説明

多層プラスチック容器

【課題】 水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備えた多層プラスチック容器を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂層11A、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15、及びポリオレフィン系樹脂層11Bの順になり、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むポリアミド樹脂層であることを特徴ととし、上記ポリオレフィン系樹脂層がポリプロピレン系樹脂層であり、上記金属原子がコバルトであり、上記ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミドであることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プラスチック容器に関し、さらに詳しくは、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備えた多層プラスチック容器に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
また、「EVOH」は「エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物」、「PP」は「ポリプロピレン」、「Ny」は「ポリアミド」、及び「水分バリア性」は「水蒸気(湿度)のバリア性も含む」、の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、包装容器としては、金属缶、ガラス瓶、各種のプラスチック製の容器が多く使用されている。しかしながら、包装容器で保存している食品、飲料、医薬品などの品質は、主に酸素により酸化したりして、変質したり、劣化したりして、味が落ちたり、さらには消費に値しなく廃棄に至ることもある。そこで、酸素がないか、酸素が極めて少ない系で保存し貯蔵することがベターである。
金属缶やガラス瓶の容器では容器壁を通しての酸素透過がゼロであるので、容器として使用されてきた。しかし酸素を透過しないものの容易に割れたり、変形したり、さらに、重くて、荷扱いや流通での問題がある。
そこで、軽量で、耐衝撃性にも優れ、意匠性もよいプラスチック容器が各種の用途に使用されている。ところが、プラスチック容器では、容器壁を通して酸素が透過しやすく、透過した酸素によって、内容物の変質や劣化が起きるので、酸素バリア性のよいエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物の層を含む多層プラスチック容器としても、酸素透過率の湿度依存性が大で、高湿度環境下では酸素バリア性が劣ってしまう。
また、酸素バリア性に優れる容器を用いても、容器内へ残存した酸素によっても、内容物の変質や劣化が起きる場合もある。即ち、包装容器内の酸素は、包装容器内のヘッドスペースのように包装時から存在する酸素と、包装後に容器壁を透過して内部に侵入する酸素との2種類があるが、いずれの酸素も内容物の保存性に重要である。
容器内の酸素を除去するために、酸素吸収剤の使用も行われているが、内容物と同封するために違和感がある。また、酸素吸収剤を含む層多層プラスチック容器も種々提案されている。さらに、例えば、コーヒー粉末や海苔などのような乾燥食品は湿気(水分)を極度に嫌う内容物も多くある。
従って、湿気(水分)を極度に嫌い、僅かな酸素による酸化によっても風味を失い易い飲食品を内容物とする多層プラスチック容器は、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備えたものが求められている。
なお、本明細書では、水分バリア性とは水蒸気(湿度)のバリア性も含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−137347号公報
【特許文献2】特開平04−211444号公報
【特許文献3】特開2008−189693号公報
【特許文献4】特開2003−335378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、酸素の吸収及び透過を防止する能力の優れる酸素吸収性包装体としては、包装内部から包装外部に向けて、オレフィン系樹脂内面層/酸素バリアー性樹脂の第一の層/酸素吸収性樹脂層/環状オレフィン系共重合体層/酸素バリアー性樹脂の第二の層/オレフィン系樹脂外面層の積層構成を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、酸素吸収層と酸素透過防止層とが別々の層で、組成物の準備が煩雑で、かつ少なくとも6層からなり、製造に成膜や成形に特殊で高価な装置が必要であり、煩雑で高コストであるという欠点がある。
また、酸素バリア性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)を使用して、しかもより一層酸素バリヤー性に優れた組成物としては、EVOHと酸化触媒から成る酸素バリヤー性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、EVOHは湿度依存性が高く、高湿度下では酸素バリア性が低下し、これを防止するために両側に防水性樹脂を構成すると、層間の接着性が悪いので、接着性樹脂層を設けねばならないという問題点がある。
さらに、高湿度下においても酸素ガスバリアー性に優れ、しかも剥離強度に優れた多層構造体及びこの多層構造体からなる包装容器としては、酸素透過度が100cc/m2・day・atm(20μm)以下の樹脂(A)からなるマトリックス中に、酸素吸収速度が0.001cc/cm2・day(20μm)以上の樹脂(B)が分散されてなり、樹脂(B)が長手方向に垂直な断面の最大径の平均が1.0μm以下である棒状構造を形成しているものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、酸素吸収速度が遅いという問題点がある。
さらにまた、酸素吸収性ポリアミド樹脂組成物の酸素吸収能力を低下させることなく、長期間にわたり該樹脂組成物を保存する方法としては、酸素吸収速度が該樹脂組成物の2倍以上である酸素吸収性組成物と、酸素バリア性材料を組み合わせてなる保管容器内に該樹脂組成物を充填、保存する方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、酸素吸収性ポリアミド樹脂組成物を使用した包装材料及び包装容器については公知の方法を利用することができると記載され、また包装容器には様々な物品を収納、保存することができると、一般論のみで、具体的な層構成などは一切記載されていない。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備えた多層プラスチック容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる多層プラスチック容器は、層構成が順に、ポリオレフィン系樹脂層、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層、及びポリオレフィン系樹脂層からなり、前記酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むポリアミド樹脂層であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる多層プラスチック容器は、上記ポリオレフィン系樹脂層がポリプロピレン系樹脂層であり、上記金属原子がコバルトであり、上記ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミドであるように、したものである。
請求項3の発明に係わる多層プラスチック容器は、上記多層プラスチック容器の形態がチューブ容器、ブロー成形容器、又は二軸延伸ブロー成形容器であるように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜3の本発明によれば、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備える効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の多層プラスチック容器の容器壁の1実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、ナイロン(登録商標)はポリアミドの登録商標であるが、多数回でてくるので、以降、省略します。
【0011】
(多層プラスチック容器)本発明の多層プラスチック容器1の容器壁は、図1に示すように、の層構成をポリオレフィン系樹脂層11A、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15、及びポリオレフィン系樹脂層11Bの順に構成してなり、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛
から選択された一種以上の金属原子を含むポリアミド樹脂層であるようにする。また、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂層11A及び11Bをポリプロピレン系樹脂層とし、上記金属原子をコバルト原子とし、上記ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミド(ナイロンMXD6と略す)とする。また、多層プラスチック容器1の形態をチューブ容器、ブロー成形容器、又は二軸延伸ブロー成形容器とする。
【0012】
(効果)本発明によれば、酸素バリア性及び酸素吸収性をに優れる酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15を、水分バリア性に優れるポリオレフィン系樹脂で内層及び外層として、挟み込むようにすることで、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備える効果を奏する。
【0013】
(ポリオレフィン系樹脂)ポリオレフィン系樹脂11Aとポリオレフィン系樹脂11Bの材料及び厚さは、同じでも、異なっていてもよい。なお、ポリオレフィン系樹脂11Aとポリオレフィン系樹脂11Bとを合わせてポリオレフィン系樹脂11と呼称する。ポリオレフィン系樹脂11とは、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、又は環状ポリオレフィン系の樹脂や、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂又は、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であってもよい。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−プロピレン共重合体(E−P)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィン、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、などが適用できる。これらの樹脂を単独又は複数を組み合せて使用できる。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂11には、必要に応じて、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することがてきる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂11の厚さとしては、通常、5〜800μm程度、好ましくは10〜500μmの範囲内で適宜設定することができ、厚い場合には多層構成としてよい。この範囲未満では水分バリア性が不足し、この範囲以上の厚さでは、過剰品質となり、また成形性も低下する。
【0016】
(ポリプロピレン系樹脂)ポリオレフィン系樹脂11としては、水分バリア性、成形性、及びコストの点で、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0017】
(酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層)酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15としては、酸素吸収性の能力を有する元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含み、酸素バリア性の能力を有するポリアミド樹脂層を用いる。
【0018】
(ポリアミド樹脂層)酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15を構成するポリアミドとしては、ナイロン(登録商標)6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロンMXD6等がある。好ましくは、酸素吸収能力に優れるナイロンMXD6を主成分とするポリアミドである。ナイロンMXD6はメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、アジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分を重縮合させて得られたものであるが、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が共重合されていてもよい。また、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸を50モル%以上含むものが好ましい。
【0019】
また、ポリアミドは、ナイロンMXD6を含むものであればよく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン6T等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等の樹脂が性能に影響のない範囲内で添加してもよい。さらに、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15には、性能に影響のない範囲内で、顔料、染料、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤、クレイ、マイカ、ガラス繊維、ゼオライト等の添加剤や充填剤を加えてもよい。
【0020】
(金属原子)酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15を構成する、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛から選択された一種以上の金属原子は、ポリアミドの酸化反応を促進することで、ポリアミドの酸素吸収機能を高める。金属原子によるポリアミドの酸化反応は、金属原子がポリアミドのアリレン基に隣接するメチレン鎖から水素原子を引き抜いてラジカルを発生させ、このラジカルに酸素分子が付加してパーオキシラジカルが発生し、該パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜く反応と推測されている。
【0021】
上記の金属原子を含有する化合物としては、前記金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩などがある。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が例示できる。また、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。酸素吸収機能の点から、上記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体が好ましく、ステアリン酸塩、酢酸塩又はアセチルアセトネート錯体がさらに好ましい。金属原子としてはコバルト金属原子を含むものが、酸素吸収機能に優れる点から好ましい。
【0022】
酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15に含まれる金属原子の濃度は特に限定されるものではないが、1〜10000ppmの範囲が好ましい。この範囲未満では酸素吸収機能が不足し、この範囲を超えると酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15組成物の製造中に酸素の吸収が起こってポリアミドが酸化し劣化してしまう。
【0023】
酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15の製造方法としては、特に限定されるものではないが、上記ポリアミドと、上記金属原子を含む化合物とを溶融混合する方法、金属触媒化合物を溶媒に溶解又はスラリー状にしてからポリアミドと混合し溶媒を除去する方法、などが例示できる。
【0024】
(容器)本発明の多層プラスチック容器1の形態は、チューブ容器、ブロー成形容器、又は二軸延伸ブロー成形容器とする。好ましくは、多層プリフォームとし、ブロー又は2軸延伸して、ボトル状の容器とする。
【0025】
まず、ポリオレフィン系樹脂層11A、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15、及びポリオレフィン系樹脂層11Bを所望の組成で調整して組成物とする。ポリオレフィン系樹脂層11Aとポリオレフィン系樹脂層11Bを同じ組成物とすれば、2種の材料を調整すればよいので、好ましい。このように調整した2種又は3種の組成物を溶融し、公知の射出成形法で、2種3層又は3種3層として、プリフォーム射出成形金型に注入して、試験管形状のプリフォームを作成する。該プリフォームを、二軸延伸ブローして、有底筒状の二軸延伸ブロー成形容器(多層プラスチック容器1)とすることができる。この二軸延伸ブロー成形容器の断面は、プリフォームの断面性状と同様に3層構造であった。なお、プリフォーム射出成形金型、及び二軸延伸ブロー成形金型は、一般的なPETボトル用の金型を使用できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0027】
(実施例1)ポリオレフィン系樹脂層11Aとポリオレフィン系樹脂層11Bとして、同じ組成物とし、PPを用いた。酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15としては、アジピン酸とメタキシリレンジアミンを溶融重縮合して得たポリアミド(ナイロンMXD)と、コバルト金属濃度が4000ppmとなるように秤量したステアリン酸コバルトをタンブラーで混合し、30mmφの単軸押出機で溶融混練し、ストランドとして押し出し、冷却後、ペレット化して、組成物とした。
ポリオレフィン系樹脂層11A/酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層15/ポリオレフィン系樹脂層11Bの順に、その重量比の平均が11A:15:11B=1:2:1になるように、重量(目付け量ともいう)約17gの多層プリフォームを一体的に射出成形した後に、公知の2軸延伸によるブロー成形で内容量が500mlのボトルとし、実施例1の(多層プラスチック容器1)を得た。
【0028】
(比較例1)射出成形用の樹脂としてPET樹脂を単層で用い、重量(目付け量ともいう)約26gとする以外は、実施例1と同様にして、比較例1のプラスチック容器を得た。
【0029】
(比較例2)射出成形用の樹脂として、PET、Ny(酸素吸収剤を含まない)、PET樹脂をこの順に3層で用い、重量(目付け量ともいう)約26gとする以外は、実施例1と同様にして、比較例2のプラスチック容器を得た。
【0030】
(比較例3)射出成形用の樹脂としてPPT樹脂を単層で用い、重量(目付け量ともいう)約17gとする以外は、実施例1と同様にして、比較例3のプラスチック容器を得た。
【0031】
(比較例4)射出成形用の樹脂として、PP、Ny(酸素吸収剤を含まない)、PP樹脂をこの順に3層で用い、重量(目付け量ともいう)約17gとする以外は、実施例1と同様にして、比較例4のプラスチック容器を得た。
【0032】
(評価)酸素透過量、溶存酸素濃度、及び水分透過率で評価した。
【0033】
(測定方法)酸素透過量は、MOCON社製ガスバリア試験装置を用いて、容器内部を窒素置換し外部(大気圧)からの酸素透過量を測定し、単位はcc/m2・day・atmである。溶存酸素濃度は、PreSens社製溶存酸素濃度測定装置を用いて、容器内面に蛍光体を塗布したパッチを貼付しその減衰位相差を濃度に換算し、単位はmg/Lである。水分透過率は、天秤を用いて、水充填した容器を22℃恒温槽に保管し、60日後の質量変化を測定し、単位は%である。なお、いずれの測定もn=20の試料の平均値であり、結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
(評価結果)実施例1は、酸素透過率は酸素バリア性の指標で0.008、溶存酸素濃度は酸素吸収性の指標で3.2、水分透過量は水分バリア性の指標では0.11と、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性を兼ね備えていた。比較例1〜2、4は、水分バリア性、酸素バリア性は比較的よかったが、酸素吸収性がなかった。比較例3は、水分バリア性はよいが、酸素バリア性が低く、酸素吸収性がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
(産業上の利用可能性)
本発明の多層プラスチック容器の主なる用途としては、湿気(水分)を極度に嫌い、僅かな酸素による酸化によっても風味を失い易い飲食品を内容物で、例えば、コーヒー粉末や海苔などの包装用に使用できる。しかしながら、水分バリア性、酸素バリア性及び酸素吸収性の兼ね備えを必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
11、11A、11B:ポリオレフィン系樹脂
15:酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構成が順に、ポリオレフィン系樹脂層、酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層、及びポリオレフィン系樹脂層からなり、前記酸素バリア性かつ酸素吸収性樹脂層が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び/又は亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むポリアミド樹脂層であることを特徴とする多層プラスチック容器。
【請求項2】
上記ポリオレフィン系樹脂層がポリプロピレン系樹脂層であり、上記金属原子がコバルトであり、上記ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミドであることを特徴とする請求項1記載の多層プラスチック容器。
【請求項3】
上記多層プラスチック容器の形態がチューブ容器、ブロー成形容器、又は二軸延伸ブロー成形容器であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか記載の多層プラスチック容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−126552(P2011−126552A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284791(P2009−284791)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】