多孔質セルロース凝集体及びその成型体組成物
セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が1.3〜20m2/g、安息角が25°以上44°未満であり、水中で崩壊する性質を有する多孔質セルロー.ス凝集体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業分野、特に医薬、食品で主として賦形剤として有用な多孔質セルロース凝集体及びその成型体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬、食品、その他化学工業分野等において、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース粒子を賦形剤として用いて、活性成分を含有する成型体を調製することが、広く行われている。このセルロース粒子には、良好な成形性、流動性及び崩壊性が求められている。
【0003】
特許文献1には、セルロース粒子を、水に対して不溶性又は難溶性で有機溶媒に可溶の結晶性物質などの第三成分と混合し、これを又は水溶性有機溶媒の水溶液を用いて造粒、乾燥した後、第三成分を有機溶媒で抽出・除去して得られる、結晶形がI型であり、細孔径が0.1μm以上であり、気孔率が20%以上の細孔を有し、かつ350メッシュ以上の留分が90重量%以上である多孔性セルロース粒子(本願の比較例6に相当)が記載されている。該文献に記載される多孔性セルロース粒子は、そのセルロース一次粒子が、その粒子の境界が不明瞭なほどに一様に連続したフィルム状の緻密で強固なセルロース壁構造を形成するため、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が全く異なる。特許文献1のセルロース粒子は、流動性に優れるものの、緻密で連続したセルロース壁に水が浸透しにくいため、水中で崩壊せず、活性成分の速放性に支障をきたす場合もあった。また、特許文献1のセルロース粒子は、セルロース圧縮時の塑性変形性に乏しく、成形性が不十分であり、さらに、その製造工程で有機溶媒や有機溶媒に可溶の結晶性物質などの第三成分を使用するため、製造コストが高くなるばかりか、活性成分を失活させる場合もあり、賦形剤として安定的に使用するには不十分であった。
【0004】
特許文献2には、有機溶媒に分散させた微粒子状天然セルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥することにより得られる、結晶形がI型であり、比表面積が20m2/g以上で、直径0.01μm以上の細孔容積が0.3cm3/g以上の多孔質構造を有し、平均粒子径が大きくとも100μmである多孔性微小セルロース粒子(本願の比較例7に相当)が記載されている。この微小セルロース粒子も上記セルロース壁構造を有しており、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が全く異なる。また、特許文献2のセルロース粒子は、細孔容積自体は大きいものであるが、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が異なるため、粒子内へ水が浸透し難く、崩壊性に劣るという問題がある。加えて、該多孔質セルロース凝集体粒子も、その製造工程で有機溶媒を使用するため、製造コストが高くなるばかりか、比表面積が大きすぎるため、活性成分と水分との相互作用を助長して活性成分を失活させる場合もあり、賦形剤として安定的に使用するには不十分であった。
【0005】
特許文献3には、成形性と崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が150〜375、見かけ比容積が1.84〜8.92cm3/g、粒度が300μm以下のセルロース粉末(本願の比較例8に相当)が記載されている。
特許文献4には、流動性、崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が60〜375、見かけ比容積が1.6〜3.1cm3/g、見かけタッピング比容積が1.4cm3/g以上で、安息角が35〜42°、200メッシュ以上の成分が2〜80重量%である微結晶セルロース凝集体(本願の比較例9に相当)が記載されている。
これらの特許文献に記載される実施例により得られたセルロース粉末は、水銀ポロシメトリーを用いた、細孔分布測定結果によれば、粒子内細孔容積が小さく、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。このため、これらのセルロース粉末は比表面積が0.6〜1.2m2/gと小さく、圧縮成形性が低い。これらの特許文献には、見掛け比容積の値を調整して、セルロース粒子の成形性、流動性、崩壊性を制御することが開示されているが、見掛け比容積が2.0〜2.9cm3/gと比較的小さい範囲においては、流動性、崩壊性に優れるものの、成形性が満足いくものではなく、一方、3.0〜3.2cm3/gとやや見掛け比容積が大きくなると、成形性は優れるが、流動性、崩壊性が悪くなるという問題があった。
【0006】
特許文献5には、成形性の良いセルロース粉末として、平均粒子径が大きくとも30μmであり、かつ比表面積が1.3m2/gであるβ−1,4−グルカン粉末(本願の比較例1に相当)が記載されている。該文献に記載されるβ−1,4−グルカン粉末は、二次凝集構造を有さず、個々の一次粒子が単独で存在している。このグルカン粉末は、良好な成形性を有するものの、崩壊性に劣る上、平均粒子径が小さいため、流動性に乏しいという問題があった。
特許文献6には、成形性と崩壊性が良いセルロース粉末として、セルロース質物質を加水分解して得られる平均重合度100〜375、酢酸保持率が280%以上で、川北式(P・V0/(V0−V)=1/a・b+P/a)のa値が0.85〜0.90、b値が0.05〜0.10であり、見かけ比容積が4.0〜6.0cm3/g、実質的に355μm以上の粒子がなく、平均粒子径が30〜120μmであるセルロース粉末(本願の比較例10に相当)についての記載がある。該文献に記載される実施例の方法で得られたセルロース粉末も、水銀ポロシメトリーを用いた細孔分布測定結果によれば、粒子内細孔容積が小さいため、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。特許文献6のセルロース粉末は圧縮成形性と崩壊性に優れるとの記載があるが、具体的に開示されている、最もバランスの優れる実施例について安息角を測定すると55°を超えており、流動性は充分満足のいくものではなく、流動性に乏しい活性成分が多く配合される処方等では錠剤重量の変動係数が大きくなり、薬物の含量均一性に影響を及ぼすという課題があった。また、該文献のセルロース粉末では、高圧下で成型した場合には高硬度を付与できるものの、意図的に形成させた粒子内細孔がなく、粒子内部への水の浸透性が低いため、崩壊が遅延するという問題があった。
【0007】
特許文献7には、成形性と流動性と崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が100〜375、75μmの篩を通過し38μm篩上に残留する粒子が全重量の70%以上で、かつ、粒子の長径短径比の平均値が2.0以上であることを特徴とする結晶セルロース(本願の比較例11に相当)が記載されている。
特許文献8には、成形性と崩壊性、流動性が良いセルロース粉末として、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/D(長径/短径比)が2.0〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見かけ比容積が4.0〜7.0cm3/g、安息角が54°以下であり、比表面積が0.5〜4m2/gであるセルロース粉末(本願の比較例2、3に相当)の記載がある。
これらの文献に記載されるセルロース粉末も、上記と同様、水銀ポロシメトリーで測定した粒子内細孔容積が小さいため、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。これらの文献に記載されるセルロース粉末は、粒子の形状を細長くすることで、成型体に高い硬度を付与するものであるが、細長い形状を有するが故に、見かけ比容積が大きくなり、成形性が高いものほど流動性が低下する。これらの文献に記載される実施例のセルロース粉末について、最も流動性が良好なものについて安息角を測定すると44°であり、例えば、流動性に乏しい活性成分が多く配合される処方で、かつ高速度で連続成形する場合に、錠剤重量の変動係数が大きくなり、薬物の含量均一性に影響を及ぼすため、流動性の点で満足いくものではなかった。さらに、これらの文献に記載されるセルロース粉末も、高圧下で成型した場合には高い硬度を付与できるものの、意図的に形成させた粒子内細孔がなく、粒子内部への水の浸透性が低いため、崩壊が遅延するという問題があった。
これら、特許文献5〜8に記載されるセルロース粉末は、見掛け比容積が2.3〜6.4cm3/gの範囲においては、十分な成形性は得られるものの、流動性、崩壊性が悪化するという問題があった。
【0008】
特許文献9には、流動性の良いセルロース粒子として平均重合度が60〜375である結晶セルロースを10〜70%及び水溶性添加剤を10〜90%含有する薬学的に不活性な球状核が記載されている。また、特許文献10には、結晶セルロースを50%以上含有する粉体を混合攪拌造粒機で混合しながら、蒸留水を加え練合し、吸水能が0.5〜1.5ml/g、真球度が0.7以上、タッピング見掛け比容積が0.65g/ml以上、摩損度が1%以下、平均重合度が60〜375である結晶セルロースを50%以上含有する薬学的に不活性な球状核(本願の比較例12に相当)が記載されている。特許文献11には、加水分解したセルロース粒子を、機械的に粒径を減少させ、スプレー乾燥した少なくとも0.4g/cm3の疎かさ密度(見かけ比容積では、2.5cm3/g)を有し、球状であり、平均粒子径が5〜35μmである滑らかな表面をもつ微結晶セルロース粒子が記載されている。特許文献12には、セルロース質材料を平均重合度が60〜350になるまで加水分解し、次いで平均粒子径が15μmになるまで機械的に摩砕し、得られた結晶セルロースを含む分散液を、液滴の形態で乾燥し得られる、平均重合度が60〜350の結晶セルロースを10%以上含有し、タッピング見掛け比容積が0.60〜0.95g/mL、真球度が0.7以上、形状係数が1.10〜1.50、及び平均粒子径が10〜400μmであるセルロース系粒子(本願の比較例13に相当)が記載されている。
【0009】
これらの公報に記載されるセルロース粒子も二次凝集構造とはならず、これらの特許文献に記載されている実施例の方法で得られたセルロース粒子は、見掛け比容積が2.5cm3/g以下であり、球に近い形状を有し、流動性に優れるものの、圧縮成形性に劣り、常用される圧縮圧10〜20MPaでは実用上十分な硬度を有する成型体とならない。
上記のように、従来の技術のセルロース粒子においては、成形性、流動性、崩壊性は、互いに相反する性質であり、これらすべての物性をバランスよく兼ね備えた、セルロース粒子の実現が望まれていた。
一方特許文献3〜12に記載されるセルロース粒子は、意図的に形成させた粒子内細孔を持たず、粒子内細孔容積が小さいため、粒子内に活性成分をほとんど担持できないために、圧縮成型時に液状成分の浸み出しや、打錠障害が生じる問題があった。また特許文献1及び2に記載セルロース粒子は粒子内細孔はあるが、細孔径が小さいため、緻密で連続したセルロース壁に水が浸透しにくいため、水中で崩壊せず、活性成分の速放性に支障をきたす問題があった。
また、これらのセルロース粒子では、意図的に形成させた粒子内細孔を持たず、粒子内細孔容積が小さいため、粒子内に活性成分をほとんど担持できないために、水難溶性活性成分の固形製剤化においては、水や有機溶媒で一旦造粒し乾燥する等の複雑な工程を経ない限り、活性成分の溶出が遅く実用に供さないという欠点や、昇華性の活性成分の固形製剤化の場合には、活性成分が保存中に再結晶化してしまい、商品価値を損なう等の欠点を有していた。
【0010】
内服用固形製剤における活性成分は、消化管内で製剤より体液中に溶出し、消化管から吸収され、体循環血液に入り、薬効を発揮する。水に難溶性の活性成分は溶出性が低いので、投与された活性成分が全て溶出しないうちに体外へ排出され、十分な薬効を発揮しない場合がある。投与活性成分量に対する、体循環血液に入る全活性成分量の比は、一般的にバイオアベイラビリティーとして知られている。このバイオアベイラビリティーの向上と、活性成分の速効性を目的として、難溶性活性成分の溶出性の改善について、種々の方法が従来検討されてきた。
特許文献13には、水に難溶性の活性成分をβ−1,4−グルカン粉末と共粉砕する方法が記載されている。本方法は、β−1,4−グルカン粉末の結晶性が消失するまで長時間粉砕処理を施さなければならず、またロール混合機で長時間強力なシェアをかけ続けなければならないため、実生産上効率が悪いという問題があった。また、結晶性が消失したβ−1,4−グルカンは圧縮成形性が低いという問題があった。
特許文献14には、直接打錠法により水難溶性の主薬を経口投与固形剤とする場合に、β−1,4−グルカン、崩壊剤及び界面活性剤を配合して強度を高め、主薬含有量のばらつきをなくし、錠剤の崩壊度及び主薬の溶出速度を速める方法が記載されている。該公報には、粒子内細孔に関する記載はなく、水難溶性の活性成分と多孔質セルロース粒子を配合することにより、薬物の水溶性を改善することについては全く知られていなかった。また、水難溶性の活性成分の溶出を促進するため界面活性剤を配合する必要があり、該固形製剤を服用した際に、界面活性剤により消化管粘膜に炎症を生じることが課題であった。
【0011】
また、特許文献15には、水難溶性主薬とβ−1,4−グルカンとを用いて、粉体混合、練合、造粒、乾燥の工程を経た湿打法により錠剤を製造する場合に、水溶性高分子溶液を添加することにより、錠剤硬度が高く、崩壊時間が短く、主薬溶出速度が大きい錠剤を製造することが記載されている。該文献も、粒子内細孔の大きい多孔質セルロース粒子に関する記載はなく、水難溶性の活性成分と多孔質セルロース粒子を配合することにより、薬物の水溶性を改善することについては全く知られていなかった。また、かかる方法では、油性物質を吸着した乾燥に関わる多くの工程が必須であり、それに伴う設備コスト、乾燥に使用するエネルギーコストが高くなることが課題であった。また、熱により失活する活性成分には適用できない等の課題があった。
また、特許文献16には、有機溶媒に分散させた微粒子状天然セルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥することで得られる、特定の比表面積及び細孔容積を有する多孔構造のセルロース粒子に、難溶性薬物を混合し、昇華吸着させることにより、薬物の溶出を改善する方法が記載されている。該文献に記載される多孔質セルロース粒子は、高い比表面積、大きい粒子内細孔容積を有するため、確かに水難溶性活性成分を昇華吸着させた場合に、溶出の改善がみられる。しかしながら、該特許文献の実施例には、過度に高い比表面積を有するセルロース粒子を使用し、その表面で昇華吸着された活性成分は非晶化しているため、活性成分が保存中に一部が結晶化して、溶出速度が変化してしまう等の保存安定性の問題や、錠剤など強固に結合した成型体組成物では、その崩壊が悪いために崩壊しにくく、活性成分の溶出が遅くなるという欠点があった。
昇華性の活性成分は、保存時に固形製剤から侵出する問題があり、それを防止する目的で、それらの固形製剤の多くはフィルムコーティング又は糖衣コーティングが施されてきた。しかし、そのような処置を施されても、フィルム層を通過して製剤外部に侵出することで、製剤中の活性成分ばらつきを生じたり、それが製剤表面に付着することで服薬時の刺激臭を呈したり、瓶などの保存容器内で再結晶化することにより商品価値を著しく低下させる問題があった。また、コーティングを施さない製剤の場合は、コーティングを施した場合に対し、昇華再結晶化はさらに顕著になる。
特許文献16ではすでに述べたように過度に高い比表面積を有するセルロース粒子を使用し、その表面で昇華吸着された活性成分は非晶化しているため、活性成分の保存安定性が悪いという問題や、錠剤など強固に結合した成型体組成物では、その崩壊が悪いために崩壊しにくく、活性成分の溶出が遅くなるという欠点があった。
【0012】
また特許文献17には、固形製剤中のイブプロフェンが昇華することによる再結晶化を防止する方法として、イブプロフェン含有固形製剤と、ポリビニルピロリドン、酸化マグネシウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から1種又は2種以上の安定化物質を共に、瓶などの密閉容器内で保存する方法が記載されている。かかる方法によると、確かに製剤保存時の密閉容器への結晶付着、製剤の刺激臭は改善されるが、ポリビニルピロリドン、酸化マグネシウム及び炭酸ナトリウム等を別の製剤として容器に入れる必要があり、工程が複雑になる。従って、製剤中に多孔質セルロースを入れることにより、昇華性が防止された単一製剤とする本発明の昇華性活性成分含有製剤とは全く異なる。
従来、常温で、油状、液体、半固体状の活性成分を含む組成物は、固体状活性成分と比較して、圧縮成型する際に、製剤から液状成分が浸み出すため、特に打錠障害を生じやすく、得られた製剤表面に液状成分の斑点が生じる、顆粒状製剤の場合は流動性不良を生じる等の問題があった。これらの問題は、製品の品質を著しく低下させるばかりではなく、活性成分濃度・薬効ばらつきの原因となるため、その改善は極めて重要な課題である。
【0013】
特許文献18〜29には、錠剤の製造において、常温で液状・半固形状の活性成分をそのまま吸着担体に保持させる、あるいは活性成分を水、有機溶媒、油脂、水溶性高分子、界面活性剤に溶解、乳化、懸濁させたものを保持させた後、乾燥工程を経て、得られた乾燥粉末、又は顆粒を圧縮成型する方法が記載されている。しかしながら、これらの特許文献の方法では、圧縮時に常温で液状又は半固形状の活性成分が浸み出し、打錠障害を発生させ、十分な圧縮成型体が得られない場合があった。またこれら特許文献には、セルロース粒子に関して、粒子内細孔容積に関する記載はなく、常温で液状又は半固形状の活性成分を圧縮する際に、本発明の粒子内細孔容積の大きな多孔質セルロース凝集体を加えることにより、該多孔質セルロース凝集体が常温で液状又は半固形状の活性成分をその粒子内部に保持することにより、浸み出しを防止し、粉末、顆粒、錠剤等のような固形製剤を調製しやすくなることについては全く知られていなかった。また、特許文献18〜29の方法では、乾燥に関わる多くの工程が必須であり、それに伴う設備コスト、乾燥に使用するエネルギーコストが高くなることが課題でもあった。
結晶セルロースと活性成分を混合し、活性成分の混合均一性を高め、活性成分のばらつきを低減する方法として、特許文献30には、薬物と添加剤の混合において、薬物と流動化剤としてタルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸塩を混合した後、該混合粉体とその他の添加剤とを混合する薬物の混合方法が開示され、流動化剤以外の添加剤の中でも結晶セルロースが混合性に優れていると記載されている。しかしながら、結晶セルロース等のセルロースの粒子内細孔についての記載が全くなく、本発明の如く、多孔質セルロース凝集体粒子を配合することで、粒子内に活性成分が保持されることによって、活性成分の混合均一性を向上させ得ることは知られていなかった。また、該文献には、薬物として、平均粒径が40μm以下の微粉状で、凝集性の高い薬物に適用すると効果が顕著になり好ましいと記載されているが、実際に該文献の実施例に記載される薬物の平均粒子径について、最も小さいものでも16μmであり、例えば水難溶性の活性成分の服用時の分散性を高める目的で、10μm以下程度に粉砕されたものについては、活性成分の凝集性が格段に高くなるため、既存の粒子内細孔の小さい結晶セルロースでは、十分な混合均一性が得られない場合があった(本発明の比較例31)。
【0014】
【特許文献1】特開平1−272643号公報
【特許文献2】特開平2−84401号公報
【特許文献3】特公昭40−26274号公報
【特許文献4】特公昭53−127553号公報
【特許文献5】特開昭63−267731号公報
【特許文献6】特開平6−316535号公報
【特許文献7】特開平11−152233号公報
【特許文献8】WO02/02643号パンフレット
【特許文献9】特開平4−283520号公報
【特許文献10】特開平7−173050号公報
【特許文献11】特表平7−507692号公報
【特許文献12】WO02/36168号パンフレット
【特許文献13】特公昭53−22138号公報
【特許文献14】特開昭53−044617号公報
【特許文献15】特開昭54−052718号公報
【特許文献16】特開平03−264537号公報
【特許文献17】特開平08−193027号公報
【特許文献18】特開昭56−7713号公報
【特許文献19】特開昭60−25919号公報
【特許文献20】特開昭61−207341号公報
【特許文献21】特開平11−193229号公報
【特許文献22】特開平11−35487号公報
【特許文献23】特開2000−16934号公報
【特許文献24】特開2000−247869号公報
【特許文献25】特開2001−181195号公報
【特許文献26】特開2001−316248号公報
【特許文献27】特表2002−534455号公報
【特許文献28】特開2003−161号公報
【特許文献29】特開2003−55219号公報
【特許文献30】特開2003−81876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、セルロース粒子を特定の細孔径、細孔容積を持つ多孔質セルロース凝集体とすることにより、各種活性成分を含む成型体の製造に用いられる、優れた成形性、流動性、崩壊性を有する賦形剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するため、セルロース凝集体の粒子構造を制御し、二次凝集構造を発現させ、セルロース凝集体の粒子内細孔容積を高め、セルロース凝集体の粉体物性を特定の範囲に制御することにより、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
(1)セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が1.3〜20m2/g、安息角が25°以上44°未満であり、水中で崩壊する性質を有する多孔質セルロース凝集体、
(2)前記安息角が25〜42°である上記(1)の多孔質セルロース凝集体、
(3)多孔質セルロース凝集体0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が165〜410Nである上記(1)又は(2)の多孔質セルロース凝集体、
(4)前記破壊荷重が200〜410N、崩発時間が75秒以下である上記(3)の多孔質セルロース凝集体。
(5)平均粒子径の異なる2種以上のセルロース一次粒子群と液媒体とを含み、セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmである分散液を、乾燥する工程を含む、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体の製造方法、
(6)1種以上の活性成分と上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(7)前記1種の活性成分が水難溶性活性成分である上記(6)の成型体組成物、
(8)前記1種の活性成分が昇華性活性成分である上記(6)の成型体組成物、
(9)常温で液状又は半固形状である1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(10)40μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(11)10μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、成形性、流動性、及び崩壊性に極めて優れている。そのため、各種活性成分を含む成型体の製造において、本発明の多孔質セルロース凝集体を賦形剤として使用すれば、活性成分との混合均一性に優れ、重量ばらつきがなく、活性成分の含量均一性に優れ、十分な硬度を有し、打錠障害がなく、摩損度が低く、崩壊性に優れる成型体を簡便な方法で提供することができる。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、水難溶性の活性成分を含む固形製剤において、活性成分の溶出性、打錠性、及び崩壊性が極めて良好となるために、また、液状、半固形状活性成分を含む固形製剤において、液状又は半固形状活性成分の浸み出しが防止され、崩壊性が良好となるために、加えて、活性成分が微量である場合で特に活性成分の平均粒径が小さく付着凝集性が高い場合の、活性成分と活性成分以外の成分との混合やそれを用いた固形製剤において、活性成分の混合速度及び濃度ばらつきの低減に寄与でき、打錠性、崩壊性が良好となるために、さらには昇華性の活性成分の固形製剤において、昇華性活性成分の昇華による再結晶化を防止でき、商品価値の低下を防ぐことができるために、固形製剤のための賦形剤の用途では特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、一次粒子が凝集した二次凝集構造を有する必要がある。これは、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、250倍及び/又は1500倍で、粒子表面を観察した場合に、一次粒子の境界が明確な二次凝集構造のことをいう。一次粒子が凝集した二次凝集構造は崩壊性と密接に関係し、この粒子構造を有しない場合は、崩壊性が悪化するので好ましくない。一次粒子の境界が明確でなく、例えばフィルム状の緻密で連続したセルロース隔壁を有する場合は、セルロース一次粒子が緻密に連続し、強固に結合しているため、水中で粒子が崩壊せず、成型体の崩壊性も悪くなるので好ましくない。
また、一次粒子が凝集した二次凝集構造は、崩壊性のみならず、活性成分の溶出性とも密接に関係する。一次粒子が凝集した二次凝集構造を有する多孔質セルロース粒子は、水中で、一次粒子間への水の浸透が速く、一次粒子への崩壊が促進され、活性成分を保持させた場合には、活性成分と水との接触面積が増大するため、水に難溶性の活性成分の溶出性を改善する効果がある。
加えて、この二次凝集構造は、粒子の内部・表面に関わらず、均一に分布するものであり、活性成分と混合する際には、セルロース一次粒子間隙にも、活性成分を保持できるため、特に、液状成分の浸み出しを防止できるので好ましい。
さらに、この二次凝集構造は、粒子の表面のみならず、内部にも活性成分を保持できるため、活性成分の混合速度の向上、混合均一性の向上に寄与し、濃度ばらつきを大幅に低減できるので好ましい。
【0019】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、その粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gである必要がある。粒子内細孔容積が大きい多孔質粒子は、塑性変形性に優れ、圧縮時に粒子が潰れ易いため、成形性に優れる。本発明の多孔質セルロース凝集体は、元々のセルロースに由来するものに加えて、意図的に凝集粒子内細孔容積を大きくしたものであり、このように粒子自身の構造を変えることで塑性変形性を高めたものである。そのため、粒子の見掛け比容積によらず、高い圧縮成形性を発現する。粒子内細孔容積が、0.265cm3/g未満の場合は、セルロース一次粒子が本来有する粒子内細孔、又は意図的に形成させたものではなく自然とセルロースが凝集したことにより形成された粒子内細孔しか存在しないため、塑性変形性に乏しい。成形性を高めるためには、粒子の見掛け比容積を大きくしなければならないため、結果的に粒子の流動性が悪くなる。本発明の多孔質セルロース凝集体は、その比較的小さい見かけ比容積で良好な成形性を確保できるため、結果的に流動性にも優れたものが得られる。
【0020】
粒子内細孔容積が0.265cm3/g以上であると、粒子内に十分な細孔容積を有するため、混合過程や圧縮過程で一旦粒子内又は粒子表面の細孔に取り込まれた活性成分が、脱離し難いため、粒子内細孔に液状成分を十分量保持できるので、浸み出し防止にも優れるため好ましく、固体活性成分を使用する場合には、水分散性、溶出性改善を目的とし、微粉砕した活性成分を均一に多く保持できることや、昇華性活性成分の、特に保存中の再結晶化を防止し、安定化や商品価値の劣化を防ぐことに寄与できるために好ましく、さらには活性成分の混合速度の向上、混合均一性の向上にも寄与し、濃度ばらつきを大幅に低減できるので好ましい。水難溶性の活性成分を、一旦溶解又は懸濁又は乳化させたものを使用する場合にも、液状成分の保持性に優れるため好ましい。活性成分の濃度ばらつきの指標である薬物濃度変動係数は、混合時間中に3.0%以下にできることが好ましく、さらに好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。特に活性成分の平均粒子径が10μm以下の、活性成分の凝集性が非常に高いものを混合する場合には、本発明の多孔質セルロース凝集体のように粒子内細孔容積が0.265cm3/g以上のものを用いることによって、粒子の表面のみならず、内部にも活性成分を保持する効果があるため、薬物濃度変動係数を2.0%以下にできるため好ましい。
粒子内細孔容積が0.265cm3/g未満であると、固体活性成分、液状活性成分の分散均一性、保持性が損なわれるので、活性成分濃度ばらつきを生じる、固形製剤が凝集を生じる、圧縮成形性が損なわれる、昇華性活性成分では保存中に再結晶化し、安定性や商品価値が低下する等、上記の効果が得られないので好ましくない。粒子内細孔容積が2.625cm3/gを超えると見かけ比容積が増加し流動性が低下するので好ましくない。
【0021】
本発明の多孔質セルロース凝集体の細孔径分布は、例えば、水銀ポロシメトリーにより測定される。特に、0.1〜10μmの範囲に、「明確なピーク」を識別できることが好ましい。また、細孔分布のピークトップである中央細孔径は、粒子内への水の浸透性に密接に関わるものであり、中央細孔径は0.3μm以上が好ましい。中央細孔径が0.3μm以上の時に水の浸透速度が大きくなり、崩壊性がいっそう向上する。中央細孔径は大きいほど好ましいが、その分布範囲を考慮すると、せいぜい5μm程度である。
本発明の多孔質セルロース凝集体の結晶形はI型でなければならない。セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型は「天然セルロース」、II型は「再生セルロース」と呼ばれ、汎用されているが、III型及びIV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。天然セルロースは古来、植物性繊維として食用に供されており、現在では液状食品の分散安定剤や、医薬品賦形剤として広く使用されている。一方、再生セルロースは、二硫化炭素、水酸化ナトリウム等の化学品溶液、溶剤を取り除き、再生させ、結晶構造を変えたものであり、一部湿式で食品用保形剤として使用されている。結晶形がII型である再生セルロースは、結晶形がI型の天然セルロースから、結晶形が変わることで、粒子が剛直になり、圧縮時の塑性変形性が低下し、成型体に十分な硬度を付与できないので好ましくない。
【0022】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、その平均粒子径が30μmを超え250μm以下である必要がある。平均粒子径が30μm以下であると、セルロース粒子同士が凝集するため、活性成分と混合する際に、活性成分が均一に分散しにくく、得られた成型体の活性成分のばらつきが大きくなりやすく、また、連続生産する際の成型体の重量ばらつきも大きくなる傾向にある。また、平均粒子径が250μmを超えると、流動性の悪い活性成分と混合した処方粉体を連続で圧縮する際に、分離偏析を生じやすい。
本発明の多孔質セルロース凝集体の比表面積は、1.3m2/g〜20m2/gでなければならない。比表面積が1.3m2/g未満であると、圧縮成形性が低くなり、成型体に高い硬度、低い摩損度を付与しにくい。また、比表面積が20m2/gを超えると、セルロースにより失活しやすい活性成分と配合した場合に、セルロースと活性成分の接触面積が過度に大きくなりやすく、活性成分が失活しやすいので好ましくない。
本発明の多孔質セルロース凝集体の安息角は、25°以上44°未満でなければならない。通常、活性成分は、服用した際の胃液・腸液媒体中で拡散し、迅速に薬効を高められるよう調製されるものであり、粉砕を施されたり、元々微粉化しているものが多い。それらは微粉であるが故、流動性が悪いものであるが、セルロース粉末の安息角が44°以上では、流動性が悪い活性成分を多量に配合した場合の混合末の流動性の点で好ましくない。特に数万〜数十万錠/時の高速打錠時における成型体の重量ばらつきが大きくなる傾向がある。安息角は小さいほど流動性がよいが、25〜42°のものが特に優れる。さらに好ましくは25〜40°である。安息角が25°未満であると、活性成分との分離偏析の点で好ましくない。
【0023】
本発明の多孔質セルロース凝集体の見かけ比容積は、2.0〜6.0cm3/gでなければならない。本発明の多孔質セルロース凝集体は、多孔質構造を有するため、従来のものに対し、見かけ比容積のほぼ全域に渡って、硬度、流動性、崩壊性をバランスよく有するものである。高い圧縮成形性を付与するためには見かけ比容積が2.0cm3/g以上、高い流動性を付与するために見かけ比容積が6.0cm3/g以下が好ましい。特に好ましくは、2.5〜5.0cm3/gである。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、DSCにより測定される束縛水量が0.01g以上であることが好ましい。セルロース粒子中には、自由水、束縛水、不凍水の3種類の水が存在するといわれている。ここに示す自由水、束縛水は、それぞれ示差走査熱量分析(DSC)により測定される(PERKIN ELMER製 DSC7を使用し、測定温度−50〜30℃、昇温速度10℃/分において測定)0℃付近のピーク面積、−30〜40℃のピーク面積で示され、不凍水は、DSCでピークが出現しないものに相当し、Karl−Fisher法により測定される全水分量から、自由水、束縛水を引いたものに相当する。束縛水は、多ければ多いほど圧縮成形性が高くなるので好ましく、その上限は特に制限されない。束縛水量は、0.15g以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.20g以上である。
【0024】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、インバースガスクロマトグラフ(IGC:SurfaceMesurement System Ltd.製、303K、相対湿度0%)により測定される表面自由エネルギー(γsd)が、65mJ/m2以下であることが好ましい。セルロース粒子は、その粒子表面に表面自由エネルギーを持つと言われている。表面自由エネルギーは、IGCのカラムに試料を投入し、それに、デカン、ノナン、オクタン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、エタノール、メタン等の極性の異なる有機溶媒ガスを通し、カラム通過時における保持時間から算出される、粒子の表面状態を表すパラメータであり、次式により得られるγsdで表される。
【化1】
上式における各記号は、それぞれ、R:気体定数(Jmol−1K−1)、T:カラム温度(K)、VR0:気体の保持容積(cm3)、NA:アボガドロ定数(mol−1)、γsd:粒子の表面自由エネルギー(mJm−2)、a:吸着成分の分子断面積(m2)、γLd:吸着成分の液体状態の表面張力を示し、表面自由エネルギーγsdは、RTlnVR0(kJ/mol):測定値と、a(γLd)1/2(m2(J/m2)1/2):設定値をプロットした際の傾きとして表される。
表面自由エネルギーは、特に好ましくは、60mJ/m2以下である。この表面自由エネルギーは、セルロース粒子の流動性に寄与するものであり、小さければ小さいほどよく、その下限は特に制限されない。
【0025】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、セルロース粉末を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.1cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が10MPa、20MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持する条件下で得られる円柱状成型体の硬度が、それぞれ60N以上、165N以上であることが好ましい。それぞれの条件において、10MPaの硬度が60N未満、20MPaの硬度が165N未満であると、活性成分を多量に配合し、数万〜数十万錠/時で製した成型体の硬度が低く、摩損や、キャッピング等の打錠障害が発生しやすい。ここに示す錠剤硬度は高ければ高いほどよいが、せいぜい10MPaの硬度が160N、20MPaの硬度が450Nである。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、上記の圧力が20MPaになるまで圧縮して得られる円柱上成型体の硬度が165〜410N、好ましくは200〜410Nである場合に特に優れる。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、上記の方法で、20MPaになるまで圧縮し、目標圧で10秒間保持する条件下で得られる円柱状成型体の崩壊時間は、崩壊性の点で75秒以下であることが好ましい。特に好ましくは50秒以下である。この崩壊時間は短ければ、短いほどよい。通常、活性成分は、服用した際の胃液・腸液媒体中で拡散し、迅速に薬効を高められるよう調製されるものであるが、成型体の崩壊時間が長くなると、成型体からの薬物の溶出が遅くなり、消化管で速やかに吸収されず、即効性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、セルロース粒子を27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得て、得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II36本立て回転盤φ410mm)を使用し、直径8mm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、圧縮力7.5kNで打錠し、得られた重量200mgの成型体の硬度が、50N以上であり、摩損度が1%未満であり、打錠障害がないことが好ましい。
成形性に乏しい薬物を多量に含有する処方に硬度を付与し、摩損度を低減するためには、成形性の高い賦形剤が必要であり、かつ高速で連続成型する際に、重量ばらつきを低減するために、流動性の高い賦形剤が必要となる。このような低成形性の薬物を多量に配合する処方、かつ高速打錠での成型体の製造は、本発明の如く成形性に優れ、かつ流動性がすぐれる賦形剤を配合することで初めて実現しうるものである。成型体の硬度が、50N未満、摩損度が1%以上であると輸送中に摩損、粉立ち、割れ、欠けが生じるため好ましくない。打錠障害が発生すると、不良品が発生するので好ましくない。ここに示す硬度は、高ければ高い程良いが、せいぜい100Nであり、摩損度は低ければ低いほどよい。
【0027】
以下に本発明のセルロース粉末の製造方法について記述する。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、平均粒子径の異なる2種以上のセルロース分散粒子群と液媒体を含む分散液であって、該セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmであるセルロース分散液を乾燥することで得られる。
本発明で言うセルロース分散粒子群とは、天然セルロース系物質からなる。
天然セルロース系物質とは、植物性でも動物性でもよく、例えば木材、竹、麦わら、稲わら、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等のセルロースを含有する天然物由来の繊維質物質であり、セルロースI型の結晶構造を有していることが好ましい。原料として、上記のうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも可能である。また、精製パルプの形態で使用することが好ましいが、パルプの精製方法には特に制限がなく、溶解パルプ、クラフトパルプ、NBKPパルプ等いずれのパルプを使用してもよい。ここで天然セルロース系物質は、パルプ等の原料を加水分解してもよいし、しなくてもよい。特に加水分解する場合は、酸加水分解であっても、アルカリ酸化分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン等であってもよく、いずれかの方法単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記製法において、セルロース系物質を含む固形分を、その後適当な媒体に分散させる場合に用いられる媒体としては、水が好ましいが、工業的に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、水及び/又は有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類が挙げられる。特に、有機溶剤は、医薬品に使用されるものが好ましく、「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に溶剤として分類されるものが挙げられる。水、有機溶剤はそれを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由であり、1種の媒体で一旦分散させたのち、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
【0029】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、平均粒子径の異なる2種以上のセルロース分散粒子群を混合したセルロース分散液を乾燥することにより得られる。それぞれのセルロース分散粒子群の平均粒子径には、特に制限はないが、1〜110μmが好ましい。本発明は、この平均粒子径範囲にある平均粒子径が異なる2種以上のセルロース分散粒子群を含んでいればよく、それぞれが同じ平均粒子径である場合以外であれば、どの平均粒子径を有するものを配合してもよい。例えば、平均粒子径が異なる2種のセルロース分散粒子群を混合する際には、平均粒子径が大きいものについて10〜110μm、小さいものは、大きいものの平均粒子径に対し0.005〜0.99倍の平均粒子径であることが好ましい。さらに好ましくは、小さいものが大きい平均粒子径に対し0.01〜0.8倍の平均粒子径であることが好ましい。最も好ましくは、小さいものが大きい平均粒子径に対し0.01〜0.7倍の平均粒子径であることが好ましい。
2種以上の平均粒子径の異なるセルロース分散粒子群を混合することは、セルロース分散液を乾燥する際に、平均粒子径の小さいセルロース分散粒子が、平均粒子径の大きいセルロース分散粒子成分間に入ることにより、平均粒子径の大きいセルロース分散粒子同士の過度の凝集を抑制することに寄与し、それぞれを一次粒子とする二次凝集構造を取り、粒子内に大きな細孔容積を付与することができる。
平均粒子径の大きいセルロース粒子群と、平均粒子径が小さいセルロース粒子群の重量比は、その目的にもよるが通常5対95〜95対5の範囲が好ましい。より好ましくは、10対90〜90対10であり、さらに好ましくは、20対80〜80対20である。適当な重量比を選ぶことにより、本発明の細孔容積の値を制御することができる。
【0030】
また、このとき上記の平均粒子径の大きいセルロース粒子組成物の粒子形状は、その長径と短径のそれぞれの平均値の比(L/D)が2.0以上であるものを用いることが好ましい。L/Dが大きいほど、乾燥時の過度の粒子凝集を抑制する効果が大きく、そのため、粒子内に大きい細孔容積を付与することに寄与する。
上記の2種以上の異なる平均粒子径のセルロース粒子組成物から、その分散液を得る方法には、特に制限はない。i)平均粒子径の異なる複数のセルロース粒子組成物を、各々、別個に調製し、これら複数のセルロース粒子分散液を混合する方法、ii)一種のセルロース粒子組成物から、一部を処理し平均粒子径の異なるものを調製し混合する方法、iii)一つの平均粒子径を有するセルロース粒子組成物を分画し、それぞれに処理を施し、それぞれ平均粒子径の異なるものを調製し混合する方法、のいずれの方法を用いてもよい。i〜iii)の製造方法は1種を単独で用いても、2種以上を併用することも自由である。ここで施す処理方法は、湿式であっても、乾式であってもよく、それぞれ湿式で得られたもの同士を乾燥前に混合しても、それぞれ乾式で得られたもの同士を乾燥前に混合しても、湿式又は乾式で得られたものを組み合わせてもよい。公知の方法等特に制限はないが、例えば摩砕・粉砕してもよく、篩を使用した分級、サイクロン、遠心分離機を用いた遠心分離等の方法を用いてもよく、それらを組み合わせた方法でもよい。
【0031】
摩砕方法としては、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の撹拌翼を使用する摩砕方法、ラインミキサー等の噴流式撹拌摩砕方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する摩砕方法、例えばニーダーのような軸回転押し出し式の摩砕方法でもよい。粉砕方法としては、スクリーンミル、ハンマーミル等のスクリーン式粉砕方法、フラッシュミル等の翼回転せん断スクリーン式粉砕方法、ジェットミル等の気流式粉砕方法、ボールミル、振動ボールミル等のボール式粉砕方法、翼攪拌式粉砕方法等のいずれでもよい。
上記操作により得られたセルロース分散粒子集合体は、乾燥前に5〜40重量%濃度の分散液とすることが好ましい。この濃度が5重量%未満であると、得られるセルロース粒子の平均粒子径が小さくなり、自流動性が損なわれやすい。また、この濃度が40重量%を超えると、セルロース粒子の見かけ比容積が小さくなり、圧縮成形性が損なわれやすい。より好ましくは、10〜40重量%であり、さらに好ましくは、15〜40重量%である。
【0032】
また、上記5〜40重量%濃度のセルロース分散液中に存在するセルロース分散粒子の平均粒子径は、1〜110μmであることが好ましい。平均粒子径が110μmを超えると、乾燥後のセルロース粒子が過度に大きくなり、活性成分の種類によっては、それらと混合する際に分離編析を生じる場合がある。一方、平均粒子径が1μm未満であると、乾燥後のセルロース粒子が過度に小さくなり、良好な流動性を保ちにくくなる。より好ましくは、5〜90μmであり、さらに好ましくは10〜80μmである。ここでいう平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(HORIBA製、商品名、LA−910型)で測定される体積粒度分布測定の一般的に用いられる手法により、求めることができる。
上記平均粒子径は、加水分解による原料セルロースの重合度、及び、セルロースの加水分解及び/又は分散工程での攪拌力を調整することにより、所望の範囲に制御することができる。一般に、加水分解溶液の酸、アルカリ濃度、反応温度を高くすると、セルロース重合度が低下し、分散液中のセルロース平均分散粒子径が小さくなる傾向にあり、また、溶液の攪拌力を強めても、セルロース分散粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にある。
乾燥方法についても特に制限はないが、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚乾燥、気流乾燥、真空乾燥のいずれを使用してもよく、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。噴霧乾燥する際の、噴霧方法は、ディスク式、加圧ノズル、加圧二流体ノズル、加圧四流体ノズル等のいずれの噴霧方法でもよく、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記の噴霧乾燥する際には、分散液の表面張力を下げる目的で、微量の水溶性高分子、界面活性剤を添加しても、媒体の気化速度を促進させる目的で発泡剤又は、ガスを分散液に添加してもよい。
【0033】
水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アラビアゴム、デンプン等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される水溶性高分子類が挙げられ、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に界面活性剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
発泡剤としては、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、バレイショデンプン、無水クエン酸、薬用石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウマクロゴール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される発泡剤類が挙げられ、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、医薬品添加剤以外にも、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の熱分解しガスを発生する重炭酸塩類、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の酸と反応してガスを発生する炭酸塩類を使用してもよい。ただし、上記の炭酸塩類を使用する際には、酸とともに使用する必要がある。酸としては、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アジピン酸等の有機酸類、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等のプロトン酸、フッ化ホウ素等のルイス酸等の酸物質が挙げられ、医薬品・食品として使用されるものが好ましいが、それ以外でも同様の効果を有する。発泡剤ではなく、窒素、二酸化炭素、液化石油ガス、ジメチルエーテル等のガス類を分散液に含浸してもよい。
これらの水溶性高分子、界面活性剤、ガスを発生する物質は、乾燥前に添加されていればよく、その添加のタイミングには特に制限はない。
【0034】
本発明で言う成型体組成物は、1種以上の活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を含有していればよく、その量に特に制限はないが、通常の使用範囲としては、活性成分は0.001〜99%、本発明のセルロース粉末は1〜99%である。さらに、本発明の成型体組成物は、混合、攪拌、造粒、整粒、打錠等の公知の方法で加工できる。活性成分が0.001%未満であると、治療に有効な量が確保できず、99%を超えると、本発明の多孔質セルロース凝集体が1%未満となり、実用的な硬度、摩損度、崩壊を示す成型体が得られにくい。本発明の成型体組成物は、活性成分、セルロース粒子の他に、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤を含むことも自由である。
本発明で言う成型体組成物の例としては、医薬品に用いる場合、錠剤、散剤(打錠用散剤を含む)、細粒剤(打錠用細粒剤を含む)、顆粒剤、エキス剤、丸剤等が挙げられる。またこれらはコーティングを施していてもよく、形状、重量に関わらず、一般的な製法で調製されるものであれば限定されるものではない。医薬品に限らず、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒等に利用されるものも本発明に含まれる。
本発明で言う活性成分とは、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤をいい、固形状(粉体状、結晶状等)、油状、液状、半固形状などいずれの形態でもよい、また溶出制御、苦味低減などの目的でコーティングを施したものであってもよい。活性成分は単独で使用しても、複数を併用してもよい。活性成分を媒体に溶解、懸濁、乳化して使用してもよい。
【0035】
例えば医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
本発明で使用される医薬品有効成分としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、塩酸イソチベンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、クエン酸ペントキシベリン(クエン酸カルベタペンタン)、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファン・フェノールフタリン酸、ヒベンズ酸チペピジン、フェンジゾ酸クロペラスチン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ノスカピン、ノスカピン、dl−塩酸メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB6及びその誘導体並びにそれらの塩類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル(乾燥水酸化アルミニウムゲルとして)、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、ピロキシカム、アズレン、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェン、塩酸ジフェニドール、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸プロメタジン、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート、タンニン酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸フェネタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸ジフェンヒドラミン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、臭化水素酸スポコラミン、塩酸オキシフェンサイクリミン、塩酸ジサイクロミン、塩酸メチキセン、臭化メチルアトロピン、臭化メチルアニソトロピン、臭化メチルスポコラミン、臭化メチル−1−ヒヨスチアミン、臭化メチルベナクチジウム、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸、シュウ酸セシウム、ピペリジルアセチルアミノ安息香酸エチル、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、炭酸水素ナトリウム、フルスルチアミン、硝酸イソソルバイド、エフェドリン、セファレキシン、アンピシリン、スルフィキサゾール、スクラルファート、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタンを含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、地竜、チクセツニンジン、ニンジン、カノコソウ、ボタンピ、サンショウ及びこれらのエキス等、インスリン、バゾプレッシン、インターフェロン、ウロキナーゼ、セラチオペプチターゼ、ソマトスタチン等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0036】
本発明でいう水難溶性活性成分とは、例えば、医薬品活性成分であり、第14改正日本薬局方において、溶質1gを溶かすのに必要な水量が30mL以上必要であるもののことを指す。水に難溶性であれば、昇華性、表面極性の程度にかかわらず、本発明の組成物に活性成分として配合することで効果が得られるものである。
水難溶性で固体状の活性成分としては、例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、安息香酸、エテンザミド、カフェイン、カンフル、キニーネ、グルコン酸カルシウム、ジメチルカプロール、スルフアミン、テオフィリン、テオプロミン、リボフラビン、メフェネシン、フェノバービタル、アミノフィリン、チオアセタゾン、クエルセチン、ルチン、サリチル酸、テオフィリンナトリウム塩、ピラピタール、塩酸キニーネ、イルガピリン、ジキトキシン、グリセオフルビン、フェナセチン等の解熱鎮痛薬、神経系医薬、鎮静催眠薬、筋弛緩剤、血圧硬化剤、抗ヒスタミン剤等、アセチルスピラマイシン、アンピシリン、エリスロマイシン、キサタマイシン、クロラムフェニコール、トリアセチルオレアンドマイシン、ナイスタチン、硫酸コリスチン等の抗生物質、メチルテストステロン、メチルアンドロステトロンジオール、プロゲステロン、エストラジオールベンゾエイト、エチニレストラジオール、デオキシコルチコステロン・アセテート、コーチゾンアセテート、ハイドロコーチゾン、ハイドロコーチゾンアセテート、ブレドニゾロン等のステロイドホルモン剤、ジエンストロール、ヘキサストロール、ジエチルスチルベステロール、ジエチルスチルベステロールジブロヒオネイト、クロロトリアニセン等の非ステロイド系卵黄ホルモン剤、その他脂溶性ビタミン類等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0037】
本発明で使用される、水難溶性の油状、液状活性成分としては、例えば、テプレノン、インドメタシン・ファルネシル、メナテトレノン、フィトナジオン、ビタミンA油、フェニペントール、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類、補酵素Q類、オレンジ油、レモン油、ペパーミント油等の油溶性香味料等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等が挙げられる。ビタミンEには種々の同族体、誘導体があるが、常温で液状であれば特に限定されない。例えばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0038】
水難溶性の半固形状活性成分としては、例えば地竜、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ボタンピ、カノコソウ、サンショウ、ショウキョウ、チンピ、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネカ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンヒ、ビャクジュツ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の漢方又は生薬エキス類、カキ肉エキス、プロポリス及びプロポリス抽出物、補酵素Q類等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。本発明の固形製剤組成物は、上記の水難溶性活性成分に加えて、さらに他の生理活性成分を添加してもよい。
本発明で使用される微粉砕された活性成分は、水難溶性の固体状活性成分の分散性を改善する、微量で薬効を有する活性成分の混合均一性を改善する等の目的で1〜40μm以下に微粉砕したものを言う。活性成分の平均粒子径が小さいほど本発明の効果は大きくなる。活性成分の平均粒子径としては、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは、1〜10μmである。
【0039】
本発明でいう昇華性の活性成分とは、昇華性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、常温で固体状であっても、液体状であっても、半固体状であっても、その状態はいずれでもよい。
昇華性の活性成分としては、例えば、安息香酸、エテンザミド、カフェイン、カンフル、サリチル酸、フェナセチン、イブプロフェン等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載される昇華性の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。本発明の固形製剤組成物は、上記の昇華性活性成分に加えて、さらに他の活性成分を添加してもよい。
本発明で使用される、常温で液状の活性成分としては、例えば、テプレノン、インドメタシン・ファルネシル、メナテトレノン、フィトナジオン、ビタミンA油、フェニペントール、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類、補酵素Q類、オレンジ油、レモン油、ペパーミント油等の油溶性香味料等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等が挙げられる。ビタミンEには種々の同族体、誘導体があるが、常温で液状であれば特に限定されない。例えばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
本発明で使用される、常温で半固形状活性成分としては、例えば地竜、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ボタンピ、カノコソウ、サンショウ、ショウキョウ、チンピ、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネカ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンヒ、ビャクジュツ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の漢方又は生薬エキス類、カキ肉エキス、プロポリス及びプロポリス抽出物、補酵素Q類等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0040】
賦形剤としては、アクリル酸デンプン、L−アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、あめ(粉)、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、軽石粒、イノシトール、エチルセルロース、エチレン酢酸ビニルコポリマー、塩化ナトリウム、オリーブ油、カオリン、カカオ脂、カゼイン、果糖、軽石粒、カルメロース、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥酵母、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥硫酸ナトリウム、乾燥硫酸マグネシウム、カンテン、カンテン末、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリセリン、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、L−グルタミン、クレー、クレー3、クレー粒、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイヒ末、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、結晶セルロース(粒)、ゲンマイコウジ、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、ゴマ油、小麦粉、コムギデンプン、小麦胚芽粉、コメコ、コメデンプン、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸フタル酸セルロース、サフラワー油、サラシミツロウ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、β―シクロデキストリン、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、ジメチルポリシロキサン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム・ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化マグネシウム、スクラワン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、ダイズ硬化油、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、精製白糖球状顆粒、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール1000モノセチルエーテル、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、第三リン酸カルシウム、ダイズ油、大豆不ケン化物、大豆レシチン、脱脂粉乳、タルク、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、中性無水硫酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、二酸化ケイ素、乳酸カルシウム、乳糖、乳糖造粒物、パーフィラー101、白色セラック、白色ワセリン、ハクド、白糖、白糖・デンプン球状顆粒、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦芽葉青汁乾燥粉末、ハチミツ、パラフィン、バレイショデンプン、半消化体デンプン、人血清アルブミン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フィチン酸、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、部分アルファー化デンプン、プルラン、プロピレングリコール、粉末還元麦芽糖水飴、粉末セルロース、ペクチン、ベントナイト、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、マルチトール、マルトース、D−マンニトール、水アメ、ミリスチン酸イソプロピル、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、綿実粉、綿実油、モクロウ、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、薬用炭、ラッカセイ油、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、粒状トウモトコシデンプン、流動パラフィン、dl−リンゴ酸、リン酸−水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に賦形剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0041】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に崩壊剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に結合剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0042】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に流動化剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に滑沢剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に矯味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に着香剤、香料として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビン等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に着色剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に甘味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0043】
以下に1種以上の活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を主成分とする錠剤の製造方法について記述するが、これは一例であって、本発明の効果は、以下の方法に制限されるものではない。方法としては、活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を混合した後、圧縮成型する方法が採れる。この際に、活性成分以外に、必要に応じて他の添加剤を配合してもよく、他の添加剤としては、例えば、上記に示す賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶解補助剤の成分から選ばれる1種以上を配合してもよい。
各成分の添加順序には、特に制限がなく、i)活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じ他の添加剤を一括混合し圧縮成型する方法、ii)活性成分と、流動化剤及び/又は滑沢剤等の添加剤を前処理混合し、本発明の多孔質セルロース凝集体と、必要に応じ他の添加剤を混合した後、圧縮成型する方法、のいずれでもよい。i)、ii)により得られた圧縮成型用混合末に、滑沢剤を添加し、さらに混合した後、圧縮成型してもよい。
【0044】
特に水に難溶性の活性成分を使用する際は、以下の製造方法を採ることができる。製造方法としては、例えば、
i)活性成分に粉砕を施すか、又はそのまま使用し、本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じてその他の成分と混合し圧縮成型する方法、
ii)活性成分を水及び/又は有機溶媒及び/又は溶解補助剤に溶解又は分散させた後、必要に応じて本発明で用いる多孔質セルロース凝集体及び/又は他の添加剤に吸着させ、必要に応じて本発明の多孔質セルロース凝集体及び/又は他の添加剤と混合し、必要に応じて水及び/又は有機溶媒を留去し、圧縮成型する方法のいずれでもよい。
i)の方法の場合には、活性成分に流動化剤等の添加剤を前処理混合した後、本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じてその他の成分と混合し圧縮成型すると、成形性、流動性の点で好ましい。
圧縮成型前の活性成分の結晶形は製剤前の状態と同じであっても、異なってもよいが、安定性の点で同じであることが好ましい。水に難溶性の活性成分を使用する際は、特に溶解補助剤として、水溶性高分子、界面活性剤を併用し、媒体に分散させることが効果的である。ここでいう他の添加剤とは、本発明の多孔質セルロース凝集体以外の添加剤であり、例えば上記に示す賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶解補助剤等の添加剤のことである。これらの添加剤は単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。特にii)の方法の場合には、水に難溶性、不溶性の活性成分を一旦溶解又は分散させる工程を経るため、活性成分の溶出改善の効果もある。特に医薬品活性成分の分散体として、ポリエチレングリコール等の液状分散体を併用する際は、元々の活性成分が結晶粉末であっても、それを分散させた分散体は液状又は半固形状となるため、本発明の多孔質セルロース凝集体のように圧縮成形性、流動性に優れるものでないと錠剤化できない。また、医薬品活性成分の分散体として、ポリエチレングリコール等を使用する際は、活性成分が体内に吸収されたときに、血中においてポリエチレングリコールで被覆された構造をとるといわれており、肝臓で代謝され易い活性成分の薬効を持続させる効果も期待される。
【0045】
各成分の添加方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、小型吸引輸送装置、空気輸送装置、バケットコンベヤ、圧送式輸送装置、バキュームコンベヤ、振動式定量フィーダー、スプレー、漏斗等を用いて連続的に添加しても、一括投入してもよい。活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、それらを多孔質セルロース凝集体又は他の添加剤に噴霧する方法を採用することで、最終製品中の活性成分濃度ばらつきが小さくなるので好ましい。噴霧方法としては、圧力ノズル、二流体ノズル、四流体ノズル、回転ディスク、超音波ノズル等を使用し活性成分溶液/分散液を噴霧する方法、管状ノズルから活性成分溶液/分散液を滴下する方法のいずれでもよい。活性成分溶液/分散液を添加する際には、多孔質セルロース凝集体粒子表面に活性成分を積層させるようなレイヤリング、コーティングを施しても、多孔質セルロース凝集体粒子内部に担持させてもよく、活性成分溶液/分散液を結合液として多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロースと他の添加剤の混合物をマトリックス状に造粒させてもよい。レイヤリング、コーティングは湿式であっても、乾式であってもよい。
混合方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナタック型混合機などの容器回転式混合機、又は高速撹拌型、万能撹拌型、リボン型、パグ型、ナウター型混合機などの撹拌式混合機、高速流動式混合機、ドラム式混合機、流動層式混合機を使用してもよい。またシェーカー等の容器振とう式混合機を使用することもできる。
組成物の圧縮成形方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、臼と杵を使用し所望の形状に圧縮成形する方法、予めシート状に圧縮成形した後所望の形状に割断する方法でもよい。圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、ブリケッティングローラー型プレス機、平滑ローラー型プレス機等のローラー式プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機等の圧縮機を使用できる。
【0046】
活性成分を媒体に溶解又は分散する方法としては、通常行われる溶解、分散方法であれば特に制限はないが、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の撹拌翼を使用する撹拌混合方法、ラインミキサー等の噴流式撹拌混合方法、気体吹き込み式の撹拌混合方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する混合方法でも、シェーカーを使用する容器振とう式混合方法等を用いてもよい。
上記の製造方法において使用する溶剤としては、医薬品に使用されるものであれば、特に制限されるものではないが、例えば水及び/又は有機溶剤を使用してもよい。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に溶剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由であり、1種の媒体で一旦分散させたのち、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
【0047】
溶解補助剤としての水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン糊等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される水溶性高分子が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
溶解補助剤としての油脂としては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ショ糖エステル、流動パラフィン等のパラフィン類、カルナウバロウ、硬化ヒマシ油等の硬化油類、ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される油脂が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
溶解補助剤としての界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に界面活性剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0048】
本発明でいう錠剤とは、本発明の多孔質セルロース凝集体と、1種以上の活性成分と必要に応じて他の添加剤を含んだものであって、圧縮成形により得られ得る成型体をいう。本発明の多孔質セルロース凝集体を配合した錠剤用組成物は、特に、複雑な工程を経ずに直接打錠法のような簡便な方法で実用硬度が得られるものであるが、必要に応じて乾式顆粒圧縮法、湿式顆粒圧縮法、後末法、予め圧縮成形した錠剤を内核とする多核錠、予め圧縮した複数の成型体を重ねて再度圧縮する多層錠の製造方法等のいずれかの製造方法を使用してもよい。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、圧縮成形性、自流動性、崩壊性の賦形剤として要求される諸物性に優れるので、特に錠剤硬度が出にくく、錠剤表面の割れ、かけ、内部からの剥離、クラック等の打錠障害を生じやすい、薬物を多種、大量に含む錠剤、例えば大衆薬、漢方等のエキス粉末配合錠剤、小型の錠剤、エッジのくびれ等の圧縮圧が均等にかかり難い箇所を有するような円形でない変形錠剤、打圧・賦形剤との摩擦により失活し易い酵素・蛋白等の薬物、コーティング顆粒含有錠剤等に有効である。また、本発明のセルロース粉末は、圧縮成形性、崩壊性に優れるため、比較的低い圧縮圧で実用的な摩損度を示す錠剤が得られる。そのため、錠剤内に空隙(導水管)を維持できるので、口腔内で迅速に崩壊させるような口腔内崩壊錠にも有効である。さらに、数種の組成の成分を一段回又は他段階で圧縮成型する多層錠、有核錠に関しては、上記の硬度付与、一般的な打錠障害の抑制に加え、層間の剥離、クラックを抑制する効果もある。本発明の多孔質セルロース凝集体は、一次粒子が凝集した二次凝集構造を有するため、粒子自体の分割性にも優れ、割線錠等に使用した場合には、錠剤を均一に分割し易くなる。さらに、本発明の多孔質セルロース凝集体は発達した多孔質構造を有し、セルロース粒子自体が微粒子状薬物、懸濁液状薬物、溶液状成分の保持性に優れるため、それを使用した錠剤も固、懸濁液、溶液状成分の保持性に優れる。そのため、錠剤に懸濁液状、溶液状の成分をレイヤリング、コーティング錠剤、さらに糖、炭酸カルシウム等の成分を懸濁状態で錠剤表面に積層させる糖衣錠剤等のレイヤリング、コーティング層、糖衣層の剥離防止、補強に使用することも有効である。
【0049】
次に1種以上の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子を含む組成物の使用方法について説明する。ここまでに説明した方法で得られる固形、液状、半固形状の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子組成物は、粉末又は顆粒状で固形製剤として使用しても、粉末又は顆粒状組成物にさらにコーティング剤をコーティングしコーティング粉末又は顆粒状固形製剤として使用してもよい。ここで得られたコーティングを施した/施さない粉末又は顆粒状組成物は、カプセルに充填し使用してもよく、それらを圧縮成型し錠剤型固形製剤として使用してもよい。さらにカプセル又は、錠剤にコーティングを施して使用してもよい。
ここでコーティングを施す場合のコーティング剤としては、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム末、エチルセルロース、
エチルセルロース水分散液、オクチルデシルトリグリセリド、オリブ油、カオリン、カカオ脂、カゴソウ、カスターワックス、カラメル、カルナバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥乳状白ラック、乾燥メタクリル酸コポリマー、寒梅粉、魚鱗粉、金箔、銀箔、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、軽質流動パラフィン、鯨ロウ、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、合成ワックス、高ブドウ糖水飴、硬ロウ、コハク化ゼラチン、小麦粉、コムギデンプン、コメデンプン、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、サラシミツロウ、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、酸化ケイ素混合物、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、ジンコウ末、水酸化アルミニウムゲル、水素添加ロジングリセリンエステル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、ゼイン、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、セッコウ、ゼラチン、セラック、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、第三リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、単シロップ、中金箔、沈降炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、テルペン樹脂、デンプン(溶性)、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トリアセチン、乳酸カルシウム、白色セラック、白糖、蜂蜜、ハードファット、パラフィン、パール末、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロース・酸化チタン・ポリエチレングリコール混合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ピペロニルブトキシド、ヒマシ油、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブリツフタリルブチルグリコレート、ブドウ糖、部分アルファー化デンプン、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルセルロース混合物、プルラン、プロピレングリコース、粉糖、ベントナイト、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリエチレングリコール、末端水酸基置換メチルポリシロキサンシリコーン樹脂共重合体、D−マンニトール、水飴、ミツロウ、ミリスチルアルコール、無水ケイ酸水和物、無水フタル酸、無水リン酸水素カルシウム、メタクリル酸コポリマー、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、モクロウ、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、モンタン酸エステルワックス、薬用炭、ラウロマクロゴール、硫酸カルシウム、流動クマロン樹脂、流動パラフィン、dl−リンゴ酸、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、ロジン等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載されるコーティング剤が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0050】
本発明の多孔質セルロース凝集体は発達した多孔質構造を有し、粒子自体が薬物の保持性に優れるため、薬物を細孔内に担持たせた粒子をそのまま細粒として使用しても、造粒して顆粒として使用しても、それらを圧縮成形してもよい。それらの細粒、顆粒、錠剤は、さらにその上にコーティングしてもよい。担持方法は、公知の方法であれば特に制限がないが、i)微粒子状薬物と混合し、細孔内に担持させる方法、ii)粉末状薬物と高シア化で混合し、強制的に細孔内に担持させる方法、iii)一旦溶液又は分散液とした薬物と混合し、細孔内に担持たせた後、必要に応じ乾燥し担持させる方法、iv)昇華性の薬物と混合し、加熱及び/又は減圧することで細孔内に昇華吸着させる方法、v)加熱前又は加熱中に薬物と混合し、溶融させたものを細孔内に担持させる方法のいずれの方法でもよく、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、発達した細孔構造を有し、適度に保水性、保油性を有するので賦形剤以外に、レイヤリング、コーティング用の核粒子としても使用でき、その際には、レイヤリング、コーティング工程において、粒子間の凝集を抑制する効果がある。レイヤリング、コーティングは乾式であっても、湿式であってもよい。
また、活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物を担体としたディッピングの如く、活性成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させ、活性成分を保持させる方法がとれる。活性成分種、濃度等の条件によるが、かかるディッピング等の液浸漬方法でも、実用的に活性成分の均一性が保たれ、また、上記噴霧に比べ、工程が簡略である点で優れている。
さらに、活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物を担体として、活性成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させた後、その分散液を噴霧乾燥し、複合体とする方法を採ってもよい。
活性成分溶液/分散液を添加前後の多孔質セルロース凝集体粒子又は、多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物は、それぞれの単位粒子が個々に分散した状態であっても、凝集した造粒物の形態をとっていてもよい。
【0051】
製造工程において造粒を経る場合の造粒方法としては、乾式造粒、湿式造粒、加熱造粒、噴霧造粒、マイクロカプセル化がある。湿式造粒造粒法は、具体的には流動層造粒法、攪拌造粒法、押し出し造粒法、破砕造粒法、転動造粒法が有効であり、流動層造粒法では、流動層造粒装置の中で、流動化された粉体に結合液を噴霧して造粒する。攪拌造粒法では、結合液を添加しながら、混合槽内で攪拌羽根を回転させることにより、粉体の混合、練合、造粒が密閉構造の中で同時に行われる。押し出し造粒法では、結合液の添加によって練合された湿潤塊をスクリュー式やバスケット式等の方法で、適当な大きさのスクリーンから強制的に押し出すことにより造粒する。破砕造粒法では、結合液の添加によって練合された湿潤塊を造粒機の回転刃で剪断、破砕し、その遠心力によって外周のスクリーンからはじき出すことにより造粒する。転動造粒法では、回転するローターの遠心力によって転動し、この時スプレーガンから噴霧される結合液によって、雪だるま式に粒径の均一な球形顆粒を成長させていくことにより造粒する。
造粒物の乾燥方法は、熱風加熱型(棚乾燥、真空乾燥、流動層乾燥)、伝導伝熱型(平鍋型、棚段箱型、ドラム型)や、凍結乾燥のようないずれかの方法を使用することもできる。熱風加熱型では、材料を熱風を直接接触させ、同時に蒸発水分を除去する。伝導伝熱型では、伝熱壁を通して材料を間接的に加熱させる。凍結乾燥では、材料を−10〜40℃で凍結させておき、次に高真空下(1.3×10−5〜2.6×10−4MPa)で加温することによって、水を昇華させて除去する。
例えば、i)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子を混合したもの、又は1種以上の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合したものを通常の方法で圧縮成型する(直接打錠法)。あるいは、ii)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合した後、造粒して顆粒とし、通常の方法で圧縮成型してもよい(湿式/乾式顆粒圧縮法)。さらに、iii)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合し、造粒して顆粒とし、さらに多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合し、通常の方法で圧縮成型してもよい(湿式/乾式顆粒後末圧縮法)。
1種以上の活性成分、多孔質セルロース凝集体、他の添加剤、又は顆粒の添加方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、小型吸引輸送装置、空気輸送装置、バケットコンベヤ、圧送式輸送装置、バキュームコンベヤ、振動式定量フィーダー、スプレー、漏斗等を用いて連続的に添加しても、一括投入してもよい。
上記の如く圧縮成形し、錠剤にして使用する以外に、本発明の錠剤用組成物は、固体、液状成分の保持性にも優れるため、特に流動性、耐ブロッキング性、耐凝集性を改善する目的で顆粒剤又は散剤として使用してもよい。顆粒剤、散剤の製造方法としては、例えば、乾式造粒、湿式造粒、加熱造粒、噴霧乾燥、マイクロカプセル化のいずれを使用してもよい。
【0052】
本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明の実施態様は、これら実施例の記載に限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)セルロース分散粒子の平均粒子径(μm)
水で分散した試料を、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、商品名、LA−910)を使用し、超音波処理なし、屈折率1.20で測定した累積体積50%粒子として表した。ただし、この測定値は、以下のロータップ式で得られる乾燥粒子の粒度分布と測定原理が全く異なるため、必ずしも相関するものではない。通常、セルロース分散粒子は、細長い繊維状の形態を取るものであり、レーザー回折により測定される平均粒子径は、繊維状粒子を、その長径の80%の長さを直径とする球とみなし、その直径に対する体積頻度で測定されるものである。それに対し、ロータップ式で得られる平均粒子径は、得られた粉末を篩上で振とうさせ、分画し、粒径に対する重量頻度を測定するものであり、ここでは、粒子の分画は、繊維の短径による。従って、一般的に、繊維の長径に依存するレーザー回折式の方が、繊維の短径に依存するロータップ式に対し、大きい値となる。
(2)結晶形
X線ディフラクトメーターによりX線回折を行い、そのX線パターンにより判定した。
(3)乾燥粒子の平均粒子径(μm)
粉体試料の平均粒子径はロータップ式篩振盪機(平工作所製、商品名、シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより粒度分布を測定し、累積重量50%粒径として表した。
(4)比表面積(m2/g)
マイクロメリティクス(株)製、商品名、TriSTARを用い、吸着ガスとして窒素を使用しBET法により測定した。各試料粉体を約1gづつセルに仕込み測定した。測定に用いた各試料粉体は、110℃で3時間減圧乾燥したものを使用した。
(5)粒子内細孔容積(cm3/g)、中央細孔径(μm)
島津製作所(株)製、商品名、オートポア9520型を用い、水銀ポロシメトリーにより細孔分布を求めた。測定に用いた各試料粉体は、室温で15時間減圧乾燥したものを使用した。初期圧20kPaの測定により、得られた細孔分布から、細孔径0.1〜10μmの範囲にある「明確なピーク部分」を粒子内細孔容積として計算した。また、得られた細孔分布から、細孔径0.1〜10μmに見られる「明確なピーク」のピークトップを中央細孔径とし値を読み取った。
【0053】
(6)見かけ比容積(cm3/g)
100cm3のメスシリンダーを使用し、粉体試料を定量フィーダーなどを用いて2〜3分かけて粗充填し、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平になるようにならし、その容積を読み取り、これを粉体試料の重量で割りかえした値である。粉体の重量は、容積が70〜100cm3になるよう適宜設定した。
(7)SEMによる粒子表面及び細孔の観察
各セルロース試料を、カーボンテープを貼った試料台に載せ、白金パラジウムを真空蒸着(この際の蒸着膜の膜厚は20nm以下)し、日本分光(株)製商品名、JSM−5510LVを使用し、加速電圧6kV、倍率250、1500倍で観察した場合に、一次粒子が連続して凝集し、一次粒子の境界が明確であり、確認できる細孔の中央細孔径が0.1μm以上である一次粒子が凝集した二次凝集粒子構造を有するものを○とし、それ以外の構造を取るものを×とした。
(8)水中でのセルロース粒子の崩壊
各セルロース試料0.1gをガラス試験管に導入し、さらに10gの純水を投入し、超音波で1分間処理した後、超音波処理の有無でマイクロスコープ(キーエンス製、商品名、VH−7000)で観察し、粒子の崩壊の有無を観察した。崩壊が観察されたものを○とし、観察されなかったものを×とした。
(9)薬物との反応性
アスピリン(局方結晶アスピリンを小型粉砕機φ0.5mm、1パス処理)と、各セルロースサンプルを乾式で、5/5(全量0.5g)で粉粉ブレンドしたものを、ガラス製サンプル瓶中で混合し、オーブン(タバイエスペック製、商品名、パーフェクトオーブン)に、密栓(60℃)で2週間保存した後、分解率を測定した。硫酸第二鉄(III)ナトリウム・12水和物8gを100mLのメスフラスコに導入し、純水を加え100mLとし、呈色試験液とした。保存後のアスピリン0.25g(粉体ブレンド品は全量で0.5g)を、50mLのメスフラスコに導入し、エタノールを加えて50mLとし、5分間振とうした。得られたエタノール溶液をろ過し、ろ液100mLのメスフラスコに移し、エタノールを加えて100mLとした。このエタノール溶液1mLと、上記呈色試験液1mLを50mLのメスフラスコに導入し、純水を加えて50mLとしたものを、紫外吸光度測定器(日本分光(株)製)を用いて、波長532nmの吸光度を測定した。分解率は、
分解率=(1−(保存後の吸光度/保存前の吸光度))x100(%)
として計算した。アスピリン単独の分解率である15%を超える分解率を示すものを反応性ありと判定した。
(10)安息角(°)
杉原式安息角測定器(スリットサイズ奥行10x幅50x高さ140mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、セルロース粉末を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。
【0054】
(11)セルロース試料単独の圧縮成型
各セルロース粉末を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.1cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が10MPa、20MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。
(12)処方粉体のロータリー打錠
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、実施例、比較例で得られたセルロース粒子又は粉末を27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得た。ここで各粉体の仕込み全量は25kgであった。得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II、回転盤径φ410mm、36本立て)を使用し、攪拌フィーダーにより処方粉体を供給した。直径8mm、12Rの臼杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、攪圧縮圧7.5kNで打錠し、重量200mgの錠剤を得た。
(13)錠剤質量ばらつき(%)
ロータリー打錠により得られた錠剤20錠の重量を測定し、平均重量と、重量の標準偏差をとり、(標準偏差/平均重量)x100で定義される変動係数(%)から質量ばらつきを評価した。変動係数が小さいほど、ばらつきが小さい。
(14)錠剤硬度(N)
円柱状成型体あるいは錠剤をシュロインゲル硬度計(フロイント産業(株)製、商品名、6D型を用いて、円柱状成型体又は錠剤の直径方向に荷重を加え、破壊し、そのときの荷重を測定した。試料10個の平均値で表した。
(15)崩壊時間(秒)
第14改正日本薬局方、一般試験法、錠剤の崩壊試験法に準じて崩壊試験を行った。円柱状成型体あるいは錠剤について、崩壊試験器(富山産業(株)製、商品名、NT−40HS型、ディスクあり)で、37℃、純水中における崩壊時間として求めた。試料6個の平均値で表した。
(16)錠剤摩損度(重量%)
錠剤20個の重量(Wa)を測定し、これを摩損度試験機(ジャパンマシナリー(株)製、商品名、PTF−3RA型)に入れ、25rpmで4分間回転した後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再び重量(Wb)を測定し、次式より摩損度を計算した。
摩損度=100x(Wa−Wb)/Wa
(17)打錠障害発生率(%)
ロータリー打錠機により得られた錠剤100個を無作為に選び、それらについて目視で観察し、錠剤のわれ(ラミネーション)、欠け(チッピング)、剥離(キャッピング)の個数をカウントし、それらの総数を観察した錠剤個数で割りかえした値(百分率)で示した。
【0055】
実施例1
市販のパルプ(木材由来の天然セルロース溶解パルプ)を細断したものを2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、商品名、30LGL反応器)に入れ攪拌しながら、40℃、48時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロック(この酸不溶解性残渣のセルロース分散粒子の平均粒子径は55μmであった)を得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が25重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを噴霧乾燥(分散液供給速度6kg/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)して、セルロース凝集体Aを得た。セルロース粒子Aの諸物性を表1に示す。
セルロース粒子Aを水銀ポロシメトリーにより細孔分布を測定した結果(図1)、0.1〜10μmに粒子内細孔に由来する「明確なピーク」が確認された。図1に示される10〜50μmに示されるピークは粒子間隙に由来するものである。
また、セルロース凝集体Aを倍率250倍、1500倍で走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果(図3、5)、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が観察され(図3)、一次粒子粒子同士が明確に識別できた(図5)。
また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0056】
実施例2
実施例1と同様の方法で、得られた酸不溶解性残渣を、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、60重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は3μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を60重量部と40重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が10重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース粒子Bを得た。セルロース粒子Bの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0057】
実施例3
実施例1と同様の方法で、得られた酸不溶解性残渣を、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、40重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は8μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を40重量部と60重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が27重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Cを得た。セルロース凝集体Cの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0058】
実施例4
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、24時間とする以外は実施例1と同様の方法で加水分解し、酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は82μmであった)を得た。得られた酸不溶解性残渣は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が16重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Dを得た。セルロース凝集体Dの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0059】
実施例5
実施例4と同様の方法で得られた酸不溶解性残渣を実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、10重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は3μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を10重量部と90重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が35重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Eを得た。セルロース凝集体Eの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0060】
実施例6
加水分解条件を0.14N塩酸水溶液、121℃、1時間とする以外は、実施例1と同様に加水分解し、酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は36μmであった)を得た。得られた酸不溶解性残渣は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が30重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Fを得た。セルロース凝集体Fの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0061】
実施例7
市販のパルプ(コットンリンター由来の天然セルロースクラフトパルプ)を使用し、実施例6と同様に加水分解し、得られた酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は30μmであった)は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。この湿フロックの内、90重量%をさらに純水で洗浄、中和した後、プラネタリーミキサーで摩砕した(摩砕した湿フロック中のセルロース分散粒子の平均粒子径は1μmであった)。摩砕した湿フロック及び摩砕しない湿フロックを90重量部対10重量部(ドライベース)の組成で、90Lのポリバケツに導入し、全固形分濃度が30重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、実施例1と同様に乾燥して、セルロース粒子Gを得た。得られたセルロース凝集体Gの諸物性値を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0062】
実施例8
市販の溶解パルプ1kgを細断し、含水分50%の湿潤状態で家庭用ミキサーで2時間解砕し、取り出し、純水で洗浄、ろ過し、残渣を得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は110μmであった)。この残渣を水に分散させた状態で目開き500μmの篩を用いて、粗大粒子を取り除き、再度ろ過し、湿フロックを得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は102μmであった)。これとは別に実施例6と同様の操作で加水分解を行い、酸不溶解製残渣を得、この残渣を水に分散させた状態で目開き75μmの篩を用いて、粗大粒子を取り除き、再度ろ過し湿フロックを得た。この湿フロックを水に分散させ3000Gの遠心力で、沈降させ、沈降成分をろ過し、酸不要財政残渣を得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は22μmであった)。加水分解を経ないものと加水分解を経た湿フロックを50重量部対50重量部(ドライベース)の組成で、90Lのポリバケツに導入し、全固形分濃度が39重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、トレーに入れた状態で、60℃、18時間乾燥し、乾燥フロックを得た。この乾燥フロックをフラッシュミルで粉砕し、500μmの篩で粗大粒子を除去し、セルロース凝集体Hを得た。得られたセルロース凝集体Hの諸物性値を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0063】
比較例1
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥したセルロース凝集体を、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用し、粉砕し、セルロース粉末I(特開昭63−267731号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Iの諸物性値を表1に示す。
セルロース粉末IをSEMで観察した結果、粒子が粒子内細孔を持たず、一次粒子が単独で存在しているだけで、二次凝集構造をとらず、水中での粒子の崩壊も観察されなかった。
比較例2
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、40時間とし、固形分濃度を8%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)を得た。得られたセルロース粉末Jの諸物性値を表1に示す。
比較例3
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、20時間とし、固形分濃度を6%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末K(WO02/02643の実施例7に相当)を得た。得られたセルロース粉末Kの諸物性値を表1に示す。
比較例4
加水分解条件を4N塩酸水溶液、40℃、48時間とし、固形分濃度を16%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末L(WO02/02643の実施例4に相当)を得た。得られたセルロース粉末Lの諸物性値を表1に示す。
比較例5
FMC社製商品名、「アビセル」PH−200をそのまま、セルロース粉末Mとした。
セルロース粉末Mの諸物性値を表1に示す。
【0064】
比較例6
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥したセルロース粉末と、バンタムミル(細川鉄工所(株)製
使用スクリーン径2mm)で微粉砕した局方アセトアミノフェン(メルクホエイ製)をセルロースが50重量%、アセトアミノフェンが50重量%の組成で、粉体計500gを高速攪拌造粒機(五橋製作所製、商品名、NSK250型)に導入し、攪拌羽根の回転速度を500rpmで1分間回転させることにより、よく混合し、次いで結合液として50重量%エタノール水溶液を245〜255g添加しながら2分間さらに混合し、球状造粒物を得た。得られた造粒物を50℃で12時間乾燥後、粗大粒子として12メッシュ以上の留分を切り捨てた後、アセトアミノフェンをソックスレ−抽出器を使用し、20時間アセトンで抽出した。これを再び50℃で12時間乾燥しセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉末Nの諸物性値を表1に示す。
セルロース粉末Nは、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定結果から、0.1〜10μmの細孔分布において「明確なピーク」が確認された。しかし、SEMによる電子顕微鏡写真(図4、6)から、粒子構造は「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、「一様に緻密に連続したフィルム状の隔壁構造]を持つことが確認された。また、その隔壁は、一次粒子の境界が不明瞭であった。また、粒子は水中で崩壊しなかった。さらに、セルロース粒子Nで得られた円柱状成型体(圧縮圧10MPa)はもろく、摩損がひどかった。
比較例7
市販の溶解パルプを切断し、7%の塩酸水溶液中で105℃、20分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣を中和、洗浄、ろ過、脱水したウェットケーク(水分50重量%)をイソプロピルアルコールに分散し、ろ過、脱水、再分散を2回行い、さらにマントンゴーリンホモジナイザー(日本精機製作所(株)製、商品名、15M型)を使用し、処理圧400kg/cm2で3回分散処理を行い、固形分濃度9.8重量%、水分2.5重量%、イソプロピルアルコールが87.7重量%として、これを窒素循環型スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行った。得られたサンプルをJIS標準篩を用いて250μm以上の粗留分をカットし、セルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉末Oの諸物性値を表1に示す。
セルロース粒子Oは、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定結果から、0.1μm以下に「明確なピーク」が確認された。また、SEMによる電子顕微鏡写真から、粒子構造は「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、「一様に緻密に連続したフィルム状の隔壁構造」をもつことが確認された。その隔壁は、一次粒子の境界が不明瞭であった。また粒子は水中で崩壊せず、アスピリン分解率も薬物単独に対し高かった。
比較例8
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥しセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)を得た。セルロース粉末Pの諸物性値を表1に示す。
比較例9
市販のクラフトパルプ2kgを細断し、0.7重量%塩酸水溶液中で、125℃、150分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過・中和し、得られた湿フロックをニーダー中で充分摩砕した後、容積比で1倍のエタノールを加え、圧搾ろ過した後風乾した。風乾後、通常のハンマーミルで解砕し、40メッシュの篩で粗大分を除き、セルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Qの諸物性値を表1に示す。
比較例10
市販の溶解パルプを細断し、10重量%の塩酸水溶液中で105℃、30分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過、洗浄、中和し、固形分濃度17重量%の分散液を得た。得られたセルロース分散液をドラム乾燥機(楠木機械製作所(株)製、商品名、KDD−1型、スチーム圧0.35MPa、ドラム温度136℃、ドラム回転数2rpm、ため部水分散体温度100℃)で乾燥後、ハンマーミルで粉砕し、目開き425μmの篩で粗大留分を除き、セルロース粉末R(特開平6−316535号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Rの諸物性値を表1に示す。
【0065】
比較例11
比較例10で得られたセルロース粉末Rをエアジェットシーブを使用して、75μmの篩で大粒子を取り除き、38μmの篩で微細粒子を取り除きセルロース粉末S(特開平11−152233号公報の実施例に相当)を得た。得られたセルロース粉末Sの諸物性値を表1に示す。
比較例12
比較例8で得られたセルロース粉末P1.5kgを高速攪拌造粒機(深江工業(株)製、商品名、FS−10)に仕込み、蒸留水1.5kgを加え、5分間練合した。この湿潤顆粒1.0kgをマルメライザーQ−230(商品名、不二パウダル(株)製)へ移し、500rpmで10分間転動させ、球形化した。同時に蒸留水を20g/minの速度で200g供給した。その後40℃に一昼夜放置し、乾燥後16メッシュ(目開き1mm)でふるい球状核粒子T(特開平07−173050の実施例1に相当)を得た。得られた球状核粒子Tの諸物性値を表1に示す。
セルロース球状核粒子Tは、極度に重質であり、流動性に優れていたが、比表面積、粒子内細孔容積はほとんどなく、10、20MPaの常用される圧縮圧では成型体とはならなかった。
比較例13
市販のクラフトパルプを細断し、10%塩酸水溶液中で105℃、30分の条件で実施例1と同様に加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過し、固形分濃度40%の結晶セルロースのケーク状物を得た(このケーク状物の重合度は153)。このケーク状物に万能混合攪拌機((株)三英製作所製、商品名、5DM−03−R型)で1時間摩砕処理を施した。この摩砕処理したケーク状物に水を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名、T.K.ホモミキサーMARKII型)で、固形分12.5重量%のセルロース分散液とし、粒子径、pH、ICを調整した。ここで得られたセルロース分散液中のセルロース分散粒子は、単一の平均粒子径のものであり、その平均粒子径は7μmであった。その分散液を、約8cmの回転盤を用い、回転盤回転数5000rpm、流量6L/hr、吸気温度170℃、排気温度85℃の条件で噴霧乾燥し、目開き177μmの篩で粗大粒子を除去し、セルロース粉末Uを得た。得られたセルロース粉末U(WO02/36168の実施例1に相当)の諸物性値を表1に示す。
セルロース粒子Uも、重質であり、流動性に優れていたが、比表面積、粒子内細孔容積が小さく、10、20MPaの常用される圧縮圧で成型体となったものの、成型体はもろく、取り出し時に摩損し、手で容易に破壊されるものであった。
【0066】
実施例9〜11、比較例14〜23
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、実施例2、5、7で得られたセルロース粉末B、E及びG、又は、比較例1、2、及び4〜11で得られたセルロース粉末I、J、及びL〜Sを27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、及び造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得た。ここで各粉体の仕込み全量は25kgであった。得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II 36本立て回転盤径φ410mm)を使用し、直径8mm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、圧縮力7.5kNで打錠し、重量200mgの錠剤を得た。打錠開始後60分後の錠剤をサンプリングし、錠剤重量、硬度、摩損度、打錠障害発生率を測定した。得られた錠剤の諸物性値を表2に示す。
【0067】
実施例12
イブプロフェン−ポリエチレングリコール溶液(量比1:5)をエタノール(和光純薬製、特級)で10倍希釈した溶液状活性成分20gに、セルロース凝集体A5gを投入し、ビーカー中、マグネチックスターラーで5分間混合した。得られた混合溶液を、エバポレーターを使用し、真空乾燥し、粉末を得た。得られた粉末を、0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。圧縮成型した成型体の表面を観察すると、液状成分の浸み出しはなかった。また、100mLの純水を入れ、攪拌子で攪拌したビーカー中に、攪拌子を覆うように、目開き1000μmの篩を入れておき、この篩成型体を篩上に投入し、1分放置した時の様子を観察した。結果を表3に示す。
【0068】
比較例24
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例25
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例26
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例27
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例28
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
【0069】
実施例13
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製の粉末タイプを小型粉砕機で目開き0.12μmで3回粉砕して使用。得られたアセトアミノフェンの平均粒径は8μm)30g、タルク(和光純薬(株)製)15gをポリエチレン袋に入れて、3分間手で振とうした後、その混合粉体25.3gに、セルロース凝集体Aを675.6g、100メッシュ乳糖(DMV(株)製)988.1gを秤り取り(混合比率:セルロース/乳糖/アセトアミノフェン/タルク=40/58.5/1/0.5)、容量5リットルのV型混合機(ダルトン社製)に投入し(体積充填率を約65%に設定)、30分間混合した。薬物濃度の変動係数を表4に示す。
混合30分後の処方粉体に、ステアリン酸マグネシウムを15g添加し、同様に5分間混合した後、得られた粉体を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.0cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。成型体の破壊強度を、シュロインゲル硬度計(フロイント産業(株)製、商品名、6D型を用いて、円柱状成型体又は錠剤の直径方向に荷重を加え、破壊し、そのときの荷重を測定した。試料10個の平均値で表した。また、100mLの純水を入れ攪拌子で攪拌したビーカー中に、攪拌子を覆うように、目開き1000μmの篩を入れておき、この篩成型体を篩上に投入し、1分放置した時の様子を観察した。結果を表4に示す。
特開2003−81876号公報で使用している微粉砕したアセトアミノフェンの半分の粒子径となっているが、本発明の多孔質セルロース凝集体を用いることで、混合時の薬物濃度変動係数は30分後で1.0%以下であり極めて良好な混合均一性を達成できている。
【0070】
比較例29
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体の破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例30
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例31
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当、商品名結晶セルロース「アビセル」PH−101に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。特開2003−81876号公報の実施例3と同一の処方で、活性成分である微粉砕したアセトアミノフェンの平均粒径が該公報で使用しているものの半分としたことにより、活性成分の付着凝集性が格段に増加し、該公報実施例3で開示されている混合均一性よりも悪くなっている。
比較例32
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当、商品名結晶セルロース「アビセル」PH−301に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例33
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当、商品名結晶セルロース「セオラス」KG−802に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
実施例14
セルロース凝集体Aを使用し、市販のイブプロフェン(日本薬局方14改訂に水にほとんど溶けないと記載される活性成分)をポリエチレングリコール(三洋化成(株)製、マクロゴール400)に1:5の割合で溶解させ、さらにエタノールで10倍希釈した液をセルロース粒子Aに対し、10重量%となるように添加し、乳鉢中で攪拌した。得られた混合粉末を0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。得られた成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出(溶出試験器(日本分光(株)製、パドル回転数100rpm、局方I液、900mL)を使用し、紫外吸光度測定器で3分後の液の吸光度から溶出率を算出した)、円柱状成型体の崩壊時間を測定した。結果を表5に示す。円柱状成型体からのポリエチレングリコールの浸み出しはなく、崩壊性は良好で3分後の薬物溶出率も高く、素早い溶解性であることを確認した。
【0072】
比較例34
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体からの液状成分の浸み出しは認められなかったが、溶出試験において3分間崩壊せずに液面浮遊し、崩壊性は悪かった。
比較例35
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体からの液状成分の浸み出しは認められなかったが、溶出試験において3分間崩壊せずに液面浮遊し、崩壊性は悪かった。
比較例36
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
比較例37
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
比較例38
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
【0073】
実施例15
エテンザミド(エーピーアイ(株)製、粉末グレードを小型粉砕機で粉砕した)をエタノール(和光純薬製、試薬特級)で5:95の割合で溶解させた溶液10mLに、セルロース凝集体G1gを添加し、マグネチックスターラーで3分間攪拌した。得られた分散液をエバポレーターに導入し、完全に脱溶媒し、粉末サンプルを得た。
この粉末を円柱状成型体作製時の圧縮を50MPaとする以外は実施例14と同様に操作し、溶出試験を行った。結果を表6に示す。
比較例39
実施例15の方法で粉砕したエテンザミドのみを溶出試験した。結果を表6に示す。
【0074】
実施例16
セルロース凝集体Aを使用し、市販のイブプロフェン(日本薬局方14改訂に水にほとんど溶けないと記載される活性成分)をエタノール(和光純薬製、試薬特級)に1:5の割合で溶解させた液をセルロース凝集体Aに対し、10重量%となるように添加し、乳鉢中で攪拌した。得られた湿混合粉末をエバポレーターを使用し、完全にエタノールを除去し、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。得られた円柱状成型体100個を瓶に入れ、密栓系40℃で2週間保存し、瓶の曇りを観察した。また、得られた円柱状成型体からの活性成分の溶出試験(日本分光(株)製、パドル回転数100rpm、局方I液、900mLの条件で溶出試験を行い、紫外吸光度測定器で1分後の液の吸光度を測定し試験開始3分後の溶出率を算出した)、及び成型体の崩壊性を観察した。結果を表7に示す。
比較例40
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。瓶の曇りは観察されなかったが、錠剤は1分では崩壊せず、液面を浮遊していた。
【0075】
比較例41
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。瓶の曇りは観察されなかったが、錠剤は1分では崩壊せず、液面を浮遊していた。
比較例42
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。昇華したイブプロフェンが瓶壁内で再結晶化したため瓶の曇りが確認された。
【表1】
【表2】
【表3−1】
【表3−2】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の成形性、崩壊性に優れた高流動性多孔質セルロース凝集体、そのセルロース粒子と1種以上の活性成分を含む成型体組成物は、結晶形がI型であり、一次粒子が凝集した多孔質構造を有し、比表面積が特定の範囲にあり、粒子内細孔容積が大きく、水中で迅速に崩壊し、安息角が小さい高流動性多孔質セルロース凝集体及びそのセルロース粒子と1種以上の活性成分を含む成型体組成物に関するものであり、主に医薬品の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の水銀ポロシメトリーにより測定された細孔分布図。図1から、細孔分布0.1〜10μmにおいて粒子内細孔に由来する「明確なピーク」が確認できる。これは、SEMによる電子顕微鏡写真に示される細孔径とほぼ同じ大きさのものである。なお、図1に示される10〜50μmに示されるピークは粒子間隙に由来するものである。
【図2】セルロース粉末K(比較例3)の水銀ポロシメトリーにより測定された細孔分布図。本発明の多孔質セルロース凝集体に見られるような「明確なピーク」が確認されなかった。このような「明確なピーク」がない細孔は、元々のセルロース一次粒子が有するものである。10〜50μmに見られたピークは、粉末の粒度分布から考えて、粒子間隙によるものである。
【図3】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が観察された。
【図4】セルロース粒子N(比較例6)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。写真から、セルロース粒子Nの粒子構造は、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、セルロース一次粒子が微細化し、微細化した粒子が乾燥時に強固に結合してしまうため、一次粒子の境界が不明瞭なほどに、「連続した強固なフィルム状のセルロース隔壁」となっていることが分かる。
【図5】セルロース粉末P(比較例8)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。写真から、セルロース粉末Pの粒子構造は、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」をとっているが、単一の平均粒子径を有するセルロース粒子の分散液を乾燥したものであるため、粒子内細孔容積は小さく、水銀ポロシメトリーで細孔分布を測定した結果、細孔分布で0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認されなかった。
【図6】セルロース粒子A(実施例1)の倍率1500倍における電子顕微鏡写真。写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確に観察された。
【図7】セルロース粒子N(比較例6)の倍率1500倍における電子顕微鏡写真。写真から、隔壁がフィルム状であり、一次粒子の境界が不明瞭であることが分かる。
【図8】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の電子顕微鏡による粒子断面写真。図1で示される「明確なピーク部分」に相当する細孔径の粒子内細孔が発達した様子が観察された。
【図9】セルロース粉末P(比較例8)の電子顕微鏡による粒子断面写真。セルロース粒子が剛直に結合することで、密に結合した構造が確認される。粒子内細孔は疎らで、発達したものではなく、水銀ポロシメトリーによる細孔容積も小さかった。
【図10】実施例1〜8におけるセルロース粒子A〜H及び比較例1〜13におけるセルロース粉末又は粒子I〜Uの、安息角と硬度(それぞれ0.5g秤り取り、20MPaの圧縮圧でφ1.1cmの円柱状成型体とした円柱状成型体の硬度)の関係を示すグラフ。実施例1〜8は、安息角44°未満の領域においても、硬度が165N以上であり、流動性と成形性のバランスに優れることが分かる。それに対し、比較例1〜13は、安息角44°未満で、165N以上のものは得られず、165N以上が得られるものは、安息角が44°以上となり、流動性と成形性のバランスが悪いことが分かる。本発明のように賦形剤として使用される見掛け比容積の全域、例えば2.0〜6.0cm3/gにおいて、20MPaの硬度が165N以上であり、安息角が44°未満である成形性、流動性に優れるものはなかった。
【図11】実施例1〜8におけるセルロース粒子A〜H及び比較例1〜13におけるセルロース粉末又は粒子I〜Uの、硬度と崩壊(いずれも、それぞれのセルロースを0.5g秤り取り、20MPaの圧縮圧でφ1.1cmの円柱状成型体とした円柱状成型体の硬度と崩壊)の関係を示すグラフ。実施例1〜8は、硬度が160N〜400N以上の全ての領域において、崩壊時間が75秒以下であり、硬度と崩壊のバランスに優れることが分かる。それに対し、比較例1〜13は、硬度が高くなると極端に崩壊が遅延する系もあり、160N以上において、75秒以下の崩壊を示すものはなかった。本発明のように賦形剤として使用される見掛け比容積の全域、例えば2.0〜6.0cm3/gにおいて、20MPaの硬度が165N以上であり、崩壊時間75秒以下である成形性、崩壊性に優れるものはなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業分野、特に医薬、食品で主として賦形剤として有用な多孔質セルロース凝集体及びその成型体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬、食品、その他化学工業分野等において、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース粒子を賦形剤として用いて、活性成分を含有する成型体を調製することが、広く行われている。このセルロース粒子には、良好な成形性、流動性及び崩壊性が求められている。
【0003】
特許文献1には、セルロース粒子を、水に対して不溶性又は難溶性で有機溶媒に可溶の結晶性物質などの第三成分と混合し、これを又は水溶性有機溶媒の水溶液を用いて造粒、乾燥した後、第三成分を有機溶媒で抽出・除去して得られる、結晶形がI型であり、細孔径が0.1μm以上であり、気孔率が20%以上の細孔を有し、かつ350メッシュ以上の留分が90重量%以上である多孔性セルロース粒子(本願の比較例6に相当)が記載されている。該文献に記載される多孔性セルロース粒子は、そのセルロース一次粒子が、その粒子の境界が不明瞭なほどに一様に連続したフィルム状の緻密で強固なセルロース壁構造を形成するため、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が全く異なる。特許文献1のセルロース粒子は、流動性に優れるものの、緻密で連続したセルロース壁に水が浸透しにくいため、水中で崩壊せず、活性成分の速放性に支障をきたす場合もあった。また、特許文献1のセルロース粒子は、セルロース圧縮時の塑性変形性に乏しく、成形性が不十分であり、さらに、その製造工程で有機溶媒や有機溶媒に可溶の結晶性物質などの第三成分を使用するため、製造コストが高くなるばかりか、活性成分を失活させる場合もあり、賦形剤として安定的に使用するには不十分であった。
【0004】
特許文献2には、有機溶媒に分散させた微粒子状天然セルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥することにより得られる、結晶形がI型であり、比表面積が20m2/g以上で、直径0.01μm以上の細孔容積が0.3cm3/g以上の多孔質構造を有し、平均粒子径が大きくとも100μmである多孔性微小セルロース粒子(本願の比較例7に相当)が記載されている。この微小セルロース粒子も上記セルロース壁構造を有しており、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が全く異なる。また、特許文献2のセルロース粒子は、細孔容積自体は大きいものであるが、本発明の多孔質セルロース凝集体と粒子構造が異なるため、粒子内へ水が浸透し難く、崩壊性に劣るという問題がある。加えて、該多孔質セルロース凝集体粒子も、その製造工程で有機溶媒を使用するため、製造コストが高くなるばかりか、比表面積が大きすぎるため、活性成分と水分との相互作用を助長して活性成分を失活させる場合もあり、賦形剤として安定的に使用するには不十分であった。
【0005】
特許文献3には、成形性と崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が150〜375、見かけ比容積が1.84〜8.92cm3/g、粒度が300μm以下のセルロース粉末(本願の比較例8に相当)が記載されている。
特許文献4には、流動性、崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が60〜375、見かけ比容積が1.6〜3.1cm3/g、見かけタッピング比容積が1.4cm3/g以上で、安息角が35〜42°、200メッシュ以上の成分が2〜80重量%である微結晶セルロース凝集体(本願の比較例9に相当)が記載されている。
これらの特許文献に記載される実施例により得られたセルロース粉末は、水銀ポロシメトリーを用いた、細孔分布測定結果によれば、粒子内細孔容積が小さく、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。このため、これらのセルロース粉末は比表面積が0.6〜1.2m2/gと小さく、圧縮成形性が低い。これらの特許文献には、見掛け比容積の値を調整して、セルロース粒子の成形性、流動性、崩壊性を制御することが開示されているが、見掛け比容積が2.0〜2.9cm3/gと比較的小さい範囲においては、流動性、崩壊性に優れるものの、成形性が満足いくものではなく、一方、3.0〜3.2cm3/gとやや見掛け比容積が大きくなると、成形性は優れるが、流動性、崩壊性が悪くなるという問題があった。
【0006】
特許文献5には、成形性の良いセルロース粉末として、平均粒子径が大きくとも30μmであり、かつ比表面積が1.3m2/gであるβ−1,4−グルカン粉末(本願の比較例1に相当)が記載されている。該文献に記載されるβ−1,4−グルカン粉末は、二次凝集構造を有さず、個々の一次粒子が単独で存在している。このグルカン粉末は、良好な成形性を有するものの、崩壊性に劣る上、平均粒子径が小さいため、流動性に乏しいという問題があった。
特許文献6には、成形性と崩壊性が良いセルロース粉末として、セルロース質物質を加水分解して得られる平均重合度100〜375、酢酸保持率が280%以上で、川北式(P・V0/(V0−V)=1/a・b+P/a)のa値が0.85〜0.90、b値が0.05〜0.10であり、見かけ比容積が4.0〜6.0cm3/g、実質的に355μm以上の粒子がなく、平均粒子径が30〜120μmであるセルロース粉末(本願の比較例10に相当)についての記載がある。該文献に記載される実施例の方法で得られたセルロース粉末も、水銀ポロシメトリーを用いた細孔分布測定結果によれば、粒子内細孔容積が小さいため、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。特許文献6のセルロース粉末は圧縮成形性と崩壊性に優れるとの記載があるが、具体的に開示されている、最もバランスの優れる実施例について安息角を測定すると55°を超えており、流動性は充分満足のいくものではなく、流動性に乏しい活性成分が多く配合される処方等では錠剤重量の変動係数が大きくなり、薬物の含量均一性に影響を及ぼすという課題があった。また、該文献のセルロース粉末では、高圧下で成型した場合には高硬度を付与できるものの、意図的に形成させた粒子内細孔がなく、粒子内部への水の浸透性が低いため、崩壊が遅延するという問題があった。
【0007】
特許文献7には、成形性と流動性と崩壊性が良いセルロース粉末として、平均重合度が100〜375、75μmの篩を通過し38μm篩上に残留する粒子が全重量の70%以上で、かつ、粒子の長径短径比の平均値が2.0以上であることを特徴とする結晶セルロース(本願の比較例11に相当)が記載されている。
特許文献8には、成形性と崩壊性、流動性が良いセルロース粉末として、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/D(長径/短径比)が2.0〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見かけ比容積が4.0〜7.0cm3/g、安息角が54°以下であり、比表面積が0.5〜4m2/gであるセルロース粉末(本願の比較例2、3に相当)の記載がある。
これらの文献に記載されるセルロース粉末も、上記と同様、水銀ポロシメトリーで測定した粒子内細孔容積が小さいため、本発明の如く意図的に形成させた細孔構造とは全く異なる。これらの文献に記載されるセルロース粉末は、粒子の形状を細長くすることで、成型体に高い硬度を付与するものであるが、細長い形状を有するが故に、見かけ比容積が大きくなり、成形性が高いものほど流動性が低下する。これらの文献に記載される実施例のセルロース粉末について、最も流動性が良好なものについて安息角を測定すると44°であり、例えば、流動性に乏しい活性成分が多く配合される処方で、かつ高速度で連続成形する場合に、錠剤重量の変動係数が大きくなり、薬物の含量均一性に影響を及ぼすため、流動性の点で満足いくものではなかった。さらに、これらの文献に記載されるセルロース粉末も、高圧下で成型した場合には高い硬度を付与できるものの、意図的に形成させた粒子内細孔がなく、粒子内部への水の浸透性が低いため、崩壊が遅延するという問題があった。
これら、特許文献5〜8に記載されるセルロース粉末は、見掛け比容積が2.3〜6.4cm3/gの範囲においては、十分な成形性は得られるものの、流動性、崩壊性が悪化するという問題があった。
【0008】
特許文献9には、流動性の良いセルロース粒子として平均重合度が60〜375である結晶セルロースを10〜70%及び水溶性添加剤を10〜90%含有する薬学的に不活性な球状核が記載されている。また、特許文献10には、結晶セルロースを50%以上含有する粉体を混合攪拌造粒機で混合しながら、蒸留水を加え練合し、吸水能が0.5〜1.5ml/g、真球度が0.7以上、タッピング見掛け比容積が0.65g/ml以上、摩損度が1%以下、平均重合度が60〜375である結晶セルロースを50%以上含有する薬学的に不活性な球状核(本願の比較例12に相当)が記載されている。特許文献11には、加水分解したセルロース粒子を、機械的に粒径を減少させ、スプレー乾燥した少なくとも0.4g/cm3の疎かさ密度(見かけ比容積では、2.5cm3/g)を有し、球状であり、平均粒子径が5〜35μmである滑らかな表面をもつ微結晶セルロース粒子が記載されている。特許文献12には、セルロース質材料を平均重合度が60〜350になるまで加水分解し、次いで平均粒子径が15μmになるまで機械的に摩砕し、得られた結晶セルロースを含む分散液を、液滴の形態で乾燥し得られる、平均重合度が60〜350の結晶セルロースを10%以上含有し、タッピング見掛け比容積が0.60〜0.95g/mL、真球度が0.7以上、形状係数が1.10〜1.50、及び平均粒子径が10〜400μmであるセルロース系粒子(本願の比較例13に相当)が記載されている。
【0009】
これらの公報に記載されるセルロース粒子も二次凝集構造とはならず、これらの特許文献に記載されている実施例の方法で得られたセルロース粒子は、見掛け比容積が2.5cm3/g以下であり、球に近い形状を有し、流動性に優れるものの、圧縮成形性に劣り、常用される圧縮圧10〜20MPaでは実用上十分な硬度を有する成型体とならない。
上記のように、従来の技術のセルロース粒子においては、成形性、流動性、崩壊性は、互いに相反する性質であり、これらすべての物性をバランスよく兼ね備えた、セルロース粒子の実現が望まれていた。
一方特許文献3〜12に記載されるセルロース粒子は、意図的に形成させた粒子内細孔を持たず、粒子内細孔容積が小さいため、粒子内に活性成分をほとんど担持できないために、圧縮成型時に液状成分の浸み出しや、打錠障害が生じる問題があった。また特許文献1及び2に記載セルロース粒子は粒子内細孔はあるが、細孔径が小さいため、緻密で連続したセルロース壁に水が浸透しにくいため、水中で崩壊せず、活性成分の速放性に支障をきたす問題があった。
また、これらのセルロース粒子では、意図的に形成させた粒子内細孔を持たず、粒子内細孔容積が小さいため、粒子内に活性成分をほとんど担持できないために、水難溶性活性成分の固形製剤化においては、水や有機溶媒で一旦造粒し乾燥する等の複雑な工程を経ない限り、活性成分の溶出が遅く実用に供さないという欠点や、昇華性の活性成分の固形製剤化の場合には、活性成分が保存中に再結晶化してしまい、商品価値を損なう等の欠点を有していた。
【0010】
内服用固形製剤における活性成分は、消化管内で製剤より体液中に溶出し、消化管から吸収され、体循環血液に入り、薬効を発揮する。水に難溶性の活性成分は溶出性が低いので、投与された活性成分が全て溶出しないうちに体外へ排出され、十分な薬効を発揮しない場合がある。投与活性成分量に対する、体循環血液に入る全活性成分量の比は、一般的にバイオアベイラビリティーとして知られている。このバイオアベイラビリティーの向上と、活性成分の速効性を目的として、難溶性活性成分の溶出性の改善について、種々の方法が従来検討されてきた。
特許文献13には、水に難溶性の活性成分をβ−1,4−グルカン粉末と共粉砕する方法が記載されている。本方法は、β−1,4−グルカン粉末の結晶性が消失するまで長時間粉砕処理を施さなければならず、またロール混合機で長時間強力なシェアをかけ続けなければならないため、実生産上効率が悪いという問題があった。また、結晶性が消失したβ−1,4−グルカンは圧縮成形性が低いという問題があった。
特許文献14には、直接打錠法により水難溶性の主薬を経口投与固形剤とする場合に、β−1,4−グルカン、崩壊剤及び界面活性剤を配合して強度を高め、主薬含有量のばらつきをなくし、錠剤の崩壊度及び主薬の溶出速度を速める方法が記載されている。該公報には、粒子内細孔に関する記載はなく、水難溶性の活性成分と多孔質セルロース粒子を配合することにより、薬物の水溶性を改善することについては全く知られていなかった。また、水難溶性の活性成分の溶出を促進するため界面活性剤を配合する必要があり、該固形製剤を服用した際に、界面活性剤により消化管粘膜に炎症を生じることが課題であった。
【0011】
また、特許文献15には、水難溶性主薬とβ−1,4−グルカンとを用いて、粉体混合、練合、造粒、乾燥の工程を経た湿打法により錠剤を製造する場合に、水溶性高分子溶液を添加することにより、錠剤硬度が高く、崩壊時間が短く、主薬溶出速度が大きい錠剤を製造することが記載されている。該文献も、粒子内細孔の大きい多孔質セルロース粒子に関する記載はなく、水難溶性の活性成分と多孔質セルロース粒子を配合することにより、薬物の水溶性を改善することについては全く知られていなかった。また、かかる方法では、油性物質を吸着した乾燥に関わる多くの工程が必須であり、それに伴う設備コスト、乾燥に使用するエネルギーコストが高くなることが課題であった。また、熱により失活する活性成分には適用できない等の課題があった。
また、特許文献16には、有機溶媒に分散させた微粒子状天然セルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥することで得られる、特定の比表面積及び細孔容積を有する多孔構造のセルロース粒子に、難溶性薬物を混合し、昇華吸着させることにより、薬物の溶出を改善する方法が記載されている。該文献に記載される多孔質セルロース粒子は、高い比表面積、大きい粒子内細孔容積を有するため、確かに水難溶性活性成分を昇華吸着させた場合に、溶出の改善がみられる。しかしながら、該特許文献の実施例には、過度に高い比表面積を有するセルロース粒子を使用し、その表面で昇華吸着された活性成分は非晶化しているため、活性成分が保存中に一部が結晶化して、溶出速度が変化してしまう等の保存安定性の問題や、錠剤など強固に結合した成型体組成物では、その崩壊が悪いために崩壊しにくく、活性成分の溶出が遅くなるという欠点があった。
昇華性の活性成分は、保存時に固形製剤から侵出する問題があり、それを防止する目的で、それらの固形製剤の多くはフィルムコーティング又は糖衣コーティングが施されてきた。しかし、そのような処置を施されても、フィルム層を通過して製剤外部に侵出することで、製剤中の活性成分ばらつきを生じたり、それが製剤表面に付着することで服薬時の刺激臭を呈したり、瓶などの保存容器内で再結晶化することにより商品価値を著しく低下させる問題があった。また、コーティングを施さない製剤の場合は、コーティングを施した場合に対し、昇華再結晶化はさらに顕著になる。
特許文献16ではすでに述べたように過度に高い比表面積を有するセルロース粒子を使用し、その表面で昇華吸着された活性成分は非晶化しているため、活性成分の保存安定性が悪いという問題や、錠剤など強固に結合した成型体組成物では、その崩壊が悪いために崩壊しにくく、活性成分の溶出が遅くなるという欠点があった。
【0012】
また特許文献17には、固形製剤中のイブプロフェンが昇華することによる再結晶化を防止する方法として、イブプロフェン含有固形製剤と、ポリビニルピロリドン、酸化マグネシウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から1種又は2種以上の安定化物質を共に、瓶などの密閉容器内で保存する方法が記載されている。かかる方法によると、確かに製剤保存時の密閉容器への結晶付着、製剤の刺激臭は改善されるが、ポリビニルピロリドン、酸化マグネシウム及び炭酸ナトリウム等を別の製剤として容器に入れる必要があり、工程が複雑になる。従って、製剤中に多孔質セルロースを入れることにより、昇華性が防止された単一製剤とする本発明の昇華性活性成分含有製剤とは全く異なる。
従来、常温で、油状、液体、半固体状の活性成分を含む組成物は、固体状活性成分と比較して、圧縮成型する際に、製剤から液状成分が浸み出すため、特に打錠障害を生じやすく、得られた製剤表面に液状成分の斑点が生じる、顆粒状製剤の場合は流動性不良を生じる等の問題があった。これらの問題は、製品の品質を著しく低下させるばかりではなく、活性成分濃度・薬効ばらつきの原因となるため、その改善は極めて重要な課題である。
【0013】
特許文献18〜29には、錠剤の製造において、常温で液状・半固形状の活性成分をそのまま吸着担体に保持させる、あるいは活性成分を水、有機溶媒、油脂、水溶性高分子、界面活性剤に溶解、乳化、懸濁させたものを保持させた後、乾燥工程を経て、得られた乾燥粉末、又は顆粒を圧縮成型する方法が記載されている。しかしながら、これらの特許文献の方法では、圧縮時に常温で液状又は半固形状の活性成分が浸み出し、打錠障害を発生させ、十分な圧縮成型体が得られない場合があった。またこれら特許文献には、セルロース粒子に関して、粒子内細孔容積に関する記載はなく、常温で液状又は半固形状の活性成分を圧縮する際に、本発明の粒子内細孔容積の大きな多孔質セルロース凝集体を加えることにより、該多孔質セルロース凝集体が常温で液状又は半固形状の活性成分をその粒子内部に保持することにより、浸み出しを防止し、粉末、顆粒、錠剤等のような固形製剤を調製しやすくなることについては全く知られていなかった。また、特許文献18〜29の方法では、乾燥に関わる多くの工程が必須であり、それに伴う設備コスト、乾燥に使用するエネルギーコストが高くなることが課題でもあった。
結晶セルロースと活性成分を混合し、活性成分の混合均一性を高め、活性成分のばらつきを低減する方法として、特許文献30には、薬物と添加剤の混合において、薬物と流動化剤としてタルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸塩を混合した後、該混合粉体とその他の添加剤とを混合する薬物の混合方法が開示され、流動化剤以外の添加剤の中でも結晶セルロースが混合性に優れていると記載されている。しかしながら、結晶セルロース等のセルロースの粒子内細孔についての記載が全くなく、本発明の如く、多孔質セルロース凝集体粒子を配合することで、粒子内に活性成分が保持されることによって、活性成分の混合均一性を向上させ得ることは知られていなかった。また、該文献には、薬物として、平均粒径が40μm以下の微粉状で、凝集性の高い薬物に適用すると効果が顕著になり好ましいと記載されているが、実際に該文献の実施例に記載される薬物の平均粒子径について、最も小さいものでも16μmであり、例えば水難溶性の活性成分の服用時の分散性を高める目的で、10μm以下程度に粉砕されたものについては、活性成分の凝集性が格段に高くなるため、既存の粒子内細孔の小さい結晶セルロースでは、十分な混合均一性が得られない場合があった(本発明の比較例31)。
【0014】
【特許文献1】特開平1−272643号公報
【特許文献2】特開平2−84401号公報
【特許文献3】特公昭40−26274号公報
【特許文献4】特公昭53−127553号公報
【特許文献5】特開昭63−267731号公報
【特許文献6】特開平6−316535号公報
【特許文献7】特開平11−152233号公報
【特許文献8】WO02/02643号パンフレット
【特許文献9】特開平4−283520号公報
【特許文献10】特開平7−173050号公報
【特許文献11】特表平7−507692号公報
【特許文献12】WO02/36168号パンフレット
【特許文献13】特公昭53−22138号公報
【特許文献14】特開昭53−044617号公報
【特許文献15】特開昭54−052718号公報
【特許文献16】特開平03−264537号公報
【特許文献17】特開平08−193027号公報
【特許文献18】特開昭56−7713号公報
【特許文献19】特開昭60−25919号公報
【特許文献20】特開昭61−207341号公報
【特許文献21】特開平11−193229号公報
【特許文献22】特開平11−35487号公報
【特許文献23】特開2000−16934号公報
【特許文献24】特開2000−247869号公報
【特許文献25】特開2001−181195号公報
【特許文献26】特開2001−316248号公報
【特許文献27】特表2002−534455号公報
【特許文献28】特開2003−161号公報
【特許文献29】特開2003−55219号公報
【特許文献30】特開2003−81876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、セルロース粒子を特定の細孔径、細孔容積を持つ多孔質セルロース凝集体とすることにより、各種活性成分を含む成型体の製造に用いられる、優れた成形性、流動性、崩壊性を有する賦形剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するため、セルロース凝集体の粒子構造を制御し、二次凝集構造を発現させ、セルロース凝集体の粒子内細孔容積を高め、セルロース凝集体の粉体物性を特定の範囲に制御することにより、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
(1)セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が1.3〜20m2/g、安息角が25°以上44°未満であり、水中で崩壊する性質を有する多孔質セルロース凝集体、
(2)前記安息角が25〜42°である上記(1)の多孔質セルロース凝集体、
(3)多孔質セルロース凝集体0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が165〜410Nである上記(1)又は(2)の多孔質セルロース凝集体、
(4)前記破壊荷重が200〜410N、崩発時間が75秒以下である上記(3)の多孔質セルロース凝集体。
(5)平均粒子径の異なる2種以上のセルロース一次粒子群と液媒体とを含み、セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmである分散液を、乾燥する工程を含む、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体の製造方法、
(6)1種以上の活性成分と上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(7)前記1種の活性成分が水難溶性活性成分である上記(6)の成型体組成物、
(8)前記1種の活性成分が昇華性活性成分である上記(6)の成型体組成物、
(9)常温で液状又は半固形状である1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(10)40μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物、
(11)10μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、上記(1)〜(4)のいずれか一項の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、成形性、流動性、及び崩壊性に極めて優れている。そのため、各種活性成分を含む成型体の製造において、本発明の多孔質セルロース凝集体を賦形剤として使用すれば、活性成分との混合均一性に優れ、重量ばらつきがなく、活性成分の含量均一性に優れ、十分な硬度を有し、打錠障害がなく、摩損度が低く、崩壊性に優れる成型体を簡便な方法で提供することができる。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、水難溶性の活性成分を含む固形製剤において、活性成分の溶出性、打錠性、及び崩壊性が極めて良好となるために、また、液状、半固形状活性成分を含む固形製剤において、液状又は半固形状活性成分の浸み出しが防止され、崩壊性が良好となるために、加えて、活性成分が微量である場合で特に活性成分の平均粒径が小さく付着凝集性が高い場合の、活性成分と活性成分以外の成分との混合やそれを用いた固形製剤において、活性成分の混合速度及び濃度ばらつきの低減に寄与でき、打錠性、崩壊性が良好となるために、さらには昇華性の活性成分の固形製剤において、昇華性活性成分の昇華による再結晶化を防止でき、商品価値の低下を防ぐことができるために、固形製剤のための賦形剤の用途では特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、一次粒子が凝集した二次凝集構造を有する必要がある。これは、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、250倍及び/又は1500倍で、粒子表面を観察した場合に、一次粒子の境界が明確な二次凝集構造のことをいう。一次粒子が凝集した二次凝集構造は崩壊性と密接に関係し、この粒子構造を有しない場合は、崩壊性が悪化するので好ましくない。一次粒子の境界が明確でなく、例えばフィルム状の緻密で連続したセルロース隔壁を有する場合は、セルロース一次粒子が緻密に連続し、強固に結合しているため、水中で粒子が崩壊せず、成型体の崩壊性も悪くなるので好ましくない。
また、一次粒子が凝集した二次凝集構造は、崩壊性のみならず、活性成分の溶出性とも密接に関係する。一次粒子が凝集した二次凝集構造を有する多孔質セルロース粒子は、水中で、一次粒子間への水の浸透が速く、一次粒子への崩壊が促進され、活性成分を保持させた場合には、活性成分と水との接触面積が増大するため、水に難溶性の活性成分の溶出性を改善する効果がある。
加えて、この二次凝集構造は、粒子の内部・表面に関わらず、均一に分布するものであり、活性成分と混合する際には、セルロース一次粒子間隙にも、活性成分を保持できるため、特に、液状成分の浸み出しを防止できるので好ましい。
さらに、この二次凝集構造は、粒子の表面のみならず、内部にも活性成分を保持できるため、活性成分の混合速度の向上、混合均一性の向上に寄与し、濃度ばらつきを大幅に低減できるので好ましい。
【0019】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、その粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gである必要がある。粒子内細孔容積が大きい多孔質粒子は、塑性変形性に優れ、圧縮時に粒子が潰れ易いため、成形性に優れる。本発明の多孔質セルロース凝集体は、元々のセルロースに由来するものに加えて、意図的に凝集粒子内細孔容積を大きくしたものであり、このように粒子自身の構造を変えることで塑性変形性を高めたものである。そのため、粒子の見掛け比容積によらず、高い圧縮成形性を発現する。粒子内細孔容積が、0.265cm3/g未満の場合は、セルロース一次粒子が本来有する粒子内細孔、又は意図的に形成させたものではなく自然とセルロースが凝集したことにより形成された粒子内細孔しか存在しないため、塑性変形性に乏しい。成形性を高めるためには、粒子の見掛け比容積を大きくしなければならないため、結果的に粒子の流動性が悪くなる。本発明の多孔質セルロース凝集体は、その比較的小さい見かけ比容積で良好な成形性を確保できるため、結果的に流動性にも優れたものが得られる。
【0020】
粒子内細孔容積が0.265cm3/g以上であると、粒子内に十分な細孔容積を有するため、混合過程や圧縮過程で一旦粒子内又は粒子表面の細孔に取り込まれた活性成分が、脱離し難いため、粒子内細孔に液状成分を十分量保持できるので、浸み出し防止にも優れるため好ましく、固体活性成分を使用する場合には、水分散性、溶出性改善を目的とし、微粉砕した活性成分を均一に多く保持できることや、昇華性活性成分の、特に保存中の再結晶化を防止し、安定化や商品価値の劣化を防ぐことに寄与できるために好ましく、さらには活性成分の混合速度の向上、混合均一性の向上にも寄与し、濃度ばらつきを大幅に低減できるので好ましい。水難溶性の活性成分を、一旦溶解又は懸濁又は乳化させたものを使用する場合にも、液状成分の保持性に優れるため好ましい。活性成分の濃度ばらつきの指標である薬物濃度変動係数は、混合時間中に3.0%以下にできることが好ましく、さらに好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。特に活性成分の平均粒子径が10μm以下の、活性成分の凝集性が非常に高いものを混合する場合には、本発明の多孔質セルロース凝集体のように粒子内細孔容積が0.265cm3/g以上のものを用いることによって、粒子の表面のみならず、内部にも活性成分を保持する効果があるため、薬物濃度変動係数を2.0%以下にできるため好ましい。
粒子内細孔容積が0.265cm3/g未満であると、固体活性成分、液状活性成分の分散均一性、保持性が損なわれるので、活性成分濃度ばらつきを生じる、固形製剤が凝集を生じる、圧縮成形性が損なわれる、昇華性活性成分では保存中に再結晶化し、安定性や商品価値が低下する等、上記の効果が得られないので好ましくない。粒子内細孔容積が2.625cm3/gを超えると見かけ比容積が増加し流動性が低下するので好ましくない。
【0021】
本発明の多孔質セルロース凝集体の細孔径分布は、例えば、水銀ポロシメトリーにより測定される。特に、0.1〜10μmの範囲に、「明確なピーク」を識別できることが好ましい。また、細孔分布のピークトップである中央細孔径は、粒子内への水の浸透性に密接に関わるものであり、中央細孔径は0.3μm以上が好ましい。中央細孔径が0.3μm以上の時に水の浸透速度が大きくなり、崩壊性がいっそう向上する。中央細孔径は大きいほど好ましいが、その分布範囲を考慮すると、せいぜい5μm程度である。
本発明の多孔質セルロース凝集体の結晶形はI型でなければならない。セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型は「天然セルロース」、II型は「再生セルロース」と呼ばれ、汎用されているが、III型及びIV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。天然セルロースは古来、植物性繊維として食用に供されており、現在では液状食品の分散安定剤や、医薬品賦形剤として広く使用されている。一方、再生セルロースは、二硫化炭素、水酸化ナトリウム等の化学品溶液、溶剤を取り除き、再生させ、結晶構造を変えたものであり、一部湿式で食品用保形剤として使用されている。結晶形がII型である再生セルロースは、結晶形がI型の天然セルロースから、結晶形が変わることで、粒子が剛直になり、圧縮時の塑性変形性が低下し、成型体に十分な硬度を付与できないので好ましくない。
【0022】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、その平均粒子径が30μmを超え250μm以下である必要がある。平均粒子径が30μm以下であると、セルロース粒子同士が凝集するため、活性成分と混合する際に、活性成分が均一に分散しにくく、得られた成型体の活性成分のばらつきが大きくなりやすく、また、連続生産する際の成型体の重量ばらつきも大きくなる傾向にある。また、平均粒子径が250μmを超えると、流動性の悪い活性成分と混合した処方粉体を連続で圧縮する際に、分離偏析を生じやすい。
本発明の多孔質セルロース凝集体の比表面積は、1.3m2/g〜20m2/gでなければならない。比表面積が1.3m2/g未満であると、圧縮成形性が低くなり、成型体に高い硬度、低い摩損度を付与しにくい。また、比表面積が20m2/gを超えると、セルロースにより失活しやすい活性成分と配合した場合に、セルロースと活性成分の接触面積が過度に大きくなりやすく、活性成分が失活しやすいので好ましくない。
本発明の多孔質セルロース凝集体の安息角は、25°以上44°未満でなければならない。通常、活性成分は、服用した際の胃液・腸液媒体中で拡散し、迅速に薬効を高められるよう調製されるものであり、粉砕を施されたり、元々微粉化しているものが多い。それらは微粉であるが故、流動性が悪いものであるが、セルロース粉末の安息角が44°以上では、流動性が悪い活性成分を多量に配合した場合の混合末の流動性の点で好ましくない。特に数万〜数十万錠/時の高速打錠時における成型体の重量ばらつきが大きくなる傾向がある。安息角は小さいほど流動性がよいが、25〜42°のものが特に優れる。さらに好ましくは25〜40°である。安息角が25°未満であると、活性成分との分離偏析の点で好ましくない。
【0023】
本発明の多孔質セルロース凝集体の見かけ比容積は、2.0〜6.0cm3/gでなければならない。本発明の多孔質セルロース凝集体は、多孔質構造を有するため、従来のものに対し、見かけ比容積のほぼ全域に渡って、硬度、流動性、崩壊性をバランスよく有するものである。高い圧縮成形性を付与するためには見かけ比容積が2.0cm3/g以上、高い流動性を付与するために見かけ比容積が6.0cm3/g以下が好ましい。特に好ましくは、2.5〜5.0cm3/gである。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、DSCにより測定される束縛水量が0.01g以上であることが好ましい。セルロース粒子中には、自由水、束縛水、不凍水の3種類の水が存在するといわれている。ここに示す自由水、束縛水は、それぞれ示差走査熱量分析(DSC)により測定される(PERKIN ELMER製 DSC7を使用し、測定温度−50〜30℃、昇温速度10℃/分において測定)0℃付近のピーク面積、−30〜40℃のピーク面積で示され、不凍水は、DSCでピークが出現しないものに相当し、Karl−Fisher法により測定される全水分量から、自由水、束縛水を引いたものに相当する。束縛水は、多ければ多いほど圧縮成形性が高くなるので好ましく、その上限は特に制限されない。束縛水量は、0.15g以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.20g以上である。
【0024】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、インバースガスクロマトグラフ(IGC:SurfaceMesurement System Ltd.製、303K、相対湿度0%)により測定される表面自由エネルギー(γsd)が、65mJ/m2以下であることが好ましい。セルロース粒子は、その粒子表面に表面自由エネルギーを持つと言われている。表面自由エネルギーは、IGCのカラムに試料を投入し、それに、デカン、ノナン、オクタン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、エタノール、メタン等の極性の異なる有機溶媒ガスを通し、カラム通過時における保持時間から算出される、粒子の表面状態を表すパラメータであり、次式により得られるγsdで表される。
【化1】
上式における各記号は、それぞれ、R:気体定数(Jmol−1K−1)、T:カラム温度(K)、VR0:気体の保持容積(cm3)、NA:アボガドロ定数(mol−1)、γsd:粒子の表面自由エネルギー(mJm−2)、a:吸着成分の分子断面積(m2)、γLd:吸着成分の液体状態の表面張力を示し、表面自由エネルギーγsdは、RTlnVR0(kJ/mol):測定値と、a(γLd)1/2(m2(J/m2)1/2):設定値をプロットした際の傾きとして表される。
表面自由エネルギーは、特に好ましくは、60mJ/m2以下である。この表面自由エネルギーは、セルロース粒子の流動性に寄与するものであり、小さければ小さいほどよく、その下限は特に制限されない。
【0025】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、セルロース粉末を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.1cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が10MPa、20MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持する条件下で得られる円柱状成型体の硬度が、それぞれ60N以上、165N以上であることが好ましい。それぞれの条件において、10MPaの硬度が60N未満、20MPaの硬度が165N未満であると、活性成分を多量に配合し、数万〜数十万錠/時で製した成型体の硬度が低く、摩損や、キャッピング等の打錠障害が発生しやすい。ここに示す錠剤硬度は高ければ高いほどよいが、せいぜい10MPaの硬度が160N、20MPaの硬度が450Nである。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、上記の圧力が20MPaになるまで圧縮して得られる円柱上成型体の硬度が165〜410N、好ましくは200〜410Nである場合に特に優れる。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、上記の方法で、20MPaになるまで圧縮し、目標圧で10秒間保持する条件下で得られる円柱状成型体の崩壊時間は、崩壊性の点で75秒以下であることが好ましい。特に好ましくは50秒以下である。この崩壊時間は短ければ、短いほどよい。通常、活性成分は、服用した際の胃液・腸液媒体中で拡散し、迅速に薬効を高められるよう調製されるものであるが、成型体の崩壊時間が長くなると、成型体からの薬物の溶出が遅くなり、消化管で速やかに吸収されず、即効性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、セルロース粒子を27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得て、得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II36本立て回転盤φ410mm)を使用し、直径8mm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、圧縮力7.5kNで打錠し、得られた重量200mgの成型体の硬度が、50N以上であり、摩損度が1%未満であり、打錠障害がないことが好ましい。
成形性に乏しい薬物を多量に含有する処方に硬度を付与し、摩損度を低減するためには、成形性の高い賦形剤が必要であり、かつ高速で連続成型する際に、重量ばらつきを低減するために、流動性の高い賦形剤が必要となる。このような低成形性の薬物を多量に配合する処方、かつ高速打錠での成型体の製造は、本発明の如く成形性に優れ、かつ流動性がすぐれる賦形剤を配合することで初めて実現しうるものである。成型体の硬度が、50N未満、摩損度が1%以上であると輸送中に摩損、粉立ち、割れ、欠けが生じるため好ましくない。打錠障害が発生すると、不良品が発生するので好ましくない。ここに示す硬度は、高ければ高い程良いが、せいぜい100Nであり、摩損度は低ければ低いほどよい。
【0027】
以下に本発明のセルロース粉末の製造方法について記述する。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、平均粒子径の異なる2種以上のセルロース分散粒子群と液媒体を含む分散液であって、該セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmであるセルロース分散液を乾燥することで得られる。
本発明で言うセルロース分散粒子群とは、天然セルロース系物質からなる。
天然セルロース系物質とは、植物性でも動物性でもよく、例えば木材、竹、麦わら、稲わら、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等のセルロースを含有する天然物由来の繊維質物質であり、セルロースI型の結晶構造を有していることが好ましい。原料として、上記のうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも可能である。また、精製パルプの形態で使用することが好ましいが、パルプの精製方法には特に制限がなく、溶解パルプ、クラフトパルプ、NBKPパルプ等いずれのパルプを使用してもよい。ここで天然セルロース系物質は、パルプ等の原料を加水分解してもよいし、しなくてもよい。特に加水分解する場合は、酸加水分解であっても、アルカリ酸化分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン等であってもよく、いずれかの方法単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記製法において、セルロース系物質を含む固形分を、その後適当な媒体に分散させる場合に用いられる媒体としては、水が好ましいが、工業的に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、水及び/又は有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類が挙げられる。特に、有機溶剤は、医薬品に使用されるものが好ましく、「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に溶剤として分類されるものが挙げられる。水、有機溶剤はそれを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由であり、1種の媒体で一旦分散させたのち、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
【0029】
本発明の多孔質セルロース凝集体は、平均粒子径の異なる2種以上のセルロース分散粒子群を混合したセルロース分散液を乾燥することにより得られる。それぞれのセルロース分散粒子群の平均粒子径には、特に制限はないが、1〜110μmが好ましい。本発明は、この平均粒子径範囲にある平均粒子径が異なる2種以上のセルロース分散粒子群を含んでいればよく、それぞれが同じ平均粒子径である場合以外であれば、どの平均粒子径を有するものを配合してもよい。例えば、平均粒子径が異なる2種のセルロース分散粒子群を混合する際には、平均粒子径が大きいものについて10〜110μm、小さいものは、大きいものの平均粒子径に対し0.005〜0.99倍の平均粒子径であることが好ましい。さらに好ましくは、小さいものが大きい平均粒子径に対し0.01〜0.8倍の平均粒子径であることが好ましい。最も好ましくは、小さいものが大きい平均粒子径に対し0.01〜0.7倍の平均粒子径であることが好ましい。
2種以上の平均粒子径の異なるセルロース分散粒子群を混合することは、セルロース分散液を乾燥する際に、平均粒子径の小さいセルロース分散粒子が、平均粒子径の大きいセルロース分散粒子成分間に入ることにより、平均粒子径の大きいセルロース分散粒子同士の過度の凝集を抑制することに寄与し、それぞれを一次粒子とする二次凝集構造を取り、粒子内に大きな細孔容積を付与することができる。
平均粒子径の大きいセルロース粒子群と、平均粒子径が小さいセルロース粒子群の重量比は、その目的にもよるが通常5対95〜95対5の範囲が好ましい。より好ましくは、10対90〜90対10であり、さらに好ましくは、20対80〜80対20である。適当な重量比を選ぶことにより、本発明の細孔容積の値を制御することができる。
【0030】
また、このとき上記の平均粒子径の大きいセルロース粒子組成物の粒子形状は、その長径と短径のそれぞれの平均値の比(L/D)が2.0以上であるものを用いることが好ましい。L/Dが大きいほど、乾燥時の過度の粒子凝集を抑制する効果が大きく、そのため、粒子内に大きい細孔容積を付与することに寄与する。
上記の2種以上の異なる平均粒子径のセルロース粒子組成物から、その分散液を得る方法には、特に制限はない。i)平均粒子径の異なる複数のセルロース粒子組成物を、各々、別個に調製し、これら複数のセルロース粒子分散液を混合する方法、ii)一種のセルロース粒子組成物から、一部を処理し平均粒子径の異なるものを調製し混合する方法、iii)一つの平均粒子径を有するセルロース粒子組成物を分画し、それぞれに処理を施し、それぞれ平均粒子径の異なるものを調製し混合する方法、のいずれの方法を用いてもよい。i〜iii)の製造方法は1種を単独で用いても、2種以上を併用することも自由である。ここで施す処理方法は、湿式であっても、乾式であってもよく、それぞれ湿式で得られたもの同士を乾燥前に混合しても、それぞれ乾式で得られたもの同士を乾燥前に混合しても、湿式又は乾式で得られたものを組み合わせてもよい。公知の方法等特に制限はないが、例えば摩砕・粉砕してもよく、篩を使用した分級、サイクロン、遠心分離機を用いた遠心分離等の方法を用いてもよく、それらを組み合わせた方法でもよい。
【0031】
摩砕方法としては、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の撹拌翼を使用する摩砕方法、ラインミキサー等の噴流式撹拌摩砕方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する摩砕方法、例えばニーダーのような軸回転押し出し式の摩砕方法でもよい。粉砕方法としては、スクリーンミル、ハンマーミル等のスクリーン式粉砕方法、フラッシュミル等の翼回転せん断スクリーン式粉砕方法、ジェットミル等の気流式粉砕方法、ボールミル、振動ボールミル等のボール式粉砕方法、翼攪拌式粉砕方法等のいずれでもよい。
上記操作により得られたセルロース分散粒子集合体は、乾燥前に5〜40重量%濃度の分散液とすることが好ましい。この濃度が5重量%未満であると、得られるセルロース粒子の平均粒子径が小さくなり、自流動性が損なわれやすい。また、この濃度が40重量%を超えると、セルロース粒子の見かけ比容積が小さくなり、圧縮成形性が損なわれやすい。より好ましくは、10〜40重量%であり、さらに好ましくは、15〜40重量%である。
【0032】
また、上記5〜40重量%濃度のセルロース分散液中に存在するセルロース分散粒子の平均粒子径は、1〜110μmであることが好ましい。平均粒子径が110μmを超えると、乾燥後のセルロース粒子が過度に大きくなり、活性成分の種類によっては、それらと混合する際に分離編析を生じる場合がある。一方、平均粒子径が1μm未満であると、乾燥後のセルロース粒子が過度に小さくなり、良好な流動性を保ちにくくなる。より好ましくは、5〜90μmであり、さらに好ましくは10〜80μmである。ここでいう平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(HORIBA製、商品名、LA−910型)で測定される体積粒度分布測定の一般的に用いられる手法により、求めることができる。
上記平均粒子径は、加水分解による原料セルロースの重合度、及び、セルロースの加水分解及び/又は分散工程での攪拌力を調整することにより、所望の範囲に制御することができる。一般に、加水分解溶液の酸、アルカリ濃度、反応温度を高くすると、セルロース重合度が低下し、分散液中のセルロース平均分散粒子径が小さくなる傾向にあり、また、溶液の攪拌力を強めても、セルロース分散粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にある。
乾燥方法についても特に制限はないが、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚乾燥、気流乾燥、真空乾燥のいずれを使用してもよく、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。噴霧乾燥する際の、噴霧方法は、ディスク式、加圧ノズル、加圧二流体ノズル、加圧四流体ノズル等のいずれの噴霧方法でもよく、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記の噴霧乾燥する際には、分散液の表面張力を下げる目的で、微量の水溶性高分子、界面活性剤を添加しても、媒体の気化速度を促進させる目的で発泡剤又は、ガスを分散液に添加してもよい。
【0033】
水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アラビアゴム、デンプン等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される水溶性高分子類が挙げられ、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に界面活性剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
発泡剤としては、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、バレイショデンプン、無水クエン酸、薬用石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウマクロゴール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される発泡剤類が挙げられ、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、医薬品添加剤以外にも、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の熱分解しガスを発生する重炭酸塩類、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の酸と反応してガスを発生する炭酸塩類を使用してもよい。ただし、上記の炭酸塩類を使用する際には、酸とともに使用する必要がある。酸としては、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アジピン酸等の有機酸類、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等のプロトン酸、フッ化ホウ素等のルイス酸等の酸物質が挙げられ、医薬品・食品として使用されるものが好ましいが、それ以外でも同様の効果を有する。発泡剤ではなく、窒素、二酸化炭素、液化石油ガス、ジメチルエーテル等のガス類を分散液に含浸してもよい。
これらの水溶性高分子、界面活性剤、ガスを発生する物質は、乾燥前に添加されていればよく、その添加のタイミングには特に制限はない。
【0034】
本発明で言う成型体組成物は、1種以上の活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を含有していればよく、その量に特に制限はないが、通常の使用範囲としては、活性成分は0.001〜99%、本発明のセルロース粉末は1〜99%である。さらに、本発明の成型体組成物は、混合、攪拌、造粒、整粒、打錠等の公知の方法で加工できる。活性成分が0.001%未満であると、治療に有効な量が確保できず、99%を超えると、本発明の多孔質セルロース凝集体が1%未満となり、実用的な硬度、摩損度、崩壊を示す成型体が得られにくい。本発明の成型体組成物は、活性成分、セルロース粒子の他に、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤を含むことも自由である。
本発明で言う成型体組成物の例としては、医薬品に用いる場合、錠剤、散剤(打錠用散剤を含む)、細粒剤(打錠用細粒剤を含む)、顆粒剤、エキス剤、丸剤等が挙げられる。またこれらはコーティングを施していてもよく、形状、重量に関わらず、一般的な製法で調製されるものであれば限定されるものではない。医薬品に限らず、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒等に利用されるものも本発明に含まれる。
本発明で言う活性成分とは、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤をいい、固形状(粉体状、結晶状等)、油状、液状、半固形状などいずれの形態でもよい、また溶出制御、苦味低減などの目的でコーティングを施したものであってもよい。活性成分は単独で使用しても、複数を併用してもよい。活性成分を媒体に溶解、懸濁、乳化して使用してもよい。
【0035】
例えば医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
本発明で使用される医薬品有効成分としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、塩酸イソチベンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、クエン酸ペントキシベリン(クエン酸カルベタペンタン)、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファン・フェノールフタリン酸、ヒベンズ酸チペピジン、フェンジゾ酸クロペラスチン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ノスカピン、ノスカピン、dl−塩酸メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB6及びその誘導体並びにそれらの塩類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル(乾燥水酸化アルミニウムゲルとして)、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、ピロキシカム、アズレン、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェン、塩酸ジフェニドール、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸プロメタジン、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート、タンニン酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸フェネタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸ジフェンヒドラミン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、臭化水素酸スポコラミン、塩酸オキシフェンサイクリミン、塩酸ジサイクロミン、塩酸メチキセン、臭化メチルアトロピン、臭化メチルアニソトロピン、臭化メチルスポコラミン、臭化メチル−1−ヒヨスチアミン、臭化メチルベナクチジウム、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸、シュウ酸セシウム、ピペリジルアセチルアミノ安息香酸エチル、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、炭酸水素ナトリウム、フルスルチアミン、硝酸イソソルバイド、エフェドリン、セファレキシン、アンピシリン、スルフィキサゾール、スクラルファート、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタンを含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、地竜、チクセツニンジン、ニンジン、カノコソウ、ボタンピ、サンショウ及びこれらのエキス等、インスリン、バゾプレッシン、インターフェロン、ウロキナーゼ、セラチオペプチターゼ、ソマトスタチン等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0036】
本発明でいう水難溶性活性成分とは、例えば、医薬品活性成分であり、第14改正日本薬局方において、溶質1gを溶かすのに必要な水量が30mL以上必要であるもののことを指す。水に難溶性であれば、昇華性、表面極性の程度にかかわらず、本発明の組成物に活性成分として配合することで効果が得られるものである。
水難溶性で固体状の活性成分としては、例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、安息香酸、エテンザミド、カフェイン、カンフル、キニーネ、グルコン酸カルシウム、ジメチルカプロール、スルフアミン、テオフィリン、テオプロミン、リボフラビン、メフェネシン、フェノバービタル、アミノフィリン、チオアセタゾン、クエルセチン、ルチン、サリチル酸、テオフィリンナトリウム塩、ピラピタール、塩酸キニーネ、イルガピリン、ジキトキシン、グリセオフルビン、フェナセチン等の解熱鎮痛薬、神経系医薬、鎮静催眠薬、筋弛緩剤、血圧硬化剤、抗ヒスタミン剤等、アセチルスピラマイシン、アンピシリン、エリスロマイシン、キサタマイシン、クロラムフェニコール、トリアセチルオレアンドマイシン、ナイスタチン、硫酸コリスチン等の抗生物質、メチルテストステロン、メチルアンドロステトロンジオール、プロゲステロン、エストラジオールベンゾエイト、エチニレストラジオール、デオキシコルチコステロン・アセテート、コーチゾンアセテート、ハイドロコーチゾン、ハイドロコーチゾンアセテート、ブレドニゾロン等のステロイドホルモン剤、ジエンストロール、ヘキサストロール、ジエチルスチルベステロール、ジエチルスチルベステロールジブロヒオネイト、クロロトリアニセン等の非ステロイド系卵黄ホルモン剤、その他脂溶性ビタミン類等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0037】
本発明で使用される、水難溶性の油状、液状活性成分としては、例えば、テプレノン、インドメタシン・ファルネシル、メナテトレノン、フィトナジオン、ビタミンA油、フェニペントール、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類、補酵素Q類、オレンジ油、レモン油、ペパーミント油等の油溶性香味料等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等が挙げられる。ビタミンEには種々の同族体、誘導体があるが、常温で液状であれば特に限定されない。例えばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0038】
水難溶性の半固形状活性成分としては、例えば地竜、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ボタンピ、カノコソウ、サンショウ、ショウキョウ、チンピ、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネカ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンヒ、ビャクジュツ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の漢方又は生薬エキス類、カキ肉エキス、プロポリス及びプロポリス抽出物、補酵素Q類等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。本発明の固形製剤組成物は、上記の水難溶性活性成分に加えて、さらに他の生理活性成分を添加してもよい。
本発明で使用される微粉砕された活性成分は、水難溶性の固体状活性成分の分散性を改善する、微量で薬効を有する活性成分の混合均一性を改善する等の目的で1〜40μm以下に微粉砕したものを言う。活性成分の平均粒子径が小さいほど本発明の効果は大きくなる。活性成分の平均粒子径としては、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは、1〜10μmである。
【0039】
本発明でいう昇華性の活性成分とは、昇華性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、常温で固体状であっても、液体状であっても、半固体状であっても、その状態はいずれでもよい。
昇華性の活性成分としては、例えば、安息香酸、エテンザミド、カフェイン、カンフル、サリチル酸、フェナセチン、イブプロフェン等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載される昇華性の医薬品薬効成分等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。本発明の固形製剤組成物は、上記の昇華性活性成分に加えて、さらに他の活性成分を添加してもよい。
本発明で使用される、常温で液状の活性成分としては、例えば、テプレノン、インドメタシン・ファルネシル、メナテトレノン、フィトナジオン、ビタミンA油、フェニペントール、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類、補酵素Q類、オレンジ油、レモン油、ペパーミント油等の油溶性香味料等の「日本薬局方」、「局外基」、「USP」、「NF」、「EP」に記載の医薬品薬効成分等が挙げられる。ビタミンEには種々の同族体、誘導体があるが、常温で液状であれば特に限定されない。例えばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
本発明で使用される、常温で半固形状活性成分としては、例えば地竜、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ボタンピ、カノコソウ、サンショウ、ショウキョウ、チンピ、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネカ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンヒ、ビャクジュツ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の漢方又は生薬エキス類、カキ肉エキス、プロポリス及びプロポリス抽出物、補酵素Q類等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0040】
賦形剤としては、アクリル酸デンプン、L−アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、あめ(粉)、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、軽石粒、イノシトール、エチルセルロース、エチレン酢酸ビニルコポリマー、塩化ナトリウム、オリーブ油、カオリン、カカオ脂、カゼイン、果糖、軽石粒、カルメロース、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥酵母、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥硫酸ナトリウム、乾燥硫酸マグネシウム、カンテン、カンテン末、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリセリン、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、L−グルタミン、クレー、クレー3、クレー粒、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイヒ末、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、結晶セルロース(粒)、ゲンマイコウジ、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、ゴマ油、小麦粉、コムギデンプン、小麦胚芽粉、コメコ、コメデンプン、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸フタル酸セルロース、サフラワー油、サラシミツロウ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、β―シクロデキストリン、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、ジメチルポリシロキサン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム・ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化マグネシウム、スクラワン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、ダイズ硬化油、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、精製白糖球状顆粒、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール1000モノセチルエーテル、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、第三リン酸カルシウム、ダイズ油、大豆不ケン化物、大豆レシチン、脱脂粉乳、タルク、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、中性無水硫酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、二酸化ケイ素、乳酸カルシウム、乳糖、乳糖造粒物、パーフィラー101、白色セラック、白色ワセリン、ハクド、白糖、白糖・デンプン球状顆粒、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦芽葉青汁乾燥粉末、ハチミツ、パラフィン、バレイショデンプン、半消化体デンプン、人血清アルブミン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フィチン酸、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、部分アルファー化デンプン、プルラン、プロピレングリコール、粉末還元麦芽糖水飴、粉末セルロース、ペクチン、ベントナイト、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、マルチトール、マルトース、D−マンニトール、水アメ、ミリスチン酸イソプロピル、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、綿実粉、綿実油、モクロウ、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、薬用炭、ラッカセイ油、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、粒状トウモトコシデンプン、流動パラフィン、dl−リンゴ酸、リン酸−水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に賦形剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0041】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に崩壊剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に結合剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0042】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に流動化剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に滑沢剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に矯味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に着香剤、香料として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビン等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に着色剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等の「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)に甘味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0043】
以下に1種以上の活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を主成分とする錠剤の製造方法について記述するが、これは一例であって、本発明の効果は、以下の方法に制限されるものではない。方法としては、活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体を混合した後、圧縮成型する方法が採れる。この際に、活性成分以外に、必要に応じて他の添加剤を配合してもよく、他の添加剤としては、例えば、上記に示す賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶解補助剤の成分から選ばれる1種以上を配合してもよい。
各成分の添加順序には、特に制限がなく、i)活性成分と本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じ他の添加剤を一括混合し圧縮成型する方法、ii)活性成分と、流動化剤及び/又は滑沢剤等の添加剤を前処理混合し、本発明の多孔質セルロース凝集体と、必要に応じ他の添加剤を混合した後、圧縮成型する方法、のいずれでもよい。i)、ii)により得られた圧縮成型用混合末に、滑沢剤を添加し、さらに混合した後、圧縮成型してもよい。
【0044】
特に水に難溶性の活性成分を使用する際は、以下の製造方法を採ることができる。製造方法としては、例えば、
i)活性成分に粉砕を施すか、又はそのまま使用し、本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じてその他の成分と混合し圧縮成型する方法、
ii)活性成分を水及び/又は有機溶媒及び/又は溶解補助剤に溶解又は分散させた後、必要に応じて本発明で用いる多孔質セルロース凝集体及び/又は他の添加剤に吸着させ、必要に応じて本発明の多孔質セルロース凝集体及び/又は他の添加剤と混合し、必要に応じて水及び/又は有機溶媒を留去し、圧縮成型する方法のいずれでもよい。
i)の方法の場合には、活性成分に流動化剤等の添加剤を前処理混合した後、本発明の多孔質セルロース凝集体と必要に応じてその他の成分と混合し圧縮成型すると、成形性、流動性の点で好ましい。
圧縮成型前の活性成分の結晶形は製剤前の状態と同じであっても、異なってもよいが、安定性の点で同じであることが好ましい。水に難溶性の活性成分を使用する際は、特に溶解補助剤として、水溶性高分子、界面活性剤を併用し、媒体に分散させることが効果的である。ここでいう他の添加剤とは、本発明の多孔質セルロース凝集体以外の添加剤であり、例えば上記に示す賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶解補助剤等の添加剤のことである。これらの添加剤は単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。特にii)の方法の場合には、水に難溶性、不溶性の活性成分を一旦溶解又は分散させる工程を経るため、活性成分の溶出改善の効果もある。特に医薬品活性成分の分散体として、ポリエチレングリコール等の液状分散体を併用する際は、元々の活性成分が結晶粉末であっても、それを分散させた分散体は液状又は半固形状となるため、本発明の多孔質セルロース凝集体のように圧縮成形性、流動性に優れるものでないと錠剤化できない。また、医薬品活性成分の分散体として、ポリエチレングリコール等を使用する際は、活性成分が体内に吸収されたときに、血中においてポリエチレングリコールで被覆された構造をとるといわれており、肝臓で代謝され易い活性成分の薬効を持続させる効果も期待される。
【0045】
各成分の添加方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、小型吸引輸送装置、空気輸送装置、バケットコンベヤ、圧送式輸送装置、バキュームコンベヤ、振動式定量フィーダー、スプレー、漏斗等を用いて連続的に添加しても、一括投入してもよい。活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、それらを多孔質セルロース凝集体又は他の添加剤に噴霧する方法を採用することで、最終製品中の活性成分濃度ばらつきが小さくなるので好ましい。噴霧方法としては、圧力ノズル、二流体ノズル、四流体ノズル、回転ディスク、超音波ノズル等を使用し活性成分溶液/分散液を噴霧する方法、管状ノズルから活性成分溶液/分散液を滴下する方法のいずれでもよい。活性成分溶液/分散液を添加する際には、多孔質セルロース凝集体粒子表面に活性成分を積層させるようなレイヤリング、コーティングを施しても、多孔質セルロース凝集体粒子内部に担持させてもよく、活性成分溶液/分散液を結合液として多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロースと他の添加剤の混合物をマトリックス状に造粒させてもよい。レイヤリング、コーティングは湿式であっても、乾式であってもよい。
混合方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナタック型混合機などの容器回転式混合機、又は高速撹拌型、万能撹拌型、リボン型、パグ型、ナウター型混合機などの撹拌式混合機、高速流動式混合機、ドラム式混合機、流動層式混合機を使用してもよい。またシェーカー等の容器振とう式混合機を使用することもできる。
組成物の圧縮成形方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、臼と杵を使用し所望の形状に圧縮成形する方法、予めシート状に圧縮成形した後所望の形状に割断する方法でもよい。圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、ブリケッティングローラー型プレス機、平滑ローラー型プレス機等のローラー式プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機等の圧縮機を使用できる。
【0046】
活性成分を媒体に溶解又は分散する方法としては、通常行われる溶解、分散方法であれば特に制限はないが、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の撹拌翼を使用する撹拌混合方法、ラインミキサー等の噴流式撹拌混合方法、気体吹き込み式の撹拌混合方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する混合方法でも、シェーカーを使用する容器振とう式混合方法等を用いてもよい。
上記の製造方法において使用する溶剤としては、医薬品に使用されるものであれば、特に制限されるものではないが、例えば水及び/又は有機溶剤を使用してもよい。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に溶剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由であり、1種の媒体で一旦分散させたのち、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
【0047】
溶解補助剤としての水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン糊等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される水溶性高分子が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
溶解補助剤としての油脂としては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ショ糖エステル、流動パラフィン等のパラフィン類、カルナウバロウ、硬化ヒマシ油等の硬化油類、ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載される油脂が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
溶解補助剤としての界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に界面活性剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0048】
本発明でいう錠剤とは、本発明の多孔質セルロース凝集体と、1種以上の活性成分と必要に応じて他の添加剤を含んだものであって、圧縮成形により得られ得る成型体をいう。本発明の多孔質セルロース凝集体を配合した錠剤用組成物は、特に、複雑な工程を経ずに直接打錠法のような簡便な方法で実用硬度が得られるものであるが、必要に応じて乾式顆粒圧縮法、湿式顆粒圧縮法、後末法、予め圧縮成形した錠剤を内核とする多核錠、予め圧縮した複数の成型体を重ねて再度圧縮する多層錠の製造方法等のいずれかの製造方法を使用してもよい。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、圧縮成形性、自流動性、崩壊性の賦形剤として要求される諸物性に優れるので、特に錠剤硬度が出にくく、錠剤表面の割れ、かけ、内部からの剥離、クラック等の打錠障害を生じやすい、薬物を多種、大量に含む錠剤、例えば大衆薬、漢方等のエキス粉末配合錠剤、小型の錠剤、エッジのくびれ等の圧縮圧が均等にかかり難い箇所を有するような円形でない変形錠剤、打圧・賦形剤との摩擦により失活し易い酵素・蛋白等の薬物、コーティング顆粒含有錠剤等に有効である。また、本発明のセルロース粉末は、圧縮成形性、崩壊性に優れるため、比較的低い圧縮圧で実用的な摩損度を示す錠剤が得られる。そのため、錠剤内に空隙(導水管)を維持できるので、口腔内で迅速に崩壊させるような口腔内崩壊錠にも有効である。さらに、数種の組成の成分を一段回又は他段階で圧縮成型する多層錠、有核錠に関しては、上記の硬度付与、一般的な打錠障害の抑制に加え、層間の剥離、クラックを抑制する効果もある。本発明の多孔質セルロース凝集体は、一次粒子が凝集した二次凝集構造を有するため、粒子自体の分割性にも優れ、割線錠等に使用した場合には、錠剤を均一に分割し易くなる。さらに、本発明の多孔質セルロース凝集体は発達した多孔質構造を有し、セルロース粒子自体が微粒子状薬物、懸濁液状薬物、溶液状成分の保持性に優れるため、それを使用した錠剤も固、懸濁液、溶液状成分の保持性に優れる。そのため、錠剤に懸濁液状、溶液状の成分をレイヤリング、コーティング錠剤、さらに糖、炭酸カルシウム等の成分を懸濁状態で錠剤表面に積層させる糖衣錠剤等のレイヤリング、コーティング層、糖衣層の剥離防止、補強に使用することも有効である。
【0049】
次に1種以上の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子を含む組成物の使用方法について説明する。ここまでに説明した方法で得られる固形、液状、半固形状の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子組成物は、粉末又は顆粒状で固形製剤として使用しても、粉末又は顆粒状組成物にさらにコーティング剤をコーティングしコーティング粉末又は顆粒状固形製剤として使用してもよい。ここで得られたコーティングを施した/施さない粉末又は顆粒状組成物は、カプセルに充填し使用してもよく、それらを圧縮成型し錠剤型固形製剤として使用してもよい。さらにカプセル又は、錠剤にコーティングを施して使用してもよい。
ここでコーティングを施す場合のコーティング剤としては、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム末、エチルセルロース、
エチルセルロース水分散液、オクチルデシルトリグリセリド、オリブ油、カオリン、カカオ脂、カゴソウ、カスターワックス、カラメル、カルナバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥乳状白ラック、乾燥メタクリル酸コポリマー、寒梅粉、魚鱗粉、金箔、銀箔、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、軽質流動パラフィン、鯨ロウ、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、合成ワックス、高ブドウ糖水飴、硬ロウ、コハク化ゼラチン、小麦粉、コムギデンプン、コメデンプン、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、サラシミツロウ、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、酸化ケイ素混合物、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、ジンコウ末、水酸化アルミニウムゲル、水素添加ロジングリセリンエステル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、ゼイン、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、セッコウ、ゼラチン、セラック、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、第三リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、単シロップ、中金箔、沈降炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、テルペン樹脂、デンプン(溶性)、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トリアセチン、乳酸カルシウム、白色セラック、白糖、蜂蜜、ハードファット、パラフィン、パール末、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロース・酸化チタン・ポリエチレングリコール混合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ピペロニルブトキシド、ヒマシ油、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブリツフタリルブチルグリコレート、ブドウ糖、部分アルファー化デンプン、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルセルロース混合物、プルラン、プロピレングリコース、粉糖、ベントナイト、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリエチレングリコール、末端水酸基置換メチルポリシロキサンシリコーン樹脂共重合体、D−マンニトール、水飴、ミツロウ、ミリスチルアルコール、無水ケイ酸水和物、無水フタル酸、無水リン酸水素カルシウム、メタクリル酸コポリマー、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、モクロウ、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、モンタン酸エステルワックス、薬用炭、ラウロマクロゴール、硫酸カルシウム、流動クマロン樹脂、流動パラフィン、dl−リンゴ酸、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、ロジン等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社(株)発行)に記載されるコーティング剤が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0050】
本発明の多孔質セルロース凝集体は発達した多孔質構造を有し、粒子自体が薬物の保持性に優れるため、薬物を細孔内に担持たせた粒子をそのまま細粒として使用しても、造粒して顆粒として使用しても、それらを圧縮成形してもよい。それらの細粒、顆粒、錠剤は、さらにその上にコーティングしてもよい。担持方法は、公知の方法であれば特に制限がないが、i)微粒子状薬物と混合し、細孔内に担持させる方法、ii)粉末状薬物と高シア化で混合し、強制的に細孔内に担持させる方法、iii)一旦溶液又は分散液とした薬物と混合し、細孔内に担持たせた後、必要に応じ乾燥し担持させる方法、iv)昇華性の薬物と混合し、加熱及び/又は減圧することで細孔内に昇華吸着させる方法、v)加熱前又は加熱中に薬物と混合し、溶融させたものを細孔内に担持させる方法のいずれの方法でもよく、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の多孔質セルロース凝集体は、発達した細孔構造を有し、適度に保水性、保油性を有するので賦形剤以外に、レイヤリング、コーティング用の核粒子としても使用でき、その際には、レイヤリング、コーティング工程において、粒子間の凝集を抑制する効果がある。レイヤリング、コーティングは乾式であっても、湿式であってもよい。
また、活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物を担体としたディッピングの如く、活性成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させ、活性成分を保持させる方法がとれる。活性成分種、濃度等の条件によるが、かかるディッピング等の液浸漬方法でも、実用的に活性成分の均一性が保たれ、また、上記噴霧に比べ、工程が簡略である点で優れている。
さらに、活性成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、多孔質セルロース凝集体粒子又は多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物を担体として、活性成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させた後、その分散液を噴霧乾燥し、複合体とする方法を採ってもよい。
活性成分溶液/分散液を添加前後の多孔質セルロース凝集体粒子又は、多孔質セルロース凝集体粒子と他の添加剤の混合物は、それぞれの単位粒子が個々に分散した状態であっても、凝集した造粒物の形態をとっていてもよい。
【0051】
製造工程において造粒を経る場合の造粒方法としては、乾式造粒、湿式造粒、加熱造粒、噴霧造粒、マイクロカプセル化がある。湿式造粒造粒法は、具体的には流動層造粒法、攪拌造粒法、押し出し造粒法、破砕造粒法、転動造粒法が有効であり、流動層造粒法では、流動層造粒装置の中で、流動化された粉体に結合液を噴霧して造粒する。攪拌造粒法では、結合液を添加しながら、混合槽内で攪拌羽根を回転させることにより、粉体の混合、練合、造粒が密閉構造の中で同時に行われる。押し出し造粒法では、結合液の添加によって練合された湿潤塊をスクリュー式やバスケット式等の方法で、適当な大きさのスクリーンから強制的に押し出すことにより造粒する。破砕造粒法では、結合液の添加によって練合された湿潤塊を造粒機の回転刃で剪断、破砕し、その遠心力によって外周のスクリーンからはじき出すことにより造粒する。転動造粒法では、回転するローターの遠心力によって転動し、この時スプレーガンから噴霧される結合液によって、雪だるま式に粒径の均一な球形顆粒を成長させていくことにより造粒する。
造粒物の乾燥方法は、熱風加熱型(棚乾燥、真空乾燥、流動層乾燥)、伝導伝熱型(平鍋型、棚段箱型、ドラム型)や、凍結乾燥のようないずれかの方法を使用することもできる。熱風加熱型では、材料を熱風を直接接触させ、同時に蒸発水分を除去する。伝導伝熱型では、伝熱壁を通して材料を間接的に加熱させる。凍結乾燥では、材料を−10〜40℃で凍結させておき、次に高真空下(1.3×10−5〜2.6×10−4MPa)で加温することによって、水を昇華させて除去する。
例えば、i)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子を混合したもの、又は1種以上の活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合したものを通常の方法で圧縮成型する(直接打錠法)。あるいは、ii)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合した後、造粒して顆粒とし、通常の方法で圧縮成型してもよい(湿式/乾式顆粒圧縮法)。さらに、iii)活性成分と多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合し、造粒して顆粒とし、さらに多孔質セルロース凝集体粒子と、必要に応じて他の添加剤を混合し、通常の方法で圧縮成型してもよい(湿式/乾式顆粒後末圧縮法)。
1種以上の活性成分、多孔質セルロース凝集体、他の添加剤、又は顆粒の添加方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、小型吸引輸送装置、空気輸送装置、バケットコンベヤ、圧送式輸送装置、バキュームコンベヤ、振動式定量フィーダー、スプレー、漏斗等を用いて連続的に添加しても、一括投入してもよい。
上記の如く圧縮成形し、錠剤にして使用する以外に、本発明の錠剤用組成物は、固体、液状成分の保持性にも優れるため、特に流動性、耐ブロッキング性、耐凝集性を改善する目的で顆粒剤又は散剤として使用してもよい。顆粒剤、散剤の製造方法としては、例えば、乾式造粒、湿式造粒、加熱造粒、噴霧乾燥、マイクロカプセル化のいずれを使用してもよい。
【0052】
本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明の実施態様は、これら実施例の記載に限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)セルロース分散粒子の平均粒子径(μm)
水で分散した試料を、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、商品名、LA−910)を使用し、超音波処理なし、屈折率1.20で測定した累積体積50%粒子として表した。ただし、この測定値は、以下のロータップ式で得られる乾燥粒子の粒度分布と測定原理が全く異なるため、必ずしも相関するものではない。通常、セルロース分散粒子は、細長い繊維状の形態を取るものであり、レーザー回折により測定される平均粒子径は、繊維状粒子を、その長径の80%の長さを直径とする球とみなし、その直径に対する体積頻度で測定されるものである。それに対し、ロータップ式で得られる平均粒子径は、得られた粉末を篩上で振とうさせ、分画し、粒径に対する重量頻度を測定するものであり、ここでは、粒子の分画は、繊維の短径による。従って、一般的に、繊維の長径に依存するレーザー回折式の方が、繊維の短径に依存するロータップ式に対し、大きい値となる。
(2)結晶形
X線ディフラクトメーターによりX線回折を行い、そのX線パターンにより判定した。
(3)乾燥粒子の平均粒子径(μm)
粉体試料の平均粒子径はロータップ式篩振盪機(平工作所製、商品名、シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより粒度分布を測定し、累積重量50%粒径として表した。
(4)比表面積(m2/g)
マイクロメリティクス(株)製、商品名、TriSTARを用い、吸着ガスとして窒素を使用しBET法により測定した。各試料粉体を約1gづつセルに仕込み測定した。測定に用いた各試料粉体は、110℃で3時間減圧乾燥したものを使用した。
(5)粒子内細孔容積(cm3/g)、中央細孔径(μm)
島津製作所(株)製、商品名、オートポア9520型を用い、水銀ポロシメトリーにより細孔分布を求めた。測定に用いた各試料粉体は、室温で15時間減圧乾燥したものを使用した。初期圧20kPaの測定により、得られた細孔分布から、細孔径0.1〜10μmの範囲にある「明確なピーク部分」を粒子内細孔容積として計算した。また、得られた細孔分布から、細孔径0.1〜10μmに見られる「明確なピーク」のピークトップを中央細孔径とし値を読み取った。
【0053】
(6)見かけ比容積(cm3/g)
100cm3のメスシリンダーを使用し、粉体試料を定量フィーダーなどを用いて2〜3分かけて粗充填し、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平になるようにならし、その容積を読み取り、これを粉体試料の重量で割りかえした値である。粉体の重量は、容積が70〜100cm3になるよう適宜設定した。
(7)SEMによる粒子表面及び細孔の観察
各セルロース試料を、カーボンテープを貼った試料台に載せ、白金パラジウムを真空蒸着(この際の蒸着膜の膜厚は20nm以下)し、日本分光(株)製商品名、JSM−5510LVを使用し、加速電圧6kV、倍率250、1500倍で観察した場合に、一次粒子が連続して凝集し、一次粒子の境界が明確であり、確認できる細孔の中央細孔径が0.1μm以上である一次粒子が凝集した二次凝集粒子構造を有するものを○とし、それ以外の構造を取るものを×とした。
(8)水中でのセルロース粒子の崩壊
各セルロース試料0.1gをガラス試験管に導入し、さらに10gの純水を投入し、超音波で1分間処理した後、超音波処理の有無でマイクロスコープ(キーエンス製、商品名、VH−7000)で観察し、粒子の崩壊の有無を観察した。崩壊が観察されたものを○とし、観察されなかったものを×とした。
(9)薬物との反応性
アスピリン(局方結晶アスピリンを小型粉砕機φ0.5mm、1パス処理)と、各セルロースサンプルを乾式で、5/5(全量0.5g)で粉粉ブレンドしたものを、ガラス製サンプル瓶中で混合し、オーブン(タバイエスペック製、商品名、パーフェクトオーブン)に、密栓(60℃)で2週間保存した後、分解率を測定した。硫酸第二鉄(III)ナトリウム・12水和物8gを100mLのメスフラスコに導入し、純水を加え100mLとし、呈色試験液とした。保存後のアスピリン0.25g(粉体ブレンド品は全量で0.5g)を、50mLのメスフラスコに導入し、エタノールを加えて50mLとし、5分間振とうした。得られたエタノール溶液をろ過し、ろ液100mLのメスフラスコに移し、エタノールを加えて100mLとした。このエタノール溶液1mLと、上記呈色試験液1mLを50mLのメスフラスコに導入し、純水を加えて50mLとしたものを、紫外吸光度測定器(日本分光(株)製)を用いて、波長532nmの吸光度を測定した。分解率は、
分解率=(1−(保存後の吸光度/保存前の吸光度))x100(%)
として計算した。アスピリン単独の分解率である15%を超える分解率を示すものを反応性ありと判定した。
(10)安息角(°)
杉原式安息角測定器(スリットサイズ奥行10x幅50x高さ140mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、セルロース粉末を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。
【0054】
(11)セルロース試料単独の圧縮成型
各セルロース粉末を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.1cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が10MPa、20MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。
(12)処方粉体のロータリー打錠
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、実施例、比較例で得られたセルロース粒子又は粉末を27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得た。ここで各粉体の仕込み全量は25kgであった。得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II、回転盤径φ410mm、36本立て)を使用し、攪拌フィーダーにより処方粉体を供給した。直径8mm、12Rの臼杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、攪圧縮圧7.5kNで打錠し、重量200mgの錠剤を得た。
(13)錠剤質量ばらつき(%)
ロータリー打錠により得られた錠剤20錠の重量を測定し、平均重量と、重量の標準偏差をとり、(標準偏差/平均重量)x100で定義される変動係数(%)から質量ばらつきを評価した。変動係数が小さいほど、ばらつきが小さい。
(14)錠剤硬度(N)
円柱状成型体あるいは錠剤をシュロインゲル硬度計(フロイント産業(株)製、商品名、6D型を用いて、円柱状成型体又は錠剤の直径方向に荷重を加え、破壊し、そのときの荷重を測定した。試料10個の平均値で表した。
(15)崩壊時間(秒)
第14改正日本薬局方、一般試験法、錠剤の崩壊試験法に準じて崩壊試験を行った。円柱状成型体あるいは錠剤について、崩壊試験器(富山産業(株)製、商品名、NT−40HS型、ディスクあり)で、37℃、純水中における崩壊時間として求めた。試料6個の平均値で表した。
(16)錠剤摩損度(重量%)
錠剤20個の重量(Wa)を測定し、これを摩損度試験機(ジャパンマシナリー(株)製、商品名、PTF−3RA型)に入れ、25rpmで4分間回転した後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再び重量(Wb)を測定し、次式より摩損度を計算した。
摩損度=100x(Wa−Wb)/Wa
(17)打錠障害発生率(%)
ロータリー打錠機により得られた錠剤100個を無作為に選び、それらについて目視で観察し、錠剤のわれ(ラミネーション)、欠け(チッピング)、剥離(キャッピング)の個数をカウントし、それらの総数を観察した錠剤個数で割りかえした値(百分率)で示した。
【0055】
実施例1
市販のパルプ(木材由来の天然セルロース溶解パルプ)を細断したものを2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、商品名、30LGL反応器)に入れ攪拌しながら、40℃、48時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロック(この酸不溶解性残渣のセルロース分散粒子の平均粒子径は55μmであった)を得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が25重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを噴霧乾燥(分散液供給速度6kg/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)して、セルロース凝集体Aを得た。セルロース粒子Aの諸物性を表1に示す。
セルロース粒子Aを水銀ポロシメトリーにより細孔分布を測定した結果(図1)、0.1〜10μmに粒子内細孔に由来する「明確なピーク」が確認された。図1に示される10〜50μmに示されるピークは粒子間隙に由来するものである。
また、セルロース凝集体Aを倍率250倍、1500倍で走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果(図3、5)、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が観察され(図3)、一次粒子粒子同士が明確に識別できた(図5)。
また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0056】
実施例2
実施例1と同様の方法で、得られた酸不溶解性残渣を、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、60重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は3μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を60重量部と40重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が10重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース粒子Bを得た。セルロース粒子Bの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0057】
実施例3
実施例1と同様の方法で、得られた酸不溶解性残渣を、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、40重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は8μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を40重量部と60重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が27重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Cを得た。セルロース凝集体Cの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0058】
実施例4
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、24時間とする以外は実施例1と同様の方法で加水分解し、酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は82μmであった)を得た。得られた酸不溶解性残渣は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が16重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Dを得た。セルロース凝集体Dの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0059】
実施例5
実施例4と同様の方法で得られた酸不溶解性残渣を実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、10重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は3μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を10重量部と90重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が35重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Eを得た。セルロース凝集体Eの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0060】
実施例6
加水分解条件を0.14N塩酸水溶液、121℃、1時間とする以外は、実施例1と同様に加水分解し、酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は36μmであった)を得た。得られた酸不溶解性残渣は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。得られた湿フロックの内、50重量%をさらに純水で充分洗浄した後、中和し、再度ろ過し、風乾することにより、フロック状の乾燥物を得た。このフロック状乾燥物を家庭用ミキサーで解砕した後、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用してさらに粉砕し(この時のセルロース粒子径は5μmであった)、粉砕物を得た。得られた粉砕物と前記湿状態の酸不溶解性残渣を50重量部と50重量部(ドライベース)の組成で、90Lポリバケツに導入し、全固形分濃度が30重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、これを実施例1と同様に噴霧乾燥し、セルロース凝集体Fを得た。セルロース凝集体Fの諸物性を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0061】
実施例7
市販のパルプ(コットンリンター由来の天然セルロースクラフトパルプ)を使用し、実施例6と同様に加水分解し、得られた酸不溶解性残渣(酸不溶解性残渣中のセルロース分散粒子の平均粒子径は30μmであった)は実施例1と同様の操作で精製し、湿フロックを得た。この湿フロックの内、90重量%をさらに純水で洗浄、中和した後、プラネタリーミキサーで摩砕した(摩砕した湿フロック中のセルロース分散粒子の平均粒子径は1μmであった)。摩砕した湿フロック及び摩砕しない湿フロックを90重量部対10重量部(ドライベース)の組成で、90Lのポリバケツに導入し、全固形分濃度が30重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、実施例1と同様に乾燥して、セルロース粒子Gを得た。得られたセルロース凝集体Gの諸物性値を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0062】
実施例8
市販の溶解パルプ1kgを細断し、含水分50%の湿潤状態で家庭用ミキサーで2時間解砕し、取り出し、純水で洗浄、ろ過し、残渣を得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は110μmであった)。この残渣を水に分散させた状態で目開き500μmの篩を用いて、粗大粒子を取り除き、再度ろ過し、湿フロックを得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は102μmであった)。これとは別に実施例6と同様の操作で加水分解を行い、酸不溶解製残渣を得、この残渣を水に分散させた状態で目開き75μmの篩を用いて、粗大粒子を取り除き、再度ろ過し湿フロックを得た。この湿フロックを水に分散させ3000Gの遠心力で、沈降させ、沈降成分をろ過し、酸不要財政残渣を得た(このときのセルロース分散粒子の平均粒子径は22μmであった)。加水分解を経ないものと加水分解を経た湿フロックを50重量部対50重量部(ドライベース)の組成で、90Lのポリバケツに導入し、全固形分濃度が39重量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)し、トレーに入れた状態で、60℃、18時間乾燥し、乾燥フロックを得た。この乾燥フロックをフラッシュミルで粉砕し、500μmの篩で粗大粒子を除去し、セルロース凝集体Hを得た。得られたセルロース凝集体Hの諸物性値を表1に示す。
セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、セルロース凝集体Aと同様に、水銀ポロシメトリーによる細孔分布において0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認され、SEM写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確であった。また、水中で粒子の崩壊が観察された。
【0063】
比較例1
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥したセルロース凝集体を、気流式粉砕機(セイシン企業(株)製、商品名、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用し、粉砕し、セルロース粉末I(特開昭63−267731号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Iの諸物性値を表1に示す。
セルロース粉末IをSEMで観察した結果、粒子が粒子内細孔を持たず、一次粒子が単独で存在しているだけで、二次凝集構造をとらず、水中での粒子の崩壊も観察されなかった。
比較例2
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、40時間とし、固形分濃度を8%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)を得た。得られたセルロース粉末Jの諸物性値を表1に示す。
比較例3
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、20時間とし、固形分濃度を6%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末K(WO02/02643の実施例7に相当)を得た。得られたセルロース粉末Kの諸物性値を表1に示す。
比較例4
加水分解条件を4N塩酸水溶液、40℃、48時間とし、固形分濃度を16%として分散し、実施例1と同様に乾燥し、セルロース粉末L(WO02/02643の実施例4に相当)を得た。得られたセルロース粉末Lの諸物性値を表1に示す。
比較例5
FMC社製商品名、「アビセル」PH−200をそのまま、セルロース粉末Mとした。
セルロース粉末Mの諸物性値を表1に示す。
【0064】
比較例6
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥したセルロース粉末と、バンタムミル(細川鉄工所(株)製
使用スクリーン径2mm)で微粉砕した局方アセトアミノフェン(メルクホエイ製)をセルロースが50重量%、アセトアミノフェンが50重量%の組成で、粉体計500gを高速攪拌造粒機(五橋製作所製、商品名、NSK250型)に導入し、攪拌羽根の回転速度を500rpmで1分間回転させることにより、よく混合し、次いで結合液として50重量%エタノール水溶液を245〜255g添加しながら2分間さらに混合し、球状造粒物を得た。得られた造粒物を50℃で12時間乾燥後、粗大粒子として12メッシュ以上の留分を切り捨てた後、アセトアミノフェンをソックスレ−抽出器を使用し、20時間アセトンで抽出した。これを再び50℃で12時間乾燥しセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉末Nの諸物性値を表1に示す。
セルロース粉末Nは、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定結果から、0.1〜10μmの細孔分布において「明確なピーク」が確認された。しかし、SEMによる電子顕微鏡写真(図4、6)から、粒子構造は「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、「一様に緻密に連続したフィルム状の隔壁構造]を持つことが確認された。また、その隔壁は、一次粒子の境界が不明瞭であった。また、粒子は水中で崩壊しなかった。さらに、セルロース粒子Nで得られた円柱状成型体(圧縮圧10MPa)はもろく、摩損がひどかった。
比較例7
市販の溶解パルプを切断し、7%の塩酸水溶液中で105℃、20分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣を中和、洗浄、ろ過、脱水したウェットケーク(水分50重量%)をイソプロピルアルコールに分散し、ろ過、脱水、再分散を2回行い、さらにマントンゴーリンホモジナイザー(日本精機製作所(株)製、商品名、15M型)を使用し、処理圧400kg/cm2で3回分散処理を行い、固形分濃度9.8重量%、水分2.5重量%、イソプロピルアルコールが87.7重量%として、これを窒素循環型スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行った。得られたサンプルをJIS標準篩を用いて250μm以上の粗留分をカットし、セルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉末Oの諸物性値を表1に示す。
セルロース粒子Oは、水銀ポロシメトリーによる細孔分布測定結果から、0.1μm以下に「明確なピーク」が確認された。また、SEMによる電子顕微鏡写真から、粒子構造は「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、「一様に緻密に連続したフィルム状の隔壁構造」をもつことが確認された。その隔壁は、一次粒子の境界が不明瞭であった。また粒子は水中で崩壊せず、アスピリン分解率も薬物単独に対し高かった。
比較例8
実施例6と同様に加水分解した酸不溶解性残渣を、固形分濃度17重量%として分散し、実施例1と同様に乾燥しセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)を得た。セルロース粉末Pの諸物性値を表1に示す。
比較例9
市販のクラフトパルプ2kgを細断し、0.7重量%塩酸水溶液中で、125℃、150分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過・中和し、得られた湿フロックをニーダー中で充分摩砕した後、容積比で1倍のエタノールを加え、圧搾ろ過した後風乾した。風乾後、通常のハンマーミルで解砕し、40メッシュの篩で粗大分を除き、セルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Qの諸物性値を表1に示す。
比較例10
市販の溶解パルプを細断し、10重量%の塩酸水溶液中で105℃、30分間加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過、洗浄、中和し、固形分濃度17重量%の分散液を得た。得られたセルロース分散液をドラム乾燥機(楠木機械製作所(株)製、商品名、KDD−1型、スチーム圧0.35MPa、ドラム温度136℃、ドラム回転数2rpm、ため部水分散体温度100℃)で乾燥後、ハンマーミルで粉砕し、目開き425μmの篩で粗大留分を除き、セルロース粉末R(特開平6−316535号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Rの諸物性値を表1に示す。
【0065】
比較例11
比較例10で得られたセルロース粉末Rをエアジェットシーブを使用して、75μmの篩で大粒子を取り除き、38μmの篩で微細粒子を取り除きセルロース粉末S(特開平11−152233号公報の実施例に相当)を得た。得られたセルロース粉末Sの諸物性値を表1に示す。
比較例12
比較例8で得られたセルロース粉末P1.5kgを高速攪拌造粒機(深江工業(株)製、商品名、FS−10)に仕込み、蒸留水1.5kgを加え、5分間練合した。この湿潤顆粒1.0kgをマルメライザーQ−230(商品名、不二パウダル(株)製)へ移し、500rpmで10分間転動させ、球形化した。同時に蒸留水を20g/minの速度で200g供給した。その後40℃に一昼夜放置し、乾燥後16メッシュ(目開き1mm)でふるい球状核粒子T(特開平07−173050の実施例1に相当)を得た。得られた球状核粒子Tの諸物性値を表1に示す。
セルロース球状核粒子Tは、極度に重質であり、流動性に優れていたが、比表面積、粒子内細孔容積はほとんどなく、10、20MPaの常用される圧縮圧では成型体とはならなかった。
比較例13
市販のクラフトパルプを細断し、10%塩酸水溶液中で105℃、30分の条件で実施例1と同様に加水分解し、得られた酸不溶解性残渣をろ過し、固形分濃度40%の結晶セルロースのケーク状物を得た(このケーク状物の重合度は153)。このケーク状物に万能混合攪拌機((株)三英製作所製、商品名、5DM−03−R型)で1時間摩砕処理を施した。この摩砕処理したケーク状物に水を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名、T.K.ホモミキサーMARKII型)で、固形分12.5重量%のセルロース分散液とし、粒子径、pH、ICを調整した。ここで得られたセルロース分散液中のセルロース分散粒子は、単一の平均粒子径のものであり、その平均粒子径は7μmであった。その分散液を、約8cmの回転盤を用い、回転盤回転数5000rpm、流量6L/hr、吸気温度170℃、排気温度85℃の条件で噴霧乾燥し、目開き177μmの篩で粗大粒子を除去し、セルロース粉末Uを得た。得られたセルロース粉末U(WO02/36168の実施例1に相当)の諸物性値を表1に示す。
セルロース粒子Uも、重質であり、流動性に優れていたが、比表面積、粒子内細孔容積が小さく、10、20MPaの常用される圧縮圧で成型体となったものの、成型体はもろく、取り出し時に摩損し、手で容易に破壊されるものであった。
【0066】
実施例9〜11、比較例14〜23
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製、粉末タイプ)55部、軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株)製、商品名、アエロジル200)を0.25重量部、実施例2、5、7で得られたセルロース粉末B、E及びG、又は、比較例1、2、及び4〜11で得られたセルロース粉末I、J、及びL〜Sを27重量部、クロスポビドン(BASF製、商品名、コリドンCL)2重量部、及び造粒乳糖(ラクトースニュージーランド製、商品名、Super−Tab)15部を100LスケールのV型混合機(ダルトン社製)に入れて、30分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製、植物性)を0.5重量部入れてさらに5分間混合し、処方粉体を得た。ここで各粉体の仕込み全量は25kgであった。得られた処方粉体を、ロータリー打錠機(菊水製作所製、商品名、LIBRA−II 36本立て回転盤径φ410mm)を使用し、直径8mm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転数50rpm、圧縮力7.5kNで打錠し、重量200mgの錠剤を得た。打錠開始後60分後の錠剤をサンプリングし、錠剤重量、硬度、摩損度、打錠障害発生率を測定した。得られた錠剤の諸物性値を表2に示す。
【0067】
実施例12
イブプロフェン−ポリエチレングリコール溶液(量比1:5)をエタノール(和光純薬製、特級)で10倍希釈した溶液状活性成分20gに、セルロース凝集体A5gを投入し、ビーカー中、マグネチックスターラーで5分間混合した。得られた混合溶液を、エバポレーターを使用し、真空乾燥し、粉末を得た。得られた粉末を、0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。圧縮成型した成型体の表面を観察すると、液状成分の浸み出しはなかった。また、100mLの純水を入れ、攪拌子で攪拌したビーカー中に、攪拌子を覆うように、目開き1000μmの篩を入れておき、この篩成型体を篩上に投入し、1分放置した時の様子を観察した。結果を表3に示す。
【0068】
比較例24
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例25
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例26
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例27
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例28
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)とする以外は実施例12と同様に操作し、液状成分含有成型体を製し、液状成分の浸み出し、崩壊試験を実施した。結果を表3に示す。
【0069】
実施例13
アセトアミノフェン((株)エーピーアイ製の粉末タイプを小型粉砕機で目開き0.12μmで3回粉砕して使用。得られたアセトアミノフェンの平均粒径は8μm)30g、タルク(和光純薬(株)製)15gをポリエチレン袋に入れて、3分間手で振とうした後、その混合粉体25.3gに、セルロース凝集体Aを675.6g、100メッシュ乳糖(DMV(株)製)988.1gを秤り取り(混合比率:セルロース/乳糖/アセトアミノフェン/タルク=40/58.5/1/0.5)、容量5リットルのV型混合機(ダルトン社製)に投入し(体積充填率を約65%に設定)、30分間混合した。薬物濃度の変動係数を表4に示す。
混合30分後の処方粉体に、ステアリン酸マグネシウムを15g添加し、同様に5分間混合した後、得られた粉体を0.5g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径1.0cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。成型体の破壊強度を、シュロインゲル硬度計(フロイント産業(株)製、商品名、6D型を用いて、円柱状成型体又は錠剤の直径方向に荷重を加え、破壊し、そのときの荷重を測定した。試料10個の平均値で表した。また、100mLの純水を入れ攪拌子で攪拌したビーカー中に、攪拌子を覆うように、目開き1000μmの篩を入れておき、この篩成型体を篩上に投入し、1分放置した時の様子を観察した。結果を表4に示す。
特開2003−81876号公報で使用している微粉砕したアセトアミノフェンの半分の粒子径となっているが、本発明の多孔質セルロース凝集体を用いることで、混合時の薬物濃度変動係数は30分後で1.0%以下であり極めて良好な混合均一性を達成できている。
【0070】
比較例29
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体の破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例30
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例31
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当、商品名結晶セルロース「アビセル」PH−101に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。特開2003−81876号公報の実施例3と同一の処方で、活性成分である微粉砕したアセトアミノフェンの平均粒径が該公報で使用しているものの半分としたことにより、活性成分の付着凝集性が格段に増加し、該公報実施例3で開示されている混合均一性よりも悪くなっている。
比較例32
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当、商品名結晶セルロース「アビセル」PH−301に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
比較例33
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当、商品名結晶セルロース「セオラス」KG−802に相当)とする以外は実施例13と同様に操作し、30分間混合した時の薬物濃度の変動係数及び成型体破壊強度、崩壊時間を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
実施例14
セルロース凝集体Aを使用し、市販のイブプロフェン(日本薬局方14改訂に水にほとんど溶けないと記載される活性成分)をポリエチレングリコール(三洋化成(株)製、マクロゴール400)に1:5の割合で溶解させ、さらにエタノールで10倍希釈した液をセルロース粒子Aに対し、10重量%となるように添加し、乳鉢中で攪拌した。得られた混合粉末を0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。得られた成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出(溶出試験器(日本分光(株)製、パドル回転数100rpm、局方I液、900mL)を使用し、紫外吸光度測定器で3分後の液の吸光度から溶出率を算出した)、円柱状成型体の崩壊時間を測定した。結果を表5に示す。円柱状成型体からのポリエチレングリコールの浸み出しはなく、崩壊性は良好で3分後の薬物溶出率も高く、素早い溶解性であることを確認した。
【0072】
比較例34
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平1−272643号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体からの液状成分の浸み出しは認められなかったが、溶出試験において3分間崩壊せずに液面浮遊し、崩壊性は悪かった。
比較例35
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体からの液状成分の浸み出しは認められなかったが、溶出試験において3分間崩壊せずに液面浮遊し、崩壊性は悪かった。
比較例36
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
比較例37
セルロース凝集体Aをセルロース粉末Q(特公昭53−127553号公報の実施例1に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
比較例38
セルロース凝集体Aをセルロース粉末J(WO02/02643の実施例5に相当)とする以外は実施例14と同様に操作し、成型体の作製及び、成型体表面の液状成分の浸み出しの観察、円柱状成型体からの薬物溶出率の測定、崩壊性の観察を行った。結果を表5に示す。円柱状成型体表面には液状成分の浸み出しが確認され、錠剤とならず、溶出試験は実施できなかった。
【0073】
実施例15
エテンザミド(エーピーアイ(株)製、粉末グレードを小型粉砕機で粉砕した)をエタノール(和光純薬製、試薬特級)で5:95の割合で溶解させた溶液10mLに、セルロース凝集体G1gを添加し、マグネチックスターラーで3分間攪拌した。得られた分散液をエバポレーターに導入し、完全に脱溶媒し、粉末サンプルを得た。
この粉末を円柱状成型体作製時の圧縮を50MPaとする以外は実施例14と同様に操作し、溶出試験を行った。結果を表6に示す。
比較例39
実施例15の方法で粉砕したエテンザミドのみを溶出試験した。結果を表6に示す。
【0074】
実施例16
セルロース凝集体Aを使用し、市販のイブプロフェン(日本薬局方14改訂に水にほとんど溶けないと記載される活性成分)をエタノール(和光純薬製、試薬特級)に1:5の割合で溶解させた液をセルロース凝集体Aに対し、10重量%となるように添加し、乳鉢中で攪拌した。得られた湿混合粉末をエバポレーターを使用し、完全にエタノールを除去し、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を0.2g秤り取り、臼(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの円形平面杵(菊水製作所製、材質SUS2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮し(アイコーエンジニアリング製、商品名、PCM−1A使用、圧縮速度は1cm/分)、目標圧で10秒間保持した後、円柱状成型体を取り出した。得られた円柱状成型体100個を瓶に入れ、密栓系40℃で2週間保存し、瓶の曇りを観察した。また、得られた円柱状成型体からの活性成分の溶出試験(日本分光(株)製、パドル回転数100rpm、局方I液、900mLの条件で溶出試験を行い、紫外吸光度測定器で1分後の液の吸光度を測定し試験開始3分後の溶出率を算出した)、及び成型体の崩壊性を観察した。結果を表7に示す。
比較例40
セルロース凝集体Aをセルロース粉末N(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。瓶の曇りは観察されなかったが、錠剤は1分では崩壊せず、液面を浮遊していた。
【0075】
比較例41
セルロース凝集体Aをセルロース粉末O(特開平2−84401号公報の実施例2に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。瓶の曇りは観察されなかったが、錠剤は1分では崩壊せず、液面を浮遊していた。
比較例42
セルロース凝集体Aをセルロース粉末P(特公昭40−26274号公報の実施例に相当)とする以外は、実施例16と同様に操作し、円柱状成型体を作製し、密栓保存後の瓶の曇りの観察、溶出試験、崩壊性の観察を行った。結果を表7に示す。昇華したイブプロフェンが瓶壁内で再結晶化したため瓶の曇りが確認された。
【表1】
【表2】
【表3−1】
【表3−2】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の成形性、崩壊性に優れた高流動性多孔質セルロース凝集体、そのセルロース粒子と1種以上の活性成分を含む成型体組成物は、結晶形がI型であり、一次粒子が凝集した多孔質構造を有し、比表面積が特定の範囲にあり、粒子内細孔容積が大きく、水中で迅速に崩壊し、安息角が小さい高流動性多孔質セルロース凝集体及びそのセルロース粒子と1種以上の活性成分を含む成型体組成物に関するものであり、主に医薬品の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の水銀ポロシメトリーにより測定された細孔分布図。図1から、細孔分布0.1〜10μmにおいて粒子内細孔に由来する「明確なピーク」が確認できる。これは、SEMによる電子顕微鏡写真に示される細孔径とほぼ同じ大きさのものである。なお、図1に示される10〜50μmに示されるピークは粒子間隙に由来するものである。
【図2】セルロース粉末K(比較例3)の水銀ポロシメトリーにより測定された細孔分布図。本発明の多孔質セルロース凝集体に見られるような「明確なピーク」が確認されなかった。このような「明確なピーク」がない細孔は、元々のセルロース一次粒子が有するものである。10〜50μmに見られたピークは、粉末の粒度分布から考えて、粒子間隙によるものである。
【図3】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が観察された。
【図4】セルロース粒子N(比較例6)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。写真から、セルロース粒子Nの粒子構造は、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」ではなく、セルロース一次粒子が微細化し、微細化した粒子が乾燥時に強固に結合してしまうため、一次粒子の境界が不明瞭なほどに、「連続した強固なフィルム状のセルロース隔壁」となっていることが分かる。
【図5】セルロース粉末P(比較例8)の倍率250倍における電子顕微鏡写真。写真から、セルロース粉末Pの粒子構造は、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」をとっているが、単一の平均粒子径を有するセルロース粒子の分散液を乾燥したものであるため、粒子内細孔容積は小さく、水銀ポロシメトリーで細孔分布を測定した結果、細孔分布で0.1〜10μmに「明確なピーク」が確認されなかった。
【図6】セルロース粒子A(実施例1)の倍率1500倍における電子顕微鏡写真。写真から、「一次粒子が凝集した二次凝集構造」が確認され、一次粒子の境界が明確に観察された。
【図7】セルロース粒子N(比較例6)の倍率1500倍における電子顕微鏡写真。写真から、隔壁がフィルム状であり、一次粒子の境界が不明瞭であることが分かる。
【図8】本発明の多孔質セルロース凝集体A(実施例1)の電子顕微鏡による粒子断面写真。図1で示される「明確なピーク部分」に相当する細孔径の粒子内細孔が発達した様子が観察された。
【図9】セルロース粉末P(比較例8)の電子顕微鏡による粒子断面写真。セルロース粒子が剛直に結合することで、密に結合した構造が確認される。粒子内細孔は疎らで、発達したものではなく、水銀ポロシメトリーによる細孔容積も小さかった。
【図10】実施例1〜8におけるセルロース粒子A〜H及び比較例1〜13におけるセルロース粉末又は粒子I〜Uの、安息角と硬度(それぞれ0.5g秤り取り、20MPaの圧縮圧でφ1.1cmの円柱状成型体とした円柱状成型体の硬度)の関係を示すグラフ。実施例1〜8は、安息角44°未満の領域においても、硬度が165N以上であり、流動性と成形性のバランスに優れることが分かる。それに対し、比較例1〜13は、安息角44°未満で、165N以上のものは得られず、165N以上が得られるものは、安息角が44°以上となり、流動性と成形性のバランスが悪いことが分かる。本発明のように賦形剤として使用される見掛け比容積の全域、例えば2.0〜6.0cm3/gにおいて、20MPaの硬度が165N以上であり、安息角が44°未満である成形性、流動性に優れるものはなかった。
【図11】実施例1〜8におけるセルロース粒子A〜H及び比較例1〜13におけるセルロース粉末又は粒子I〜Uの、硬度と崩壊(いずれも、それぞれのセルロースを0.5g秤り取り、20MPaの圧縮圧でφ1.1cmの円柱状成型体とした円柱状成型体の硬度と崩壊)の関係を示すグラフ。実施例1〜8は、硬度が160N〜400N以上の全ての領域において、崩壊時間が75秒以下であり、硬度と崩壊のバランスに優れることが分かる。それに対し、比較例1〜13は、硬度が高くなると極端に崩壊が遅延する系もあり、160N以上において、75秒以下の崩壊を示すものはなかった。本発明のように賦形剤として使用される見掛け比容積の全域、例えば2.0〜6.0cm3/gにおいて、20MPaの硬度が165N以上であり、崩壊時間75秒以下である成形性、崩壊性に優れるものはなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が1.3〜20m2/g、安息角が25°以上44°未満であり、水中で崩壊する性質を有する多孔質セルロース凝集体。
【請求項2】
前記安息角が25〜42°である請求項1記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項3】
多孔質セルロース凝集体0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が165〜410Nである請求項1又は2に記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項4】
前記破壊荷重が200〜410N、崩壊時間が75秒以下である請求項3に記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項5】
平均粒子径の異なる2種以上のセルロース一次粒子群と液媒体とを含み、セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmである分散液を、乾燥する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体の製造方法。
【請求項6】
1種以上の活性成分と請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項7】
前記1種の活性成分が水難溶性活性成分である請求項6に記載の成型体組成物。
【請求項8】
前記1種の活性成分が昇華性活性成分である請求項6に記載の成型体組成物。
【請求項9】
常温で液状又は半固形状である1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項10】
40μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項11】
10μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項1】
セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm3/g〜2.625cm3/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が1.3〜20m2/g、安息角が25°以上44°未満であり、水中で崩壊する性質を有する多孔質セルロース凝集体。
【請求項2】
前記安息角が25〜42°である請求項1記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項3】
多孔質セルロース凝集体0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が165〜410Nである請求項1又は2に記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項4】
前記破壊荷重が200〜410N、崩壊時間が75秒以下である請求項3に記載の多孔質セルロース凝集体。
【請求項5】
平均粒子径の異なる2種以上のセルロース一次粒子群と液媒体とを含み、セルロース分散粒子の平均粒子径が1〜110μmである分散液を、乾燥する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体の製造方法。
【請求項6】
1種以上の活性成分と請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項7】
前記1種の活性成分が水難溶性活性成分である請求項6に記載の成型体組成物。
【請求項8】
前記1種の活性成分が昇華性活性成分である請求項6に記載の成型体組成物。
【請求項9】
常温で液状又は半固形状である1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項10】
40μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【請求項11】
10μm以下の粒子径に微粉砕された1種以上の活性成分と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース凝集体とを含む成型体組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/073286
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517489(P2005−517489)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001131
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/001131
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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