説明

多層延伸フィルム

【課題】 ゴム粒子を含有するものでありながら、耐加熱白化性に優れた多層延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の多層延伸フィルムは、メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物(a)からなる層(A)の両方の面に、アクリルゴム粒子を含まない熱可塑性樹脂組成物(b)からなる層(B)が積層されてなることを特徴とする。かかる多層延伸フィルムにおいては、前記メタクリル樹脂組成物(a)は、メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子とを、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=20:80〜97:3の割合で含有するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加熱白化性に優れる多層延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂をフィルム化し、これを延伸してなるアクリル延伸フィルムは、透明性に優れるという利点を活かし、光学フィルムや偏光子保護フィルムなど様々な用途に利用されている。そして、これまでから、かかるアクリル延伸フィルムの性能や特性を向上もしくは改良させるべく、当該アクリル延伸フィルムに対してゴム粒子を添加するという種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、単層のアクリルフィルムにゴム粒子を添加することにより、フィルムに可とう性を付与するとともに、その耐衝撃性を向上させうるようにした単層延伸アクリルフィルム(特許文献1)や、多層のアクリルフィルムにおける表面層にアクリルゴム粒子を添加することにより、フィルム表面の滑り性を向上させ、フィルムを巻き取り易くした多層延伸アクリルフィルム(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−299096号公報
【特許文献2】国際公開2008/136346号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載のようなゴム粒子を含有する延伸アクリルフィルムには、延伸時の加熱によって白化が生じてしまうという問題があった。そのため、ゴム粒子を含有する延伸アクリルフィルムにおける耐加熱白化性(すなわち、熱により白化し難い特性)を向上させる技術が要望されていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ゴム粒子を含有するものでありながら、耐加熱白化性に優れた延伸フィルム(多層延伸フィルム)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物を用いる延伸フィルムにおいて、そのフィルム構成を、該メタクリル樹脂組成物からなる層の両方の面にアクリルゴム粒子を含まない熱可塑性樹脂組成物からなる層を積層した多層構成とすることにより、耐加熱白化性を格段に向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物(a)からなる層(A)の両方の面に、アクリルゴム粒子を含まない熱可塑性樹脂組成物(b)からなる層(B)が積層されてなることを特徴とする多層延伸フィルム。
(2)前記メタクリル樹脂組成物(a)が、メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子とを、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=20:80〜97:3の割合で含有するものである前記(1)に記載の多層延伸フィルム。
(3)前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを共押出成形して得られる多層フィルムが延伸されてなる前記(1)又は(2)に記載の多層延伸フィルム。
(4)前記延伸が二軸延伸である前記(3)に記載の多層延伸フィルム。
(5)前記延伸における延伸方向への延伸倍率が1.1〜3.0倍である前記(3)又は(4)に記載の多層延伸フィルム。
(6)全体の厚さが10〜250μmである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
(7)前記熱可塑性樹脂組成物(b)が、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を樹脂成分とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
(8)前記メタクリル樹脂組成物(a)に含まれるメタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、これら以外の単量体を0〜49重量%とを重合させてなる重合体である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
(9)前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%と、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%と、単官能単量体を0〜49.9重量%と、多官能単量体を0.1〜10重量%とを重合させてなる弾性重合体を含有するとともに、この弾性重合体部の平均粒子径が40〜800nmである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
(10)前記アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体部の外側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、単官能単量体を0〜50重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体からなる層を備えた粒子である前記(9)に記載の多層延伸フィルム。
(11)前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜30重量%と、単官能単量体を0〜30重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体を含有する前記(9)又は(10)に記載の多層延伸フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴム粒子を含有するものでありながら、耐加熱白化性に優れた多層延伸フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の多層延伸フィルムは、メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物(a)からなる層(A)の両方の面に、アクリルゴム粒子を含まない熱可塑性樹脂組成物(b)からなる層(B)が積層されてなるものである。
【0011】
層(A)の形成材料である前記メタクリル樹脂組成物(a)は、樹脂成分としてメタクリル樹脂を含有するものである。
前記メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルとこれ以外の単量体(具体的には、アクリル酸アルキルや、メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと共重合可能な単量体)との共重合体であってもよい。ここで、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸のアルキルエステルが用いられる。なお、メタクリル樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0012】
前記メタクリル酸アルキルとしては、通常、アルキル基の炭素数が1〜8であるもの、好ましくは1〜4であるものが用いられる。具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、これらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。メタクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0013】
前記アクリル酸アルキルとしては、通常、アルキル基の炭素数が1〜8であるもの、好ましくは1〜4であるものが用いられる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0014】
前記メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと共重合可能な単量体(以下、「メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体」と称することもある)は、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよいが、単官能単量体が好ましく用いられる。ここで、単官能単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きアルケニルシアン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド;等が挙げられる。また、多官能単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンの如き芳香族ポリアルケニル化合物;等が挙げられる。メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0015】
前記メタクリル樹脂を構成する単量体成分(前記メタクリル酸エステル、前記アクリル酸アルキル、および前記メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体)の組成は、全単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体が0〜49重量%であることが好ましく、より好ましくは、メタクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50重量%、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体が0〜49重量%であるのがよい。
【0016】
前記メタクリル樹脂は、前述した単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の方法で重合させることにより調製することができる。その際、好適なガラス転移温度に調整するため、もしくは多層延伸フィルムを作製する際に好適な成形性を示す粘度を得るため、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体成分の種類やその組成などに応じて、適宜決定すればよい。
【0017】
前記メタクリル樹脂のガラス転移温度は、通常40℃以上、好ましくは60℃以上である。メタクリル樹脂のガラス転移温度が40℃未満であると、層(A)の耐熱性が低下するおそれがある。このメタクリル樹脂のガラス転移温度は、メタクリル樹脂を構成する単量体成分における各単量体の種類やその割合を調整することにより、適宜設定することができる。なお、メタクリル樹脂のガラス転移温度は、例えば後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
層(A)の形成材料である前記メタクリル樹脂組成物(a)は、前記メタクリル樹脂とともに、弾性重合体部を有するアクリルゴム粒子をも含有する。かかるアクリルゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層(弾性重合体層)を有するものであり、弾性重合体のみからなる単層の粒子であってもよいし、弾性重合体層と硬質重合体からなる層(硬質重合体層)とによって構成される多層構造の粒子であってもよい。なお、アクリルゴム粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0019】
前記アクリルゴム粒子が多層構造を有する場合には、その層構成は、特に限定されず、例えば、内層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる2層構造、内層(硬質重合体層)/外層(弾性重合体層)からなる2層構造、内層(硬質重合体層)/中間層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる3層構造、内層(弾性重合体層)/中間層(硬質重合体層)/外層(弾性重合体層)からなる3層構造、内層(弾性重合体層)/内層側中間層(硬質重合体層)/外層側中間層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる4層構造等が挙げられる。また、これら層構造のうち最も外側が硬質重合体層である構造において、さらにその外側が異なる組成の硬質重合体層で覆われた構造、具体的には、例えば、内層(弾性重合体層)/中間層(硬質重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる3層構造、内層(硬質重合体層)/内層側中間層(弾性重合体層)/外層側中間層(硬質重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる4層構造等であってもよい。
【0020】
前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部は、少なくとも弾性重合体を含む部分であり、具体的には、アクリルゴム粒子が弾性重合体のみからなる単層の粒子である場合には、当該アクリルゴム粒子の全てを意味し、他方、アクリルゴム粒子が多層構造を有する粒子である場合には、アクリルゴム粒子を構成する層のうち最も外側にある弾性重合体層と該弾性重合体層に覆われる内部とを意味するものとする。すなわち、アクリルゴム粒子の弾性重合体部は、該ゴム粒子を構成する全ての弾性重合体層を包含する。例えば、アクリルゴム粒子が内層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる2層構造である場合には、内層のみが弾性重合体部に該当し、アクリルゴム粒子が内層(硬質重合体層)/中間層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる3層構造である場合には、内層および中間層が弾性重合体部に該当し、アクリルゴム粒子が内層(弾性重合体層)/中間層(硬質重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる3層構造である場合には、内層のみが弾性重合体部に該当する。
【0021】
前記アクリルゴム粒子を構成する弾性重合体層は、アクリル酸アルキルと多官能単量体とを含み、必要に応じてメタクリル酸アルキルや他の単官能単量体をも含む単量体成分を重合させてなる弾性重合体で形成されることが好ましい。
【0022】
前記弾性重合体層を形成する際に用いられるアクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するアクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのように炭素数が4〜8であるアルキル基を有するものが好ましく挙げられる。なお、これらアクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0023】
前記弾性重合体層を形成する際に用いられる多官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例として前述した多官能単量体の如く、いわゆる架橋剤やグラフト剤としての機能を示すものであればよい。具体的には、前記メタクリル樹脂を構成する多官能単量体と同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましく挙げられる。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
前記弾性重合体層を形成する際に任意に用いられるメタクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられる。なお、これらメタクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記弾性重合体層を形成する際に任意に用いられる他の単官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例として前述した単官能単量体と同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物が好ましく挙げられる。なお、これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
前記アクリルゴム粒子における弾性重合体層を形成する前記単量体成分の好ましい組成は、例えば、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、アクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、メタクリル酸アルキルが0〜49.9重量%、単官能単量体が0〜49.9重量%、多官能単量体が0.1〜10重量%である。
【0026】
前記アクリルゴム粒子を構成する硬質重合体層は、通常、メタクリル酸アルキルを含み、必要に応じて、アクリル酸アルキルやこれ以外の単官能単量体及び多官能単量体をも含む単量体成分を重合させてなる硬質重合体で形成されることが好ましい。
前記硬質重合体層を形成する際に用いられるメタクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましく挙げられる。なお、これらメタクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0027】
前記硬質重合体層を形成する際に任意に用いられるアクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するアクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、炭素数が1〜4であるアルキル基を有するものが好ましく挙げられる。なお、これらアクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記硬質重合体層を形成する際に任意に用いられる単官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例として前述した単官能単量体と同様のものが挙げられる。なお、これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記硬質重合体層を形成する際に任意に用いられる多官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例として前述した多官能単量体と同様のものが挙げられる。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0028】
前記アクリルゴム粒子における硬質重合体層を形成する前記単量体成分の好ましい組成は、例えば、当該硬質重合体層が弾性重合体部の外側に存在する場合、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、単官能単量体が0〜50重量%、多官能単量体が0〜10重量%であり、他方、当該硬質重合体層が弾性重合体部の内側に存在する場合(すなわち、弾性重合体部が当該硬質重合体層を含有する場合)、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルが70〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜30重量%、単官能単量体が0〜30重量%、多官能単量体が0〜10重量%である。
【0029】
前記アクリルゴム粒子を構成する弾性重合体層と硬質重合体層との重量割合は、特に制限されないが、例えば、隣り合って存在する弾性重合体層と硬質重合体層との割合は、弾性重合体100重量部に対して、硬質重合体が通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部であるのがよい。
【0030】
以上のようなアクリルゴム粒子は、例えば、公知の乳化重合法によりラテックス中に合成することができ、その後、適当な回収操作(例えば、塩析、酸析、凍結などで凝固させた後、ろ過し、次いで洗浄する方法や、スプレー乾燥処理により回収する方法等)を行なうことにより粉体として単離する方法で得ることができる。乳化重合に際しては、アクリルゴム粒子の内側(中心側)の層となる重合体を構成する単量体成分から順に重合させていけばよく、例えば、内層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる2層構造のゴム粒子の場合は、まず、内層とする弾性重合体を構成する単量体成分を重合させて弾性重合体の粒子を含むラテックスを得、次いで、このラテックスに外層とする硬質重合体を構成する単量体成分を添加して重合させることにより、弾性重合体の粒子に硬質重合体をグラフトさせればよい。なお、各層を形成する際の重合は、それぞれ、1段の反応で行なってもよいし、2段以上の多段反応で行なってもよい。2段以上の多段反応で行う場合には、各段で用いる単量体の組成は特に制限されず、当該層を形成する多段反応で用いる全ての単量体成分の組成が上述した所定の範囲内にあればよい。
【0031】
前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部の平均粒子径は、40〜800nmであることが好ましい。より好ましくは、弾性重合体部の平均粒子径は60〜600nmであるのがよい。アクリルゴム粒子における弾性重合体部の平均粒子径が40nm未満であると、耐衝撃性が低下して割れやすくなるおそれがあり、一方、800nmを超えると、得られるフィルムの透明性が低下するおそれがある。アクリルゴム粒子における弾性重合体部の平均粒子径は、例えば、乳化重合によりアクリルゴム粒子を得る際に、乳化剤の添加量や単量体成分の使用量等を調節することによって制御することができる。
【0032】
なお、最外層(外層)が硬質重合体層である層構造を有するアクリルゴム粒子を用いる場合、弾性重合体部の平均粒子径(すなわち、アクリルゴム粒子を構成する層のうち最も外側にある弾性重合体層よりも外側にある硬質重合体層を除いた粒子の平均粒子径)は、例えば、当該アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂組成物(a)に含有させるメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムによる弾性重合体層への染色を施した後、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径(外径)から求めることができる。アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、当該アクリルゴム粒子は、弾性重合体層よりも外側にある硬質重合体層(最外層(外層))を除いた状態のほぼ円形状の粒子として観察されることになり、例えば、内層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる2層構造のゴム粒子であれば、内層の弾性重合体層のみが染色されて単層構造の粒子として観察され、内層(硬質重合体層)/中間層(弾性重合体層)/外層(硬質重合体層)からなる3層構造のゴム粒子であれば、外層である硬質重合体層と内層である粒子中心部分の硬質重合体層とは染色されず、中間層の弾性重合体層のみが染色された2層構造の粒子として観察される。
【0033】
前記メタクリル樹脂組成物(a)において、前記メタクリル樹脂と前記アクリルゴム粒子との含有割合は、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=20:80〜97:3であることが好ましい。より好ましくは、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=30:70〜95:5、さらに好ましくは、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=40:60〜93:7であるのがよい。アクリルゴム粒子の含有割合が前記範囲よりも少ないと、得られるフィルムの柔軟性が低下して割れやすくなるおそれがあり、一方、前記範囲よりも多いと、得られるフィルムの表面硬度が低下して傷が付きやすくなるとともに、成形した場合に成形体の外観が悪くなるおそれがある。
【0034】
層(B)の形成材料である前記熱可塑性樹脂組成物(b)は、アクリルゴム粒子を含有しないものであればよく、その樹脂成分は特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が、樹脂成分として好ましく挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂、とりわけ前記メタクリル樹脂組成物(a)として用いるのと同じメタクリル樹脂を熱可塑性樹脂組成物(b)の樹脂成分とすることが、得られるフィルムの透明性、表面硬度、平滑性などの点で好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物(b)の樹脂成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
前記メタクリル樹脂組成物(a)及び前記熱可塑性樹脂組成物(b)には、それぞれ、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
前記熱可塑性樹脂組成物(a)及びメタクリル樹脂組成物(b)は、それぞれ、上述した樹脂成分やその他の成分を、例えば単軸押出機や二軸押出機で溶融混練するなど、従来公知の方法で調製することができる。
【0036】
本発明の多層延伸フィルムを得るに際し、その製造方法は、特に制限されないが、例えば、i)前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを多層フィルム化することにより、メタクリル樹脂組成物(a)からなる層(A)の両方の面に熱可塑性樹脂組成物(b)からなる層(B)が積層された多層フィルムを得、次いで、この多層フィルムを延伸する方法や、ii)前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを、それぞれ別個にフィルム化した後、延伸することにより、層(A)を構成するメタクリル樹脂組成物(a)からなる延伸フィルム及び層(B)を構成する熱可塑性樹脂組成物(b)からなる延伸フィルムを得た後、層(A)とするメタクリル樹脂組成物(a)からなる延伸フィルムの両方の面に、層(B)とする熱可塑性樹脂組成物(b)からなる延伸フィルムを貼合する方法、などを採用することができる。中でも、上記i)の方法が好ましく採用される。
【0037】
前記i)の方法により多層延伸フィルムを得る場合、前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを多層フィルム化する方法としては、例えば、メタクリル樹脂組成物(a)と熱可塑性樹脂組成物(b)とをそれぞれ押出機にて溶融させ、フィードブロック法やマルチマニホールド法により共押出成形することにより、積層する方法(共押出成形法)や、メタクリル樹脂組成物(a)を押出成形法などによりフィルム化し、このフィルムの表面に、熱可塑性樹脂組成物(b)を、必要に応じて溶剤に溶解するなどしてコーティングする方法などが好ましく採用される。とりわけ、製造工程が簡便である共押出成形法が好ましく、本発明の多層延伸フィルムは、前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを共押出成形して得られる多層フィルムが延伸されてなるものであるのがよい。
【0038】
共押出成形法により多層フィルム化する場合、溶融した層形成材料(メタクリル樹脂組成物(a)及び熱可塑性樹脂組成物(b))をロールやベルトに密着させてフィルム化する。このとき、ロールやベルトの本数、配置、材質等については特に制限されないが、例えば、溶融した各層形成材料を2本の金属ロール間あるいは金属ロールと金属ベルトとの間に接触、通過させて、ロールやベルトの表面を転写させるようにすると、フィルム表面の面精度を高めることができるので、好ましい。また、金属ロールと表面が弾性を有する金属ロール(金属弾性ロール)とを用いて、面で溶融した各層形成材料の両面を接触、通過させると、成形時の歪みを低減し、強度や熱収縮性の異方性が少ないフィルムを得ることができるので、好ましい。ここで、金属弾性ロールとしては、例えば、軸ロールと該軸ロールの外周面を覆うように配された円筒形の金属製薄膜とを備えるとともに、この軸ロールと金属製薄膜との間に水や油などの温度制御された流体が封入されたものや、ゴムロールの表面に金属ベルトを巻いたもの等が挙げられる。
【0039】
前記i)または前記ii)の方法により多層延伸フィルムを得る際に行なう延伸の方法としては、従来公知の延伸方法を採用すればよく、例えば、自由幅一軸延伸や定幅一軸延伸等の一軸延伸、逐次二軸延伸や同時二軸延伸等の二軸延伸が挙げられる。中でも、フィルムの機械的強度のムラを抑制しうる点で、二軸延伸が好ましく、とりわけ同時二軸延伸が好ましい。
延伸を行なう際には、延伸方向への延伸倍率は、得られる延伸フィルムの機械的強度を向上させるうえで、1.1〜3.0倍の範囲であるのが好ましく、1.6〜2.0倍であるのがより好ましい。
【0040】
延伸を行なう際の延伸温度は、延伸に供するフィルム(多層フィルム)を形成する材料のガラス転移温度に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、例えば、前記熱可塑性樹脂組成物(b)としてメタクリル樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂組成物(b)のガラス転移温度をTgb(℃)とすると、延伸温度は、(Tgb+10)℃〜(Tgb+70)℃とするのが好ましく、より好ましくは(Tgb+15)℃〜(Tgb+60)℃、さらに好ましくは(Tgb+20)℃〜(Tgb+40)℃とするのがよい。延伸温度が低すぎると、得られる延伸フィルムに破断が生じるおそれがあり、一方、延伸温度が高すぎると、樹脂の流動によりフィルムの外観が悪化するおそれがある。
延伸を行なう際の延伸速度は、0.1〜3.0m/分の範囲とするのが好ましい。延伸速度が0.1m/分よりも遅いと、充分な延伸倍率を得るために長時間を要することになり、生産性の点で不利となる傾向があり、一方、3.0m/分よりも速いと、得られる延伸フィルムに厚みムラが生じるおそれがある。
【0041】
かくして得られる多層延伸フィルムは、その全体の厚さが10〜250μmであることが好ましく、より好ましくは30〜240μm、さらに好ましくは40〜230μmであるのがよい。多層延伸フィルム全体の厚さがあまりに厚いと、例えば加飾用途に用いる際に、成形加工に時間がかかるとともに、加飾による物性や意匠性の向上効果が小さくなり、コスト的にも不利になる傾向がある。一方、多層延伸フィルム全体の厚さがあまりに薄いと、押出成形等による成膜自体が機械的に難しくなるとともに、フィルムの破断強度が低くなり、フィルム製造時の不具合の発生確率が高くなる傾向がある。なお、多層フィルム全体の厚さは、成膜する際に、成膜速度、T型ダイスの吐出口厚み、ロールの間隙などを調節することにより、調整できる。
【0042】
本発明の多層延伸フィルムにおける層(A)の厚さは、多層延伸フィルム全体の厚さの30〜98%であることが好ましく、各層(B)の厚さは1μm以上であることが好ましく、より好ましくは3μm以上であるのがよい。層(A)の厚さがあまりに薄いと、多層延伸フィルムが脆く、割れ易くなるおそれがある。また、層(B)の厚さが1μm未満であると、多層延伸フィルムの耐加熱白化性が不充分になるおそれがある。なお、各層(B)の厚さは、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
以上のような本発明の多層延伸フィルムは、例えば、光学フィルム、偏光子保護フィルムなどとして好ましく用いられる。さらに、本発明の多層延伸フィルムは、耐加熱白化性に優れ、加熱成形を行っても良好な透明性を保持しうるため、各種プラスチック製品の表面装飾に用いられる加飾用フィルムや加飾シートなどにも好ましく用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、含有量または使用量を表す「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
【0045】
以下の実施例および比較例において得られた延伸フィルムの評価は、下記の方法により行った。
<全光線透過率(Tt)>
得られた延伸フィルムから100mm角の試験片を作成し、JIS−K7361−1に準拠して、全光線透過率(Tt)(%)を測定した。
<ヘイズ(ΔH)>
得られた延伸フィルムと、該フィルムを延伸する前のフィルム(多層フィルム)とから、それぞれ、100mm角の試験片を作成し、JIS−K7136に準拠して、各ヘイズ値(%)を測定した。そして、延伸フィルムのヘイズ値から該フィルムを延伸する前のフィルムのヘイズ値を差し引いた値を算出し、これをΔH(%)とした。このΔHの値が小さいほど、耐加熱白化性に優れると言える。
【0046】
以下の実施例および比較例において使用したメタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子は、下記の通りである。
<メタクリル樹脂>
メタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体成分を塊状重合させて得られた熱可塑性重合体のペレット(ガラス転移温度104℃)を用いた。なお、このガラス転移温度は、JIS−K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
【0047】
<アクリルゴム粒子>
アクリルゴム粒子としては、内層がメタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体成分を重合させて得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体成分を重合させて得られた弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体成分を重合させて得られた硬質重合体であり、内層(硬質重合体の層)/中間層(弾性重合体の層)/外層(硬質重合体の層)の重量割合が35/45/20である、乳化重合法により得られた球形3層構造のゴム粒子を用いた。このアクリルゴム粒子における弾性重合体部(中間層である弾性重合体層および内層である硬質重合体層)の平均粒子径を下記の方法で測定したところ、220nmであった。
【0048】
〔アクリルゴム粒子における弾性重合体部の平均粒子径の測定方法〕
アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、該ゴム粒子中の弾性重合体の層を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行い、この写真から無作為に100個の染色された弾性重合体の層を選択し、その各々の径を算出した後、その平均値を求め、これを弾性重合体部の平均粒子径とした。この平均粒子径は、アクリルゴム粒子において外層である硬質重合体層を除いた部分(すなわち、中間層である弾性重合体層および内層である硬質重合体層)の平均粒子径である。
【0049】
(実施例1〜4)
まず、層(A)の形成材料として、メタクリル樹脂のペレット80部とアクリルゴム粒子20部とをスーパーミキサーにて混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製)を用いて溶融混錬することにより、メタクリル樹脂組成物をペレットとして得た。他方、層(B)の形成材料としては、メタクリル樹脂のペレットを用いることとした。
【0050】
次に、65mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)を用いて層(A)の形成材料とするメタクリル樹脂組成物のペレットを、45mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)を用いて層(B)の形成材料とするメタクリル樹脂のペレットを、それぞれ溶融させ、フィードブロック法にて、メタクリル樹脂組成物で形成される層(A)の両面にメタクリル樹脂で形成される層(B)が積層されるように、これらの層を溶融積層一体化させ、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を表面が平滑な一対の金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして層(A)の両面に層(B)が積層した2種3層構成の多層フィルム(層(B)(厚さ5μm)/層(A)(厚さ115μm)/層(B)(厚さ5μm))を得た。この多層フィルムのヘイズ値は0.2%であった。
【0051】
得られた多層フィルムを、同時二軸延伸機(東芝機械(株)製)を用いて、延伸温度をそれぞれ表1に示す温度とし、延伸速度2.0m/分にて、フィルムの機械的流れ方向の延伸倍率が2.0倍に、それと直交する方向の延伸倍率が2.0倍になるように同時二軸延伸して、2種3層構成で全体の厚さが35μmである多層延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムについて、全光線透過率(Tt)及びヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5〜7)
実施例1で得られた多層フィルムを、一軸延伸機(インストロン社製)を用いて、延伸温度をそれぞれ表1に示す温度とし、延伸速度2.0m/分にて、フィルムの機械的流れ方向の延伸倍率が2.0倍になるように一軸延伸して、2種3層構成で全体の厚さが35μmである多層延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムについて、全光線透過率(Tt)及びヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1〜4)
各実施例で層(A)の形成材料としたメタクリル樹脂組成物のペレットを、65mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)を用いて溶融させ、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を表面が平滑な一対の金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして層(A)のみからなる1種1層構成の単層フィルム(厚さ125μm)を得た。この単層フィルムのヘイズ値は0.8%であった。
得られた単層フィルムを、同時二軸延伸機(東芝機械(株)製)を用いて、延伸温度をそれぞれ表1に示す温度とし、延伸速度2.0m/分にて、フィルムの機械的流れ方向の延伸倍率が2.0倍に、それと直交する方向の延伸倍率が2.0倍になるように同時二軸延伸して、1種1層構成で全体の厚さが35μmである単層延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムについて、全光線透過率(Tt)及びヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物(a)からなる層(A)の両方の面に、アクリルゴム粒子を含まない熱可塑性樹脂組成物(b)からなる層(B)が積層されてなることを特徴とする多層延伸フィルム。
【請求項2】
前記メタクリル樹脂組成物(a)が、メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子とを、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=20:80〜97:3の割合で含有するものである請求項1に記載の多層延伸フィルム。
【請求項3】
前記メタクリル樹脂組成物(a)と前記熱可塑性樹脂組成物(b)とを共押出成形して得られる多層フィルムが延伸されてなる請求項1又は2に記載の多層延伸フィルム。
【請求項4】
前記延伸が二軸延伸である請求項3に記載の多層延伸フィルム。
【請求項5】
前記延伸における延伸方向への延伸倍率が1.1〜3.0倍である請求項3又は4に記載の多層延伸フィルム。
【請求項6】
全体の厚さが10〜250μmである請求項1〜5のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物(b)が、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を樹脂成分とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
【請求項8】
前記メタクリル樹脂組成物(a)に含まれるメタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、これら以外の単量体を0〜49重量%とを重合させてなる重合体である請求項1〜7のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
【請求項9】
前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%と、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%と、単官能単量体を0〜49.9重量%と、多官能単量体を0.1〜10重量%とを重合させてなる弾性重合体を含有するとともに、この弾性重合体部の平均粒子径が40〜800nmである請求項1〜8のいずれかに記載の多層延伸フィルム。
【請求項10】
前記アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体部の外側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、単官能単量体を0〜50重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体からなる層を備えた粒子である請求項9に記載の多層延伸フィルム。
【請求項11】
前記アクリルゴム粒子における弾性重合体部が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜30重量%と、単官能単量体を0〜30重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体を含有する請求項9又は10に記載の多層延伸フィルム。

【公開番号】特開2011−46186(P2011−46186A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257043(P2009−257043)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】