説明

多層エレメント、その製造、およびその利用

多層製品は、
(A)必要に応じて少なくとも一層の装飾層と、
(B)少なくとも一層のセルロース繊維を含む基板と、
(C)(a)少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物で被覆層(D)を印刷し、
(b)少なくとも一個の電流を発生または消費する部品を供給し、
(c)少なくとも一種の他の金属を析出させる工程を含む方法で製造した少なくとも一層の金属含有層と、
(D)必要に応じて少なくとも一層の被覆層とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)少なくとも一層の装飾層と、
(B)少なくとも一層のセルロース繊維を含む基板と、
(C)(a)少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物で、装飾層(A)または装飾層(A)の一部を印刷し、(b)少なくとも一種の他の金属を析出させる工程を含む方法で製造した少なくとも一層の金属含有層と、
(D)必要に応じて少なくとも一層の被覆層とからなる多層製品を提供する。
【0002】
本発明は、また多層製品の製造方法と本発明の多層製品の利用を提供する。
【背景技術】
【0003】
セルロース繊維を含む基板は、建物や自動車の内装に多くの用途で使用されている。建物の内装用途の例としては、パネルやフローリング、壁面被覆材、天板があげられる。自動車分野での用途の例としては、ダッシュボードやコンソールがあげられる。このようなセルロース系基板は、電線と組み合わせられている。
【0004】
セルロース繊維を含む基板としては、中密度繊維板(MDF)と高密度繊維板(HDF)が特に好適であり、特に表裏を通じて着色されたMDFや表裏を通じて着色されたHDFが、WO2008/055535に開示されている。
【0005】
電線、例えばワイヤ状の電線は、多くの場合このような電線が見えないように、また機械的な破壊から守られるように上記基板の裏側に取り付けられる。
【0006】
しかしながら、このような電線が静電荷の蓄積に非常に敏感であることがわかった。また、このようなシステムは設置が難しい、すなわち専門者のみが設置可能であることが明らかとなった。このような製品は、家庭用日曜大工製品市場に特に不適当である。
【0007】
絶縁性マットの上に電流を消費する部品と共に電線を印刷し、このように絶縁性マットをすべての通常の床の下に置くことが提案されている。しかしながら、このような方法は非常に製造コストが高く、滑りやすい基板を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電流消費部品または電流発生部品を、建物または自動車の内装に取り付ける、例えば表より見えないように取り付けることが可能な柔軟性のあるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は、冒頭に定義した多層製品(以下、本発明の製品と称す)により本目的を達成できることを見出した。
【0010】
本発明のある実施様態においては、本発明の製品が少なくとも一層の装飾層(A)を有する。装飾層(A)は、一層以上の層からなっていてもよい。
【0011】
装飾層(A)は、一個以上の部品を有していてもよい。本発明のある実施様態においては、装飾層(A)は、積層製品(上紙)を有する。本発明のもう一つの実施様態においては、装飾層(A)が装飾紙を有する。本発明のもう一つの実施様態においては、装飾層(A)が、ワックス、油または塗料層を含んでいる。
【0012】
この積層製品または上紙は、2層以上を圧力下で成形してなる樹脂含浸紙であり、紙からなる最上層には、好ましくは例えば木材、金属のまたは大理石のような模様が与えられている。紙からなる最上層は、透明な上層により、例えば透明フィルムまたはプラスチックシートにより、機械的な作用から保護されている。有用な樹脂としては、例えばフェノール樹脂や、フェノールホルムアルデヒド樹脂やメラミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂や尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂があげられる。
【0013】
本発明のある実施様態は、透明な積層製品を含む。
【0014】
装飾紙は、例えば装飾的な形状の紙であってよい。装飾紙は、好ましくは印刷した紙であり、主にブナやかえでなどの木材構造の模様が印刷されたものや、またははっきりとした色で印刷された塗装材を持つものである。この印刷紙はメラミン樹脂で含浸され、樹脂含浸上層また樹脂含浸裏打層と共に加熱加圧下で中心(コア)に向けてプレスされる。直接塗装では、一工程で、四層(裏打層、コア、装飾紙、および上層)がプレスされる。
【0015】
本発明のある実施様態においては、装飾層(A)が、織物を含む。織物を装飾層(A)に選ぶときは、織物を以下に定義する樹脂で含浸させ、硬化させることが好ましい。「織物」は、以降不織布も含むものとする。
【0016】
セルロース繊維を含む基板(以降、基板(B)と称す)は、いかなるセルロース繊維含有基板であってよい。なお、リグノセルロースもセルロースに含まれる。例としては、紙や厚紙があげられる。しかしながら、セルロース繊維を含む基板は、手で曲げても破壊されない基板であることが好ましい。例としては、木材系の材料、木材や木材プラスチック複合物(WPC)、特にチップボードなどの木材チップ材料、パーティクルボード、配向ストランドボード(OSB)や中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)などの繊維板があげられる。
【0017】
木材プラスチック複合物は、例えばセルロース繊維またはリグノセルロース繊維から生産された共押出し複合物を含んでいてもよい。繊維の例としては、亜麻やサイザル麻、麻、コイヤー、アバカ麻(いわゆるマニラ麻)など繊維があげられ、また稲や竹、麦わら、ピーナツ殻の繊維もあげられる。木材繊維がセルロース繊維の好ましい例である。木材繊維は、無処理の木材繊維であっても、再生した木材繊維であってもよい。さらに、木材繊維は、ツガやモミ、マツ、カラマツなどの軟木やブナやオークなどの硬木などの異なる木材種の繊維を含んでいてもよい。かんな屑やチップ、オガクズなどの屑木材もまた好適である。この木材繊維の組成は、セルロースやヘミセルロース、リグニンなどの構成成分において変わりうる。
【0018】
木材プラスチック複合物は、さらに少なくとも一種の熱可塑性を含む。熱可塑性樹脂は、熱可塑的に変形可能ないかなるポリマーから選ばれてもよく、このポリマーは、新ポリマーであっても、使用後の熱可塑性ポリマーの回収品であってもよい。熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、特にHDPE、ポリプロピレン、特にアイソタクチックポリプロピレンから、またポリ塩化ビニル(PVC)、特に非可塑化PVC、またポリ酢酸ビニルまたはポリエチレンやポリプロピレンの混合物から選ばれる。
【0019】
「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」はそれぞれ、エチレンとプロピレンと一種以上のα−オレフィンまたはスチレンとのコポリマーを含む。したがって、このポリエチレンは、さらに主たるモノマーとしてのエチレン(少なくとも50質量%)に加えて、共重合の形で、プロピレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、n−α−C2244、n−α−C2448、n−α−C2040などのα−オレフィンとスチレンから選ばれる一種以上のコモノマーを含むコポリマーを含む。このポリプロピレンは、さらに主たるモノマーモノマー(少なくとも50質量%)としてのプロピレンに加えて、共重合の形でスチレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、n−α−C2244、n−α−C2448、n−α−C2040から選ばれる一種以上のコモノマーを含むコポリマーを含む。木材プラスチック複合物は、他の成分を、例えば一種以上のワックス(特にエチレンコポリマーワックス)や、安定剤、一種以上の着色剤(例えば顔料)を含んでいてもよい。
【0020】
本発明のある実施様態では、MDFとHDFとから基板(B)が選ばれる。
【0021】
HDFとMDFは、木材繊維とバインダーの混合物を高温でプレスして生産される木材系の材料を含む。HDFはHDFボードであり、MDFはまたMDFボードである。
【0022】
本発明のある実施様態では、密度が600〜850kg/m3の範囲にあるMDFまたは密度が800〜1100kg/m3の範囲にあるHDFが用いられる。本発明では、密度が800〜1100kg/m3の範囲のHGFが、基板(B)として好適に用いられる。
【0023】
木材繊維は、当業界の熟練者には既知のいろいろな原料から、樹皮を剥いだ軟木や、例えばブナ木材などの樹皮を剥いだ堅木のチップ、スラブ(スラブ木材)、剥離ベニヤ製造の際の残留ロール、ベニヤ製造の際の余り、かんな屑や再生木材(例えば破損したパレット)から得ることができる。木材繊維を、2種以上の上記原料から得ることもできる。いろいろな破砕・微粉砕工程の後、破砕された原料を、リファイナー中で最終的に微粉砕してもよい。得られる木材繊維は、通常燃焼ガスまたはバーナーで直接的に加熱されたブローライン流乾燥機中で乾燥される。繊維板の製造に際しては、このようにして得られる木材繊維を、一種以上の以上バインダーと混合する。これは樹脂処理とも呼ばれる。この樹脂処理は、ミキサー中、例えばドラムミキサー中で、あるいは乾燥機中、例えば気流乾燥機中で行われる。樹脂処理された木材繊維は次いで乾燥機に通され、この中で残留水分が7〜13%の範囲となるまで乾燥される。気流乾燥機中で乾燥後に、木材繊維を特別なミキサー中で樹脂処理してもよい。気流乾燥機とミキサーとの組合せも可能である。
【0024】
繊維板の製造前にあるいは製造中に、木材繊維を漂白してもよい。
【0025】
木材繊維は酸化性及び/又は還元性化学物質で漂白可能であり、これらの物質で木材中の着色物質を破壊するか不活性化とする。酸化漂白は、例えば過酸化水素、オゾン、酸素、亜塩素酸塩などのハロ酸の塩、過酢酸塩や過炭酸塩、過ほう酸塩などの有機過酸または無機過酸の塩、特にこれらのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩で実施可能であり、中でも過炭酸塩と過酸化水素が好ましい。還元漂白は、例えば亜二チオン酸塩や、二亜硫酸塩、スルファイトまたは二酸化イオウ、スルフィン酸やこれらの塩、特にアルカリ金属塩、特にナトリウム塩などや、クエン酸やリンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸の還元性硫黄化合物で実施可能である。好ましい還元剤は、二亜硫酸塩と亜硫酸塩、特に重亜硫酸ナトリウムと、リンゴ酸とクエン酸である。
【0026】
漂白は、好ましくは向流塔中で連続的に5〜40質量%の木材繊維水分散液を、漂白剤の水溶液または分散液で、90〜150℃の温度、最高3barの圧力で処理して実施される。漂白は、遷移金属イオンによる漂白剤の劣化を防ぐために、通常錯化剤、例えばEDTAの存在下で行われる。
【0027】
本発明のある実施様態は、まず酸化漂白また還元漂白した木材繊維を用いて繊維板を製造する。
【0028】
過炭酸塩または過酸化水素で酸化漂白を行い、スルファイトまたはリンゴ酸またはクエン酸で還元漂白を行うことが極めて好ましい。
【0029】
木材繊維は、繊維板の製造中に漂白することが有利である。このために、破砕粉砕工程の間に予備ヒーターまたはクッカー中のチップに漂白剤を添加する。錯化剤の添加が好ましい。
【0030】
最終的に繊維板を製造するのに、樹脂処理されたチップまたは木材繊維をマット状とし、必要なら冷間で予備圧縮し、170〜240℃の温度で熱プレスして繊維板とする。
【0031】
有用なバインダーとしては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂や、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、またはフェノール強化尿素−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール強化尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂があげられ、またジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、好ましくはその重合体(略して、PMDI)などのイソシアネートもあげることができる。
【0032】
実製造後、基板(B)として用いるMDFやHDFを、研磨などの従来法で処理することもできる。
【0033】
本発明のある実施様態においては、基板(B)は、部分的に着色されたまたは好ましくは表裏を通じて着色されたセルロース繊維を含む基板を含む。
【0034】
本発明のある好ましい実施様態においては、基板(B)として用いるHDFまたはMDFが着色されており、基板(B)として用いるHDFまたはMDFが、表裏を通じて着色されていることが特に好ましい。着色は、好ましくは繊維板の製造中に、少なくとも一種の着色成分を添加することで行われる。少なくとも一種の着色成分が木材繊維板中に存在し、その濃度は、絶乾繊維(繊維の絶対乾燥重量)に対して0.001〜20質量%の範囲であり、より好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。有用な着色成分は、木材繊維材料の着色に適当であると当業界の熟練者に知られているあらゆる染料や顔料、顔料製剤、着色剤製剤、およびこれらの混合物である。
【0035】
着色成分は、繊維板製造中にバインダーに添加して、あるいはこれとは別に木材繊維上に添加して、あるいは樹脂処理の前または後で木材繊維に添加して導入することができる。
【0036】
本発明のある好ましい実施様態においては、基板(B)として用いられるHDFまたはMDFは、着色成分として少なくとも一種の顔料と、顔料に対して0.1〜10質量%の少なくとも一種の染料を含んでいる。
【0037】
有機顔料や無機顔料、また有機顔料と無機顔料の混合物が使用可能である。
【0038】
顔料は、好ましくは微粉状である。本発明のある実施様態においては、顔料の平均粒子径が0.1〜5μmの範囲であり、特に0.1〜3μmの範囲、特に0.1〜1μmの範囲である。
【0039】
有機顔料は、通常有機着色顔料または黒色顔料である。無機顔料は、着色顔料(着色、白黒顔料)または光輝顔料であってもよい。
【0040】
好適な有機着色顔料としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合ジスアゾ顔料、アントアントロン顔料、アントラキノン系顔料、アントラピリミジン顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、フラバトロン顔料、インダトロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、イソビオラントロン顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、ピラントロン顔料、ピラゾロキナゾロン顔料、チオインジゴ顔料、トリアリルカルボニウム顔料があげられる。
【0041】
好適な無機着色顔料は、金属酸化物や金属硫化物などの無機金属化合物で、これらは二個以上の金属を含んでいてもよい。これらの無機顔料としては、二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛華、顔料グレードの酸化亜鉛などの白色顔料や、硫化亜鉛、リトポン;黒色酸化鉄(C.I.ピグメントブラック11)、鉄−マンガン黒、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)などの黒色顔料があげられる。有用な着色顔料としては、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン;クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48);コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50);ウルトラマリングリーン、コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28と36;C.I.ピグメントブルー72)、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトおよびマンガンバイオレット、べんがら(C.I.ピグメントレッド101)、カドミウムスルホセレニド(C.I.ピグメントレッド108)、セリウムスルフイド(C.I.ピグメントレッド265)、モリブデートレッド(C.I.ピグメントレッド104)、ウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン(C.I.ピグメントブラウン6と7)、混合褐色スピネル相およびコランダム相(C.I.ピグメントブラウン29や31、33、34、35、37、39、40)、クロムチタンイエロー(C.I.ピグメントブラウン24)、クロムオレンジ;セリウムスルフイド(C.I.ピグメントオレンジ75)、黄色酸化鉄(C.I.ピグメントイエロー42)、ニッケルチタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157や158、159、160、161、162、163、164、189)、クロムチタンイエロー、スピネル相(C.I.ピグメントイエロー119)、硫化カドミウムおよびカドミウム硫化亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37と35);クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、バナジン酸ビスマス(C.I.ピグメントイエロー184)があげられる。
【0042】
本発明のある実施様態においては、基板(B)として用いられるHDFまたはMDFが、一種以上の光輝顔料を含んでいてもよい。
【0043】
光輝顔料は、単相構造または多相構造の小板状の顔料であり、その色相は干渉と反射と吸収現象の相互作用により現れる。例としては、アルミニウム小板やアルミニウム、酸化鉄や、特に金属酸化物で一層以上被覆されたマイカ小板があげられる。
【0044】
本発明によれば、基板(B)として用いられるHDFまたはMDFが、染料で着色されていてもよい。水可溶性、水混和性または水溶性有機溶媒に可溶な染料が特に好適である。カチオン性染料とアニオン性染料が特に好適で、カチオン性染料が好ましい。
【0045】
好適なカチオン性染料は、特にジアリールメタンやトリアリールメタン、キサンテン、アゾ、シアニン、アザシアニン、メチン、アクリジン、サフラニン、オキサジン、インジュリン、ニグロシン、フェナジン系のものであり、アゾ系やトリアリールメタン系、キサンテン系の染料が好ましい。
【0046】
具体的な例としては、C.I.ベーシックイエロー1と2と37;C.I.ベーシックオレンジ2;C.I.ベーシックレッド1と108;C.I.ベーシックブルー1と7と26;C.I.ベーシックバイオレット1と3と4と10と49;C.I.ベーシックグリーン1と4;C.I.ベーシックブラウン1と4があげられる。
【0047】
カチオン性染料は、外部に塩基性基をもつ着色剤であってもよい。C.I.ベーシックブルーの15と161が好適である。
【0048】
有用なカチオン性染料としては、さらに相当する溶解性酸性試薬の存在下で用いる体質染料があげられる。例としては、C.I.ソルベントイエロー34;C.I.ソルベントオレンジ3;C.I.ソルベントレッド49;C.I.ソルベントバイオレット8と9;C.I.ソルベントブルー2と4;C.I.ソルベントブラック7があげられる。
【0049】
好適なアニオン染料は、特にアゾ、アントラキノン、金属錯体、トリアリールメタン、キサンテン、およびスチルベン系のスルホ−含有化合物であり、トリアリールメタン系やアゾ系、金属錯体(特に、銅やクロム、コバルト錯体)系の染料が好ましい。
【0050】
具体的な例としては、C.I.アシッドイエロー3と19と36と204;C.I.アシッドオレンジ7、8と142;C.I.アシッドレッド52、88、351と357;C.I.アシッドバイオレット17と90;C.I.アシッドブルー9、193と199;C.I.アシッドブラック194;アニオン性のクロム錯体染料、具体的には、C.I.アシッドバイオレット46、56、58と65;C.I.アシッドイエロー59;C.I.アシッドオレンジ44、74と92;C.I.アシッドレッド195;C.I.アシッドブラウン355、およびC.I.アシッドブラック52;アニオン性のコバルト錯体染料、具体的にはC.I.アシッドイエロー119や204、C.I.ダイレクトレッド80や81があげられる。
【0051】
水溶性染料が好ましい。
【0052】
水溶性カチオンとしては、特にLi+や、Na+、K+などのアルカリ金属カチオンや、アンモニウムや置換アンモニウムイオン、特にアルカノールアンモニウムイオンがあげられる。
【0053】
ある好ましい実施様態においては、基板(B)として用いられるHDFまたはMDFが、着色成分として、少なくとも一種の顔料と、顔料に対して0.1〜10質量%の少なくとも一種の染料とを含んでいる。
【0054】
いずれの場合も用いる染料がそれぞれの顔料と似た色相を持つことが好ましく、このようにしてMDFまたはHDFの着色を強めることができる。しかしながら、色相の異なる染料も使用可能であり、くすんだ着色が可能となる。
【0055】
本発明のある特に好ましい実施様態においては、本発明の多層製品の基板(B)として用いるMDFとHDFが、液体着色剤製剤により着色される。好適な液体着色剤製剤が、WO2004/035276に記載されている。液体着色剤製剤は、
i)少なくとも一種の顔料と
ii)少なくとも一種の染料と
iii)少なくとも一種の分散剤と
iv)水あるいは水の混合物と少なくとも一種の水保持剤と、
v)必要に応じて、他の着色剤製剤に通常用いられる成分を含んでいてもよい。
【0056】
用いる液体着色剤製剤は、一般的には目的の液体着色剤製剤に対して10〜70質量%の、好ましくは10〜60質量%の顔料を含んでいる。
【0057】
用いる液体着色剤製剤中の染料の量は、一般的には、顔料に対して0.1〜25質量%の範囲であり、好ましくは1〜20質量%の範囲である。製剤の全重量に対して、これは一般的には0.01〜7質量%、特に0.1〜5.6質量%に相当する。用いる液体着色剤製剤中の分散剤含量は、液体着色剤製剤に対して好ましくは1〜50質量%の範囲であり、特に1〜40質量%の範囲である。
【0058】
液体着色剤製剤に加えるのに有用な染料と顔料は、上述の使用染顔料である。
【0059】
特に好適な分散剤は、ノニオン性およびアニオン性の表面活性添加物やその混合物である。
【0060】
好ましいノニオン性表面活性添加物は、特にポリエーテル系のものである。
【0061】
非混合ポリアルキレンオキシドに加えて、好ましくはC2−C4−アルキレンオキシドと、フェニル−置換されたC2−C4−アルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリ(フェニルエチレンオキシド)との混合物も使用可能で、これは、特にブロックコポリマーであり、特にポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドのブロックまたはポリ(フェニルエチレンオキシド)とポリエチレンオキシドのブロックを有するポリマーであり、また適当なこれらのアルキレンオキシドのランダムコポリマーである。
【0062】
好ましいアニオン性表面活性添加物は、スルホネート系、スルフェート系、ホスホネート系またはホスフェート系である。
【0063】
アニオン性の表面活性添加物の他の重要な群は、上にノニオン性添加物としてあげたポリエーテルのスルホネート、スルフェート、ホスホネートおよびホスフェートからなる。
【0064】
他の好適なアニオン性表面活性添加物は、カルボキシレート基を有する水溶性ポリマー系のものである。これら添加剤を、高極性基と非極性基の比率を調整して、それぞれの用途や顔料にあわせることが好ましい。
【0065】
水が、本発明で用いる着色剤製剤用の液体媒体となる。
【0066】
本液体着色剤製剤の液相は、好ましくは水と水保持剤の混合物である。有用な水保持剤は、特に、高沸点(即ち、一般的には大気圧で>100℃の沸点)であり、水保持作用をもち、水に可溶または混合可能な有機溶媒である。
【0067】
好適な水保持剤の例としては、多価アルコール、好ましくは非分岐または分岐状の多価アルコールで、炭素原子数が2〜8、好ましくは3〜6のものであり、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、アラビトールやアドニトール、キシリトールなどのペンチトール、ソルビトールやマンニトール、ズルシトールなどのヘキシトールである。有用な水保持剤としては、さらに例えば、ジ−、トリ−、およびテトラアルキレングリコールや、それらのモノアルキル(特にC1−C6−アルキル、特にC1−C4−アルキル)エーテルがあげられる。例としては、ジ−、トリ−、およびテトラエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、およびモノブチルエーテル、トリエチレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、およびモノブチルエーテル、ジ−、トリ−、およびテトラ−1,2−および−1,3−プロピレングリコール、ジ−、トリ−、およびテトラー1,2−および−1,3−プロピレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、およびモノブチルエーテルがあげられる。
【0068】
液体着色剤製剤は、一般的には10〜88.95質量%の、好ましくは10〜80質量%の水または水と水保持剤の混合物を含んでいる。水が、有機溶媒水保持剤との混合物として存在する場合、この有機溶媒は、一般的には液相の1〜80質量%を、好ましくは1〜60質量%を占める。
【0069】
液体着色剤製剤は、さらに殺菌剤、脱泡剤、沈降防止剤、流動改質剤などの添加物を含んでよく、その含量は、一般的には液体着色剤製剤に対して最大で5質量%である。
【0070】
液体着色剤製剤は、いろいろな方法で入手可能である。好ましくは、第一の工程では、顔料分散液を作り、これに固体状または特に溶解状の染料を混合する。
【0071】
液体着色剤製剤は、MDFやHDFボードの着色に非常に有用である。
【0072】
液体着色剤製剤は、MDFやHDFボードの土台となる木材繊維やバインダー混合物に、いろいろな方法でまた製造のいろいろな段階で添加可能である。詳細については、WO2008/055535を参照。
【0073】
基板(B)として用いられるHDFまたはMDFは、ある色合いで表裏を通じて着色される。
【0074】
異なる色に着色された木材繊維を混合してプレスすることで、特に魅力のある着色効果が得られる。このようにして、例えば大理石模様またはスポット状の繊維板が得られる。木材繊維を多色に着色することで特殊な効果が得られる。例えば、異なる色に着色された木材繊維を多層にプレスすることもできる。一定比率の木材繊維が着色され残りが元の色を保持している場合にも、このような効果が得られる。
【0075】
本発明の多層製品はさらに金属含有層(C)を有していてもよく、これが連続的であっても、好ましくは不連続であってもよい。連続的とは、かなり均一であることを意味する。不連続金属含有層(C)は、ある場所に金属を有するが他の場所には有さない。金属は、不規則な模様の硬いで、あるいは好ましくは規則的な模様の形で存在してもよい。
【0076】
本発明のある実施様態においては、金属含有層(C)の平均厚みが10μm〜1mmの範囲であり、好ましくは100〜200μmの範囲である。
【0077】
金属含有層(C)は、その製造方法で最もよく説明される。その製造方法は、次の複数の工程からなる。
(a)装飾層(A)または装飾層(A)の一部を、少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物で印刷する工程、
(b)少なくとも一種の他の金属を析出させる工程。
【0078】
被覆層(D)は、装飾効果または保護効果を有する層である。
【0079】
本発明のある実施様態においては、被覆層(D)が、一層以上の紙、織物またはプラスチックのフィルム/シートの樹脂含浸層からなる上層を有している。
【0080】
本発明のある実施様態においては、樹脂が、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール強化尿素−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール強化尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる。
【0081】
樹脂は、一種以上の硬化剤を、例えば強い有機酸のアンモニウム塩、特にスルホン酸のアンモニウム塩を含んでいてもよい。アンモニウムは、無置換アンモニウムか、好ましくは置換アンモニウム、特にトリエチルアンモニウムやモルホリニウムから選ばれる。硬化剤の添加で、この樹脂の硬化が速まる。
【0082】
本発明のある実施様態においては、被覆層(D)が、プラスチックフィルム/シート、紙または織物から選ばれる。
【0083】
このプラスチックフィルム/シートは、合成ポリマー製のシート状構造物を意味するものとし、その厚みは、0.5μm〜1mmであり、好ましくは1μm〜0.5mm、より好ましくは最大でも0.15mm未満である。
【0084】
プラスチックフィルム/シートは、手で、即ち工具を使用せずに、曲げることができることが好ましい。
【0085】
合成ポリマーは、好ましくはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンである。なお、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンとは、エチレンとプロピレンと、アクリル酸または1−オレフィンなどのオレフィンとのコポリマーと、エチレンホモポリマーとプロピレンホモポリマーをさすものとする。ポリエチレンは、例えば、特に0.1から50質量%未満の、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンまたは1−ドデセンなどの一種以上の1−オレフィンとのエチレンコポリマー、好ましくはプロピレンや1−ブテン、1−ヘキセンなどとのエチレンコポリマーを意味するものとする。ポリプロピレンは、特に0.1から50質量%未満の。エチレン及び/又は1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、または1−ドデセンなどの一種以上の1−オレフィンとのプロピレンコポリマー、好ましくはエチレンや1−ブテン、1−ヘキセンとのプロピレンコポリマーを意味するものとする。ポリプロピレンは、実質的にアイソタクチックポリプロピレンを意味するものとする。
【0086】
ポリエチレンのフィルム/シートは、HDPEまたはLDPEまたはLLDPE製である。
【0087】
ポリアミドのフィルム/シートは、好ましくはナイロン6由来のものである。
【0088】
ポリエステルのフィルム/シートは、好ましくはポリブチレンテレフタレート製、特にポリエチレンテレフタレート(PET)製である。
【0089】
ポリカーボネートのフィルム/シートは、好ましくはビスフェノールAを用いて得られるポリカーボネートに由来するものである。
【0090】
ポリ塩化ビニルのフィルム/シートは、軟質ポリ塩化ビニルまたは硬質ポリ塩化ビニル製のフィルム/シートであり、軟質ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルと酢酸ビニル及び/又はアクリレートのコポリマーを含んでいる。
【0091】
被覆層は、特に織物が好ましい。本発明において、織物は、編織布(例えば、編布または好ましくは織布)として、あるいは不織布として使用される。本発明の目的の織物は、柔軟であっても硬くてもよい。織物は、好ましくは、例えば手で一回以上曲げることができ、曲げる前後の状態に見た目の差が出ない編織布を含むことが好ましい。
【0092】
本発明の目的の織物は、天然繊維製または合成繊維製であっても、天然繊維と合成繊維の混合物製であってもよい。有用な天然繊維としては、例えば羊毛や亜麻、好ましくは綿があげられる。有用な合成繊維としては、例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混紡、ポリアミド混紡、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマクロファイバーがあげられ、ポリエステルと綿と合成繊維の混紡が好ましく、特に綿とポリエステルの混紡が好ましい。
【0093】
層(C)は、工程(a)で装飾層(A)または装飾層(A)の一部を、元素の電気化学列において水素より大きな負の標準電位を持つ少なくとも一種の金属の金属粉を含む印刷用配合物で、好ましくは水性の印刷用配合物で印刷して形成される。
【0094】
印刷用配合物の例としては、グラビア印刷インクやフレキソ印刷インク、オフセット印刷インク、凸版印刷インク、非ジェット性の印刷インクや、バルボリンプロセス用またはインクジェットプロセス用のインクなどのジェット性の印刷インクがあげられる。印刷ペーストが好ましく、水性の印刷ペーストがより好ましい。
【0095】
工程(a)の印刷用配合物からの金属粉を、短縮して金属粉(a)と呼ぶ。金属粉(a)は、例えば粉末状のZnやNi、Cu、Ag、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Biの純品、または上記金属間の混合物あるいは他の金属との混合物または合金の形から選ばれる。好適な合金の例としては、CuZnや、CuSn、CuNi、SnPb、SnBi、SnCu、NiP,ZnFe、ZnNi、ZnCo、ZnMnがあげられる。好ましい金属粉(a)は、一種の金属のみを含み、鉄粉および銅粉が特に好ましく、鉄粉が極めて好ましい。
【0096】
本発明のある実施様態においては、金属粉(a)の平均粒子径(例えばマイクロトラックX100を用いるレーザ回折式測定で求めたもの)が0.001〜100μmの範囲であり、好ましくは0.05〜50μmの範囲、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。
【0097】
ある実施様態においては、金属粉末(a)がその粒子径分布で特徴付けられる。例えば、そのd10値は0.001〜5μmであり、d50値が1〜10μmの範囲であり、d90が3〜100μmの範囲であり、d10<d50<d90である。直径が100μmを超える粒子が含まれないことが好ましい。
【0098】
金属粉(a)は、不動態化した形で、例えば少なくとも部分的に塗装された状態で使用できる。好適な塗装の例としては、その金属の酸化物、SiO2/水和SiO2またはその金属のリン酸塩などの無機層があげられる。
【0099】
金属粉(a)の粒子は原理的にはいかなる形状をとることもでき、例えば針状、板状または球状の粒子が使用できる。球状および板状の粒子が好ましい。
【0100】
球状の粒子を含む金属粉(a)を使用することが特に好ましく、好ましくはほとんどが球状粒子であるもの、最も好ましいのはいわゆる球状粒子カルボニル鉄粉末である。
【0101】
本発明のある実施様態においては、金属粉(a)は、炭素化合物と共に、特に実質的に炭素からなる炭素化合物と、具体的には顔料グレードのカーボンブラックと共に使用できる。特に好ましいのは、導電グレードのカーボンブラックや炭素ナノチューブまたはグラフェンなどの電気伝導性炭素化合物である。
【0102】
工程(a)のある実施様態においては、金属粉(a)の粒子を密に印刷して、これらの粒子が電気を伝導できるようにすることができる。工程(a)のもう一つの実施様態においては、電気伝導性を示さないほど金属粉(a)の粒子をまばらに印刷することができる。
【0103】
金属粉(a)の製造法は公知である。例えば、通常の市販品が使用可能であり、また金属粉(a)を公知の方法で、例えば目的の金属の塩の溶液から電解析出または化学還元により、あるいは例えば水素により酸化物粉末の還元、特に冷媒、例えばガスまたは水中への溶融金属の吹き付けや噴霧により生産可能である。
【0104】
鉄ペンタカルボニルの熱分解で製造される金属粉(a)(以降、カルボニル鉄粉末という)を使うことが特に好ましい。
【0105】
熱分解によるカルボニル鉄粉末、特に鉄ペンタカルボニルFe(CO)5の製造は、例えば、ウルマン工業化学辞典、第5版、Vol.A14、p.599に記載されている。鉄ペンタカルボニルの分解は、例えば大気圧で、例えば高温で、例えば200〜300℃の範囲で、例えば好ましくは、加熱テープ、加熱ワイヤまたは加熱媒体が流れる加熱マントルからなる加熱手段で覆われた、縦型の石英ガラスまたはV2Aスチールなどの耐熱材料製のチューブからなる熱分解装置中で行われる。
【0106】
カルボニル鉄粉末の平均粒子径は、分解工程に関するプロセス変数や反応の制御により広い領域で制御され、個数標準粒径でいうと、一般的には0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.1〜50μmの範囲、より好ましくは1〜8μmの範囲に制御される。
【0107】
ある実施様態においては、工程(a)において、装飾層(A)のいくつかの領域を、または装飾層(A)の一部を金属粉(a)を含む印刷用配合物で印刷し、他の領域を印刷せずして金属粉(a)の模様が印刷される。直線状好ましくは曲線状の、帯状または線状の模様で装飾層(A)上にまたは装飾層(A)の一部の上に印刷され、例えば幅と厚みがそれぞれ0.1μm〜5mmの範囲であり、上記の帯の幅が5.1mm〜例えば10cmの範囲、または適当ならそれ以上で、厚みが0.1μm〜5mmの範囲にあることが好ましい。
【0108】
本発明のある具体的な実施様態においては、このような金属粉(a)の帯状または線状の模様が、帯や線が交叉しないように印刷される。
【0109】
本発明のもう一つの具体的な実施様態においては、例えばもしプリント回路の製造を行いたい場合には、この金属粉(a)の帯状または線状の模様が交叉するように印刷される。
【0110】
本発明のある実施様態においては、工程(a)での印刷が、以下のいろいろな公知のプロセスで実施される。本発明のある実施様態は、ステンシルを使用し、これで金属粉(a)を含む印刷用配合物がスキージーを用いてプレスされる。上記のプロセスは、スクリーン印刷法である。他の好適な印刷法は、グラビア印刷法やフレキソ印刷法である。他の適当な印刷法は、バルブジェット法から選ばれる。バルブジェット法は、好ましくは増粘剤を含まない印刷用配合物を利用する。
【0111】
層(C)の製造の工程(b)では、少なくとも一種の他の金属を析出させる。工程(b)で一種以上の他の金属を析出させてもよいが、単一の他の金属を析出させることが好ましい。
【0112】
本発明の方法は、工程(b)において他の金属を装飾層(A)または装飾層(A)の関係する一部に析出させて行われる。「装飾層(A)」は、装飾層(A)、または装飾層(A)の関係する一部をさし、これは、下に示す工程(a)〜(e)と適当なら他の工程、例えば(d)ですでに加工されているものである。
【0113】
本発明のある実施様態では、カルボニル鉄粉末を工程(a)の金属粉(a)として、また銀、金、ニッケル、特に銅を工程(b)の他の金属として使用する。
【0114】
本発明のある実施様態(以降、工程(b1)と称す)においては、工程(b1)で外部電源を使用せず、工程(b1)の他の金属が、アルカリ性溶液または好ましくは酸性溶液において、元素の電気化学列において、下層の金属粉(a)の金属および水素よりより大きな正の標準電位を持っている。
【0115】
ある可能な方法は、例えば工程(a)で印刷される、また適当なら工程(c)において電気部品が与えられる装飾層(A)または装飾層(A)の一部を、塩基性、中性または好ましくは酸性の、好ましくは他の金属の塩の水溶液と適当なら一種以上の還元剤とで処理し、具体的にはそれを目的とする溶液中に投入して処理する。
【0116】
本発明のある実施様態では、工程(b1)の処理を、0.5分間〜12時間、好ましくは最長30分間行う。
【0117】
本発明のある実施様態は、工程(b1)において他の金属の塩の塩基性、中性または好ましくは酸性溶液で処理することであり、その溶液の温度は0〜100℃の範囲であり、好ましくは10〜80℃である。
【0118】
さらに工程(b1)で一種以上の還元剤を添加してもよい。例えば他の金属が銅である場合は、添加可能な還元剤としては、例えばアルデヒドが、特に還元糖またはホルムアルデヒドが還元剤としてあげられる。例えば他の金属がニッケルである場合は、添加される還元剤としては、アルカリ金属次亜リン酸、特にNaH2PO2−2H2O、またはボロン酸塩、特にNaBH4が添加される。
【0119】
本発明のもう一つの実施様態(以下工程(b2)と称す)においては、工程(b2)で外部電源が使用され、工程(b2)で用いる他の金属は、酸性溶液またはアルカリ溶液において元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属より、大きくあるいは少し大きく正である標準電位を有することができる。好ましくは、このために、カーボニル鉄粉末が金属粉(a)として選ばれ、ニッケル、亜鉛または特に銅が他の金属として選ばれる。工程(b2)の他の金属が、元素の電気化学列において、水素及び金属粉(a)の金属より正に大きな標準電位を持つ場合、この他の金属が工程(b1)と同様に被覆される。
【0120】
工程(b2)を、10〜100Aの範囲、好ましく12〜50Aの範囲の強度の電流をかけて実施してもよい。
【0121】
ある場合は、工程(b2)の電流密度が0.05〜50A/dm22の範囲であり、好ましくは0.1〜30A/dm22の範囲である。
【0122】
工程(b2)は、例えば外部電源を10分〜160時間の範囲で用いて行われる。
【0123】
本発明のある実施様態においては、最初外部電源なしに、次いで外部電源を用いて工程(b1)と工程(b2)とを共に実施し、工程(b)の他の金属が、元素の電気化学列において、下層にある金属粉(a)よりより大きな正の標準電位を持っている。
【0124】
本発明のある実施様態では、一種以上の副原料をこの他の金属の溶液に添加する。有用な助剤の例としては、緩衝剤、界面活性剤、ポリマー(特に粒状ポリマーで粒子径が10nm〜10μmであるもの)、脱泡剤、一種以上の有機溶剤、一種以上の錯化剤があげられる。
【0125】
酢酸/酢酸塩緩衝剤が特に有用な緩衝剤である。
【0126】
特に好適な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、特にノニオン性界面活性剤から選ばれる。
【0127】
カチオン系界面活性剤としては、次のものがあげられる。C6−C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環含有−第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、オキサジアリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩及びアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩、及びホスホニウム。他の例としては、ドデシルアンモニウムアセテートまたはその塩酸塩、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)クロライドまたは酢酸塩、エチル脂肪酸エステル、N−セチルピリジニウムクロライド、N−ラウリルピリジニウムスルフェート、N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド、及びジェミニ型界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)−エチレンジアミンジブロミドがあげられる。
【0128】
好適なアニオン界面活性剤の例としては、アルキルスルフェート(アルキル基:C8−C12)、エトキシ化アルカノール類(エトキシ化度:4〜30、アルキル基:C12−C18)の硫酸エステル、エトキシ化アルキルフェノール(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4−C12)、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12−C18)、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9−C18)、及びスルホコハク酸モノ−またはジエステル等のスルホサクシネートのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩があげられる。アリール置換またはアルキル置換のポリグリコールエーテル、US4,218,218に記載の物質、y(US4,218,218中の式)の同族体のうち10〜37の範囲のものが好ましい。
【0129】
好ましくはオキソ法で一重または好ましくは多重にアルコキシ化されたC10−C30アルカノール、または好ましくは3〜100モルのC2−C4−アルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシ化したものなどのノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0130】
好適な脱泡剤としては、例えばシリコン系脱泡剤で、例えば次式で表されるもの:
HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332
HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33
で、アルコキシ化されてないもの、または20当量のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシ化されたものがあげられる。シリコーン非含有の脱泡剤もまた好適であり、その例としては、多重アルコキシ化されたアルコール類、例えば脂肪族アルコールアルコキシ化物、好ましくは2〜50重にエトキシ化された、好ましくは非分岐のC10−C20−アルカノールや、非分岐のC10−C20−アルカノール、2−エチルヘキサン−1−オールがあげられる。他の好適な脱泡剤としては、脂肪酸C8−C20−アルキルエステル、好ましくはC10−C20−アルキルステアレートがあげられる。なお、C8−C20−アルキル基及びC10−C20−アルキル基は分岐していてもよい。
【0131】
好適な錯化剤は、キレートを形成する化合物である。少なくとも一個のカルボン酸基を有するアミン、ジアミン、トリアミンから選ばれる錯化剤が好ましい。好ましい例としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレンペンタミン五酢酸、およびそれらのアルカリ金属塩があげられる。
【0132】
本発明のある実施様態においては、100nm〜500μmの範囲、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは2μm〜50μmの範囲の厚みの層を形成するのに十分な量の他の金属を被覆させる。
【0133】
工程(b)では、金属粉(a)が部分的にあるいは完全に他の金属で置き換えられるが、他の被覆金属の形態は、必ずしも金属粉(a)の形態と同じである必要はない。
【0134】
他の金属(b)の析出が終了すると、層(C)が装飾層(A)の上に、または装飾層(A)の一部に形成され、これを例えば水で一回以上洗浄することができる。
【0135】
本発明のある実施様態においては、層(C)が、さらに以下の工程からなる方法で形成される。(c)他の金属(b)の析出、または好ましくは工程(a)による印刷の後で他の金属(b)の析出の前で、電流を発生または消費する少なくとも一個の部品を提供する工程。この電流を発生または消費する少なくとも一個の部品を形成する工程を、短縮して工程(c)と呼ぶ。
【0136】
工程(c)では、金属粉(a)で印刷された装飾層(A)または金属粉(a)で印刷された装飾層(A)の一部には、電流を発生または消費する少なくとも一個の部品(短縮して電気部品と呼ぶ)が形成される。少なくとも2個の電気部品が、より好ましくは2〜50個の電気部品が形成されることが好ましい。
【0137】
工程(c)のある実施様態は、装飾層(A)または装飾層(A)に関連する部分に、この電気部品を一個以上取り付ける。
【0138】
本発明のある実施様態では、工程(c)は、工程(a)で金属粉(a)を含む製剤が塗布された2箇所以上の位置で電流を必要とするまたは発生する少なくとも一個の部品を固定することからなる。
【0139】
本発明の目的において、「2箇所以上の位置」とは、金属粉(a)または工程(b)から析出した金属を含む工程(a)からの模様の位置をさす。
【0140】
本発明のある実施様態においては、工程(a)で印刷され、工程(c)で少なくとも一個の電気部品が固定されたいずれの2箇所以上の位置も、工程(a)で印刷された模様の異なる部分、例えば帯に属している。
【0141】
工程(c)で特定されるいずれの2箇所以上の位置も、相互に近くあることが、例えば0.1〜5mmの範囲に、好ましくは最大で2mmの範囲にあることが好ましい。
【0142】
本発明のある実施様態においては、工程(c)で固定される電気部品は、比較的に小型で、例えば平均径が1〜5mm、あるいはそれ以下である。
【0143】
本発明の他の実施様態では、工程(c)で固定される部品が、近接センサーとして使用可能で、大きさが1〜10cmの範囲(長さと幅)で、1〜5mm、好ましくは最大で2mm(厚み)のセンサーである。
【0144】
多くの場合、工程(c)で固定される電気部品の平均厚みは、0.1〜5mmの範囲である。
【0145】
本発明のある実施様態においては、電気部品が少なくとも2個の端子を持ち、そのうちの一つが上述の位置に固定されている。
【0146】
電気部品は、種類が異なっていても同一であってもよい。
【0147】
本発明のある実施様態では、電気部品が、発光ダイオード、液晶表示素子、ペルチェ素子、トランジスタ、エレクトロクロミック染料、抵抗体、キャパシター素子、インダクター素子、ダイオード、トランジスタ、アクチュエータ、電気機械素子、および太陽電池セルから選ばれる。
【0148】
発光ダイオード、液晶表示素子、ペルチェ素子、トランジスタ、エレクトロクロミック染料、抵抗体、キャパシター素子、インダクター素子、ダイオード、トランジスタ、アクチュエータ、電気機械素子、および太陽電池セルは公知であり、市販されている。
【0149】
本発明のある実施様態においては、電気部品が従来の実装方法や実装システムで取り付けられる。実装方法と実装システムの例は、回路基板の製造において、例えば(表面実装技術)において既知である。自動実装機が、例えば一個以上の電気部品を、工程(a)で印刷された装飾層(A)の特定の希望の位置に、または装飾層(A)の関連する位置に据え付ける。
【0150】
本発明のある実施様態で、十分に小さな電気部品が取り付けられる場合は、これらは板紙またはプラスチックベルトで運ばれる電気部品で行われる。このベルトは電気部品を保持するためポケットを持っている。ポケットの上表面は、例えば電気部品を取り出す際に取り除くことの可能なフィルムで封をされている。これらのベルトは、ロールに巻かれる。このロールは、自動実装機でベルトを移動するための穴を、少なくとも一辺に規則的な間隔で有している。これらのロールは、供給装置により自動実装機に送られる。これらの電気部品は、例えば真空ピンセットまたはグリッパで掴んで、織物基板の希望の位置に取り付けられる。すべての電気部品が取り付けられるまで、この運転を繰り返す。
【0151】
例えば表示装置の製造に供される本発明の金属化多層製品を製造するためには、リード線が、例えばはんだ付けにより末端に従来法で取り付けられる。
【0152】
本発明のある実施様態においては、層(C)が、さらに(d)少なくとも一回の熱処理工程を含むプロセスで製造される。
【0153】
この熱処理(d)は、好ましくは乾燥した媒体中での、例えばガス流中での加温または加熱により行われる。
【0154】
本発明の多層製品製造の最終工程は、いろいろな層を共にプレスすることからなる。これは、10〜80barの範囲の圧力、好ましくは20〜50barの範囲の圧力で、共にプレスすることで行われる。
【0155】
本発明のある実施様態では、120〜220℃の範囲の温度で、好ましくは150〜220℃の範囲の温度でプレスされる。
【0156】
本発明のある実施様態では、プレス時間が10秒間〜数分の範囲であり、例えば最大で10分間、好ましくは20秒間〜1分の範囲である。
【0157】
上記の条件下でプレスする代わりに、いろいろな層を既知の接着剤を用いて貼り合わせてもよい。いろいろな層を貼り合わせるのに接着剤を使用する場合に、これらの層をプレスするのも賢明だろう。
【0158】
本発明の多層製品は、優れた特性をもつ。これらは、機械力を用いて、例えば切削やドリル、のこ引きで加工可能であり、端面や輪郭は、本来の木材同様に切断できる。本発明の多層製品を相互に貼り合わせ組み立てて、より大きな素子やカバーとすることができる。
【0159】
本発明の多層製品を出っ張りや溝とともに供給する場合は、これらを、T&Gパネルように据付が容易なパネルに加工してもよい。
【0160】
MDFまたはHDFを用いて製造された本発明の多層製品は、裏打ち材として作用するあるいは裏打ち材(E)と呼べるもう一つの層(E)を持つことができる。このもう一つの層(E)は、本用途で既知のいずれの材料でできていてもよく、例えばこの裏打ち材(E)がメラミン樹脂含浸の紙であり、HDFまたはMDFボードの下面にプレスされていてもよい。
【0161】
MDFまたはHDFを用いて生産される本発明の多層製品は、印刷される装飾層(A)上に、特に装飾層(A)の印刷部分上に、表面層として作用し上層とも呼ばれる保護層を有していてもよい。この保護層は、MDFおよびHDFボードの上側にプレスされたメラミン樹脂含浸の透明紙であってもよく、メラミン樹脂層であってもよい。
【0162】
本発明の多層製品が床パネルであり、本発明の床パネルが保護層を持つ場合、裏打ち材(E)と保護層は、好ましく同一の工程で形成されることが好ましい。裏打ち材(E)と、適当なら保護層の形成の前後で、視認側を、例えばエンボス加工、打抜きまたは切削により加工して、視認側を模様のある表面としてもよい。この加工は、手作業で行ってもよいが、機械的に制御された機械またはコンピュータ数値制御(CNC)機を用いて行うことが好ましい。このようにして「生きた表面」が得られ、本当の木材の表面に非常に近くなる。切削でパネルに深い溝を形成することもできる。
【0163】
本発明の多層製品には、その上表面上に、即ち視認側に、他の表面処理を施してもよい。一般に、寄せ木細工の表面保護で知られるいずれの方法や材料も、例えばUV硬化塗装や粉末塗装、他の透明表面塗装などが、本発明の多層製品の視認側の処理に利用可能である。いずれの表面処理に先立って、視認側に、例えばエンボス加工、CNC法、打ち抜きまたは切削により三次元的な質感をもたらせてもよい。本発明の他の実施様態においては、本発明の多層製品の視認側が、三次元的な質感を持つようにされただけで、他の表面処理が施されていない。本発明のもう一つの実施様態においては、他の装飾層(A)または上層を形成することなく、本発明の多層製品の視認側が、研磨、ワックスがけ、オイルがけ、酸洗浄、光沢剤処理または塗装されている。
【0164】
本発明の多層製品は、他の層を有していてもよい。例えば、本発明の多層製品の裏面に、足音の遮音層または熱の絶縁層を施してもよい。
【0165】
本発明の多層製品を、通常の市販製品の大きさに切断し、縦の一辺と横の一辺に溝を作り、これにかみ合う出っ張りをそれぞれ反対の縦横の辺に設けることもできる。これは、例えば切削加工により行われる。
【0166】
本発明の多層製品は、建物の内装や自動車内での多くの用途で使用可能である。建物内装の用途の例としては、パネル(特に床パネル)や、フローリング、壁面カバー、天井があげられる。自動車分野の用途の例としては、ダッシュボードやコンソールがあげられる。
【0167】
本発明の多層製品中に導線が模様をもって形成されている場合、この模様は、容易に変更や追加が可能である。
【0168】
また、本発明の多層製品は、機械的強度が大きく、望まざる自己発熱がほとんどなく、静電荷の蓄積や放電に対して敏感で無い。また、本発明の多層製品は据付が容易で、日曜大工で家庭の改修を行う人に容易に取り扱いが可能である。
【0169】
本発明はまた、多層製品の、特に本発明の多層製品の製造方法を提供する。本発明の方法(以下、本発明の製造方法と呼ぶ)は、
(a)少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物で印刷し、
(b)少なくとも一種の他の金属を析出させ、
(c)好ましくは工程(a)の印刷の後で工程(b)の析出の前に、必要に応じて、電流を発生または消費する少なくとも一個の部品を取り付け、
(d)必要に応じて熱処理して、
装飾層(A)または装飾層(A)の一部を提供する工程と、セルロース繊維を含む少なくとも一種の基板(B)をこの金属含有層(C)を含む装飾層(A)または装飾層(A)の一部の上に形成する工程とを含む。なお、その際に、この少なくとも一種の基板(B)には、被覆層(D)がすでに設けられているか設けられる。
【0170】
以上、いろいろな用語が説明された。
【0171】
本発明のある実施様態においては、好ましくは工程(a)の水性印刷用配合物が、バインダーを含み、好ましくは少なくとも一種の造膜性ポリマー(具体的には、ポリアクリレート、ポリブタジエン、少なくとも一種の少なくとも一個の共役ジエンを持つビニル芳香族と適当なら他のコモノマーとのコポリマー(例えばスチレン−ブタジエンバインダー)の少なくとも一種)の水分散液を含む。他の適当なバインダーは、ポリウレタン(好ましくはアニオン性ポリウレタン)およびエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーからから選ばれる。
【0172】
本発明の目的において有用なバインダーのポリアクリレートは、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸C1−C10−アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート)と、少なくとも一種の他のコモノマー(例えば、他の(メタ)アクリル酸C1−C10−アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートまたはスチレンなどのビニル芳香族化合物)との共重合で得られる。
【0173】
本発明の目的において有用なバインダーのポリウレタン、好ましくはアニオン性のものは、例えば一種以上の芳香族または好ましくは脂肪族または脂環式ジイソシアネートと、
一種以上のポリエステルジオールと好ましくは一種以上のヒドロキシカルボン酸、具体的にはヒドロキシ酢酸、または好ましくはジヒドロキシカルボン酸、例えば1,1−ジメチロールプロピオン酸、1,1−ジメチロール酪酸または1,1−ジメチロールエタン酸との反応で得られる。
【0174】
特に有用なバインダーのエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えばエチレン、(メタ)アクリル酸、および適当なら少なくとも一種の他のコモノマー、例えば(メタ)アクリル酸C1−C10−アルキルエステル、無水マレイン酸、イソブテンまたは酢酸ビニルの共重合により得られ、好ましくは190〜350℃の範囲の温度と1500〜3500barの範囲、好ましくは2000〜2500barの範囲の圧力での共重合で得られる。
【0175】
特に有用なバインダーのエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば90質量%の共重合エチレンを含み、その120℃での溶融粘度νが60mm2/s〜10000mm2/sの範囲、好ましくは100mm2/s〜5000mm2/sの範囲である。
【0176】
特に有用なバインダーのエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば最高で90質量%の共重合エチレンを含み、160℃で325gの加重下でEN−ISO1133に準じて求めたメルトフローレート(MFR)が、1〜50g/10分の範囲、好ましくは5〜20g/10分、より好ましくは
7〜15g/10分の範囲にある。
【0177】
特に有用な、少なくとも一種のビニル芳香族と少なくとも一個の共役ジエンと、適当なら他のコモノマーからなるバインダーコポリマーは、例えばスチレン−ブタジエンバインダーは、少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸、あるいはその無水物などの適当な誘導体を共重合の形で含んでいる。特に好適なビニル芳香族化学物は、パラ−メチルスチレンやα−メチルスチレンで、特にスチレンである。特に好適な共役ジエンは、イソプレン、クロロプレン、特に1,3−ブタジエンである。特に好適なエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸または適当なこれらの誘導体は、いくつかの例をあげると、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸またはイタコン酸無水物である。
【0178】
本発明のある実施様態においては、特に好適な、少なくとも一種のビニル芳香族と少なくとも一種の共役ジエンと適当なら他のコモノマーからなるバインダーコポリマーは、共重合の形で、さらに、
19.9〜80質量%のビニル芳香族と、
19.9〜80質量%の共役ジエンと、
0.1〜10質量%のエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸、またはその無水物などの適当な誘導体とを含んでいる。
【0179】
本発明のある実施様態においては、バインダーの、23℃で回転粘土計、例えばハーケ粘度計を用いて求めた動的粘度ηが、10〜100dPa・sの範囲、好ましくは20〜30dPa・sの範囲にある。
【0180】
好ましくは工程(a)で用いる水性製剤が、一種以上の乳化剤を含んでいる。
【0181】
乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、または好ましくはノニオン性表面活性物質が使われる。
【0182】
好適なカチオン性乳化剤の例としては、C6−C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環含有の一級、二級、三級または四級アンモニウム塩や、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、アミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩があげられる。具体的な例としては、ドデシルアンモニウムの酢酸塩または塩酸塩、いろいろな2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)−エチル脂肪酸エステルの塩化物または酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロライド、N−ラウリルピリジニウムスルフェートやN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N.N.N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド、ジェミニ界面活性剤のN,N’−(ラウリルdiメチル)エチレンジアミンジブロマイドがあげられる。
【0183】
好適なアニオン性乳化剤の例としては、アルキルスルフェート(アルキル基:C8−C12)のアルカリ金属やアンモニウム塩;エトキシ化アルカノール(エトキシ化度:4〜30、アルキル基:C12−C18)とエトキシ化アルキルフェノール(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4−C12)の硫酸エステルのアルカリ金属やアンモニウム塩;アルキルスルホン酸(アルキル基:C12−C18)のアルカリ金属やアンモニウム塩;アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9−C18)のアルカリ金属やアンモニウム塩;およびスルホコハク酸モノ−またはジエステルなどのスルホサクシネートのアルカリ金属やアンモニウム塩があげられる。アリール−またはアルキル−置換されたポリグリコールエーテルやUS4,218,218に記載の物質、y(US4,218,218の式)の同族体で10〜37のものが好ましい。
【0184】
特に、一重または好ましくは多重にアルコキシル化されたC10−C30アルカノールなどのノニオン性乳化剤が好ましく、または3〜100モルのC2−C4−アルキレンオキシド、特にエチレンオキシドで、好ましくはオキソ法でアルコキシル化された脂肪族アルコールが好ましい。
【0185】
特に好適な多重アルコキシル化脂肪アルコールとオキソ法アルコールの例としては
【0186】
【化1】

および上記の乳化剤の混合物、例えばn−C1837O−(CH2CH2O)50−Hとn−C1633O−(CH2CH2O)50−Hの混合物があげられる。なお、各数字は個数平均である。
【0187】
本発明のある実施様態においては、工程(a)で使用される印刷用配合物が、増粘剤および粘度低下剤から選ばれる少なくとも一種の流動性改善剤を含む。
【0188】
好適な増粘剤は、例えば天然増粘剤または好ましくは合成増粘剤である。天然増粘剤は、天然物の増粘剤、あるいは天然物から精製して、特に抽出して得られる増粘剤である。無機天然増粘剤の例としては、ベントナイトなどのシート状シリケートがあげられる。有機天然増粘剤の例としては、好ましくはカゼインなどのタンパク質や好ましくは多糖類があげられる。特に好ましい天然増粘剤は、寒天や、カラギーナン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウムやアルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸塩、ペクチン、多糖類、イナゴマメ粉(カルビン)、デキストリンから選ばれる。
【0189】
一般的には、合成ポリマーの液体溶液から、特にアクリレート類の例えばホワイトオイル溶液または水溶液、あるいは乾燥状の合成ポリマー、例えば噴霧乾燥した粉末から選ばれる合成増粘剤を使用することが好ましい。増粘剤として使用される合成ポリマーは、酸基を有し、その一部又は全部がアンモニアで中和されている。定着操作に間に、アンモニアが放出されてpHが低下し、実際の定着処理を開始させる。また、定着に必要なpH低下を、不揮発性酸を添加して、例えばクエン酸、コハク酸、グルタル酸またはリンゴ酸を添加して行ってもよい。
【0190】
極めて好ましい合成増粘剤は、式Iで表される、85%〜95質量%のアクリル酸、4%〜14質量%のアクリルアミド、及び0.01〜1質量%の(メタ)アクリルアミド誘導体からなり、分子量Mwが100000〜2000000g/molの範囲にあるコポリマーから選ばれる。
【0191】
【化2】

【0192】
なお、式中、R1基は同一であっても異なっていてもよく、メチル基または水素であってもよい。
【0193】
他の好適な増粘剤は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,12−ドテカンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートと、好ましくは多重にアルコキシ化された脂肪族アルコールまたはオキソ法アルコールの等価物、例えば10〜150重にエトキシ化されたC10−C30脂肪族アルコールまたはC11−C31オキソ法アルコールとの反応生成物から選ばれる。
【0194】
適当な粘度降下剤としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルグリコール、ジブチルグリコール、残留アルコールを含まないアルコキシ化n−C4−C8−アルカノール、好ましくは1重〜10重、より好ましくは3重〜6重にエトキシ化された残留アルコールを含まないn−C4−C8−アルカノールなどの有機溶剤があげられる。残留アルコールは、それぞれ、アルコキシ化されていないn−C4−C8−アルカノールをいう。
【0195】
本発明のある実施様態において、工程(a)で使用される印刷用配合物は、
10%〜90質量%の、好ましくは50%〜85質量%、より好ましくは60%〜80質量%の金属粉(a)と、
1%〜20質量%の、好ましくは2%〜15質量%のバインダーと、
0.1%〜4質量%の、好ましくは最大2質量%の乳化剤と、
0%〜5質量%の、好ましくは0.2%〜1質量%の流動性改善剤を含んでいる。なお、これらの質量%は、それぞれ工程(A)で使用する印刷用配合物全体に対するもので、
バインダーの場合は、各バインダーの固形分含量に関するものである。
【0196】
本発明のある実施様態では、本発明の方法の工程(a)において、金属粉(a)と適当ならバインダーと適当なら乳化剤と適当なら流動性改善剤に加えて、少なくとも一種の助剤を含む印刷用配合物で印刷することが含まれる。好適な助剤の例としては、手触り改善剤や、脱泡剤、湿潤剤、レベリング剤、尿素、殺生剤などの活性成分、難燃剤があげられる。
【0197】
好適な脱泡剤としては、シリコン系脱泡剤、具体的には、次式で表されるもので、HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH3)32、HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33]、最大20当量のアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドでアルコキシ化されている、あるいはアルコキシ化されていないシリコーン系脱泡剤があげられる。シリコーン非含有の脱泡剤もまた好ましくあり、その例としては、多重にアルコキシ化されたアルコール、脂肪族アルコールのアルコキシ化物、好ましくは2〜50重にエトキシ化されたもの、好ましくは非分岐のC10−C20アルカノール、非分岐のC10−C20アルカノール、及び2−エチルヘキサン−1−オールがあげられる。他の好適な脱泡剤は、脂肪酸のC8−C20−アルキルエステル、好ましくはC10−C20−アルキルステアレートであり、そのC8−C20−アルキル及び好ましくはC10−C20−アルキル基は技分かれしていてもよい。
【0198】
好適な湿潤剤としては、例えばノニオン系、アニオン系、またはカチオン系界面活性剤があげられ、具体的には、脂肪族アルコールのエトキシ化物及び/又はプロポキシ化物、またはプロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマー、エトキシ化またはプロポキシ化された脂肪族またはオキソ法アルコール、オレイン酸のエトキシ化物、アルキルフェノール、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコシド、アルキルホスホネート、アルキルフェニルホスホネート、アルキルホスフェートまたはアルキルフェニルホスフェートがあげられる。
【0199】
好適なレベリング剤としては、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーで分子量Mnが500〜5000g/molの範囲のもの、好ましくは800〜2000g/molの範囲にあるものがあげられる。極めて好ましくは、プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーで、例えば式EO8PO7EO8で表されるものである。式中、EOはエチレンオキシドを表し、POはプロピレンオキシドを表す。
【0200】
好適な殺生剤は、例えばプロキセルという商品名で入手可能である。具体的な例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)(アベジア社よりプロキセル(R)の商品名で入手可能)およびそのアルカリ金属塩があげられ、他の好適な殺生剤としては、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(MIT)や5−クロル−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT)があげられる。
【0201】
本発明のある実施様態において、工程(a)で使用される印刷用配合物は、金属粉とバインダーと乳化剤と好適なら流動性改善剤との総量に対して最大30質量%の量の助剤(e)を含むことができる。
【0202】
本発明のある実施様態においては、一回以上の熱処理工程(d)を、工程(a)の後に、工程(b)の後に、または任意の工程(c)の後に実施することができる。本発明において、工程(a)の後に直ちに行われる熱処理工程を熱処理工程(d1)と呼び、工程(c)の後に直ちに行われる熱処理工程を熱処理工程(d2)と呼び、工程(b)の後に直ちに行われる熱処理工程を熱処理工程(d3)と呼ぶ。
【0203】
2回以上の熱処理工程を行う場合、同じ温度でまたは好ましくは異なる温度で、いろいろな熱処理工程が可能である。
【0204】
工程(d)での、あるいはそれぞれ個々の工程(d)での処理温度は、例えば50〜200℃の範囲である。工程(d)の熱処理により、被覆層(D)が出発原料として用いられている材料が、軟化あるいは溶融しないように気をつける必要がある。このため、温度を目的の被覆層(D)の軟化点または融点より低くしたり、熱処理を短時間として、軟化、さらには溶融が起こらないようにする。
【0205】
工程(d)の、あるいはそれぞれ個々の工程(d)の処理時間は、例えば10秒間〜15分間の範囲であり、好ましくは30秒間〜10分間の範囲である。
【0206】
第一の工程(d1)中の処理が、例50〜110℃の温度で30秒間〜3分間、次いで第二の工程(d2)の処理が、130℃〜200℃の範囲の温度で30秒間〜15分間行われることが特に好ましい。
【0207】
工程(d)は、あるいはそれぞれ個々の工程(d)は、公知の設備で、例えば大気下乾燥キャビネット、テンターまたは真空乾燥キャビネットで実施してよい。
【0208】
本発明のある好ましい実施様態において、工程(c)の前に他の工程(e)が実施される。工程(e)は、工程(a)により金属粉(a)が析出した織物表面のいくつかの位置に、同様に金属を好ましくは粉末として含む混合物を析出させて実施される。なお、この金属粉末は、金属粉(a)とは異なっていても同じでもよい。
【0209】
本発明の方法のある実施様態では、工程(e)の析出を、二箇所以上の印刷位置同様に金属粉(a)を含む混合物で行う。この同様に金属粉(a)を含む混合物は、他の印刷用配合物を、また工程(a)で用いられる特に印刷ペーストを、あるいは他の成分を含む混合物を含んでいてもよい。工程(e)の第三の実施様態においては、この同様に金属粉(a)を含む混合物が、はんだ用スズを含む製剤である。
【0210】
本発明のある実施様態においては、工程(e)において、金属の層厚が、金属粉(a)の層厚の2〜200倍の範囲となるように、十分な量の金属を含む混合物が析出される。
【0211】
本発明のある実施様態においては、工程(e)において、十分な量の金属粉(a)を含む混合物が、装飾層(A)または装飾層(A)の一部の上に、金属粉(a)の層厚が0.1〜5mmの範囲となるように析出される。
【0212】
本発明のある実施様態においては、工程(a)からの金属粉(a)が、好ましくは平均粒子径において、工程(e)の金属粉(a)と異なっている。
【0213】
本発明のある好ましい実施様態において、工程(a)と工程(e)の金属粉(a)がそれぞれ同じである。
【0214】
本発明のある実施様態では、いわゆる「ドット印刷」が実施される。
【0215】
工程(e)を実施後に、工程(d)を繰り返してもよい。
【0216】
しかしながら、工程(e)の処理の直後の熱処理(d)を省き、直ちに工程(c)を行うことが好ましい。
【0217】
本発明は、また本発明の多層製品の建物あるいは車両の内装の装飾への利用を提供する。車両には、飛行機や、船舶などの船艇、特に、トラック車両、特に自動車が含まれる。建物インテリアの装飾には、特に建物の床や壁面、天井が含まれる。
【0218】
本発明はまた、少なくとも一個の本発明の多層製品を含む建物や車両を提供する。
【0219】
以下、本発明を実施例により説明する。
【実施例】
【0220】
実施例:
特記しない場合は、%は常に質量%である。
【0221】
I.セルロース繊維基板の製造(B.1)
I.1液体着色剤製剤の製造
I.1.1赤色の液体着色剤製剤の製造
攪拌ボールミルを用いて、
26質量%のC.I.ピグメントレッド48:2と、
5質量%のC.I.ダイレクトレッド80と、
24質量%のアンモニアで完全中和されたアクリル酸−スチレンコポリマーの26%水溶液(酸価:216mgKOH/g、平均分子量Mn:9200g/mol)と、
5重量のジプロピレングリコールと
40重量の水とを
研磨し、赤の液体着色剤製剤を得た。
【0222】
I.1.2緑色の液体着色剤製剤の製造
混合物を、
40質量%のC.I.ピグメントグリーン7と
8質量%のエチレンジアミン/プロピレンオキシド/エチレンオキシドのブロックコポリマー(エチレンオキシド含量:40%、平均分子量Mn:6500g/mol)と、
15重量のジプロピレングリコールと
37重量の水とを攪拌ボールミル中で湿式研磨して得られた25質量%の緑色顔料製剤と、
48質量%の酢酸と68質量%の水中に溶解した7質量%のC.I.ベーシックグリーン7の47質量%溶液とから得た。
【0223】
I.1.3 黒色の伝導性液体着色剤製剤
混合物を、
20重量の伝導性カーボンブラックと、
10質量%のエチレンジアミン/プロピレンオキシド/エチレンオキシド系のブロックコポリマー(エチレンオキシド含量:40質量%、平均分子量Mn:12000g/mol)と
70重量の水とを攪拌ボールミル中での湿式研磨して得られた98質量%の黒色の顔料製剤と、
2質量%の、30%酢酸中に溶解したC.I.ベーシックバイオレット3の10%溶液とから得た。
【0224】
I.2 樹脂バッチの製造
特記しない限り、MDFボードは表1に記載の樹脂バッチを用いて製造した。
【0225】
【表1】

【0226】
I.3 基板(B.1)〜(B.2)の製造
I.3.1 赤色の基板(B.1)の製造
33.3kgの樹脂バッチ1を、100kg(絶乾)の漂白・粉砕・乾燥したツガ木材系の木材繊維に添加し、ドラムミキサー中で混合して、樹脂処理された赤い木材繊維を得た。この樹脂処理された赤い木材繊維を、次いで乾燥機中で水分が約8質量%となるまで乾燥し、マット状に広げ、圧密化させ、220℃でプレスして、MDFボードを得た。このようにして得られたMDFボードの水分率は2質量%であった。
得られたMDFボード(B.1)は、均一で鮮やかな耐光性の赤色を示す。
【0227】
I.3.2 緑色のMDFボードの製造
33.3kgの樹脂バッチ2を、100kg(絶乾)の漂白・破砕・乾燥したツガ系の木材繊維に添加し、ドラムミキサー中で混合して、樹脂処理された緑色の木材繊維を得た。これらの樹脂処理された緑色の木材繊維を、乾燥機中で水分率が約8質量%となるまで乾燥し、マット状に広げて、圧密化し、220℃でプレスして、MDFボードを得た。このようにして得られたMDFボードの水分率は2質量%であった。
【0228】
得られたMDFボード(B.2)は、均一で鮮やかな耐光性の緑色を示す。
【0229】
II.金属層(C.1)で印刷された装飾層(A.1)の一部の製造
II.1 印刷ペーストの製造
以下のものを混合した。
54gの水、
750gのカルボニル鉄粉(d10:3μm、d50:4.5μm、d90:9μm、極薄の鉄酸化物層で不動態化したもの)
125gの全固形分に対して1重量部のN−メチロールアクリルアミドと1重量部のアクリル酸、28.3重量部のスチレン、69.7重量部のn−ブチルアクリレートのランダムなエマルジョンコポリマー[コールターカウンターで求めた重量平均粒子径:172nm、Tg:−19℃(バインダー1)、動的粘度(23℃):70mPa・s]の水分散液(pH6.6、固体含量:39.3質量%)
20gの次式の化合物
【0230】
【化3】

【0231】
20gのヘキサメチレンジイソシアネートとn−C1837(OCH2CH215OHの反応生成物のイソプロパノール/水(2:3、体積比)の51質量%溶液。
【0232】
この後、5000rpmで20分間攪拌(Ultra−Thurrax)して、ハーケ回転粘度計で求めた23℃の動的粘度が30dPa・sである印刷ペーストを得た。
【0233】
II.2 金属粉(a1)を含む混合物を有する装飾層(A.1)の一部の印刷
I.4からの印刷ペーストを、目付が90g/m2の繊維状の不織布ポリエステルウェブに、80メッシュのふるいを用いて帯状に印刷した。
【0234】
次いで、乾燥キャビネット中で100℃で10分間乾燥して、印刷熱処理後の繊維状の不織布ポリエステルウェブを得た。
【0235】
II.3 金属粉(a1)を含む混合物の提供[工程(c.1)]と電流を必要とする部品の取り付け[工程(c)]
上記の模様の上に、Iからの印刷ペーストを直径が2mmの円状に印刷により塗布した。
【0236】
次いで、「エバライトSURSYGC S530−A2/TR867−22型、装置番号:DSE−672−025、エバライトエレクトロニクス株式会社、赤と緑色(赤の発光ダイオードにはSUR型AIGalnP、黄色の発光ダイオードにはSYR型AIGalnP)、フォーマット:3.2mm・2.7mm」型の発光ダイオードを、手で取り付けた。
【0237】
印刷熱処理後の繊維状の不織布ポリエステルウェブが得られた。
【0238】
III.外部電源なしでの銅の析出
IIからの印刷熱処理後の繊維状の不織布ポリエステルウェブを、以下の組成の浴(室温)中で10分間処理した。
1.47kgのCuSO4−5H2
382gのH2SO4
5.1Lの蒸留水
1.1gのNaCl
5gのC13/C15−aIkyl−O−(EO)10(PO)5−CH3
(EO:CH2−CH2−O、PO:CH2−CH(CH3)−O)
この繊維状の不織布ポリエステルウェブを取り除き、流水で二回洗浄し、90℃で1時間乾燥した。
【0239】
このようにして、金属の層(C.1)で印刷された装飾層(A.1)の一部を得た。
【0240】
IV.本発明の多層製品の製造
IV.1 MSK.1の製造
IIIからの金属の層(C.1)が印刷された装飾層(A.1)の一部を、ワイヤの羽根を用いて、1000gの60質量%尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂溶液と3.5gのモルホリニウム−パラ−トルエンスルホン酸の60質量%水溶液と71gの水とからなる水性含浸液に浸した。このあと、120℃で3分間乾燥して残留水分を3%とした。目付は170g/cm2であった。
【0241】
その後、金属の層(C.1)を印刷した装飾層(A.1)を持ち、尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含浸させた部品を印刷側を下にして基板(B.1)上にのせ、次いで180℃の温度と25barの圧力で40秒間プレスした。
【0242】
この結果、本発明の多層製品MSK.1が得られ、これに研磨により溝を形成した。
【0243】
IV.1 MSK.2の製造
IIIからの金属の層(C.1)が印刷された装飾層(A.1)の一部を、ワイヤの羽根を用いて、1000gの60質量%尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂溶液と3.5gのモルホリニウム−para−トルエンスルホン酸の60質量%水溶液と71gの水からなる水性含浸液に浸した。このあと、120℃で3分間乾燥して残留水分を3%とした。目付は170g/cm2であった。
【0244】
その後、金属の層(C.1)印刷装飾層(A.1)を持ち、尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含浸させた部品を印刷側を下にして基板(B.1)上にのせ、次いで、180℃の温度と25barの圧力で10秒間プレスした。
【0245】
この結果、本発明の多層製品MSK.2が得られ、これに研磨により溝を形成した。
【0246】
MSK.1とMSK.2は、それぞれ裏打ち材を持たない。
【0247】
IV.3 MSK.1とNSK.2の性能試験
MSK.1とMSK.2の製造を複数回繰り返した。
20個のMSK.1から床を製造した。
20個のMSK.2から床を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも一層の装飾層と、
(B)少なくとも一層のセルロース繊維を含む基板と、
(C)(a)少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物で、装飾層(A)または装飾層(A)の一部を印刷する工程と、(b)少なくとも一種の他の金属を析出させる工程と、を含む方法で製造した少なくとも一層の金属含有層と、
(D)任意に少なくとも一層の被覆層と、を含む多層製品。
【請求項2】
層(C)が、(c)少なくとも一個の電流を発生または消費する部品を提供する工程をさらに含む方法で製造された請求項1に記載の多層製品。
【請求項3】
層(C)が、(d)少なくとも一回の熱処理工程をさらに含む方法で製造された請求項1または2に記載の多層製品。
【請求項4】
基板(B)がMDFとHDFから選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層製品。
【請求項5】
基板(B)が表裏を通じて着色されたMDFまたはHDFから選ばれる請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層製品。
【請求項6】
被覆層(D)が、織物、プラスチックフィルム/シートまたは紙を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層製品。
【請求項7】
装飾層(A)が、装飾紙または積層製品を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層製品。
【請求項8】
電流を必要とするまたは発生させる部品が、発光ダイオード、液晶表示素子、ペルチェ素子、トランジスタ、エレクトロクロミック染料、電気機械素子、および太陽電池セルから選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層製品。
【請求項9】
(a)少なくとも一種の金属粉を含む印刷用配合物を印刷し、(c)任意に少なくとも一個の電流を発生または消費する部品を設け、(b)他の金属を析出させ、(d)任意に熱処理して装飾層(A)または装飾層(A)の一部を形成し、さらに
このようにして得られる金属含有層(C)が設けられた装飾層(A)に少なくとも一層のセルロース繊維を含む基板(B)で、被覆層(D)を持つ、あるいは被覆層(D)を形成可能なものを施すことを特徴とする多層製品の製造方法。
【請求項10】
工程(b)において外部電源が使用されず、工程(b)の他の金属が、工程(a)で印刷された金属粉より、元素の電気化学列においてより強い正の標準電位を有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において外部電源が使用され、工程(b)の他の金属が、工程(a)で印刷された金属粉より、元素の電気化学列においてより強い正の標準電位を有する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の金属粉が、鉄ペンタカルボニルの熱分解により得られる金属粉を含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製品の製造のための請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製品の建物または車両のインテリア装飾のための使用。

【公表番号】特表2011−530430(P2011−530430A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522472(P2011−522472)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059897
【国際公開番号】WO2010/018076
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】