発明の空隙を有する多孔質シンチレータ結晶体は、好ましくは、単一の結晶体からなる多孔質シンチレータ結晶体12の内部に少なくとも一つ以上の空隙11が形成されている。
【0017】
多孔質シンチレータ結晶体の構成部材としては、シンチレータとして適用できる材料であれば、いずれも適用可能である。また、多孔質シンチレータ結晶体への発光中心材料の添加の有無なども用途にしたがって自由に選択してよい。
【0018】
[多孔質シンチレータ結晶体の製造方法]
ここでは、本発明の多孔質シンチレータ結晶体の好適な製造方法に関して記載する。ただし、同等の多孔質シンチレータ結晶体が構成できる手法であれば、以下の記載に限定するものではない。
【0019】
1.相分離構造を有する構造体を形成する工程
本発明の多孔質シンチレータ結晶体を製造する手段は、所望の材料系を最適組成にて一方向性を持たせて熔融凝固する方法であればいずれの方法でも可能である。多孔質シンチレータ結晶体を製造する前段階として、相分離構造を有する構造体を形成する。
【0020】
最適組成とは、図4に示すような、相分離構造を形成することができる共晶組成を含む近傍の組成を意味する。図4は、CuIとKClをそれぞれ70mol%、30mol%の組成比(共晶組成)で製造した2相の相分離構造を有する構造体断面の走査型電子顕微鏡による観察画像である。暗部がKCl結晶相であり、KCl結晶相の側面を覆う明部がCuI結晶相である。最適組成は共晶組成±5mol%の範囲であることが好ましい。すなわち、第一の組成の組成比X’(mol%)と第二の組成の組成比Y’(mol%)は、次式を満たす。第一の組成と第二の組成との共晶組成における第一の組成の組成比をX(mol%)および第二の組成の組成比をY(mol%)とするとき、(X−5)≦X’≦(X+5)、X’+Y’=100である。
【0021】
上記最適組成の範囲を規定する要因は、多孔質シンチレータ結晶体の相分離構造の形成において上記材料が共晶関係にあり、共晶組成近傍で上記材料の一方向凝固を行うことで図4のような良質な相分離構造を有する構造体を得ることができるからである。上記最適組成の範囲外、つまり組成比が共晶組成±5mol%の範囲を逸脱している場合は、一方の結晶相が先に析出するため、相分離構造形成の観点から、多孔質シンチレータ結晶体の良好な相分離構造を乱す要因となる。
【0022】
図4のように、相分離構造を有する構造体の暗部を構成する複数の相を第一の結晶相とし、その周辺部を囲う明部を構成する相を第二の結晶相とする場合に、例えば表1のような材料系の組み合わせを用いてその組み合わせの最適組成で製造することが好ましい。具体的には、CuI−NaClの組み合わせや、CuI−KClの組み合わせ、CsBr−NaBrの組み合わせが本発明に適用可能である。また、第一の結晶相および第二の結晶相には上記材料以外の材料が添加されてもよい。特に、第一の結晶相を構成する材料に添加する材料は、その材料を添加した後の組成において第一の結晶相に固溶し、かつ第二の結晶相には固溶しない材料であることが好ましい。例えば、第一の結晶相を構成する材料であるNaClにNaBrを添加するような場合である。
【0023】
ここでは、一例を示すが、好適な相分離構造を形成しうる材料系であれば、どのような材料を採用しても構わない。ただし、少なくとも第二の結晶相がシンチレータとして機能し、放射線による励起で発光することが好ましい。
【0024】
【表1】

【0025】
相分離構造を有する構造体の製造には、試料の固液界面がヒーターおよび/または試料の移動方向に垂直な面に沿って平滑になるように試料の温度勾配を制御することが要求され、30℃/mm程度またはそれ以上の温度勾配があることが好ましい。ただし、結晶相内の結晶への熱応力によるクラックのような欠陥の発生を解消するために、本発明の各実施形態の多孔質シンチレータ結晶体の相分離構造の形成に支障のない範囲で温度勾配を低下させてもよい。また、すでに上記構造体となった部分を溶融しない程度に再加熱してクラックのような欠陥の発生抑制・消滅をすることを行うことも望ましい。また、本発明の多孔質シンチレータ結晶体の相分離構造の共晶組織が形成可能な組成範囲は、前述のように共晶組成±5mol%と記述している。この組成範囲と温度勾配と以下で述べる凝固速度との間には材料系固有の相間関係が成り立ち、いわゆるCoupled Eutectic Zoneと称される範疇で本発明の多孔質シンチレータ結晶体は製造されるべきである。
【0026】
図3に本発明の多孔質シンチレータ結晶体を製造する装置の断面図を示す。この装置はブリッジマン法を利用し、材料が酸化しないように材料を円筒状の石英管のような容器に封じた試料を鉛直方向に沿って縦型に配置する。そして、ヒーターおよび/または試料を一定速度で鉛直方向に沿って一定方向に移動させることにより試料の凝固界面の位置を制御できるので、本発明の多孔質シンチレータ結晶体を製造することが可能である。一例として、図3では、試料23を鉛直方向下向きに沿って一定方向に移動させる装置を示す。装置は図3(A)のように、試料23の鉛直方向の長さに相当するヒーター部21と、ヒーター部21下部に固液界面の温度勾配30℃/mmを実現するための水冷部22とから構成される。また、図3(B)のように、水冷部22が上下にあり、水冷部22の間に配置されるヒーター部21が試料23の鉛直方向の長さの一部の領域にしか対応していない構成でも構わない。さらに、同等の手段を講じる製法でも可能である。
【0027】
また、チョクラルスキー法のように融液からの結晶引上げでも同様に製造可能である。この場合は、ブリッジマン法における容器内での材料融液の凝固を伴わないために、容器壁面の影響を受けずに材料の固液界面を形成できる点でより好ましいとも言える。さらに、フローティングゾーン法でも製造可能である。
【0028】
特にブリッジマン法においては、凝固速度は試料の固液界面がヒーターおよび/または試料の移動方向に垂直な面に沿ってなるべく平面になるように設定されなければならないが、凝固時の試料と外部との熱のやり取りは試料側面からが主である。そのため、凝固速度は試料の直径に依存する。つまり、試料の直径が大きければ上記の熱のやり取りに時間がかかり、その場合に凝固速度を低速にしなければ、固液界面はかなり湾曲し、試料のほとんどの領域で第一の結晶相である柱状晶が一方向に沿って非直線的に形成されることになる。これは、柱状晶の成長方向が固液界面にほぼ垂直であるからである。さらに、試料サイズに対して凝固速度がより速い場合には、固液界面が平坦でないだけでなく平滑に保つことができない。その結果、ヒーターおよび/または試料の移動方向に沿って微視的な起伏が生じ、樹枝状結晶の発生を伴う状況に至るので、こうした問題も避けることが重要である。従って、十分に固液界面の温度勾配を設定すると同時に、凝固速度を850mm/h以下で行うことが好ましい。より好ましくは、500mm/h以下であり、さらには300mm/h以下である。
【0029】
また、相分離構造を有する構造体の第一の結晶相の直径や第一の結晶相の最近接距離の周期の平均値は、凝固速度に依存し、特に最近接距離の周期に関しては次式の相関があるとされる。周期をλとし、凝固速度をvとすれば、λ・v=一定である。したがって、所望の周期を設定すれば、必然的に凝固速度が制限される関係である。しかしながら、上記のように製法上の制限として固液界面を平坦かつ平滑に制御できる凝固速度を考慮し、周期λの平均値の範囲は500nm以上50μm以下の範囲となる。また、それに対応して、第一の結晶相の直径は50nm以上30μm以下の範囲となる。ここで、第一の結晶相の直径とは円形ではない場合も含まれ、例えば、不定形であればその最短直径が上記範囲に含まれるということである。また、多数の第一の結晶相の最長直径と最短直径との比から算出される平均比が10以下であることが好ましい。平均比が10よりも大きい場合では、ラメラ構造とするのが適切である。しかし、複数の第一の結晶相のうちのいくつかの比が10よりも大きい値であるとしても平均比が10以下であれば許容範囲である。また、製造条件上、2相の材料系の組成比がモル換算で1:1に近いほどラメラ構造を形成しやすいため、ラメラ構造を構成しないような製造条件や添加材料を選択することが好ましい。
【0030】
次に、試料の原材料の仕込み組成について述べる。上記の相分離構造を有する構造体の組成比は表1に示す値であるが、仕込み組成に関しては共晶組成±5mol%の範囲を逸脱しても構わない。つまり、ブリッジマン法の場合は試料全体を熔融した状態から一方向凝固させると、凝固初期に共晶組成から逸脱している物質が先に析出することになり、その結果、残留する融液が共晶組成となるからである。また、チョクラルスキー法では、引上げ初期に共晶組成から逸脱した物質が引上がるため、一度ダミーで引上げて融液が共晶組成になってから再度引上げることも好ましい。構造体の形成後に不要部分は切り離せばよい。
【0031】
2.相分離構造を有する構造体から第一の結晶相を除去する工程
本発明の空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体は、上述の相分離構造を有する構造体から第一の結晶相を除去することで得られる。この多孔質構造は、相分離構造の共晶組織からなる。また、除去に関して、構造体におけるほぼ全部の第一の結晶相を除去しても構わないが、所望の領域、厚さで除去することが好ましい。
【0032】
除去方法について、第一の結晶相が優先的に溶解するものである場合は、最適な溶液を用いて、第一の結晶相を、溶解させ、除去することが容易で好ましい。また、第一の結晶相と選択的に反応できるのであれば、その反応を利用して、第一の結晶相を除去することが好ましい。この反応とは液相中・気相中を問わない。
【0033】
以下、具体的に表1に挙げた材料系に対して記載する。
【0034】
例えば、CuI−NaCl系およびCuI−KCl系では、CuIの水への溶解度の低さを利用して、NaCl結晶相やKCl結晶相を効率よく取り除くことが可能である。図5(A)には、NaCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に平行な断面のSEM像を示す。図5(B)には、NaCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に垂直な断面のSEM像を示す。また、図5(C)には、KCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に平行な断面のSEM像を示す。図5(D)には、KCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に垂直な断面のSEM像を示す。多孔質CuIシンチレータ結晶体の空隙は一方向性を有し、第一の主面に垂直な方向に沿って延びる。このように、CuI−NaCl系およびCuI−KCl系から製造される、同一の物質からなる多孔質CuIシンチレータ結晶体においても、形成される空隙の形状が異なる多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体を製造することが可能である。これは、相分離構造を有する構造体の材料系の違いやその製造条件の違いにより、空隙の直径や最近接距離の周期を変化させることが可能であり、上述の相分離構造を有する構造体の第一の結晶相の直径やその最近接距離の周期と対応している。
【0035】
また、CsBr−NaBr系では、CsBr結晶相およびNaBr結晶相の双方ともに水への溶解度が高いため、CuIが含まれる場合のようには水を利用することはできないので、一方の結晶相と選択的に溶解反応を示すメタノールでのエッチングが好ましい。これにより、第一の結晶相であるNaBr結晶相が優先的に溶解され、多孔質CsBrシンチレータ結晶体が製造される。ただし、エッチング前の構造体の大きさは、溶解工程により、小さくなることがあるが、本発明の多孔質シンチレータ結晶体の構成を保持できれば許容である。
なお、多孔質シンチレータ結晶体に用いることが可能な相分離構造を有する構造体は、上述の材料以外にも、CsI−NaCl系、CsI−KCl系、CsBr−NaBr系などが想定され、適切な溶媒でNaCl、KCl、NaBrなどが除去することができれば、良質な多孔質シンチレータ結晶体になることが期待される。
【0036】
[多孔質シンチレータ結晶体の利用]
本発明の多孔質シンチレータ結晶体は、光検出器と組み合わせることで医療用・産業用・高エネルギー物理用・宇宙用の放射線検出器として用いることが可能である。特に、本発明の多孔質シンチレータ結晶体は隔壁を設けずとも光の導波機能を有しているために、光検出器に向けて特定の方向に光を導波する必要がある状況に適用することが好ましい。また、隔壁形成が必要なX線CT装置での使用や、X線フラットパネルディテクタ(FPD)のCsI針状結晶の代替使用においても有効である。この場合、光検出器の受光感度特性に適合するように、多孔質シンチレータ結晶体の放射線による励起で発光する光の波長を、発光相への多材料の添加や発光中心物質の添加をすることで、調整することも可能である。
多孔質シンチレータ結晶体は、少なくとも一つ以上有する一方向性の空隙が光検出器に対して垂直に対向するように配置される。さらに、光検出器と本発明の多孔質シンチレータ結晶体との間には、保護層や反射防止のような機能を有した膜や層が配置され、これを介して接合または配置することも好ましい。
【実施例1】
【0037】
本実施例では、本発明の多孔質シンチレータ結晶体が製造可能であることを製法の一例を示すことで明らかにする。
【0038】
まず、CuI−NaCl、CuI−KCl、CsBr−NaBrの各材料系を各々共晶組成で秤量し、石英管に封じた。このときの共晶組成は、表1に示すように、CuIに対して、CuI−NaCl系でNaClが10mol%、CuI−KCl系でKClが30mol%、CsBr−NaBr系でNaBrが41mol%とした。CuI−NaCl系およびCuI−KCl系には、発光中心材料無添加の自己発光型シンチレータを製造するために発光中心材料を添加せず、CaBr−NaBr系には、発光中心材料としてInを0.1mol添加した。
【0039】
次に、それらを図3(A)に示すような装置のブリッジマン炉に導入し、800℃まで昇温させ、試料全体が熔融した後30分保持してから、各々の試料を引下げて試料下部より逐次凝固(一方向凝固)させ、相分離構造を有する構造体を形成した。また、試料の引下げにより、炉の冷却水が循環している水冷部の領域に試料が突入することで、試料の熔融している部分と水冷部の領域に突入した部分との温度差が30℃/mm以上となるようにした。
【0040】
このようにして形成した相分離構造を有する構造体を、凝固方向である試料を引下げた方向に垂直な面で1mm厚に切断し、その切断した面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。図4にCuI−KCl系の構造体のSEM結果を示す。暗部がKCl結晶相であり、明部がCuI結晶相であり、構造体はCuI結晶相部分が複数のKCl結晶相からなる柱状晶の側面を覆う相分離構造を形成していた。同様に、CuI−NaCl系では、構造体はCuI結晶相部分が複数のNaCl結晶相からなる柱状晶を取り囲む相分離構造を形成していた。また、CsBr−NaBr系では、構造体はCsBr結晶相部分が複数のNaBr結晶相からなる柱状晶の側面を覆う相分離構造を形成していた。
【0041】
次に、1mm厚にカットした構造体について、CuI−NaCl系とCuI−KCl系の構造体は、室温の純水中へ投入し20分間エッチングした。CuI−NaCl系とCuI−KCl系のエッチング後の構造体である多孔質シンチレータ結晶体を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した結果を図5に示す。図5(A)には、NaCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に平行な断面のSEM像を示す。図5(B)には、NaCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に垂直な断面のSEM像を示す。また、図5(C)には、KCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に平行な断面のSEM像を示す。図5(D)には、KCl結晶相を除去した多孔質CuIシンチレータ結晶体の第一の主面に垂直な断面のSEM像を示す。また、図5(A)、(B)は、CuI−NaCl系由来の多孔質CuIシンチレータ結晶体であり、図5(C)、(D)は、CuI−KCl系由来の多孔質CuIシンチレータ結晶体である。いずれの多孔質シンチレータ結晶体の断面のSEM像からも、エッチング工程により、各相分離構造の柱状晶部分であるNaCl結晶相およびKCl結晶相のみが除去し、空隙が形成した、多孔質シンチレータ結晶体を得ることができた。このとき、第一の主面に垂直な方向に沿って延びる一方向性を有する空隙が多数形成されているのが確認できた。また、図5(B)および(D)より、第一の主面に垂直な方向である、空隙が延びている方向に対して、CuI結晶相は、焼結された多結晶体ではなく、ほぼ単一の結晶からなる結晶体であることがわかる。このとき、いずれの材料系の断面SEM画像でも、一般的にサンプルを割ったときに発生する、結晶のへき開面のステップ構造が確認できるので、CuI結晶相が多結晶のように見える部分もある。しかしながら、柱状晶が除去された部分である空隙の側面領域に着目すると、そのなめらかさが結晶の単一性を示していることが示唆される。得られた多孔質シンチレータ結晶体にX線(管電圧60kV、1mA)を照射した際の発光スペクトルを図6に示す。また、CsBr−NaBr系の構造体については、室温のメタノールで構造体の片側の端面から20分間エッチングを実施した。SEMによる観察より、CuI−NaCl系やCuI−KCl系と同様に、エッチング工程により、相分離構造の柱状晶部分であるNaBr結晶相のみが除去し、空隙が形成した、多孔質シンチレータ結晶体を得ることができた。また、片側端面から約0.25mmの深さまでNaBr結晶相がエッチングされており、その他の領域は母材であるCsBr−NaBr系であることが確認できた。このように、多孔質シンチレータ結晶体は、柱状晶部分の全部ではなく、一部のみが除去されて空隙を形成することも可能であることが確認できた。
【0042】
以上より、本実施例から本発明である多孔質シンチレータ結晶体が形成可能であることを示した。
【実施例2】
【0043】
本実施例は、多孔質シンチレータ結晶体の優れた光導波性に関する。
【0044】
実施例1で製造した、CuI−NaCl系由来、CuI−KCl系由来、およびCsBr−NaBr系由来の多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体を準備した。CuI−NaCl系由来の結晶体は、空隙率8%、厚さ1mmである。CuI−KCl系由来の結晶体は、空隙率32%、厚さ1mmである。InをドープしたCsBr−NaBr系由来の結晶体は、厚さ1mmのうち片側端面から0.25mmの深さまで空隙が形成されており、空隙の形成されている体積領域の空隙率は32%で、残りの部分はCsBr−NaBr系相分離構造の共晶組織となっている。ここでの空隙率は、空隙の方向に対して垂直にカットした面のSEM像を画像解析することで算出している。
【0045】
図7に、本発明の放射線検出器の断面模式図を示す。多孔質シンチレータ結晶体12を、基板73上にアレイ状に配列した光検出器72上に、空隙が概ね垂直に対向されるように設置し、放射線検出器71を構成した。つまり、多孔質シンチレータ結晶体12は、光検出器72に第一の主面18が対向するように配置した。ただし、CsBr−NaBr系については、空隙が形成されていない面を光検出器72に対向し、接するように配置した。これらの結晶体には、結晶体の純粋な分解能を測定するため、反射層を形成しなかった。
【0046】
比較例として、我々が特許文献1に開示される構造を有するサンプルを製造することが困難であるため、特許文献1における比較例と同等のTlドープCsI針状結晶を蒸着法にて製造したサンプルを用いた。このサンプルは、結晶膜の厚さを430μmとし、結晶の純粋な分解能を測定するために、反射膜を形成しなかった。また、この比較例のサンプルの結晶膜の空隙率は、約20%であった。
【0047】
X線源にはタングステン管球を用い、60kV、1mA、Alフィルター無しの条件で得られるX線を2mm厚のタングステン板にある直径φ100μm開口を通してこれら評価対象物に照射し、評価対象物底面における光強度分布を計測した。X線は、第一の主面に垂直な方向から照射した。計測は50μmピッチのCCDにて行った。その光強度分布のピーク値を通る断面の強度プロファイルを図8に示す。それぞれのプロファイルはピーク輝度で規格化されている。図8(A)は空隙率8%の多孔質CuIシンチレータ結晶体、図8(B)は空隙率32%の多孔質CuIシンチレータ結晶体、図8(C)は、結晶体全体の体積の25%に空隙が導入され、その体積領域の空隙率が32%の多孔質CsBrシンチレータ結晶体である。図8(A)〜(C)から、半値幅を算出した。製造した多孔質シンチレータ結晶体の厚さに比べて相対的に薄いCsI針状結晶膜の半値幅が400μmなのに対し、空隙率8%のCuI系は298μm、空隙率32%のCuI系は217μm、CsBr系は340μmであった。
【0048】
また、多孔質シンチレータ結晶体と光検出器アレイとの間に、保護層である樹脂を配置して、空間が存在しないように放射線検出器を構成した場合は、光検出器アレイの出力が向上することが確認できた。これは、多孔質シンチレータ結晶体から光検出器への光の取り出しを考慮した層構造を採ることも好ましいことを示すものである。
【0049】
以上の結果から、本発明の多孔質シンチレータ結晶体は、その厚さが比較例に比べて十分に厚いにも関わらず、半値幅が十分に狭い、または同等であることを確認した。その結果、本発明の多孔質シンチレータ結晶体は、空間分解能を劣化することなく、厚さのあるシンチレータの構成を採用できることが示せた。これは、多孔質シンチレータ結晶体の一軸方向に導入された空隙が、空隙側面に沿って単一の結晶からなることにより、光の導波に有効ということである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の多孔質シンチレータ結晶体は、放射線による励起で発光し、かつ発光した光を導波する特性を有しているため、従来の隔壁を形成することなく、光検出器と組み合わせて用いることで放射線検出器として有用である。特に、X線のような放射線を用いた医療用・産業用・高エネルギー物理用・宇宙用のような計測装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
11 空隙
12 多孔質シンチレータ結晶体
13 空隙の直径
14 空隙の最近接距離
15 多孔質シンチレータ結晶体の厚さ
16 空隙の厚さ方向
17 空隙の形成される厚さ
18 第一の主面
19 第二の主面
21 ヒーター部
22 水冷部
23 試料
71 放射線検出器
72 光検出器
73 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を有する多孔質構造からなる多孔質シンチレータ結晶体であって、
前記多孔質構造は、相分離構造に空隙を設けた構造であり、相分離構造の共晶組成を構成する材料を有し、かつ
前記多孔質構造中に前記多孔質シンチレータ結晶体の面に垂直な方向に延びる前記空隙を少なくとも一つ以上有することを特徴とする多孔質シンチレータ結晶体。
【請求項2】
前記多孔質構造は、CuI、CsBrのいずれかを有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質シンチレータ結晶体。
【請求項3】
前記空隙の最近接距離の平均距離が500nm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質シンチレータ結晶体。
【請求項4】
前記多孔質構造は、放射線による励起で発光することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔質シンチレータ結晶体。
【請求項5】
光検出器と、前記光検出器に対向して配置される多孔質シンチレータ結晶体とを有する放射線検出器であって、
前記多孔質シンチレータ結晶体が請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔質シンチレータ結晶体であり、該多孔質シンチレータ結晶体は、前記光検出器に前記空隙が垂直に対向するように配置されることを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
前記光検出器と前記多孔質シンチレータ結晶体との間には、保護層が配置されることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
一方向性を有する複数の第一の結晶相と、前記第一の結晶相の側面を覆う第二の結晶相とからなる相分離構造を有する構造体を形成する工程と、前記構造体の前記第一の結晶相を除去する工程と、により製造されることを特徴とする多孔質シンチレータ結晶体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214715(P2012−214715A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54354(P2012−54354)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】