説明

多層回路基板

【課題】内層の数が増加した場合でも配線パターンの取り回しについて高い自由度を確保することができ、かつ、高い放熱性も確保することができる放熱構造を備えた多層回路基板を提供する。
【解決手段】表裏面を形成する一対の表層2a、2fと表層2a、2f間に設けられた内層2b〜2eとからなる積層構造を有し、表層の一方に発熱部品を含む電子部品3が実装された実装面2Aを有する多層回路基板である。実装面2Aを有する表層2aに、電子部品3の端子3aに接続するブラインドビア6が設けられている。内層2b〜2eに、ブラインドビア6を形成する導体6aに接続する導体8aを有したベリードビア8(8A)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造を有する多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子制御装置は、電子部品がプリント基板(多層回路基板)に実装され、このプリント基板が筐体に収容されて構成されている。このような電子制御装置などでは、半導体素子からなる電子部品は高温環境で性能が劣化し易いことから、その放熱が大きな課題となっている。すなわち、電子部品の発熱が多くなると電子制御装置の温度が上昇し、性能低下が起こるため、その対策が大きな課題となっている。
【0003】
このような背景のもとに、従来では、電子部品が実装されているプリント基板に該プリント基板を貫通して繋がる導体柱が設けられ、上記プリント基板の上記電子部品が実装された箇所の反対面に、上記導体柱の端面を覆う絶縁シートを介して放熱板が押し当てられる構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成により、スルーホール内に設けられた導体柱によって放熱経路を確保することができ、効率のよい放熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記構造を採用し、多層回路基板にスルーホールを形成してこのスルーホール内に放熱用の導体柱を設けた場合、配線パターンの取り回しについての自由度が制限されるという課題がある。すなわち、導体柱自体を配線として用いた場合、これを電源やグランドに接続する場合の取り回しの自由度がほとんどない。また、この導体柱を配線として用いない場合にも、他の配線パターンを取り回すうえで導体柱が障害となり、結果的に配線パターンの取り回し自由度が制限されてしまう。
また、導体柱を採用した構造では、プリント基板の内層の数(積層数)が増えた場合にも、内層を構成する各層や各層間での放熱経路が増加しないため、放熱効率が低いという課題もある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、内層の数が増加した場合でも配線パターンの取り回しについて高い自由度を確保することができ、かつ、高い放熱性も確保することができる放熱構造を備えた多層回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多層回路基板は、表裏面を形成する一対の表層と該表層間に設けられた内層とからなる積層構造を有し、前記表層の一方に発熱部品を含む電子部品が実装された実装面を有する多層回路基板であって、前記実装面を有する表層に、前記電子部品の端子に接続するブラインドビアが設けられ、前記内層に前記ブラインドビアを形成する導体に接続する導体を有したベリードビアが設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記多層回路基板においては、前記実装面を有する表層と反対側の表層に、前記ベリードビアを形成する導体に接続する導体を有したブラインドビアが設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記多層回路基板においては、前記実装面を有する表層に設けられたブラインドビアと前記ベリードビアとは、平面視した状態で離間して配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記多層回路基板においては、前記電子部品の端子は半田によって前記実装面のブラインドビアに接続されており、前記半田は、少なくとも一部が前記実装面のブラインドビア内に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多層回路基板によれば、電子部品の端子に接続して表層にブラインドビアが設けられ、導体を介して該ブラインドビアに内層のベリードビアが電気的、熱的に接続して設けられているので、ブラインドビアに対してベリードビアの位置をずらして配置することが可能になる。したがって、内層が複数積層されて形成されている場合、ベリードビア間でも互いの位置をずらして配置することができるため、これらブラインドビアとベリードビアとを含む配線パターンの取り回しについて、高い自由度を確保することができる。
また、内層の積層数が増加した場合にベリードビアの数も増大し、放熱経路が増加するため、高い放熱性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多層回路基板の一実施形態の概略構成を模式的に示す要部側断面図である。
【図2】図1に示した多層回路基板の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る多層回路基板について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の多層回路基板の一実施形態の概略構成を模式的に示す要部側断面図であり、図1中符号1は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)に用いられる多層回路基板である。
【0014】
この多層回路基板1は、表裏面を形成する一対の表層、すなわち表層2aおよび表層2fと、これら表層2a、2f間に設けられた内層2b〜2eとからなる積層構造のプリント基板であり、ビルトアップ工法を用いて形成されたものである。表層2aの表面(外面)は電子部品3を実装する実装面2Aとなっており、この実装面2AにはICチップや電解コンデンサ等からなる電子部品3が実装されている。電子部品3は、図2に示すように実装面2Aにてその端子3aが、半田4を介してブラインドビア6のパッド(導体)5に接続している。
【0015】
図1に示すように表層2aには、複数のブラインドビア6が形成配置されている。これらブラインドビア6は、レーザー加工によって穴あけされ、内面及びその開口周辺がメッキされて導体6aが設けられたもので、実装面2Aの開口周辺に設けられた導体6aが前記パッド5として機能し、電子部品3に接続されている。すなわち、ブラインドビア6には、図2に示すように実装面2Aに配置された前記パッド5(導体6a)に半田4を介して電子部品3の端子3aが接続されている。なお、パッド5の周囲にはソルダーレジスト7が配置されている。
【0016】
ここで、電子部品3を実装する際、パッド5に半田4を配してこれを加熱溶融すると、溶融した半田4はパッド5上を流動してブラインドビア6内に流入し、該ブラインドビア内に充填(配置)される。したがって、その後冷却固化されることにより、半田4は電子部品3の端子3aとブラインドビア6の導体6a(パッド5)との間を電気的、熱的に接続するようになる。
【0017】
内層2b〜2eは、本実施形態では4層の積層構造に形成されており、各層にそれぞれ多数のベリードビア8を形成している。本実施形態では、図2に示すように内層2b〜2eの第1層(最上層)2bに形成された第1ベリードビア8Aは、前記ブラインドビア6と同様にレーザー加工によって穴あけされ、内面及びその開口周辺がメッキされて導体8aが設けられている。また、第2層2c〜第4層2eに形成された第2ベリードビア8Bは、これら各層を貫通する貫通ビア(スルーホールビア)となっている。すなわち、本実施形態において内層の第2層2c〜第4層2dまでは、ビルトアップ工法で形成されていてもよいが、通常の多層基板として形成されていてもよい。なお、これら第2ベリードビア8Bにも、内面及びその開口周辺がメッキされて導体8bが設けられている。
【0018】
表層2fには、実装面2Aを形成する前記表層2aと同様に、複数のブラインドビア6が形成配置されている。これらブラインドビア6も、レーザー加工によって穴あけされ、内面及びその開口周辺がメッキされて導体6aが設けられたもので、裏面の開口周辺に設けられた導体6aが前記パッド5として機能している。
【0019】
ここで、本実施形態では、前記表層2aのブラインドビア6と、内層の第1層2bの第1ベリードビア8Aとが、平面視した状態で互いに離間して配置されている。すなわち、各ビア6、8Aの中心軸が、互いにずれて配置されている。そして、これらブラインドビア6と第1ベリードビア8Aとは、それぞれの導体6a、8a、すなわち各層面にて開口周辺に設けられてパッドとして機能する部位が互いに接続していることにより、電気的、熱的に接続したものとなっている。
【0020】
また、本実施形態では、第1ベリードビア8Aと内層の第2層2c〜第4層2eに形成された第2ベリードビア8Bとも、平面視した状態で互いに離間して配置され、したがって各ビア8A、8Bの中心軸が互いにずれて配置されている。そして、これら第1ベリードビア8A、第2ベリードビア8Bとも、それぞれの導体8a、8b(パッド)が互いに接続していることにより、電気的、熱的に接続したものとなっている。なお、内層の第2層2c〜第4層2eに形成された各第2ベリードビア8Bでも、互いに導体8bが接続し、したがって電気的、熱的に接続しているのはもちろんである。
【0021】
さらに、本実施形態では、内層の第2層2c〜第4層2eに形成された第2ベリードビア8Bと、表層2fのブラインドビア6とも、平面視した状態で互いに離間して配置され、したがって各ビア8A、8Bの中心軸が互いにずれて配置されている。そして、これら第2ベリードビア8B、ブラインドビア6とも、それぞれの導体8b、6a(パッド5)が互いに接続していることにより、電気的、熱的に接続したものとなっている。
【0022】
このような構成のもとに本実施形態の多層回路基板1では、その表層2aから表層2fまでの間において、各ビアどうしが電気的、熱的に接続している。また、表層2a、内層の各層2b〜2e、表層2fには、図1に示すようにそれぞれ、銅箔等による導電パターン9が形成されている。したがって、前記各ビア6、8A、8Bは、各層においてそれぞれ対応する導電パターン9にも接続し、電源やグランドなどに接続されている。ただし、各ビア6、8A、8Bの全てが配線として機能し、電源やグランドなどに接続されている必要はなく、一部は、単に放熱用として独立した状態で配設されていてもよい。
【0023】
また、この多層回路基板1は、通常はアルミニウム等の金属製のケース(筐体)に収容されて用いられる。すなわち、この多層回路基板1は、図1に示すように下側のケース10上に、放熱グリス等からなる熱伝導部材11を介して配置され、その後上側のケース(図示せず)で蓋がされることにより、電子制御装置として用いられる。
【0024】
この電子制御装置では、所定の動作をなすべく、ケースに設けられた電源接続部(図示せず)やグランド接続部(図示せず)が、前記ビア6、8A、8B等を介して多層回路基板1に実装された電子部品3に接続される。その際、表層2aのブラインドビア6と第1ベリードビア8Aとの間、第1ベリードビア8Aと第2ベリードビア8Bとの間、第2ベリードビア8Bと表層2fのブラインドビア6との間は平面視した状態で互いに位置がずれて配置されているので、電子部品3に電気的に接続する前記各ビア6、8A、8Bを含む配線については、その取り回しを比較的自由に行うことができる。
【0025】
また、電子部品3の熱は、多層回路基板1の実装面2A、各ビア6、8A、8Bおよび表層2a、内層2b〜2e、表層2f、さらに熱伝導部材11、下側のケース10を含む筐体(ケース)の順に伝わり、筐体から外部に放出される。その際、電子部品3に熱伝導性の高い金属(半田4、導体6a、8a、8b)を順次接続し、電子部品3の熱を熱伝導部材11から筐体に伝え、外部に放出するようにしているので、より効率良く放熱を行うことができる。
また、各ビア6、8A、8Bは、それぞれの層の導電パターン9等によって同じ層中の他のビアにも熱的に接続されることから、熱の発散性がよくなり、したがって放熱性がより高くなる。
【0026】
このように本実施形態の多層回路基板1にあっては、各ビア6、8A、8Bどうしを互いにずらして配置していることから、これらビア6、8A、8Bを含む配線の取り回しについて、高い自由度を確保することができる。また、これらビア6、8A、8Bを適宜に取り回しできることから、他の配線パターンの取り回しに干渉することも避けることができ、したがって他の配線パターンの取り回しについても、高い自由度を確保することができる。
【0027】
また、各ビア6、8A、8Bを伝導させることにより、電子部品3の熱を効率的に放出させることができる。特に、内層の積層数が増加した場合には、第1ベリードビア8A、第2ベリードビア8Bの数も増大し、したがってこれらが熱を筐体側に伝えるように機能するため、多層回路基板1は高い放熱性を確保することができる。
【0028】
また、表層2fにも第2ベリードビア8Bに接続してブラインドビア6を形成しているので、前記したように第2ベリードビア8Bと表層2fのブラインドビア6との間でも平面視した位置をずらすことができ、さらに電子部品3の熱を導体8a、8b、6aを介して熱伝導部材11に効率良く伝えることができる。したがって、配線パターンの取り回し自由度を高めることができるとともに、高い放熱性を確保することができる。
【0029】
また、電子部品3の端子3aを半田4によって実装面2Aのブラインドビア6に接続しているので、前述したように半田4が流動してブラインドビア6内に充填(配置)されるようになる。したがって、前記端子3aと前記ブラインドビア6との間の接続が、ブラインドビア6内に充填され、封入された半田4を介することでより良好になり、特に熱的な接続が良好になる。これにより、半田4によって電子部品3の熱をより効率よく放出することができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、第1ベリードビア8Aが平面視した状態で表層2fのブラインドビア6と第2ベリードビア8Bとの間に配置されていてもよい。
また、前記実施形態では、内層を4層の積層構造としたが、内層は単層であっても、2層、3層、または5層以上であってもよい。特に内層が3層以上である場合、内層に形成するビアとして、第1ベリードビア8A、第2ベリードビア8Bに加え、第2ベリードビア8Bに対して平面視してずれて配置される第3ベリードビアを設けてもよい。さらには、内層が4層以上である場合、第4、第5、……のベリードビアを設けてもよい。
また、層数が増えた場合、第1ベリードビア8Aが表層2aのブラインドビア6と第2ベリードビア8Bとの間、表層2fのブラインドビア6と第2ベリードビア8Bとの間にそれぞれ配置されていてもよい。
さらに、第2ベリードビア8Bと表層2fに設けられたブラインドビア6との間に、第2ベリードビア8Bに対して平面視してずれて配置される第3、第4…のベリードビアを配置してもよい。
また、第2ベリードビア8Bを、コア層を通るコアビアとすることもできる。
【0031】
また、前記実施形態では表層2fにもブラインドビア6を形成したが、この表層2fにはブラインドビア6を形成しないようにしてもよい。その場合にも、表層2fが熱伝導体として機能することにより、電子部品3の熱を熱伝導部材11に伝え、したがって筐体から放出させることができる。
【0032】
また、前記実施形態では、各ビア6、8A、8Bを平面視した状態で離間して配置し、したがって互いに位置が異なるように設けたが、他の配線に干渉しないなど、配線の自由度が充分に確保できれば、上下に接続するビア間が全て離間することなく、一部のビア間のみで離間して配置されるようにしてもよい。さらには、上下に接続する全てのビア間が、離間することなく配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…多層回路基板、2A…実装面、2a…表層、2b〜2e…内層、2f…表層、3…電子部品、3a…端子、4…半田、5…パッド、6…ブラインドビア、6a…導体、8…ベリードビア、8a、8b…導体、8A…第1ベリードビア、8B…第2ベリードビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面を形成する一対の表層と該表層間に設けられた内層とからなる積層構造を有し、前記表層の一方に発熱部品を含む電子部品が実装された実装面を有する多層回路基板であって、
前記実装面を有する表層に、前記電子部品の端子に接続するブラインドビアが設けられ、
前記内層に、前記ブラインドビアを形成する導体に接続する導体を有したベリードビアが設けられていることを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】
前記実装面を有する表層と反対側の表層に、前記ベリードビアを形成する導体に接続する導体を有したブラインドビアが設けられていることを特徴とする請求項1記載の多層回路基板。
【請求項3】
前記実装面を有する表層に設けられたブラインドビアと前記ベリードビアとは、平面視した状態で離間して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層回路基板。
【請求項4】
前記電子部品の端子は半田によって前記実装面のブラインドビアに接続されており、
前記半田は、少なくとも一部が前記実装面のブラインドビア内に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層回路基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89851(P2013−89851A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230708(P2011−230708)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】