説明

多層光記録媒体およびその製造方法

【課題】良好な記録特性を有する多層光記録媒体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光線によりデータの記録が可能な光記録層1と、中間層2とを交互に積層してなる多層構造を有し、一方の面側から光線が入射される多層光記録媒体10において、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差を、当該多層光記録媒体10の光線入射面に向かって小さくする。好ましくは、複数の光記録層1の屈折率を一定とし、複数の中間層2の屈折率を変化させて、上記屈折率差を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録層および中間層を交互に積層してなる多層構造を有する多層光記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体は、大量の記録データを記録可能な点が注目され、様々な用途で使用されている。最近では、さらなる記録密度の向上を目指して、三次元的にデータを記録する方法(以下「多層光記録法」ともいう。)が提案されている。例えば、Y.Kawataらは、光重合反応性の光反応性成分を有するフォトポリマー材料を使用して多層光記録を行う技術を報告している(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような多層光記録法を行うための多層光記録媒体においては、以前より、多層記録・再生時にデータのクロストークが発生するという問題があった。このようなクロストーク対策としては、各光記録層の層間距離を大きくすることが考えられるが、この場合、記録密度の低下が避けられない上、記録の読み書きに用いる光が途中で吸収されるために、光記録層の数が制限されるという問題が生じる。
【0004】
そこで、上記クロストークを低減させるために、例えば、2層以上の記録層を備えた光記録媒体であって、上記2層以上の記録層の層間の一部または全てに、記録光によって光情報が記録されない材料からなる非記録層が介在してなる光記録媒体が提案されている(特許文献1)。
【0005】
この光記録媒体を構成する記録層や非記録層は、通常スピンコート法によって形成し、積層する。しかしながら、スピンコート法による積層方法では、大面積化が困難であり、生産性も低い上、各層及び層全体の厚み精度が低いなどの問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決する手段として、感光材料を含有する光記録層と、感圧接着剤層とが積層されたシート材料を順次積層して、多層構造体を得る方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Applied Optics, 35(1996)2466
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−250496号公報
【特許文献2】特開2005-209328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の多層構造体を有する多層光記録媒体は、各層および全体の厚み精度が高く、かつ大面積化が可能である。しかしながら、光記録層30層および感圧接着剤層30層を積層して作製された多層光記録媒体における光記録層と感圧接着剤層との界面からの反射光(界面反射光)を測定すると、光線入射面から離れる(深部になる)に従って界面反射光が極端に減少することが確認された。界面反射光は各光記録層にフォーカスする際に必要なものであり、この界面反射光がなければ所望の光記録層にレーザ光焦点をフォーカスすることが困難となり、良好に記録することができなくなる。
【0010】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、良好な記録特性を有する多層光記録媒体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、光線によりデータの記録が可能な光記録層と、中間層とを交互に積層してなる多層構造を有し、一方の面側から前記光線が入射される多層光記録媒体であって、隣接する光記録層と中間層との屈折率差が、前記多層光記録媒体の光線入射面に向かって小さくなっていることを特徴とする多層光記録媒体を提供する(発明1)。
【0012】
上記発明(発明1)によれば、隣接する光記録層と中間層との屈折率差を光線入射面に向かって小さくすることにより、光線入射面から離れた位置(深部)からの界面反射光の減衰が抑制されて、所望の大きさの反射光が得られ、フォーカスサーボがかけやすくなる。これによって、上記発明(発明1)に係る多層光記録媒体は、良好な記録特性を有するものとなる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、複数の前記光記録層の屈折率を一定とし、複数の前記中間層の屈折率を変化させることで、前記屈折率差を変化させることが好ましい(発明2)。
【0014】
上記発明(発明1,2)において、前記光記録層は、多光子吸収性材料を含有し、前記中間層は、感圧接着剤を含有し、さらに、前記光線入射面側の最外層として、保護層を有することが好ましい(発明3)。
【0015】
第2に本発明は、光線によりデータの記録が可能な光記録層と、中間層とを交互に積層してなる多層構造を有し、一方の面側から前記光線が入射される多層光記録媒体の製造方法であって、隣接する光記録層と中間層との屈折率差が、前記多層光記録媒体の光線入射面に向かって小さくなるように、前記光記録層および前記中間層を積層することを特徴とする多層光記録媒体の製造方法を提供する(発明4)。
【0016】
上記発明(発明4)においては、光記録層と中間層との積層体であって、前記光記録層と前記中間層との屈折率差が異なる複数種の前記積層体を製造し、前記積層体を積層して多層構造とすることが好ましい(発明5)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る多層光記録媒体は、光線入射面から離れた位置(深部)からの界面反射光の減衰が抑制されて、所望の大きさの反射光が得られ、これにより良好な記録特性を有するものとなっている。また、本発明に係る多層光記録媒体の製造方法によれば、上記のような多層光記録媒体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層光記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多層光記録媒体を製造するための多層光記録媒体製造用シートの断面図である。
【図3】実施例2で得られた多層光記録媒体における反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例4で得られた多層光記録媒体における反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例5で得られた多層光記録媒体における反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【図6】比較例1で得られた多層光記録媒体における反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔多層光記録媒体〕
本実施形態に係る多層光記録媒体10は、基板4と、基板4上に形成された多層構造体3と、多層構造体3上に積層された保護層5とから構成される。多層構造体3は、光線(主としてレーザ光)によりデータの記録が可能な光記録層1と、中間層2とを交互に積層してなり、n(nは2以上の整数)層の光記録層1と、(n+1)層の中間層2とを備えている。
【0020】
上記多層光記録媒体10では、その上面側(保護層5側)から光線が入射される。すなわち、保護層5の表面(図1中では上面)が光線入射面Bとなっている。
【0021】
本実施形態に係る多層光記録媒体10の多層構造体3では、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差が、光線入射面Bに向かって小さくなっている。あるいは、光線入射面Bの近傍における、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差が、光線入射面Bとは反対側の面(基板接触面C)の近傍における、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差よりも小さくなっている。なお、屈折率は、記録に使用する光線の波長を基準としたものである。
【0022】
上記のように構成することで、光線入射面Bから離れた位置(深部)からの界面反射光の減衰が抑制されて、所望の大きさの反射光が得られ、これにより、多層光記録媒体10は良好な記録特性を有するものとなる。以下に具体的な理由を述べる。
【0023】
光記録層1と中間層2とを交互に積層した多層光記録媒体10では、記録時のフォーカスサーボは、光記録層1と中間層2との積層界面からの反射光を利用する。光記録層1と中間層2との屈折率差が大きければ、反射光も大きく、屈折率差が小さければ、反射光も小さい。反射光が大きいほうが界面に対してフォーカスをかけやすいが、多層構造体3の深部での反射光を利用すべく、各界面での屈折率差を均等に大きくしようとすると、表層部でほとんどの光が反射されてしまい、最深部での界面からの反射光が極端に小さくなってしまう。また、界面数が多いほど反射光の減衰率は大きくなり、最深部へのフォーカスは困難となる。そこで、上記のように、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差が、深部よりも表層部の方が小さい構成にすることにより、界面反射光の損失をコントロールし、フォーカスサーボをかけやすくすることが可能となる。これにより、当該多層光記録媒体10は、良好な記録特性を有するものとなる。
【0024】
光線入射面Bの近傍における、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差と、基板接触面Cの近傍における、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差との差は、0.01〜1.0であることが好ましく、0.02〜0.5であることがより好ましく、0.03〜0.3であることが特に好ましい。上記屈折率差の差が0.01以上であることで、界面反射光の損失をコントロールし、フォーカスサーボをかけやすくする効果が顕著なものとなる。一方、上記屈折率差の差が1.0を超えると、逆に表層部よりも深部の反射光の方が著しく大きくなるおそれがある。
【0025】
ここで、上記のように多層構造体3の深度に応じて光記録層1と中間層2との屈折率差を変化させる場合、多層構造体3の層数にもよるが、少なくとも2段階の屈折率差があればよく、3段階以上の屈折率差があってもよい。2段階の屈折率差を設ける場合、その境界部は、光線入射面Bから、多層構造体3の厚さの1/30〜25/30の位置であることが好ましく、5/30〜20/30の位置であることが特に好ましい。例えば、多層構造体3が30層の光記録層1および31層の中間層2からなる場合、光線入射面Bから1〜25層目、特に5〜20層目の中間層2(または光記録層1)までが屈折率差が小さいことが好ましい。屈折率差の境界部が多層構造体3の厚さの1/30未満の位置にあると、それより深部側における屈折率差の大きい界面での反射が多くなり、最下層まで認識できなくなる可能性がある。一方、屈折率差の境界部が多層構造体3の厚さの25/30を超える位置にあると、屈折率差の小さい界面の境界部近傍での反射光が小さく、当該部分での反射光が認識できなくなる場合がある。
【0026】
また、上記のように多層構造体3の深度に応じて屈折率差を変化させる場合、複数の光記録層1の屈折率を一定とし、複数の中間層2の屈折率を変化させてもよいし、複数の中間層2の屈折率を一定とし、複数の光記録層1の屈折率を変化させてもよいし、光記録層1および中間層2の双方を変化させてもよいが、光記録層1の屈折率と比較して中間層2の屈折率の方が制御しやすいため、複数の光記録層1の屈折率を一定とし、複数の中間層2の屈折率を変化させることが好ましい。
【0027】
光記録層1の材料としては、光記録層の構成材料として知られている材料(光記録材料)の中から任意のものを適宜選択して用いることができるが、記録密度の向上の点から多光子吸収性材料が好ましく用いられる。多光子吸収性材料とは、2つ以上の光子を同時に吸収し、励起状態へと遷移する性質を有する化合物を意味する。その中でも実用に十分な記録感度を得るという観点から、二光子吸収性材料を含むものが好ましく、二光子吸収断面積が0.1GM以上の二光子吸収性材料を含むものがさらに好ましく、100GM以上の二光子吸収性材料を含むものが特に好ましい。なお、「GM」は、10−50cm・s・molecule−1・photon−1を意味する。
【0028】
このような材料としては、例えば多光子吸収性材料を単独で構成したものや、例えば多光子吸収性材料と、励起された多光子吸収性材料からのエネルギー移動によって変化を起こす他の反応性化合物とで構成したもの、あるいは、これらを必要に応じてマトリクスに配合した材料等が挙げられる。
【0029】
上記マトリクスを構成する材料は、無機材料であっても有機材料であってもよいが、シート状に成形するときの簡便さや、材料の選択肢の多さなどの点から、有機系の高分子材料が好ましい。この高分子材料はホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、そのモノマーの種類、分子量、重合形態などについては特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0030】
上記多光子吸収性材料は、上記のマトリクスに対して、主鎖または側鎖成分として化学結合したものであってもよいし、単にマトリクス中に分散または溶解していてもよい。この多光子吸収性材料としては特に制限はなく、様々な化合物を用いることができる。例えば、シアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ピラン色素、キノン色素、アントラキノン色素、チリフェニルメタン色素、ジフェニルメタン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、フルオレノン色素、ジアリールエテン色素、スピロピラン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ポリエン色素、ジフェニルアミン色素、キナクドリン色素、アズレニウム色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、スチレン系色素、フェニレンビニレン色素、トリフェニルアミン系色素、カルバゾール系色素などが挙げられる。
【0031】
このような多光子吸収性化合物を用いて記録する方式としては、例えば、アゾ基やC=C基、C=N基含有化合物のように光によって異性化する材料や、(メタ)アクリレート化合物のように光によって重合反応を起こす材料、有機フォトクロミック材料のように光によって可逆的な構造変化を起こす材料、光によって電荷分布が起こる有機リフラクティブ材料などを用いて屈折率変調を読み取る方式や、光によって蛍光特性が変化する材料を用いて蛍光を読み取る方式、光によって酸を発生する材料と酸発色性色素との組み合わせや、消色剤と消色性色素とを組み合わせて、吸収率変調や屈折率変調を読み取る方式などが挙げられる。これらの記録方式において、多光子吸収性化合物自身が、このような光反応性を有していてもよいし、多光子吸収によって励起された多光子吸収性化合物から、他の反応性化合物へのエネルギー移動によって反応を起こしてもよい。
【0032】
光記録層1の屈折率は、例えば、多光子吸収性化合物や、マトリクスを構成する材料等の配合量を変更することで、変化させることができる。
【0033】
光記録層1の厚さは、1〜2000nmであることが好ましく、10〜1500nmであることがさらに好ましく、30〜1300nmであることが特に好ましい。光記録層1の厚さが2000nmよりも厚いと、高価な光記録材料の無駄が多くなり、光記録層1の厚さが1nmよりも薄いと、ハンドリングが困難になる場合がある。
【0034】
中間層2は、接着性を有することが好ましい。したがって、中間層2は、接着剤を含有することが好ましく、接着剤の中でも感圧接着剤または感熱接着剤を含有することが好ましく、感圧接着剤からなることが特に好ましい。中間層2が接着性を有することで、中間層2を介して光記録層1を順次積層・接着することができ、各層および全体の厚み精度の高い多層構造体3(多層光記録媒体10)を、高い生産性で製造することができる。
【0035】
接着剤としては、アクリル系、ポリエステル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系などの接着剤を用いることができる。中でも、透明性が高い点から、アクリル系感圧接着剤が好ましい。アクリル系感圧接着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体および架橋剤を含むものを用いることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、活性水素をもつ官能基を有するモノマーと、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体を好ましく挙げることができる。
【0037】
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
一方、活性水素をもつ官能基を有するモノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、所望により用いられる他のモノマーの例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で30万〜200万の範囲が好ましく、40万〜120万の範囲が特に好ましい。なお、この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
アクリル系感圧接着剤で使用する架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系感圧接着剤において架橋剤として慣用されているもの、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ化合物、アジリジン系化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などの中から、適宜選択することができるが、接着剤層の変色(黄変)に起因する光透過率の変化が起きにくく、レーザ光照射による変質が生じにくい脂環式ポリイソシアナート系化合物、脂肪族ポリイソシアナート系化合物、キシレン系ポリイソシアナート系化合物、脂環式エポキシ系化合物、脂肪族エポキシ系化合物、金属キレート化合物又は脂肪族アジリジン系化合物が好ましい。
【0043】
脂環式ポリイソシアナート系化合物や脂肪族ポリイソシアナート系化合物としては、例えばイソホロンジイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート、シクロペンチレンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、メチルシクロヘキシレンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0044】
脂環式エポキシ系化合物や脂肪族エポキシ系化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエステル、アジピン酸グリシジルエステル、セバシン酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0045】
金属キレート化合物としては、特に制限はなく、アクリル系感圧接着剤における金属キレート系化合物として公知の化合物の中から任意のものを適宜選択することができる。この金属キレート系化合物には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物がある。
【0046】
アルミニウムキレート化合物としては、例えばジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレートなどが挙げられる。
【0047】
脂肪族アジリジン系化合物としては特に制限はなく、アクリル系感圧接着剤における脂肪族アジリジン系化合物として公知の化合物の中から任意のものを適宜選択することができる。脂肪族アジリジン系化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(2−メチル−1−アジリジンプロピオネート)、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレアなどが挙げられる。
【0048】
上記の脂環式ポリイソシアナート系化合物、脂肪族ポリイソシアナート系化合物、脂環式エポキシ系化合物、脂肪族エポキシ系化合物、金属キレート化合物またはアジリジン系化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤の含有量は、感圧接着剤としての性能の観点から、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜3.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部の範囲で選定される。
【0049】
上記感圧接着剤には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
【0050】
中間層2の屈折率は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における芳香環、特にベンゼン環の含有量や、フッ素含有基、特にトリフルオロメチル基の含有量を変更することで、変化させることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の構成モノマーとして、フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量を増加させることで、中間層2の屈折率を大きくすることができる。また、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の構成モノマーとして、トリフルオロメチル(メタ)アクリレートの含有量を増加させることで、中間層2の屈折率を小さくすることができる。
【0051】
中間層2の厚さは、特に制限はないが、通常0.1〜100μm程度、好ましくは1〜30μmである。中間層2の厚さが0.1μm未満では、積層工程におけるハンドリングが困難になる場合があり、中間層2の厚さが100μmを超えると、多層構造体3が必要以上に厚くなりすぎる場合がある。
【0052】
多層構造体3を構成する光記録層1および中間層2のそれぞれの積層数は、特に制限はないが、通常2〜500層程度、好ましくは5〜200層である。1層では十分な記録密度が得られず、500層を超えると各層での光の吸収や層間での光の反射などによって、情報の書き込みや読み込みに不具合を生じる可能性がある。
【0053】
光記録層1と中間層2の全積層厚さ(多層構造体3の厚さ)は、通常10μm〜5mm程度、好ましくは20μm〜2mm、さらに好ましくは50μm〜1.2mmである。
【0054】
基板4は、光学特性および剛性に優れた材料からなり、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等の合成樹脂や、ガラス類などからなる。この基板4の厚さは、特に制限はないが、通常0.03〜2mm程度、好ましくは0.05〜1.5mmである。基板4の厚さが0.03mm未満では、積層工程におけるハンドリングが困難になる場合があり、基板4の厚さが2mmを超えると、多層光記録媒体が必要以上に厚くなりすぎることが多い。
【0055】
保護層5としては、通常、光透過性の樹脂フィルムが使用される。かかる樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、従来、光記録媒体の保護フィルムとして慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。この保護層5の厚さは、特に制限はないが、通常3〜600μm程度、好ましくは5〜150μmである。保護層5の厚さが600μmを超えると、各層にフォーカスできなくなるおそれがあり、保護層5の厚さが3μm未満であると、十分な保護ができないおそれがある。
【0056】
〔多層光記録媒体の製造〕
本実施形態に係る多層光記録媒体10を製造するには、図2に示す多層光記録媒体製造用シート6を使用することが好ましい。本実施形態に係る多層光記録媒体製造用シート6は、光記録層1と、光記録層1に積層された中間層2と、光記録層1の外側表面に積層された剥離シート7と、中間層2の外側表面に積層された剥離シート7’とからなる。ただし、剥離シート7,7’は、多層光記録媒体製造用シート6の使用時に剥離されるものである。ここで、多層光記録媒体製造用シートから剥離シートが剥離された、光記録層と中間層とからなる積層体を、多層光記録媒体製造用積層体というものとする。この多層光記録媒体製造用積層体は、図2中、符号8で示す。
【0057】
剥離シート7,7’としては、光記録層1または中間層2に対して剥離性を有するものであればよく、各種の合成樹脂フィルムや紙材を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、酢酸セルロース樹脂等の合成樹脂フィルムや、上質紙、グラシン紙、コート紙、樹脂含浸紙、ポリオレフィンラミネート紙等の紙材を挙げることができる。
【0058】
また、剥離シート7,7’は、光記録層1または中間層2側の面に剥離処理が行われたものでもよい。剥離処理としては、シリコーン系剥離剤、ブタジエン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤など公知の剥離剤をフィルムに塗布する方法が挙げられる。剥離剤を塗布して得られる剥離剤層の厚さは特に限定されず、所望により設定すればよいが、通常0.05〜50μmである。また、剥離剤を塗布する前のフィルムには、剥離剤層との密着性を向上させるために、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などを施してもよい。なお、剥離シート7,7’の光記録層1側または中間層2側の面は、光記録層1および中間層2に表面平滑性を付与するためにも、フィラーを含まないものであることが好ましい。
【0059】
剥離シート7,7’の厚さは特に限定されないが、通常は5〜500μmであり、好ましくは10〜200μmである。
【0060】
剥離シート7,7’の剥離力は、10〜1000mN/25mmであることが好ましく、30〜700mN/25mmであることが特に好ましい。剥離力がこの範囲にあると、剥離シート上に設けられた光記録層1または中間層2の転写作業性が良好なものとなる。より好ましい剥離力は30〜500mN/25mmである。
【0061】
なお、剥離シート7,7’のうち、先に剥離する方は軽剥離タイプのものとし、後に剥離する方は重剥離タイプのものとするのが好ましい。また、剥離シート7,7’のうち、一方を未処理の合成樹脂フィルム、他方を剥離処理が施された剥離シートとしてもよい。
【0062】
上記多層光記録媒体製造用シート6は、例えば、以下に示す方法により製造することができる。まず、光記録層1を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する光記録層1用の塗布剤を調製するとともに、中間層2を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する中間層2用の塗布剤とを調製する。
【0063】
そして、(1)光記録層1用の塗布剤を剥離シート7の剥離性を有する面上に塗布して光記録層1を形成した後、その上に中間層2用の塗布剤を塗布して中間層2を形成し、その中間層2の表面にもう1枚の剥離シート7’の剥離性を有する面を重ねて積層するか、(2)中間層2用の塗布剤を剥離シート7’の剥離性を有する面上に塗布して中間層2を形成した後、その上に光記録層1用の塗布剤を塗布して光記録層1を形成し、その光記録層1の表面にもう1枚の剥離シート7の剥離性を有する面を重ねて積層するか、(3)光記録層1用の塗布剤を剥離シート7の剥離性を有する面上に塗布して光記録層1を形成し、一方、中間層2用の塗布剤を剥離シート7’の剥離性を有する面上に塗布して中間層2を形成し、光記録層1と中間層2とが重ね合わせられるようにして両者を積層する。塗布剤の塗工には、例えば、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機を使用することができる。
【0064】
なお、上記多層光記録媒体製造用シート6は、当該多層光記録媒体製造用シート6における光記録層1と中間層2との屈折率差が異なるものを、2種以上用意する必要がある。
【0065】
次に、上記多層光記録媒体製造用シート6を使用した多層光記録媒体10の製造方法を説明する。最初に、多層光記録媒体製造用シート6の中間層2側の剥離シート7’を剥離し、露出した中間層2を介して、当該多層光記録媒体製造用シート6を基板4に貼付する。そして、当該多層光記録媒体製造用シート6から光記録層1側の剥離シート7を剥離し、光記録層1を露出させて、多層光記録媒体製造用積層体8とする。
【0066】
次に、別の多層光記録媒体製造用シート6の中間層2側の剥離シート7’を剥離し、露出した中間層2を介して、当該多層光記録媒体製造用シート6を上記多層光記録媒体製造用積層体8の光記録層1に貼付する。この作業を繰り返し、中間層2および光記録層1がn層積層されてなる多層構造体3を形成する。
【0067】
このとき、隣接する光記録層1と中間層2との屈折率差が、得られる多層光記録媒体10の光線入射面Bに向かって小さくなるように、あるいは、光線入射面Bの近傍における光記録層1と中間層2との屈折率差が、基板接触面Cの近傍における光記録層1と中間層2との屈折率差よりも小さくなるように、多層光記録媒体製造用積層体8を積層する。
【0068】
最後に、感圧接着性層(この感圧接着性層も中間層2に該当する)を有する保護層5を、当該感圧接着剤層を介して最上層の多層光記録媒体製造用積層体8の光記録層1に貼付し、多層光記録媒体10を得る。この感圧接着剤層の材料は、多層光記録媒体製造用シート6の中間層2を構成している感圧接着性の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
多層光記録媒体10の製造方法の他の例としては、最初に、基板4上に感圧接着性層(この感圧接着性層も中間層2に該当する)を形成する。この感圧接着剤層の材料は、多層光記録媒体製造用シート6の中間層2を構成している感圧接着性の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
次に、多層光記録媒体製造用シート6の光記録層1側の剥離シート7を剥離し、上記基板4上の感圧接着性層に対して、当該多層光記録媒体製造用シート6の光記録層1を貼付する。そして、当該多層光記録媒体製造用シート6から中間層2側の剥離シート7’を剥離し、中間層2を露出させて、多層光記録媒体製造用積層体8とする。
【0071】
そして、別の多層光記録媒体製造用シート6の光記録層1側の剥離シート7を剥離し、上記多層光記録媒体製造用積層体8の中間層2に対して、当該多層光記録媒体製造用シート6の光記録層1を貼付する。この作業を繰り返し、多層構造体3を形成する。最後に、最上層の多層光記録媒体製造用積層体8の中間層2に保護層5を貼付して、多層光記録媒体10を得る。
【0072】
上記の製造方法によれば、各層および全体の厚み精度の高い多層光記録媒体10を、高い生産性で製造することができる。
【0073】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
例えば、多層光記録媒体製造用シート6における剥離シート7または剥離シート7’はなくてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0076】
なお、以下に示す実施例または比較例における光記録層および中間層の厚さは、それらの層を形成した段階で測定し、光記録層の厚さの測定には、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製の分光エリプソメトリー 2000Uを用い、中間層の厚さの測定には、TECLOCK CORPORATION社製の圧式の厚み計 PG−02を用いた。
【0077】
〔実施例1〕
1.光記録層用塗工液の調製
1,1−ビス[4−[N,N(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(東京化成工業社製)10gと、溶剤としてトルエン90gとを混合し、固形分濃度10質量%の溶液(以下「溶液A」という。)を得た。また、ポリスチレン(東ソー社製,商品名:F−80)10gと、溶剤としてトルエン90gとを混合し、固形分濃度10質量%の溶液(以下「溶液B」という。)を得た。得られた溶液Aと溶液Bとを、質量比3:7の割合で混合し、これを光記録層用塗工液とした。
【0078】
2.第1の中間層用塗工液の調製
n−ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(n−ブチルアクリレート:フェノキシエチルアクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート=60:35:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量600000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、キシリレンジイソシアナート系架橋剤(綜研化学社製,商品名:TD−75,固形分濃度75質量%)1gを加えて撹拌し、これを第1の中間層用塗工液とした。
【0079】
3.第2の中間層用塗工液の調製
n−ブチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(n−ブチルアクリレート:トリフルオロエチルメタクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート=60:35:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量500000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)を調製し、これを第2の中間層用塗工液とした。
【0080】
4.多層光記録媒体製造用シートの作製
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製,商品名:PET50A−4100)の片面に、光記録層用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、光記録層を形成した。この光記録層の厚さは1200nmであった。
【0081】
第1の中間層用塗工液を、剥離フィルム(リンテック社製,商品名:PET381031)の剥離面に塗工し、90℃で1分間乾燥させて、第1の中間層を形成した。また、第2の中間層用塗工液を、剥離フィルム(リンテック社製,商品名:PET381031)の剥離面に塗工し、90℃で1分間乾燥させて、第2の中間層を形成した。第1の中間層および第2の中間層の厚さはそれぞれ10μmであった。
【0082】
上記のようにして形成した光記録層と第1の中間層とが重ね合わせられるようにして両者を積層し、これを第1の多層光記録媒体製造用シート(第1の多層光記録媒体製造用積層体を含む)とした。同様に、光記録層と第2の中間層とが重ね合わせられるようにして両者を積層し、これを第2の多層光記録媒体製造用シート(第2の多層光記録媒体製造用積層体を含む)とした。
【0083】
5.多層光記録媒体の作製
得られた第2の多層光記録媒体製造用シートから剥離フィルムを剥離し、露出した第2の中間層を介して、当該多層光記録媒体製造用シートをガラス基板(松浪ガラス工業社製,商品名:マイクロスライドガラス S1111,厚さ1mm)に貼付した。そして、当該第2の多層光記録媒体製造用シートからPETフィルムを剥離して、光記録層を露出させ、1層目の第2の多層光記録媒体製造用積層体とした。次に、別の第2の多層光記録媒体製造用シートから剥離フィルムを剥離し、露出した第2の中間層を介して、当該第2の多層光記録媒体製造用シートを、既にガラス基板に貼付した1層目の第2の多層光記録媒体製造用積層体の光記録層上に積層した。この作業を、第2の多層光記録媒体製造用積層体が20層となるように繰り返した。
【0084】
続いて、第1の多層光記録媒体製造用シートから剥離フィルムを剥離し、露出した第1の中間層を介して、当該第1の多層光記録媒体製造用シートを、20層積層した20層目の第2の多層光記録媒体製造用積層体の光記録層上に積層した。そして、積層した第1の多層光記録媒体製造用シートからPETフィルムを剥離して、光記録層を露出させ、1層目の第1の多層光記録媒体製造用積層体とした。次に、別の第1の多層光記録媒体製造用シートから剥離フィルムを剥離し、露出した第1の中間層を介して、当該第1の多層光記録媒体製造用シートを、既に積層した1層目の第1の多層光記録媒体製造用積層体(第2の多層記録媒体製造用積層体を加えると21層目の多層記録媒体製造用積層体)の光記録層上に積層した。この作業を、第1の多層光記録媒体製造用積層体の積層数が10層となるように繰り返した。以上のようにして、中間層が合計30層、光記録層が合計30層であり、それら中間層と光記録層とが交互に積層され、多層光記録媒体製造用積層体が30層である多層構造体を作製した。
【0085】
一方、保護層としてのポリビニルアルコールフィルム(日本合成化学工業社製,商品名:ゴーセノール T−350,厚さ20μm)と、第1の中間層からなる感圧接着性層とを積層してなる光透過性保護フィルムを用意した。上記多層構造体の最上層における多層光記録媒体製造用積層体の光記録層に、上記光透過性保護フィルムをその感圧接着性層を介して貼付し、多層光記録媒体を得た。
【0086】
〔実施例2〕
n−ブチルアクリレート及びアクリル酸(n−ブチルアクリレート:アクリル酸=95:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量1000000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、アルミキレート系架橋剤(綜研化学社製,商品名:M−5A,固形分濃度5質量%)2gを加えて撹拌し、これを第2の中間層用塗工液とした。
【0087】
第2の中間層用塗工液として、上記のものを使用する以外、実施例1と同様にして多層光記録媒体を作製した。
【0088】
〔実施例3〕
n−ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(n−ブチルアクリレート:フェノキシエチルアクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート=65:30:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量600000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、キシリレンジイソシアナート系架橋剤(綜研化学社製,商品名:TD−75,固形分濃度75質量%)1gを加えて撹拌し、これを第1の中間層用塗工液とした。
【0089】
第1の中間層用塗工液として、上記のものを使用し、第2の中間層用塗工液として、実施例2で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして多層光記録媒体を作製した。
【0090】
〔実施例4〕
n−ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(n−ブチルアクリレート:フェノキシエチルアクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート=70:25:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量600000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、キシリレンジイソシアナート系架橋剤(綜研化学社製,商品名:TD−75,固形分濃度75質量%)1gを加えて撹拌し、これを第1の中間層用塗工液とした。
【0091】
第1の中間層用塗工液として、上記のものを使用し、第2の中間層用塗工液として、実施例2で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして多層光記録媒体を作製した。
【0092】
〔実施例5〕
実施例1で得られた第1の中間層用塗工液を使用した第1の多層光記録媒体製造用シート、実施例1で得られた第2の中間層用塗工液を使用した第2の多層光記録媒体製造用シート、および実施例4で得られた第1の中間層用塗工液を使用した第3の多層光記録媒体製造用シート(第3の多層光記録媒体製造用を含む)を、実施例1と同様にして作製した。
【0093】
上記第2の多層光記録媒体製造用シートを使用し、実施例1と同様にして、第2の多層光媒体製造用積層体の積層数が10層となるように積層した。その上に、上記第3の多層光記録媒体製造用シートを使用して、第3の多層光媒体製造用積層体の積層数が10層となるように積層した。さらにその上に、上記第1の多層光記録媒体製造用シートを使用して、第1の多層光媒体製造用積層体の積層数が10層となるように積層した。このようにして、中間層が合計30層、光記録層が合計30層であり、中間層と光記録層とが交互に積層され、多層光媒体製造用積層体が30層積層された多層構造体を作製した後、実施例1と同様にして、光透過性保護フィルムを貼付し、多層光記録媒体を得た。
【0094】
〔比較例1〕
中間層用塗工液として、実施例2で得られた第2の中間層用塗工液のみを使用する以外、実施例1と同様にして第2の多層光記録媒体製造用シートを作製した。得られた第2の多層光記録媒体製造用シートのみを使用して、実施例1と同様にして、中間層が合計30層、光記録層が合計30層であり、中間層と光記録層とが交互に積層され、多層光媒体製造用積層体が30層積層された多層構造体を作製した後、光透過性保護フィルムを貼付し、多層光記録媒体を得た。
【0095】
〔試験例1〕(屈折率の測定)
実施例または比較例と同様にして、厚さ20μmの中間層を形成し、当該中間層の屈折率を、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用いて測定した。また、実施例または比較例で得られた光記録層の屈折率を、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製の分光エリプソメトリー 2000Uを用いて測定した。測定波長は405nm、測定温度は25℃とした。各層の屈折率および光記録層と中間層との屈折率差を表1に示す。
【0096】
〔試験例2〕(反射光強度の測定)
波長405nmの半導体レーザ(TOPICA社製,CUBE 405−100C)を共焦点光学系に組み込み、実施例または比較例で得られた多層光記録媒体に対して、保護層側からレーザ光を照射し、各多層界面からの反射光強度を確認した。実施例2で得られた多層光記録媒体の結果を図3のグラフに、実施例4で得られた多層光記録媒体の結果を図4のグラフに、実施例5で得られた多層光記録媒体の結果を図5のグラフに、比較例1で得られた多層光記録媒体の結果を図6のグラフに示す。なお、図3〜図6のグラフ中、横軸はガラス基板表面からの距離(μm)を示し、縦軸は反射光強度(V)を示す。
【0097】
〔試験例3〕(記録試験)
チタンサファイアフェムト秒レーザ(波長780nm)を光源とする共焦点光学系を使用して、実施例または比較例で得られた多層光記録媒体に対して、保護層側から数えて30番目の光記録層にレーザ光照射を25回行った。レーザ光の平均強度は60(mW)とし、照射時間は128ミリ秒、64ミリ秒、32ミリ秒、16ミリ秒、8ミリ秒とし、各5点ずつ記録した。次いで、同様の共焦点学系にて波長405nmの半導体レーザ(TOPICA社製,CUBE 405−100C)を使用して、記録スポットが観察された数を調べた。全ての記録スポットが観察された場合には、記録可能と判断した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1および図3〜図6から分かるように、実施例の多層光記録媒体は、光線入射面から離れた位置(深部)からの界面反射光の減衰が抑制されて、所望の大きさの反射光が得られ、これにより良好な記録特性を有するものとなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、良好な記録特性を有する多層光記録媒体を生産するのに有用である。
【符号の説明】
【0101】
1…光記録層
2…中間層
3…多層構造体
4…基板
5…保護層
6…多層光記録媒体製造用シート
7,7’…剥離シート
8…多層光記録媒体製造用積層体
10…多層光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線によりデータの記録が可能な光記録層と、中間層とを交互に積層してなる多層構造を有し、一方の面側から前記光線が入射される多層光記録媒体であって、
隣接する光記録層と中間層との屈折率差が、前記多層光記録媒体の光線入射面に向かって小さくなっている
ことを特徴とする多層光記録媒体。
【請求項2】
複数の前記光記録層の屈折率を一定とし、複数の前記中間層の屈折率を変化させることで、前記屈折率差を変化させたことを特徴とする請求項1に記載の多層光記録媒体。
【請求項3】
前記光記録層は、多光子吸収性材料を含有し、
前記中間層は、感圧接着剤を含有し、
さらに、前記光線入射面側の最外層として、保護層を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層光記録媒体。
【請求項4】
光線によりデータの記録が可能な光記録層と、中間層とを交互に積層してなる多層構造を有し、一方の面側から前記光線が入射される多層光記録媒体の製造方法であって、
隣接する光記録層と中間層との屈折率差が、前記多層光記録媒体の光線入射面に向かって小さくなるように、前記光記録層および前記中間層を積層する
ことを特徴とする多層光記録媒体の製造方法。
【請求項5】
光記録層と中間層との積層体であって、前記光記録層と前記中間層との屈折率差が異なる複数種の前記積層体を製造し、前記積層体を積層して多層構造とすることを特徴とする請求項4に記載の多層光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208998(P2012−208998A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75112(P2011−75112)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】