説明

多孔質基板上の燃料電池の製造方法

【課題】水素イオン伝導固体膜の形成をした際に、固体電解質が前記多孔質基板に貫通することを防ぎ、同時に、電池の電力密度を保ち、且つ、増加させる、燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】液体電解質が、多孔質基板2を貫通することを防ぎ、同時に、燃料電池の電力密度を保持し、又は、増加させるために、前記液体電解質を堆積する前に、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す材料によって形成されたフィルム10によって、前記基板2の気孔2aの輪郭を表す壁2bの少なくとも一部を覆う。さらに、前記フィルム10は、前記基板2の前記気孔2aの中に反応性流体の通過を可能とする膜厚を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の製造のための方法に関するものであって、前記方法は、基板(support)の上に、第1電極と、水素イオン伝導固体膜と、第2電極と、によって形成されたアセンブリの形成を少なくとも有する。前記基板は、壁によって輪郭が表される気孔を有し、前記膜は、液体電解質(liquid electrolyte)の堆積と、乾燥と、によって形成される。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、特に詳細には、マイクロ燃料電池は、EMEアセンブリ、EMEスタック、又は、電池コア(cell core)と呼ばれる、電極−膜−電極のアセンブリ、の基板の上に、連続して堆積することにより、得ることができる。前記基板は、前記スタックの機械的な固定を目的として働き、前記基板の有する気孔のために、前記EMEアセンブリが、例えば、水素、エタノール、又は、メタノールの蒸気のような、反応性流体(reactive fluid)、より詳しくは、燃料、を提供することを可能にする。
【0003】
さらに、高い電力密度を有する燃料電池に対する要求が高まっている。このため、前記水素イオン伝導膜の膜厚を、薄くする必要があり、通常は、約5から10マイクロメートルである。加えて、多孔質基板上に、5から10マイクロメートルの膜厚を有する均質膜を形成することは、前記基板が、この膜厚よりも小さい気孔サイズを有することを要求するものである。
【0004】
しかし、このように、燃料電池の構成材の大きさを減らすことは、毛細管現象の問題を生じることになる。通常、ナフィオン(登録商標)のブランド名の下に、Dupont de Nemours社によって市場に出された製品のような、水素イオン伝導ペルフルオロスルホン酸高分子によって形成される、前記水素イオン伝導固体膜は、実際には、液体フィルム(又は、液体電解質フィルム)を堆積し、乾燥により固化することによって得ることができる。しかし、液体電解質を堆積した時に、前記液体電解質は、毛細管現象の影響により、前記多孔質基板の気孔に貫通(penetrate)するようになる。このことは、前記基板の気孔を詰まらせる恐れ、すなわち、反応性流体の通路をふさぐ恐れが、あることを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水素イオン伝導固体膜の形成をした際に、固体電解質が前記多孔質基板に貫通することを防ぎ、同時に、電池の電力密度を保ち、且つ、増加させる、燃料電池の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す材料によって形成されたフィルムが、前記液体電解質の堆積の前に、気孔の輪郭を表す壁の少なくとも一部の上に、形成され、前記フィルムが、前記気孔の中に反応性流体の通過ができるような膜厚を有する、ことにより達成される。
【0007】
本発明の第1の形態(development)によれば、前記フィルムを形成する前記材料は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す高分子を少なくとも備える。さらに詳細には、前記フィルムは、前記材料、又は、前記材料の少なくとも1つの前躯体が、溶解する溶媒を少なくとも1つ有する溶液を、前記基板に含浸(impregnate)させ、次いで、前記溶媒を蒸発させることによって形成される。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、前記フィルムは化学気相成長法によって形成される。
【0009】
他の利点及び特徴は、本発明の特有な実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特有な実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特有な実施形態は、添付の図面により示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記液体電解質が、前記多孔質基板に貫通することを防ぎ、同時に、前記燃料電池の電力密度を保持し、且つ、増加させるために、前記液体電解質を堆積する前に、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す材料によって形成されたフィルムによって、前記基板の気孔の輪郭を表す前記壁の一部を少なくとも覆う。さらに、前記フィルムは、前記基板の前記気孔の中に前記反応性流体の通過を可能とする膜厚を有する。
【0011】
ラプラス式に従って、多孔質材料への液体の貫通を起こす毛細管圧は、次の式に比例する。
σcosθ/R
−σ:堆積される液体の粘度。
−θ:液滴と多孔質材料の間の接触角で、ドロップ・アングル(drop angle)とも呼ばれる。この角度は、前記液体の液滴が、前記表面に堆積したときの、液体と固形物の平らな表面との界面で測るものであり、固形物と液体のぬれ性の程度を測定するものである。
−R:前記多孔質材料の前記気孔の半径、又は、サイズ。
【0012】
従って、前記毛細管圧は、多孔質材料の前記気孔のサイズと反比例するものである。前記気孔が小さくなるに従い、前記毛細管圧は高くなり、前記液体電解質が貫通しやすくなる。しかしながら、前記多孔質基板へ前記液体電解質の貫通を防ぐために、前記気孔のサイズを大きくすることはできない。実際には、反対に、高い電力密度を獲得するために、前記多孔質基板の前記気孔のサイズは、小さくしなくてはならない。
【0013】
しかしながら、前記毛細管圧は、前記液滴と前記多孔質材料との間の接触角θの関数である。従って、前記液体電解質を前記多孔質材料に貫通させることを防ぐには、負のcosθの値にすることによって、すなわち、90°以上の接触角によって、前記毛細管圧を減らすべきである。90°以上の接触角は、前記多孔質基板の表面は、前記液体電解質の液滴によっては、ぬれにくいことを意味する。比較として、水滴と90°以上の接触角を示す表面は、疎水性と呼ばれる。
【0014】
前記多孔質基板は、さらに詳細には、セラミック、ガラス、金属、シリコン、炭化ケイ素、黒鉛炭素、又は、これらの材料の化合物(association)から作られる。前記基板の気孔は、例えば、セラミック、ガラス、炭化ケイ素、及び、金属から選ばれる、焼結材料の粒子の間に形成される、自由空間(free space)によって形成される。前記多孔質基板は、例えば、ガラス、炭素、又は、高分子の繊維のような、繊維によって形成することができ、且つ、前記繊維の間に配置された前記自由空間は、前記基板の前記気孔を形成する。他の実施形態においては、前記基板の前記気孔を、ケイ素、金属、又は、ガラスのような、材料の塊を、エッチング、又は、穴を開けることによっても、形成することができる。前記気孔は、様々な形状となることができ、それどころか、例えば、貫通する通路(channel)の形状のような、構造形状を有するようにすることができる。しかしながら、前記多孔質基板を形成する前記材料の表面特性は、前記水素イオン伝導固体膜の形成に使用される前記液体電解質が、前記基板の表面に保持されることを可能にするものではない。
【0015】
前記液体電解質の堆積の前に、前記液体電解質と90°以上の接触角を示す材料を、前記基板の前記気孔の輪郭を表す壁の少なくとも一部の上に、有利には、前記壁の全体の上に、堆積する。これにより、前記液体電解質と、前記基板の前記気孔の輪郭を表す前記壁と、の間の前記接触角を、改良することを可能にし、それによって、前記毛細管圧を減らし、前記液体電解質を前記多孔質基板の前記表面に保持することを確保する。
【0016】
例として、図1に、燃料電池1の実施形態を示す。多孔質基板2の一部は、アノード電流コレクタ3によって覆われており、前記アノード電流コレクタ3自体は、3つの薄い層の連続するスタックによって、部分的に覆われている。前記スタックは、それぞれ、アノード4と、例えば、ナフィオンで形成される膜5と、カソード6と、で形成される。前記の3つの薄い層のスタックは、EMEアセンブリ7を構成する。さらに、薄い絶縁層8は、多孔質基板2と、アノード電流コレクタ3と、のそれぞれの自由部分を覆い、前記EMEアセンブリ7の周辺を囲む。しかしながら、前記薄い絶縁層8は、開口部8aを備え、前記開口部8aは、アノード電流コレクタの区域を解放し、負極接続端子(negative connection terminal)の形成を可能にする。最終的には、カソード電流コレクタ9は、カソード6と、薄い絶縁層8の一部と、を覆い、且つ、正極接続端子(positive connection terminal)が、カソード電流コレクタ9の上で形成されることとなる。さらに、有利には、前記膜5は、5から10マイクロメートルの間の膜厚を持つ。
【0017】
前記気孔の輪郭を表す前記壁を覆う前記フィルムは、電解質膜5の形成に用いられる前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す高分子を少なくとも1つ有する材料によって形成される。さらに詳細には、前記材料は、以下のような高分子で形成される。例えば、前記高分子は、以下から選択される。
−ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とその誘導体
−フッ化エチレン−プロピレン(FEP)
−ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とその誘導体
−ポリエチレン(PE)
−ポリプロピレン(PP)
−エチレン−プロピレン
−チオール類
【0018】
また、前記高分子は、ナフィオン、又は、Solvay Solexis社によって市場に出されたハイフロン(登録商標)イオンといった、水素イオン伝導ペルフルオロスルホン酸高分子とすることができる。ナフィオン(又は、ハイフロンイオン)のフィルムの表面と、ナフィオン(又は、ハイフロンイオン)固体膜を形成するための液体電解質の液滴と、の間の前記接触角は、実際には、90°以上である。
【0019】
さらに詳細には、先述した前記高分子と、ナフィオン、又は、ハイフロンイオンのような液体電解質と、の間の前記接触角は、130°から150°の間となる。
【0020】
これらの材料は、前記多孔質基板の表面に前記電解質を保持するために適切な表面特性を示すにもかかわらず、熱特性の観点から見ると、これらの材料は、適切ではない。従って、これらの材料を用いることで、過熱を引き起こし、前記燃料電池の動作を止めるため、これらの材料は、前記多孔質基板を構成する材料として、用いられることはない。
【0021】
従って、少なくとも1つの高分子を有する前記材料は、前記基板の前記気孔の輪郭を表す壁の上に形成される。さらに詳細には、液体を含浸させることによって、形成される。前記基板に、前記材料を溶解する溶媒を少なくとも1つは有する溶液が含浸する。前記溶媒(もしくは、複数の溶媒)は、蒸発し、直前まで溶解していた材料が、前記壁の上に、固体の形状で、堆積する。
【0022】
例として、図1に示される燃料電池1の製造方法における、前記基板2の前記気孔の輪郭を表す前記壁の上に高分子フィルム10を形成する工程が、図2から図4に概略的に示される。本実施形態では、フィルム10は、溶媒と前記材料とを有する溶液11が基板2に含浸することにより形成される。従って、図2及び図3に示されるように、壁2bにより輪郭が表される気孔2aを備える多孔質基板2に、溶液11は含浸する。前記溶液は、前記基板2の気孔2aに貫通し、完全に、前記気孔を満たす。従って、図4に示されるように、前記基板の壁2bの上に前記材料を堆積し、フィルム10を形成するように、蒸発工程では、前記溶媒を除去する。溶液11を構成する前記溶媒は、例えば、真空中で、及び/又は、加熱によって、蒸発する。例えば、前記溶媒は、水、及び/又は、1つもしくはそれ以上のアルコールであることができる。さらに、前記溶媒の蒸発温度は、前記材料を悪化させやすい、又は、傷つけるような温度(この場合においては、融点、ガラス転移点...)よりも低いものである。
【0023】
溶液11中の材料の量は、例えば、1nm以上であるような、充分な膜厚を有するフィルム10によって覆われた前記気孔の壁を作り出すために、充分なものでなければならない。しかしながら、フィルム10により、気孔2aを詰まらせることのないように、すなわち、前記反応性流体の通過、又は、拡散を妨げることがないように、前記フィルムの膜厚は、厚くなりすぎてもいけない。
【0024】
前記基板の前記気孔に前記液体電解質が貫通する恐れを有することなく、フィルム10を堆積した後に、アノード電流コレクタ3と、アノード4と、膜5と、カソード6と、カソード電流コレクタ9と、絶縁層8と、は、前記基板の上に、形成される。膜5は、例えば、スプレッド・コーティング(enduction)により、スプレーコーティングにより、マイクロディスペンサーシステムにより、又は、インクジェット堆積により、液体電解質の堆積を行い、次いで、前記液体電解質を乾燥することによって、形成される。
【0025】
他の実施形態においては、フィルム10の形成の前に、アノード電流コレクタ3と、アノード4と、は、多孔質基板2の上に堆積される。本実施形態は、フィルム10を形成する前記材料が、ナフィオン、又は、ハイフロンイオンのような水素イオン伝導ペルフルオロスルホン酸高分子を有する場合にあわせたものである。この場合、たとえ、アノードが高分子の残留物を有していても、実際には、前記残留物が、前記アノードと電解質との間の水素イオンの通過を妨げることはない。加えて、前記アノードの前記気孔の前記壁の上に、この高分子が存在することによって、表面界面ではなく、体積界面が、前記アノードと前記電解質の間に形成されることが可能とされる。
【0026】
例えば、95%の溶媒(水+アルコール)と、5%のナフィオンと、を有する溶液は、例えば、アルミナで形成されたセラミックの多孔質基板に、例えば、スプレッド・コーティングによって、含浸する。前記の含浸工程は、例えば、1μmの膜厚をもった金の層によって形成されるアノード電流コレクタの堆積と、例えば、5μmの膜厚をもった白金の上に、炭素の層によって形成されるアノードの堆積と、の後に、実施される。前記セラミックの多孔質基板は、5マイクロメートルの平均気孔サイズを有し、且つ、気孔の体積分率が50%である、500マイクロメートルの膜厚を有する。従って、多孔質セラミックの表面1cmあたり、気孔全体の体積は25mmである。従って、前記気孔の体積全体に含浸させるために、25mm/cmの溶液が、必要とされる。85℃、1時間の条件で、前記溶媒は、炉の中で、蒸発し、前記気孔の輪郭を表す壁の上に、ナフィオンは堆積する。前記溶媒の蒸発後、ナフィオンフィルムの膜厚は、約40nmである。前記フィルムの存在によって、気孔をふさぐことはないため、この膜厚により、反応性流体、さらに詳細には水素、の拡散の問題を、回避することができる。例えば、固体ナフィオン膜が得られるように、前記液体電解質を、スプレッド・コーティングによって堆積し、乾燥させる。前記カソードと、カソード電流コレクタと、の形成の後、前記燃料電池は試験される。得られた電力は、水素拡散の問題を誘起させることはない。つまり、前記基板の前記気孔の輪郭を表す壁を覆うフィルムの形成を伴わない、同じ条件で作られた電池とは異なるものである。
【0027】
他の実施形態によると、フィルム10の形成をする前記材料を含むかわりに、溶液11は、前記材料の前躯体を含むことができる。従って、膜5を形成するのに使われる前記液体の液滴と90°以上の接触角を有する高分子を含むために、含浸させる溶液11は、前記高分子のモノマーを含むことができる。この場合、前記モノマーは、前記溶媒の蒸発前に、適切な手段によって重合され、重合によって得られる前記高分子の接触角は、90°以上になる。
【0028】
このように、前記材料の前躯体は、熱作用、紫外線、赤外線処理によって改良することができる表面特性を示す化合物であることができる。さらに詳細には、このような熱処理、紫外線、又は、赤外線処理を施した後に、液体電解質の液滴との前記化合物の前記接触角は、90°以上になる。例として、チオール類の場合には、赤外線、又は、紫外線による処理を行うことで、接触角が改良される。この場合、このような処理は、前記の溶媒蒸発工程の後に、行われる。
【0029】
図2から図4の中では、基板2は、1つの材料によって形成された基板であり、且つ、基板2の中の気孔2aのサイズは、実質的に一定である。有利なのは、前記水素イオン伝導膜の膜厚よりも小さく、さらに詳細には、10マイクロメートルよりも小さい。一方、有利なのは、気孔率の勾配(porosity gradient)を示す基板である。すなわち、前記基板の膜厚に従って、気孔率は変化する。さらに詳細には、図5で示されるように、基板2は、2つの対向する表面2c及び2dを備え、表面2dは、前記EMEアセンブリを受け止めるように設計される。さらに、基板2の中の気孔率は、表面2cから表面2dに向かって、減少する。図5の中では、表面2c近傍に位置する気孔は、実際には、表面2d近傍に位置する気孔よりも大きいサイズである。有利なのは、表面2c近傍に位置する気孔は、前記水素イオン伝導膜の膜厚(例えば、10マイクロメートル)よりも大きいサイズを有し、一方、表面2d近傍に位置する気孔は、前記水素イオン伝導膜の膜厚よりも小さい平均サイズを有する。実際、このような気孔率の勾配は、毛細管力を減らすことを可能にし、それによって、前記多孔質基板の表面に、前記液体電解質を保持することを容易にすることになる。望ましくは、例えば、貫通する通路の形状を有する気孔のような、構造化(例えば、エッチング、又は、穴を開けること)によって得られた気孔の場合には、有利には、表面2dに向かって先が細い錐体形状を有する。
【0030】
図6で示される他の実施形態によれば、前記基板は、2つの積層12及び13のスタックによって形成され、前記2つの積層12及び13は、それぞれ、前記水素イオン伝導膜の膜厚(例えば、10マイクロメートル)と比べて、小さく、及び、大きい、異なる気孔を有する。前記2つの積層12及び13とは、異なる材料、又は、同じ材料によって形成され、しかし、異なる形状の2つの気孔を有する。例えば、層13は、第1気孔を形成する貫通する通路を備え、一方、層12は、層13のものよりも小さいサイズの形状の気孔を有する。
【0031】
フィルム10を形成するのに用いられる前記の高分子、又は、複数の高分子は、前記固体膜を形成するのに用いられる前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を有する他の材料に置き換えることができる。例えば、フィルム10を形成する前記材料は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示すような、金属、セラミック、又は、黒鉛炭素、の粒子のよって構成することができる。フィルム10は、例えば、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、沈殿法(sedimentation)、バス法(bath)、スプレッド・コーティング法、スプレーコーティング法によって、形成される。さらに、前記粒子それ自体が、90°以上の接触角を示すことはなくても、これらの粒子を、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角を示す高分子で形成したコーティングで、覆うことができる。
【0032】
従って、フィルム10の形成は、液体を通路に含浸させる技術に、限定することはない。さらに詳細には、フィルム10を、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、又は、有機金属の前躯体からの化学気相成長法(MOCVD)のような、化学気相成長法(CVD)によって、前記基板の前記気孔の輪郭を表す壁の少なくとも一部の上に、堆積する。フィルム10を形成する前記材料は、例えば、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又は、アモルファスカーボンであることができる。このような材料の平坦な表面の上で、液体電解質の液滴によって形成された、前記接触角は、実際には、90°以上となり、好ましくは、130°から170°の間である。特に、このCVD技術は、均一の膜、すなわち、一定の厚さを有する膜が、ガス相の中での化学分解によって堆積することを可能にする。さらに、有利なのは、多孔質材料へガスを浸透させることを可能にする。従って、先述の、通路への液体の含浸と、溶媒蒸発工程と、を必要とせずに、薄いフィルム10は、前記多孔質基板の各気孔の周りに直接得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】多孔質基板上に形成された燃料電池の実施形態の概略的断面図である。
【図2】図1に示される電池の製造方法における、多孔質基板の気孔の輪郭を表す壁の上に、フィルムを形成する工程を示す概略的断面図である。
【図3】図1に示される電池の製造方法における、多孔質基板の気孔の輪郭を表す壁の上に、フィルムを形成する工程を示す概略的断面図である。
【図4】図1に示される電池の製造方法における、多孔質基板の気孔の輪郭を表す壁の上に、フィルムを形成する工程を示す概略的断面図である。
【図5】第2の実施形態の多孔質基板の概略的断面図である。
【図6】第3の実施形態の多孔質基板の概略的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(2b)によって輪郭が表される気孔(2a)を備える基板(2)の上に、第1電極(4)と、水素イオン伝導固体膜(5)と、第2電極(6)と、で形成されるアセンブリ(7)の形成を少なくとも有する燃料電池(1)の製造方法であって、
前記膜(5)は、液体電解質の堆積及び乾燥により形成され、
前記液体電解質の堆積の前に、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角(θ)を示す材料によって形成されたフィルム(10)は、前記気孔(2a)の輪郭を表す前記壁(2b)の少なくとも一部の上に形成され、前記フィルム(10)は、前記気孔(2a)の中に反応性流体が通過することを可能にする膜厚を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記フィルム(10)を形成する前記材料は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角(θ)を示す高分子を少なくとも1つは有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記高分子は、
−ポリテトラフルオロエチレン、及び、その誘導体、
−フッ化エチレン−プロピレン、
−ポリフッ化ビニリデン、及び、その誘導体、
−ポリエチレン、
−ポリプロピレン、
−エチレン−プロピレン、
−チオール類、
−水素イオン伝導ペルフルオロスルホン酸高分子、
からなる群から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記高分子が、水素イオン伝導ペルフルオロスルホン酸高分子であり、前記フィルム(10)の形成の前に、前記第1電極は、形成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の方法であって、前記基板(2)に、前記材料が溶解する溶媒を少なくとも1つは有する溶液(11)を、含浸させ、次いで、前記溶媒を蒸発させることにより、前記フィルム(10)を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1つに記載の方法であって、前記基板(2)に、前記材料の少なくとも1つの前躯体が溶解する溶媒を少なくとも1つは有する溶液(11)を、含浸させ、次いで、前記溶媒を蒸発させることにより、前記フィルム(10)を形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記前躯体は、重合後に、前記電解質液体の液滴と90°以上の接触角(θ)を示すモノマーによって、形成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記材料の前記前躯体は、前記溶媒の蒸発後に行われる、熱処理、紫外線又は赤外線処理の後に、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角(θ)を示す化合物であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記フィルム(10)を形成する前記材料は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角(θ)を示す、金属、セラミック、又は、黒鉛炭素、の粒子によって構成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記フィルム(10)を形成する前記材料は、前記液体電解質の液滴と90°以上の接触角(θ)を示す高分子によって形成されたコーティングによって覆われた、金属、セラミック、又は、黒鉛炭素、の粒子によって構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記フィルムは、化学気相成長法によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、対向する第1及び第2の表面(2c、2d)を備える前記基板は、前記第1表面(2c)から前記第2表面(2d)に向かって、気孔率の減少を示し、前記第1電極(4)と、前記水素イオン伝導固体膜(5)と、前記第2電極(6)と、で形成される前記アセンブリ(7)は、前記基板の前記第2表面(2d)の上に形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記基板(2)は、2つの積層(12、13)のスタックから形成され、前記2つの積層(12、13)は、それぞれ、前記水素イオン伝導固体膜(5)の膜厚と比べて、小さい、及び、大きい、異なる気孔を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−38024(P2009−38024A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181538(P2008−181538)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】