説明

多孔質ポリイミド膜及びその製造方法

【課題】気体などの物質透過性に優れ、空孔率の高い、両表面の平滑性が優れ、相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対する耐力に優れるマクロボイドを多数有する多孔質ポリイミド膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリイミド膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質ポリイミド膜は、電池用セパレータや電解コンデンサ用隔膜用、集塵、精密濾過、分離などに用いられている。例えば、特許文献1には、直径約0.1〜5μmの互いに連通した貫通孔を多数有する多孔膜ポリイミドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−310658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来の多孔質ポリイミド膜よりも気体などの物質透過性に優れ、空孔率の高い、両表面の平滑性が優れ、相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対する耐力に優れるマクロボイドを多数有する多孔質ポリイミド膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の多孔質ポリイミド膜及びその製造方法を提供するものである。
[1]2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。
[2]前記マクロボイド層は、前記表面層(a)側及び/又は前記表面層(b)側から観察して、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有している、[1]に記載の多孔質ポリイミド膜。
[3]前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚さが略同一である、[1]又は[2]に記載の多孔質ポリイミド膜。
[4]ガーレー値が30秒以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[5]250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が5%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[6]前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[7]前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲内にある、[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[8]ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がない、[1]〜[7]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【0006】
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法であって、
テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程
を含み、前記の極性基を有する有機化合物(B)が、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[10]前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、[9]に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[11]前記の極性基を有する有機化合物(B)が安息香酸である、[9]又は[10]に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[12]ポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程において、200℃以上の温度域での昇温速度が25℃/分未満である、[9]〜[11]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[13]前記の水を必須成分とする凝固溶媒が、水であるか、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液である、[9]〜[12]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、
1)膜の断面構造は大部分が対称構造であり、各種平膜材料として使う場合に非常に利用しやすく、
2)大きな空孔率を得ることができ、例えば絶縁基板として用いると誘電率を低くすることができ、
3)両表面及び支持層ともに、一方の表面から他方の表面に至る連通孔を有するために、物質の充填や移動が容易であり、
4)マクロボイドを有するために物質の充填量を大きくすることができ、
5)両表面の平滑性に優れ、
6)両表面層と支持部とが大部分がラダー構造であるため、かさ密度に比して相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対して耐力があり寸法安定性が高く、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が小さい、などの優れた効果を有する。
また、本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法は、本発明の多孔質ポリイミド膜を簡便かつ効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の平面断面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B線断面図である。
【図2】図2は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の拡大側面断面図である。
【図3】図3は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の側面断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、図3のハニカムサンドウィッチ構造の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい実施態様について図面を参照しながら説明する。図1(a)は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の平面断面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B線断面図である。図2は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の拡大側面断面図である。図3は、本発明の多孔質ポリイミド膜の好ましい一実施態様の側面断面の走査型電子顕微鏡写真である。図4は、図3のハニカムサンドウィッチ構造の拡大写真である。
図1及び2に示すように、本発明の多孔質ポリイミド膜1は、2つの表面層2及び4(表面層(a)及び(b))と、当該表面層2及び4の間に挟まれたマクロボイド層3とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜である。
【0010】
表面層2及び4の厚さはそれぞれ、0.1〜50μmであり、ポリイミド膜の強度の観点から、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜9μm、更に好ましくは2〜8μm、特に好ましくは2〜7μmである。ポリイミド膜を各種平膜材料として使う観点からは、表面層2及び4の厚さは略同一であることが好ましい。
【0011】
表面層2及び4はそれぞれ、複数の細孔25及び45を有する。細孔25及び45の平均孔径は0.01〜5μmであり、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは1〜5μm、更に好ましくは2〜5μmである。また、細孔25及び45の最大孔径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。当該細孔同士は互いに連通し、更にマクロボイド31に連通している。
このように、本発明のポリイミド膜は、一方の表面から他方の表面に至る連通孔を有するために物質の充填や移動が容易であり、気体等の物質透過性に優れる。その一方で、膜表面に形成された細孔の平均孔径が小さいため所定のサイズの物質のみを通過させることができ、本発明のポリイミド膜はフィルタリング機能を有する。また、膜表面に形成された細孔の平均孔径が小さいため、本発明のポリイミド膜の膜表面は平滑性が優れる。
【0012】
マクロボイド層3は、複数のマクロボイド31と、マクロボイド31同士を隔てる隔壁32とを有する。マクロボイド31は、隔壁32並びに表面層2及び4によって囲まれた空間であり、膜平面方向の平均孔径は10〜500μmであり、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μmである。マクロボイド層3を膜平面方向に対して平行に切断したときの断面は、図1(a)に模式的に示すように、ハニカム構造またはそれに類似する構造であり、所定の孔径を有する複数のマクロボイドが隔壁を挟んで密接して存在している。すなわち、本発明のポリイミド膜は、いわゆる「ハニカムサンドウィッチ構造」を有する。なお、本明細書における「ハニカム構造」とは、個々に区分された多数の空間部が密集している構造を意味するにすぎず、前記空間部が正確に断面六角形になった構造のみを意味するものではない。
マクロボイド31により、本発明のポリイミド膜は大きな空間を有し、空孔率が高い。そのため、例えば絶縁基板として用いた場合には誘電率を低くすることができ、また、物質をボイド中に充填する場合にはその充填量を大きくすることができる。
【0013】
マクロボイド31同士を隔てる隔壁32の厚さは、0.1〜50μmであり、ポリイミド膜1の強度及びマクロボイド31同士の連通性の観点から、好ましくは1〜15μm、より好ましくは2〜12μm、更に好ましくは3〜10μm、特に好ましくは4〜8μmである。隔壁32と表面層2及び4との厚さは略同一であることが好ましい。
【0014】
隔壁32は、表面層2及び4と同様に、複数の細孔35を有する。細孔35の平均孔径は0.01〜5μmであり、好ましくは0.01〜3μm、より好ましくは0.02〜2μmである。また、細孔35の最大孔径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。当該細孔同士は互いに連通し、更にマクロボイド31に連通している。
このように、本発明のポリイミド膜は、マクロボイド同士も連通しており、物質の充填や移動が容易であり、気体等の物質透過性に優れる。その一方で、隔膜に形成された細孔の平均孔径が小さいためマクロボイド中に物質を閉じ込めることができる。
【0015】
図1(b)及び2〜4に示すように、隔壁32は、表面層2及び4に結合している。隔壁32は、マクロボイド31同士を隔てる役割を有すると共に、表面層2及び4を支持する支持部としての役割を有する。このため、本発明のポリイミド膜は、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対して耐力があり、寸法安定性が高い。
特に図3及び4に示すように、本発明のポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、隔壁32並びに表面層2及び4はラダー形状に構成されている。すなわち、隔壁32は、ほぼ一定の間隔で、膜平面方向に対してほぼ垂直方向に形成されて表面層2及び4に結合している。
【0016】
物質透過性の観点から、本発明のポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断した断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの断面積は、膜断面積に対して好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上であり、また、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下、特に好ましくは80%以下である。
【0017】
また、物質透過性、軽量性、及び膜の構造保持性の観点から、本発明のポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断した断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)は、好ましくは0.5〜3、より好ましくはL/d=0.8〜3、更に好ましくはL/d=1〜3、特に好ましくはL/d=1.2〜3の範囲内である。そして、そのようなL/dを満たす前記マクロボイドの数が、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75〜100%であることが更に好ましい。なお、図4に示すように、マクロボイドの膜厚み方向の長さ(d)は、マクロボイドの膜厚み方向の最大長さであり、マクロボイドの膜平面方向の長さ(L)は、マクロボイドの膜平面方向の最大長さである。
【0018】
本発明のポリイミド膜の総膜厚は5〜500μmであり、力学強度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
また、本発明のポリイミド膜の空孔率は60%以上70%未満であり、物質透過性、力学強度、及び膜の構造保持性の観点から、好ましくは60〜68%、より好ましくは62〜66%の範囲である。
また、通気性の観点から、本発明のポリイミド膜のガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)は、好ましくは30秒以下、より好ましくは25秒以下、更に好ましくは2秒以下であり、下限値は特に限定されないが、好ましくは測定限界以上である。ガーレー値は、JIS P8117に準拠して測定することができる。本発明のポリイミド膜は、通気性が非常に優れる。
【0019】
本発明のポリイミド膜は、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは0〜1%である。また、ASTM D1204に準拠した200℃、2時間での膜平面方向における寸法安定性が、好ましくは±1%以内、より好ましくは±0.8%以内、更に好ましくは±0.5%以内である。
また、本発明のポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないことが好ましい。
【0020】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを主たる成分とする多孔質ポリイミド膜であり、好ましくはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドからなる多孔質ポリイミド膜である。
【0021】
テトラカルボン酸二無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
【0023】
ジアミンは、任意のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例として、以下のものを挙げることができる。
【0024】
1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン、
【0025】
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
【0026】
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
【0027】
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
【0028】
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0029】
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
【0030】
多孔質ポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを組み合わせて得られるポリイミドから形成されていることが好ましい。
【0031】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、以下の芳香族ポリイミドからなる多孔質ポリイミド膜であることが好ましい。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
【0032】
次に、本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法について説明する。
本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法は、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)又は側鎖に極性基を有する高分子化合物(C)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程を含む。ここで、前記の極性基を有する有機化合物(B)は、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である。
【0033】
ポリアミック酸とは、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなり、ポリイミド前駆体或いはその部分的にイミド化したポリイミド前駆体である。ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合することで得ることができる。ポリアミック酸を熱イミド化若しくは化学イミド化することにより、閉環してポリイミドとすることができる。本発明におけるポリイミドは、イミド化率が約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが好ましい。
【0034】
ポリアミック酸を重合するための溶媒としては任意の有機極性溶媒を用いることができ、p−クロロフェノール、o−クロルフェノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノール、クレゾールなどの有機極性溶媒などを用いることができ、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を好ましく用いることができる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンは、上述したものを好ましく用いることができる。
【0035】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び上記の有機極性溶媒などを用いて任意の方法で製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンと略等モルで、好ましくは約100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは20〜60℃の温度で、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3〜60時間反応させることで、ポリアミック酸溶液を製造することができる。
ポリアミック酸溶液を製造するときに、分子量を調整する目的で、任意の分子量調整成分を反応溶液に加えてもよい。
ポリアミック酸の対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL、溶媒;NMP)は、本発明の多孔質ポリイミド膜が製造できる粘度であればよい。本発明の方法では、前記対数粘度が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5〜7であるポリアミック酸を用いることが好ましい。
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。
【0036】
ポリアミック酸溶液(A)は、ポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなる。ポリアミック酸の含有量が0.3質量%未満だと多孔質ポリイミド膜を作製した際のフィルム強度が低下し、60質量%を超えると多孔質ポリイミド膜の物質透過性が低下する。ポリアミック酸溶液(A)におけるポリアミック酸の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは5〜10質量%であり、ポリアミック酸溶液(A)における有機極性溶媒の含有量は、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは85〜98質量%、更に好ましくは90〜95質量%である。
ポリアミック酸溶液(A)は、有機極性溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させて得られる溶液であってもよく、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
【0037】
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物を挙げることができ、好ましくはポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、又はポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物である。
極性基を有する有機化合物(B)及び極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させる有機化合物である。ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させることで、ポリイミド膜中に平均孔径が10〜500μmのマクロボイドを形成することができる。
【0038】
極性基を有する有機化合物(B)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、極性基を有する有機化合物(B)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、極性基を有する有機化合物(B)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
【0039】
極性基を有する有機化合物(B)としては、例えば安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物、ニトリル基を有する有機化合物、水酸基を有する有機化合物、スルホン酸基を有する有機化合物などを用いることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に極性基を有する有機化合物としては、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物が好ましい。
【0040】
極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、前記高分子化合物(C)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、前記高分子化合物(C)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
【0041】
極性基を有する高分子化合物(C)としては、側鎖にCN基、OH基、COOH基、SO3H基、NH2基などの極性基を有する重合体(例えばビニル重合体など)などを挙げることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、極性基を有する高分子化合物(C)としては、ポリアクリロニトリル等の、側鎖にCN基、OH基、COOH基、SO3H基、NH2基などの極性基を有するビニル重合体が好ましい。
【0042】
ポリアミック酸溶液組成物において、前記高分子化合物(C)の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
ポリアミック酸溶液組成物において、極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する場合、前記有機化合物(B)と前記高分子化合物(C)との合計の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
【0043】
極性基を有する高分子化合物(C)は、下記特徴(C1)〜(C4)の少なくとも1つ、好ましくは下記特徴(C1)〜(C3)、より好ましくは下記特徴(C1)〜(C4)のすべてを備えることが好ましい。
(C1)水、凝固溶媒及び/又は有機極性溶媒に不溶又は難溶であること。
(C2)熱イミド化工程で分解されること。
(C3)ポリアミック酸溶液組成物中に極性基を有する高分子化合物(C)が均質で懸濁していること。
(C4)ポリアミック酸と相溶しないこと。
【0044】
極性基を有する高分子化合物(C)の作用機序については明確でないが、以下のように考えられる。
c1)ポリアミック酸中に前記高分子化合物(C)が非相溶物として残存する。この高分子化合物(C)の一部または全部は、凝固溶媒に浸漬又は接触させてポリアミック酸の多孔質膜を作製する際において凝固浴中に溶出し、更には加熱イミド化する工程で分解される。その結果、ポリイミド膜のマクロボイド層の隔壁並びに表面層(a)及び(b)において、除去された高分子化合物(C)が存在していた部分は細孔を形成し、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
及び/又は
c2)ポリアミック酸溶液組成物の凝固を促進するなど、凝固過程に影響を与えることにより、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
【0045】
なお、ポリアミック酸溶液組成物の製造の際に、溶液が懸濁状になる場合があるが、十分な時間をかけて撹拌することで均質な状態を保つことができれば、本発明のポリイミドの製造に用いることができる。
【0046】
また、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度は、流延のしやすさ及びフィルム強度の観点から、好ましくは10〜10000ポアズ(1〜1000Pa・s)、より好ましくは100〜3000ポアズ(10〜300Pa・s)、更に好ましくは200〜2000ポアズ(20〜200Pa・s)、特に好ましくは300〜1000ポアズ(30〜100Pa・s)である。
【0047】
(流延)
本発明の多孔質ポリイミドの製造方法では、まず、ポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延する。流延方法は特に限定されず、例えば、ポリアミック酸溶液組成物をドープ液として使用し、ブレードやTダイなどを用いてガラス板やステンレス板等の上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延することができる。また、連続の可動式のベルト上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的に個片又は長尺状の流延物を製造することができる。ベルトは、ポリアミック酸溶液組成物及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属製、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま凝固浴に投入することもできる。また、必要に応じて流延物の片面又は両面を、水蒸気などを含むガス(空気、不活性ガスなど)と接触させてもよい。
【0048】
(ポリアミック酸の多孔質膜の作製)
次に、流延物を、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行うことで、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する。得られたポリアミック酸の多孔質膜は、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行う。
【0049】
水を必須成分とする凝固溶媒は、水、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液を用いることができる。火災などの安全面、製造原価、及び得られる膜の均質性の確保の観点から、水と有機極性溶媒とを含む凝固溶媒を用いることが好ましい。凝固溶媒に含有してもよい有機極性溶媒としては、ポリアミック酸の貧溶媒であるエタノール、メタノール等のアルコ−ル類、アセトン等が挙げられる。
【0050】
凝固溶媒が水と有機極性溶媒との混合液である場合、凝固溶媒100質量%中の水の含有量は、好ましくは5質量%以上100質量%未満、より好ましくは20質量%以上100質量%未満、更に好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは45〜90質量%である。凝固溶媒100質量%中の有機極性溶媒の含有量は、好ましくは0質量%を超え95質量%以下、より好ましくは0質量%を超え80質量%以下、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜55質量%である。
【0051】
凝固溶媒の温度は、目的に応じて適宜選択して用いればよく、例えば−30〜70℃、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは10〜50℃の範囲で行うことが好ましい。
【0052】
(イミド化処理)
次に、得られたポリアミック酸の多孔質膜をイミド化して多孔質ポリイミド膜を製造する。イミド化としては、熱イミド化処理、化学イミド化処理等を挙げることができるが、本発明では熱イミド化処理が行われる。
【0053】
(熱イミド化処理)
熱イミド化処理は、例えば、ポリアミック酸の多孔質膜を、ピン、チャック若しくはピンチロールなどを用いて熱収縮により平滑性が損なわれないように支持体に固定し、大気中にて加熱することにより行うことができる。反応条件は、例えば280〜600℃、好ましくは350〜550℃の加熱温度で、2〜120分間、好ましくは3〜90分間、さらに好ましくは5〜60分の加熱時間から適宜選択して行うことが好ましい。
【0054】
本発明の方法では、熱イミド化処理において200℃以上の温度域での昇温速度が、好ましくは25℃/分未満、さらに好ましくは20℃/分以下で行うことにより、イミド化反応が顕著に起こる200℃以上の温度域において上記の昇温速度で加熱することにより、本発明の多孔質ポリイミド膜を得ることができる。
【0055】
なお、極性基を有する高分子化合物(C)を含むポリアミック酸溶液組成物を用いる場合には、ポリアミック酸の多孔質膜を前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度以上に加熱して熱イミド化することが好ましい。前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度は、例えば、熱重量測定装置(TGA)を用いて、空気中、10℃/分の条件で測定することができる。
【0056】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、ポリアミック酸溶液或いはポリイミド溶液を介して製造する場合、用いるポリマーの種類、ポリマー溶液のポリマー濃度、粘度、有機溶液など、凝固条件(溶媒置換速度調整層の種類、温度、凝固溶媒など)などを適宜選択することにより、空孔率、膜厚、表面の平均孔径、最大孔径、中央部の平均孔径などを適宜設計することができる。
【0057】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、目的に応じて少なくとも片面をコロナ放電処理、低温プラズマ放電或いは常圧プラズマ放電などのプラズマ放電処理、化学エッチングなどを施すことにより、膜の表面処理を行ってもよい。また、表面層(a)及び/又は(b)を面削りして用いてもよい。これらの処理により膜の物質透過性、表面孔径、濡れ性を制御することができる。
【0058】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、気体などの物質透過性に優れるために、気体用フィルタ、液体用フィルタ、通気部品などの用途に好適に用いることができる。
また、ポリイミドは他のプラスチックに比べて耐熱性に優れるため、本発明の多孔質ポリイミド膜は250℃以上の使用温度領域でも使用することができる。具体例としては、携帯電話のマイク等の音響部品の保護膜が挙げられ、ハンダ加工時に熱履歴をかけても破壊されない。また、耐熱フィルタとしても利用することができる。従来用いられているアラミド不織布からなる耐熱フィルタは、使用により熱劣化し、中に含まれているバインダーが炭化して粉塵の発生源となりうるが、本発明の多孔質ポリイミド膜を用いた耐熱フィルタではそのような問題が生じることはない。また、車体塗装ブース内の熱風循環ラインに用の防塵耐熱フィルタにも用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(多孔質ポリイミド膜の評価)
1)膜厚
膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
【0061】
2)気体透過性
ガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
【0062】
3)寸法安定性
寸法安定性の測定は、200℃で2時間の条件で、ASTM D1204に準拠して行った。
【0063】
4)表面の平均孔径
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。
【数1】

(式中、Saは孔面積の平均値を意味する。)
【0064】
5)表面の最大孔径
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積から孔の形状が真円であるとした際の直径を計算し、その最大値を最大孔径とした。
【0065】
6)空孔率
所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を下式(2)によって求めた。
【数2】

(式中、Sは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度をそれぞれ意味する。ポリイミドの密度は1.34g/cm3とする。)
【0066】
7)ガラス転移温度(℃)
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
【0067】
8)溶液粘度
溶液粘度の測定は、E型回転粘度計で行った。以下に測定手順を示す。
(i)製造例で調製したポリアミック酸溶液を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持した。
(ii)E型粘度計(東京計器製、高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式、コーンローター:1°34’)を用い、(i)で準備したポリアミック酸溶液を測定溶液として、温度30±0.1℃の条件で測定した。3回測定を行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、さらに2回の測定を行い5点の平均値を採用した。
【0068】
9)250℃、15分で、0.5MPaの圧縮応力負荷試験
測定する膜を3cm角の正方形に切り出し、格子状に9点にマジックで目印を付け接触式の厚み計で膜厚みを測定した。次に、平行度±10μm未満、温度分布±1℃の圧縮盤である高精度ホットプレスを用いて、測定対象膜を250℃、15分、0.5MPaの条件で圧縮した。続いて、膜を室温のSUS板の上に30分間静置した後に、接触式の膜厚み計で目印部分の膜厚みを測定した。9点での圧縮前後の膜厚みの変化率を下式(3)によって求めた。9点の平均値を膜厚み変化率とした。
【数3】

【0069】
製造例1
(ポリアミック酸溶液組成物Aの調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、モル比がほぼ1、ポリマー濃度が8質量%になる量を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。23時間後、安息香酸をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をポリアミック酸100質量部に対して1質量部の量をそれぞれフラスコ内に添加し、撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物Aを得た。溶液組成物Aは粘稠な懸濁液体で、粘度は540ポアズ(54Pa・s)(25℃)であった。
【0070】
製造例2
(ポリアミック酸溶液組成物Cの調製)
安息香酸を添加しなかったこと以外は製造例1と同様にして、ポリアミック酸溶液組成物Cを得た。溶液組成物Cは粘稠な懸濁液体であった。
【0071】
実施例1
室温下で、卓上の自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、製造例1で調製したポリアミック酸溶液組成物Aを厚さ約150μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、凝固浴(水75質量部/NMP25質量部、室温)中に基板全体を投入した。投入後、8分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンターに張りつけて電気炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱し、その後20℃/分の昇温速度で380℃まで加熱し、そのまま3分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、多孔質ポリイミド膜を得た。
得られた多孔質ポリイミド膜は、膜厚みが26μm、空孔率が65%、ガーレー値が24秒であった。結果を表1に示す。
【0072】
多孔質ポリイミド膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、
・横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比がL/d=0.5〜3の範囲に入るボイドの数が70%以上であることを確認できた。
・膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドを多数有し、その断面積が総断面積の70%以上であることを確認できた。
多孔質ポリイミド膜のガラス転移温度は、約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率は、1%以下であった。
【0073】
また、多孔質ポリイミド膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、平均孔径が2.6μmであり、表面開口率は1%であることを確認した。また、他方の表面は、平均孔径が4.8μmであり、表面開口率は6%であることを確認した。
【0074】
比較例1
ポリアミック酸溶液組成物Aをポリアミック酸溶液組成物Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド膜を得た。得られた多孔質ポリイミド膜は、膜厚みが24μm、空孔率が55%、ガーレー値が75秒であった。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1で得られた多孔質ポリイミド膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、2つの表面層及びそれに挟まれたマクロボイド層という三層構造が存在せず、また、マクロボイドがほとんど存在していないことが観察できた。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から、極性基を有する有機化合物(B)を含有しないアミック酸溶液組成物Cを用いてポリアミック酸の多孔質膜を作製した比較例1では、2つの表面層及びそれに挟まれたマクロボイド層という三層構造からなる、物質透過性に優れた多孔質ポリイミド膜を製造することができないことがわかる。
これに対し、実施例1の多孔質ポリイミド膜は、2つの表面層及びそれに挟まれたマクロボイド層という三層構造からなり、表面層に、平均孔径0.01〜5μmであり互いに連通する複数の細孔を有しており、ガーレー値が低く、物質透過性に優れる。
【0078】
比較例2及び3
市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)不織布、及びメンブレンフィルタ(ミリポア社製、商品名:OMNIPORE、フィルタタイプ:10μmJC)について、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率を測定した。膜厚み変化率はそれぞれ、52%、78%であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、気体などの物質透過性に優れ、気体用フィルタ、液体用フィルタ、通気部品などの用途に好適に用いることができる。また、本発明の多孔質ポリイミド膜は、耐熱性に優れ、250℃以上の使用温度領域でも使用することができ、音響部品保護膜、耐熱フィルタ等の用途にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 多孔質ポリイミド膜
2 表面層(a)
25 細孔
3 マクロボイド層
31 マクロボイド
32 隔壁(支持部)
35 細孔
4 表面層(b)
45 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。
【請求項2】
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)側及び/又は前記表面層(b)側から観察して、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有している、請求項1に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項3】
前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚さが略同一である、請求項1又は2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項4】
ガーレー値が30秒以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項5】
250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が5%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項6】
前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項7】
前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲内にある、請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項8】
ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がない、請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法であって、
テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程
を含み、前記の極性基を有する有機化合物(B)が、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、請求項9に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【請求項11】
前記の極性基を有する有機化合物(B)が安息香酸である、請求項9又は10に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【請求項12】
ポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程において、200℃以上の温度域での昇温速度が25℃/分未満である、請求項9〜11のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【請求項13】
前記の水を必須成分とする凝固溶媒が、水であるか、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液である、請求項9〜12のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−219586(P2011−219586A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89058(P2010−89058)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】