多孔質粒子及びその製造方法
【課題】水熱処理を必要とせずに、SiO2粒子の壁膜、又はSiO2粒子及び金属粒子の壁膜で区画された孔構造を持つ多孔質粒子を作製する多孔質粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】酸触媒とアルコールとノニオン系両親媒性界面活性剤と金属アルコキシドと水あるいは金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物とを混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程とを有している。
【解決手段】酸触媒とアルコールとノニオン系両親媒性界面活性剤と金属アルコキシドと水あるいは金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物とを混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメソポーラス構造を有する多孔質粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、界面活性剤などが形成する分子集合体をいわゆる鋳型として調製されるメソポーラス材料は、規則的な細孔構造及び均一な細孔径を有するとして、触媒や分離技術、吸着剤などの広範な分野で注目されている。特に、細孔構造や細孔径を制御することは、分子認識能、細孔内部の反応場としての利用などの観点から重要である。
【0003】
例えば、鋳型としてアルキル鎖長の異なるカチオン性界面活性剤を利用して細孔径を制御する方法、あるいはカチオン性−アニオン性界面活性剤の混合系などの異種界面活性剤の混合系を鋳型に用いて細孔構造と細孔径を制御する方法などが知られている。細孔径を変化させる方法として、鋳型となる分子集合体に種々の分子を可溶化させる方法などがある。
【0004】
一例として、図18に示されるように、ポリオキシエチレン(PEO)鎖とポリオキシプロピレン(PPO)鎖を含むトリブロック共重合体(非イオン性のプルロニック系界面活性剤)であるF127と共に被可溶化物質として1,3,5−トリメチルベンゼン(TMB)や1,3,5−トリエチルベンゼン(TEB)等を混合して撹拌、可溶化した後、水熱処理を行なってシリカ/F127複合粒子を得、この複合粒子を焼成処理してシリカ粒子を調製する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】材料技術 27(1)、p.21〜26(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、両親媒性高分子を鋳型に用いてメソポーラス材料を作製する場合、通常は密閉容器内で高温高圧処理を行なう水熱処理が必要であり、この水熱処理がエネルギー、コスト、安全性などの点で工業化の障壁となっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、水熱処理を必要とせずに、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等の金属酸化物粒子の壁、又は該金属酸化物粒子及び金属粒子の壁で区画された多孔構造を持つ多孔質粒子を作製する多孔質粒子の製造方法、並びに、該金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子を含む壁で区画された多孔構造を有する多孔質粒子を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、及び水を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を有する多孔質粒子の製造方法である。
【0009】
<2> 酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、並びに金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を有する多孔質粒子の製造方法である。
【0010】
<3> 前記気化工程は、20℃以上35℃以下の温度領域で気化させることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の多孔質粒子の製造方法である。
<4> 前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤であることを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の多孔質粒子の製造方法である。
<5> 前記調製工程は、酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、及び水もしくは金属粒子水分散物を混合した後、金属アルコキシドを更に混合することを特徴とする前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の多孔質粒子の製造方法である。
【0011】
<6> 金属酸化物粒子と金属粒子とを含む壁で区画された孔構造を有する多孔質粒子である。
<7> 前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子(SiO2)、チタニア粒子(TiO2)、及びジルコニア粒子(ZrO2)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記<6>に記載の多孔質粒子である。
<8> 前記孔構造の細孔間距離が、8〜20nmであることを特徴とする前記<6>又は前記<7>に記載の多孔質粒子である。
本発明において、細孔間距離は、隣接する孔と孔の中心間距離を指す。以下、同様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水熱処理を必要とせずに、シリカ粒子やチタニア粒子、ジルコニア粒子等の金属酸化物粒子の壁、又は該金属酸化物粒子及び金属粒子の壁で区画された多孔構造を持つ多孔質粒子を作製する多孔質粒子の製造方法を提供することができる。また、
本発明によれば、該金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子を含む壁で区画された多孔構造を有する多孔質粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を簡略して示す概略工程図である。
【図2】トリブロック系界面活性剤が形成するミセルのモデルを示す概略図である。
【図3】ミセルの周囲にシリカ粒子、あるいはシリカ粒子及び金属粒子が配列して筒状の細孔が形成されている状態を拡大して示す斜視図である
【図4】実施例1の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を示す工程図である。
【図5】メソポーラスシリカ粒子の小角X線散乱パターンとピークでの2θ(細孔の細孔間距離)を示すグラフである。
【図6】(a)はメソポーラスシリカ粒子の細孔構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図7】気化させる温度を変化させたときの小角X線散乱パターンのピークの変化を示すグラフである。
【図8】窒素吸脱着時における吸着量を示すグラフである。
【図9】実施例2の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を示す工程図である。
【図10】実施例2の金コロイド水溶液を調製する工程の流れの一例を示す工程図である。
【図11】メソポーラス金粒子の小角X線散乱パターンを示すグラフである。
【図12】(a)はメソポーラス金粒子の細孔構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図13】アセトンを用いたときの小角X線散乱パターンをエタノールの場合と対比して示すグラフである。
【図14】(a)はアセトンを用いて調製した粒子の構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図15】HCl:H2O:EtOHの比を変化させたときの小角X線散乱パターンの変化を示すグラフである。
【図16】図15の(b)〜(d)のパターンを15倍に拡大して示すグラフである。
【図17】HCl:H2O:EtOHの比を変化させたときの小角X線散乱パターンの変化を示すグラフである。
【図18】従来のシリカ粒子の製造工程の流れを示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の多孔質粒子の製造方法について詳細に説明すると共に、該説明を通じて、本発明の多孔質粒子についても詳述する。
【0015】
本発明の多孔質粒子の製造方法は、酸触媒とアルコールとノニオン系両親媒性界面活性剤と金属アルコキシドと水又は金属粒子水分散物とを混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物からアルコールの少なくとも一部及び/又は水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、アルコール及び水の少なくとも一部を気化させた後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を設けて構成されたものである。
【0016】
本発明においては、ノニオン系両親媒性界面活性剤が形成するミセルを鋳型として利用し、これに金属アルコキシドを用いてミセルの周囲に金属酸化物粒子(例えば、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等)が配列することにより壁(以下、「壁」を「壁膜」ともいう。)を形成して多孔質粒子を作製する。このとき、シリカやチタニア、ジルコニア等の種々の無機酸化物を壁膜、バインダーとして粒子中に含ませることが可能である。この場合に、所定の割合の酸触媒とアルコールとを水又は金属粒子水分散物と共に混合した後、焼成前に水分及び/又はアルコール分の少なくとも一部を気化させる工程を設けたことで、両親媒性界面活性剤を用いながらも水熱処理を行なうことなく、規則性のあるポーラス構造が形成される。これにより、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)の壁膜、又は金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子の壁膜により区画されて複数の孔が形成された孔構造を持つ多孔質粒子を作製することができる。
また、水及び/又はアルコールを気化させる際の温度条件を変化させることにより、細孔の細孔間距離を制御することが可能である。
【0017】
−調製工程−
本発明における調製工程では、酸触媒と、アルコールと、ノニオン系両親媒性界面活性剤と、金属アルコキシドと、水又は金属粒子水分散物とをそれぞれ1種又は2種以上混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する。水性組成物には、必要に応じて、更にアルカリ金属塩や膨潤剤を加えてもよい。
【0018】
混合は、成分の添加順序に制限はなく、各成分を任意の順に添加して撹拌等して行なうことが可能であり、全ての成分を加えた後に撹拌を開始するようにしてもよい。例えば、水又は金属粒子水分散物と酸触媒とアルコールとを混合した混合物にノニオン系両親媒性界面活性剤を加え、撹拌した後、更に金属アルコキシドを加えて調製してもよい。この場合、両親媒性界面活性剤が含まれた混合物に金属アルコキシドを加える前に、フュームドシリカなどのシリカ粒子を更に加えてもよい。
【0019】
本工程で水性組成物を調製する場合、撹拌等による混合は、添加した水、アルコールの撹拌等の過程での気化を抑えて行なうことが好ましい。水やアルコールの気化が多いと細孔構造が得られなくなるため、撹拌等の混合操作中の気化を少なく抑えることが好ましく、これによりその後に気化工程を設けたことによる多孔構造、特にメソ構造の形成性、孔配列の規則性が良化する。本発明においては、各成分の撹拌等による混合は、密閉等により混合物を閉塞空間に保持できる容器を用い、例えば、各成分を加える毎に容器を閉塞し、閉塞状態で成分を撹拌、混合する態様が好ましい。
【0020】
混合は、撹拌により行なえ、例えば、マグネチックスターラ、撹拌機などを使用できる。成分の添加、混合時の温度は、特に制限はないが、混合過程での気化を抑制する点から、20℃〜40℃の範囲が好ましい。また、混合時間は、温度や撹拌速度などの条件や他の目的等に応じて選択すればよい。
【0021】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。酸触媒の水性組成物中における濃度は、アルコール(特にエタノール)に対して、0.09〜0.15モル%が好ましく、0.09〜0.11モル%が好ましい。酸触媒の水性組成物中に占める割合は、0.09モル%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすく、0.15モル%以下であると、高い規則性を付与できる。酸触媒としては、塩酸が好適に用いられる。
【0022】
アルコールとしては、後の気化工程で気化させ得るものであれば使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等を挙げることができる。アルコールは、後の気化工程で気化させ易い観点からは、沸点が比較的低いものが好ましく、アルコールの沸点は110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。中でも、揮発性が比較的高い点で、炭素数1〜3のアルコールが好ましく、メタノール、エタノールが特に好ましい。
【0023】
アルコールの水性組成物中の含有割合としては、水性組成物の全質量に対して、50〜95質量%が好ましく、55〜95質量%が好ましい。アルコールの水性組成物中における割合は、50質量%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすくなる。また、アルコールの含有割合が95質量%以下の範囲内において、効果的に規則性のある細孔構造が得られる。
【0024】
酸触媒とアルコールと水との合計量(tol)に対するアルコール(al)の水性組成物中における比率(al/tol;質量比)は、0.55以上の範囲とし、好ましくは0.70以上の範囲であり、より好ましくは0.90以上の範囲である。比率al/tolの上限値は、1.00が望ましい。比率al/tolが0.55未満であると、規則性のある細孔構造を持つ多孔構造が得られない。
【0025】
ノニオン系両親媒性界面活性剤は、1分子内に親水基と疎水基とを持つ非イオン性高分子であり、水溶性を有するものから選択することができる。水溶性を有していると、図2に示すように、水性組成物中でミセルを形成することができる。この両親媒性界面活性剤の存在下、後工程で水、アルコールを気化させることで、例えば図1及び図3に示すように、ミセルの親水基の部位にシリカ粒子が存在する配列構造を形成することができる。
【0026】
ノニオン系両親媒性界面活性剤としては、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤(プルロニック系界面活性剤)が好ましい。プルロニック系界面活性剤は、一般にポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)との3元ブロック共重合体で両末端に水酸基を持つ化合物の総称である。両末端は水酸基でなくてもよい。プルロニックの市販品としては、PEGとPPGの分子量が異なったものが多く上市されており、重合度の範囲については、PPGが15〜65で、PEGが1〜150のものがある。トリブロック系界面活性剤としては、(C2H4O)a(CnH2nO)b(C2H4O)cの構造〔n=3〜4、a,b,cは整数を表す。〕を有するものが好ましく、n=3の場合がより好ましい。具体的な例としては、プルロニックL31〔(C2H4O)1.3−(C3H6O)15.8−(C2H4O)1.3〕、同L35、同L44、同L64〔(C2H4O)13(C3H6O)30(C2H4O)13〕、同P123〔(C2H4O)20(C3H6O)70(C2H4O)20〕、同F127〔(C2H4O)60(C3H6O)120(C2H4O)60〕などが使用可能である。
【0027】
ノニオン系両親媒性界面活性剤の水性組成物中の含有割合としては、水性組成物の全質量に対して、7〜9質量%が好ましく、8〜9質量%が好ましい。ノニオン系両親媒性界面活性剤の水性組成物中における割合が7質量%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすい。また、ノニオン系両親媒性界面活性剤の含有割合が9質量%以下の範囲内において、少量でより効果的に規則性のある細孔構造が得られる。
【0028】
金属アルコキシドとしては、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の化合物を用いることができ、M(OCmH2m+1)nRqH4−n−q〔Mは、Si、Ti、Zrを表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。m=1〜4、n=2〜4、q=0〜2、但し、n+q=4を満たす。〕で表される化合物群から選択することができる。
【0029】
前記アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のSi(OCmH2m+1)4〔m=1〜3〕、メチルトリエトキシシラン等のSi(OCmH2m+1)3CH3〔m=1〜3〕などを挙げることができる。中でも、mは1〜2の範囲が好ましい。
前記アルコキシチタンとしては、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のTi(OCmH2m+1)4〔m=1〜4〕などを挙げることができる。中でも、mは3〜4の範囲が好ましい。
前記アルコキシジルコニウムとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のZr(OCmH2m+1)4〔m=1〜4〕などを挙げることができる。中でも、mは3〜4の範囲が好ましい。
【0030】
金属アルコキシドの水性組成物中における含有割合としては、ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、30〜70質量%が好ましく、50〜70質量%が好ましい。金属アルコキシドの割合は、30質量%以上であると、細孔構造を形成する壁膜の強度が得られる。また、70質量%以下の範囲で金属アルコキシドを含むことにより、壁膜の構築に寄与する量を確保することができる。
【0031】
本発明における水性組成物には、上記成分とともに水を含有するか、あるいは金属粒子水分散物を含有する。上記成分を水と共に混合することで、Siを含む水溶液が得られ、また、水成分として金属粒子水分散物を混合することで、Si等の金属と金属粒子を含む水溶液が得られる。後者では、金属粒子がシリカ粒子などの金属酸化物粒子とともに壁膜を形成し、金属粒子を含む壁膜で区画された孔構造(例えばメソポーラス構造)を有する多孔質粒子(例えばメソポーラス金粒子)が得られる。
【0032】
本明細書中において、「メソ」又は「メソポーラス」は、ミクロとマクロの間のサイズ又はその孔のことであり、メソポーラス物質はミクロポーラス物質(ゼオライト等)とマクロポーラス物質(多孔質ガラス等)との中間に位置する物質である。本発明にいうメソポーラスは、細孔間距離が8nm〜20nmの孔であることが好ましい。
【0033】
水には、蒸留水、イオン交換水などを使用でき、水の水性組成物中の割合は上記の成分の量に応じて適宜選択すればよい。
【0034】
金属粒子水分散物は、金属又は金属酸化物の粒子が比較的安定に分散された分散液やコロイド溶液であれば、特に制限はない。金属粒子水分散物には、金属等の粒子に加え、分散に一般に用いられる分散剤を含めてもよい。金属粒子水分散物は、例えば、水に溶解する還元剤(例:クエン酸又はその塩、ヒドラジン)を用いて金属イオンを還元し、金属粒子を析出させる、あるいは金属粒子を必要により分散剤を用いて分散させる等の方法により調製することができる。金コロイド粒子を調製する場合、例えば、塩化金酸を含む水溶液に、クエン酸又はクエン酸ナトリウムの存在下、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を加えて撹拌し、調製することができる。
【0035】
金属粒子としては、長周期律表の第4属から第13属の金属又はその酸化物の粒子が好ましく、遷移金属又はその酸化物の粒子が好ましい。金属又はその酸化物は、用途などに応じて選択することができるが、特には、貴金属(Au、Pt、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、又は金属酸化物(SiO2,TiO2,ZrO2など)が好ましい
【0036】
水性組成物には、上記成分に加えて、両親媒性界面活性剤が含まれた混合物に、例えばアルコキシシランを加える前に、フュームドシリカなどのシリカ粒子を加えてもよい。このようなシリカ粒子の混合により、形成される多孔構造をより強固にすることができる。
フュームドシリカは、微粒子状の無水シリカの一種であり、熱分解法シリカ、乾式法シリカ、乾式法ホワイトカーボン、軽質無水ケイ酸、煙霧質シリカとも称される。フュームドシリカの製造は、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の火炎加水分解法(気相分解法)や、有機ケイ素化合物(例:メチルトリクロロシラン、ジメチルポリシロキサン)等の熱分解による方法、ケイ砂を加熱還元して気化したSiOを空気酸化させる方法などにより行なえる。
【0037】
また、フュームドシリカの表面を改質して疎水性化した疎水性フュームドシリカを用いてもよい。疎水性フュームドシリカは、フュームドシリカの表面をジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイル等で処理するオイル処理や、トリメチルシリル基、オクチルシラン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メタクリロキシシラン、ポリメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、アミノシラン等での処理、メチル基グループでの処理等により得られる。疎水性化した疎水性フュームドシリカとして、例えば、日本アエロジル(株)製のR104,R106,R812等を用いることができる。
【0038】
更に、水性組成物には、アルカリ金属の塩を含有することができる。アルカリ金属の塩を加えることにより、形成される多孔構造の細孔径を大口径化することができる。アルカリ金属の塩としては、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどを用いることができる。
前記アルカリ金属の塩の混合量は、ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、50〜70質量%の範囲が好ましい。アルカリ金属の塩の割合が前記範囲内であると、細孔径を効果的に(例えば細孔間距離を10nm以上に)大径化することができる。
【0039】
また、水性組成物には、膨潤剤を前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が形成するミセル中に可溶化させて用いることにより、膨潤剤を可溶化した界面活性剤の分子集合体は膨張し、形成される多孔構造の細孔径を大口径化することができる。膨潤剤は、水に不要な有機化合物として、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼンなど、ベンゼンの炭素数1〜3アルキル(モノ,ジ,トリ)置換体等が挙げられる。中でも、揮発性が比較的低く、規則性のある多孔構造を形成しやすい点で、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンが好ましい。
【0040】
前記膨潤剤を用いる場合、膨潤剤の水性組成物中における含有割合は、前記ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、50〜70質量%の範囲が好ましい。膨潤剤の含有割合が前記範囲内であると、細孔径を効果的に(例えば細孔間距離を10nm以上に)大径化することができる。
【0041】
−気化工程−
気化工程は、前記調製工程で調製された水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる。水性組成物から水及びアルコールの少なくとも一部を気化させることにより、図1及び図3に示されるように、ノニオン系両親媒性界面活性剤の親水基の周りに金属酸化物粒子(シリカ粒子など)、あるいは金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子が集まり、規則的に配列されるようになる。これにより、多孔構造、特にメソポーラス構造が形成される。
【0042】
アルコール及び水の気化は、室温下で行なってもよく、具体的には常圧(0.1MPa)下、20℃以上の温度領域で行なうことができる。この場合、必要に応じて加熱してもよい。気化させる温度を加熱により上昇させることにより、例えば図7に示されるように、2θの値のピークが広角へシフトする。これにより、細孔間距離を制御することが可能である。また、細孔間距離が均一でシャープなピーク波形、すなわち規則的な配列構造を持つ多孔構造を得やすい点から、気化させる温度は高過ぎないことが好ましく、常圧下では100℃程度までの温度領域が好ましい。より規則性のある多孔構造、特にメソポーラス構造を形成する観点から、気化させる温度は常圧(0.1MPa)下で20℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上35℃以下の温度領域がより好ましい。このとき、気化温度を変化させることにより、ノニオン性界面活性剤に吸着している水和水の量が変化することで細孔間距離が変化し、細孔径のより大きい(例えば細孔間距離を10nm以上)細孔構造を形成することができると推測される。
【0043】
また、水及びアルコールの気化は、真空引き等することにより減圧下で行なってもよい。減圧することで、気化時の温度を低く抑えることが可能である。
【0044】
気化工程では、水及びアルコールの少なくとも一部の気化でも粒子壁で区画された細孔構造を形成することが可能であり、必ずしも粉末状に乾く必要はなく、ある程度粘性を有している状態で終了してもよい。成分構成等によらず安定的に規則性のある細孔構造、特にメソポーラス構造を得る観点では、水及びアルコールの5質量%以上気化させるのが好ましく、10質量%以上気化させるのがより好ましい。
【0045】
−焼成工程−
焼成工程は、前記気化工程で気化させた後の水性組成物を焼成する。気化処理を施した後に焼成することで、ミセルを形成していたノニオン系両親媒性界面活性剤及び場合により膨潤剤が熱で除去され、図1に示されるように、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)、あるいは金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子の壁膜で複数の細孔構造が形成された多孔粒子が形成される。
【0046】
焼成は、450℃以上の温度で加熱して行なうことができる。焼成温度の好ましい範囲は、500℃〜600℃である。焼成温度は、450℃以上であると細孔構造が安定的に形成されやすく、また、あまり高くなり過ぎない温度領域、好ましくは600℃に抑えると、規則的な配列が保たれ、規則性のある細孔構造が得られやすい。
【0047】
焼成時間は、前記焼成温度により適宜選択すればよく、細孔構造を安定的に形成する点では、5〜10時間程度が望ましい。
【0048】
また、高温で行なう焼成工程の前に、あらかじめ加熱処理を行なってもよい。焼成工程での焼成温度より低い温度で加熱処理し、残存している水やアルコールを除去しておくことで、水等の残存量の多い場合に比べ、細孔構造、特にメソポーラス構造の孔配列の規則性をより高めることができる場合がある。この場合の加熱温度としては、200℃〜300℃の範囲が好ましい。
【0049】
以上の工程を経ることにより、図1に示すように、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等の金属酸化物粒子の壁、あるいは該金属酸化物粒子(シリカ粒子(SiO2)など)及び金属粒子の壁で区画された複数の孔を含む孔構造を有する多孔質粒子が得られる。
シリカ粒子等の金属酸化物粒子の壁膜を有する多孔質粒子は、図1に示すようにシリカ粒子等が断面円形の筒状に集まってできた孔が規則的に配列して形成されている。
シリカ粒子等の金属酸化物粒子及び金属粒子の壁膜を有する多孔質粒子は、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)と金属粒子とが混在して、図1に示すように断面円形の筒状の孔が構成され、これらの孔が規則的に配列して形成されている。
【0050】
多孔構造の孔間を仕切る壁を形成するシリカ粒子、金属粒子の形状は、球形、楕円形などが好ましく、球形が規則的な配列構造が得られる点で好ましい。
【0051】
本発明において、多孔質粒子は、(1)孔径をコントロールして所望の細孔構造を有し、孔中に多様な物質を入れることが可能であり、(2)物質の吸脱着性に優れている。
【0052】
多孔質粒子中の壁膜がシリカ粒子等の金属酸化物粒子と金属粒子とで構成される場合、シリカ粒子等の金属酸化物粒子と金属粒子との比率には特に制限はなく、いずれの粒子が主に含まれた形態でもよい。例えば金属粒子として金粒子がシリカ粒子より多く存在する場合、金粒子間にシリカ粒子がバインダー成分として存在するメソポーラス金粒子が得られる。
【0053】
多孔質粒子の平均粒子径としては、好ましくは体積平均粒子径で50nm〜100μmの範囲である。この範囲の多孔質粒子は、例えば上記の本発明の多孔質粒子の製造方法により得られる。体積平均粒子径は、用途や目的等により好ましい範囲は異なるが、小粒径かつ大口径が好ましい点から、細孔間距離が8nm〜20nmである場合に前記範囲内であることが好ましい。
なお、体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の写真観察より測定される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
図4に示す操作手順にしたがって、下記のようにメソポーラスシリカ粒子を調製した。
蓋付き容器として容量50mlのスクリュー管瓶を用意し、これに2M 塩酸(HCl)0.1gと、水(H2O)0.9gと、エタノール(EtOH)10gとを投入した後、さらに下記構造のプルロニックF127〔(PEO)60(PPO)120(PEO)60;ノニオン系両親媒性界面活性剤〕1.0gを加え、容器内の水分及びアルコール分の気化を抑えるために蓋を取り付けて室温(15〜30℃;以下同様)下で24時間、撹拌した。これに更に、疎水性フュームドシリカ粒子(R104、日本アエロジル(株)製)0.1gを加え、同様に蓋を取り付けてから再び室温下で2時間、撹拌した。その後、5mmolのテトラエトキシシラン(TEOS)1.04gを加え、再び蓋を取り付けてから室温下で2時間、撹拌し、水性組成物を調製した。
【0056】
【化1】
【0057】
次いで、容器の蓋を取り外し、得られた水性組成物を20℃〜60℃の5つの温度で12〜24時間、水性組成物中の水分及びエタノールを気化させた。
【0058】
気化させる処理の終了後、550℃で6時間、水性組成物を焼成した。
以上のようにして、細孔が規則的に配列した大口径のメソポーラスシリカ粒子が得られた。
【0059】
−評価−
得られたメソポーラスシリカ粒子について、Ultima IV〔(株)リガク製〕を用い、小角X線散乱法により小角X線散乱パターンを計測し、測定値2θからBraggの式より細孔間距離d(壁膜の厚みを含む孔と孔の中心間距離[nm])を算出した。また、得られたメソポーラスシリカ粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により拡大して観察し、さらにTEM写真から体積平均粒子径を求めた。その結果を図5〜図6に示す。
【0060】
図5に示すように、焼成の前後で所定位置にピークが現れており、細孔間距離dが10nm付近の開口径の大きい細孔が形成されていることが確認された。このメソポーラスシリカ粒子について、焼成後の細孔構造を図6に示す。焼成後のメソポーラスシリカ粒子は、図6に示されるように、細孔が規則的に配列された細孔構造を有していた。
更に、揮発温度を20℃、25℃、35℃、40℃、60℃と変えた場合の小角X線散乱パターンの変化を図7に示す。いずれの揮発温度でも、メソポーラス構造が得られていることが分かる。また、図7に示されるように、気化させる温度を上昇させるに伴ない、測定値が大きくなり、波形が広角(ブロード)に変化することが分かる。すなわち、気化させる温度を変化させることで細孔間距離の制御が可能であり、また、より低温側で揮発させることで規則性の高い細孔構造が得られる。中でも、揮発温度は、20℃〜35℃の範囲が好ましい。
焼成後のメソポーラスシリカ粒子について、窒素の吸脱着測定を行なったところ、N2吸脱着性は、図8に示すように、吸着時/脱着時で細孔に起因するヒステリシスを示した。つまり、メソポーラスシリカ粒子には、断面円形の柱状の孔構造が存在しており、良好な吸着特性が認められた。
【0061】
(実施例2)
図9に示す操作手順にしたがってメソポーラス金粒子を調製した。
具体的には、実施例1において、2M 塩酸及びエタノールとともに混合した水0.9gを、下記の金コロイド水溶液(Au colloid aq.)0.9gに代え、かつ疎水性フュームドシリカ粒子を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、メソポーラス金粒子を調製し、測定、評価を行なった。このとき、水性組成物中の水及びエタノールの気化は、25℃で12〜24時間の条件にて行なった。
得られたメソポーラス金粒子には、細孔が規則的に配列した大口径のメソポーラス構造が形成されていた。
【0062】
−金コロイド水溶液の調製−
図10に示す操作手順にしたがい、水50mlに塩化金酸・3水和物の1質量%水溶液1mlとクエン酸ナトリウムの1質量%水溶液1mlとを加えて撹拌した後、さらに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の0.075質量%水溶液1mlを撹拌しながら添加し、その後さらに沸騰させながら10分間撹拌を行なって金コロイド水溶液(Au colloid aq.)を調製した。10分間の撹拌で約10nmの粒子とした。
【0063】
−評価−
得られたメソポーラス金粒子に対して、実施例1と同様の方法で小角X線散乱パターンを計測すると共に、メソポーラス金粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、さらに体積平均粒子径を求めた。その結果を図11〜図12に示す。
【0064】
図11に示すように、焼成の前後で所定位置にピークが現れており、面間距離dが10nm付近の開口径の大きい細孔が形成されていることが確認された。このメソポーラス金粒子について、焼成後の細孔構造を図12に示す。焼成後のメソポーラス金粒子は、図12に示されるように、細孔が規則的に配列されたメソポーラス構造を有していた。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、エタノール10gをアセトン10gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
その結果、図13及び図14に示すように、得られた粒子にメソポーラス構造を形成できなかった。なお、図13には、エタノールを用いた場合と対比して示す。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、2M 塩酸、水、及びエタノールの混合比率〔(a)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10(質量比)〕を下記(b)〜(d)の比率(質量比)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
(b) HCl:H2O:EtOH=0.1:2.2:9
(c) HCl:H2O:EtOH=0.1:3.5:8
(d) HCl:H2O:EtOH=0.1:4.8:7
【0067】
その結果、図15〜図16に示すように、比率(b)〜(d)で得られた粒子のいずれにも、規則的な細孔構造に由来するピークが観測され、メソポーラス構造を有することが確認された。なお、図15〜図16には、(a) HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10とした場合(実施例1)と対比して示す。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、2M 塩酸、水、及びエタノールの混合比率〔(1)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10(質量比)〕を下記(2)〜(5)の比率(質量比)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
(2)HCl:H2O:EtOH=0.1:5.9:6
(3)HCl:H2O:EtOH=0.1:13.5:0
(4)HCl:H2O:EtOH=13.6:0:0
(5)HCl:H2O:EtOH=0:0:11
【0069】
その結果、図17に示すように、得られた粒子にメソポーラス構造を形成できなかった。なお、図17には、(1)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10とした場合(実施例1)と対比して示す。
【0070】
上記の実施例では、シリカ粒子、金粒子を用いた場合を中心に説明したが、シリカ粒子、金以外の既述の他の金属や金属酸化物を用いた場合にも、水熱処理を行なわず、混合後に気化工程を設けることにより、規則性のある細孔構造を形成することができる。また、アルコールとしてエタノールを用い、金属アルコキシドとしてTEOS(アルコキシシラン)を用いた場合を中心に説明したが、エタノールやTEOS以外の既述のアルコール、金属アルコキシドを用いた場合にも、水熱処理を行なわず、混合後に気化工程を設けることにより、規則性のある細孔構造を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、触媒材料、バイオセンサ、ガスセンサ等のセンサ材料、電極、分離剤、吸着剤などの用途に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメソポーラス構造を有する多孔質粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、界面活性剤などが形成する分子集合体をいわゆる鋳型として調製されるメソポーラス材料は、規則的な細孔構造及び均一な細孔径を有するとして、触媒や分離技術、吸着剤などの広範な分野で注目されている。特に、細孔構造や細孔径を制御することは、分子認識能、細孔内部の反応場としての利用などの観点から重要である。
【0003】
例えば、鋳型としてアルキル鎖長の異なるカチオン性界面活性剤を利用して細孔径を制御する方法、あるいはカチオン性−アニオン性界面活性剤の混合系などの異種界面活性剤の混合系を鋳型に用いて細孔構造と細孔径を制御する方法などが知られている。細孔径を変化させる方法として、鋳型となる分子集合体に種々の分子を可溶化させる方法などがある。
【0004】
一例として、図18に示されるように、ポリオキシエチレン(PEO)鎖とポリオキシプロピレン(PPO)鎖を含むトリブロック共重合体(非イオン性のプルロニック系界面活性剤)であるF127と共に被可溶化物質として1,3,5−トリメチルベンゼン(TMB)や1,3,5−トリエチルベンゼン(TEB)等を混合して撹拌、可溶化した後、水熱処理を行なってシリカ/F127複合粒子を得、この複合粒子を焼成処理してシリカ粒子を調製する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】材料技術 27(1)、p.21〜26(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、両親媒性高分子を鋳型に用いてメソポーラス材料を作製する場合、通常は密閉容器内で高温高圧処理を行なう水熱処理が必要であり、この水熱処理がエネルギー、コスト、安全性などの点で工業化の障壁となっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、水熱処理を必要とせずに、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等の金属酸化物粒子の壁、又は該金属酸化物粒子及び金属粒子の壁で区画された多孔構造を持つ多孔質粒子を作製する多孔質粒子の製造方法、並びに、該金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子を含む壁で区画された多孔構造を有する多孔質粒子を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、及び水を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を有する多孔質粒子の製造方法である。
【0009】
<2> 酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、並びに金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を有する多孔質粒子の製造方法である。
【0010】
<3> 前記気化工程は、20℃以上35℃以下の温度領域で気化させることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の多孔質粒子の製造方法である。
<4> 前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤であることを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の多孔質粒子の製造方法である。
<5> 前記調製工程は、酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、及び水もしくは金属粒子水分散物を混合した後、金属アルコキシドを更に混合することを特徴とする前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の多孔質粒子の製造方法である。
【0011】
<6> 金属酸化物粒子と金属粒子とを含む壁で区画された孔構造を有する多孔質粒子である。
<7> 前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子(SiO2)、チタニア粒子(TiO2)、及びジルコニア粒子(ZrO2)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記<6>に記載の多孔質粒子である。
<8> 前記孔構造の細孔間距離が、8〜20nmであることを特徴とする前記<6>又は前記<7>に記載の多孔質粒子である。
本発明において、細孔間距離は、隣接する孔と孔の中心間距離を指す。以下、同様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水熱処理を必要とせずに、シリカ粒子やチタニア粒子、ジルコニア粒子等の金属酸化物粒子の壁、又は該金属酸化物粒子及び金属粒子の壁で区画された多孔構造を持つ多孔質粒子を作製する多孔質粒子の製造方法を提供することができる。また、
本発明によれば、該金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子を含む壁で区画された多孔構造を有する多孔質粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を簡略して示す概略工程図である。
【図2】トリブロック系界面活性剤が形成するミセルのモデルを示す概略図である。
【図3】ミセルの周囲にシリカ粒子、あるいはシリカ粒子及び金属粒子が配列して筒状の細孔が形成されている状態を拡大して示す斜視図である
【図4】実施例1の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を示す工程図である。
【図5】メソポーラスシリカ粒子の小角X線散乱パターンとピークでの2θ(細孔の細孔間距離)を示すグラフである。
【図6】(a)はメソポーラスシリカ粒子の細孔構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図7】気化させる温度を変化させたときの小角X線散乱パターンのピークの変化を示すグラフである。
【図8】窒素吸脱着時における吸着量を示すグラフである。
【図9】実施例2の多孔質粒子の製造工程の流れの一例を示す工程図である。
【図10】実施例2の金コロイド水溶液を調製する工程の流れの一例を示す工程図である。
【図11】メソポーラス金粒子の小角X線散乱パターンを示すグラフである。
【図12】(a)はメソポーラス金粒子の細孔構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図13】アセトンを用いたときの小角X線散乱パターンをエタノールの場合と対比して示すグラフである。
【図14】(a)はアセトンを用いて調製した粒子の構造を拡大して示すTEM写真であり、(b)は別の角度から拡大して示すTEM写真である。
【図15】HCl:H2O:EtOHの比を変化させたときの小角X線散乱パターンの変化を示すグラフである。
【図16】図15の(b)〜(d)のパターンを15倍に拡大して示すグラフである。
【図17】HCl:H2O:EtOHの比を変化させたときの小角X線散乱パターンの変化を示すグラフである。
【図18】従来のシリカ粒子の製造工程の流れを示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の多孔質粒子の製造方法について詳細に説明すると共に、該説明を通じて、本発明の多孔質粒子についても詳述する。
【0015】
本発明の多孔質粒子の製造方法は、酸触媒とアルコールとノニオン系両親媒性界面活性剤と金属アルコキシドと水又は金属粒子水分散物とを混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、調製された前記水性組成物からアルコールの少なくとも一部及び/又は水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、アルコール及び水の少なくとも一部を気化させた後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、を設けて構成されたものである。
【0016】
本発明においては、ノニオン系両親媒性界面活性剤が形成するミセルを鋳型として利用し、これに金属アルコキシドを用いてミセルの周囲に金属酸化物粒子(例えば、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等)が配列することにより壁(以下、「壁」を「壁膜」ともいう。)を形成して多孔質粒子を作製する。このとき、シリカやチタニア、ジルコニア等の種々の無機酸化物を壁膜、バインダーとして粒子中に含ませることが可能である。この場合に、所定の割合の酸触媒とアルコールとを水又は金属粒子水分散物と共に混合した後、焼成前に水分及び/又はアルコール分の少なくとも一部を気化させる工程を設けたことで、両親媒性界面活性剤を用いながらも水熱処理を行なうことなく、規則性のあるポーラス構造が形成される。これにより、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)の壁膜、又は金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子の壁膜により区画されて複数の孔が形成された孔構造を持つ多孔質粒子を作製することができる。
また、水及び/又はアルコールを気化させる際の温度条件を変化させることにより、細孔の細孔間距離を制御することが可能である。
【0017】
−調製工程−
本発明における調製工程では、酸触媒と、アルコールと、ノニオン系両親媒性界面活性剤と、金属アルコキシドと、水又は金属粒子水分散物とをそれぞれ1種又は2種以上混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する。水性組成物には、必要に応じて、更にアルカリ金属塩や膨潤剤を加えてもよい。
【0018】
混合は、成分の添加順序に制限はなく、各成分を任意の順に添加して撹拌等して行なうことが可能であり、全ての成分を加えた後に撹拌を開始するようにしてもよい。例えば、水又は金属粒子水分散物と酸触媒とアルコールとを混合した混合物にノニオン系両親媒性界面活性剤を加え、撹拌した後、更に金属アルコキシドを加えて調製してもよい。この場合、両親媒性界面活性剤が含まれた混合物に金属アルコキシドを加える前に、フュームドシリカなどのシリカ粒子を更に加えてもよい。
【0019】
本工程で水性組成物を調製する場合、撹拌等による混合は、添加した水、アルコールの撹拌等の過程での気化を抑えて行なうことが好ましい。水やアルコールの気化が多いと細孔構造が得られなくなるため、撹拌等の混合操作中の気化を少なく抑えることが好ましく、これによりその後に気化工程を設けたことによる多孔構造、特にメソ構造の形成性、孔配列の規則性が良化する。本発明においては、各成分の撹拌等による混合は、密閉等により混合物を閉塞空間に保持できる容器を用い、例えば、各成分を加える毎に容器を閉塞し、閉塞状態で成分を撹拌、混合する態様が好ましい。
【0020】
混合は、撹拌により行なえ、例えば、マグネチックスターラ、撹拌機などを使用できる。成分の添加、混合時の温度は、特に制限はないが、混合過程での気化を抑制する点から、20℃〜40℃の範囲が好ましい。また、混合時間は、温度や撹拌速度などの条件や他の目的等に応じて選択すればよい。
【0021】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。酸触媒の水性組成物中における濃度は、アルコール(特にエタノール)に対して、0.09〜0.15モル%が好ましく、0.09〜0.11モル%が好ましい。酸触媒の水性組成物中に占める割合は、0.09モル%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすく、0.15モル%以下であると、高い規則性を付与できる。酸触媒としては、塩酸が好適に用いられる。
【0022】
アルコールとしては、後の気化工程で気化させ得るものであれば使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等を挙げることができる。アルコールは、後の気化工程で気化させ易い観点からは、沸点が比較的低いものが好ましく、アルコールの沸点は110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。中でも、揮発性が比較的高い点で、炭素数1〜3のアルコールが好ましく、メタノール、エタノールが特に好ましい。
【0023】
アルコールの水性組成物中の含有割合としては、水性組成物の全質量に対して、50〜95質量%が好ましく、55〜95質量%が好ましい。アルコールの水性組成物中における割合は、50質量%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすくなる。また、アルコールの含有割合が95質量%以下の範囲内において、効果的に規則性のある細孔構造が得られる。
【0024】
酸触媒とアルコールと水との合計量(tol)に対するアルコール(al)の水性組成物中における比率(al/tol;質量比)は、0.55以上の範囲とし、好ましくは0.70以上の範囲であり、より好ましくは0.90以上の範囲である。比率al/tolの上限値は、1.00が望ましい。比率al/tolが0.55未満であると、規則性のある細孔構造を持つ多孔構造が得られない。
【0025】
ノニオン系両親媒性界面活性剤は、1分子内に親水基と疎水基とを持つ非イオン性高分子であり、水溶性を有するものから選択することができる。水溶性を有していると、図2に示すように、水性組成物中でミセルを形成することができる。この両親媒性界面活性剤の存在下、後工程で水、アルコールを気化させることで、例えば図1及び図3に示すように、ミセルの親水基の部位にシリカ粒子が存在する配列構造を形成することができる。
【0026】
ノニオン系両親媒性界面活性剤としては、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤(プルロニック系界面活性剤)が好ましい。プルロニック系界面活性剤は、一般にポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)との3元ブロック共重合体で両末端に水酸基を持つ化合物の総称である。両末端は水酸基でなくてもよい。プルロニックの市販品としては、PEGとPPGの分子量が異なったものが多く上市されており、重合度の範囲については、PPGが15〜65で、PEGが1〜150のものがある。トリブロック系界面活性剤としては、(C2H4O)a(CnH2nO)b(C2H4O)cの構造〔n=3〜4、a,b,cは整数を表す。〕を有するものが好ましく、n=3の場合がより好ましい。具体的な例としては、プルロニックL31〔(C2H4O)1.3−(C3H6O)15.8−(C2H4O)1.3〕、同L35、同L44、同L64〔(C2H4O)13(C3H6O)30(C2H4O)13〕、同P123〔(C2H4O)20(C3H6O)70(C2H4O)20〕、同F127〔(C2H4O)60(C3H6O)120(C2H4O)60〕などが使用可能である。
【0027】
ノニオン系両親媒性界面活性剤の水性組成物中の含有割合としては、水性組成物の全質量に対して、7〜9質量%が好ましく、8〜9質量%が好ましい。ノニオン系両親媒性界面活性剤の水性組成物中における割合が7質量%以上であると、規則性のある細孔構造を有する多孔構造を形成しやすい。また、ノニオン系両親媒性界面活性剤の含有割合が9質量%以下の範囲内において、少量でより効果的に規則性のある細孔構造が得られる。
【0028】
金属アルコキシドとしては、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の化合物を用いることができ、M(OCmH2m+1)nRqH4−n−q〔Mは、Si、Ti、Zrを表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。m=1〜4、n=2〜4、q=0〜2、但し、n+q=4を満たす。〕で表される化合物群から選択することができる。
【0029】
前記アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のSi(OCmH2m+1)4〔m=1〜3〕、メチルトリエトキシシラン等のSi(OCmH2m+1)3CH3〔m=1〜3〕などを挙げることができる。中でも、mは1〜2の範囲が好ましい。
前記アルコキシチタンとしては、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のTi(OCmH2m+1)4〔m=1〜4〕などを挙げることができる。中でも、mは3〜4の範囲が好ましい。
前記アルコキシジルコニウムとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のZr(OCmH2m+1)4〔m=1〜4〕などを挙げることができる。中でも、mは3〜4の範囲が好ましい。
【0030】
金属アルコキシドの水性組成物中における含有割合としては、ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、30〜70質量%が好ましく、50〜70質量%が好ましい。金属アルコキシドの割合は、30質量%以上であると、細孔構造を形成する壁膜の強度が得られる。また、70質量%以下の範囲で金属アルコキシドを含むことにより、壁膜の構築に寄与する量を確保することができる。
【0031】
本発明における水性組成物には、上記成分とともに水を含有するか、あるいは金属粒子水分散物を含有する。上記成分を水と共に混合することで、Siを含む水溶液が得られ、また、水成分として金属粒子水分散物を混合することで、Si等の金属と金属粒子を含む水溶液が得られる。後者では、金属粒子がシリカ粒子などの金属酸化物粒子とともに壁膜を形成し、金属粒子を含む壁膜で区画された孔構造(例えばメソポーラス構造)を有する多孔質粒子(例えばメソポーラス金粒子)が得られる。
【0032】
本明細書中において、「メソ」又は「メソポーラス」は、ミクロとマクロの間のサイズ又はその孔のことであり、メソポーラス物質はミクロポーラス物質(ゼオライト等)とマクロポーラス物質(多孔質ガラス等)との中間に位置する物質である。本発明にいうメソポーラスは、細孔間距離が8nm〜20nmの孔であることが好ましい。
【0033】
水には、蒸留水、イオン交換水などを使用でき、水の水性組成物中の割合は上記の成分の量に応じて適宜選択すればよい。
【0034】
金属粒子水分散物は、金属又は金属酸化物の粒子が比較的安定に分散された分散液やコロイド溶液であれば、特に制限はない。金属粒子水分散物には、金属等の粒子に加え、分散に一般に用いられる分散剤を含めてもよい。金属粒子水分散物は、例えば、水に溶解する還元剤(例:クエン酸又はその塩、ヒドラジン)を用いて金属イオンを還元し、金属粒子を析出させる、あるいは金属粒子を必要により分散剤を用いて分散させる等の方法により調製することができる。金コロイド粒子を調製する場合、例えば、塩化金酸を含む水溶液に、クエン酸又はクエン酸ナトリウムの存在下、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を加えて撹拌し、調製することができる。
【0035】
金属粒子としては、長周期律表の第4属から第13属の金属又はその酸化物の粒子が好ましく、遷移金属又はその酸化物の粒子が好ましい。金属又はその酸化物は、用途などに応じて選択することができるが、特には、貴金属(Au、Pt、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、又は金属酸化物(SiO2,TiO2,ZrO2など)が好ましい
【0036】
水性組成物には、上記成分に加えて、両親媒性界面活性剤が含まれた混合物に、例えばアルコキシシランを加える前に、フュームドシリカなどのシリカ粒子を加えてもよい。このようなシリカ粒子の混合により、形成される多孔構造をより強固にすることができる。
フュームドシリカは、微粒子状の無水シリカの一種であり、熱分解法シリカ、乾式法シリカ、乾式法ホワイトカーボン、軽質無水ケイ酸、煙霧質シリカとも称される。フュームドシリカの製造は、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の火炎加水分解法(気相分解法)や、有機ケイ素化合物(例:メチルトリクロロシラン、ジメチルポリシロキサン)等の熱分解による方法、ケイ砂を加熱還元して気化したSiOを空気酸化させる方法などにより行なえる。
【0037】
また、フュームドシリカの表面を改質して疎水性化した疎水性フュームドシリカを用いてもよい。疎水性フュームドシリカは、フュームドシリカの表面をジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイル等で処理するオイル処理や、トリメチルシリル基、オクチルシラン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メタクリロキシシラン、ポリメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、アミノシラン等での処理、メチル基グループでの処理等により得られる。疎水性化した疎水性フュームドシリカとして、例えば、日本アエロジル(株)製のR104,R106,R812等を用いることができる。
【0038】
更に、水性組成物には、アルカリ金属の塩を含有することができる。アルカリ金属の塩を加えることにより、形成される多孔構造の細孔径を大口径化することができる。アルカリ金属の塩としては、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどを用いることができる。
前記アルカリ金属の塩の混合量は、ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、50〜70質量%の範囲が好ましい。アルカリ金属の塩の割合が前記範囲内であると、細孔径を効果的に(例えば細孔間距離を10nm以上に)大径化することができる。
【0039】
また、水性組成物には、膨潤剤を前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が形成するミセル中に可溶化させて用いることにより、膨潤剤を可溶化した界面活性剤の分子集合体は膨張し、形成される多孔構造の細孔径を大口径化することができる。膨潤剤は、水に不要な有機化合物として、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼンなど、ベンゼンの炭素数1〜3アルキル(モノ,ジ,トリ)置換体等が挙げられる。中でも、揮発性が比較的低く、規則性のある多孔構造を形成しやすい点で、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンが好ましい。
【0040】
前記膨潤剤を用いる場合、膨潤剤の水性組成物中における含有割合は、前記ノニオン系両親媒性界面活性剤に対して、50〜70質量%の範囲が好ましい。膨潤剤の含有割合が前記範囲内であると、細孔径を効果的に(例えば細孔間距離を10nm以上に)大径化することができる。
【0041】
−気化工程−
気化工程は、前記調製工程で調製された水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる。水性組成物から水及びアルコールの少なくとも一部を気化させることにより、図1及び図3に示されるように、ノニオン系両親媒性界面活性剤の親水基の周りに金属酸化物粒子(シリカ粒子など)、あるいは金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子が集まり、規則的に配列されるようになる。これにより、多孔構造、特にメソポーラス構造が形成される。
【0042】
アルコール及び水の気化は、室温下で行なってもよく、具体的には常圧(0.1MPa)下、20℃以上の温度領域で行なうことができる。この場合、必要に応じて加熱してもよい。気化させる温度を加熱により上昇させることにより、例えば図7に示されるように、2θの値のピークが広角へシフトする。これにより、細孔間距離を制御することが可能である。また、細孔間距離が均一でシャープなピーク波形、すなわち規則的な配列構造を持つ多孔構造を得やすい点から、気化させる温度は高過ぎないことが好ましく、常圧下では100℃程度までの温度領域が好ましい。より規則性のある多孔構造、特にメソポーラス構造を形成する観点から、気化させる温度は常圧(0.1MPa)下で20℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上35℃以下の温度領域がより好ましい。このとき、気化温度を変化させることにより、ノニオン性界面活性剤に吸着している水和水の量が変化することで細孔間距離が変化し、細孔径のより大きい(例えば細孔間距離を10nm以上)細孔構造を形成することができると推測される。
【0043】
また、水及びアルコールの気化は、真空引き等することにより減圧下で行なってもよい。減圧することで、気化時の温度を低く抑えることが可能である。
【0044】
気化工程では、水及びアルコールの少なくとも一部の気化でも粒子壁で区画された細孔構造を形成することが可能であり、必ずしも粉末状に乾く必要はなく、ある程度粘性を有している状態で終了してもよい。成分構成等によらず安定的に規則性のある細孔構造、特にメソポーラス構造を得る観点では、水及びアルコールの5質量%以上気化させるのが好ましく、10質量%以上気化させるのがより好ましい。
【0045】
−焼成工程−
焼成工程は、前記気化工程で気化させた後の水性組成物を焼成する。気化処理を施した後に焼成することで、ミセルを形成していたノニオン系両親媒性界面活性剤及び場合により膨潤剤が熱で除去され、図1に示されるように、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)、あるいは金属酸化物粒子(シリカ粒子など)及び金属粒子の壁膜で複数の細孔構造が形成された多孔粒子が形成される。
【0046】
焼成は、450℃以上の温度で加熱して行なうことができる。焼成温度の好ましい範囲は、500℃〜600℃である。焼成温度は、450℃以上であると細孔構造が安定的に形成されやすく、また、あまり高くなり過ぎない温度領域、好ましくは600℃に抑えると、規則的な配列が保たれ、規則性のある細孔構造が得られやすい。
【0047】
焼成時間は、前記焼成温度により適宜選択すればよく、細孔構造を安定的に形成する点では、5〜10時間程度が望ましい。
【0048】
また、高温で行なう焼成工程の前に、あらかじめ加熱処理を行なってもよい。焼成工程での焼成温度より低い温度で加熱処理し、残存している水やアルコールを除去しておくことで、水等の残存量の多い場合に比べ、細孔構造、特にメソポーラス構造の孔配列の規則性をより高めることができる場合がある。この場合の加熱温度としては、200℃〜300℃の範囲が好ましい。
【0049】
以上の工程を経ることにより、図1に示すように、シリカ粒子(SiO2)やチタニア粒子(TiO2)、ジルコニア粒子(ZrO2)等の金属酸化物粒子の壁、あるいは該金属酸化物粒子(シリカ粒子(SiO2)など)及び金属粒子の壁で区画された複数の孔を含む孔構造を有する多孔質粒子が得られる。
シリカ粒子等の金属酸化物粒子の壁膜を有する多孔質粒子は、図1に示すようにシリカ粒子等が断面円形の筒状に集まってできた孔が規則的に配列して形成されている。
シリカ粒子等の金属酸化物粒子及び金属粒子の壁膜を有する多孔質粒子は、金属酸化物粒子(シリカ粒子など)と金属粒子とが混在して、図1に示すように断面円形の筒状の孔が構成され、これらの孔が規則的に配列して形成されている。
【0050】
多孔構造の孔間を仕切る壁を形成するシリカ粒子、金属粒子の形状は、球形、楕円形などが好ましく、球形が規則的な配列構造が得られる点で好ましい。
【0051】
本発明において、多孔質粒子は、(1)孔径をコントロールして所望の細孔構造を有し、孔中に多様な物質を入れることが可能であり、(2)物質の吸脱着性に優れている。
【0052】
多孔質粒子中の壁膜がシリカ粒子等の金属酸化物粒子と金属粒子とで構成される場合、シリカ粒子等の金属酸化物粒子と金属粒子との比率には特に制限はなく、いずれの粒子が主に含まれた形態でもよい。例えば金属粒子として金粒子がシリカ粒子より多く存在する場合、金粒子間にシリカ粒子がバインダー成分として存在するメソポーラス金粒子が得られる。
【0053】
多孔質粒子の平均粒子径としては、好ましくは体積平均粒子径で50nm〜100μmの範囲である。この範囲の多孔質粒子は、例えば上記の本発明の多孔質粒子の製造方法により得られる。体積平均粒子径は、用途や目的等により好ましい範囲は異なるが、小粒径かつ大口径が好ましい点から、細孔間距離が8nm〜20nmである場合に前記範囲内であることが好ましい。
なお、体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の写真観察より測定される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
図4に示す操作手順にしたがって、下記のようにメソポーラスシリカ粒子を調製した。
蓋付き容器として容量50mlのスクリュー管瓶を用意し、これに2M 塩酸(HCl)0.1gと、水(H2O)0.9gと、エタノール(EtOH)10gとを投入した後、さらに下記構造のプルロニックF127〔(PEO)60(PPO)120(PEO)60;ノニオン系両親媒性界面活性剤〕1.0gを加え、容器内の水分及びアルコール分の気化を抑えるために蓋を取り付けて室温(15〜30℃;以下同様)下で24時間、撹拌した。これに更に、疎水性フュームドシリカ粒子(R104、日本アエロジル(株)製)0.1gを加え、同様に蓋を取り付けてから再び室温下で2時間、撹拌した。その後、5mmolのテトラエトキシシラン(TEOS)1.04gを加え、再び蓋を取り付けてから室温下で2時間、撹拌し、水性組成物を調製した。
【0056】
【化1】
【0057】
次いで、容器の蓋を取り外し、得られた水性組成物を20℃〜60℃の5つの温度で12〜24時間、水性組成物中の水分及びエタノールを気化させた。
【0058】
気化させる処理の終了後、550℃で6時間、水性組成物を焼成した。
以上のようにして、細孔が規則的に配列した大口径のメソポーラスシリカ粒子が得られた。
【0059】
−評価−
得られたメソポーラスシリカ粒子について、Ultima IV〔(株)リガク製〕を用い、小角X線散乱法により小角X線散乱パターンを計測し、測定値2θからBraggの式より細孔間距離d(壁膜の厚みを含む孔と孔の中心間距離[nm])を算出した。また、得られたメソポーラスシリカ粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により拡大して観察し、さらにTEM写真から体積平均粒子径を求めた。その結果を図5〜図6に示す。
【0060】
図5に示すように、焼成の前後で所定位置にピークが現れており、細孔間距離dが10nm付近の開口径の大きい細孔が形成されていることが確認された。このメソポーラスシリカ粒子について、焼成後の細孔構造を図6に示す。焼成後のメソポーラスシリカ粒子は、図6に示されるように、細孔が規則的に配列された細孔構造を有していた。
更に、揮発温度を20℃、25℃、35℃、40℃、60℃と変えた場合の小角X線散乱パターンの変化を図7に示す。いずれの揮発温度でも、メソポーラス構造が得られていることが分かる。また、図7に示されるように、気化させる温度を上昇させるに伴ない、測定値が大きくなり、波形が広角(ブロード)に変化することが分かる。すなわち、気化させる温度を変化させることで細孔間距離の制御が可能であり、また、より低温側で揮発させることで規則性の高い細孔構造が得られる。中でも、揮発温度は、20℃〜35℃の範囲が好ましい。
焼成後のメソポーラスシリカ粒子について、窒素の吸脱着測定を行なったところ、N2吸脱着性は、図8に示すように、吸着時/脱着時で細孔に起因するヒステリシスを示した。つまり、メソポーラスシリカ粒子には、断面円形の柱状の孔構造が存在しており、良好な吸着特性が認められた。
【0061】
(実施例2)
図9に示す操作手順にしたがってメソポーラス金粒子を調製した。
具体的には、実施例1において、2M 塩酸及びエタノールとともに混合した水0.9gを、下記の金コロイド水溶液(Au colloid aq.)0.9gに代え、かつ疎水性フュームドシリカ粒子を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、メソポーラス金粒子を調製し、測定、評価を行なった。このとき、水性組成物中の水及びエタノールの気化は、25℃で12〜24時間の条件にて行なった。
得られたメソポーラス金粒子には、細孔が規則的に配列した大口径のメソポーラス構造が形成されていた。
【0062】
−金コロイド水溶液の調製−
図10に示す操作手順にしたがい、水50mlに塩化金酸・3水和物の1質量%水溶液1mlとクエン酸ナトリウムの1質量%水溶液1mlとを加えて撹拌した後、さらに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の0.075質量%水溶液1mlを撹拌しながら添加し、その後さらに沸騰させながら10分間撹拌を行なって金コロイド水溶液(Au colloid aq.)を調製した。10分間の撹拌で約10nmの粒子とした。
【0063】
−評価−
得られたメソポーラス金粒子に対して、実施例1と同様の方法で小角X線散乱パターンを計測すると共に、メソポーラス金粒子の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、さらに体積平均粒子径を求めた。その結果を図11〜図12に示す。
【0064】
図11に示すように、焼成の前後で所定位置にピークが現れており、面間距離dが10nm付近の開口径の大きい細孔が形成されていることが確認された。このメソポーラス金粒子について、焼成後の細孔構造を図12に示す。焼成後のメソポーラス金粒子は、図12に示されるように、細孔が規則的に配列されたメソポーラス構造を有していた。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、エタノール10gをアセトン10gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
その結果、図13及び図14に示すように、得られた粒子にメソポーラス構造を形成できなかった。なお、図13には、エタノールを用いた場合と対比して示す。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、2M 塩酸、水、及びエタノールの混合比率〔(a)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10(質量比)〕を下記(b)〜(d)の比率(質量比)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
(b) HCl:H2O:EtOH=0.1:2.2:9
(c) HCl:H2O:EtOH=0.1:3.5:8
(d) HCl:H2O:EtOH=0.1:4.8:7
【0067】
その結果、図15〜図16に示すように、比率(b)〜(d)で得られた粒子のいずれにも、規則的な細孔構造に由来するピークが観測され、メソポーラス構造を有することが確認された。なお、図15〜図16には、(a) HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10とした場合(実施例1)と対比して示す。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、2M 塩酸、水、及びエタノールの混合比率〔(1)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10(質量比)〕を下記(2)〜(5)の比率(質量比)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粒子を調製し、測定、評価を行なった。
(2)HCl:H2O:EtOH=0.1:5.9:6
(3)HCl:H2O:EtOH=0.1:13.5:0
(4)HCl:H2O:EtOH=13.6:0:0
(5)HCl:H2O:EtOH=0:0:11
【0069】
その結果、図17に示すように、得られた粒子にメソポーラス構造を形成できなかった。なお、図17には、(1)HCl:H2O:EtOH=0.1:0.9:10とした場合(実施例1)と対比して示す。
【0070】
上記の実施例では、シリカ粒子、金粒子を用いた場合を中心に説明したが、シリカ粒子、金以外の既述の他の金属や金属酸化物を用いた場合にも、水熱処理を行なわず、混合後に気化工程を設けることにより、規則性のある細孔構造を形成することができる。また、アルコールとしてエタノールを用い、金属アルコキシドとしてTEOS(アルコキシシラン)を用いた場合を中心に説明したが、エタノールやTEOS以外の既述のアルコール、金属アルコキシドを用いた場合にも、水熱処理を行なわず、混合後に気化工程を設けることにより、規則性のある細孔構造を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、触媒材料、バイオセンサ、ガスセンサ等のセンサ材料、電極、分離剤、吸着剤などの用途に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、及び水を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、
調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、
前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、
を有する多孔質粒子の製造方法。
【請求項2】
酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、並びに金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、
調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、
前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、
を有する多孔質粒子の製造方法。
【請求項3】
前記気化工程は、20℃以上35℃以下の温度領域で気化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項5】
前記調製工程は、酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、及び水もしくは金属粒子水分散物を混合した後、金属アルコキシドを更に混合することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項6】
金属酸化物粒子と金属粒子とを含む壁で区画された孔構造を有する多孔質粒子。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子、チタニア粒子、及びジルコニア粒子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の多孔質粒子。
【請求項8】
前記孔構造の細孔間距離が、8〜20nmであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の多孔質粒子。
【請求項1】
酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、及び水を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、
調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、
前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、
を有する多孔質粒子の製造方法。
【請求項2】
酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、金属アルコキシド、並びに金属及び金属酸化物の群から選ばれる少なくとも一種の粒子が分散された金属粒子水分散物を混合し、酸触媒とアルコールと水との合計量に対するアルコールの質量比が0.55以上である水性組成物を調製する調製工程と、
調製された前記水性組成物中からアルコール及び水の少なくとも一部を気化させる気化工程と、
前記気化工程後の前記水性組成物を焼成する焼成工程と、
を有する多孔質粒子の製造方法。
【請求項3】
前記気化工程は、20℃以上35℃以下の温度領域で気化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ノニオン系両親媒性界面活性剤が、エチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖を含むトリブロック系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項5】
前記調製工程は、酸触媒、アルコール、ノニオン系両親媒性界面活性剤、及び水もしくは金属粒子水分散物を混合した後、金属アルコキシドを更に混合することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多孔質粒子の製造方法。
【請求項6】
金属酸化物粒子と金属粒子とを含む壁で区画された孔構造を有する多孔質粒子。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子、チタニア粒子、及びジルコニア粒子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の多孔質粒子。
【請求項8】
前記孔構造の細孔間距離が、8〜20nmであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の多孔質粒子。
【図1】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図6】
【図12】
【図14】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図6】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2011−6273(P2011−6273A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150044(P2009−150044)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
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