説明

多層埋め込みCu配線形成方法及び多層埋め込みCu配線構造

【課題】 埋め込みCu配線を多層化する工程の途中に露出するCu配線の露出面の酸化や変質を効果的に防止することができる多層埋め込みCu配線形成方法及び多層埋め込みCu配線構造を提供すること。
【解決手段】 SiO2絶縁層10を形成するとともにSiO2絶縁層10に埋め込みCu配線15を形成しさらにSiO2絶縁層10の表面を化学機械研摩法によって平坦化せしめる工程を複数回繰り返すことによって半導体ウエハ表面に多層埋め込みCu配線を形成していく。前記平坦化の際に露出するCu配線15の露出面にAg保護膜17を形成する。Ag保護膜17の形成は、Cu配線15の露出面をAgで置換メッキすることによって行なう。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハなどの基材表面に設けられる多層埋め込みCu配線の形成方法及びその構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来半導体素子用の配線として一般にアルミニウム合金が用いられてきたが、半導体素子の高集積化に伴い、配線の低抵抗化,耐マイグレーション性向上の観点から、配線としてCu(銅)を用いる埋め込みCu配線(ダマシン法)、更にこれを多層化した多層埋め込みCu配線が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら多層埋め込みCu配線を形成しようとした場合、以下のような問題点があった。
【0004】■図5(a)に示すように、Cu配線111を埋め込んだSiO2絶縁層110の表面に、多層化のため次のCu配線用のSiO2絶縁層120を形成しようとした際に、Cu配線111の露出面111aが酸化されてしまう。
【0005】■図5(b)に示すように、Cu配線111を埋め込んだSiO2絶縁層110の表面に、多層化のために積層したSiO2絶縁層120内に該Cu配線111と接続するプラグ形成用の穴121を設けるために、SiO2絶縁層120の表面に設けたレジスト層130の穴131からエッチャント(エッチングガス)にてSiO2絶縁層120をエッチングする際に、該エッチャントによってCu配線111の露出面111aが変質してしまう。
【0006】■図5(c)に示すように、前記図5(b)に示すレジスト層130を酸素を用いて取り除く際に、Cu配線111の露出面111aが酸化されてしまう。
【0007】本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、埋め込みCu配線を多層化する工程の途中に露出するCu配線の露出面の酸化や変質を効果的に防止することができる多層埋め込みCu配線形成方法及び多層埋め込みCu配線構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため本発明は、絶縁層を形成するとともに該絶縁層に埋め込みCu(銅)配線を形成しさらに該絶縁層の表面を平坦化せしめる工程を複数回繰り返すことによって基材表面に多層埋め込みCu配線を形成する多層埋め込みCu配線形成方法において、前記平坦化の際に露出するCu配線露出面にAg(銀)保護膜を形成することとした。これによってCu配線の酸化や変質が防止できる。また本発明は、前記Cu配線露出面へのAg保護膜の形成を、Cu配線露出面をAgで置換メッキすることによって行なうこととした。これによってAg保護膜がCu配線の露出面のみに選択的に形成でき、またAg保護膜が厚膜化せずCu中のAgの量を少なくでき、Cu−Ag系は非固溶系なので相互拡散しても抵抗値が大きくなりにくい。また本発明は、基材表面に埋め込みCu配線を設けた絶縁層を複数層形成してなる多層埋め込みCu配線構造において、前記Cu配線の表面にAg保護膜を形成した。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。即ち本発明においては図1に示すように、半導体ウエハ表面に設けたSiO2絶縁層10内に埋め込むようにCu配線15を形成し、このCu配線15の表面を含むSiO2絶縁層10表面全体を、化学機械研摩法(CMP法)によって平面化した後、この半導体ウエハをシアン化銀水溶液中に浸漬することによって、Cu配線15の露出面のみを置換メッキし、該Cu配線15の露出面のみに薄いAg(銀)保護膜17を形成する。なお図1では説明の都合上、Ag保護膜17の厚みを厚く記載しているが、実際はCu配線15の露出面の表層のみに形成され、極めて薄い。
【0010】Ag保護膜17を形成する置換メッキの反応式は図2に示す通りである。置換メッキは金属のみと反応するので、SiO2絶縁層10とは反応せず、従ってCu配線15の露出面のみに選択的にAg保護膜17を形成することができ、好適である。
【0011】また置換メッキなのでAg保護膜17は極めて薄くでき厚膜化する恐れはなく、Ag保護膜17を構成するAg量が少なくて済む。
【0012】ここで図3は非固溶系であるCu−Ag共晶合金の組成割合と温度T0における抵抗率の関係を示す図である。同図に示すようにCuが100〔%〕に近い場合(点ρB)は、抵抗値はCu単体の場合とほとんど同一で小さいことが分かる。従って前述のようにAg保護膜17が薄くてAg量が少ないと、AgとCu間で相互拡散したとしても全体としての抵抗値はほとんど上がらない。
【0013】そして図4(a)に示すように、Ag保護膜17を設けたSiO2絶縁層10の上に、多層化のために次の埋め込みCu配線形成用のSiO2絶縁層20が形成されるが、その際にAg保護膜17がCu配線15の酸化を防止する。
【0014】また図4(b)に示すようにSiO2絶縁層20にプラグ形成用の穴21を設けようとした場合は、SiO2絶縁層20上にレジスト層30を設け、該レジスト層30に設けた開口31からSiO2絶縁層20をフッ素や塩素からなるエッチャントによってエッチングするが、その際エッチャントはAg保護膜17に触れるだけでCu配線15には触れず、従ってCu配線15が変質することもない。
【0015】またさらに図4(b)に示すレジスト層30は、図4(c)に示すようにアッシングで酸化されて除去されるが、その際にもAg保護膜17がCu配線15の酸化を防止する。
【0016】なお上側のSiO2絶縁層20にプラグや図示しないCu配線を埋め込んでSiO2絶縁層20表面を化学機械研摩した後、更にその上にCu埋め込み配線用のSiO2絶縁層を形成する場合は、再びSiO2絶縁層20表面の図示しないCu配線露出面に置換メッキによってAg保護膜を形成すれば良い。
【0017】なお上記実施形態では化学機械研摩法によって埋め込みCu配線の表面を平坦化したが、この平坦化工程は化学機械研摩法以外の各種方法によって行なっても良い。
【0018】また上記実施形態ではCuを置換メッキするためにシアン化銀水溶液を用いたが、その代りに硝酸銀水溶液など、他の液体を用いても良い。
【0019】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば以下のような優れた効果を有する。
■Cu配線露出面にAg保護膜を形成することとしたので、Cuの酸化と変質が防止でき、スループットが向上する。
【0020】■Cu配線露出面へのAg保護膜の形成を置換メッキで行なったので、別途マスクなどを設けなくても、Ag保護膜がCu配線露出面のみに選択的に形成できてその工程が簡単に行なえるばかりか、Ag保護膜を極めて薄く形成できるので、Cu中に拡散するAgの量を極めて少なくでき、抵抗値が上昇しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SiO2絶縁層10内に形成したCu配線15にAg保護膜17を形成する方法を示す斜視図である。
【図2】Ag保護膜17を形成する置換メッキの反応式を示す図である。
【図3】Cu−Ag共晶合金の組成割合と温度T0における抵抗率の関係を示す図である。
【図4】本発明にかかるAg保護膜17の作用を説明するための図である。
【図5】従来の多層埋め込みCu配線の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
10 SiO2絶縁層
15 Cu配線
17 Ag保護膜
20 SiO2絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁層を形成するとともに該絶縁層に埋め込みCu(銅)配線を形成しさらに該絶縁層の表面を平坦化せしめる工程を複数回繰り返すことによって基材表面に多層埋め込みCu配線を形成する多層埋め込みCu配線形成方法において、前記平坦化の際に露出するCu配線露出面にAg(銀)保護膜を形成することを特徴とする多層埋め込みCu配線形成方法。
【請求項2】 前記Cu配線露出面へのAg保護膜の形成は、Cu配線露出面をAgで置換メッキすることによって行なうことを特徴とする請求項1記載の多層埋め込みCu配線形成方法。
【請求項3】 前記絶縁層の表面の平坦化は化学機械研摩によって行なうことを特徴とする請求項1又は2記載の多層埋め込みCu配線形成方法。
【請求項4】 基材表面に、埋め込みCu配線を設けた絶縁層を複数層形成してなる多層埋め込みCu配線構造において、前記Cu配線の表面にAg保護膜を形成したことを特徴とする多層埋め込みCu配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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