説明

多層型毛髪化粧料

【課題】
アミノ変性シリコーンと塩基性アルギニンを含む多層型毛髪化粧料であり、振とう後、静置状態での各層の分離性と透明性の良好な毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】
(a)下記一般式(1)−1及び/又は(1)−2で表されるアミノ性シリコーンと、(b)塩基性アミノ酸とを含有することを特徴とする多層型毛髪化粧料。


(1)−1:(式(1)中、mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は3000〜20,000の整数であり、n/mは0.0001〜0.002である。)(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。詳しくは特定のアミノ変性シリコーンと塩基性アミノ酸を含有し、多層に分離した多層型毛髪化粧料であって、毛髪に塗布した際に毛髪に十分な補修効果を付与することができ、さらに多層分離性・透明性に優れた毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型毛髪化粧料としては水層―油層からなる液―液系の2層型毛髪化粧料(例えば、特許文献1)、エタノール、炭化水素油、ジメチルポリシロキサンをそれぞれ特定量含有することを特徴とする多層型毛髪化粧料(例えば、特許文献2)などが知られている。
毛髪を乾燥や摩擦から守る毛髪保護成分としては高分子のジメチコンが汎用されており、現在では毛髪への吸着率が高いアミノ変性シリコーンがダメージ毛の補修成分として使われている。しかしアミノ変性シリコーンを多層型化粧料に配合すると、油でありながら極性基を持つアミノ変性シリコーンの作用で多層分離性が悪化し、分離後の透明性も悪くなることが問題となっていった。
【特許文献1】特開2002−255739号公報
【特許文献2】特開2001−81014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、特定のアミノ変性シリコーンと塩基性アミノ酸を含有する毛髪化粧料であって、毛髪に塗布した際、毛髪に十分な補修効果を与えることが出来、さらに振とう後の静置状態での多層分離性、各層の透明性が良好である多層型毛髪化粧料を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、(a)特定のアミノ変性シリコーンと、(b)塩基性アミノ酸とを組み合わせて配合することにより、毛髪に十分な補修効果を与えることが出来、さらに振とう後、静置状態での多層分離性、各層の透明性が良好である多層型毛髪化粧料を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、(a)下記一般式(1)−1及び/又は(1)−2で表されるアミノ性シリコーンと、(b)塩基性アミノ酸とを含有する多層型毛髪化粧料である。
【化3】

(1)−1:(式(1)中、mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は3000〜20,000の整数であり、n/mは0.0001〜0.002である。)
(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)
【0006】
また、本発明は、前記(a)アミノ変性シリコーンが、下記一般式(1)−2で表されるアミノプロピルジメチコンである前記多層型毛髪化粧料である。
【化4】

(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)
【0007】
また、本発明は、前記(b)塩基性アミノ酸が、アルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる1種又は2種以上である前記毛髪化粧料である。
【0008】
また、本発明は、油層−水層の2層型及び/または油層−乳化層−水層からなる3層型の多層型毛髪化粧料である。
【0009】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0010】
本発明に用いる成分(a)のアミノ変性シリコーンは、下記一般式(1)−1及び/又は(1)−2で表されるものを使用することができる。
【化5】

(1)−1:(式(1)中、mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は3000〜20,000の整数であり、n/mは0.0001〜0.002である。)
(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)
上記アミノ変性シリコーンを配合することにより、毛髪に十分な補修効果を与えることが出来る。
【0011】
中でも、後者の一般式(1)−2で表される(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)であるアミノ変性率の高いアミノプロピルジメチコンを配合することによって、より毛髪への吸着度が高まり、高い毛髪補修効果を得る事が出来る。
【0012】
本発明に用いる前記成分(a)の市販品としては、APS−10−DMS、APS−20−DMS(信越化学工業社製)等が上げられる。特にこのましいアミノ変性率の高いアミノプロピルジメチコンとしては、前記一般式(1)において、m+nの平均値が約5000であり、n/mの平均値が約0.005であるもの等が挙げられる。
【0013】
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(a)は、該化粧料全量に対して0.0001〜5.0質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0質量%である。0.0001質量%以下では毛髪に充分な補修効果が得られず、また、5.0質量%を超えて配合すると、外観の分離性および各層の透明性が塩基性アミノ酸でも改善しにくくなる等の点で好ましくない。
【0014】
本発明に用いる成分(b)の塩基性アミノ酸としては特に限定されないが、アルギニン、リジン、ヒスチジン等が挙げられ、それらを単独、または2種類以上を任意に選択して使用することができる。中でもアルギニンが、本発明で用いるアミノ変性シリコーンを含む多層型毛髪化粧料の層分離する効果が高く、また各層の透明性も良好な為これを用いることが好ましい。
【0015】
前記成分(b)の市販品としては、L−アルギニン(味の素社製、協和発酵社製、田辺製薬株式会社製)、L−リジン(SIGMA CHEMICAL COMPANY社製)、L−ヒスチジン(SIGMA CHEMICAL COMPANY社製)が挙げられる。
【0016】
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(b)は、該化粧料全量に対して0.01〜5質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%である。0.01質量%以下では、アミノ変性シリコーンによる分離性の悪さ・外観透明性の悪さを改善することが難しく、また、5質量%を超えて配合すると、使用性上のべたつき・重さ等の点で好ましくない。
【0017】
本発明の毛髪化粧料の剤型は多層型の液状である。中でも、外観の透明性・分離性により、透明・又は半透明の油層−水層からなる2層型液状組成物か、油層−乳化層−水層からなる3層型液状組成物であることが特に好ましい。
また、毛髪とは体毛と頭髪の総称であり、本発明の毛髪化粧料は、頭髪用化粧料、睫毛用化粧料等、毛髪化粧料であれば特に限定されない。
【0018】
本発明において、上記成分以外に、(c)精製水、エタノールの他グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール等の保湿成分、キサンタンガム、アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、高重合ポリエチレングリコール、デキストリン、グアーガム等の水溶性高分子を配合することが好ましい。
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(c)は、該化粧料全量に対して5〜95質量%配合することが好ましく、より好ましくは10〜90質量%である。5質量%以下、また、95質量%を超えて配合すると、油層の割合が少なくなり、外観上の多層構造が分かりにくくなるという点で好ましくない。
【0019】
本発明において、上記成分以外に、(d)ミネラルオイル、2−エチルヘキサン酸セチル、揮発性イソパラフィン、軽質イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、植物性スクワラン、オクチルドデカノール、パルミチン酸イソステアリル、ポリオキシプロピレン(40)ブチルエーテル、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(2)ジメチルエーテル、オリーブ油、ゴマ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、トウモロコシ油、ツバキ油を配合することが好ましい。
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(d)は、該化粧料全量に対して5〜95質量%配合することが好ましく、より好ましくは10〜90質量%である。5質量%以下、また、95質量%を超えて配合すると、外観上の多層構造が分かりにくくなるという点で好ましくない。
【0020】
本発明において、上記成分以外に(e)塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの水溶性塩類を配合することが好ましい。
本発明の毛髪化粧料において、前記成分(e)は該化粧料全量に対して0.01〜3質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。0.01質量%以下だと塩析効果が弱まり多層の分離性が弱くなり、また、3質量%を超えて配合すると、べたつきなど使用性上の問題が出る点で好ましくない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定のアミノ変性シリコーンと塩基性アミノ酸を配合する多層型毛髪化粧料であって、毛髪に塗布した際、毛髪に十分な補修効果を付与することができ、さらに振とう後の静置状態での各層の分離性・透明性が良好な毛髪化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。なお、配合量の単位は質量%である。
【0023】
水層に水、アルコール、食塩、塩基性アミノ酸を溶解させ、また油層に水添ポリイソブテンとアミノ変性シリコーンを溶解して2層を混合・攪拌して得た試験品について、後述の試験法により、振とう後、8時間静置した状態での分離性と透明性を確認した。結果を表1に示す。
【0024】
<振盪後の分離性と透明性確認>
各試験品を50gガラス管に入れ、30回振盪した後、水平に8時間放置すると試験品は2層分離した。その後経時での各層の分離性・透明性を確認した。
【0025】
【表1】

(*1)(化1)他の一般式において、m+nの平均値=5000、n/mの平均値=0.005であるもの。
【実施例】
【0026】
次に、後述の製造方法によって、表2に示す配合処方の毛髪化粧料を調製した。得られた各毛髪化粧料を用い、前記実施の形態と同一方法の振とう後振とう後、8時間静置した状態での分離性と透明性確認を行った。結果を表2に示す。なお、配合量の単位は質量%である。
【0027】
<製造方法>
水に食塩、アルコール、塩基性アミノ酸を溶解させ、水添ポリイソブテン、アミノ変性シリコーンからなる油層パーツを添加・攪拌融解して試験品を得、容器に充填した。
【0028】
【表2】

(*2)(化1)他の一般式において、m+nの平均値=5000、n/mの平均値=0.005であるもの。
(*3)APS−10−DMS(信越化学工業社製)
【0029】
実施例1、比較例2・3は、2層に、実施例2,3は3層に分離した。表2に示すとおり、前記成分(b)として塩基性アミノ酸であるアルギニン・リジン・ヒスチジンを配合した毛髪化粧料において、塩基性アミノ酸無配合の比較例2と比べて各層の透明性・分離性が向上している。また前記成分(a)アミノ変性シリコーン無配合の比較例2と同程度の透明性・分離性を示し、かつ良好な毛髪補修効果を有する。比較例3に見られるように、アミノプロピルジメチコン(*3)はアミノ変性率が低いため、より少量のアルギニンで透明性と分離性を改善することが出来るが、毛髪補修効果はアミノプロピルジメチコン(*2)に比べて低い。
【0030】
【表3】

(*4)(化1)他の一般式において、m+nの平均値=5000、n/mの平均値=0.005であるもの。
【0031】
実施例4は、2層分離した。表3に示すとおり、さらに他のアミノ酸としてL−グルタミン、アミノ酸塩としてグルタミン酸ナトリウム、タンパク質分解物として加水分解コムギタンパクを配合した比較例3・4・5は、成分(b)がアルギニンである実施例4と比べて、外観の透明性・分離性が悪い。
【0032】
以下に、本発明のその他の実施例を示す。なお、配合量の単位は質量%である。なお、アミノプロピルジメチコン(*5)については、(化1)他の一般式において、m+nの平均値=5000、n/mの平均値=0.005であるものを用いた
【0033】
実施例5:ヘアトリートメント(2層分離)
エタノール 40
グリセリン 2
食塩 0.3
揮発性イソパラフィン 20
メチルポリシロキサン 2
アミノプロピルジメチコン(*5) 1
L−アルギニン 0.3
香料 0.1
精製水 残余
【0034】
<製造方法>
水に食塩、アルコール、グリセリン、L−アルギニンを溶解させ、水添ポリイソブテン、メチルポリシロキサン、アミノプロピルジメチコンからなる油層パーツを添加・攪拌融解し、容器に充填した。
【0035】
実施例6:セットローション(3層分離)
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー 1
アミノプロピルジメチコン(*5) 1
L−リジン 1
エタノール 20
ソルビトール 5
キサンタンガム 0.1
ミネラルオイル 8
香料 0.1
食塩 0.3
精製水 残余
【0036】
<製造方法>
水に食塩、アルコール、グリセリン、L−リジン、キサンタンガム、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーを溶解させ、水添ポリイソブテン、アミノプロピルジメチコンからなる油層パーツを添加・攪拌融解し、容器に充填した。
【0037】
実施例7:スカルプローション 3層のものを記載して下さい。
ポリグリセリン(8)ドデシルフェニルエーテル 0.5%
塩化ナトリウム 0.7
ジメチコン 3
アミノプロピルジメチコン(*5)
L−ヒスチジン
エタノール 30
l−メントール 0.1
ビタミンE誘導体 0.5
ジプロピレングリコール 7
精製水 残余
【0038】
<製造方法>
水に塩化ナトリウム、ジプロピレングリコール、L−ヒスチジン、ポリグリセリン(8)ドデシルフェニルエーテルを溶解させ、ビタミンE誘導体とl−メントールを溶解したアルコールを添加した。そこにアミノプロピルジメチコン(*5)とジメチコンからなる油層パーツを添加・攪拌融解し、容器に充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)−1及び/又は(1)−2で表されるアミノ性シリコーンと、(b)塩基性アミノ酸とを含有することを特徴とする多層型毛髪化粧料。
【化1】

(1)−1:(式(1)中、mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は3000〜20,000の整数であり、n/mは0.0001〜0.002である。)
(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)
【請求項2】
(a)アミノ変性シリコーンが、下記一般式(1)−2で表されるアミノプロピルジメチコンである請求項1記載の多層型毛髪化粧料。
【化2】

(1)−2:(式(1)中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.002〜0.03である。)
【請求項3】
(b)塩基性アミノ酸が、アルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
油層−水層の2層型及び/または油層−乳化層−水層からなる3層型である、請求項1乃至3のいずれかに記載の多層型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2006−160708(P2006−160708A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358261(P2004−358261)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】