説明

多孔質印刷媒体上で改善された湿潤スマッジ耐性をもたらすインクジェットインク

インクジェット印刷において使用するための印刷システム。同印刷システムは、遊離バインダー及び修飾顔料を有するインクジェットインクと、定着液と、多孔質印刷媒体とから構成される。遊離バインダーは、ポリエチレンイミン、ポリグアニド、スチレン無水マレイン酸イミド、第四級アンモニウム化合物、スチレン−アクリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、及びそれらの混合物から選択されたポリマーを含み得る。少なくとも2つのポリマーが、約0.001〜約10の分子量比にて含有し得る。湿潤スマッジに対して高い耐性を有する印刷画像を生成する方法も開示する。同方法は、多孔質印刷媒体を設け、その多孔質印刷媒体にインクジェットインクを適用し、そしてその多孔質印刷媒体に定着液を適用して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2004年10月1日付けの米国仮特許出願第60/615,129号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、改善された耐久性を有する印刷画像を実現するインクジェットインクに関する。より詳細には、本発明は、多孔質印刷媒体上に印刷される際に、改善された耐久性をもたらすインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0003】
インクジェットインクは、典型的に、水性インクビヒクルなどのインクビヒクル中に着色剤として顔料又は染料を含有する。インクジェットインクに染料又は顔料のどちらを使用すべきかの決定は、各着色剤が明確な利点と欠点をもたらす故、具体的な印刷用途に依存する。染料は、通常、水溶性であり、これにより、染料系インクジェットインクの調合は比較的容易となる。しかし、染料系インクジェットインクで印刷された画像は、一般に、水または湿気に接触若しくはさらされると、汚れたり又は擦れたりする。染料系インクジェットインクで印刷された画像はまた、可視光、紫外光、又は太陽光線に対して安定ではない。対照的に、顔料系インクジェットインクは、染料系インクジェットインクにより生成されたものよりも耐水性であり且つ耐光性である印刷画像を作り出す。しかしながら、顔料は、印刷媒体中に浸透せず、その表面に留まる。それ故、その印刷画像は、湿潤スマッジに対する耐性が低く且つハイライター耐性が低い。加えて、顔料の均一な分散を達成し且つ維持することも、顔料がインクビヒクルに容易に溶けないため困難である。顔料を安定に分散させるために、ポリマー分散剤や界面活性剤のような、分散剤がインクジェットインクに付加されてきた。また、分散性を改善するために、顔料上に界面活性剤を吸着させるか又はコーティングされてきた。しかしながら、ポリマー分散剤又は界面活性剤を付加することは、インクジェットインクの粘度を高め、印刷適性に影響を及ぼす。さらに、これらの顔料系インクジェットインクは、多孔質媒体上に印刷される際に耐久性のある画像を生成しない。
【0004】
インクビヒクル中の顔料の分散性を改善するために、顔料に対する化学修飾も提案されている。顔料は、小分子又は高分子のような、有機官能基を顔料の表面に結合させることによって化学的に修飾されてきた。修飾された顔料を含むインクジェットインク、詳細には、それらの表面に小分子が付着しているインクジェットインクに関する1つの問題は、それらが多孔質印刷媒体上に印刷される際に耐久性のある画像を生成しないということである。それ故、これらの印刷媒体上で高い耐久性を実現するために、ポリマー添加剤がインクジェットインクに用いられてきた。しかしながら、これらのポリマー添加剤の使用は、インクジェットインクの粘度を高め、これにより、印刷適性、光学濃度(「OD」)及び湿潤スマッジに対する耐性が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質印刷媒体上に印刷時にODを低下させることなく、改善された湿潤スマッジ耐性を示す顔料系インクジェットインクを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクジェット印刷において使用するための印刷システムに関する。当該印刷システムは、遊離バインダー及び修飾顔料を含むインクジェットインクと、定着液と、多孔質印刷媒体とから構成される。
【0007】
インクジェットインク中の修飾顔料は、その表面に約4000以上の分子量を有するポリマーが結合している。
【0008】
本発明はまた、湿潤スマッジに対する耐性が改善された印刷画像を生成する方法にも関連する。当該方法は、多孔質印刷媒体を設けること、並びにその多孔質印刷媒体にインクジェットインクを適用することを含む。インクジェットインクは、遊離バインダーと、その表面にポリマーが結合している修飾顔料とを含んで成り、当該ポリマーは、約4000以上の分子量を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
多孔質印刷媒体上に印刷時に耐久性のある印刷画像を生成するために、修飾顔料と遊離バインダーとを含有するインクジェットインクを用いる。ここで用いるとき、用語「修飾顔料」は、顔料表面にポリマーが結合している顔料を指し、用語「ポリマー」は、単一のモノマー基の反復単位、複数のモノマー基の反復単位、又はその組合せを含む、巨大分子を指す。用語「遊離バインダー」とは、インクジェットインク中に存在するが、顔料には結合していないポリマーを指す。定着液をインクジェットインクと共に用いることができ、それによって、OD、改善された湿潤スマッジ耐性、並びに速い乾燥時間の低下を呈さない耐久性のある印刷画像を実現することができる。
【0010】
修飾顔料に用いる顔料は、ブラック顔料又はカラー顔料のような、インクジェットインクに用いられる在来の顔料とし得る。顔料は当分野で既知であるため、本発明において使用するために当業者は選択することができる。本書における実施例では、ブラック顔料を用いて説明するが、カラー顔料も本発明に用い得ることを理解されたい。ブラック顔料の例には、カーボンブラック、黒鉛、ガラス質炭素、炭素繊維、活性炭、及び活性炭素のような、炭素製品が含まれる。カーボンブラックとしては、限定はしないが、チャネルブラック、ファーネスブラック、及びランプブラック顔料を挙げることができる。カラー顔料は、ポリマー顔料又は有機顔料とし得、ブルー、ブラック、ホワイト、ブラウン、シアン、グリーン、バイオレット、マゼンタ、レッド、イエロー顔料、又はそれらの組合せが挙げられる。本発明に用い得るカラー顔料の種類のに例は、限定はしないが、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロ環イエロー、キナクリドン、及び(チオ)インジゴイドが含まれる。
【0011】
顔料に結合させるポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーとし得る。当該ポリマーには、ランダムポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、星形ポリマー、及び/又は櫛形ポリマーのような、任意の種類のポリマーが含まれ得る。当該ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び/又は任意の数の異なる反復モノマー単位を有するポリマーとし得る。当該ポリマーはまた、アニオン(又は酸性)基又はカチオン(塩基性)基のような、イオン性又はイオン化性基を含み得る。例えば、イオン性又はイオン化性基は、カルボン酸基又はイミン基であり得る。本書における実施例では、1種のポリマーが顔料表面に結合した修飾顔料を記載しているが、少なくとも2種のポリマーを顔料表面に結合させ得ることを理解されたい。
【0012】
顔料に結合させるポリマーは、水溶性とし得、約4000以上の分子量を有し得る。ここで用いるとき、用語「分子量」は、重量平均分子量を指し、溶媒としてテトラヒドロフランを用いるゲル透過クロマトグラフィーにより決定することができる。当該ポリマーは、約4000〜約17500の範囲の分子量を有し得る。顔料に結合されるポリマーは、ランダムな分子量分布を有し得る。
【0013】
顔料に結合させ得るカチオンポリマーの例としては、限定はしないが、ポリエチレンイミン(「PEI」);ポリグアニド;Sartomer Co.Inc.(ペンシルバニア州エクストン)からSMA(登録商標)イミドとして市販されているスチレン無水マレイン酸イミド;Sigma−Aldrich Co.(ミズーリ州セントルイス)から市販されているpolyquaternium化合物のような第四級アンモニウム化合物;及びそれらの組合せが挙げられる。polyquaternium化合物としては、限定はしないが、polyquaternium 2、polyquaternium 10、polyquaternium 11、及びpolyquaternium46が挙げられる。カチオンポリマーが表面に結合している修飾顔料は、当分野で既知であり、Cabot Corp.(マサチューセッツ州ビレリカ)のような、多数の供給元から市販されている。一実施形態では、顔料に結合しているカチオンポリマーは、PEIポリマーであるか又はPEHAと称される6つのPEI直鎖反復単位から成るポリマーである。
【0014】
顔料に結合させ得るアニオンポリマーの例としては、限定はしないが、スチレン-アクリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、及びそれらの組合せを含む。アニオンポリマーが表面に結合している修飾顔料は、当分野で既知であり、Cabot Corp.(マサチューセッツ州ビレリカ)のような、多数の供給元から市販されている。一実施形態では、アニオンポリマーはスチレン-アクリルポリマーである。スチレン-アクリルポリマーは、約13%〜約35%の範囲でアクリル酸を含み得る。アクリル酸のスチレンに対する比は、約0.20〜約0.80の範囲にある。当該ポリマーは、約80〜約220に及ぶ酸価のような、約80より大きい酸価を有し得る。ここで用いるとき、用語「酸価」は、1gのポリマー中のペンダントカルボン酸塩基を中和するのに必要となる、mg単位の水酸化カリウム(「KOH」)の重量を指す。これらの性質を有するポリマーは当分野で既知であり、在来技術で製造することができる。
【0015】
修飾顔料を製造するにあたり、当分野で既知のように、ポリマーを従来法で調製し、そして顔料に結合させることができる。ポリマーを結合させる方法は当分野で既知である。ポリマーを結合させる1つの方法は、結合させる予定のポリマーのジアゾニウム塩と、顔料とを反応させることを包含する。適切な反応媒体中で十分な時間にわたってジアゾニウム塩を顔料と反応させることで、少なくとも1つのポリマー基を顔料に結合させることができる。顔料に結合させるポリマーの数は、用いる反応条件及びジアゾニウム塩の反応性に依存し得る。
【0016】
修飾顔料は、インクジェットインク中に、そのインクジェットインクの重量を基準として約1重量%〜約25重量%の量にて含有させることができる。本発明の特定の一実施形態では、修飾顔料は、約3重量%〜約10重量%の量にて含有される。
【0017】
インクジェットインクはまた、遊離バインダーを含み得る。当該遊離バインダーは、インクジェットインク中に存在するが、顔料には結合しないポリマーであり得る。当該ポリマーは、修飾顔料上の電荷と同じ電荷を有し得る。例えば、カチオン性の修飾顔料をインクジェットインクに用いる場合、遊離バインダーはカチオンポリマーとし得る。逆に、アニオン性の修飾顔料を用いる場合、遊離バインダーはアニオンポリマーとし得る。遊離バインダーは、顔料に結合させるもののような、前述のポリマーの種類から選択することができる。例えば、遊離バインダーとしては、限定はしないが、PEI、ポリグアニド、スチレン無水マレイン酸イミドポリマー、ポリクアト(polyquat)、スチレン−アクリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、及びそれらの組合せを挙げることができる。遊離バインダーとして用い得るスチレン−アクリルポリマーの例としては、限定はしないが、Joncryl(登録商標)678、Joncryl(登録商標)586、及びJoncryl(登録商標)671が挙げられ、これらは、Johnson Polymer,Inc.(ウィスコンシン州スターテヴァント)から市販されている。遊離バインダーとして用い得るPEIポリマーの例としては、限定はしないが、Avecia Ltd.(デラウェア州ウィルミントン)からのNBZ2458−9及びNicca USA,Inc.(サウスキャロライナ州ファウンテンイン)からのNiccaJet 100が挙げられる。当該遊離バインダーは、修飾顔料上の電荷と同じ電荷を有し得る。
【0018】
一実施形態では、遊離バインダーは、各ポリマーが同じ電荷を有する、ポリマー混合物から成る。遊離バインダーは、約0.001〜約10の範囲にある分子量比を有する少なくとも2つのポリマーを含み得る。特定の一実施形態では、遊離バインダーは、約1〜約10の範囲にある分子量比を有する。2つのポリマーは、類似の分子量か又は異なる分子量を有し得る。例えば、ポリマーの1つは、第二のポリマーの分子量に比較して低い分子量を有し得る。単なる例として、第一ポリマーは約4600の分子量を有し得、一方、第ニポリマーは約17250の分子量を有し得る。第一ポリマーは、存在する第二ポリマーの量に比較して多い量にてインクジェットインク中に存在し得る。例えば、インクジェットインク中に第一ポリマーを約10部の量にて存在させ、第二ポリマーを約1部にて存在させることができ、10という分子量比を与える。
【0019】
インクジェットインクは、当分野で知られている任意の技術によって調合することができる。例えば、修飾顔料は、インクビヒクル中に溶解、分散、又は懸濁させ得る。水に加えて、インクビヒクルは、当分野で知られているような、水溶性又は水混和性の有機溶媒を含み得る。インクジェットインクはまた、界面活性剤、腐食防止剤、緩衝剤、酸化防止剤、及び/又は殺生物剤のような、添加剤も含み得る。これらの添加剤は、当分野で知られており且つインクジェットインクの所望の諸性質に応じて選択することができる。修飾顔料、添加剤、及びその他の任意の成分を混合し、撹拌し、あるいはまた、混ぜ合わせてインクジェットインクを形成することができる。インクジェットインクのpHは、約8〜約10の範囲とし得る。
【0020】
インクジェットインクがその上に堆積される印刷媒体は、多孔質印刷媒体であり得る。多孔質印刷媒体は、当分野で既知であり、典型的に、基材に適用された多孔質コーティングを備える。多孔質印刷媒体としては、限定はしないが、International Paper Co.(コネチカット州スタンフォード)によって製造されたHammermill(登録商標)Bond紙;Hewlett−Packard Inc.(カリフォルニア州パロアルト)によって製造されたHP Bond及びHP Bright White紙;Gilbert Paper(ウィスコンシン州アップルトン)によって製造されたGilbert Bond紙;Union Campによって製造されたGreat White(登録商標)紙;Sabah Forest Industries Sdn Bhd(マレーシア)によって製造された、Sabah Forest Industries Plain Paper Copier紙を挙げることができる。本発明に用い得る他の多孔質印刷媒体は、International Paper Co.,StoraEnso(フィンランド)、及びYamayuriから入手可能である。
【0021】
インクジェットインクは、従来のインクジェット印刷技術によって印刷媒体上に堆積させることができる。例えば、当該インクジェットインクは、Hewlett−Packard Inc.(カリフォルニア州パロアルト)から入手可能な、HP DeskJetプリンタのような、インクジェットプリンタによって堆積させることができる。当該インクジェットインクは、定着液と組合せて印刷媒体上に堆積されることで、湿潤スマッジに対して高い耐性を有する印刷画像を生成することができる。加えて、当該インクジェットインクは、低粘度、改善された印刷適性、及び5秒未満のような速い乾燥時間を有する。印刷画像を与えるのにヒーターが必要になることはない。
【0022】
修飾顔料を固定化し、湿潤スマッジに対する高い耐性を実現するために、定着液を印刷媒体に適用することができる。定着液は、ビヒクルと、インクジェットインクと反応するポリマーとから構成し得る。反応性ポリマーは、修飾顔料の電荷と逆の電荷を有し得る。例えば、修飾顔料がアニオン性である場合、定着液はカチオン性の反応性ポリマーを含み得る。カチオン性の反応性ポリマーとしては、限定はしないが、PEI、水分散性のアルコキシ化形態のPEI、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを挙げることができる。加えて、定着液は、実質的に、着色剤を欠いているか又は可視光を吸収しない着色剤を含み得る。
【0023】
定着液はまた、塩又は酸のような、沈殿剤も含み得る。当該塩は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又はそれらの組合せのような、カチオンを含み得る。当該塩としては、限定はしないが、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、又は硝酸アンモニウムを挙げることができる。当該酸は、コハク酸又はグルタル酸のような、任意の鉱酸又は有機酸とし得る。インクジェットインクの伝導率又はpHを変え、修飾顔料を印刷媒体の表面上に沈殿させるために沈殿剤を用いることができる。定着液は、印刷媒体上でインクジェットインクに関して上刷り又は下刷りすることができる。それ故、定着液は、五番目のペンのような、インクジェットプリンタの追加ペン中に収容することができる。
【0024】
定着液はまた、顔料上の電荷と逆の電荷を有する染料を含み得る。荷電染料を用いることで、修飾顔料を印刷媒体上に沈殿させることができる。例えば、定着液は、修飾顔料がカチオン性ならアニオン性染料を含み得る。あるいは、定着液は、修飾顔料がアニオン性ならカチオン性染料を有し得る。一実施形態では、当該染料はアニオン性シアン染料である。
【0025】
特定の理論に捉われることなく、インクジェットインクが印刷媒体に適用されると、遊離バインダー中のポリマーは、印刷媒体表面上の顔料と空隙との間のギャップを架橋するマトリックスを形成すると思われる。印刷媒体上に定着液を堆積させることで、印刷媒体の表面、修飾顔料、及び遊離バインダー間の相互作用が生じ、印刷媒体上に修飾顔料が固定化される。定着液は印刷媒体上にコーティングを形成し、これが印刷媒体、修飾顔料、及び遊離バインダー間に動的且つ熱力学的に好都合な相互作用をもたらし得る化学的に修飾された表面をもたらす。定着液中の反応性ポリマーの電荷は、修飾顔料の電荷とは逆であるため、修飾顔料とマトリックスは印刷媒体上で固定化される。本発明の種々の実施形態を説明するべく提示する、以下の実施例によって本発明はさらに明らかとなろう。これらの実施例は、例示であって、本発明の範囲を限定する意はない。従って、これらの実施例は、本発明の範囲について網羅的又は排他的であると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0026】
実施例1
修飾顔料と遊離バインダーを用いるインクジェットインク
表1に示す成分を有するインクジェットインク調合物A−Dを作製した。調合物Eに示す成分を有する定着液も作製した。定着液はまた、acid blue 9を含んでいる。
【0027】
【表1】

【0028】
Cabot IJX 489は、Cabot Corp.(マサチューセッツ州ビレリカ)から入手した。Cabot IJX 489は、分子量8000及び酸価165のスチレン−アクリルポリマーがベース顔料であるBlack Pearls(登録商標)に結合したものである。
【0029】
インクジェットインク及び定着液を従来技術により調合した。調合物A−Dの物性を当分野で知られているように測定し、それを表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例2
調合物A−Dの耐久性能
画像は、実施例1記載のインクジェットインク調合物を用いてHP Bright White紙上に印刷した。その印刷画像に対して定着液調合物Eを下刷りした。次いで、印刷画像のODを判定した。ODは、Amazys Holding AG(以前のGretagMacbeth Holding AG)から入手可能なMacBethデンシトメータを用いて測定した。
【0032】
加えて、湿潤スマッジテストを実施した。湿潤スマッジは、インクジェットインクを印刷媒体上に印刷し、乾燥させ、次いで、水の存在下で擦った後の汚れに対する印刷画像の対抗能力である。湿潤スマッジ性能を決定するために、印刷画像全体に水を滴下した。次いで、印刷画像を指サック(finger cot)で覆われた指で擦った。スマッジに対する耐性は、MacBethデンシトメーターによって、OD単位で定量的に測定した。
【0033】
OD及び湿潤スマッジ試験の結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
表3に示すように、調合物A−Dは、湿潤スマッジに耐性であった。遊離バインダーとして1つのポリマーを含めた調合物Aと、遊離バインダーとして2つのポリマーを含めた調合物Bとを比較すると、後者は、湿潤スマッジに対する高い耐性及び同等のODを示した。調合物Cにおけるように、顔料濃度を4.00%に増加させると、OD及び湿潤スマッジに対する耐性が低下した。しかしながら、調合物Dにおけるように、遊離バインダーの量を増やすと、湿潤スマッジに対する高い耐性及び同等のODを実現した。
実施例3
比較的低分子量のポリマーを有する修飾顔料を用いたインクジェットインク
表4に示す成分を有するインクジェットインク調合物F、G、及びHを作製した。
【0036】
【表4】

【0037】
調合物に用いた修飾顔料は、Cabot Corp.(マサチューセッツ州ビレリカ)から入手したCabot IJX 306Bであった。この修飾顔料製品は、ベース顔料であるBlack Pearls(登録商標)に、約4000未満の分子量を有するポリマーを結合させたものであった。Cabot IJX 306Bでは、分子量600のPEHAポリマーがベース顔料に結合している。調合物G及びHも、遊離バインダーとしてNBZ2458−9又はNiccaJet 100を含有する。
【0038】
インクジェットインクは従来技術で調合した。
実施例4
調合物F−Hの耐久性能
実施例3記載のインクジェットインク調合物を、HP Bright White媒体上に印刷した。各インクジェットインク調合物を単独で印刷し、また定着液の下刷りをした。先述のように、OD及び湿潤スマッジ試験を、各調合物について実施した。これらの試験結果を表5−6に示す。
【0039】
【表5】

【0040】
HP Bright White印刷媒体上では、濡れに対する耐性は、インクジェットインクだけでの印刷に比較して、定着液を適用したときは高くなった。印刷画像のODは、定着液を適用したときは少なくとも同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤スマッジに対する高い耐性をもたらす印刷システムであって:
遊離バインダーと修飾顔料とを含むインクジェットインクであって、前記修飾顔料が、顔料の表面に結合された約4000以上の分子量を有するポリマーを含む、インクジェットインク;
定着液;及び
多孔質印刷媒体、
を包含する、印刷システム。
【請求項2】
湿潤スマッジに対する高い耐性を有する印刷画像を生成する方法であって:
多孔質印刷媒体を設けること;
前記多孔質印刷媒体にインクジェットインクを適用することであって、前記インクジェットインクが、遊離バインダーと、表面にポリマーが結合している修飾顔料とを含み、前記ポリマーが、約4000以上の分子量を有する、適用すること;及び
前記多孔質印刷媒体に定着液を適用すること、
を包含する、方法。
【請求項3】
前記遊離バインダーが、ポリエチレンイミン、ポリグアニド、スチレン無水マレイン酸イミド、第四級アンモニウム化合物、スチレン−アクリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、及びそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーを含む、請求項1又は2に記載の印刷システム及び方法。
【請求項4】
前記顔料の表面に結合している前記ポリマーが、約4000〜約17500の分子量を有する、請求項1又は2に記載の印刷システム及び方法。
【請求項5】
湿潤スマッジに対する高い耐性をもたらす印刷システムであって:
遊離バインダー混合物と修飾顔料とを含むインクジェットインクであって、前記修飾顔料が、顔料の表面に結合された約4000以上の分子量を有するポリマーを含む、インクジェットインク;
定着液;及び
多孔質印刷媒体、
を包含する、印刷システム。
【請求項6】
湿潤スマッジに対する高い耐性を有する印刷画像を生成する方法であって:
多孔質印刷媒体を設けること;
前記多孔質印刷媒体にインクジェットインクを適用することであって、前記インクジェットインクが、遊離バインダー混合物と、表面にポリマーが結合している修飾顔料とを含み、前記ポリマーが、約4000以上の分子量を有する、適用すること;及び
前記多孔質印刷媒体に定着液を適用すること、
を包含する、方法。
【請求項7】
前記遊離バインダー混合物が、ポリエチレンイミン、ポリグアニド、スチレン無水マレイン酸イミド、第四級アンモニウム化合物、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも2つのポリマーを含む、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項8】
前記遊離バインダー混合物が、スチレン−アクリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも2つのポリマーを含む、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項9】
前記遊離バインダー混合物中の少なくとも2つのポリマーの分子量比が、約0.001〜約10の範囲にある、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項10】
前記遊離バインダー混合物中の少なくとも2つのポリマーの分子量比が、約1〜約10の範囲にある、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項11】
前記遊離バインダー混合物中の第一ポリマーが、前記遊離バインダー混合物中の第二ポリマーの分子量より低い分子量を有する、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項12】
前記遊離バインダー混合物中の少なくとも2つのポリマーの電荷が、前記修飾顔料の前記ポリマーの電荷と同一である、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項13】
前記顔料の表面に結合している前記ポリマーが、約4000〜約17500の範囲の分子量を有する、請求項5又は6に記載の印刷システム及び方法。
【請求項14】
前記多孔質印刷媒体に定着液を適用することが、前記インクジェットインクに関して前記定着液を下刷りすることを包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質印刷媒体に定着液を適用することが、前記インクジェットインクに関して前記定着液を上刷りすることを包含する、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2008−514465(P2008−514465A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534607(P2007−534607)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/030971
【国際公開番号】WO2006/039034
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】