説明

多層配線板の製造方法および多層配線板

【課題】歪みを解消して配線板表面を平坦化し、最上面の導体回路パターンの高さを同一にした多層配線板の製造方法および多層配線板を提供することを課題とする。
【解決手段】一方の主面に導体回路パターン13a〜13c、13d−1〜13d−3が形成されたポリイミドフィルム11a〜11dを接着材12a〜12cを介して接着して積層する工程を備えた多層配線板の製造方法において、最上層のポリイミドフィルム11dに生じた凹部を含むポリイミドフィルム11dの一方の主面に、発泡性のウレタンを混合した液状のソルダーレジスト21を形成し、ソルダーレジスト21の上部に離型性フィルム31を配置した後、ソルダーレジスト21を加熱して発泡させ、離型性フィルム31を除去して表面を平坦化し、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さを同一にする工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装部品と多層配線板との電気的な接続信頼性を改善した多層配線板の製造方法および多層配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器や薄型を要求されるFPD(平面ディスプレイ)では、半導体チップや部品の小型化および端子の狭ピッチ化が進んでいる。これと同時に、情報関連機器では、信号周波数の広域化に対応して部品間を連結する配線の短距離化が求められている。このため、高密度、高性能を達成するためのPCB(プリント配線板)の多層化は必要不可欠となっている。
【0003】
例えば、流動性を有する接着材を使用して一括プレスすることで製造された多層配線板としては、以下に示す特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された製造方法では、電極部等の比較的に硬い部分の有無により表面に歪みが生じるおそれがあった。
【0004】
このような多層配線板に半導体素子等をフリップチップボンディングにより実装するような場合に、多層配線板の実装面に歪みが存在すると、はんだバンプが形状不良となる。この結果、接続信頼性の高い状態で部品を多層配線板に実装することが困難になる。
【0005】
このような不具合を解消する方法としては、例えば多層配線板の両面を研磨して平坦化する技術(特許文献2参照)や、歪みが生じた箇所にソルダーレジストを塗布した後に、レーザ等により開口された電極の表面に導電ペーストを埋めるといった技術(特許文献3参照)が知られている。また、歪みが生じないようにダミーの回路を形成する方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【特許文献2】特開平6−13755号公報
【特許文献3】特開2008−4870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、多層配線板に歪みが生じないようにする様々な技術において、ダミーの回路を設ける手法では、歪みをまったく生じないようにするのは困難であった。
【0008】
一方、生じてしまった歪みを解消する手法として、多層配線板を研磨して平坦化する技術では、多層配線板の表面に形成された電極部を含む導体回路パターンも研磨されることになる。このため、導体回路パターンが薄化して回路抵抗が増大するといった不具合を招くおそれがあった。さらに、導体回路パターンの厚みよりも大きな歪みを解消することができないといった不具合も生じる。
【0009】
一方、ソルダーレジストを用いて歪みを解消する技術では、ソルダーレジストの厚みよりも大きな歪みを解消することができないといった問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歪みを解消して配線板表面を平坦化し、最上面の導体回路パターンの高さを同一にした多層配線板の製造方法および多層配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、第1絶縁層の一方の主面に第1導体回路パターンを形成した第1基板を形成する第1の工程と、第2絶縁層の一方の主面に第2導体回路パターンを形成し、第2絶縁層の他方の主面に接着層を形成し、第2絶縁層ならびに接着層を貫通して第2導体回路パターンに接合する層間導通部を形成した第2基板を形成する第2の工程と、層間導通部を介して第1導体回路パターンと第2導体回路パターンとを接合して第1基板と第2基板とを積層する第3の工程と、第3の工程により第2絶縁層に生じた凹部を含む第2絶縁層の一方の主面に発泡性の樹脂層を形成する第4の工程と、第2絶縁層の一方の主面上に離型性フィルムを配置した後、発泡性の樹脂層を加熱して発泡性の樹脂層を発泡させる第5の工程と、離型性フィルムを除去して、第2基板の一方の主面を平坦化する第6の工程とを有する多層配線板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、第1絶縁層と、第1絶縁層の一方の主面上に形成された第1導体回路パターンと、第1絶縁層と第1導体回路パターンを被覆する接着層と、接着層上に形成された第2絶縁層と、第2絶縁層の一方の主面上に形成された第2導体回路パターンと、接着層と第2絶縁層とを貫通し、第1導体回路パターンと第2導体回路パターンとを導通させる層間導通部とを少なくとも備えた多層配線板において、第2絶縁層には凹部を有し、第2絶縁層上には、凹部を埋め込むように発泡性の樹脂層を含む第3絶縁層が形成されている多層配線板が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多層配線板に生じた歪みを解消して多層配線板の表面を平坦化することができる。これにより、最上面の導体回路パターンの高さを同一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1〜図6は本発明の実施形態1に係る多層配線板の製造方法を示す工程断面図である。 先ず、図1〜図6を参照して、多層配線板の製造方法を説明する前に、この実施形態1で説明する製造方法で製造された多層配線板の構成を、図6を参照して説明する。図6はこの実施形態1で説明する製造方法の工程を経て完成した多層配線板の構成を示す断面図でもある。
【0017】
図6において、多層配線板は、可撓性絶縁基材をなす例えばポリイミドフィルムを基材とした銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)と、流動性を有する接着材と、導電性ペーストのビアで構成された層間導通部とを備えて構成されている。
【0018】
ポリイミドフィルム(第1絶縁層もしくは第2絶縁層)11a〜11dの一方の主面には、銅箔からなる導体回路パターン13a〜13c、13dー1〜13d−3(第1導体回路パターンもしくは第2導体回路パターン)が形成されている。多層配線板の最上面の導体回路パターンの内、一部の導体回路パターンで図示されている導体回路パターン13dー1〜13d−3は、電極として機能する。すなわち、この電極には、この多層配線板に実装される実装部品が電気的に接合される。
【0019】
ポリイミドフィルム11b〜11dの他方の主面には、接着材12a〜12cが形成され、この接着材12a〜12cを介してポリイミドフィルム11a〜11dが接着されて積層される。ポリイミドフィルム11b〜11dと接着材12a〜12cを貫通して層間導通部14a〜14cが形成されている。層間導通部14aは、導体回路パターン13aと導体回路パターン13bとを導通し、層間導通部14bは、導体回路パターン13bと導体回路パターン13cとを導通し、層間導通部14cは、導体回路パターン13cと導体回路パターン13dー1〜13d−3とを導通して構成される。
【0020】
最上層を構成するポリイミドフィルム11dに形成された導体回路パターン13d−1〜13d−3の内、積層工程において、導体回路パターン13d−2が形成された周囲に歪みが生じて凹部が形成されている。少なくともこの凹部に埋め込まれて最上層のポリイミドフィルム11dの表面には、発泡性のウレタンを混合した液状のソルダーレジスト(熱硬化性エポキシ樹脂膜)21が形成されている。これにより、多層配線板の一方の主面は、導体回路パターン13dー1〜13d−3の表面が露出した状態で平坦化されている。この結果、最上面の導体回路パターン13dー1〜13d−3の露出した表面は、その高さが同一となるように構成されている。
【0021】
次に、図1〜図6を参照して、多層配線板の製造方法を説明する。
【0022】
先ず、図1に示すように、凹状の歪みが生じている多層配線板に対して本発明で採用した特徴的な技術を適用して歪みを解消する手法を説明する。
【0023】
図1に示す多層配線板は、例えば以下にような製造方法で製造することができる。先ず、厚さ30μm以下、例えば厚さ20μm程度の非熱可塑性のポリイミドフィルム11dと、このポリイミドフィルム11dの一方の主面に貼られた厚さ10μm程度の銅箔とからなる基材を用意する。
【0024】
次に、エッチング処理により銅箔を選択的にエッチング除去して所定パターンの導体回路パターン13d−1,13d−2,13d−3を形成する。なお、多層配線板の最上層(最上面)に形成された導体回路パターン13d−1,13d−2,13d−3は、この多層配線板に実装される部品が接続される電極として機能する。
【0025】
続いて、導体回路パターン13d−1,13d−2,13d−3が形成されていないポリイミドフィルム11dの他方の主面に、接着材12cとなるフィルム状の接着層を形成し、このフィルム状の接着層の上にカバー層(図示せず)を形成する。フィルム状の接着層は、例えばエポキシ樹脂及びアクリル系エラストマーからなるフィルム状熱硬化接着シート(厚さ25μm)を100℃で30秒間熱ラミネートすることによって形成する。カバー層は、例えばポリイミドフィルム(厚さ25μm)を10℃で30秒間熱ラミネートすることによって形成する。
【0026】
次に、例えばUV−YAGレーザ(波長355nm)を照射してカバー層、フィルム状の接着層及びポリイミドフィルム11dを貫通して導体回路パターン13d−1,13d−2,13d−3に至る貫通孔を形成する。続いて、この貫通孔にスクリーン印刷等により導電性ペーストを充填して、層間の導体回路パターンを電気的に接続する層間導通部14cを形成する。
【0027】
次に、カバー層を剥離する。これによって、層間導通部14cの先端には、フィルム状の接着層より突出する突起部が形成される。このような工程を経て、多層配線板の一層分の配線板が形成される。
【0028】
上記工程と同様な工程により、ポリイミドフィルム11c、接着材12b、導体回路パターン13cならびに層間導通部14bを備えた一層分の配線板が形成され、同様に、ポリイミドフィルム11b、接着材12a、導体回路パターン13bならびに層間導通部14aを備えた一層分の他の配線板が形成される。
【0029】
一方、厚さ30μm以下、例えば厚さ20μm程度の非熱可塑性のポリイミドフィルム11aと、このポリイミドフィルム11aの一方の主面に貼られた厚さ10μm程度の銅箔とからなる基材を用意する。
【0030】
次に、エッチング処理により銅箔を選択的にエッチング除去して所定パターンの導体回路パターン13aを形成する。これにより、多層配線板の一層分の他の配線板が形成される。
【0031】
次に、上記工程で形成された各層の配線板の層間導通部14a〜14cの突起部と導体回路パターン13a〜13cとを位置合わせして対向した後、加熱プレスする。これにより、接着材12a〜12cならびに層間導通部14a〜14cの導電性ペーストが硬化して一括積層され、多層配線板が形成される。
【0032】
次に、図2に示すように、上記積層工程において、例えば導体回路パターン13d−2が形成された周囲に歪みが生じて凹部となっている多層配線板に対して、その最上層のポリイミドフィルム11dの表面に、発泡性の樹脂層を形成する。この発泡性の樹脂層は、発泡性のウレタンを混合した液状のソルダーレジスト(熱硬化性エポキシ樹脂)21を塗布して形成する。
【0033】
続いて、図3に示すように、表面張力が小さくかつ離型性を有した離型性フィルム31が表面に設けられた金属等の平坦板32を、ソルダーレジスト21が形成された多層配線板の表面に押し当てる。その後、平坦板32を加熱プレスして、ソルダーレジスト21を発泡させる。これにより、発泡前に離型性フィルム31とソルダーレジスト21との間に存在していた空間に発泡したソルダーレジスト21を充填させる。
【0034】
次に、図4に示すように、離型性フィルム31ならびに平坦板32を取り除いた後、例えばUV−YAGレーザ等の照射によって、導体回路パターン13d−2上の発泡したソルダーレジスト21を選択的に除去して、導体回路パターン13d−2の表面を露出させる。
【0035】
次に、図5に示すように、各導体回路パターン13d−1〜13d−3の表面にめっき処理を施し、各導体回路パターン13d−1〜13d−3の厚みを厚くする。このとき、歪みにより最も窪んだ箇所に位置する導体回路パターン13d−2の露出した表面が、少なくともソルダーレジスト21の表面と同程度もしくはそれ以上の高さとなるように導体回路パターン13d−2の厚みを増加させる。
【0036】
最後に、各導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さが同程度となるように、多層配線板の表面を研磨して、配線板表面を平坦化し、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さを同一にする。このような工程を経て、この実施形態1の多層配線板が製造される。
【0037】
なお、図5に示すめっき処理に代えて、スクリーン印刷の手法により各導体回路パターン13d−1〜13d−3の厚みを厚くするようにしてもよい。この場合には、図6に示す工程が実施することなく、配線板表面を平坦化し、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さを同一にすることが可能となる。
【0038】
このように、上記実施形態1においては、多層配線板に生じた歪みを解消することが可能となる。これにより、多層配線板の表面を平坦化することが可能となる。この結果、多層配線板の最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さを同一にすることができる。このときに、最上面に形成された導体回路パターン13d−1〜13d−3は、その厚みを増した状態で、研磨されて平坦化されるので、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の厚みが他の導体回路パターン13a〜13cに比べて薄くなることは回避される。
【0039】
多層配線板の表面が平坦化されて、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3の高さを同一にできることで、多層配線板を用いてフリップチップ実装を行う場合に、電極として機能する、最上面の導体回路パターン13d−1〜13d−3にはんだバンプを良好な形状で形成することが可能となる。これにより、接続信頼性の高い状態で実装部品を多層配線板に表面実装することができる。
【0040】
また、回路設計に際して配線板の平坦性を考慮する必要がなくなり、設計の自由度を高めることができる。さらに、高速伝送に特化した回路設計や耐吸湿リフローに特化した回路設計を容易に実現することが可能となる。
【0041】
歪みの大きさを低減できることで、流動性の小さな接着材を用いる等の特別な材料を選定する必要がなくなる。これにより、一般的に用いられている既存の材料を使用することが可能となり、信頼性の低下や材料コストの増加を回避することができる。
【0042】
離型性フィルム31を押し当てながら加熱プレスによりソルダーレジスト21を発泡させることで、ソルダーレジスト21の表面を平坦化することが可能となる。これにより、ソルダーレジスト21の表面を研磨して平坦化する必要はなくなり、工程数を削減して作業時間を短縮することができる。
【0043】
発泡剤を含まない通常のソルダーレジストでは、レジストの厚みには限界があるため、レジストの厚みよりも大きな歪みを解消することは困難であるが、発泡性のソルダーレジストを採用することで、レジストの厚み以上の大きな歪みを解消することができる。
【符号の説明】
【0044】
11a〜11d…ポリイミドフィルム
12a〜12c…接着材
13a〜13c,13d−1,13d−2,13d−3…導体回路パターン
14a〜14c…層間導通部
21…ソルダーレジスト
31…離型性フィルム
32…平坦板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層の一方の主面に第1導体回路パターンを形成した第1基板を形成する第1の工程と、
第2絶縁層の一方の主面に第2導体回路パターンを形成し、前記第2絶縁層の他方の主面に接着層を形成し、前記第2絶縁層ならびに前記接着層を貫通して前記第2導体回路パターンに接合する層間導通部を形成した第2基板を形成する第2の工程と、
前記層間導通部を介して前記第1導体回路パターンと前記第2導体回路パターンとを接合して前記第1基板と前記第2基板とを積層する第3の工程と、
前記第3の工程により前記第2絶縁層に生じた凹部を含む前記第2絶縁層の一方の主面に発泡性の樹脂層を形成する第4の工程と、
前記第2絶縁層の一方の主面上に離型性フィルムを配置した後、前記発泡性の樹脂層を加熱して前記発泡性の樹脂層を発泡させる第5の工程と、
前記離型性フィルムを除去して、前記第2基板の一方の主面を平坦化する第6の工程と
を有することを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第6の工程の後、前記発泡性の樹脂層を選択的に除去し、前記発泡性の樹脂層で被覆された前記第2導体回路パターンの表面を露出させる第7の工程と、
前記第2導体回路パターンの露出した表面に、前記第2導体回路パターンと同材の導体を形成し、その後前記第2導体回路パターンの表面を露出した状態で前記第2基板の一方の主面を平坦化する第8の工程と
を有することを特徴とする請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項3】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の一方の主面上に形成された第1導体回路パターンと、
前記第1絶縁層と前記第1導体回路パターンを被覆する接着層と、
前記接着層上に形成された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の一方の主面上に形成された第2導体回路パターンと、
前記接着層と前記第2絶縁層とを貫通し、前記第1導体回路パターンと前記第2導体回路パターンとを導通させる層間導通部と、
を少なくとも備えた多層配線板において、
前記第2絶縁層には凹部を有し、前記第2絶縁層上には、前記凹部を埋め込むように発泡性の樹脂層を含む第3絶縁層が形成されている
ことを特徴とする多層配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate