説明

多孔質酸化チタン構造体及び多孔質酸化チタン構造体の製造方法

【課題】 本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 酸化チタンを含有し、平均アスペクト比が1.35以上の空孔を有し、かつ、空孔の平均長径が20〜1000nmである多孔質酸化チタン構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン等に代表される光触媒は、有害化学物質の分解及び除去、超親水性、水素生成等の優れた機能を有し、環境浄化、省エネルギーや新エネルギー等への用途が期待され、環境、エネルギー及び経済においてバランスの取れた持続可能な社会構築に貢献する素材であると目されている。
酸化チタン薄膜を形成する方法としては、コーティング法、浸漬法、スパッタリング法や酸素ガス雰囲気内に加熱蒸発させた金属蒸気を導入して反応させる熱CVD法等が知られている。コーティング法では、有機系バインダに酸化チタン粉末を少量分散してスラリーとし、このスラリーを膜状に塗布して光触媒を形成する。しかしながら、膜中に有機系バインダが存在すると、光触媒活性が損なわれ、充分な光触媒活性が得られないという問題があった。これは、表層に析出した二酸化チタン粒子のみが光触媒活性に関与するに過ぎないためであると考えられる。
【0003】
これに対して、充分な付着強度を持たせ、かつ、光触媒活性を維持するためには、素材表面に光触媒膜を直接形成する技術が有効である。特許文献1には、気化させたチタンアルコキシドを担体となる不活性ガスとともに、大気圧開放下で加熱された基材表面に吹き付けることで、基材表面に二酸化チタンからなる結晶配向膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法で得られる酸化チタン結晶配向膜を有する材料は、基材表面に形成された膜の表層が緻密に形成されているため、充分な光触媒活性を得ることができなかった。
【0004】
また、特許文献2には、大気開放型化学気相析出法を用いて所定の膜厚及び気孔率を有する多孔質光触媒膜を作製する方法が開示されている。この方法では、大気開放下にて基材に原料ガスを吹き付けて、金属酸化物等の薄膜を形成することで、多孔質光触媒膜を作製しているが、実際には形成される空孔を所望の形状に制御することは極めて困難であった。また、この方法では、大気開放型CVD装置等の特殊で大型の製造装置を必要とし、製造工程も複雑なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3455653号公報
【特許文献2】特開2005−279366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化チタンを含有し、平均アスペクト比が1.35以上の空孔を有し、かつ、空孔の平均長径が20〜1000nmである多孔質酸化チタン構造体である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、多孔質酸化チタン構造体において、平均アスペクト比が大きく、平均長径が所定範囲内の空孔を構造体内に形成することで、光触媒に用いた場合、優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、平均アスペクト比が1.35以上の空孔を有する。
酸化チタンが光触媒として働くためには、紫外線(波長約400nm以下)が必要となるが、空孔の平均アスペクト比を1.35以上とすることで、強い光散乱を起こし紫外線を有効に活用することができ、その結果、光触媒機能を向上させることができる。
また、光触媒に用いた場合に、ガスの移動距離が長くなることで、光触媒活性点が多くなり、有機分子等の物質の吸着能が高くなるため、充分な光触媒活性が得られる。
上記平均アスペクト比が1.35未満であると、比表面積が小さくなり、光触媒機能が低下する。上記平均アスペクト比の好ましい下限は1.5、好ましい上限は5である。
なお、アスペクト比は、長径の長さを短径の長さで割った値であり、その値が1に近いほど、形状は真球に近くなる。
上記平均アスペクト比は、厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を画像解析することで、無作為に抽出した任意個数の空孔の長径及び短径を測定してアスペクト比を算出した後、その平均値を求めることで測定することができる。
【0010】
本発明の多孔質酸化チタン構造体では、アスペクト比が1.35以上の空孔の個数が全体の50%以上を占めることが好ましい。アスペクト比が1.35以上の空孔が50%未満であると、充分な紫外線散乱が得られないことがある。
【0011】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、空孔の平均長径が20〜1000nmである。上記空孔の平均長径が20nm未満であると、空孔が小さすぎて、充分な紫外線散乱が得られない。上記空孔の平均長径が1000nmを超えると、空孔が大きすぎて、強度が不足してガス抜けの原因となる。上記空孔の平均長径のより好ましい下限は100nm、より好ましい上限は800nmである。
なお、上記空孔の平均長径は、平均アスペクト比の場合と同様に、厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を画像解析することで、無作為に抽出した任意個数の空孔の長径を測定した後、その平均値を求めることで測定することができる。
【0012】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、空隙率の好ましい下限が40%、好ましい上限が85%である。上記空隙率が40%未満であると、充分な紫外線散乱が得られないことがあり、85%を超えると、多孔質酸化チタン構造体の強度が弱くなり耐久性の面で使用に耐えないためである。
なお、上記空隙率は、例えば、かさ密度を算出した後、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度を用いて算出することができる。
【0013】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、比表面積が50〜1000m/gであることが好ましい。上記比表面積が50m/g未満であると、多孔質酸化チタン構造体の光触媒活性点が少なくなるため、充分な光触媒活性が得られず、1000m/gを超えると、作製するのは技術的に難しく、歩留まり等の面でコスト的に成り立たないため、実用的ではない。
【0014】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の厚みの好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は30μmである。上記厚みが0.05μm未満であると、多孔質酸化チタン構造体の強度が不充分であることに加えて充分な光触媒活性が得られず、30μmを超えると、製造コストが上昇してしまうことがある。
【0015】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を構成する酸化チタン粒子としては、特に限定されず、例えば、通常ルチル型の二酸化チタン粒子、アナターゼ型の二酸化チタン粒子、ブルッカイト型の二酸化チタン粒子及びこれら結晶性二酸化チタンを修飾した二酸化チタン粒子等を用いることができる。
【0016】
上記酸化チタン粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径の好ましい下限が3.5nm、好ましい上限が40nmであり、より好ましい下限は5nm、より好ましい上限は30nmである。上記範囲内とすることで、充分な比表面積を得ることができ、また電子と正孔の再結合を防ぐことができる。また、粒子径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよい。
【0017】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが7.5〜15(cal/cm1/2である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、上記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、上記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記造孔樹脂粒子として、架橋性モノマーに由来するセグメントを5重量%以上含有する重合体からなり、上記有機溶剤に24時間浸漬させた場合の膨潤度が300%以上であるものを用いる方法によって製造することができる。このような多孔質酸化チタン構造体の製造方法もまた本発明の1つである。
【0018】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが7.5〜15(cal/cm1/2である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程を有する。
【0019】
上記有機溶剤は溶解度パラメータが7.5〜15(cal/cm1/2である。
上記有機溶剤の溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2未満であると、酸化チタンが均一に分散しないことがあり、15(cal/cm1/2を超えると、スクリーン印刷可能な粘度のペーストを作製できないことがある。
上記有機溶剤としては、具体例には例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テルピネオール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0020】
上記造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを5重量%以上含有する重合体からなる。
【0021】
上記架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマー、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。これら架橋性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記造孔樹脂粒子を構成する重合体は、上記架橋性モノマーに由来するセグメントと他のモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体であってもよい。
上記他のモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記他のモノマーには、ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーを用いてもよい。上記ポリオキシアルキレン構造は特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシメチルエチレン構造、ポリオキシエチルエチレン構造、ポリオキシトリメチレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリルモノマーのなかでも、より低温で分解することができることから、メチルメタクリレートが好適である。
なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0023】
上記造孔樹脂粒子を構成する重合体における上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の下限は5重量%である。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合が5重量%未満であると、有機溶剤に対する膨潤度が高過ぎて粒子形状を失い、空孔を形成できないことがある。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の好ましい下限は8重量%、好ましい上限は50重量%である。
【0024】
上記造孔樹脂粒子は、上記有機溶剤に24時間浸漬させた場合の膨潤度が300%以上である。上記膨潤度を300%以上とすることで、平均アスペクト比が1.35以上の空孔を有する多孔質酸化チタン構造体を好適に製造することができる。
上記膨潤度が300%未満であると、空孔の平均アスペクト比が1に近づき、光散乱効果が落ちて光触媒効果が低下する。
上記膨潤度の好ましい下限は350%であり、より好ましい下限は450%である。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、24時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
【0025】
上記造孔樹脂粒子の平均粒子径は、好ましい下限は15nm、好ましい上限は950nmである。上記平均粒子径が15nm未満であると、光触媒効果が不足することがあり、950nmを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は25nm、より好ましい上限は800nmである。
なお、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより測定することができる。
【0026】
上記造孔樹脂粒子の添加量の好ましい下限は上記酸化チタンペーストに対して1重量%、好ましい上限は50重量%である。上記添加量が1重量%未満であると、空孔が少なく光散乱効果が不足することがあり、50重量%を超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は35重量%である。
なお、上記酸化チタン粒子については、上述した通りである。
【0027】
上記酸化チタンペーストは、バインダ樹脂を含有することが好ましい。上記バインダ樹脂として、例えば、エチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0028】
上記酸化チタンペーストを調製する方法としては、上記酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、有機溶剤及びバインダ樹脂を、例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自転公転式攪拌装置、ニーダー、押し出し機、ミックスローター、スターラー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0029】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを塗工する工程を有する。
上記酸化チタンペーストを塗工する方法としては特に限定されないが、上記造孔樹脂粒子の形状を維持したまま塗工できることから、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
【0030】
上記スクリーン印刷工程におけるスクリーン版の目開きの大きさ、スキージアタック角、スキージ速度、スキージ押圧力等については、適宜設定することが好ましい。
【0031】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有する。
【0032】
上記酸化チタンペーストの乾燥及び焼成は、塗工する基板の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することができる。例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度行うことが好ましい。また、乾燥及び焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行ってもよい。
【0033】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、上記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、上記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が1.35以上である方法によっても製造することができる。このような別の態様の製造方法もまた本発明の1つである。
【0034】
別の態様の製造方法では、平均アスペクト比が1.35以上である造孔樹脂粒子を用いることが特徴部分である。上記造孔樹脂粒子を用いることで、所望の空孔形状を有する多孔質酸化チタン構造体を簡便に製造することができる。
上記平均アスペクト比が1.35より低いと、所望の空孔形状を有する多孔質酸化チタン構造体を製造することができない。
【0035】
別の態様の製造方法では、造孔樹脂粒子の平均長径が20〜1000nmであることが好ましい。このような造孔樹脂粒子を用いることで、所望の空孔形状を有する多孔質酸化チタン構造体を簡便に製造することができる。
上記造孔樹脂粒子の平均長径が20nm未満であると、形成される空孔が小さすぎて、充分な紫外線散乱が得られない。上記造孔樹脂粒子の平均長径が1000nmを超えると、形成される空孔が大きすぎて、強度が不足してガス抜けの原因となる。上記造孔樹脂粒子の平均長径のより好ましい下限は100nm、より好ましい上限は800nmである。
なお、上記造孔樹脂粒子の平均長径は、空孔の平均長径の場合と同様に、無作為に抽出した任意個数の造孔樹脂粒子について、切断面を撮影したSEM写真を画像解析することで、長径を測定した後、その平均値を求めることで測定することができる。
【0036】
上記平均アスペクト比が1.35以上である造孔樹脂粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、造孔樹脂粒子を重合する際に、モノマーと重合溶媒とのSP値差が2.5(cal/cm1/2以上である組み合わせのモノマーと重合溶媒を用いて、重合する方法等が用いられる。このような方法を用いることで、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こり、重合溶媒を放出して扁平化した造孔樹脂粒子を得ることができる。また、シェルの厚みに偏りのある中空粒子になった後に赤血球状に扁平化することで扁平化した造孔樹脂粒子を作製することができる。
更に、モノマー中の架橋成分比率を高くすることによっても、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こるため、扁平化した造孔樹脂粒子を作製することができる。
【0037】
なお、上記造孔樹脂粒子以外の材料や、製造工程については基本的に本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法と同じであるが、別の態様の製造方法においては、造孔樹脂粒子が膨潤するものでなくてもよい。また、使用する有機溶剤についても溶解度パラメータが7.5〜15(cal/cm1/2であるものに限られない。
従って、造孔樹脂粒子や有機溶剤の材質選択の範囲が広がり、より安価な方法で多孔質酸化チタン構造体を作製することが可能となる。
【0038】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を用いて光触媒を作製することができる。このようにして得られた光触媒は、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することができる。
また、本発明の多孔質酸化チタン構造体は、色素増感太陽電池の多孔質金属酸化物半導体層としても使用することができる。色素増感太陽電池に使用した場合、光拡散効率が上がり、より有効に光を使用できるようになったり、電解液が移動しやすくなったりすることにより、高い光電変換効率を実現することができ、優れた性能を有する色素増感太陽電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で得られた多孔質酸化チタン構造体の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真である。
【図2】実施例1で得られた多孔質酸化チタン構造体の厚み方向の切断面を撮影した拡大SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
(造孔樹脂粒子の作製)
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート5重量部(ポリオキシプロピレンユニット数=約4;日油社製、ブレンマーPDP−250)、メタクリル酸イソブチル95重量部を混合したモノマー100重量部全量を、ノニオン系界面活性剤NL−250(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち0.5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ744nmであった。なお、造孔樹脂粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより測定した。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、下記の方法で測定したところ、470%であった。
【0043】
[膨潤度測定]
造孔樹脂粒子1gを遠沈管に計量し、メチルエチルケトンを、遠沈管も含めて合計30gになるように添加する。24時間静置後、遠心分離にて粒子を沈降させて上澄みの溶媒を捨てた。膨潤した造孔樹脂粒子の重量を計量し、下記式(1)にて膨潤度を求めた。
膨潤度(%)=(粒子内の有機溶剤の重量/最初に加えた造孔樹脂粒子の重量)×100
(1)
【0044】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール45重量部及び得られた造孔樹脂粒子分散液3.3重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0045】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:5μm)。
得られた多孔質酸化チタン構造体の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を図1に、多孔質酸化チタン構造体の厚み方向の切断面を撮影した拡大SEM写真を図2に示す。
【0046】
(実施例2)
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート2重量部(ポリオキシエチレンユニット数=約9;日油社製、ブレンマーPDE−400)、トリメチロールプロパントリアクリレート10重量部、メタクリル酸イソブチル78重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−16(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち10重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ130nmであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、造孔樹脂粒子の15重量%エタノール分散液を得た。なお、造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、315%であった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例1と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た(膜厚:5μm)。
【0047】
(実施例3)
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート10重量部、メタクリル酸メチル90重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−10(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち50重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ76nmであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテトラヒドロフランに置換し、造孔樹脂粒子の15重量%テトラヒドロフラン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のテトラヒドロフラン中での膨潤度を測定したところ、589%であった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例1と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た(膜厚:5μm)。
【0048】
(実施例4)
(造孔樹脂粒子の製造)
ジビニルベンゼン100重量部、ノルマルヘプタン70重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水900重量部、アニオン系界面活性剤ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(第一工業製薬社製、ネオコールSW−C)5重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより20分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で12時間反応させ、造孔樹脂粒子スラリーを得た。SEMにより求めた造孔樹脂粒子の平均長径は450nmであり、平均短径は306nmであった。また、造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は1.47であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子の平均長径、平均短径及び平均アスペクト比は、無作為に抽出した50個の造孔樹脂粒子を、SEMを用いて切断面を撮影し、得られた写真から長径及び短径を計測して、測定した長径及び短径からアスペクト比を計算した後、平均値を算出することにより測定した。
【0049】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子分散液0.3重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:13μm)。
【0050】
(実施例5)
(造孔樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、アクリロニトリル25重量部、
ポリオキシエチレンジメタクリレート25重量部(ポリオキシエチレンユニット数=1;日油社製、ブレンマーPDE−50)、シクロヘキサン60重量部、酢酸エチル5重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水600重量部、アニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬社製、ハイテノールNF−17)5重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより20分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で8時間反応させ、造孔樹脂粒子スラリーを得た。
SEMにより求めた造孔樹脂粒子の平均長径は920nmであり、平均短径は442nmであった。また、造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は2.08であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
【0051】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子分散液0.36重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:12μm)。
【0052】
(比較例1)
モノマー成分として、ジビニルベンゼン30重量部、スチレン70重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ネオゲンS−20F(第一工業製薬社製)1重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち8重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ150nmであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の15重量%メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定したところ、181%であった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例1と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た(膜厚:5μm)。
【0053】
(比較例2)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート10重量部(ポリテトラメチレングリコールユニット数=約1;日立化成社製、FA−124M)、メタクリル酸イソブチル45重量部、メタクリル酸メチル45重量部を混合したモノマー100重量部全量と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1重量部とを混合、撹拌した混合溶液の全量を、水溶性乳化剤としてNL−250(第一工業製薬社製)1重量%と0.02重量%ハイドロキノンを含有するイオン交換水400重量部に添加し、ホモジナイザーにて乳化して、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、上記で得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始した。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ2.5μmであった。得られた分散液の溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、造孔樹脂粒子の15重量%エタノール分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、355%であった。作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例1と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た(膜厚:5μm)。
【0054】
(比較例3)
メタクリル酸メチル100重量部を、アニオン系界面活性剤(ハイテノールLA−10、第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち50重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ82nmであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の15重量%メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定しようとしたが、メチルエチルケトンに樹脂粒子が溶解してしまい測定できなかった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例1と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た(膜厚:5μm)。
【0055】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた多孔質酸化チタン構造体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
(1)空孔径(平均長径、平均短径)及び平均アスペクト比
得られた多孔質酸化チタン構造体について、SEMを用いて厚み方向の切断面を撮影し、得られた写真から50個分の孔を無作為に抽出し、その空孔径(長径及び短径)を計測した。また、測定した長径及び短径からアスペクト比を算出した。
そして、50個分の孔について、平均長径、平均短径及び平均アスペクト比を算出した。
【0057】
(2)多孔質酸化チタン構造体の空隙率
まず、多孔質酸化チタン構造体の重量(A)と膜厚(B)を測定した後、かさ密度(C)を下記式(2)を用いて算出した。
かさ密度(C)=A(mg)/[B(μm)×30×30]×10 (2)
次いで、得られたかさ密度から下記式(3)を用いて空隙率を算出した。
空隙率(%)=(1−C(g/cm)/3.84)×100 (3)
なお、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度は3.84g/cmとした。
【0058】
(3)多孔質酸化チタン構造体の比表面積測定
得られた多孔質酸化チタン構造体の比表面積を、BET式比表面積計(Sysmex社製 AUTOSORBシリーズ)を用いて測定した。
【0059】
(4)光触媒性能
得られた多孔質酸化チタン構造体について、光触媒性能評価試験法IIaガスバックA法(光触媒製品技術協議会)に準拠した方法によって光触媒性能を求めた。なお、この方法では、アセトアルデヒドの分解活性を指標とする。
【0060】
(実施例6)
FTOを積層したガラス基板に、実施例2で得られた酸化チタンペーストをスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:8μm)。
更に、多孔質酸化チタン構造体を形成したガラス基板を0.3mMのルテニウム色素(N−719 Dyesol社製)溶液中に25℃で1日間にわたり浸漬することで増感色素を吸着させた後、洗浄、乾燥することにより、色素増感太陽電池用光電極を作製した。
【0061】
(実施例7)
実施例4で得られた酸化チタンペーストを用いたこと以外は、実施例6と同様にして色素増感太陽電池用光電極を作製した。
【0062】
(比較例4)
比較例2で得られた酸化チタンペーストを用いたこと以外は、実施例6と同様にして色素増感太陽電池用光電極を作製した。
【0063】
(比較例5)
比較例3で得られた酸化チタンペーストを用いたこと以外は、実施例6と同様にして色素増感太陽電池用光電極を作製した。
【0064】
<評価>
実施例6〜7及び比較例4〜5で得られた多孔質酸化チタン構造体及び色素増感太陽電池用光電極について以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0065】
(5)多孔質酸化チタン構造体の評価
得られた多孔質酸化チタン構造体について、上述した「(1)空孔径(平均長径、平均短径)及び平均アスペクト比」、「(2)多孔質酸化チタン構造体の空隙率」及び「(3)多孔質酸化チタン構造体の比表面積測定」の評価を行った。
【0066】
(6)色素増感太陽電池用光電極の評価
(色素増感太陽電池セルの作製)
得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質酸化チタン構造体上に、0.4MのTPAI(テトラプロピルアンモニウムヨーダイド)、0.05MのI及び0.5Mのメトキシプロピオニトリルを含有する電解質を塗工した。
次いで、色素増感太陽電池用光電極と、ガラス基板にFTOが積層された対向電極とを電解質を介して重ね合わせるように固定した後、側面をエポキシ系接着剤で封止することにより色素増感太陽電池セルを作製した。
【0067】
(電流−電圧特性の測定)
得られた色素増感太陽電池セルについて、A.M1.5、100mW/cmの擬似太陽光を照射した場合の開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、フィルファクタ(FF)、及び、光電変換効率(Eff)を測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含有し、平均アスペクト比が1.35以上の空孔を有し、かつ、空孔の平均長径が20〜1000nmであることを特徴とする多孔質酸化チタン構造体。
【請求項2】
空隙率が40〜85%であることを特徴とする請求項1記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項3】
比表面積が50〜1000m/gであることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが7.5〜15(cal/cm1/2である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを5重量%以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に24時間浸漬させた場合の膨潤度が300%以上である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が1.35以上である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82124(P2012−82124A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76506(P2011−76506)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】