説明

多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム

【課題】梱包用の緩衝材として使用しうる、バリア性と層間剥離強力を有し、シーラント樹脂との接着性の高い多層延伸ポリアミド系フィルムを提供する。
【解決手段】キシリレンジアミン成分と炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸成分とからなる芳香族ポリアミド(c)の樹脂層(X)と、脂肪族ポリアミド(a)99〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)1〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Z)と、脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)5〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)95〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Y)の各樹脂層からなり、(Z)/(Y)/(X)/(Y)/(Z)の順序で積層されてなる5層で構成された多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系シーラントとのラミネート適性に優れ、かつガスバリア性、フィルムの層間剥離強力に優れた多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、梱包用の緩衝材としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンなどの合成樹脂発泡体が多く用いられてきた。ところが、合成樹脂発泡体は比重は小さいが、嵩高で輸送や保管に場所をとるためにコスト高になるという問題があった。また、使用後は焼却処理されるが、焼却処理時に燃焼温度が高温になって炉を傷めることから、合成樹脂発泡体にかわる緩衝材が望まれている。
【0003】
そこで、2枚のヒートシール性を有する合成樹脂フィルムのヒートシール面側を内側にして、外周部を加熱して融着させるとともに、空気注入孔を作成して空気を注入した梱包用の緩衝材が提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には、緩衝材に使用される合成樹脂フィルムは、ヒートシール層と空気バリア層の複層が好ましいとされており、ヒートシール層としてオレフィン系の樹脂、空気バリア層として、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンポリビニルアルコール系樹脂が挙げられているが、どのような複層形態が好ましいのか具体的に開示はされていない。
【0005】
前記空気バリア層を構成するフィルムの候補としては、例えば、特許文献3のように脂肪族系ポリアミド樹脂95〜50重量%と非晶質系ポリアミド樹脂5〜50重量%からなる混合ポリアミド層を外層にメタキシリレンジアミンとアジピン酸から合成された芳香族ポリアミド層を内層にしたフィルムや、特許文献4のような、内層がキシリレンジアミン成分と炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸成分とから形成された芳香族ポリアミド樹脂層、中間層が脂肪族ポリアミドと非晶性ポリアミドの樹脂層、外層が脂肪族ポリアミドの樹脂層の5層フィルムなどが挙げられる。
【特許文献1】特開平4−327158号公報
【特許文献2】特開2003−292047号公報
【特許文献3】特許第3259795号公報
【特許文献4】特許第3119562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3や特許文献4に挙げられた積層フィルムを空気バリア層として用い、これとヒートシール層とラミネートした複層フィルムは、包装用のフィルムとしては十分な機械物性とバリア性を有しているものの、梱包用の緩衝材として用いた場合には、層間剥離強力やラミネート強力が不十分であり、輸送時の衝撃で、緩衝材が破袋したりするといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解消するものであり、梱包用の緩衝材として使用しうる、バリア性と層間剥離強力を有し、しかもポリオレフィン系シーラントとの接着性の高い多層延伸ポリアミド系フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)キシリレンジアミン成分と炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸成分とからなる芳香族ポリアミド(c)の樹脂層(X)と、
脂肪族ポリアミド(a)99〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)1〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Z)と、
脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)5〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)95〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Y)
の各樹脂層からなり、(Z)/(Y)/(X)/(Y)/(Z)の順序で積層されてなる5層で構成された多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
(2)非晶性ポリアミドが、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重合体、又はビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重合体であることを特徴とする(1)記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
(3)樹脂層(Z)の厚さが3μm以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
(4)多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの各層の層間剥離強力が2N/cm以上であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の多層延伸ポリミアミド樹脂系フィルム。
(5)(1)〜(4)いずれかに記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムにポリオレフィン系シーラントをラミネートしてなる複層フィルム。
(6)多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムとポリオレフィン系シーラントとの間のラミネート強力が5N/cm以上である(5)記載の複層フィルム。
(7)(5)または(6)に記載の複層フィルムのシーラント層を内側として重ね、熱融着して得られる空気袋。
(8)(7)記載の空気袋を備えた梱包用緩衝材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは十分なバリア性と層間剥離力を有しており、また、さらにポリオレフィン系シーラントを複層化してなる本発明の複層フィルムにおいては、シーラント層との高いラミネート強力が得られる。したがって、本発明の複層フィルムは、梱包用緩衝材として使用すると、輸送時の衝撃で緩衝材が破袋したりするといった問題の発生が抑えられ、効率的に輸送を行うことができるため、産業上の利用価値は非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における脂肪族ポリアミド(a)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12,ナイロン46、ナイロン1010およびそれらの混合物、共重合体、複合体等が挙げられる。これらの中でもナイロン6が生産性や性能、コストパフォーマンスの点で特に好ましい。
【0012】
芳香族ポリアミド(c)は、メタ及び/またはパラキシリレンジアミンと炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミドである。炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。芳香族ポリアミド(c)としては、特にメタキシリレンとアジピン酸との重縮合によって得られるナイロンMXD6が好ましい。
【0013】
本発明において、非晶性ポリアミド(b)とは、示差熱分析計を用いて20℃/minの昇温速度で測定したとき、測定される結晶融解熱が1cal/g未満のポリアミドのことをいう。
【0014】
本発明で用いられる非晶性ポリアミド(b)としては、ジアミン成分として、脂環式ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンを有し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸および/またはイソフタル酸を有するものが好ましい。
【0015】
脂環式ジアミンの具体例としては、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノ−5−エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノ−5−エチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノ−5−イソプロピルシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノ−5−イソプロピルシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジイソプロピル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジイソプロピル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−エチル−4−シクロアミノヘキシル)メタン、ビス(3−エチル−4−シクロアミノヘキシル)プロパン、ビス(3−イソプロピル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−イソプロピル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン等が挙げられ、これらの中でもビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンが好適である。
【0016】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン等を挙げることができ、これらの中でもヘキサメチレンジアミンが好適である。
【0017】
非晶性ポリアミド(b)には、その他の共重合成分として、ε−カプロラクタム、ω−ラウリルラクタム、2−ピロリドンなどのラクタム類;6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ビスアミノメチルノルボルネンなどの脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシレンジアミン芳香族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族ジカルボン酸;ナフタレンジカルボン酸などのテレフタル酸やイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸などが含まれていてもよい。
【0018】
脂環式ジアミン/脂肪族ジアミンの構成単位モル比は、0/100〜100/0の範囲で用いることができるが、好ましくは0/100〜20/80の範囲である。
【0019】
テレフタル酸/イソフタル酸の構成単位モル比は0/100〜100/0の範囲で用いることができるが、好ましくは5/95〜40/60の範囲である。
【0020】
非晶性ポリアミド(c)のガラス転移点は特に限定されないが、100〜270℃の範囲であれば好ましく使用でき、120〜255℃の範囲のものであればより好ましい。
【0021】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、芳香族ポリアミド(c)の樹脂層(X)と、脂肪族ポリアミド(a)と非晶性ポリアミド(b)からなる樹脂層(Z)と、脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)と非晶性ポリアミド(b)からなる樹脂層(Y)からなり、(Z)/(Y)/(X)/(Y)/(Z)の順序で5層に構成されてなる延伸処理されてなるポリアミド系フィルムである。
【0022】
本発明における樹脂層(Z)は、脂肪族ポリアミド(a)99〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)1〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂からなる。脂肪族ポリアミド(a)と非晶性ポリアミド(b)の混合割合は、(a)/(b)が95〜99質量%/1〜5質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは98.5〜96.5質量%/1.5〜3.5質量%の範囲である。非晶性ポリアミド(b)が1質量%未満の場合、接着剤を介してシーラントとラミネートした後のラミネート強力が5N/cm未満と低くなるため好ましくない。一方、非晶性ポリアミド(b)が10質量%を超えると、押出機で溶融押出する時にダイスから押し出されたポリマーがシマ模様に見えるようになる、ダイスから押し出されたポリマーの端部が脈動してキャスティングドラム上での着地位置が安定しなくなる、高吐出量で押出すとスクリューへの巻き付きが生じる、など種々の問題が発生しやすくなり好ましくない。こうした問題は、脂肪族ポリアミド(a)と非晶性ポリアミド(b)の溶融特性に差があるため生じるものと考えられる。すなわち、脂肪族ポリアミド(a)が溶融速度が比較的遅くて結晶化速度が速い性質であるのに対して、非晶性ポリアミド(b)が溶融速度が極めて速くほとんど結晶化しないという性質に基づくと考えられる。
【0023】
本発明における樹脂層(Y)は、樹脂層(X)と樹脂層(Z)との接着層に相当する層であり、脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)5〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)95〜10質量とを含有する混合ポリアミドからなる。脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)と非晶性ポリアミド(b)の混合割合は、[(a)+(c)]/(b)が5〜49質量%/95〜51質量%の範囲が好ましい。上記範囲から外れた場合、すなわち、非晶性ポリアミド(b)が95質量%を超えた場合、10質量%未満の場合、いずれもフィルムの層間剥離強力が低くなり、緩衝材としたときに破袋しやすくなるため好ましくない。
【0024】
樹脂層(Y)における脂肪族ポリアミド(a)と芳香族ポリアミド(c)は、それぞれの単体を使用することもできるし、両者を任意の比率で混合したものを使用することもできる。
【0025】
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、溶融時のモノマー生成を抑制するために、有機グリシジルエステル、無水ジカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸、ジアミンなどを末端封鎖剤として含んでいることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いられるポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されるものではないが、溶媒として96%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定した相対粘度が1.5〜5.0であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5〜4.5、いっそう好ましくは3.0〜4.0の範囲である。この相対粘度が1.5未満のものは、フィルムの力学的特性が著しく低下しやすくなる。また、5.0を超えるものは、フィルムの製膜性に支障をきたしやすくなる。
【0027】
ポリアミド樹脂には必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、帯電防止剤、無機微粒子等の各種の添加剤を1種あるいは2種以上を添加してもよい。
【0028】
また、フィルムのアンチブロッキング性を向上させるために各種無機系滑剤や有機系滑剤が1種あるいは2種以上配合されていてもよい。これらの滑剤としては、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、カオリナイト、ハイドロタルサイト、層状ケイ酸塩、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。
【0029】
上記のような各種添加剤は、最外層を構成する樹脂層(Z)層に配合するとより効果的な場合がある。
【0030】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜50μm、最も好ましくは10〜25μmである。厚さが5μm未満では耐衝撃性に問題が生じる場合があり、100μmを超える場合はフイルムが硬くなり、かつ重量が重くなるため 梱包用の緩衝材としては不適である。
【0031】
樹脂層(Z)の厚さは3μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは4〜35μm、最も好ましくは5〜20μmである。樹脂層(Z)の厚さが3μm未満の場合、接着剤を介してシーラントとポリアミド樹脂フィルムをラミネートした後のラミネート強力が5N/cm未満と低くなるため好ましくない。
【0032】
樹脂層(Y)の厚さは0.1〜5μmが好ましく、さらには0.3〜1μmがより好ましい。樹脂層(Y)の厚さが0.1μm未満の場合、フィルムの層間剥離強力が低く、2N/cm未満となり好ましくない。5μmを超える場合、樹脂層(Y)のポリアミド樹脂を押出機で溶融押し出しする際に、高吐出量で押し出すこととなり、スクリューに巻き付きやすくなるため好ましくない。
【0033】
樹脂層(X)の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3〜20μmがより好適である。樹脂層(X)の厚さが2μm未満の場合、ガスバリア性が劣り好ましくない。
【0034】
樹脂層(X)と樹脂層(Y)の厚み比率としては、(X)/(Y)=2〜100が好ましく、さらに好ましくは、5〜50である。(X)/(Y)が2未満の場合は、十分なガスバリア性を満足するフィルムを得ることが困難となるため、好ましくない。(X)/(Y)が100を越える場合は樹脂層(X)と樹脂層(Y)の十分な密着性が得られにくくなるため好ましくない。
【0035】
樹脂層(Z)と樹脂層(Y)の厚み比率としては、(Z)/(Y)=2〜100が好ましく、さらに好ましくは、5〜50である。(Z)/(Y)が2未満の場合は、十分なラミネート強力を満足するフィルムを得ることが困難となるため、好ましくない。(Z)/(Y)が100を越える場合は樹脂層(Z)と樹脂層(Y)の十分な密着性が得られにくくなるため好ましくない。
【0036】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、層間剥離強力が2N/cm以上であることが好ましい。多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム各層の層間剥離強力が2N/cm未満の場合には、緩衝材として使用した場合、衝撃で破袋して使用できない場合がある。本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムにおいては、(Y)層を接着層として(X)層と(Z)層とが接着されているため、層間剥離強力は、(X)層と(Z)層を剥離したときの剥離強力として評価した。
【0037】
また、本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、シーラント層をラミネートしたときのラミネート強力が5N/cm以上であることが好ましい。ラミネート強力が5N/cm未満の場合は、緩衝材として使用した場合、衝撃で破袋して使用できない。
【0038】
さらに、緩衝材として十分な性能を付与するには、前記層間剥離強力が2N/cm以上であり、同時に前記ラミネート強力が5N/cm以上であることが特に好ましい。
【0039】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの酸素透過率は100ml/(m・day・MPa)以下であることが必要であり、好ましくは70ml/(m・day・MPa)以下である。酸素透過率が100ml/(m・day・MPa)を超えるとガスバリア性に劣り、緩衝材として使用したときに、中の空気が抜けて緩衝材としての性能が損なわれる。
【0040】
次に、本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの製造方法の一例について説明するが、これに限定するものではない。
【0041】
各層を構成する各々の樹脂を別々の押出機を用いて、各々のポリアミド樹脂の融点〜融点+40℃の温度で溶融させ、溶融した各々の樹脂をフィードブロック、あるいはマルチマニホールドダイス中で合流させ、Tダイによりシート状に押し出し、静電印可キャスト法、エアーナイフ法等の公知の方法により30℃以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて急冷し、ガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化して所望厚さの未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを縦及び横方向に二軸延伸することにより機械特性や寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
【0042】
二軸延伸方法としては、テンター式同時二軸機により縦方向と横方向に同時に延伸する同時二軸延伸方法、ロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式横延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸方法等を用いることができるが、得られたフィルムが縦方向と横方向の機械特性のバランスに優れることや、結晶化速度の速いポリアミド樹脂を逐次二軸延伸する場合、縦方向の延伸時に水素結合が形成されて延伸方向に分子配向され、横方向の延伸が困難であることから同時二軸延伸方法が好適である。
【0043】
さらには、高結晶性のポリアミド樹脂を延伸する場合には、供給する前の未延伸シートの任意の段階で45〜65℃の温水中に60〜150秒浸漬する吸水処理工程を経た後、同時二軸延伸機を用いる方法が好適である。
【0044】
延伸倍率は、面積倍率で通常3倍以上、好ましくは6〜20倍の範囲である。面積倍率が3倍未満の場合、十分な引張強伸度やピンホール強度等の機械特性を得られず好適でない。
【0045】
延伸倍率は、縦方向、横方向それぞれ、1.5〜10倍が好ましく、さらに好ましくは、2〜5倍であり、縦方向に対する横方向の延伸倍率の比率はTD/MD=0.5〜10である。
【0046】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、延伸処理が行われた後に、150〜220℃の温度で熱固定し、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で縦方向および/または横方向の弛緩処理を施す熱セット工程を経て、さらに20〜100℃の冷却工程を経てロール状に巻き取られる。
【0047】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、シーラント層が積層された構成とすることにより、ヒートシール性を付与できるため、このようにシーラント層を積層した複層フィルムは、シーラント層側をヒートシールして、袋状体や、トレー包装の蓋材などの包装体として使用することができ、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、スタンディングパウチ、ロケット包装などの種々の袋の形態に利用できる。
【0048】
袋の内部に空気を封入して空気袋としたものは、この空気袋を1個または複数個用いて梱包用の緩衝材として使用することができる。複数の空気袋は連結されていてもよいし、それぞれ独立していてもよい。また、いずれかの空気袋に空気注入孔が設けられていてもよい。
【0049】
シーラント層には、良好な熱接着性を有している樹脂が用いられる。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸・メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体、酸変性ポリエチレン・ポリプロピレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。これらは、単独で用いても、他の樹脂や成分と共重合や溶融混合して用いても、また変性などを行って用いてもよい。これらの樹脂成分を単層、または少なくとも一種類以上の樹脂成分で多層に用いてもよい。特に、好ましいのは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂である。
【0050】
シーラント層の形成方法は、このシーラント層をフィルムとしてから多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムに積層する方法、多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムとシーラント層とを同時に押出し積層する共押出し方法、シーラント層を形成するための樹脂を多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムにコーターでコーティングする方法などが挙げられる。シーラント層をいったんフィルムの形態とする場合に、そのフィルムは、未延伸でも低倍率で延伸されていてもよいが、未延伸フィルムであることが実用的に好ましい。フィルムの形成方法は、押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロールなどで冷却固化するテンター法や、円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により冷却固化させるチューブラー法などを用いることができる。
【0051】
フィルムの形態としたシーラント層を多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムに積層する方法としては、通常の製造法を用いることができる。例えば、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押出しラミネーション法等のラミネーション法などを用いることができる。特に、押出ラミネーション法を用いることが好ましい。
【0052】
シーラント層の形成には、ポリウレタンなどの接着剤を用いたラミネーション法を用いることもできる。この場合は、多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムとシーラント層との両方にコロナ放電処理や易接着処理を施したうえで、その処理面どうしを、接着剤を介してラミネートする方法が好ましい。
【0053】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムとシーラント層との間に、アルミ箔層、ガスバリア性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層、他のポリアミド樹脂層などを積層してもよい。積層する方法は、特に限定されないが、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押出しラミネーション法等が挙げられる。
【0054】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムには、機能性を付与するために、例えば他のフィルムや接着剤、インキなどとの接着性を高めるための易接着剤、静電気の発生を抑制させるための帯電防止剤、バリア性を向上させるためのバリアコート剤などの各種機能性コート剤のインラインコーティング処理を行ってもよい。そのためのインラインコーティング処理の方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、またはこれらの組み合わせによる各種コーティング方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。
【0055】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、ガスバリア性のさらなる向上を目的として、蒸着層を積層した構成としてもよい。蒸着層には無機物または有機物からなる化合物が用いられる。無機物としてはアルミニウムなどの金属やアルミニウム、珪素、マグネシウム、チタンなどの無機酸化物が用いられる。無機物の層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、物理的気相成長(PVD)法などが挙げられる。特に真空蒸着法が実用性に優れている。ポリアミド樹脂層に蒸着加工を施す際には、ポリアミド樹脂層と蒸着層との接着性を高めるために、ポリアミド樹脂層に、予め、コロナ処理、プラズマ処理または無機あるいは有機化合物によるコーティング処理などを行ってもよい。真空蒸着の場合には、蒸着原材料として、アルミニウム(Al)、アルミナ(Al)、珪素(Si)、シリカ(SiO)またはこれらの組合せが用いられる。
【0056】
本発明の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムは、さらにガスバリアコート層を積層した構成とすることもできる。ガスバリアコート層としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニリデン系共重合体(PVDC)が好適である。PVDCは、塩化ビニリデン単位を60質量%以上、好ましくは70〜97質量%含む重合体であり、ラテックスの形で用いられポリアミド樹脂層の少なくとも片面にコートされる。ラテックス中のPVDCの平均粒径は0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.3μmであることが特に好ましい。PVDCには、本発明の効果を損なわない範囲で、例えばアンチブロッキング剤、架橋剤、撥水剤、帯電防止剤などの各種添加剤を併用してもよい。
【0057】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムには、さらに易接着層を設けてもよい。易接着層としては、ウレタン樹脂もしくはウレタンウレア樹脂などが使用できる。
【0058】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムには、機能性を付与するために、例えば静電気の発生を抑制するための帯電防止処理を行ってもよいし、上述のバリアコート液以外の各種機能性コート液の塗布を行ってもよい。
【0059】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムには、必要に応じて、コロナ放電処理、メッキ処理、清浄処理、染色処理等の物理化学的処理を施してもよい。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例・比較例における各種物性の評価方法は、次のとおりである。
【0061】
(1)相対粘度
ポリアミド樹脂のペレットを、濃度が1g/dlになるように96%硫酸に溶解し、温度25℃の条件で測定した。
【0062】
(2)層間剥離強力
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの両面にコロナ放電処理を実施し、そのコロナ処理面にウレタン系接着剤(東洋モートン社製 TM329/CAT−8B 二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面とシーラントフィルム(CPP;東セロ社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、GLC一般タイプ、厚み50μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取った。次いで、巻き取ったフィルムのポリアミド樹脂面にウレタン系接着剤(東洋モートン社製 TM329/CAT−8B 二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面とシーラントフィルム(CPP;東セロ社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、GLC一般タイプ、厚み50μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取った。貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で72時間エージングを実施して(CPP//多層延伸ポリアミド//CPP)のラミネートフィルムを作製した。
【0063】
貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で72時間エージングし、得られたラミネートフィルムを、20℃×65%RH環境下において、MD100mm×TD15mmの短冊に裁断し、多層延伸ポリアミド樹脂フィルムのX層とZ層の間をピンセットを用いてMDに30mm剥離し、ラミネート強力試験片を作成した。50N測定用のロードセルとサンプルチャックとを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AS−1S)を用い、剥離したそれぞれの端部を固定した後、試験片が「T型」に保たれるようにしながら、引張速度300mm/minにてMDに50mm剥離し、その際の強力の平均値を読み取った。測定は5点のサンプルについて行い、それらの平均値を層間剥離強力とした。
【0064】
(3)ラミネート試験
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの両面にコロナ放電処理を実施し、そのコロナ処理面にウレタン系接着剤(東洋モートン社製TM329/CAT−8B二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面とシーラントフィルム(CPP;東セロ社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、GLC一般タイプ、厚み30μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取った。次いで、巻き取ったフィルムのポリアミド樹脂面にウレタン系接着剤(東洋モートン社製TM329/CAT−8B二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面とシーラントフィルム(LLDPE:東セロ社製直鎖状低密度ポリエチレンフィルム HZ 厚さ50μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取った。貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で72時間エージングを実施して(CPP//ポリアミド//LLDPE)の三層ラミネートフィルムを作製した。
【0065】
得られたラミネートフィルムを、20℃×65%RH環境下において、MD100mm×TD15mmの短冊に裁断し、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムとLLDPEシーラントとの間をピンセットを用いてMDに30mm剥離し、ラミネート強力試験片を作成した。50N測定用のロードセルとサンプルチャックとを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AS−1S)を用い、剥離したそれぞれの端部を固定した後、試験片が「T型」に保たれるようにしながら、引張速度300mm/minにてMDに50mm剥離し、その際の強力の平均値を読み取った。測定は5点のサンプルについて行い、それらの平均値をラミネート強力とした。
【0066】
(4)ガスバリア性
ガスバリア性は酸素透過性を測定して評価した。
【0067】
酸素透過性は、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下における酸素ガス透過度を測定することにより評価した。
【0068】
(製造例1:脂肪族ポリアミド樹脂A−1の製造)
攪拌機を備えた密閉反応容器にε−カプロラクタム100質量部と、安息香酸0.12質量部(ε−カプロラクタムに対して10mmol/kg)、及び水3質量部及び無機微粒子(サイロイドSY−150:水澤化学工業株式会社製)0.15質量部を重合釜に投入して昇温し、制圧力0.5MPa、温度260℃で重縮合反応をおこない、反応容器から払い出した後、チップ状にカッティングし、これを精練、乾燥して脂肪族ポリアミド樹脂A−1を得た。このチップの相対粘度は3.1であった。
【0069】
(製造例2:非晶性ポリアミド樹脂B−1の製造)
テレフタル酸/イソフタル酸が10/90(モル比)、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミンが16/84(モル比)、(イソフタル酸とテレフタル酸)/(ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンとヘキサメチレンジアミン)が50/50モル比の割合となる原料10Kgを8Kgの純水と共に反応槽に仕込み、窒素で数回反応槽内の空気をパージした。温度を90℃まで上昇させ約5時間反応させたのち、反応温度を徐々に10時間かけて280℃まで加圧下(18バール)に槽内を撹拌しつつ上昇させた。ついで放圧し大気圧まで圧力を下げたのち、さらに同じ温度で6時間重合反応を行った。反応終了後反応槽から払い出し、切断して非晶性ポリアミド樹脂B−1のペレットを得た。得られたペレットの相対粘度は1.80であった。またガラス転移温度は157℃であった。
【0070】
(製造例3〜6:非晶性ポリアミドB−2〜B−5の製造)
ただし、製造例2において、非晶性ポリアミドの組成を表−1に記載したように変更し、それ以外は製造例2と同様の手順にて非晶性ポリアミドB−2〜B−5を製造した。
【0071】
【表1】

【0072】
[芳香族ポリアミド樹脂]
C−1としてナイロンMXD6(三菱ガス化学社製MXナイロン6007)を用いた。
【0073】
(実施例1)
5層共押出Tダイを用いて、押出機(1)より芳香族ポリアミド樹脂C−1(樹脂層X)を270℃で、押出機(2)より95.0質量部の脂肪族ポリアミド樹脂A−1と5質量部の非晶性ポリアミド樹脂B−2との混合物(樹脂層Z)を265℃で、押出機(3)より70質量部の芳香族ポリアミド樹脂C−1と30質量部の非晶性ポリアミド樹脂B−1との混合物(樹脂層Y)を270℃で、それぞれ溶融押出しし、(Z)/(Y)/(X)/(Y)/(Z)の順に重ね合わせた多層未延伸シートをダイスより押出し、表面温度18℃の冷却ドラム上に密着させて急冷し、厚さ160μmの未延伸多層シートを得た。得られたシートを50℃の温水槽に送り、1分間の浸水処理を施した。このシートの端部をテンター式同時二軸延伸装置のクリップで保持し、180℃の条件下で、縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍の延伸倍率で同時二軸延伸した後、横方向の弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さが、Z/Y/X/Y/Z=5.0/0.5/5.0/0.5/5.0(μm)の多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0074】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
Z層における脂肪族ポリアミド樹脂A−1と非晶性ポリアミド樹脂B−2との混合比率を表2に記載した比率に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0075】
(実施例5)
Z層に使用する非晶性ポリアミド樹脂をB−1に変更し、かつ脂肪族ポリアミド樹脂A−1と非晶性ポリアミド樹脂B−1との混合比率を表2に記載した比率に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0076】
(実施例6〜9)
Z層に使用する非晶性ポリアミド樹脂をB−1、B−3、B−4またはB−5に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0077】
(実施例10)
Y層に使用する非晶性ポリアミド樹脂をB−1に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0078】
(実施例11〜14)
Y層に使用する芳香族ポリアミド樹脂C−1に代えて、表2に記載したようにA−1またはA−1とC−1との混合樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0079】
(実施例15〜17、比較例3〜4)
Y層の芳香族ポリアミド樹脂C−1と非晶性ポリアミド樹脂B−2との混合比率を表2に記載した比率に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0080】
(実施例18〜20、比較例5)
Z/Y/X/Y/Zの層の厚み比率を表2に記載した比率に変更した以外は実施例1と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0081】
(比較例6)
3層共押出Tダイを用いて、押出機(1)より芳香族ポリアミド樹脂C−1(樹脂層X)を270℃で、押出機(2)より95.0質量部の脂肪族ポリアミド樹脂A−1と5質量部の非晶性ポリアミド樹脂B−2との混合物(樹脂層Z)を265℃で、それぞれ溶融押出しし、(Z)/(X)/(Z)の順に重ね合わせた多層未延伸シートをダイスより押出し、表面温度18℃の冷却ドラム上に密着させて急冷し、厚さ160μmの未延伸多層シートを得た。得られたシートを50℃の温水槽に送り、1分間の浸水処理を施した。このシートの端部をテンター式同時二軸延伸装置のクリップで保持し、180℃の条件下で延伸倍率として、縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍に同時二軸延伸装置で延伸した後、横方向の弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さが、Z/X/Z=5.5/5.0/5.5(μm)の多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0082】
(比較例7)
Z層の脂肪族ポリアミド樹脂A−1と非晶性ポリアミド樹脂B−2との混合比率を表2に記載した比率に変更した以外は比較例6と同様にして多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0083】
【表2】

【0084】
実施例1〜20のものは、いずれも層間剥離強力、ラミネート強力、酸素バリア性に優れているため、多層延伸フィルムをシーラントを介してラミネートすれば、梱包用緩衝材の空気袋としての用途に特に適したものであるということができる。
【0085】
比較例1は、Z層における非晶性ポリアミド樹脂の混合比率が低いために、接着剤を介してシーラントとラミネートした後のラミネート強力が5N/cm未満と低くなり、かつ、T型剥離時に剥離界面がシーラント層にまで至り、層間剥離するために、梱包用緩衝材としては不適なものとなった。
【0086】
比較例2は、Z層における非晶性ポリアミドの混合比率が10質量%を超えたため、押出機で溶融押出する時にダイスから押し出されたポリマーがシマ模様に見えるようになったり、ダイスから押し出されたポリマーの端部が脈動してキャスティングドラム上での着地位置が安定しなくなったりして操業性が悪く、採用できない。
【0087】
比較例3は、Y層における非晶性ポリアミド樹脂の混合比率が95質量%を超えているために、多層延伸ポリアミドの層間剥離強度が低く、層間剥離するために、梱包用緩衝材としては不適なものとなった。
【0088】
比較例4は、Y層における非晶性ポリアミド樹脂の混合比率が10質量%未満であったために、多層延伸ポリアミドの層間剥離強度が低く、層間剥離するために、梱包用緩衝材としては不適なものとなった。
【0089】
比較例5は、Z層の厚みが3μm以下と薄いために、接着剤を介してシーラントとラミネートした後のラミネート強力が5N/cm未満と低くなり、かつ、T型剥離時に剥離界面がシーラント層にまで至り、層間剥離するために、梱包用緩衝材としては不適なものとなった。
【0090】
比較例6は、Y層を欠く構成のために、多層延伸ポリアミドの層間剥離強度が低く、層間剥離するために、梱包用緩衝材としては不適なものとなった。
【0091】
比較例7は、Z層における非晶性ポリアミド樹脂(B−2)の混合比率が30質量%と高いため、多層延伸ポリアミドの層間剥離強力と、接着剤を介してシーラントとラミネートした後のラミネート強力は満足するが、押出機で溶融押出する時にダイスから押し出されたポリマーがシマ模様に見えるようになったり、ダイスから押し出されたポリマーの端部が脈動してキャスティングドラム上での着地位置が安定しなくなったりして操業性が悪く、採用できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジアミン成分と炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸成分とからなる芳香族ポリアミド(c)の樹脂層(X)と、
脂肪族ポリアミド(a)99〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)1〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Z)と、
脂肪族ポリアミド(a)及び/または芳香族ポリアミド(c)5〜90質量%と非晶性ポリアミド(b)95〜10質量%とを含有する混合ポリアミド樹脂層(Y)
の各樹脂層からなり、(Z)/(Y)/(X)/(Y)/(Z)の順序で積層されてなる5層で構成された多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
【請求項2】
非晶性ポリアミドが、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重合体、又はビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重合体であることを特徴とする請求項1記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
【請求項3】
樹脂層(Z)の厚さが3μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルム。
【請求項4】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムの層間剥離強力が2N/cm以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の多層延伸ポリミアミド樹脂系フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムにシーラント層をラミネートしてなる複層フィルム。
【請求項6】
多層延伸ポリアミド樹脂系フィルムとシーラント層との間のラミネート強力が5N/cm以上である請求項5記載の複層フィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の複層フィルムのシーラント層を内側として重ね、熱融着して得られる空気袋。
【請求項8】
請求項7記載の空気袋を備えた梱包用緩衝材。





【公開番号】特開2009−274224(P2009−274224A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124698(P2008−124698)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】