説明

多層型細胞培養装置

細胞培養のための多層型細胞培養装置(100)が開示される。細胞培養装置は、気管空間(118)と組み合わされた複数の細胞培養チャンバ(111)を有する一体構造として定められる。装置の本体内には、細胞培養チャンバと外部環境との間でのガスの自由な流れを可能にする気管空間と組み合わされた気体透過膜(113)が設けられている。フラスコ本体は、針やカニューレによる細胞増殖チャンバへのアクセスを可能にするアパチャー(130)も含む。この装置のサイズ、及び任意の首及びキャップ部の位置は、標準的な自動分析装置による細胞培養装置の操作を可能にし、更に装置をハイスループットの用途に理想的なものとする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、2005年7月26日に出願された「多層型細胞培養装置(Multilayered Cell Culture Apparatus)」という名称の米国特許出願第60/702,896号の利益を主張するものであり、ここに参照することによりその内容を本願明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的には細胞生物学の分野に関するものであり、具体的には細胞培養フラスコに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞の試験管培養は、薬理学、生理学及び毒物学における研究に必要な材料を提供する。培養される細胞のために作られる環境条件は、生体内で細胞が経験する条件にできるだけ似ているべきである。細胞の培養に適した環境の一例は、特許文献1に示されているような通常の実験用フラスコである。細胞は、維持用の適切な培地に浸かった状態でフラスコの底部壁に付着して増殖する。適切な温度及び雰囲気を維持するために、フラスコは培養器内に保持される。
【0004】
ほとんどの細胞は、6.8〜7.8の範囲の水素イオン濃度(pH)に耐性を有するが、哺乳類の細胞の増殖に最適なpHは7.2〜7.4である。細胞の培養中に最適なpHを維持するために、細胞培養用の培地は緩衝系を含んでいなければならない。
【0005】
pHは、しばしば、二酸化炭素が約5〜7体積%の培養器雰囲気と共に培地中の重炭酸塩緩衝系を用いて維持される。二酸化炭素は水と反応して炭酸を生じ、炭酸は培地中の重炭酸イオンと相互作用して、pHをほぼ生理学的なレベルに維持する緩衝系を構成する。培養器から細胞培養フラスコへの二酸化炭素の導入は、フラスコと培養器との間のガス交換のための小さな開口部が残るようにゆるく嵌められた又は通気口のあるキャップ又はカバーを用いて達成されるのが一般的である。更に、衝撃耐性のあるポリスチレンプラスチックでできた、水蒸気、酸素及び二酸化炭素を通すフラスコが販売されている。しかし、透過率は容器の壁の厚さによって大きく減少するので、ポリスチレンを通したガス交換のみに頼るのは一般的に有効ではない。更に、非常に薄く(約0.004インチ(約0.102mm)厚)柔軟な気体透過膜である細胞増殖面を有するフラスコが作られている。このタイプの構成は、ガス交換を可能にするものであるが、増殖面の柔軟さ及び薄さにより、均一な面を増殖させるのは困難であると共に、フラスコの耐久性に関連する問題の一因ともなる。
【0006】
ガス交換、特に、細胞による酸素の利用は、細胞培養フラスコ内の細胞増殖領域を制限する要因である。細胞培養用のフラスコは、一般的に、フラスコの設置面積とほぼ同じサイズの単層の付着依存性細胞を増殖させるものであるので、培地体積は、フラスコ内の酸素が拡散可能な領域に限定される。酸素及び二酸化炭素は、細胞の培養に特に重要である。従来の細胞培養容器における、細胞の呼吸及び代謝機能のための酸素供給は、容器のヘッドスペース、例えば、細胞培養用の培地の表面から上方にある容器内の何も無い空間を占めている。従って、従来の細胞培養容器の容積及び容器内の表面は、非効率的に用いられている。これにより、ガス交換の速度が制限され、それと共に/又は、ガスの平衡が制限される。多数の付着依存性細胞のための十分なガス交換を可能にしつつ、細胞増殖のための表面積をより多く提供できる細胞培養フラスコが必要である。
【0007】
培養器内で多数のフラスコが積み重ねられ、多数の培養物が同時に増殖されるのが望ましい。増殖用の培地、温度及び細胞の変異性の小さなばらつきが、培養の進行に顕著に影響する。従って、細胞の増殖を監視するために、顕微鏡による目視検査を繰り返す必要がある。従って、細胞培養フラスコは、このような目視検査が可能な光学的に透明な材料で構成されるのが一般的である。
【0008】
細胞に基づくハイスループットの用途の出現と共に、完全に自動化された細胞培養システムが重要な開発対象となっている(例えば、非特許文献1参照)。これらの自動化されたシステムは、従来の細胞培養容器(即ち、通常のフラスコ、ローラーボトル及び細胞培養皿)を用いており、フラスコの蓋をとってそれらを操作するために、オペレータの手作業によく似た関節のあるアームを常に必要とする。
【0009】
必要なガス交換も提供しつつ、細胞増殖のためのより多くの表面積を提供できる、剛性構造を有する細胞培養装置が必要である。更に、付着細胞の表面でのガス交換を可能にしつつ、一般的に知られているフラスコの容積内でより高い細胞収率を生じることが望ましい。
【0010】
更に、望ましい細胞培養装置は、通常はロボット操作を用いるハイスループット分析を行う際の使用に適したものとなる。
【特許文献1】米国特許第4,770,854号明細書
【非特許文献1】A Review of Cell Culture Automation, M.E. Kempner, R. A. Felder, JALA Volume 7, No. 2, April/May 2002, pp. 56-62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記問題に鑑み、本発明は、効率的な細胞培養のための多層型細胞増殖装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の例示的な実施形態によれば、効率的な細胞培養のための細胞増殖装置が開示される。例示的な装置は、壁及び端部壁によって接続された、細胞増殖領域を定める底部トレーと上部プレートとを含む一体型の本体を含む。装置の任意の周囲に沿って配置された少なくとも1つのアパチャーは、内部体積へのアクセスを可能にする。装置の本体内の支持部には、少なくとも1つの気体透過性基体/膜が取り付けられる。気管空間/チャンバは、外気からの気体が、気体を透過させ液体を透過させない膜を通って細胞培養チャンバを出入りするように交換されるのを可能にする。更に、気管空間は、外側容器本体によって囲まれた空気室である。気管チャンバと細胞増殖チャンバとの間の連通により、細胞増殖のための条件の均一性が提供される。更に、均一なガス配分は、培養環境の一貫性を提供するのに有益であり得る。
【0013】
本発明の細胞増殖装置の一実施形態は、気体を透過させ液体を透過させない面及び該面と対向する面を各細胞増殖チャンバが有する複数の細胞増殖チャンバを含む。少なくとも1つの気管チャンバは、細胞増殖チャンバの少なくとも1つの気体を透過させ液体を透過させない面と連通し、細胞と外部環境とのガス(例えば酸素、二酸化炭素等)の交換を可能にしている。本発明の細胞増殖装置は、一体型のユニットとして組み合わされる複数の細胞増殖チャンバが組み込まれた少なくとも1つの気管チャンバを有する。従って、一体型のユニットは、任意の構成に組み立てられる多数の増殖面を有する。本発明の細胞増殖装置の好ましい実施形態では、各細胞増殖チャンバと気管チャンバとが垂直方向に連なる位置に交互に配置され、これにより、各細胞増殖チャンバは、付着依存性細胞の増殖を支える略平面状の水平面を含む。しかし、細胞増殖面は、増殖のための表面積に対応するよう平面状及び/又は非平面状であり得る。1つ以上の気管空間と組み合わされた、変更された又は高められた表面積により、細胞増殖のための多様な面積が可能になる。次に、本発明の別の実施形態は、細胞増殖面及び気管空間に介在する面の構成を含み得る。従って、複数の細胞増殖チャンバを隣接させて、依然として気管チャンバと連通するように構成し得る。
【0014】
複数の細胞培養チャンバの間に気管チャンバを形成した構成では、気管チャンバが、細胞培養チャンバの気体を透過させ液体を透過させない面と外気との間でのガス交換を可能にする。本発明の好ましい実施形態では、各細胞培養チャンバと気管チャンバとが交互に配置されており、細胞が外部とのガス交換を行いやすくなる。
【0015】
本発明の装置の一実施形態は、細胞培養チャンバの前記対抗する面として、気体を透過させ液体を透過させない膜を用いる。このような実施形態では、(装置の本体の内部の)複数の気体透過性基体を組み込んで、細胞増殖のための表面積を増やすことができる。この場合、別の面での付着依存性細胞の増殖を容易にするために、装置を回転可能であるのが好ましい。各気体透過性基体は、その上方及び/又は下方に気管空間を有し得る。このような一実施形態では、積み重ねられた各気体透過性基体/層間に1つ以上の気管空間を組み込むことができる。更に、気体透過膜に、細胞増殖を促進するための処理又はコーティングを施してもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態は、装置内部の棚を構成する1つ以上の支持部を含む。従って、各棚には、少なくとも1つの気体透過性基体が取り付けられる。別の実施形態では、内部の気体透過膜が更に細胞増殖を支えられるように、フラスコ本体を横断する横方向のリブが組み込まれ得る。このような支持部又は横方向のリブが用いられる場合には、複数の気体透過膜を、支持部内に配置若しくは収容でき、又は、支持部の1つ以上の面に取り付けることができる。従って、層、即ち気体透過性基体が積み重ねられた際には、各細胞増殖層間に気管空間が含まれることが重要である。気管空間は、装置内部の細胞培養チャンバ内に均一なガス配分を提供するのが好ましい。装置を培地で完全に満たすことで、細胞の最適な栄養交換が可能になる。従って、細胞増殖のための条件の均一性は、単位表面積当たりの決定された培地体積を含み得る。別の態様では、細胞培養装置の一体型のユニットは、各モジュールが細胞増殖チャンバ及び気管チャンバを有する複数のモジュールで構成される。複数のモジュール状の気体透過性基体を用いて、本発明の一体型の1つの装置を構成するように複数の細胞チャンバ及び気管チャンバを配置することができる。更に、気体透過性基体の複数の層を相互接続又は隣接させ、細胞増殖のための多様な領域を提供することができる。連続的な流れを可能にするために、複数のモジュールは直列に又は互い違いに相互接続され得る。組み立て及び分解を容易にするために、スナップ状の特徴を有する個々のユニットを、しっかりと容易に接合することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、装置は、一体型ユニットの細胞増殖チャンバにアクセスするためのマニホールドを備える。マニホールドは、更に、細胞培養チャンバ内における空気の流れ、液体、培地及び/又は細胞の材料を方向付けることが可能であり得る。
【0018】
本発明の多くの実施形態は静的な培養に適したものであるが、本発明の別の実施形態では、細胞培養チャンバを通る連続的な流れを可能にするために、フラスコ内の気体透過性基体が互い違いに配置されている。互い違いの層により、培地が装置を通って連続的に流れる、即ち潅流することが可能になる。
【0019】
本発明の一実施形態は、本発明の装置やフラスコが様々な機器及び設備と共に用いられ得るように、現在用いられている従来のサイズ及び形状の容器との整合性を提供する。従って、本発明の装置は、略四角形の設置面積及び略均一な高さを有し得る。四角形の設置面積は、マイクロプレートの業界標準の設置面積寸法と略等しい寸法を有する。この場合、装置の構成の一実施形態は、略四角形の設置面積内に配置され且つ一体型のユニットの高さを超えない首及び/又はキャップを含み得る。
【0020】
本発明の装置の別の実施形態は、上部プレートの外面から隆起した又は底部トレーの外面から下降したスタンドオフを備え得る。
【0021】
細胞増殖装置は、培地の追加及び除去のために、多数の増殖チャンバにアクセスするための少なくとも1つのアクセス口を有する。しかし、各細胞増殖チャンバが個々のアクセス口を有してもよい。補足的に、装置には、セプタムでシールされるアクセス可能な開口部又はアパチャーを、装置の本体と一体に又はキャップの一部として設けることができる。キャップが用いられる場合には、底部トレーの最外部の平面と上部プレートの最外部の平面との間の距離によって測定される高さを有する本発明の装置の一実施形態は、アパチャーを覆うキャップ、カバー、及び/又はセプタムを有する。フラスコが積み重ねられた際の干渉を防ぐために、キャップは、装置/フラスコの高さを超えない直径を有し得る。更に、キャップは、装置の上面、側面、及び/又はコーナー領域に一体に含まれてもよい。本発明の装置は、入口を定めるアパチャー及び出口を定め得る別のアパチャーを有し得る。気体透過性基体が積み重ねられる場合には、装置の本体内の細胞培養チャンバを通る流れ又は潅流を可能にするために、入口及び出口は、平行な又は互い違いの組み立て位置に配置され得る。
【0022】
個々の細胞増殖チャンバに通じる顕微鏡レンズ等の1つ以上の光学コンポーネントを使用すると便利である。これらのレンズは、1つ以上の細胞増殖層の観察を可能にする。また、装置は、煩雑なロボットアーム操作を必要とせずにロボットによる装置の内部へのアクセスを可能にする形状及び構成を有するのが好ましい。
【0023】
本発明は、本発明の装置で細胞を培養する方法も含む。この方法は、まず、上述の細胞増殖のための装置を設けることを含む。まず、気体透過性基体が所望の装置構成に組み立てられ、次に、装置の細胞培養チャンバに細胞及び/又は培地が導入される。その後、細胞増殖のための所望の条件に合うようにフラスコをインキュベートできる。更に、装置を回転させれば、気体透過性基体の別の面での細胞の培養が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことによって最もよく理解される。様々な特徴は必ずしも正しい縮尺で描かれていないことを強調する。実際には、議論を明確にするために寸法は任意に増減され得る。
【0025】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、限定ではなく説明の目的で、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態を示す。しかし、当業者には、本願明細書で開示する具体的な詳細から離れた他の実施形態でも本発明が実施され得ることは明白である。他の例では、本発明の記載が不明瞭にならないように、周知の装置及び方法の詳細な記載は省略する場合がある。
【0026】
本発明の一実施形態による装置の外観が図1に示されている。この実施形態の装置100はフラスコ100の形態である。フラスコ100は、上部プレート110、底部トレー120、側壁112、及び端部壁114によって定められた外側容器本体101(図1A参照)を有する。図1B及び図1Cの断面図でより明瞭にわかるように、フラスコ100内には個々の細胞増殖チャンバ111が配置されている。個々の細胞増殖チャンバ111は、それぞれ略透明な底面113及び略透明な上面115によって定められている。面113及び面115は、側壁112及び端部壁114に沿ってフラスコ本体101に取り付けられている。各チャンバ111内の少なくとも1つの底面113は、気体を透過させ液体を透過させない材料であって、細胞117の増殖が可能であるのが好ましい。各上面115は、細胞増殖チャンバ111に対する支持を提供する剛性の概ね気体を透過させない材料(好ましくは透明)であるのが好ましい。この実施形態では、支持部119は、気体透過膜113が、フラスコ本体101に対する漏れ防止シールがなされた状態で支持部119にしっかりと接着されるのを可能にするものである。各細胞増殖チャンバ111間には気管空間118が作られる。チャンバ111の対向する上面115は、細胞増殖チャンバ111の上部壁を定めると共に気管チャンバ118の底部を定める。従って、気管チャンバ118は、第1の細胞増殖チャンバの気体を透過させ液体を透過させない面113と、それと対向する第2の増殖チャンバ111の面115とを含む。支持部119は、更に、一体型のフラスコ101内で増殖チャンバ111と気管空間118とを交互に構成する際に、面113及び面115を一体に組み込むための構造的な構成を提供する。従って、各細胞増殖チャンバ111と気管チャンバ118とは、垂直方向に連なる位置に交互に配置されている。細胞増殖チャンバ111へのアクセス(接近/進入)性は、フラスコ本体101内のアパチャー120を介して達成される。首状の開口部121を有するアパチャー120は、マニホールド104を介して細胞増殖チャンバ111に接続されている。マニホールド104は、フラスコの内容物を操作するための入り口である。この実施形態では、首状の開口部121はキャップ122によって覆われており、漏れを生じずにフラスコを培地127で完全に満たすことができるようになっている。
【0027】
本発明の一実施形態では、多数の細胞増殖チャンバ111が装置100の本体101と一体となり、細胞の増殖のための栄養培地で完全に満たされることができる状態で、チャンバ111が気体透過膜113上での細胞増殖を可能にする。装置100を通る一続きの気管空間118は、装置の内部体積の細胞117と外部環境との間の気体の連通を提供する。気管空間118は、気体透過面113を介して、細胞増殖チャンバ111内に配置された培地の酸素化を可能にする。更に、気管チャンバ118は任意の空隙又は空間の形態をとってよく、液体を進入させないものである。その結果、大量の細胞117への均等なガス配分の利益を利用可能にするための、気管空間118と交互に配置された多数の増殖チャンバ111を有する剛性の細胞培養装置100が協調的に構成される。捕捉的に、フラスコのアパチャー120は、フラスコの内容物がこぼれるのを防ぐためのセプタム及び/又はキャップ122によって再密閉可能である。
【0028】
本発明の装置100は、当業者によく知られている任意の数の許容可能な製造方法で製造され得る。好ましい方法では、装置100は、個別に射出成形された部品の集まりから組み立てられる。実験器具の製造に通常用いられる、成形に適した任意のポリマーを用いてよいが、ポリスチレンが好ましい。必須ではないが、光学的な透明性のために、2mm以下の厚さを保つのが好ましい。
【0029】
底部トレー120及び上部プレート110は、射出成形されるのが好ましい。フラスコ本体101内での細胞培養117のための膜質層113の配置を容易にするために、様々なサイズ及び形状の支持部119が組み込まれ得る。本発明の別の実施形態の上面図(図2)は、フラスコ200のフレーム又はエッジ202に沿って隆起したスタンドオフ(stand-off)219としての支持部219を有する。支持部219は、フレーム202に接着された気体透過膜213を支持すると共にフラスコ200内に多数の層(剛性又は膜質の213)が構成されるのを可能にするための構造的な骨組みを提供する剛性構造体である。或いは、図3は内面313を示しており、ここでは、各細胞増殖チャンバ300の一部分のみが気体を透過させるようになっている。例えば、剛性フレーム302が透過膜313を支持してもよい。
【0030】
気体を透過させ液体を透過させない基体113は、当該技術分野で公知の1つ以上の膜で構成され得る。膜は、一般的に、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくは適合するフルオロポリマー、シリコーンゴム若しくはコポリマー、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、又はこれらの材料の組み合わせを含み得る適切な材料で構成される。製造及び細胞増殖に対する適合性が許す限り、様々なポリマー材料が用いられ得る。能力が知られている材料としては、ポリスチレンが膜(約0.003インチ(約0.076mm)の厚さであるが、他の様々な厚さでも細胞増殖は可能である)の好ましい材料であり得る。従って、膜は任意の厚さであってよく、約25〜250マイクロメートルが好ましいが、約25〜125マイクロメートルが理想的である。膜113は、フラスコの内部と外部環境との間の自由なガス交換を可能にするものであり、膜が細胞の増殖を支えるものでありさえすれば任意のサイズ又は形状をとり得る。好ましい実施形態は、更に、装置の製造、取り扱い及び操作に耐える膜113を含む。
【0031】
気体透過膜113は、接着剤若しくは溶媒接着、ヒートシール若しくは溶接、圧着、超音波溶接、レーザ溶接及び/又は部品間のシールを設けるために通常用いられる他の任意の方法を含むがこれらに限定されない任意の数の方法によって、適切に支持部119に取り付けられる。膜領域の周囲に気密シールを設けるために、膜が支持部132の表面と面一に溶着され装置の内面と一体の部分となるように、膜130の周囲をレーザ溶接するのが好ましい。気体透過膜130が接着されると、上部プレート110と底部トレー120とが接合され得る。これらの部品は、一体に保持され、継ぎ目に沿って接着剤で接着されるか、超音波溶接されるか、又はレーザ溶接される。部分的に又は完全に自動化された組み立てシステムでは、レーザ溶接装置を用いるのが好ましい。接合部の外周に沿ってレーザ溶接が行われる間、上部プレートとトレーは適切に位置決めされる。
【0032】
細胞の付着及び増殖を高めるために、装置100の内側の面は、細胞増殖が可能になるよう処理されるのが好ましい。処理は、プラズマ放電、コロナ放電、ガスプラズマ放電、イオン照射、電離放射線、及び高強度UV光を含む当該技術分野で公知の任意の数の方法によって達成され得る。
【0033】
最後に、キャップ122を設ける場合には、キャップは、スクリューキャップ、嵌め込み式キャップ、セプタム付きキャップ、空気穴付きキャップ、又は当該技術分野で公知の任意のキャップであってよい。キャップ122と一体になったセプタムを有するキャップ122を用いるのが好ましい。これにより、キャップを回して外さなくても、カニューレ、先端又は針が装置100の内容物にアクセスできる。セプタムは漏れを防ぐものであり、針、先端又はカニューレを刺し通すことができ、且つ、何度も刺し通した後でも、これらが装置から抜かれたら再シール可能なものである。一実施形態では、キャップ122は、端部壁114を介して装置100の内容物にアクセスするよう配置される。尚、キャップ122は上面110上に配置されてもよい。更に、キャップ122が、装置100の周囲によって決定される四角形の設置面積から突出しないようにキャップ構成を配置することもできる。アクセス性のための他の選択肢としては、キャップ122が装置本体101の設置面積から突出しないような、装置100の角の領域内にある首及びキャップ構成が含まれ得る。
【0034】
使用においては、本発明の装置100は、許容された細胞増殖方法に従って用いられる。細胞は、首を介してアパチャーを通して(又はアパチャー内のセプタムを通して)装置100に導入される。細胞が培地に浸かるように、細胞117と共に培地127が導入される。装置は、細胞を含む培地が細胞増殖面113を覆うように構成される。気管空間118と組み合わされた気体透過膜113が、細胞増殖面113への均一なガス配分を提供するので、装置100を培地で完全に満たすことができる点が長所である。これにより、フラスコ内部と外部環境との間のガスの流れ及び交換が更に確実になる。次に、装置は培養器内に配置され、複数の細胞培養が同時に増殖されるように同様の容器と積み重ねられ得る。装置は、底部トレー120が水平位置(又は細胞培養の用途によっては垂直位置)をとるように配置される。本発明の装置101の別の長所は、装置を180度回転させると、反対側の面115上でも増殖細胞を行える高められた能力である。従って、装置を回転させれば、別の面115上で細胞培養を行うことができる。従って、面115を気体透過性の材料で構成すると有益である。従って、装置内で気体透過膜のみが層を構成する場合には、気体透過面113/115の両方で細胞増殖を行うことができる。
【0035】
細胞増殖は、装置100の略透明な内面及び外面を通した顕微鏡検査によって時折監視される。外部本体101に可変倍率を有する光学レンズを用いれば、より容易なアクセス性及び細胞増殖のより高い視認性が提供される。更に、光学レンズは、装置100の他の内面に統合されてもよい。
【0036】
更に、細胞増殖プロセス中に、消耗した培地を取り出して新鮮な培地を入れることが必要になり得る。上述したように、培地の交換は、例えばセプタムを通してカニューレを挿入することによって達成され得る。或いは、キャップ122を外す選択肢を提供する実施形態では、培地は、キャップ122を外して交換され得る。細胞の収穫が可能になったら、セプタムを通して装置にトリプシン等の化学添加剤が投入される。トリプシンは、装置の面から細胞を剥離する効果を有する。そして、フラスコから細胞を収穫することができる。
【0037】
しかし、本発明の装置400(図4)では、キャップ及び首の構成は必要ではない。この実施形態で示されるように、支持部432は、各増殖層450間の一続きの気管空間440を離間させるものである。気管空間は、フラスコ400内の各細胞培養層450への均一なガス配分を提供する。この実施形態では、各チャンバ450は分かれたものであって、装置400の組み立てを容易にするためのモジュール状のユニット450であると見なすこともでき、個々の細胞増殖チャンバ内の培地は混ざらない。しかし、チャンバ450は、中空の支持部432を介して相互接続されてもよい。一実施形態では、装置400の内部へのアクセスは、各細胞培養/培地層450へのアクセス性を可能にするための端部壁414上の差し込まれたポート又はアパチャー460を通して直接達成され得る。別の容易なアクセス手段として、アパチャー460の覆いとしてのセプタムを用いてもよい。
【0038】
セプタムは、膜を装置の壁に取り付けるための上述の方法のいずれかによって、装置400の本体に一体に取り付け可能である。セプタムは、国際公開第02/066595号パンフレット(その内容をここに参照することにより本願明細書に組み込む)に概ね記載されているような、鈍い針に有用なスリット構成を含む、当業者によく知られている任意の形態をとってよい。セプタムを作るのに用いられ得る材料としては、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ブチルゴム、ポリクロロプレンゴム、シリコーンエラストマー複合材料、熱可塑性エラストマー、医療グレードのシリコーンゴム、ポリイソプレン、合成イソプレン、シリコーン、サントプレン(登録商標)及びフルオロポリマーラミネート、並びにこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない天然及び合成エラストマー材料が含まれる。好ましい実施形態では、エラストマー材料は、培養される細胞に対して実質的に毒性のないものである。更に、個々の細胞増殖層450へのアクセスを可能にしつつ各アパチャー460を1つの全体用のセプタムで覆ってもよい。このフラスコ400の実施形態は、装置400を積み重ねる必要がある場合に、又は、キャップを外す必要がなくなるので、かなりのロボット操作が行われる場合に、好ましいものとなり得る。
【0039】
図5及び図5Aは、本発明の別の実施形態を示す。内部及び外部の部分断面図にそれぞれ示されるように、本発明の多層型培養容器501は潅流システム500である。多数の気体透過性基体530が支持部/フレーム532に接着され、平行な構成に積み重ねられており、気道又は気管空間540が各細胞増殖層550を分けるのを可能にしている。上述の実施形態のように、気管チャンバ540と組み合わされた気体透過性基体/膜530が細胞培養システム500を定めている。透明な気体透過膜530及び支持部532の層と交互に配置された気管空間540は、気体透過性基体530の別の即ち反対側の面上の培地及び細胞培養550との空気/ガス交換を提供する。従って、装置501内の液体培地は、層550内に収容されることができる。更に、各細胞増殖面550の下の気管空気室540は、装置の外部本体501内の支持部532間に形成された一続きの開口部541を介して、細胞/培地層550と外部環境との間で気体を流通させる。首状の開口部560は、入口562を定める1つのアパチャーと、出口564を定める1つのアパチャーとを有する。入口566及び出口568は、首状の開口部560と共に、装置500の内部体積/層550へのアクセスを可能にする。更に、この装置/容器501の実施形態では、スタンドオフ580として機能する隆起したリム580が上部プレート510及び底部プレート520の表面に配置されている。スタンドオフ・リム580は、装置501の上に積み重ねられた同一構成の容器の底部トレー520に接触することを意図したものである。積み重ねることで、培養器の空間を効率的に用いることができる。スタンドオフ・リム580を有することの別の特性は、積み重ねられたフラスコ間に空隙を設けることが可能なことである。この空隙は、装置501の上側又は下側の面に組み込まれ得る任意の通気口を通したガス交換を可能にするために重要であると共に、気体透過膜530の損傷を防ぐ。スタンドオフ580の他の代替形態としては、隆起したコーナー部、柱部、出っ張り部、又は、次々と積み重ねられたフラスコ間の離間を可能にする他の任意の特徴物が含まれる。積み重ねられた容器の横方向の安定性を確保するために、底部プレート520は、周囲に、隣接する装置のスタンドオフ・リム580と係合可能なリム580を有するように成形されるのが好ましい。
【0040】
限定ではなく例示の目的で、入口566及び出口568を介して、細胞の苗、培地交換、及び/又は細胞収穫のためのアクセスが可能である。入口及び出口566/568と組み合わされた、直線状の流量制限器564は、細胞の収穫中に流れを均等に方向付けるためのマニホールドとして作用可能である。更に、限定ではなく例示の目的で、本発明の一実施形態は、容器501を通る連続的な流れ、即ち潅流を可能にするための、支持部532と共に気体透過性基体530の互い違いの構成を組み込んだものである。しかし、層550及び積み重ねられる基体530の様々な構成により、平行、対称又は非対称構成を含む、静的な細胞培養又は上述の潅流系における細胞培養のために容器501を用いることが可能になろう。
【0041】
多層型装置501のアクセス性及び製造を容易にするために、細胞増殖層550及び積み重ねられる基体530を個々のモジュールユニットとした構成が好ましいこともあり得る。従って、図6には、本発明の一実施形態のモジュールユニットが示されている。個々のモジュールユニット600は、気体透過膜/基体630と組み合わされた支持ネットワーク632を有する。複数のモジュールユニット600は、相互接続及び/若しくは相互連結、又は一体に接着されて、細胞培養のための一体型の多層型容器として容易に組み立て・分解可能な多数の増殖面630/631を提供することが可能である。モジュールユニット600を垂直方向に積み重ねることは、建築用ブロックを相互接続することと似ている。任意の数の細胞増殖層600を組み立て又は分解して、各細胞増殖モジュールユニット600への広範囲のアクセス性の選択肢を提供できる。本発明の一実施形態では、フレーム633内部の距離に延在する又は距離を二等分する横方向のリブ635に加えて、個々のユニット600の周囲に沿った棚/フレーム633を構成する支持部632を用いる。透明な気体透過性基体630は支持部632に接着され、多数のトレーが1つの容器本体として組み立てられた際に一体型の装置全体へのガス配分を可能にするための空隙即ち気管空間640が気体透過性基体630の各細胞層間に形成される。気管空間640は、外部フレーム633の気管開口部/ポート641を介して、外気とのガス交換をする。更に、気管空間640は、(一次的な)面630上及び別の即ち二次的な面631上の培地及び細胞培養との空気/ガス交換を提供する(面630/631は共に細胞増殖が可能である)。この実施形態でわかるように、支持系632の周囲リッジ又は隆起637は、モジュールユニット600の積み重ねを容易にするために用いられる。しかし、気体透過膜630は、支持系632又は周囲エッジ637の任意の面に接着されて、モジュールユニット600と組み合わされた漏れを生じない気体透過性基体630を提供し、更に、気体透過面630/631上の細胞増殖のための多数の領域の提供を可能にし得る。更に、フレーム632の開放端633は、多数のモジュールユニット600が積み重ねられて、潅流装置で用いられる一体のものとして接着された際に、流体の流れを可能にするための特徴である。更に、本発明の装置の一実施形態は、一次的な増殖面630を提供する気体透過性基体630と、フレームネットワーク632の下側に接着された二次的な増殖面631を提供する(オプションの)気体透過性基体631とを含む。
【0042】
図7からわかるように、本発明の別の実施形態では、アパチャー760を覆うキャップ762を含むモジュールユニット700を用いる。マニホールド764は、内部の細胞培養層750へのアクセスを可能にする。個々のユニット600及び/又は700を積み重ねれば、一体型の細胞培養チャンバを構成できる。更に、組み合わされた際には、内部の細胞培養層650及び/又は750には、一体型の細胞培養チャンバのアパチャー760を介してアクセスできる。
【0043】
本発明の容器を用いる際には、許容された細胞増殖のための培養に従って、当該産業における様々な方法が用いられ得る。上述の実施形態で述べたように、細胞は、首を通して又はセプタムを通してフラスコに導入される。細胞が培地に浸かるように、細胞と共に培地が導入される。装置は、細胞を含む培地が細胞増殖面を覆うように構成される。気管空間と組み合わされた気体透過膜が、細胞増殖面への均一なガス配分を提供するので、装置を培地で完全に満たすことができるのが長所である。これにより、フラスコ内部と外部環境との間でのガスの流れ及び交換が更に確実になる。次に、装置は培養器内に配置され、複数の細胞培養が同時に増殖されるように同様のフラスコと積み重ねられ得る。フラスコは、底部トレーが水平位置(又は細胞培養の用途によっては垂直位置)をとるように配置される。フラスコを回転させると、別の面での細胞培養が可能になる。装置内で気体透過膜のみが層を構成する場合には、膜の上面及び下面(互いに反対側にある気体透過面)で細胞増殖を行うことができる。
【0044】
細胞増殖は、略透明な面を通した顕微鏡検査によって時折監視できる。細胞増殖層のより詳細な目視検査が必要な場合には、装置の本体又はフレームに光学レンズを統合することができる。従って、可変倍率を有する光学レンズを用いれば、装置を分解せずに、個々の層の中を見ることができる。好ましくは、観察分析のためにユニットを分解できる場合には、光学レンズは任意の面又はモジュールユニットに組み込まれてもよい。
【0045】
細胞増殖プロセス中には、消耗した培地を取り出して新鮮な培地を入れることが必要になり得る。上述したように、培地の交換は、例えばセプタムを通してカニューレを挿入することによって達成され得る。或いは、キャップを外す選択肢を提供する実施形態では、培地は、キャップを外して交換され得る。細胞の収穫が可能になったら、セプタムを通してフラスコにトリプシン等の化学添加剤が投入される。トリプシンは、容器の面から細胞を剥離する効果を有する。そして、装置から細胞を収穫することができる。
【0046】
上述したように、本発明の実施形態は例示のみを目的とし、本発明を限定するものではない。補足的に、トレーが互いに積み重ねられた際には、支持ネットワークの上方及び/又は下方に気管空間を形成でき、ユニットが相互接続されると、個々のモジュールユニットの周囲リッジにより、空隙の空気が気体透過性基体を通って細胞増殖領域まで流れるのが可能になる。個々のユニット内に形成された気管空間は、更に、気体透過膜と支持部及び空気/気管空間とが交差し且つ/又は交互になった多様な支持部のネットワークを含むことが可能である。
【0047】
本発明の実施形態で用いられる気体透過性基体は、細胞増殖及び外部環境とのガス交換が可能であり、細胞培養容器全体への均一なガス配分を達成する。更に、本発明の装置は、細胞増殖領域への均一なガス配分のために構成された面を有する水平又は垂直設計を用い得る。図8の本発明の一実施形態でわかるように、垂直増殖面、即ち気体透過性基体830は、気管空間840によって離間されている。気管空間840は、細胞に増殖する時間が与えられている間に装置800が格納される場合に、細胞が増殖する呼吸/気体透過面830と培養器又は外気との間での酸素、二酸化炭素及び他の様々なガスの交換を可能にする。本発明の装置800は、キャップ862及び/又は容器本体800と一体のマニホールド864も含み得る。
【0048】
本発明の別の実施形態(図9)は、上述のようにセプタムを介した個々の細胞増殖層930へのアクセスを可能にする外部マニホールド965を含む装置900である。ユニット930はモジュールになっており、接合されて一体のものとして取り扱われる。更に、気管空間940は、フラスコ900全体の細胞増殖領域930への均一なガス配分を可能にする。細胞増殖の条件の均一性には、単位表面積当たりの決定された培地体積が含まれ得る。単位表面積当たりの体積の決定された割合は、約0.5〜1.0ml/cmの制限された範囲内であることが以前から知られているが、細胞が増殖されている気体透過膜を介して細胞は直接ガス交換を行えるので、もはやこの割合に制限されることはない。依然として培地を効率的に用いることが好ましいが、本発明の装置では、任意の体積の培地を用いてよく、本発明の装置は任意のサイズ及び/又は任意の形状をとり得る。更に、本発明の強化された能力として、細胞増殖チャンバと組み合わされた気管空間を、標準的な又は従来のサイズの容器に組み込むことができる。本発明の装置の一実施形態は、好ましくは単位表面積当たりの培地体積が約0.25〜0.50ml/cmの範囲である、細胞増殖のためのより多くの表面積を含むが、細胞増殖のための寸法及び範囲は無制限である。このような一実施形態では、高さは約2.8mmである。しかし、上述のように、細胞増殖のための領域が提供される限り、高さは制限されない。更に、細胞増殖チャンバを培地で完全に満たすことにより、細胞は最適な栄養交換が可能になる。
【0049】
本発明の実施形態は、当該産業で現在用いられている任意の道具、入れ物、装置、容器又はフラスコの形状をとるよう変更され得る。具体的には、細胞増殖のための改良された培養環境を提供するために、円筒形やそれに代わる形状の容器において、気管チャンバ又は空間と組み合わされた(容器内の)気体透過性基体を用いてもよい。従って、気管チャンバを含む螺旋形又はそれに代わる形状のアプローチが可能である。更に、気管チャンバは多くの形態及び任意のサイズをとり得るが、通路状のチャンバは、a)限定空間であり、b)細胞増殖が可能な気体透過膜と連通しており、c)開放された直接アクセス及び/又は更なる気体透過膜を介して外部環境と連通している。
【0050】
ここに示したように、本発明の複数の実施形態は、当該産業で現在用いられている標準的な容器に対する幾つかの改良を提供する。改良された細胞培養装置は、従来の細胞培養容器によって囲まれる容積内で培養可能な細胞の体積を顕著に高める。一体型の容器として組み立てられる気体透過膜の多層構成には、様々な長所がある。個々の増殖チャンバと気体透過膜を含む気管チャンバとを連続的な層構造にすることにより、装置の内容物が外部環境からの酸素及び他のガスを利用可能になる。具体的には、少なくとも1つの潜在的な増殖面上で気体透過膜が用いられる場合には、栄養培地とのガス交換により、細胞増殖の均等な分布がもたらされる。この細胞増殖装置は、細胞による最適な体積の栄養培地及び気管空間を介した直接的な酸素化の利用を可能にすることによって、その能力を完全に用いることができる。外部の骨組みが剛性構造を有する細胞培養装置には、容易な取り扱い、格納、及びアクセス性が提供されるという更なる長所がある。
【0051】
一実施形態において、本発明は、マイクロプレートの業界標準(5.030(±0.010)インチ×3.365(±0.010)インチ(約12.776(±0.025)cm±×約8.547(±0.025)cm))に準拠する設置面積を有する。このため、首部は、全体的な四角形の設置面積内に収まるように設けられるのが好ましい。このような設置面積を有する装置を提供することの長所は、この装置と共に、マイクロプレートを操作するために特に設計された自動装置を、カスタマイズ変更をほとんど行わずに用い得ることである。同様に、高さ、即ち底部トレーの最外部と上部プレートの最外部との間の距離は、約0.685±0.010インチ(約1.740±0.025cm)である。いずれにしても、本発明が上述の好ましい寸法に限定されることは決して意図されず、実際には任意の寸法に構成され得る。
【0052】
ここに例示したように、本装置は、基体を連なるように一体に組み込むことができる任意の一体型の構造、容器、装置又はフラスコを含み得る。以上、本発明を説明したが、本開示の利益を得た当業者によって本発明が様々に変形され得ることは明らかである。そのような変形は本発明の精神及び範囲から離れたものとは見なされず、当業者に自明なそのような変更は、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的な均等物に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の装置の例示的な実施形態の外部の斜視図。
【図1B】本発明の例示的な実施形態の側断面斜視図。
【図1C】図1Aの内部の支持部及び気体透過性増殖面を示す内部の部分側面図。
【図2】本発明の別の実施形態で用いられる支持部の上面図。
【図3】本発明の別の実施形態の気体透過膜を支持するフレームの外部の上面図。
【図4】本発明の別の例示的な実施形態の側断面図。
【図5−1】図5は本発明の一実施形態の相互接続されたチャンバの内部の側面図。
【図5−2】図5Aは図5の実施形態の外部フレーム/本体の側面図。
【図6】本発明の一実施形態の個々のユニットを示す図。
【図7】本発明の一実施形態の別の個々のユニット又はトレーを示す図。
【図8】本発明の別の実施形態を示す図。
【図9】本発明の別の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0054】
100 フラスコ(容器、細胞培養装置)
101 外側容器本体
104 マニホールド
110 上部プレート
111 細胞増殖チャンバ
120 底部トレー
112 側壁
113 底面(気体透過膜)
115 上面
114 端部壁
118 気管空間(気管チャンバ)
119 支持部
120 アパチャー
121 開口部
122 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を透過させ液体を透過させない面及び該面と対向する面を各細胞増殖チャンバが有する複数の細胞増殖チャンバと、
少なくとも1つの前記細胞増殖チャンバの少なくとも1つの前記気体を透過させ液体を透過させない面と連通する少なくとも1つの気管チャンバと
を備えることを特徴とする細胞増殖装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの気管チャンバ及び前記複数の細胞増殖チャンバが少なくとも1つの一体型のユニットとして組み合わされることを特徴とする請求項1記載の細胞増殖装置。
【請求項3】
各前記細胞増殖チャンバと前記気管チャンバとが、連なる位置に交互に配置されることを特徴とする請求項2記載の細胞増殖装置。
【請求項4】
前記細胞増殖チャンバが前記気管チャンバと隣接し且つ該気管チャンバと連通することを特徴とする請求項3記載の細胞増殖装置。
【請求項5】
前記気管チャンバが、前記細胞増殖チャンバの前記気体を透過させ液体を透過させない面と外気との間でのガス交換を可能にすることを特徴とする請求項2記載の細胞増殖装置。
【請求項6】
前記一体型のユニットが各前記細胞増殖チャンバへの少なくとも1つのアクセス口を有することを特徴とする請求項2記載の細胞増殖装置。
【請求項7】
最適な細胞−栄養交換のために前記細胞増殖チャンバを培地で完全に満たすことができることを特徴とする請求項2記載の細胞増殖装置。
【請求項8】
気体を透過させ液体を透過させない面及び該面と対向する面を有する少なくとも1つの細胞増殖チャンバと、
前記少なくとも1つの細胞増殖チャンバの少なくとも1つの前記気体を透過させ液体を透過させない面と連通する少なくとも1つの気管空間と、
を備え、
前記少なくとも1つの気管空間が、外部環境と連通する空気室であり、外側容器本体によって囲まれることを特徴とする細胞増殖装置。
【請求項9】
請求項1記載の細胞増殖装置で細胞を培養する方法であって、
(a)前記気体透過性基体を所望の構成に組み立てる工程と、
(b)前記細胞及び/又は培地を前記装置の前記細胞培養チャンバに導入する工程と、
(c)前記装置をインキュベートする工程と
を有してなる方法。
【請求項10】
前記気体を透過させ液体を透過させない面と対向する面上で細胞を培養するために前記装置を回転させる工程
を更に含むことを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−502165(P2009−502165A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523932(P2008−523932)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/027475
【国際公開番号】WO2007/015770
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】