説明

多層配線構造の形成方法

【目的】 樹脂で構成された層間絶縁膜の比誘電率を多層配線構造を形成する際に制御できる方法を提供する。
【構成】 ポリイミド樹脂にナフトキノンジアジド化合物33を混入させたものの膜35を、基板31上に形成する。この試料を250〜400℃の温度で加熱してポリイミド樹脂の層35を硬化させる。
【効果】 ポリイミド樹脂の膜35を硬化させるための熱処理においてナフトキノンジアジド化合物が分解し窒素ガスを発するのでこれによりポリイミド樹脂の膜35は発泡する。この結果、空隙37aを有する層間絶縁膜37が得られる。ナフトキノンジアジド化合物33の添加量を制御することで空隙37aの数を制御して層間絶縁膜37の比誘電率を制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多層配線構造の形成方法に関するものであり、特に層間絶縁膜の比誘電率の制御を行い得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、半導体集積回路(IC)をはじめとする種々の電子部品が実装されるプリント基板や、このようなプリント基板に実装されるICにおいては、配線を層間絶縁膜を介し何層にも重ね、これら配線間は層間絶縁膜に設けた貫通孔を利用して接続する、いわゆる多層配線構造が多用される。そうすることにより、プリント基板や半導体基板に所望の構成成分を高密度に実装若しくは形成でき、また、電子装置やICの動作速度の向上が図れるからである。
【0003】このような多層配線構造を利用する分野において、近年、層間絶縁膜を樹脂、特に耐熱性熱硬化性樹脂で構成することが行われている。それは、層間絶縁膜を真空装置などを利用して形成する方法に比べ層間絶縁膜の形成が簡易であるなどの利点が得られるからである。
【0004】樹脂で構成された層間絶縁膜を有する多層配線構造を形成する場合、従来は一般に以下に説明するような方法がとられていた。図4及び図5はその説明に供する工程図である。いずれの図も多層配線構造を形成する工程中の主な工程での試料をその厚さ方向と平行な方向に沿って切った断面で示したものである。
【0005】先ず、多層配線構造を形成したい下地11上に、層間絶縁膜形成用の樹脂として例えば熱硬化性の樹脂の膜が、例えばスピンコート法やスプレー法などの好適な方法で形成される。次に、この試料に対し所定の温度の熱処理がなされ、樹脂で構成される第1層目の層間絶縁膜13が得られる(図4(A))。ここで、下地とは例えばセラミック基板、アルミナ基板、或いは半導体基板などのような多層配線構造を形成したい種々のものである。また、層間絶縁膜形成用の樹脂とは、例えば、ポリイミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、ポリキノリン(Maxdem社製)、パイレーン(CNET社製)、サイトップ(旭硝子製)、テフロンAF(デュポン社製)、PTEF、PFA等種々の好適な樹脂である。
【0006】次に、層間絶縁膜13上に導体層15としてクロム、銅、チタンまたはアルミニウムなどの好適な薄膜が好適な方法により形成される(図4(B))。なお、場合によっては、層間絶縁膜13と導体層15との密着力を高めるために導体層15を形成する前に層間絶縁膜13の表面がプラズマや薬品によって処理される場合もある。
【0007】次に、導体層15上に、この導体層の所定部分のみを露出する開口17aを有するレジストパターン17が公知のリソグラフィ技術により形成される(図4(C))。
【0008】次に、導体層15のレジスト開口17aから露出している部分上に電解めっき或いは無電解めっき法によりコンタクト配線用の導体膜19いわゆるビヤポスト19が形成される(図4(D))。
【0009】次に、レジストパターン17が除去される(図5(A))。
【0010】次に、この試料上に再び層間絶縁膜形成用の熱硬化性の樹脂の膜21が形成され(図5(B))、さらに、この試料に所定の熱が加えられてこの樹脂膜21の硬化が行われる。
【0011】次に、この硬化された樹脂膜が、ビヤポスト19の表面が露出されるまで除去されて、第2の層間絶縁膜21aが得られる(図5(C))。その後、必要な層数に応じて図4(B)〜図5(C)を用いて説明した手順を繰り返すことにより所望の多層配線構造が得られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の多層配線構造の形成方法では、層間絶縁膜の形成を、単に樹脂の膜を形成しこの膜を硬化させることで行っていた。このため、この層間絶縁膜の比誘電率はこの層間絶縁膜を構成している樹脂が有する比誘電率で決まってしまうので、樹脂を購入し単に使用する側では層間絶縁膜の比誘電率を制御することが困難であるという問題点があった。プリント配線基板やICでは、伝送特性などを向上させるなどの都合上、層間絶縁膜の比誘電率を変化させたい場合が多々あるので、樹脂で構成される層間絶縁膜の比誘電率をこの膜の製造段階で制御できる技術が望まれる。
【0013】この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの発明の目的は樹脂で構成された層間絶縁膜を有する多層配線構造を形成する際に層間絶縁膜の比誘電率を製造段階で制御し得る方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るため、この発明によれば、樹脂で構成された層間絶縁膜を有する多層配線構造を形成するに当たり、層間絶縁膜の形成を以下の(a)〜(c)の工程を含む工程により行うことを特徴とする。
【0015】(a)層間絶縁膜を形成するための樹脂中に、該樹脂を硬化させるために後に該樹脂に印加されるエネルギの作用により分解する発泡剤を、混入する工程。
【0016】(b)該発泡剤を混入させた樹脂の膜を層間絶縁膜を形成するための下地上に形成する工程。
【0017】(c)該樹脂の膜が形成された下地に前述のエネルギを加え該樹脂の膜を硬化させると共に該硬化膜中に前述の発泡剤に起因した空隙を形成する工程。
【0018】ここで、層間絶縁膜を形成するための樹脂は、目的とする多層配線構造に適した種々のものとでき特に限定はされない。例えば、ポリイミド樹脂をはじめとする上述の例示樹脂は好適である。
【0019】また、樹脂を硬化させるために該樹脂に後に印加するエネルギは、たとえば熱が好適である。しかし、場合によっては光など他のエネルギ源でも良い。
【0020】また、層間絶縁膜を形成するための下地とは、層間絶縁膜を形成したい各種の下地であることができる。例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、ガラス基板、若しくは半導体基板などの種々の基板、これら基板に1層若しくは何層かの多層配線構造が既に形成されたものなどである。
【0021】また、前述の発泡剤としては、これに限定されないが、例えば芳香族ビスアジド例えばナフトキノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0022】
【作用】この発明の構成によれば、樹脂で構成され、かつ、内部に空隙を多数有する層間絶縁膜(多孔質状の層間絶縁膜)が得られる。空隙部分の誘電率は層間絶縁膜形成用の樹脂の誘電率と異なるから、この発明の方法で形成された層間絶縁膜の比誘電率は単に樹脂のみで層間絶縁膜を構成した場合とは異なる値になる。例えば、空隙内が空気であるとすると、この層間絶縁膜の比誘電率は樹脂のみで層間絶縁膜を構成した場合より小さくなる方向に制御できる。また、空隙の大きさや密度により層間絶縁膜の比誘電率を変えることができ、さらにこの空隙の密度は、例えば、層間絶縁膜形成用の樹脂への発泡剤の混合量を調整することにより制御できるので、層間絶縁膜の比誘電率制御が行える。
【0023】
【実施例】以下、図1〜図3を参照してこの発明の多層配線構造の形成方法の実施例について説明する。なお、これら図は多層配線構造を形成する工程中の主な工程での試料をその厚さ方向と平行な方向に沿って切った断面で示したものである。しかしながら、これら図はこの発明を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状及び配置関係を概略的に示してあるにすぎない。
【0024】先ず、多層配線構造を形成したい下地例えばガラス基板、セラミックス基板などを用意し、これを有機溶剤等を用い洗浄する。一方、層間絶縁膜を形成するための樹脂としてのこの場合ポリイミド樹脂中に、該樹脂を硬化させるために後に該樹脂に印加されるエネルギ(この実施例では熱としている。)の作用により分解する発泡剤としてのこの場合ナフトキノンジアジド化合物を、適当量混入しておく。
【0025】次に、発泡剤を混入させた上記ポリイミド樹脂を基板上に例えばスピナ、ロールコータ若しくはバーコータなどの好適な装置を用い塗布して、基板31上に発泡剤33を含有する樹脂の膜35を形成する(図1(A))。
【0026】次に、この樹脂の膜35を硬化させるためにこの試料を好適な加熱装置を用いて加熱する。この加熱は、これに限られないが例えば、ハーフキュアと称される工程(たとえば80〜130℃の温度とされる工程)と、この工程に続くフルキユアと称される工程(たとえば200〜450℃の温度とされる工程)とにより行える。ナフトキノンジアジド化合物は140℃以上に加熱すると分解し窒素(N2 )ガスを発することが知られている。そして、ポリイミド樹脂を硬化させる温度は、上述のごとく200〜450℃の高温を含むので、ナフトキノンジアジド化合物がN2 ガスを発する温度に比べ充分高い。このため、ポリイミド樹脂の膜35を硬化させるための工程ではこの膜35中のナフトキノンジアジド化合物がN2 ガスを発するのでこの影響でこのポリイミド樹脂の膜35が発泡し、この結果、空隙37aを有する層間絶縁膜37が得られる(図1(B))。ここで、層間絶縁膜37中の空隙37aの密度(数)によりこの層間絶縁膜37の比誘電率を変えられる。そして、空隙37aの密度(数)は、樹脂へのナフトキノンジアジド化合物の添加量で調整できる。
【0027】次に、層間絶縁膜37の表面を平坦化する目的で、この層間絶縁膜37上に、今度は層間絶縁膜形成用の樹脂(説明上、平坦化用樹脂ともいう。)のみ(ナフトキノンジアジド化合物を含まないもの)を好適な方法で塗布し、ついで、これを熱硬化させ平坦化層39を得る(図1(C))。この平坦化層39は勿論、層間絶縁膜の一部を構成する。ただし、層間絶縁膜37の表面が実用上問題の無い平坦性を有している場合はこの平坦化層39は必ずしも設ける必要はない。反面、平坦化用樹脂の塗布では平坦化ができないような場合は、研磨処理やエッチバック処理を実施するのが良い。
【0028】次に、層間絶縁膜37上(平坦化層39を設けた場合はこの上)に、導体層(図示せず)としてクロム、銅、チタンまたはアルミニウムなどの好適な薄膜を蒸着法、スパッタ法等の好適な方法で形成する。なお、場合によっては、層間絶縁膜37とこの導体層との密着力を高めるために導体層を形成する前に層間絶縁膜37の表面をプラズマや薬品によって処理しても良い。次に、この導体層の形成された試料上にこの導体層の所定部分のみを露出する開口を有するレジストパターン(図示せず)を形成する。次に、この導体層のレジスト開口から露出している部分上に電解めっき或いは無電解めっき法により金属膜を形成し下側配線41を得る(図1(D))。次に、下側配線41形成済みの試料上に下側配線41の所定部分のみを露出する開口43aを有するレジストパターン43を公知のリソグラフィ技術により形成する(図1(D))。
【0029】次に、配線形成用の薄膜41のレジスト開口43aから露出している部分上に電解めっき或いは無電解めっき法によりコンタクト配線用の導体膜45いわゆるビヤポスト45を形成する(図2(A))。次に、レジストパターン43を除去する(図2(B))。
【0030】次に、この試料上に発泡剤35を含有させた層間絶縁膜形成用の樹脂の膜35を再び例えば図1(A)を用い説明した方法により形成する(図2(C))。
【0031】次に、例えば図2(B)を用い説明した方法によりこの樹脂の膜35を硬化させると共に発泡させて空隙37aを形成する(図3(A))。
【0032】次に、必要に応じ図1(C)を用い説明した方法により平坦化層(図示せず)を形成し、次に、この試料表面を、ビヤポスト45の表面が露出されるまでエッチングする。これにより空隙37aを有する層間絶縁膜47が得られる(図3(B))。
【0033】次に、この層間絶縁膜47上に上側配線形成用の薄膜たとえばクロム、金、或いは銅などの薄膜(図示せず)を好適な方法により形成し、さらにこの薄膜を公知の方法によりパターニングして上側配線49を得る(図3(C))。
【0034】その後、必要な層数に応じて図1(D)〜図3(C)を用いて説明した手順を繰り返すことにより所望の多層配線構造が得られる。
【0035】上述においてはこの発明の多層配線構造の実施例について説明したがこの発明は上述の実施例に限られない。たとえば、下側配線や上側配線の形成手順は単なる例示にすぎない。また、多層配線の構造も単なる例示にすぎない。
【0036】
【発明の効果】上述した説明から明らかなようにこの発明によれば、樹脂で構成され、かつ、内部に空隙を多数有する多孔質状の層間絶縁膜を、多層配線構造の形成途中で形成できる。したがって、単に樹脂のみで層間絶縁膜を構成する場合とは異なる比誘電率の層間絶縁膜が容易に得られる。しかも、層間絶縁膜形成用の樹脂への発泡剤の混合量を調整することにより比誘電率を制御できるので、層間絶縁膜の比誘電率制御が行える。このため、所望の比誘電率の層間絶縁膜が得やすくなるので電子装置やICにおける伝送特性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の説明に供する工程図である。
【図2】実施例の説明に供する図1に続く工程図である。
【図3】実施例の説明に供する図2に続く工程図である。
【図4】従来技術の説明に供する工程図である。
【図5】従来技術の説明に供する図4に続く工程図である。
【符号の説明】
31:基板
33:発泡剤
35:層間絶縁膜形成用樹脂の膜
37,47:空隙を有する層間絶縁膜
37a:空隙
41:下側配線
45:ビヤポスト
49:上側配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂で構成された層間絶縁膜を有する多層配線構造を形成するに当たり、層間絶縁膜の形成を以下の(a)〜(c)の工程を含む工程により行うことを特徴とする多層配線構造の形成方法。
(a)層間絶縁膜を形成するための樹脂中に、該樹脂を硬化させるために後に該樹脂に印加されるエネルギの作用により分解する発泡剤を、混入する工程。
(b)該発泡剤を混入させた樹脂の膜を層間絶縁膜を形成するための下地上に形成する工程。
(c)該樹脂の膜が形成された下地に前記エネルギを加え該樹脂の膜を硬化させると共に該硬化膜中に前記発泡剤に起因した空隙を形成する工程。
【請求項2】 請求項1に記載の多層配線構造の形成方法において、前記発泡剤をナフトキノンジアジド化合物としたことを特徴とする多層配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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