説明

多層構造重合体、およびこれを用いた樹脂組成物

【課題】 配合するベース樹脂の耐衝撃性を改善し、配合するベース樹脂が有する難燃性能を損なわない多層構造重合体、およびこれを用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、ポリオルガノシロキサンでコア層を構成し、ガラス転移点が80℃以上のメタクリル系ポリマーで外層を構成することにより、配合するベース樹脂の耐衝撃性を改善し、配合するベース樹脂が有する難燃性能を損なわない多層構造重合体と、これを用いた樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性および難燃性に優れる多層構造重合体、およびこれを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂に、ゴムや樹脂粒子、多層構造のポリマーを分散させて、耐衝撃性樹脂を製造することが試みられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、ポリオルガノシロキサン粒子をビニルモノマーとグラフト重合させた耐衝撃性樹脂の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液に比較的分散容易なポリマー分散体として、多層構造ポリマー分散体が開示されている。
【特許文献1】特公平5−22724号公報
【特許文献2】特開平8−48704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法で得られる耐衝撃性樹脂は、熱可塑性樹脂への分散は可能である。しかし、この樹脂には、ポリオルガノシロキサン粒子とビニルモノマーとをグラフト重合させた耐衝撃剤のビニルモノマーの重合体部分に架橋構造がないため、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液などに、均一に分散させることは難しい。さらに、液中では、粒子同士が融着してしまい、均一な分散体が得られない。このため、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液に用いた場合には十分な耐衝撃性が得られないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の多層構造ポリマー分散体は、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液に均一に分散され、これらに耐衝撃性を付与したり、低弾性率化を行うことができる。しかし、このポリマー分散体のゴム状ポリマーを構成するアクリル樹脂は、可燃性が高い。したがって、このポリマー分散体を分散させた場合、ベース樹脂に難燃剤を配合している場合にも、難燃性を損ねてしまうという問題がある。特に、エポキシ樹脂のように、積層板などの電気・電子機器に用いる場合には、難燃性を有することが重要な場合もある。このため、難燃性の必要なグレードの場合、低弾性率化を行いたい場合でもこれらの改質剤を添加することが困難な状況であった。
【0007】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、配合するベース樹脂の耐衝撃性を改善し、配合するベース樹脂が有する難燃性能を損なわない多層構造重合体、およびこれを用いた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討し、ポリオルガノシロキサンでコア層を構成し、ガラス転移点が80℃以上のメタクリル系ポリマーで外層を構成することにより、配合するベース樹脂を低弾性化し、配合するベース樹脂が有する難燃性能を損なわない多層構造重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。また、この分散体は、外層を構成するポリマーのガラス転移点は、80℃以上である。したがって、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液に分散しても、表面のガラス状態が維持されるので、粒子同士が融着せずに均一な分散状態が保たれる。
【0009】
上記多層構造重合体は、コア層と外層との間に、ガラス転移点が20℃以下のアクリルゴムで構成される中間層が存在するものであってもよい。中間層が存在しても、同様に配合するベース樹脂を低弾性化し、配合するベース樹脂が有する難燃性能を損なわない多層構造重合体が得られる。
【0010】
上記外層の割合は、多層構造重合体の15〜25重量%であればよい。外層の割合がこの範囲にあれば、重合体同士が融合せず均一な分散体が得られる。
【0011】
上記コア層の割合が多層構造重合体の5〜75重量%であり、上記中間層の割合が多層構造重合体の5〜70重量%であるとよい。
【0012】
上記コア層と中間層との間に架橋構造が形成されていると好ましい。
【0013】
上記の多層構造重合体を含む樹脂組成物は、樹脂の低弾性率化が図られ、樹脂本来の難燃性能を損なわない。この樹脂組成物が、熱硬化性樹脂であると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多層構造重合体を用いると、樹脂組成物中の樹脂の低弾性率化が図られ、樹脂本来の難燃性能を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、説明する。なお、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0016】
[コア層]
本発明において、コア層を構成するのは、ポリオルガノシロキサンである。ポリオルガノシロキサンは、例えば、環状または直鎖状の低分子シロキサン分子とシリコン原子とを、架橋剤を用いて重合させて得る。
【0017】
(環状または直鎖状の低分子シロキサン分子)
環状または直鎖状の低分子シロキサン分子としては、例えば下記化学式(I)で表される環状または直鎖状の低分子シロキサン分子を用いる。具体的には、オクタメチルテトラシクロシロキサンなどが挙げられる。
【化1】


(式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基を、qは、0、1、2の数字を、それぞれ示す。)
【0018】
(シリコン原子)
シリコン原子は、3機能または4機能のシリコン原子を用いる。このような多機能シリコン原子を用いれば、得られるポリオルガノシロキサンが適度にゲル化されるので好ましい。これらのシリコン原子は、単独で用いても、2種以上のシリコン原子を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトシキシラン、エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの3機能のシリコン原子や、テトラエトキシシランなどの4機能のシリコン原子を用いることができる。
【0020】
シリコン原子は、シロキサン100重量部に対して、0.1〜10重量%を添加すればよい。
【0021】
[中間層]
中間層を構成するのは、アクリルゴムである。アクリルゴムは、コア層の粒子の表面に、ゴム状ポリマーを形成するモノマーを乳化重合させて、ガラス転移温度が室温以下、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは−70℃以上、20℃以下であるゴム状ポリマーを形成する。なお、この中間層は、存在しても、しなくても、本発明の効果を得ることができる。本発明の効果を害さない程度の中間層を設けるのは、経済的な理由から好ましい。ここで、ガラス転移温度とは、動的な粘弾性測定におけるtanδのピーク値の温度をいう。なお、本明細書にいうポリマーのガラス転移温度Tg(下記式におけるT(x))は、下記式で示すように、ポリマーを構成するモノマーの文献値から求める。各モノマーのガラス転移点の文献値は、共通の条件で測定された値を用いる。
【数1】

【0022】
アクリルゴムを形成するモノマーの主要成分としては共役ジエンまたはアルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、特に、ブタジエンが好ましく用いられる。他方、アルキル基の炭素数が2〜8である上記アルキルアクリレートとしては、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を挙げることができるが、特に、ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0023】
中間層の形成においては、上記共役ジエン又はアルキルアクリレート又はこれらの混合物と共に、これらに共重合可能なモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン,α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等を共重合させることもできる。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの官能基を持ったモノマーを共重合させることができる。たとえばエポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレートが挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸が挙げられる。また、水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレートが挙げられる。
【0024】
本発明においては、中間層の重合での共役ジエンの使用にかかわらず共重合モノマーとして、架橋モノマー及びグラフトモノマーの使用は必須でありこのことにより溶媒、高分子溶液および液状樹脂中での良好な分散を得ることが可能となる。架橋モノマーは、ビニル基等の複数の同種の重合性基を有し、これらが反応に関与するモノマーであり、グラフトモノマーはアリル基とアクリロイル基の組み合わせのように反応性の異なる複数の重合性基を有し、これらが反応に関与するモノマーである。
【0025】
上記架橋モノマーとしては、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等を挙げることができるが、特に、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。このような架橋モノマーは、中間層の重合において用いる全モノマー量の0.2〜10.0重量%、好ましくは0.2〜4.0重量%の範囲で用いることができる。0.2重量%に満たないと良好な分散が得られず、10.0重量%を越えるとゴム粒子としての特性が失われる場合がある。
【0026】
グラフトモノマーとして、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等の不調和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができるが、特にアリルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0027】
このようなグラフトモノマーは、中間層の重合において用いる全モノマー量の0.2〜10.0重量%、好ましくは0.2〜4.0重量%の範囲で用いることができる。0.2重量%に満たないと良好な分散が得られず、10.0重量%を越えるとゴム粒子としての特性が失われる場合がある。
【0028】
[外層]
外層を構成するのは、ガラス転移点が80℃以上のメタクリル系ポリマーである。アクリルゴムは、コア層または中間層の粒子の表面に、メタクリル系ポリマーを形成するモノマーを重合させて、ガラス転移温度が80℃以上であるメタクリル系ポリマーを形成する。ガラス転移点は、80℃以上であればよく、好ましくは80℃以上120℃以下である。このようなメタクリル系ポリマーを用いれば、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液中で多少加温しても、粒子同士が融着せずに、ガラス状態を維持できる。
【0029】
メタクリル系ポリマーを形成するモノマーとしてはメチルメタクリレートまたはスチレンと、これらと共重合可能なモノマーが好ましく用いられる。メチルメタクリレートまたはスチレンと共重合可能なモノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーを挙げることができるが、特に、エチルアクリレート又はアクリロニトリルが好ましく用いられる。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの官能基を持ったモノマーを共重合させることができる。たとえばエポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレートが挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸が挙げられる。また、水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレートが挙げられる。
【0030】
外層の重合においても、共重合モノマーとして、架橋モノマーを少量用いることによって、一層高い分散性を有する多層構造ポリマーを得ることができる。架橋モノマーを用いる場合は、前述の架橋モノマーを外層の重合に用いる全モノマー量の5.0重量%以下、特に0.1〜2.0重量%の範囲で用いると一般にその効果が得られる。
【0031】
本発明の多層構造重合体において、上記モノマーの乳化重合に用いる重合開始剤としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス((2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル等のアゾ系重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤を挙げることができる。また、重合に用いる界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのノニオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0032】
[組成比]
本発明の多層構造重合体において、コア層と外層の2層構造の場合でも、コア層と中間層と外層の3層構造の場合でも、外層の割合は、多層構造重合体の15〜25重量%であればよい。外層の割合が15重量%よりも少ないときは、多層構造重合体が溶剤、高分子溶液等の液状分散媒に分散することが困難になり、多層構造重合体の割合が15重量%よりも多いときは、耐衝撃性が著しく低下する。
【0033】
コア層と中間層と外層の3層構造の場合には、コア層の割合が多層構造重合体の5〜75重量%であり、上記中間層の割合が多層構造重合体の5〜70重量%であるとよい。コア層の割合が5重量%より少ないときには、十分な難燃性が得られず、コア層の割合が70重量%より大きいときにはコスト高になる。
【0034】
本発明の多層構造重合体は、コア層と外層が上記構成を有するものであれば、4層以上であってもよい。
【0035】
[粒経]
本発明の多層構造重合体の粒子径は特に制限ないが、通常100〜1000nm、好ましくは120〜750nmである。なお同量の多層構造重合体を分散した場合、樹脂の粘度を低下させるには粒子径を大きくすることが効果的である。
【0036】
本発明の多層構造重合体は、従来より知られている通常のシード乳化重合法にてラテックスを製造し、好ましくは上記の条件を満足しつつ、これを凍結融解してポリマーを分離した後、遠心脱水、乾燥して、粒状、フレーク状または粉体として取り出すことができる。スプレー・ドライヤーによる噴霧乾燥や塩析による多層構造重合体の取り出し方法もあるが、不純物の混入を嫌う電気・電子材料等において使用する場合は、凍結融解を経る方法が好ましい。
【0037】
本発明の多層構造重合体を添加するのは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、好ましくは熱硬化性樹脂である。特に、本発明の多層構造重合体は、通常の溶剤、液状樹脂、高分子溶液に分散して用いるのに適する。
【0038】
本発明における液状分散媒はゴム状粒子を分散させるための液状分散媒であれば本質的にはその種類は特に制限されないが、溶剤、高分子溶液等がその典型例である。ここで溶剤は液状低分子化合物の意味であり、多層構造重合体を溶解させる溶剤という意味を持つものではない。溶剤としては炭化水素系の溶剤などの通常の溶剤だけでなく、通常反応性希釈剤や可塑剤と称される化合物も溶剤の範疇に包含される。該溶剤としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、含窒素化合物系溶剤、含リン化合物系溶剤、含硫黄化合物系溶剤、ハロゲン系溶剤、その他の溶剤などが挙げられる。
【0039】
炭化水素系溶剤としては、たとえばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、アルカン(C6〜20)などが挙げられる。ケトン系溶剤としては、たとえばアセトン、2−ブタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エステル系溶剤としては、たとえば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶剤としては、たとえばエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサンなどを挙げることができ。アルコール系溶剤としては、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールなどを挙げることができる。含窒化合物系溶剤としては、たとえばピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。含リン化合物系溶剤としては、たとえばトリメチルホスフェートなどが挙げることができる。含硫黄化合物系溶剤としては、たとえばジメチルスルホキシド、二硫化炭素、硫化ジメチルなどが挙げられる。ハロゲン系溶剤としては、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン等が挙げられる。その他の溶剤としては、水などが挙げられる。
【0040】
反応性希釈剤としては、たとえばブチルアクリレート、エチルアクリレート等のアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、シアノアクリレート、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、さらにはこれらの不飽和基を分子内に持つモノマーおよびオリゴマーが挙げられる。またそれらの混合物も含まれる。
【0041】
可塑剤としては、たとえばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0042】
高分子溶液は、硬化性高分子溶液と線状高分子溶液等が挙げられる。これらは、1気圧において、温度20℃で液状もしくは20〜40℃で液状になるものである。硬化性高分子溶液は、通常最終的には重合により硬化して固体状樹脂を形成しうる高分子からなり、硬化樹脂を形成する硬化性モノマー類およびオリゴマー類及び溶剤を含むものも硬化性高分子溶液の範疇に包含される。具体的な例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。
【0043】
線状高分子溶液としては、前述の溶剤と直鎖状ないしは一部分岐を含む熱可塑性樹脂とからなり、具体的な熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0044】
本発明におけるこれらの液状分散媒と多層構造重合体との混合割合は、液状分散媒100重量部に対し、多層構造重合体3〜60重量部が好ましい。3重量部に満たないと、実質上分散体としての特性を発揮せず、60重量部を越えると、実質的に分散が不可能になる場合がある。
【0045】
本発明による液状分散媒と多層構造重合体との混合、分散は、室温〜200℃の範囲で比較的簡易的な攪拌装置で行なうことができる。また分散作業時の液状分散媒の粘度は、2〜5000cpsの範囲に選択される。ここでの攪拌装置としてパドル多段翼、馬蹄型、ゲート型、二重リボン型、スクリュー型、アンカー型等の攪拌翼を使用する低速回転型攪拌機、プロペラ、ディスクタービン、ファンタービン、湾曲羽根ファンタービン、矢羽根タービン、ファウドラー型、角度付き羽根ファンタービン、ブルマージン型等の攪拌翼を使用する中速回転型攪拌機、パイプラインミキサー、渦巻ポンプ、モーショレスミキサー、ISGミキサー、ボテーター等の連続式攪拌機等の一般的攪拌機を用いることにより分散が可能である。さらに効率良く分散を行なうために、往復回転式ミキサー、ディスパー、ホモミキサー、ケディミル、シャフロー、アヂホモミキサー、コンビミックス、ホモジェッター、ニーダー、インターナルミキサー、ダブルプラネタリーミキサー等のバッチ式攪拌装置、ホモミックラインミキサー、超音波ミキサー、高圧式ホノジナイザー、コロイドミル、サンドミル、アトライター、ハイラインミル、フンエキマゼラー、フロージェッター、モーションレスマゼラー、ホモミックリアクター、ニーダーエクストルーダー、K.R.Cニーダー、テーパーロールミル等の連続式攪拌装置、あるいはボールミル、振動ミル、三本ロールなどを前述の一般的撹拌機の使用前後に用いても良い。
【0046】
本発明における分散は、熱可塑性樹脂との溶融ブレンドとは異なる。すなわち、溶融ブレンドは、例えば180℃〜300℃の高温下で押出し機等の特殊な装置を用いて高剪断下で混練することにより行われるが、一方、本発明における分散は通常上述のように簡易的な攪拌装置を用いることにより容易に行うことが可能である。
【0047】
更に、本発明による分散工程において、多層構造重合体に加えて所要の添加剤の適当量を含有させてもよい。このような添加剤としては、例えば、難燃化剤、離型剤、耐候性付与剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐熱性付与剤、耐水性向上剤、増粘剤、硬化促進剤、架橋剤、着色剤、補強剤、界面活性剤、無機充填剤、滑剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。以下の実施例、比較例において、重量平均粒子径(平均粒径)の測定は、製品名ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて行なった。実施例、比較例における各重合体の組成割合および各層の組成については、表1に示す。表1のコア層/中間層/外層比、コア層、中間層、外層の各組成は、重量比を示す。
【0049】
(実施例1)多層構造重合体Aの製造
(コア層の合成)
テトラエトキシシラン2.5g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1.5g及びオクタメチルテトラシクロシロキサン196gを予め混合し、これに1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した後、圧力35MPaの条件下で高圧ホモジナイザーに2回通して、安定な予備混合乳化液を得た。
【0050】
次いで、冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに、上記乳化液を入れた後、0.4%硫酸100gを5分間かけて滴下した。次いで、80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してから冷却し、続いて、得られた反応物を室温で14時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に中和して、シリコンゴムラテックス(A)を得た。
【0051】
このようにして得られたシリコンゴムラテックス(A)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、26.2%であった。また、このシリコンゴムラテックス(A)の平均粒子径は265nmであった。
【0052】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(A)114.6gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水300gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート42.3g、1,3−ブタンジオールジアクリレート0.9g、アリルメタクリレート1.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0053】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート155.1g、1,3−ブタンジオールジアクリレート3.3g、アリルメタクリレート6.6g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(A−2)を得た。このようにして得られたラテックス(A−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、36.3%であった。また、このラテックス(A−2)の平均粒子径は477nmであった。
【0054】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(A−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン42g、アクリロニトリル15g、ジビニルベンゼン3gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.75gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液40gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(A−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(A−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、39.3%であった。また、このラテックスの平均粒子径は510nmであった。
【0055】
次いで、このラテックス(A−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Aを得た。
【0056】
(実施例2)多層構造重合体Bの製造
(コア層の合成)
テトラエトキシシラン2.5g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1.5g及びオクタメチルテトラシクロシロキサン196gを予め混合し、これに1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した後、圧力35MPaの条件下で高圧ホモジナイザーに3回通して、安定な予備混合乳化液を得た。
【0057】
次いで、冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに、上記乳化液を入れた後、0.4%硫酸100gを5分間かけて滴下した。次いで、80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してから冷却し、続いて、得られた反応物を室温で14時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に中和して、シリコンゴムラテックス(B)を得た。
【0058】
このようにして得られたシリコンゴムラテックス(B)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、26.4%であった。また、このシリコンゴムラテックス(B)の平均粒子径は198nmであった。
【0059】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(B)57.3gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水360gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート42.3g、1,3−ブタンジオールジアクリレート0.9g、アリルメタクリレート1.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0060】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート169.2g、1,3−ブタンジオールジアクリレート3.6g、アリルメタクリレート7.2g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(B−2)を得た。このようにして得られたラテックス(B−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、35.0%であった。また、このラテックス(B−2)の平均粒子径は428nmであった。
【0061】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(B−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン42g、アクリロニトリル15g、ジビニルベンゼン3gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.75gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液40gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(B−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(B−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、38.8%であった。また、このラテックスの平均粒子径は461nmであった。
【0062】
次いで、このラテックス(B−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Bを得た。
【0063】
(実施例3)多層構造重合体Cの製造
(コア層の合成)
テトラエトキシシラン2.5g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1.5g及びオクタメチルテトラシクロシロキサン196gを予め混合し、これに1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した後、圧力30MPaの条件下で高圧ホモジナイザーに2回通して、安定な予備混合乳化液を得た。
【0064】
次いで、冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに、上記乳化液を入れた後、0.4%硫酸100gを5分間かけて滴下した。次いで、80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してから冷却し、続いて、得られた反応物を室温で14時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に中和して、シリコンゴムラテックス(C)を得た。
【0065】
このようにして得られたシリコンゴムラテックス(C)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、26.2%であった。また、このシリコンゴムラテックス(C)の平均粒子径は322nmであった。
【0066】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(C)229.2gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水230gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート42.3g、1,3−ブタンジオールジアクリレート0.9g、アリルメタクリレート1.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0067】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート112.8g、1,3−ブタンジオールジアクリレート2.4g、アリルメタクリレート4.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.2gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(C−2)を得た。このようにして得られたラテックス(C−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、35.6%であった。また、このラテックス(C−2)の平均粒子径は425nmであった。
【0068】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(C−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン52.5g、アクリロニトリル18.75g、ジビニルベンゼン3.75gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.94gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液50gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(C−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(C−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、39.7%であった。また、このラテックスの平均粒子径は470nmであった。
【0069】
次いで、このラテックス(C−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Cを得た。
【0070】
(実施例4)多層構造重合体Dの製造
(コア層の合成)
テトラエトキシシラン2.5g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1.5g及びオクタメチルテトラシクロシロキサン196gを予め混合し、これに1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した後、圧力26MPaの条件下で高圧ホモジナイザーに2回通して、安定な予備混合乳化液を得た。
次いで、冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに、上記乳化液を入れた後、0.4%硫酸100gを5分間かけて滴下した。次いで、80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してから冷却し、続いて、得られた反応物を室温で14時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に中和して、シリコンゴムラテックス(D)を得た。
このようにして得られたシリコンゴムラテックス(D)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、26.3%であった。また、このシリコンゴムラテックス(D)の平均粒子径は439nmであった。
(最外層の合成)
シリコンゴムラテックス(D)855.5gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、続いて窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、スチレン52.5g、アクリロニトリル18.75g、ジビニルベンゼン3.75g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0071】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、その状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(D−3)を得た。このようにして得られたラテックス(D−3)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、32.3%であった。また、このラテックス(D−3)の平均粒子径は447nmであった。
【0072】
次いで、このラテックス(D−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Hを得た。
【0073】
(比較例1)多層構造重合体Eの製造
(コア層の合成)
テトラエトキシシラン2.5g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1.5g及びオクタメチルテトラシクロシロキサン196gを予め混合し、これに2%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した後、圧力35MPaの条件下で高圧ホモジナイザーに3回通して、安定な予備混合乳化液を得た。
【0074】
次いで、冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに、上記乳化液を入れた後、0.4%硫酸100gを5分間かけて滴下した。次いで、80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してから冷却し、続いて、得られた反応物を室温で14時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に中和して、シリコンゴムラテックス(E)を得た。
【0075】
このようにして得られたシリコンゴムラテックス(E)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、26.1%であった。また、このシリコンゴムラテックス(E)の平均粒子径は140nmであった。
【0076】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(E)23.0gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水400gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート42.3g、1,3−ブタンジオールジアクリレート0.9g、アリルメタクリレート1.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0077】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート169.2g、1,3−ブタンジオールジアクリレート3.6g、アリルメタクリレート7.2g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(E−2)を得た。このようにして得られたラテックス(E−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、32.3%であった。また、このラテックス(E−2)の平均粒子径は465nmであった。
【0078】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(E−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン42g、アクリロニトリル15g、ジビニルベンゼン3gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.75gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液45gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(E−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(E−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、36.7%であった。また、このラテックスの平均粒子径は505nmであった。
【0079】
次いで、このラテックス(E−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Eを得た。
【0080】
(比較例2)多層構造重合体Fの製造
(コア層)
実施例1で合成したシリコンゴムラテックス(A)を用いた。
【0081】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(A)114.6gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水300gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート44.55g、アリルメタクリレート0.45g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0082】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート163.35g、アリルメタクリレート1.65g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(F−2)を得た。このようにして得られたラテックス(F−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、36.0%であった。また、このラテックス(F−2)の平均粒子径は453nmであった。
【0083】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(F−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン42g、アクリロニトリル15g、ジビニルベンゼン3gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.75gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液40gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(F−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(F−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、39.1%であった。また、このラテックスの平均粒子径は485nmであった。
【0084】
次いで、このラテックス(F−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Fを得た。
【0085】
(比較例3)多層構造重合体Gの製造
実施例3で合成したシリコンゴムラテックス(C)を用いた。
【0086】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(C)229.2gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水250gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート44.55g、アリルメタクリレート0.45g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0087】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水溶液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート163.35g、アリルメタクリレート1.65g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(G−2)を得た。このようにして得られたラテックス(G−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、36.7%であった。また、このラテックス(G−2)の平均粒子径は459nmであった。
【0088】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(G−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン21g、アクリロニトリル7.5g、ジビニルベンゼン1.5gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.38gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液20gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(G−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(G−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、38.5%であった。また、このラテックスの平均粒子径は473nmであった。
【0089】
次いで、このラテックス(G−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Gを得た。
【0090】
(比較例4)多層構造重合体Hの製造
(コア層)
実施例1で合成したシリコンゴムラテックス(A)を用いた。
【0091】
(中間層の合成)
シリコンゴムラテックス(A)114.6gを冷却コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに採取し、これに蒸留水300gを添加し混合した。続いて、この1Lセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気を窒素置換してから、60℃まで昇温した。次いで、ブチルアクリレート36.9g、1,3−ブタンジオールジアクリレート2.7g、アリルメタクリレート5.4g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.6gからなる混合物を一度に添加し、1時間撹拌した。
【0092】
撹拌後、0.18%硫酸第一鉄水1液1gおよび、3.2%L‐アスコルビン酸水溶液30gを添加してラジカル重合を開始させた。反応による発熱のピークを確認した後、液温を70℃に調整し、ブチルアクリレート135.3g、1,3−ブタンジオールジアクリレート9.9g、アリルメタクリレート19.8g、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド1.65gからなる混合物を2時間かけて滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1.5時間保ったのち冷却し、ラテックス(H−2)を得た。このようにして得られたラテックス(H−2)を160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、36.1%であった。また、このラテックス(H−2)の平均粒子径は467nmであった。
【0093】
(外層の合成)
続いて、ラテックス(H−2)の液温を70℃に保ったまま、スチレン42g、アクリロニトリル15g、ジビニルベンゼン3gおよびターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.75gを予め混合したものに、0.75%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液40gを添加し、ディスパーにて1500rpm
で30分間攪拌した乳化液を60分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を1時間保ったのち冷却し、ラテックス(H−3)を得た。このようにして得られたラテックスを(H−3)160℃で1.5時間乾燥して固形分を求めたところ、39.6%であった。また、このラテックスの平均粒子径は501nmであった。
【0094】
次いで、このラテックス(H−3)を凍結融解法によって凝析させ、水洗、脱水、乾燥して粉体状の多層構造重合体Hを得た。

【表1】

【0095】
(試験例)
上記得られた実施例1〜3の多層構造重合体A〜D、比較例1〜4の多層構造重合体E〜H、および多層構造重合体を添加しないもの(比較例5)を用いて、以下に示す試験を行った。結果を表2に示す。
【0096】
1.トルエンへの分散性
攪拌機のついた0.5L丸底セパラブルフラスコにトルエン170gを採った。200rpmで攪拌しながら、多層構造重合体30gがママコ(継粉)状に凝集しないように徐々に添加した。添加終了後、室温でさらに1時間攪拌し、分散を行った。
分散の終了した、多層構造重合体のトルエン分散液200gを200メッシュの金網に通過させ以下の基準で分散の容易さを評価した。
○ 200gの分散液が60秒以内に通過。
× 200gの分散液が60秒以上かかり通過。
【0097】
2.曲げ弾性率
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、JER828)200gをディスパーを用いて攪拌しながら80℃まで昇温した。昇温後、臭素系難燃剤(帝人化成株式会社製、ファイヤガード3000)20gと多層構造重合体20gをママコ(継粉)状に凝集しないように徐々に添加した。添加終了後、80℃に保ちながら、さらに3時間攪拌し、分散を行った。室温まで冷却後、ジアミノジフェニルメタンを54g添加し5分攪拌した。得られた分散液を減圧下にて5分程度脱泡を行った。その後、水平に保たれたステンレスの容器に硬化後の厚みが4mmになるように調整し流し入れ、100℃で1時間、150℃で3時間加熱し硬化を行った。得られた厚さ4mmの成型物を長さ80mm幅10mmとなるように切断し、試験片とした。23±2℃、湿度50±5%の環境下にて、得られた試験片をJIS K7203に準じた3点曲げ試験を行い、荷重−たわみ曲線から曲げ弾性率を求め、多層構造粒子を添加することによる、低弾性率化を確認した。
【0098】
3.難燃性の確認試験
曲げ弾性率試験の試験片をクランプを用いて垂直に固定した。無風の条件下で、ガスバーナーを用いて着火しその様子を観察し、以下の基準で難燃性を確認した。
○ 着火した炎が途中で消える。
× クランプの位置まで炎が上がってくる。
【表2】

【0099】
以上の結果から、本実施例の多層構造重合体は、トルエンへの分散性に優れることがわかる。すなわち、本実施例の多層構造重合体A〜Dは、融合、凝集を起こさないことがわかった。また、実施例の多層構造重合体A〜Dの曲げ弾性率は、それぞれ2.30、2.35、2.41、2.52GPaであり、比較例4における多層構造重合体H(曲げ弾性率2.77GPa)、多層構造重合体を有さない比較例5(曲げ弾性率2.82GPa)に比べ、曲げ弾性率が小さく、配合するベース樹脂の低弾性化が図られることがわかった。さらに、実施例の多層構造重合体A〜Dは、比較例の多層構造重合体D〜Fに比べ、ベース樹脂の難燃性を損なわないことがわかる。一方、コア層の割合の少ない比較例1の多層重合体は、難燃性が損なわれた。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンで構成されるコア層と、
ガラス転移点が80℃以上のメタクリル系ポリマーで構成される外層と
を有する、多層構造重合体。
【請求項2】
前記コア層と外層との間に、ガラス転移点が20℃以下のアクリルゴムで構成される中間層が存在する、請求項1に記載の多層構造重合体。
【請求項3】
前記外層の割合が、多層構造重合体の15〜25重量%である、請求項1または2に記載の多層構造重合体。
【請求項4】
前記コア層の割合が多層構造重合体の5〜75重量%であり、前記中間層の割合が多層構造重合体の5〜70重量%である、請求項2に記載の多層構造重合体。
【請求項5】
前記コア層と中間層との間に架橋構造が形成されている、請求項2〜4のいずれかに記載の多層構造重合体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の多層構造重合体を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂である、請求項6に記載の樹脂組成物。







【公開番号】特開2008−195879(P2008−195879A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34351(P2007−34351)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】