説明

多孔質セラミックス構造体及びその製造方法

【課題】ヒートアイランド現象、砂漠化及び局地的な洪水を防止できる多孔質セラミックス構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤10を複数備え、該多孔質セラミックス基盤10同士の目地に目地材20が充填された多孔質セラミックス構造体1であって、前記目地材20は、前記多孔質セラミックス基盤10より透水速度が速いことよりなる。多孔質セラミックス基盤10を任意の位置に配置する配置工程と、配置した多孔質セラミックス基盤10同士の目地に、多孔質セラミックス基盤10よりも透水速度が速い目地材20を充填する充填工程とを有することよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質セラミックス構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの建築物や土木構造物において、部材間の隙間や継ぎ目(目地)に、砂やモルタル等の目地材が充填されている。砂のみが充填された目地は、透水性が良好である一方、雨水等により砂が流失してしまう。このため、目地材の流失の防止が求められる環境では、砂と、セメント又は樹脂等とを配合したモルタルが用いられる。
【0003】
近年、局地的な洪水、地下水の減少に伴う大都市の砂漠化、ヒートアイランド現象による気温の上昇等が問題とされている。これらの現象は、道路や建築物がアスファルト又はコンクリート等で舗装されているために、雨水が地中に浸透しないこと、地中の水分が蒸散しにくいことに起因すると考えられている。
【0004】
こうした問題に対し、建築物や舗装道路等の土木建造物に透水性のあるモルタルを用いた地下水対策、屋上材や外壁材等の建築材、舗装道路等の土木建造物に保水性のあるセメントやバインダー樹脂を用い、建築材や土木建造物で保持した水の蒸散による冷却効果を利用したヒートアイランド対策が行われている。
例えば、エポキシ樹脂を用いた透水性舗装用バインダー樹脂(例えば、特許文献1)、細骨材とセメントとカルボキシメチルセルロースを含む透水・保水性コンクリート又はモルタル(例えば、特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−256468号公報
【特許文献2】特開2010−24118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術は、地下水の減少防止やヒートアイランド対策に有効なものの、いわゆるゲリラ豪雨等、短時間で多量の雨が降る集中豪雨や、猛暑への対応が満足できるものではない。
例えば、特許文献1の技術を適用した道路は、短時間で多量に降った雨水を吸収するための十分な透水性を有していない。このため、雨水の多くは、道路上を流れて下水道に流入する。多量の雨水が下水道に短時間で流入すると、局地的な洪水が発生するおそれがある。
また、特許文献2の技術を適用した道路において、透水性の向上が図られたものは、多量の雨水を速やかに地中に浸透できるものの、多量の雨水を保持できない。このため、猛暑が続く環境では、ヒートアイランド対策を持続できない。一方、保水性の向上が図られたものは、多量の雨水を保持できるものの、短時間で多量に降った雨水を地中に浸透できない。このため、雨水の多くは、道路上を流れて下水道に流入する。即ち、特許文献2の技術では、ヒートアイランド現象、砂漠化、局地的な洪水の全てを十分に防止できない。
【0007】
そこで、本発明は、ヒートアイランド現象、砂漠化及び局地的な洪水を防止できる多孔質セラミックス構造体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多孔質セラミックス構造体は、透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体であって、前記目地材は、前記多孔質セラミックス基盤より透水速度が速いことを特徴とする。
前記目地材は、透水速度が7mm/sec.以上であることが好ましく、前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含むことが好ましく、前記骨材は、粒子径8mm以下の多孔質セラミックス焼結体であることが好ましい。
【0009】
本発明の多孔質セラミックス構造体の製造方法は、透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体の製造方法であって、前記多孔質セラミックス基盤を任意の位置に配置する配置工程と、配置した前記多孔質セラミックス基盤同士の目地に、前記多孔質セラミックス基盤よりも透水速度が速い目地材を充填する充填工程とを有することを特徴とする。
前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含み、前記充填工程は、前記エポキシ樹脂、前記骨材及び水を含む目地原料を配合して配合物を得る配合操作と、前記配合物から上澄み液を除去する除去操作と、前記上澄み液を除去した前記配合物を前記目地に充填する充填操作と、前記目地に充填した前記配合物を硬化する硬化操作とを有することが好ましく、前記目地原料は、前記水/前記目地原料で表される質量比が1/11超であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多孔質セラミックス構造体によれば、本発明の多孔質セラミックス構造体は、透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体であって、前記目地材は、前記多孔質セラミックス基盤より透水速度が速いため、ヒートアイランド現象、砂漠化及び局地的な洪水を防止できる。
本発明の多孔質セラミックス構造体によれば、前記目地材は、透水速度が7mm/sec.以上であるため、降雨時に、より多くの雨水を地中に浸透できる。
本発明の多孔質セラミックス構造体によれば、前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含むため、降雨時に、より速やかに雨水を地中に浸透できる。
本発明の多孔質セラミックス構造体によれば、前記骨材は、粒子径8mm以下の多孔質セラミックス焼結体であるため、降雨時に、より速やかに雨水を地中に浸透できる。
【0011】
本発明の多孔質セラミックス構造体の製造方法によれば、透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体の製造方法であって、前記多孔質セラミックス基盤を任意の位置に配置する配置工程と、配置した前記多孔質セラミックス基盤同士の目地に、前記多孔質セラミックス基盤よりも透水速度が速い目地材を充填する充填工程とを有するため、ヒートアイランド現象、砂漠化及び局地的な洪水を防止できる多孔質セラミックス構造体を容易に得られる。
本発明の多孔質セラミックス構造体の製造方法によれば、前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含み、前記充填工程は、前記エポキシ樹脂、前記骨材及び水を含む目地原料を配合して配合物を得る配合操作と、前記配合物から上澄み液を除去する除去操作と、前記上澄み液を除去した前記配合物を前記目地に充填する充填操作と、前記目地に充填した前記配合物を硬化する硬化操作とを有するため、より透水速度の速い目地材を備える多孔質セラミックス構造体を短時間で得られる。
本発明の多孔質セラミックス構造体の製造方法によれば、前記目地原料は、前記水/前記目地原料で表される質量比が1/11超であるため、より透水速度の速い目地材を備える多孔質セラミックス構造体をより容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス構造体の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス構造体の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス構造体の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス構造体の断面図である。
【図5】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(多孔質セラミックス構造体)
本発明の一実施形態に係る多孔質セラミックス構造体について、以下に図面を用いて説明する。
図1〜2に示す多孔質セラミックス構造体1は、透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤(以下、単に多孔質セラミックス基盤という)10を複数備え、多孔質セラミックス基盤10同士の目地に目地材20が充填されたものである。本実施形態において、多孔質セラミックス構造体1は、地表に敷設され、舗装道路に用いられるものであり、図1〜2中、符号2は、鉛直方向上方の面(露出面)を示し、符号3は、鉛直方向下方の面(埋設面)を示す。
【0014】
多孔質セラミックス構造体1は、複数の多孔質セラミックス基盤10が、鉛直方向で重なることなく、水平方向に並設され、平面視において格子状の目地が形成されたものである。多孔質セラミックス構造体1は、露出面2が地上に露出し、埋設面3が大地の表面(地面)に接するように敷設されている。
【0015】
<多孔質セラミックス基盤>
本実施形態の多孔質セラミックス基盤10は、平面視矩形の板状物である。多孔質セラミックス基盤10の大きさは、用途に応じて決定でき、例えば、長さ5〜100cm×幅5〜100cm×厚さ1〜10cmとされる。
【0016】
多孔質セラミックス基盤10は、透水性及び保水性を有するものであれば特に限定されず、例えば、珪藻土と、珪藻土を除く粘土(以下、粘土類ということがある)との混合物を焼成したもの、珪藻土と粘土類とスラグ又は有機汚泥との混合物を焼成したもの、珪藻土と粘土類とスラグと有機汚泥との混合物を焼成したものが挙げられる。このような多孔質セラミックス基盤10は、マイクロメートルオーダーの気孔及び/又はミリメートルオーダーの気孔が互いに連通して連通孔を形成するため、透水性及び保水性を有する。
マイクロメートルオーダーの気孔は、孔径1〜1000μmのものを意味し、孔径は、多孔質セラミックス焼結体をその厚さ方向に沿ってカットし、電子顕微鏡を用いて測定される値である。ミリメートルオーダーの気孔は、孔径1mm超300mm以下のものを意味し、孔径は、多孔質セラミックス焼結体をその厚さ方向に沿ってカットし、スケールを用いて測定される値である。気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。
【0017】
本稿において「透水性を有する」とは、飽和含水状態の多孔質セラミックス基盤10の一方の面から添加された水を他方の面から排出できることをいう。飽和含水状態とは、多孔質セラミックス基盤10を水に60分間浸漬した後、水中から引き上げた状態をいう。
多孔質セラミックス基盤10の透水性の程度は、透水速度で表される。多孔質セラミックス基盤10の透水速度は、0mm/sec.超であればよいが、速すぎると保水性が不十分になるおそれがある。このため、多孔質セラミックス基盤10の透水速度は、例えば、透水速度0.1mm/sec.以上が好ましく、1mm/sec.以上がより好ましい。上記下限値以上であれば、降雨時に多量の雨水を速やかに地中に浸透できる。透水速度の上限は、特に限定されないが、100mm/sec.以下が好ましい。上記上限値超であると、多孔質セラミックス基盤の保水性又は強度が不十分になるおそれがある。
【0018】
本稿において、「保水性を有する」ものとは、飽和含水率15質量%以上のものをいう。保水性の程度は、飽和含水率で表される。多孔質セラミックス基盤10の飽和含水率は、低すぎると冷却効果が低下するおそれがあり、高すぎると透水性が不十分になるおそれがある。このため、多孔質セラミックス基盤10の飽和含水率は、20質量%以上が好ましく、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。
【0019】
このような多孔質セラミックス基盤10としては、特開2005−239467号公報に記載のセラミックス焼結体、国際公開第10/106724号パンフレットに記載の多孔質セラミックス焼結体等が挙げられる。また、市販品としては、グリーンビズ(登録商標、小松精練株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
<目地材>
目地材20は、多孔質セラミックス基盤10よりも透水速度が速いものであればよく、例えば、セメント、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アスファルト、ゴム等と、骨材、発泡剤又はカルボキシメチルセルロース等を併用したものが挙げられ、中でも、エポキシ樹脂と骨材とを含むものが好ましい。目地材20は、エポキシ樹脂と骨材とを含むことで、耐久性と透水性とをさらに向上できる。
【0021】
エポキシ樹脂は、1分子に2個以上のエポキシ基をもち、硬化剤の存在下で三次元硬化ができる合成樹脂である。
エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型、ノボラック型、過酢酸系等、及びこれらのエポキシ樹脂と他の化合物との反応物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、特許文献1に記載された透水性舗装用バインダー等が挙げられる。エポキシ樹脂は、市販のものを用いることができ、例えば、アデカレジンシリーズ(株式会社ADEKA製)、BOTAZIT GARDEN KV(商品名、BOTAMENT SYSTEMBAUSTOFFE GMBH&Co.KG製)等が挙げられる。
なお、水分散されて市販されている水分散タイプのエポキシ樹脂やエマルジョン化されたエポキシ樹脂も用いることはできるが、目地材20の透水性の観点から水分散やエマルジョン化されていないものが好ましい。
【0022】
硬化剤は、施工場所の気温等を勘案して決定でき、加熱しなくとも常温(5〜40℃)でエポキシ樹脂を硬化するものが好ましい。このような硬化剤を選択することで、特殊な環境でなければ、エポキシ樹脂は、硬化を開始した後、自らの発熱で硬化を促進する。
硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン等のアミン系硬化剤及びそのアダクト、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等、公知の硬化剤を用いることができる。
【0023】
骨材としては、細骨材(目開き10mmの篩を全て通過し、目開き5mmの篩を通過したものが85質量%以上含まれる骨材)、粗骨材(目開き5mmの篩に85質量%以上留まるもの)いずれでも用いることができる。小さな隙間を埋めるときの施工性の観点からは、細骨材が好ましい。
また、透水性の観点からは、粒子径が1mm〜10mm程度の骨材を用いるとよい。
なお、粒子径は篩を用い整粒すればよい。
【0024】
骨材としては、例えば、川砂、川砂利、山砂、山砂利、海砂、海砂利、軽石や火山噴火物等の天然骨材、高炉スラグ骨材、人工軽量骨材等の人工骨材又は再生骨材等が挙げられる。これらの骨材は、岩石等の起源原料を粉砕したものであってもよいし、天然物を篩分けして、粒子径を揃えた市販品でもよい。
なお、粘土を含むものは透水性が低下するため、洗浄し、粘土を洗い流したものを用いるとよい。このような骨材としては、田土の粘土質を除去し、砂粒を分離精製した硬質の天然砂である田砂(登録商標、エイエフジャパン企画製)が挙げられる。
【0025】
目地材20の透水速度をさらに速める観点からは、骨材として、粒状の多孔質セラミックス焼結体を用いることが好ましい。粒状の多孔質セラミックス焼結体は、板状の多孔質セラミックス焼結体を粉砕したものであってもよいし、原料の混合物を粒状、柱状等に成形し、これを焼結し、必要に応じて粉砕したものであってもよい。
粒状の多孔質セラミックス焼結体の粒子径は、15mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、0.1〜8mmがさらに好ましく、1〜6mmが特に好ましい。上記上限値超であると、地材20の強度が低下するおそれがあり、上記下限値未満であると透水速度の向上が図れないおそれがある。
【0026】
骨材には、粒状の多孔質セラミックス焼結体と、粒子径が0.5〜1.5mmの川砂や田砂(登録商標)(以下、総じて小粒砂ということがある)とを併用することが好ましい。粒状の多孔質セラミックス焼結体と、小粒砂とを併用することで、目地材の強度を向上できる。
[粒状の多孔質セラミックス焼結体]/[小粒砂]との配合比は、10/1〜1/10(質量比)が好ましい。
また、意匠性の観点からは、御影石や大理石等の粉砕物や、庭園の化粧用砂利、観賞魚用砂利等を骨材とすることが好ましい。
【0027】
目地材20には、エポキシ樹脂、骨材、硬化剤以外に、顔料、強度向上や柔軟性向上等を目的とする各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0028】
目地材20の透水速度は、多孔質セラミックス基盤10の透水速度より速ければ特に限定されないが、例えば、7mm/sec.以上が好ましく、20mm/sec.以上がより好ましく、30mm/sec.以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、多量の雨水を速やかに地中又は多孔質セラミックス基盤10に供給できる。
【0029】
(製造方法)
次に多孔質セラミックス構造体の製造方法の一実施形態につき、図1〜2を参照して説明する。多孔質セラミックス構造体1の製造方法は、複数の多孔質セラミックス基盤10を任意の位置に配置する配置工程と、配置した多孔質セラミックス基盤10同士の目地に、多孔質セラミックス基盤10よりも透水速度が速い目地材20を充填する充填工程とを有するものである。
【0030】
<配置工程>
本実施形態の配置工程は、多孔質セラミックス構造体1を敷設する道路の面積に応じて、多孔質セラミックス基盤10の一方の面が露出するように、任意の位置に配置する工程である。
【0031】
多孔質セラミックス基盤10同士の間隔、即ち目地の幅は、意匠性や、多孔質セラミックス構造体1に求められる強度等を勘案して決定でき、例えば、5mm〜10cmが好ましく、5mm〜8cmがより好ましい。上記下限値未満であると、多孔質セラミックス構造体1の透水性が不十分になるおそれがある。上記上限値超であると、多孔質セラミックス構造体1の強度が不十分になったり、多孔質セラミックス構造体1中の多孔質セラミックス基盤10の面積が小さくなりすぎて、保水性が不十分になるおそれがある。
【0032】
<充填工程>
充填工程は、任意の位置に配置した多孔質セラミックス基盤10同士の目地に、目地材20を設ける工程であり、目地材20の種類に応じて決定できる。以下、目地材20として、エポキシ樹脂及び骨材を含む配合物を用いた場合を例にして、充填工程の一実施形態を説明する。
本実施形態の充填工程は、配合操作と、除去操作と、充填操作と、硬化操作とを有する工程である。
【0033】
≪配合操作≫
配合操作は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、骨材と、水と、必要に応じて添加剤とを含む目地原料を配合して、配合物を得る操作である。
目地原料の配合方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、骨材と、水とを攪拌できるものであればよい。
【0034】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、骨材と、水との配合比は、エポキシ樹脂の種類等を勘案して決定でき、例えば、水/目地原料で表される質量比は、1/11超が好ましく、2/12超がより好ましい(以下、水/目地原料で表される質量比を加水率という)。上記下限値未満であると、目地材20の透水性が不十分になるおそれがある。また、本操作における水の配合量の上限値は、エポキシ樹脂の種類等を勘案して決定でき、例えば、加水率は、2/1以下が好ましい。上記上限値超であると、目地材20の強度が低下したり、後述する除去操作における上澄み液の分離等が煩雑となる。
【0035】
≪除去操作≫
本実施形態の除去操作は、配合操作で得られた配合物から上澄み液を除去する操作である。この上澄み液には、エポキシ樹脂の一部や微細な骨材が含まれる場合がある。上澄み液の除去方法は、特に限定されず、例えば、配合物を静置して、分離した上澄み液を流し去る方法(デカンテーション)等が挙げられる。
配合物から上澄み液を除去することで、エポキシ樹脂の硬化時間を短縮できる。
エポキシ樹脂と骨材の配合物に水を配合したり、その上澄み液を分離すると、目地材の強度が低下する懸念があった。
しかしながら、上澄み液を除去した配合物を硬化した目地材は、十分な強度を有する。これは、エポキシ樹脂、骨材及び水を配合した際、エポキシ樹脂が、骨材に選択的に吸着し、過剰水が分離したためと推測される。
なお、予め水分散された水分散エポキシ樹脂、エマルジョン化されたエポキシ樹脂又はこれに水を加えたものを用いると、水とエポキシ樹脂がほぼ均一に混ざり合っており、上澄み液の分離が困難となる。その結果、常温ではエポキシ樹脂の硬化に長時間を要し、作業性が低下する。このため、エポキシ樹脂としては、エマルジョン化されていないものが好ましい。
【0036】
≪充填操作≫
本実施形態の充填操作は、除去操作で上澄み液を除去した配合物を多孔質セラミックス基盤10同士の目地に充填する操作である。配合物の充填は、従来公知の方法により行うことができる。
【0037】
≪硬化操作≫
本実施形態の硬化操作は、目地に充填された配合物を硬化し、目地材20とする工程である。配合物の硬化方法は、エポキシ樹脂や硬化剤の種類に応じて決定でき、例えば、硬化剤が常温でエポキシ樹脂を硬化できるものである場合、多孔質セラミックス構造体1を敷設する環境温度下で8時間〜7日間静置する方法が挙げられる。
【0038】
上述したように、本実施形態の多孔質セラミックス構造体は、目地材の透水速度が、多孔質セラミックス基盤の透水速度より速いため、例えば、降雨時に、雨水が優先的に目地材を透過して地中に浸透する。加えて、多孔質セラミックス基盤が、透水性を有するため、降雨時に雨水が多孔質セラミックス基盤を透過して地中に浸透する。このため、地中へ雨水を速やかに浸透でき、砂漠化、局地的な洪水を抑制し、舗装道路での水溜りの発生を防止できる。
本実施形態の多孔質セラミックス構造体は、多孔質セラミックス基盤が保水性を有するため、多孔質セラミックス基盤に保持されている水が蒸散することで、敷設場所を冷却できる。加えて、多孔質セラミックス基盤は、保水量が減少すると、地中に保持されている水を吸水し、吸水した水を露出面から蒸散することで、長期にわたって冷却効果を発揮できる。このため、ヒートアイランド現象を有効に抑制できる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、多孔質セラミックス構造体を舗装道路としているが、本発明はこれに限定されず、多孔質セラミックス構造体を建築物の外壁材、屋上材等の建築材としてもよいし、駐車場の舗装面や、外塀、階段、アプローチ等の外構等としてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、目地が格子状に形成されているが、本発明はこれに限定されず、目地の形状は、意匠性、多孔質セラミックス基盤の形状等に応じて決定できる。
【0041】
上述の実施形態では、多孔質セラミックス基盤がその長さ又は幅方向に並んで配置されている、即ち、多孔質セラミックス基盤が、その厚さ方向に積層されていない1層構造とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、多孔質セラミックス基盤がその厚さ方向に積層された複数層構造とされていてもよい。
複数層構造の多孔質セラミックス構造体としては、例えば、図3に示す多孔質セラミックス構造体100のように、埋設面3から露出面2に向け、多孔質セラミックス基盤10を積層し、多孔質セラミックス基盤10の目地に目地材20を充填したものであってもよい。
このように、多孔質セラミックス基盤が積層された構造とすることで、降雨時に、雨水が多孔質セラミックス基盤で吸収されると共に、さらに速い速度で目地材を透過する。加えて、目地材と多孔質セラミックス基盤との接触面積が大きくなるため、目地材を透過する雨水が多孔質セラミックス基盤へ速やかに移行する。このため、雨量が少ない場合でも、多孔質セラミックス基盤の保水量を増大できる。
【0042】
あるいは、図4に示す多孔質セラミックス構造体200のように、埋設面3から露出面2に向け、水平方向にずらして多孔質セラミックス基盤10を積層し、多孔質セラミックス基盤10の目地に目地材20を充填したものであってもよい。
このように多孔質セラミックス基盤を水平方向にずらして積層することで、露出面を形成する任意の多孔質セラミックス基盤とこれと隣接する他の多孔質セラミックス基盤との目地から吸収された雨水と、この雨水が地面に到達するまでに接触する多孔質セラミックス基盤との接触面積が増加する。即ち、複数層の多孔質セラミック基盤の表面に、雨水が鉛直方向で接触することにより、より速やかに、かつより多量の雨水が多孔質セラミックス基盤に吸水される。このため、舗装道路での水溜りの発生をより抑制し、かつ冷却効果の向上が図れる。
【0043】
上述の実施形態では、多孔質セラミックス基盤を配置(配置工程)した後に、目地材を目地に充填(充填工程)して、多孔質セラミックス構造体を製造している。
しかしながら、本発明の多孔質セラミックス構造体の製造方法は、これに限定されず、配合物を配合しつつ、多孔質セラミックス基盤を配置し、目地に配合物を充填してもよい。あるいは、1個の多孔質セラミックス基盤を配置し、その側面に配合物を塗布し、この塗布した配合物に他の多孔質セラミックス基盤を接触させて配置してもよい。
即ち、配置工程と充填工程とを並行して行ってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0045】
(使用原料)
実施例に用いた原料は、以下の通りである。
<多孔質セラミックス基盤>
多孔質セラミックス基盤:下記製造例1で得られた多孔質セラミックス基盤
<骨材>
粒状の多孔質セラミックス焼結体A(粒子径8mm以下):製造例1で得られた多孔質セラミックス基盤を粉砕したもの。目開き8mmの篩を通過し目開き2mmの篩を通過しないもの4質量部と、目開き2mmの篩を通過したもの2質量部との混合物。飽和含水率;22質量%。
粒状の多孔質セラミックス焼結体B:製造例1で得られた多孔質セラミックス基盤を粉砕し、目開き15mmの篩を通過し8mmの篩を通過しないもの。飽和含水率;32質量%。
【0046】
≪粒状の多孔質セラミックス焼結体の飽和含水率≫
粒状の多孔質セラミックス焼結体を水に60分間浸漬し、水中から取り出し、表面の水滴を除去する程度に布に接触させた後、直ちに質量を測定(飽和含水状態質量)し、下記(1)式により飽和含水率を求めた。粒状の多孔質セラミックス焼結体Aについては、任意の粒子25個(=試料数(N))の飽和含水率の平均値を飽和含水率とした。また、粒状の多孔質セラミックス焼結体Bについては、任意の粒子10個(=試料数(N))の飽和含水率の平均値を飽和含水率とした。
【0047】
飽和含水率(質量%)=[(飽和含水状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量]×100・・・(1)
【0048】
砂:田砂(登録商標、粒子径1mm以下、エイエフジャパン企画製)
小石:南国の砂(商品名、粒子径3〜5mm、手取フィッシュランドにて販売)
エポキシ樹脂:アデカレンジEP−4100(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、株式会社ADEKA製)
硬化剤:アデカハードナーEH−240(商品名、変性脂肪族ポリアミン、株式会社ADEKA製)
セメント:インスタントセメント(商品名、株式会社住若製)
【0049】
(製造例1)多孔質セラミックス基盤の製造
<使用原料>
多孔質セラミックス基盤の製造に用いた原料は、以下の通りである。
≪有機汚泥≫
有機汚泥には、染色工場(小松精練株式会社、美川工場)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%であった。
≪粘土類≫
粘土類には、蛙目粘土(岐阜県産又は愛知県産)を用いた。
≪珪藻土≫
珪藻土には、能登地区産の耐火煉瓦の原料で、含水率が5質量%の粉末状の珪藻土を用いた。
≪スラグ≫
スラグには、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO、Al、CaO、Fe、FeO、MgO、MnO、KO、NaOを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
【0050】
<製造方法>
有機汚泥10質量部と珪藻土5質量部とをミックスマラー(東新工業株式会社製)で混合し一次混合物を得(第一の混合操作)、一次混合物に粘土類30質量部とスラグ55質量部とを添加し、さらに混合し、可塑状態の混合物を得た(第二の混合操作)(以上、混合工程)。得られた混合物を真空土練成形機(高浜工業株式会社製)で成形し、幅60cm、厚み2cmの帯状の一次成形体を得た。この一次成形体を任意のピッチと幅で切断し、厚み2cmの略正方形の平板状の成形体を得た(成形工程)。
得られた成形体を熱風乾燥機で乾燥(180℃、0.5時間)し、含水率1質量%以下とした後、連続式焼結炉を用いて、下記の焼成条件にて焼成した。焼成後、多孔質セラミックス基盤の4つの側面に沿って、側端を切除し、長さ25cm×幅25cm×厚み4cm(Aサイズ)、長さ50cm×幅50cm×厚み4cm(Bサイズ)の多孔質セラミックス基盤を得た(焼成工程)。
得られた多孔質セラミックス基盤は、飽和含水率:50質量%、透水速度:3mm/sec.であった。
連続式焼結炉としては、ローラーハースキルン(焼結炉の有効長:全長15m、焼結炉を焼結炉入口から各1.5mのゾーン1〜10に分割)を用いた。
【0051】
≪焼成条件≫
到達温度:1050℃
焼成時間:65分間
温度勾配:
ゾーン1;0.57℃/sec.
ゾーン2;0.16℃/sec.
ゾーン3;0.33℃/sec.
ゾーン4;0.52℃/sec.
ゾーン5;0.86℃/sec.
ゾーン6;0.005℃/sec.
ゾーン7;−0.34℃/sec.
ゾーン8;−0.72℃/sec.
ゾーン9;−0.35℃/sec.
ゾーン10;−0.26℃/sec.
【0052】
<多孔質セラミックス基盤の飽和含水率>
多孔質セラミックス基盤を長さ10cm×幅10cm×厚さ4cmにカットして試料とした以外は、「粒状の多孔質セラミックス焼結体の飽和含水率」と同様にして、多孔質セラミックス基盤の飽和含水率を測定した。なお、試料数(N)を10とし、その平均値を求めた。
【0053】
<多孔質セラミックス基盤の透水速度>
多孔質セラミックス基盤の透水速度は、土壌環境分析法(日本土壌肥料学会監修、博友社、第4刷、2008年11月10日、68頁)に記載の変水位法の測定装置(石川県農業総合研究センター所有の変水位透水性測定器(大起理科工業株式会社製))を用いて測定した。
多孔質セラミックス基盤を直径43mm、高さ40mmの円柱状(高さ方向に直交する断面の面積:1451mm)にくり抜いて試料とし、この試料を水中に60分間浸漬して飽和含水状態とした。飽和含水状態の試料の側面を防水フィルムで覆い、変水位法の測定装置に取り付けた。なお、変水位目盛管の開口面積は56.7mm(口径8.5mm)であった。
変水位目盛管内の水面が、試料の天面上12.5cmの位置(h1)から10cm下がるまでの時間(下降時間t)を測定し、下記(2)式により、透水速度を求めた。
透水速度の測定をN=10について行い、その平均値を求めた。
【0054】
透水速度(mm/sec.)=100(mm)÷下降時間t(sec.)・・・(2)
【0055】
(実施例1)
表1の目地材の組成に従い、2質量部の粒状の多孔質セラミックス焼結体Aと、1質量部の田砂とを混合して骨材とした。この骨材200cm3と、エポキシ樹脂14gと、硬化剤6gと、水100gとを混合して配合物とした(配合操作)。この配合物の加水率は、表1に示すとおりであった。
次に、配合操作で得られた配合物の上澄み液をデカンテーションにより分離し、除去した(除去操作)。
【0056】
4枚の多孔質セラミックス基盤(Aサイズ)を水平方向に2×2列で地面に並べ、多孔質セラミックス基盤の目地に上澄み液を除去した配合物を充填した(充填操作)。目地の幅は1cmであった。配合物を充填後、常温で24時間放置して配合物を硬化し、多孔質セラミックス構造体(長さ51cm×幅51cm×厚さ4cm)を得た。
目地材について、透水速度の測定と、磨耗強度の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0057】
<性能評価>
得られた多孔質セラミックス構造体の露出面の略中央に500cmの水を掛けた。掛けられた水は、多孔質セラミックス構造体に瞬時に吸収され、露出面には、水溜りができなかった。
また、水を掛けた直後に、多孔質セラミックス構造体の埋設面を観察すると、水が目地材を透過していた。さらに、多孔質セラミックス基盤の断面を観察したところ、多孔質セラミックス基盤は、露出面、埋設面及び目地材との接触面の近傍に水が浸透し、厚さ方向の略中央部に水が浸透していない状態であった。
これらの結果から、本実施例の多孔質セラミックス構造体は、短時間に多量の雨が降った場合でも、速やかに雨水を地中に浸透させると共に、露出面から雨水を吸水し、又は目地材を透過した雨水を埋設面、及び目地材と多孔質セラミックス基盤との接触面から吸水し、保水できることが判った。
以上の観察結果から、本実施形態の多孔質セラミックス構造体の性能を「○」(良好)と評価した。
【0058】
<目地材の透水速度>
目地材を直径43mm、高さ40mmの円柱状に成形して試料とした以外は、「多孔質セラミックス基盤の透水速度」と同様にして、透水速度を測定した。透水速度の測定をN=10について行い、その平均値を求めた。
【0059】
<磨耗強度>
目地材を直径11.5cm、厚さ1.5cmの円盤状に成形して試料とした。この試料について、JIS A1453に準じて磨耗試験を行い、試料が100回転する毎に、試料の質量w2を測定した。磨耗試験は、試料が500回転するまで行った。
試験開始前の試料の質量w1と、質量w2とから、下記(3)式により質量減少率を求めた。なお、磨耗試験の条件は、加重:530g、研磨紙:CALIBRATION OF ABRASIVE PAPER S42 Standpaper Strips(テーバー社製)であった。また、磨耗試験において、試料が100回転する毎に研磨紙を新しいものに交換した。
【0060】
質量減少率(質量%)=(w1−w2)÷w1 ・・・(3)
【0061】
求めた質量減少率を下記評価基準に分類し、磨耗強度を評価した。
≪評価基準≫
◎:500回転後の質量減少率が1質量%以下である
○:500回転後の質量減少率が1質量%超5質量%以下である
△:500回転後の質量減少率が5質量%超である
×:500回転以内に破砕した
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例2〜5)
表1の目地材の組成に従い、各原料を配合し配合物を調製した以外は、実施例1と同様にして多孔質セラミックス構造体を得た。各例の目地材について、透水速度の測定と、磨耗強度の評価を行い、その結果を表1に示す。
また、各例の多孔質セラミックス構造体について、実施例1と同様にして性能評価を行った。その結果、実施例1と同様の状態が観察されたため、各例の性能を「○」と評価した。
【0064】
(比較例1)
目地材をインスタントセメント1000gと水200gとを混合したものとした以外は、実施例1と同様にして多孔質セラミックス構造体を得た。目地材について、透水速度の測定と、磨耗強度の評価を行い、その結果を表1に示す。
また、得られた多孔質セラミックス構造体について、実施例と同様にして性能評価を行ったところ、多孔質セラミックス構造体が全ての水を吸水したものの、水を掛けている際に、水溜りの発生が見られた。また、埋設面には、水が透過していなかった。これは、水が、目地材を透過せず、多孔質セラミックス基盤に吸収されたためである。
この結果から、本比較例の性能を「×」と評価した。
【0065】
(比較例2)
多孔質セラミックス基盤(Bサイズ)のみで多孔質セラミックス構造体を構成した。即ち、目地が形成されていない多孔質セラミックス構造体とした。
この多孔質セラミックス構造体について、実施例1と同様にして性能評価をしたところ、多孔質セラミックス構造体が全ての水を吸水したものの、水を掛けている際に、水溜りの発生が見られた。また、埋設面には、水が透過していなかった。
この結果から、本比較例の性能を「×」と評価した。
【0066】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜5は、いずれも透水性、保水性に優れていることが判った。また、実施例5は、種々の色の石が混在しており、意匠性にも優れていた。
一方、多孔質セラミックス基盤よりも透水速度が速い目地材を備えていない比較例1、2は、実施例1〜5よりも透水性に劣るものであった。
これらの結果から、本発明を適用した多孔質セラミックス構造体は、ヒートアイランド現象、砂漠化及び局地的な洪水を防止できることが判った。
【0067】
図5は、磨耗試験での質量減少率の推移を表すグラフであり、縦軸に質量減少率を示し、横軸に回転子の回転数を示している。
表1、図5に示すように、目地材の骨材に、田砂又は南国の砂を配合した実施例1、3、5は、粒状の多孔質セラミックス焼結体のみを骨材とした実施例2、4に比べ、磨耗強度が飛躍的に上昇していた。なお、実施例2、4の目地材は、回転子の回転数が100回転を超えた時点で破砕された。
この結果から、骨材として砂や小石を用いることで、目地部の強度を向上できることが判った。
【0068】
(実施例6)
図3に示す多孔質セラミックス構造体100と同様の多孔質セラミックス構造体を得た。1層当たり、4個の多孔質セラミックス基盤を水平方向に並べて配置し、鉛直方向に3層積層した。水平方向に隣接する多孔質セラミックス基盤同士の目地を1cm幅とし、鉛直方向に隣接する多孔質セラミックス基盤同士の目地を1cm厚とした。
得られた多孔質セラミックス焼結体について、実施例1と同様にして性能評価を行った。その結果、実施例1と同様の状態が観察されたため、性能を「○」と評価した。
【0069】
(実施例7)
図4に示す多孔質セラミックス構造体200と同様の多孔質セラミックス構造体を得た。1層当たり、4個の多孔質セラミックス基盤を水平方向に並べて配置し、鉛直方向に3層積層した。この多孔質セラミックス構造体は、鉛直方向に隣接する多孔質セラミックス基盤同士を互いに水平方向にずらして配置したものである。水平方向に隣接する多孔質セラミックス基盤同士の目地を1cm幅とし、鉛直方向に隣接する多孔質セラミックス基盤同士の目地を1cm厚とした。
得られた多孔質セラミックス焼結体について、実施例1と同様にして性能評価を行った。その結果、実施例1と同様の状態が観察されたため、性能を「○」と評価した。
【符号の説明】
【0070】
1、100、200 多孔質セラミックス構造体
10 多孔質セラミックス基盤
20 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体であって、
前記目地材は、前記多孔質セラミックス基盤より透水速度が速いことを特徴とする多孔質セラミックス構造体。
【請求項2】
前記目地材は、透水速度が7mm/sec.以上であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質セラミックス構造体。
【請求項3】
前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の多孔質セラミックス構造体。
【請求項4】
前記骨材は、粒子径8mm以下の多孔質セラミックス焼結体であることを特徴とする、請求項3に記載の多孔質セラミックス構造体。
【請求項5】
透水性及び保水性を有する多孔質セラミックス基盤を複数備え、該多孔質セラミックス基盤同士の目地に目地材が充填された多孔質セラミックス構造体の製造方法であって、
前記多孔質セラミックス基盤を任意の位置に配置する配置工程と、
配置した前記多孔質セラミックス基盤同士の目地に、前記多孔質セラミックス基盤よりも透水速度が速い目地材を充填する充填工程とを有することを特徴とする多孔質セラミックス構造体の製造方法。
【請求項6】
前記目地材は、エポキシ樹脂及び骨材を含み、
前記充填工程は、前記エポキシ樹脂、前記骨材及び水を含む目地原料を配合して配合物を得る配合操作と、
前記配合物から上澄み液を除去する除去操作と、
前記上澄み液を除去した前記配合物を前記目地に充填する充填操作と、
前記目地に充填した前記配合物を硬化する硬化操作とを有することを特徴とする、請求項5に記載の多孔質セラミックス構造体の製造方法。
【請求項7】
前記目地原料は、前記水/前記目地原料で表される質量比が1/11超であることを特徴とする、請求項6に記載の多孔質セラミックス構造体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−92542(P2012−92542A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239970(P2010−239970)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】