説明

多層電子回路およびデバイス用の厚膜導体組成物およびその加工技術

【課題】多層電子回路におけるビア充填および/または配線導体の両方への応用に有用な厚膜導体組成物の提供。
【解決手段】本発明は、低温同時焼成セラミック(LTCC)デバイス、ならびに基板上感光性テープ(PTOS)の金、銀および混合金属多層回路およびデバイスなど他の多層相互接続(MLI)セラミック複合回路の製造のためのビア充填および/または配線導体への応用に有用な厚膜導体組成物に関する。本発明は、アンテナ、フィルタ、バラン、ビーム形成器、I/O、カプラ、ビア貫通接続、EM結合貫通接続、ワイヤボンド接続および伝送配線を含む群から選択されるマイクロ波回路部品および他の高周波回路部品の形成に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温同時焼成セラミック(LTCC)デバイス、ならびに基板上感光性テープ(PTOS)、金、銀および混合金属多層回路およびデバイスなどの他の多層相互接続(MLI)セラミック複合回路の製造のためのビア充填および/または配線導体の両方への応用に有用な厚膜導体組成物、ならびにLTCC、PTOS、MLI回路およびデバイスの費用対効果の高い製造配線導体に関する。組成物は1回で印刷可能であり、配線導体とビア充填導体の両方を一緒にまたは個々に印刷して加工するコストを削減する。また、本発明は、多数の層およびより厚いテープを含む多層デバイスを作製するための高固体含有低粘度ビア充填厚膜組成物の印刷および加工技術にも関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜導体は、抵抗体、キャパシタ、インダクタ、集積回路などの間の電気的相互接続部として機能する。さらに、多層デバイスおよび多層回路では、これらの導体はデバイス中に形成されたビアを介して導体配線の層の間を相互接続する。言い換えると、LTCCデバイス用のテープキャスティングされたセラミックグリーンシートは穿孔され、適当な導体配線で覆われ、焼成前に積み重ねられ積層される。穿孔は各層を貫通するビアの機械的穴開けで行われ、該ビアは、層間の回路を相互接続するためにビア充填導体配合物で充填される。PTOS回路の加工は、参照により本明細書に組み込まれる、最近の発明開示である特許文献1に記載されている(特許文献1参照)。言い換えると、相互接続デバイスは、「グリーンシステム」によって電気的にも機械的にも接続される、電子回路、ならびに抵抗体、キャパシタ、インダクタなどの表層および埋め込みサブシステムであり、「グリーンシステム」は既知の有毒物質をほとんどあるいはまったく含まず、社会全般にとって環境面でより安全で、さらに公衆が望むこのようなシステムへの新たな目標である。
【0003】
他の厚膜材料と同様に、厚膜導体およびビア充填物は、共に微細に分割された形態であり、ビヒクル中に分散される活性(導電性)金属および無機結合剤から構成される。この導電相は、通常は、金、パラジウム、銀、白金またはこれらの合金であり、その選択は、たとえば抵抗率、ハンダ付け適性、耐ハンダ浸食性、ボンディング性、接着性、耐マイグレーション性など、求められる個々の性能特性に依存する。多層デバイスでは、内層導体線路およびビア導体は、求められる追加の性能特性、たとえば、焼成の際に導体配線が最上および最下の誘電体層中に「沈み込む」ことの最小限化、繰り返し焼成の際の抵抗率変化、ビア充填導体に対する配線導体の界面接続性、周囲のセラミック材料に対するビア充填導体の界面接合性にも依存する。
【0004】
厚膜技術は、蒸着またはスパッタリング(真空を使用する、または使用しない)による粒子の堆積を伴う薄膜技術と対照的である。厚膜技術は、当業者によく知られている。
【0005】
適切なレベルの導電率および前述の他の特性に加えて、ワイヤボンディング性、セラミック膜および厚膜の両方への良好な接着性、他の表層および埋め込み厚膜に対するハンダ付け適性および密着性、長期的な安定性(特性劣化がほとんどない、またはより少ないこと)など、存在しなければならない多くの二次特性がある。
【0006】
予期されるように、多層相互接続デバイス用の厚膜導体の技術における1つの決定的に重要な変数は、周囲のセラミックスとの相互作用による抵抗率変化である。この点に関して特に重要なのは、高融点耐熱ガラスが組み込まれていることであり、ガラスは周囲のセラミックス中に存在する残留ガラスとほとんどあるいはまったく混和しない。さらに、金属酸化物および非金属酸化物結合剤材料をこの組成物に追加で組み込むことにより、導体組成物の緻密化が増進され、および/または望ましくない結果である組成物の抵抗率の変化をもたらす結晶性材料の導体組成物中への成長が制御される。
【0007】
加えて、MLIデバイスで使用される技術における2番目に決定的に重要な変数は、内部に埋込まれたビア充填物と配線導体との界面接続性である。固形分の違い、およびビアを完全に充填し、ビアを配線導体と接続するために必要な印刷条件の違いにより、導体−ビア界面の応力の発現および著しい層剥離、ならびにその界面での微細構造の変化が生じる。これにより、望ましくない結果である導電率の違いが生じる。
【0008】
予期されるように、MLIデバイスで使用される最先端厚膜技術における3番目に決定的に重要な変数は、配合物の粘度の著しい差異による、ビアの充填および配線導体の印刷のために必要な印刷の差異である。ビア充填導体配合物の典型的な粘度は1500〜7000PaS以上の範囲にあり、配線導体の粘度は通常150〜300PaSの範囲にある。これら粘度の差異は、ビアを充填し、配線導体配合物の高速印刷するために決定的に重要である。ビア充填配合物の粘度が低下すると、「テープの底から流出し」、「ピーキング(peaking)」を示す可能性があり、高粘度の配合物は、ビアを充填するために複数回印刷する必要がある。多くの高粘度配合物は、ビアの「ポスティング(posting)」を示す。一方、配線導体配合物の粘度は、断線のない接続配線、より細い配線を印刷し、またその配合物をより高い生産性のために十分な高速で印刷するために、配線導体配合物の粘度は低く保つべきである。
【0009】
4番目に決定的に重要な変数は、層剥離を生じることのない多層相互接続積層物の加工、特により多くの層および10ミル(0.254mm)以上までのより厚いグリーンテープを含むより厚い積層物の加工である。これらのグリーン部分は、大量の有機物を含む。加熱加工中、存在する樹脂およびポリマーは、その親ポリマーよりも蒸気圧の高いモノマー、ダイマー等に「解重合」し、加工の初期段階で系を離れる。残留有機成分は、プロセス後半で炭素含有種に分解する。
【0010】
テープ中に存在するガラスの軟化前にすべての有機物を取り除くために必要な温度プロファイルは、有機物の量および質、加熱速度、温度、焼成雰囲気条件などに依存する。上記要素のうちの1つまたは複数の変化により、層の層剥離、ビア−テープ側壁の分離、ビアと配線導体の分離、および最終的には歩留まり損失をもたらす。
【0011】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/703,530号明細書
【特許文献2】英国特許第772675号明細書
【特許文献3】米国特許第4,381,945号明細書
【特許文献4】米国特許仮出願第60/674,433号明細書
【特許文献5】米国特許出願第10/910,126号明細書
【特許文献6】米国特許第5,210,057号明細書
【特許文献7】米国特許第2,760,863号明細書
【特許文献8】米国特許第2,850,445号明細書
【特許文献9】米国特許第2,875,047号明細書
【特許文献10】米国特許第3,097,096号明細書
【特許文献11】米国特許第3,074,974号明細書
【特許文献12】米国特許第3,097,097号明細書
【特許文献13】米国特許第3,145,104号明細書
【特許文献14】米国特許第3,427,161号明細書
【特許文献15】米国特許第3,479,186号明細書
【特許文献16】米国特許第3,549,367号明細書
【特許文献17】米国特許第4,162,162号明細書
【特許文献18】米国特許第3,380,381号明細書
【特許文献19】米国特許第2,927,022号明細書
【特許文献20】米国特許第5,049,480号明細書
【特許文献21】米国特許第6,147,019号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、低温同時焼成セラミック回路用の厚膜組成物に関する。この厚膜組成物は、厚膜組成物全体に対する重量%に基づいて、
(a)貴金属、貴金属合金およびこれらの混合物から選択される30〜96重量%の微細粒子と、
(b)(1)前記回路の焼成温度で6〜7.6の範囲の比粘度(log n)を有する、0.2〜10重量%の1種または複数種の耐熱ガラス組成物、
(2)(i)金属酸化物、(ii)金属酸化物の前駆体、(iii)非酸化物ホウ化物、(iv)非酸化物シリサイドおよび(v)これらの混合物から選択される、0.1〜5重量%の追加の無機結合剤、ならびに
(3)これらの混合物
から選択される1種または複数種の無機結合剤と、
(c)2〜20重量%の有機媒体であって、エトキシル基の比含有率が45.0〜51.5の範囲にあり、アンヒドログルコース単位当たりのエトキシル基の置換度が2.22〜2.73の範囲にあるエチルセルロースを含む有機媒体と
を含み、成分(a)および(b)は成分(c)中に分散されている。
【0013】
低温同時焼成セラミックス回路では、上記組成物を処理して、ガラス、金属粉末および/または他の焼結助剤を焼結し、有機媒体を除去してもよい。1つの実施形態では、耐熱ガラス組成物が、ガラス組成物全体に対する重量%に基づいて、25〜60%のSiO、10〜20%のAl、10〜15%のB、5〜25%のCaO、および残余である1〜5%の他のネットワーク修飾イオンを含む。
【0014】
本発明はさらに、多層回路を形成する方法を含む。この方法は、
a)複数のグリーンテープ層内にビアのパターン状アレイを形成する工程と、
b)工程(a)のグリーンテープ層内のビアを、ビア充填厚膜組成物で充填する工程と、
c)工程(b)のビア充填済グリーンテープ層のいずれかまたはすべての表面の上にパターン状の厚膜機能層を印刷する工程と、
d)工程(c)のグリーンテープ層の最外表面の上に表面厚膜のパターン状の層を印刷する工程と、
e)工程(d)の印刷済グリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープで隔てられた複数の未焼成の相互接続される機能層を備える組立体を形成する工程と、
f)工程(e)の組立体を同時焼成する工程と
を含み、前記ビア充填厚膜組成物、パターン状の厚膜機能層および表面厚膜のうちの1種または複数種で上記組成物を使用する。
【0015】
本発明はさらに、
a)複数のグリーンテープ層内にビアのパターン状アレイを形成する工程と、
b)工程(a)のグリーンテープ層内のビアを、ビア充填厚膜組成物で充填する工程と、
c)工程(b)のビア充填済グリーンテープ層のいずれかまたはすべての表面の上にパターン状の厚膜機能層を印刷する工程と、
d)工程(c)の印刷済グリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープによって分離されている複数の未焼成の相互接続される機能層を備える組立体を形成する工程と、
e)工程(d)の組立体の上に表面厚膜組成物のパターン状の層を少なくとも1層印刷する工程と、
f)工程(e)の組立体とパターン状の層とを同時焼成する工程と
を含み、前記ビア充填厚膜組成物、パターン状の厚膜機能層および表面厚膜のうちの1種または複数種で上記組成物を使用する、多層回路を形成する方法を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明は、前記ビア充填厚膜組成物および前記厚膜機能層のうち少なくとも1層で本発明の組成物を使用し、前記ビア充填厚膜組成物および厚膜機能層を単一の工程で同時に印刷する、上記の方法に関する。本発明はまた、上記方法によって形成される回路にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
したがって本発明は、ポスティングも流出もなしに導体配線およびビア充填導体の両方を1回で印刷するのに十分な低い粘度を維持するために、独特の有機成分を用いる貴金属メタライゼーションの加工を対象とする。さらに、本発明は具体的にはLTCCデバイスの加工に関する。LTCCデバイスの加工では、マイラー(登録商標)などのテープバッキングを覆って印刷され、PTOSデバイスの場合においては印刷導体を製造するための露光後のテープの「アンダーカット」を含んで、ビアが充填される。該デバイスを繰り返し焼成すると、焼成した回路は優れた電気特性を有する。特に、本発明は、純銀、純金および混合金属の電子デバイスの製造に適した一連の金属メタライゼーションを対象とする。このメタライゼーションは、
(a)貴金属、貴金属合金およびこれらの混合物から選択される30〜96重量%の微細粒子、
(b)(4)前記回路の焼成温度で6〜7.6の範囲の比粘度(log n)を有する、0.2〜10重量%の1種または複数種の耐熱ガラス組成物、
(5)(i)金属酸化物、(ii)金属酸化物の前駆体、(iii)非酸化物ホウ化物、(iv)非酸化物シリサイドおよび(v)これらの混合物から選択される、0.1〜5重量%の追加の無機結合剤、ならびに
(6)これらの混合物
から選択される1種または複数種の無機結合剤、
(c)2〜20重量%の有機媒質であって、エトキシル基の比含有率が45.0〜51.5の範囲にあり、アンヒドログルコース単位当たりのエトキシル基の置換度が2.22〜2.73の範囲にあるエチルセルロースを含む有機媒体の混合物であり、成分(a)および(b)は成分(c)中に分散されている。
【0018】
これらの成分の上記機能性は、混合物を焼成して無機材料、ガラスおよび金属の焼成を行う、あるいは複合系を一括して焼成することによって得ることが可能である。
【0019】
本発明のさらなる態様は、有機媒体中に分散させた上記メタライゼーションを含むスクリーン印刷可能なかつ/またはステンシル塗布可能なペーストを対象とし、該有機媒体は、高固体、低粘度、高速印刷の配合物を作製するために必要な特性である「疎水性」を示すのに十分なエトキシル基を含有する特定種のエチルセルロースを特に対象とする。さらに、本発明は、導電性パターンおよび接続または非接続ビア充填導電性パターンが貼り付けられた非導電性LTCCセラミック基板、PTOSまたは他のMLI基板を備える導電性素子を対象とし、それらパターンは、上記スクリーン印刷可能なペーストおよび/またはステンシル塗布ペーストのパターンを印刷し、その印刷物および/または積層物を焼成して有機媒体を揮発させ、無機材料およびメタライゼーションの液相焼結を行うことによって形成される。さらに別の態様では、本発明は、単独および/またはビア充填物と併せて導体を作製する方法を対象とする。この方法は、(a)上記スクリーン印刷可能なペーストのパターン厚膜を非導電性セラミック基板に適用する工程と、(b)この膜を200℃より低い温度で乾燥させる工程と、(c)乾燥させた膜を焼成して無機材料およびメタライゼーションの液相焼結を行う工程とを含む。
【0020】
本発明のさらなる態様は、導電性ビア充填物で接続されるまたは接続されない導電性パターンを有する非導電性セラミックスの多くの厚膜(10ミル(0.254mm)以上)を含むLTCCおよびMLIデバイスの印刷および加工技術を対象とする。ここで、多数の厚膜を積層し、長期にわたる加熱プロファイルを用いて熱処理して有機物を除去し、改良されたデバイスを得る。
【0021】
A.導体材料
本発明で使用される微細に分割された金属は、厚膜導体用の市販の貴金属粉末、またはより良好な分散のために有機物でコーティングされた貴金属粉末でよい。導体材料は、有機材料でコーティングしてもよいし、コーティングしなくてもよい。特に、微細金属粒子は、界面活性剤でコーティングすることができる。1つの実施形態では、界面活性剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩およびこれらの混合物から選択される。対イオンは、水素、アンモニウム、ナトリウム、カリウムおよびこれらの混合物であることができるが、それらに限定されない。
【0022】
上記金属材料の粒度は、本発明におけるそれらの技術的効果の観点からはそれほど重要ではない。しかし、当然のことながら、金属材料は、それらを付着する方法(通常はスクリーン印刷および/またはステンシル塗布)および焼成条件に適した粒度を有するべきである。さらに、上述の金属粉末は、2ミル(0.0508mm)から10ミル(0.254mm)以上の厚さの未焼成セラミックテープ上へのスクリーン印刷および/またはステンシル塗布、ならびに複合体の積層条件および焼成条件に適した粒度および形態を有するべきである。したがって、金属材料は、10μm以下、好ましくは約5μm未満であるべきである。実際問題として、使用可能な金属の粒度は、パラジウムで0.1〜10μm、銀で0.1から10μm、白金で0.2〜10μm、金で0.5〜1μmほどの小ささである。
【0023】
Pd/Agを導体材料として使用する場合、Pd/Ag金属粉末の割合は、0.06から1.5の間、好ましくは0.06から0.5の間で変化させることができる。Pt/Agを導体材料として使用する場合、Pt/Ag金属粉末の割合は、0.003から0.2の間、好ましくは0.003から0.05の間で変化させることができる。Pt/Pd/Auの場合にも同様の割合を使用することができる。これらの金属粉末は、フレーク状または非フレーク状形態を有することができる。非フレーク状粉末は、不規則形状でも球状でもよい。フレーク状の形態とは、走査型電子顕微鏡によって決定されるその主な形状がフレーク状である金属粉末を意味する。そのようなフレーク状の銀の平均表面積は約1m/g、固体含有率は約99〜100重量%である。典型的には、非フレーク状銀粉末は約0.1〜2.0m/gの平均表面積、および約99〜100重量%の固体含有率を有する。
【0024】
パラジウムの金属粉末は、2.0〜15.0m/g、好ましくは7.0〜11.0m/gの平均表面積、および約99〜100重量%の固体含有率を有する。白金の金属粉末は、約10m/gから30m/gの表面積、および98〜100重量%の固体含有率を有する。金の金属粉末は、約m/gの表面積、および99〜100重量%の固体含有率を有する。
【0025】
本発明の実施形態で使用される金粉末の例は、典型的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される粒度分布(PSD)d50が約0.5〜5μmであり、固体含有率が99〜100重量%である金の金属粉末を含む。いくつかの実施形態では、金の金属粉末は単一の粒度で、双晶をほとんど含まず、幅の狭いPSDを有する。d50が約5μmでより幅の広い分布を有する大型の粉末も使用される。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、球状の金属粉末を使用する。これら球状の金属粉末は、充填された際、フレーク状粉末および他の形状の粉末に対して粒子同士の接触がより大きい。これにより、本発明の他の成分と組み合わせた際、金属同士の接触が生じ、したがって比較的連続した伝導電子の流れが生じる。これらの緻密に充填された球状金属粒子には、「4面体」および/または「8面体」の空孔が認められる。これらの空孔には、後述する金属酸化物および/またはガラスなど本発明の特定の無機結合剤が定着ことができ、加工時に、これらの無機結合剤は軟化し、従来の組成物と比べて金属同士の接触に優れ、電子の流れがより連続的である均一なハニカム型構造に構造を維持する。1つの実施形態では、1から4ミクロンの範囲の平均粒度分布を有する球状金属粒子が好ましい。別の実施形態では、2から3ミクロンの平均粒度が好ましい。後述の無機結合剤と組み合わせたこれらの球状粉末は、マイクロ波用途で特に有用である。
【0027】
B.無機ガラス結合剤
本発明の無機結合剤は、(1)前記回路の焼成温度で6〜7.6の範囲の比粘度(log n)を有する、1〜20重量%の1種または複数種の耐熱ガラス組成物、(2)(i)金属酸化物、(ii)金属酸化物の前駆体、(iii)非酸化物ホウ化物、(iv)非酸化物シリサイドおよび(v)これらの混合物から選択される、0.1〜5重量%の追加の無機結合剤、ならびに(3)これらの混合物から選択される1種または複数種の無機結合剤である。
【0028】
本発明の導体組成物のガラス成分は、高軟化点かつ高粘度のガラスであり、全厚膜組成物に基づいて1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部のレベルである。本明細書で使用する高軟化点ガラスという用語は、平行板粘度測定技術(ASTM法)によって測定される軟化点が600〜950℃、好ましくは750〜870℃であるガラスのことである。
【0029】
本発明で使用されるガラスはまた、焼成条件において、LTCC基板ガラス中に存在する残留ガラスと非混和性、あるいは部分的に混和性であるにすぎないものでなければならない。LTCC構造を焼成すると、LTCC誘電体グリーンテープ中に存在するガラスが部分的に結晶化し、高融点の無機結晶性材料と共に、非常に低融点の「残留ガラス」が形成されることになる。この「残留」ガラスの化学的性質は「親」ガラスと異なり、その結果、「残留」ガラスの軟化点および他の特性もその「親」ガラスとは異なる。一般的な法則として、LTCC焼成温度での「残留」ガラスの粘度は「親」ガラスよりも低くなる。
【0030】
LTCC基板ガラス中に存在するガラスとの混合を抑えることができ、同時に、メタライゼーションの焼結プロセスを助けることができる、焼成温度での比粘度(log n)が約6から約7.6であるガラスが好ましい。
【0031】
上記基準を満たすガラスの典型例は、Ca、Ba、Ti、Fe、Mg、Na、Kなどの「ガラスネットワーク修飾」イオンを含有する「アルミノ−ボロ−シリケートガラスネットワーク」であり、40〜60重量%のSiO、10〜20重量%のAl、10〜15重量%のB、15〜25重量%のCaO、1〜5重量%の他の上記「ネットワーク修飾」イオンを含有する。特に好ましいガラスは、55%のSiO、14%のAl、7.5%のB、21.5%のCaO、残余の2%の上記「ネットワーク修飾」イオンを含有する。別の好ましいガラスは、56.5%のSiO、9.1%のAl、4.5%のB、17.2%のPbO、8.0%のCaO、残余の5%の上記「ネットワーク修飾」イオンを含む。
【0032】
それらガラスは、慣用のガラス製造技法によって、すなわち所望の成分を所望の割合で混合し、この混合物を加熱して溶融体を形成することよって調製される。当技術分野でよく知られているように、加熱は、この溶融体が完全に液状かつ均一となるようなピーク温度および時間で行われる。この作業では、これらの成分を、プラスチック製のボールを入れたポリエチレン製広口びんの中で振とうすることによって予備混合し、1350〜1400℃の白金るつぼ内で溶融させる。溶融体を、1〜1.5時間にわたってピーク温度に加熱する。次いで、この溶融体を冷水に注ぎ入れる。水の体積−対−溶融体の体積の比を増大させることによって、急冷中の水の最高温度を可能な限り低く保つ。風乾すること、あるいはメタノールで洗浄して水を置換することによって、水から分離した後の粗製フリットから残留水分を除去する。次いで、この粗製フリットを、アルミナボールを用いてアルミナ容器中で6〜7時間にわたってボールミル粉砕する。材料中に取り込まれるアルミナは、存在したとしてもX線回折解析によって測定される際の観測可能な限界内ではない。
【0033】
粉砕したスラリーを粉砕機から取り出した後、デカンテーションによって過剰な溶媒を取り除き、フリット粉末を熱風乾燥する。次いで、乾燥した粉末を325メッシュのふるいを通してふるいにかけて、大きな粒子を完全に取り除く。
【0034】
フリットの主要な2つの特性は、無機結晶性粒子状物質の焼結を助けること、およびLTCCセラミックス中に存在する残留ガラスと導体材料の混合を最小限に抑えることである。
【0035】
C.金属酸化物/非酸化物結合剤
本発明の実施に適している金属酸化物、ならびにホウ化物およびシリサイドなどの非酸化物は、表面上または埋め込まれるテープと共に本発明の組成物を同時焼成したときに、テープの残留ガラスと反応することができ、残留ガラスの粘度を増大させるものである。これら結合剤の第2の特性は、系の焼成中に、配線導体およびビア充填導体の緻密化を最小限に抑える金属粉末の「焼結抑制剤」として作用すべきであることである。
【0036】
適切な無機酸化物は、Zn、Mg、Co、Al、Zr、Mn、Ni、Cu、Ta、W、La、Zn2+、Mg2+、Co2+、Al3+をベースとするような酸化物、ルテニウム酸銅ビスマスなどの複合酸化物、ならびに参照により本明細書に組み込まれる特許文献2および特許文献3に開示されているような、系の焼成中に微細な金属酸化物粉末に分解する有機チタン酸塩などの有機金属化合物である(特許文献2および3参照)。参照により本明細書に組み込まれる特許文献4も参照のこと(特許文献4参照)。
【0037】
特にPTOS導体およびビア充填物に適用可能な適切な無機ホウ化物は、チタンのホウ化物、ジルコニウムのホウ化物など、およびこれらの混合物(特許文献1も参照のこと)を含むが、それには限定されない(特許文献1参照)。これらチタンのホウ化物およびジルコニウムのホウ化物は、組成物中で非酸化物ホウ化物として存在することができる。これらのホウ化物は焼成すると酸素と反応し、オキシ−ホウ化物、および/または酸化ホウ素と密接した金属酸化物を形成し、その結果、元の金属ホウ化物よりも大きな分子容/単位格子体積をもたらすと信じられる。
【0038】
これらの金属酸化物、ホウ化物または前駆体の粒度は、本発明の組成物の付着法(通常スクリーン印刷)に適する大きさであるべきであり、したがって粒度は15μm以下、好ましくは5μm未満であるべきである。
【0039】
D.有機媒体
これらの無機粒子を、(たとえば、ロールミルによる)機械的混合によって不活性液体媒体(ビヒクル)と混合して、スクリーン印刷および/またはステンシル塗布に適したコンシステンシーおよびレオロジーを有するペースト状の組成物を形成する。後者は、慣用の方法にてLTCCグリーンテープ上、あるいは特許文献1に記載されているようにPTOS上に「厚膜」として印刷する(特許文献1参照)。任意の不活性液体をビヒクルとして使用することができる。様々な有機液体を、増粘剤および/または安定剤、および/または他の一般的添加剤とともに、あるいはそれらを伴わずに、ビヒクルとして使用することができる。ビヒクルの唯一の具体的基準は、LTCCグリーンテープ中に存在する有機物と化学的に適合しなければならないことである。使用することができる有機液体の例は、脂肪族アルコール、それらアルコールのエステル類(たとえば、酢酸エステルおよびプロピオン酸エステル)、パイン油などのテルペン、テルピノールなど、テキサノールなど、パイン油のような溶媒中のエチルセルロースなどの樹脂の溶液、ならびにエチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルである。ビヒクルが、揮発性液体を含有して、テープへの付着後の速い固化を促進してもよい。
【0040】
本発明の場合、使用する樹脂は、エトキシル基含有率が45.0〜51.5%、1つの実施形態ではエトキシル基含有率が48.0〜49.5%(N型)、アンヒドログルコース単位当たりのエトキシル基の置換度が2.22から2.73であるエチルセルロース構造を有する。1つの実施形態では、アンヒドログルコース単位当たりのエトキシル基の置換度が2.46〜2.58(N型)の範囲にある。本発明の樹脂の1つの実施形態は、Hercules Incorporated(Wilmington Delaware)によって提供されるAqualon(登録商標)である。この樹脂の粘度(80重量部のトルエン:20重量部のエタノール中の5%のエチルセルロースを用いて決定される)は、5.6から24cpsである。1つの実施形態では、この範囲は18〜24cpsである。
【0041】
完全に(54.88%)エトキシル置換したエチルセルロールの典型的な構造(図1B)を、セルロース分子の構造式(図1A)と共に図1に示す。この溶媒媒体は、好ましくは化学式:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノジイソブチレート、(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールの2−メチルプロピオン酸−モノエステル、または2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのイソ酪酸エステルとも呼ばれる)("International Labor Organization", ICSC:0629 November 2003に記載されている組成)を有するテキサノールである。10RPMにおいてRVT No5を用いて測定した本発明で使用する媒体(有機ビヒクル溶媒に溶解した樹脂)の粘度は、5.0〜30.0PaS、好ましくは7.5から10.5PaSである。1つの実施形態では、この媒体の粘度は10〜15PaSの範囲にある。使用することができる別の溶媒は、JT Baker Inc(phillipsburg, NJ)に記載されている3−シクロヘキサン−1−メタノール、α,α,4−トリメチル−テルペンアルコールである。
【0042】
分散物中の媒体の固形分に対する比は、大幅に変化させることができ、分散物の付着法に依存する。通常は、良好な被覆率を実現するために、分散物は、相補的に60〜98%の固形分、および40〜2%のビヒクルを含む。もちろん、本発明の組成物は、その有益な特性に影響を及ぼさない他の材料を加えることによって改変することができる。このような配合物は、当業者の能力の範囲内である。
【0043】
II.基板上感光性テープ(PTOS)用途−誘電体テープ組成物
後述する誘電体厚膜テープ組成物および用途は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献5に詳細に記載されている(特許文献5参照)。本発明のビア充填および/または配線厚膜導体組成物は、以下で特定する誘電体テープ組成物を利用するPTOS用途で特に有用である。これらのPTOS用途は、本発明の用途および使用の1つの実施形態を示している。
【0044】
無機結合剤
無機結合剤は、理想的には非反応性であるべきである。しかしながら、実際には、系内の他の材料に対して反応性であってもよい。所望の電気絶縁特性を有し、物体内のいずれのセラミック固体(充填剤)に対応した適当な物理的特性を有する無機結合剤が選択される。
【0045】
無機結合剤およびセラミック固体の粒度および粒径分布はそれほど重要ではなく、粒子は通常0.5から20μmの大きさである。フリットのD50(メジアン粒度)は、好ましくは1から10μm、より好ましくは1.5から5.0μmの範囲であるが、それに限定されるものではない。
【0046】
無機結合剤に好ましい基本的な物理的特性は、(1)物体内のいずれのセラミック固体の焼結温度より低い焼結温度を有すること、および(2)使用する焼成温度で粘性相として焼結される(viscous phase sintering)ことである。
【0047】
誘電体組成物のガラスは、非晶質で部分的に結晶可能なアルカリ土類亜鉛ケイ酸ガラス組成物に属する。これらの組成物は、本明細書に組み込まれる特許文献6に開示されている(特許文献6参照)。
【0048】
特許文献6は、その図2の重量点g〜l上で画定される区域内にある組成物から本質的に構成される、非晶質で部分的に結晶可能なアルカリ土類亜鉛ケイ酸ガラスを開示している。ここで、(1)アルファは、3%以下のAl、6%以下のHfO、4%以下のP、10%以下のTiO、6%以下のZrOおよびこれらの混合物からなる群から選択されるガラス形成剤または条件付きガラス形成剤との混合物の形態にあり、組成物は少なくとも0.5%のZrOを含有することを条件とするSiOであり、(2)ベータは、CaO、SrO、MgO、BaOおよびこれらの混合物から選択され、組成物は15%以下のMgOおよび6%以下のBaOを含有することを条件とするアルカリ土類であり、(3)ガンマはZnOである。点g〜lの位置は次のとおりである。
点g−アルファ:48.0、ベータ:32.0、ガンマ:20.0、
点h−アルファ:46.0、ベータ:34.0、ガンマ:20.0、
点i−アルファ:40.0、ベータ:34.0、ガンマ:26.0、
点j−アルファ:40.0、ベータ:24.0、ガンマ:36.0、
点k−アルファ:46.0、ベータ:18.0、ガンマ:36.0、
点l−アルファ:48.0、ベータ:19.0、ガンマ:33.0。
【0049】
特許文献6は、アルファが、(3%+BaOが含まれる場合にBaOのパーセンテージの2/3)までのAlを含有し、かつ全ガラス組成物の(48%+BaOのパーセンテージ)以下を構成し、ベータが6%までのBaOを含有し、かつ全ガラス組成物の(33%+BaOが含まれる場合にはBaOのパーセンテージの1/2)以下を構成し、ガンマが(36%−BaOが含まれる場合にはBaOのパーセンテージの1/3)以下を構成する、上記段落に記載のガラスをさらに開示している。
【0050】
特許文献6は、AlPOまたはAlPとして添加されるAlとPとの両方をさらに含有する上記ガラスをさらに開示している。
【0051】
誘電体組成物の、無Pb無Cdの実施形態で使用するガラスは、モル%で、44〜66%のSiO、3〜9%のAl、5〜9%のB、0〜8%のMgO、1〜6%のSrO、11〜22%のCaOおよび2〜8%のMを含むアルカリ−アルカリ土類−アルミノボロシリケートガラス組成物に関する。ここで、Mはアルカリ元素の酸化物およびこれらの混合物から選択される。アルカリ元素は、周期表の1A族に見いだされる。たとえば、アルカリ元素酸化物は、LiO、NaO、KOおよびこれらの混合物から選択することができる。SrO/(Ca+MgO)のモル比は、約0.06から約0.45である。この比率の範囲は、本発明のLTCCテープと共に使用される導体材料との適合性を確実にするために必要である。
【0052】
この無Pbかつ無Cdの実施形態では、ガラス中のアルカリおよびアルカリ土類改質剤の含有率が、LTCCテープ材料の加工には決定的に重要なガラス粘度の減少をもたらすと同時に、ガラスの熱膨張係数を増大させると信じられている。アルカリ土類酸化物、BaOを使用してLTCCテープを作製することもできるが、pHの低い溶液中での浸出の容易さに起因して、耐薬品性を低下させることが見いだされる。このため、上で定義した比率の限界およびモルパーセントの範囲内のアルカリ土類改質剤成分に関して、優れた耐薬品性が見出される。酸化ストロンチウムは、テープの外層に適用される導体材料系において、優れたハンダ付け適性および低い導体抵抗率を付与する。酸化ストロンチウムが1モル%以上のレベルでガラス中に存在する場合に、ガラス中の酸化ストロンチウムの含有により、この導体性能の向上がもたらされる。データは、1から6モル%のレベルが導体性能の向上がもたらすことを示す。酸化ストロンチウムの好ましいレベルは、1.8〜3.0モル%である。グリーンテープ中に使用する場合のガラス中のアルカリ酸化物の存在は、テープの緻密化および結晶化挙動を制御することによって、熱処理条件に対するガラスの感応性を向上させる。アルカリ添加の重要な役割は、テープに対して、所望の焼成温度において必要とされる流動特性および緻密化特性を提供することである。アルカリ添加は、テープの必要とされる物理的および電気的性能に影響を及ぼすことなく、ガラス粘度を減少させる機能を果たす。ガラスの粘度特性を改変するために使用されるアルカリイオンのタイプおよび量は、当該ガラスから作製されるテープの電気損失特性にも影響を及ぼす。
【0053】
本明細書に記載のガラスは、他のいくつかの酸化物成分を含有することができる。たとえば、ガラス中のSiOを、以下のとおりにZrO、P、およびGeOで部分的に置換することができる:全ガラス組成物を基準とするモル%で、0〜4モル%のZrO、0〜2モル%のP、0〜1.5%のGeO。加えて、アルカリ成分および/またはアルカリ土類成分を、全ガラス組成物を基準とする0〜2.5モル%のCuOで部分的に置換することができる。ガラスを成分として利用するLTCCテープ配合物の適性の1つの要因は、導体およびテープの内部および表面の回路部品として利用される受動材料との所要の適合性である。これは、適切な熱膨張、ならびにテープの適切なレベルの密度および強度の実現のような物理的制約を含む。後者は、必要とされる熱加工温度範囲でテープを提供するためのガラス粘度が適切であることによって可能となる。
【0054】
本明細書に記載のガラスは、慣用のガラス作製技術によって製造される。より詳細には、これらのガラスは以下のように調製することができる。ガラスは、典型的には500〜1000グラムの量が調製される。典型的には、原料を秤量し、次いで所望の割合で混合し、典型的にはボトムローディング式炉の中で加熱して、白金合金るつぼ内で溶融体を形成する。通常、加熱は、この溶融体が完全に液状かつ均一となるようなピーク温度(1500〜1550℃)および時間で行う。次いで、このガラス溶融体を、反転ステンレス鋼製ローラの表面に注ぐことによって10〜20ミル(0.254〜0.508mm)の厚さのガラスプレートレットを形成するか、あるいは水槽に注ぐことによって急冷する。得られたガラスプレートレットまたは水急冷フリットを粉砕して、その50%の体積分布が1〜5ミクロンにある粉末を形成する。得られたガラス粉末を充填剤および媒体と配合して厚膜ペーストまたはキャスト可能な誘電体組成物にする。
【0055】
テープに組み込まれたときのガラスは、同時焼成厚膜導体材料と適合可能である。焼成の際、テープ中のガラスが過剰に流動することはない。これは、セラミック充填剤(典型的にはAl)とガラスとの反応によって開始されるガラスの部分的結晶化によるものである。この部分的結晶化の後に残るガラスは、より耐熱性の高いガラスに変化する。これは、導体材料によるテープの着色を排除し、厚膜導体材料のハンダ濡れまたは化学めっきを可能とする。ハンダ濡れは、セラミック回路をプリント回路基板上などの外部配線と接続することを可能にするための重要な特徴である。テープの表面層に対して厚膜導体の化学めっきを適用する場合、pHの低いめっき浴が、テープの表面からめっき浴を汚染するイオンを放出させる可能性がある。このため、テープ中に見いだされるガラスが、低pHの溶液中での化学腐食によるガラス成分の放出を最小限に抑える。加えて、テープ中に見いだされるガラスは、強塩基性の溶液中での化学腐食によるガラス成分の放出をも最小限に抑える。
【0056】
任意選択のセラミック固体
本発明の誘電体組成物において、セラミック固体は任意選択である。添加する場合には、系内の他の材料に対して化学的に不活性で、所望の電気絶縁特性を有し、組成物の無機結合剤および感光性成分に対する適当な物理的特性を有するセラミック固体が選択される。基本的に、これらの固体は充填剤であり、熱膨張および誘電率のような特性を調整する。
【0057】
誘電体中のセラミック固体の最も望ましい物理的特性は、(1)無機結合剤の焼結温度より高い焼結温度を有すること、および(2)本発明の焼成ステップ中に焼結しないことである。したがって、本発明の状況において、「セラミック固体」という用語は、本発明の実施に際してさらされる焼成条件下で、基本的には焼結せず、無機結合剤に溶解する傾向が乏しい無機材料(通常は酸化物)を指す。
【0058】
上記基準を条件として、事実上任意の高融点無機固体を誘電体テープのセラミック固体成分として使用して、電気的誘電性能(たとえば、K、DF、TCC)、および焼成後の誘電体の物理的特性を調節することができる。可能なセラミック充填剤添加物の例は、Al、ZrO、TiO、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrO、SrZrO、BaZrO、CaSnO、BaSnO、PbTiO、炭化ケイ素などの金属炭化物、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、ムライトおよびカヤナイトのような鉱物、コーディエライト、ジルコニア、フォルステライト、アノーサイト、および種々の形態のシリカまたはこれらの混合物が含まれる。
【0059】
誘電体組成物に対して、固形分を基準として0〜50重量%の量でセラミック固体を添加することができる。充填剤のタイプに応じて、焼成後に異なる結晶相の形成が予想される。充填剤は、誘電率および熱膨張特性を制御することができる。たとえば、BaTiOの添加により誘電率を著しく増大させることができる。
【0060】
Alは、好ましいセラミック充填剤である。なぜなら、ガラスと反応してAl含有結晶相を形成するからである。Alは、高い機械的強度および有害な化学反応に対する不活性を提供するのに非常に効果的である。セラミック充填剤の別の機能は、焼成中の系全体のレオロジー制御である。セラミック粒子は、物理的障壁として作用することによって、ガラスの流動を制限する。また、セラミック粒子は、ガラスの焼結を抑制し、したがってより完全な有機物の焼尽を容易にする。他の充填剤、α−石英、CaZrO、ムライト、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ジルコニア、BaTiO、CaTiO、MgTiO、SiO、非晶質シリカまたはこれらの混合物を使用して、テープの性能および特性を改変することもできる。
【0061】
テープ組成物の配合では、セラミック(充填剤)材料の量に対するガラスフリット(ガラス組成物)の量が重要である。十分な緻密化を実現させるという点においては、10〜40重量%の範囲の充填剤が望ましいと考えられる。充填剤の濃度が50重量%を超えた場合、焼成した構造は十分に緻密化されず、過度に多孔質なものとなってしまう。所望のガラス/充填剤の比率の範囲内では、焼成中、液状ガラス相が充填剤材料で飽和されることが明らかであろう。
【0062】
焼成の際に組成物をより高緻密化させるために、無機固体が小さい粒度を有することが重要である。具体的には、実質的に全ての粒子が15μm、好ましくは10μmを超えるべきではない。最大寸法の制限を条件として、ガラスおよびセラミック充填剤の両方の、少なくとも50%の粒子が1.0μmよりも大きく、6μmよりも小さいことが好ましい。
【0063】
特定のタイプのガラスの化学組成が、本発明のこの実施形態にとって重要なのではなく、感光性テープが使用される具体的用途に応じて、広範囲にわたる可能な成分を含有することができる。いくつかのガラス組成を、以下の第1表に列挙する。たとえば、鉛をベースとするガラスが許容可能な状況の場合、ガラスAのようなガラスを組み込んでもよい。鉛含有ガラスが許容可能ではなく、かつ850℃におけるテープ組成物の焼成後に信頼性の高い誘電体特性が必要な用途では、「B」タイプのガラスを組み込んでもよい。さらに、この実施形態が適用されてもよい幅広い可能性の用途には、ガラスCが、使用しようとする基板のタイプ(すなわちソーダ石灰ガラス基板のようなもの)のために低い焼成温度が必要とされる用途で使用することができる化学組成を示している。
【0064】
【表1】

【0065】
第2表および第3表は、第1表のガラス粉末「A」および「B」の典型的な粒度分布(PSD)をミクロン単位で列挙する。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
有機成分
ポリマー結合剤
非晶質ガラス粉末および任意選択のセラミック無機固体粉末を分散させる有機成分は、1種または複数種のアクリル樹脂ベースのポリマー結合剤、UV化学光への露光後に架橋して差別化される1種または複数種の感光性アクリル樹脂ベースのモノマー、光プロセスを容易にする1種または複数種の開始剤、および1種または複数種の可塑剤からなり、それら全ては揮発性有機溶媒に溶解される。この「スラリー」、すなわち有機成分の全てと、非晶質ガラス粉末および任意選択の無機「充填剤」添加物からなる無機粉末との組合せは、当業者によって通常「スリップ」と呼ばれ、任意選択で、離型剤、分散剤、剥離(stripping)剤、消泡剤、安定剤、湿潤剤など他の溶解した材料を含む。
【0069】
この湿った「スリップ」で適切なバッキング材料を所望の厚さでコーティングし、乾燥させて低沸点溶媒を取り除くと、感光性の「テープ」が得られる。
【0070】
ポリマー結合剤は、PTOS用途向けの誘電体組成物の組成には決定的に重要である。加えて、ポリマー結合剤は、0.4〜2.0重量%の塩基(NaCOまたはKCO)の塩基水溶液中で誘電体テープを現像可能とし、それによりUV化学線に暴露される部品(features)の高解像度が可能とし、さらに、キャスティングされたテープに対して良好なグリーン強度、可撓性およびラミネーション特性を与える。ポリマー接合剤は、コポリマー、インターポリマーまたはこれらの混合物から作製される。各コポリマーまたはインターポリマーは、(1)C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン類またはこれらの組合せを含む非酸性コモノマー、および(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーを含み、それらコモノマー、インターポリマー、混合物は、少なくとも15重量%の酸含有率を有する。この混合物は、コポリマー、インターポリマーまたは両方を含むことができる。酸性ポリマー結合剤は、塩基性成分を含有する溶液によって現像されなければならない。
【0071】
この技術では、組成物中の酸性コモノマー成分の存在が重要である。酸性官能基は、0.4〜2.0重量%の炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水溶液のような塩基水溶液中で現像される能力を与える。酸性コモノマーが10%未満の濃度で存在する場合、組成物は水性塩基で完全には洗浄除去されない。酸性コモノマーが30%より高い濃度で存在する場合、組成物は現像条件下で耐性が低下し、像形成部分における部分的現像がなされる。適当な酸性コモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸、およびフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸、ならびにそれらのヘミエステル、また場合によっては、それらの無水物およびそれらの混合物を含む。
【0072】
非酸性コモノマーは、結合剤ポリマーの少なくとも50重量%を構成することが好ましい。好ましくはないが、ポリマー結合剤の非酸性部分は、ポリマーのアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、スチレン、または置換スチレン部分の代替物として、他の非酸性コモノマーを約50重量%まで含有することができる。例には、アクリロニトリル、酢酸ビニル、およびアクリルアミドが含まれる。しかしながら、これらが完全に焼尽することはより困難であるので、全ポリマー結合剤中このようなモノマーは約25重量%未満で使用することが好ましい。
【0073】
単一の共重合体または共重合体の組合せの結合剤としての使用は、これらの共重合体の各々が上記の様々な基準を満たす限りにおいて承認される。上記共重合体に加えて、少量の他のポリマー結合剤を加えることも可能である。これらの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体のようなポリオレフィン類、ポリビニルアルコールポリマー(PVA)類、ポリビニルピロリドンポリマー(PVP)類、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンの共重合体、ならびにポリエチレンオキシドのような低級アルキレンオキシドのポリマーであるポリエーテルを挙げることができる。
【0074】
本明細書に記載のポリマーは、一般に使用される溶液重合技術によって、アクリレート重合の当業者が製造することができる。典型的には、このような酸性アクリレートポリマーは、比較的低沸点(75〜150℃)の有機溶媒中で、α−またはβ−エチレン性不飽和酸(酸性コモノマー)を1種または複数種の共重合性ビニルモノマー(非酸性コモノマー)と混合して10〜60%モノマー混合溶液を得て、次いで重合触媒を添加し、この混合物を常圧下で溶媒の還流温度まで加熱することによってこれらのモノマーを重合することによって製造される。重合反応が本質的に完了した後、製造した酸性ポリマー溶液を室温まで冷却する。
【0075】
反応性分子、フリーラジカル重合禁止剤および触媒を冷却した上記ポリマー溶液に加える。この溶液を、反応が完了するまで撹拌する。任意選択的に、この溶液を加熱して反応を加速させてもよい。反応が完了し、反応性分子がポリマー主鎖に化学的に結合した後、ポリマー溶液を室温まで冷却し、試料を採取し、ポリマーの粘度、分子量および酸当量を測定する。
【0076】
可塑剤
可塑剤は、PTOS用途で利用される誘電体厚膜テープには不可欠である。誘電体厚膜テープ中で可塑剤の使用を最適化して、熱ロールラミネーションプロセスの前、プロセス中およびプロセス後に、テープのいくつかの特性を満たし、可撓性で適合性のあるテープ組成物を提供することによって、熱ロールラミネーションを可能にする。使用する可塑剤が多すぎる場合、テープ同士が張り付いてしまう。使用する可塑剤が少なすぎる場合、加工中にテープが砕けてしまうことがある。組成物のポリマー結合剤と組み合わせられる可塑剤は、テープの所望の接着特性に寄与し、したがって熱ロールラミネーションの際、テープ膜が基板に付着することを可能にする。
【0077】
加えて、可塑剤は、結合剤ポリマーのガラス転移温度(Tg)を下げる働きをする。可塑剤対ポリマー結合剤の比は、4:23から7:9の範囲内にある。可塑剤は、乾燥させたテープ組成物の総重量の1〜12重量%、より好ましくは2〜10%、最も好ましくは4〜8%で、全組成物中に存在する。
【0078】
当然ながら、可塑剤の選択は、主として、修飾する必要があるポリマーによって決まる。様々な結合剤系で使用されている可塑剤は、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、アルキルホスフェート類、ポリアルキレングリコール類、グリセロール、ポリ(エチレンオキシド)類、ヒドロキシルエチル化されたアルキルフェノール、ジアルキルジチオホスホネートおよびポリ(イソブチレン)がある。これらの中でも、アクリルポリマー系では、比較的低濃度で効果的に使用することができるので、フタル酸ブチルベンジルが最も頻繁に使用される。好ましい可塑剤は、Velsicol社製のBENZOFLEX(登録商標)400およびBENZOFLEX(登録商標)P200であり、それらは、それぞれポリプロピレングリコールジベンゾエートおよびポリエチレングリコールジベンゾエートである。
【0079】
光開始系(光開始剤)
適切な光開始系は、熱的に不活性であるが、185℃以下における化学線に対する暴露時にフリーラジカルを生成するものである。「化学線」とは、化学変化をもたらす光線、紫色光および紫外光、X線、または他の放射線を意味する。一部の光開始剤は、熱的に不活性であるが、化学線への暴露により、185℃以下の温度でフリーラジカルを生成することができる。その例は、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオンのような、共役炭素環系中に2つの内部分子環を有する化合物である置換または非置換の多核キノンを含む。特許文献7は、85℃程度の低い温度においてさえ熱的に活性である有用な他のいくつかの光開始剤を開示している(特許文献7参照)。それらは、ベンゾインのようなビシナルケトアルドニルアルコール、ピバロイン、ベンゾインメチルおよびエチルエーテルのようなアシロインエーテル、ならびにα−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、およびα−フェニルベンゾインなどのα−炭化水素置換芳香族アシロインである。
【0080】
水素供与体を有するフェナタイン(phenatine)、オキサタイン(oxatine)、キノン類のミヒラーケトン、ベンゾフェノン、2,4,5−トリフェニルイミダゾリル二量体のような光還元可能な染料および還元剤を、開始剤として使用することもできる(特許文献8〜16参照)。また、特許文献17に開示されている増感剤を、光開始剤および光重合阻害剤と共に使用することができる。光開始剤の含有量は変化する。1つの実施形態では、光開始剤の含有量が、乾燥させた光重合可能なテープ膜層の総重量に対して0.02〜12重量%の範囲にある。さらなる実施形態では、光開始剤が0.1〜3重量%の範囲で存在し、さらにさらなる実施形態では、光開始剤が0.2〜2重量%の範囲で存在する。この実施形態を実施するのに特に有用な1つの光開始剤は、Ciba Specialty Chemicals製のIrgacure(登録商標)369である。
【0081】
光硬化性モノマー
誘電体テープに使用される光硬化性モノマー成分は、少なくとも1種の付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を用いて形成され、該化合物は少なくとも1つの重合可能なエチレン基を有する。
【0082】
この化合物はフリーラジカルから作製され、次いで鎖状に成長し、付加重合されてポリマーを形成する。このモノマー化合物は非ガス状である。言い換えれば、この化合物は100℃以上の沸点を有し、重合可能な有機結合剤上で可塑化することができる。
【0083】
単独または他のモノマーと組み合わせて使用することができる適当なモノマーの例は、t−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレートおよびメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレートおよびメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、デカメチレングリコールジアクリレートおよびメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよびメタクリレート、ポリオキシエチル化されたトリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、および特許文献18に開示されているものと同じ化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−1,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノールAのジ−(3−メタアクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノールAのジ−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノールAのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、ビスフェノールAのジ−(2−アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールのジ(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、フマル酸ジアリル、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ならびに1,3,5−トリイソプロペニルベンゼンを含む。
【0084】
エーテル結合を1〜10個有するC2〜15のアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールから作製されたアルキレンジアクリレートまたはポリアルキレングリコールジアクリレートのような少なくとも300の分子量を有するエチレン型不飽和化合物、ならびに特許文献19に開示の化合物、特に、末端結合として存在する際に付加重合可能な複数のエチレン結合を有する化合物を使用することも可能である(特許文献19参照)。
【0085】
これらのモノマーの好ましい例には、ポリオキシエチル化されたトリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、エチル化されたペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ならびに1,10−デカンジオールジメタクリレートが含まれる。
【0086】
他の好ましいモノマーは、モノヒドロキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量:約200)およびポリエチレングリコール400ジメタクリレート(分子量:約400)が含む。不飽和モノマー成分の含有率は、好ましくは乾燥させた光重合性テープ膜層の総重量の2〜20重量%、より好ましくは2〜12%、最も好ましくは乾燥テープ膜層の2〜7%の範囲内にある。この実施形態を実施するのに特に有用な1つのモノマーは、Sartomer Company製のCD582であり、アルコキシル化されたシクロヘキサンジアクリレートとしても知られている。
【0087】
有機溶媒
キャスティング溶液の溶媒成分は、ポリマーの完全溶解を得るように、かつ、大気圧下で比較的低レベルの熱を加えることによってその溶媒が分散物から蒸発することが可能となるよう十分に高い揮発性を有するものが選択される。加えて、この溶媒は、有機媒体に含まれる他のどの添加剤の沸点または分解温度よりも低い温度で十分に沸騰しなければならない。したがって、常圧で沸点が150℃よりも低い溶媒が最も頻繁に使用される。このような溶媒は、アセトン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、酢酸アミル、2,2,4−トリエチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、トルエン、塩化メチレンおよびフルオロカーボン類が含まれる。上記個々の溶媒は、結合剤ポリマーを完全には溶解しなくてもよい。しかし、他の溶媒とブレンドした場合、それらは満足に機能する。これは、充分に当業者の技術の範囲内である。特に好ましい溶媒は酢酸エチルである。なぜなら、環境に有害なクロロカーボン類の使用が回避されるからである。
【0088】
分散剤、安定剤、離型剤、分散剤、剥離剤、消泡剤、および湿潤剤を含む、当技術分野において知られている追加の成分が誘電体組成物中に存在してもよい。適切な材料の一般的な開示は、本明細書に組み込まれる特許文献20に示されている(特許文献20参照)。
【0089】
用途
テープ作製
前述の誘電体組成物を使用して、適切なバッキング材料上に湿潤スラリーすなわち「スリップ」としての膜を形成する。バッキングにしばしば使用される材料は、「マイラー(登録商標)」である。他の可能なバッキング材料は、ポリプロピレン、ナイロンでもよく、この用途にはそれほど重要ではないが、本発明の満足な実施を可能とする適切な特性を有するべきである。たとえば、乾燥後のバッキング材料上のテープ(乾燥させて溶媒を除去したときの膜を「テープ」と呼ぶ)は、バッキングに貼り付き、かつ熱ロールラミネーション工程によって「層状剥離」しないのに充分なバッキングに対する接着性を有するべきであるが、その熱ロールラミネーションステップが完了したら、容易に分離されるべきである。
【0090】
上記誘電体組成物を含み、熱ラミネーションを可能にする任意の構造を、適合体と定義する。テープ形成の一般的な観点からこの適合体について検討する。テープを形成するためには、スリップを調製し、テープキャスティングに使用する。スリップは、テープ作製の際の組成物に使用される一般用語であり、有機媒体中に分散された無機粉体の適切に分散された混合物である。
【0091】
本発明のPTOS用途の実施にはそれほど重要ではないが、有機媒体中に無機粉体を良好に分散させる一般法は、慣用のボールミル法を使用するものである。ボールミルは、セラミック製の粉砕ジャーおよび粉砕媒体(球形または円筒形のアルミナまたはジルコニアペレット)からなる。全混合物を、粉砕媒体を含む粉砕ジャー内に入れる。漏れを防止する蓋でジャーを密閉した後、タンブリングして、混合効率が最適となる回転速度でジャーの内部の粉砕媒体に粉砕動作を起こさせる。回転の長さは、性能仕様を満足する十分に分散した無機粒子を得るのに必要な時間である。一般的には、1〜20時間の粉砕または混合時間が、所望の分散レベルを得るのに十分である。スリップを、ブレードまたはバーコーティング法によってバッキングに塗布し、次いで周囲温度または加熱によって乾燥してもよい。乾燥後のコーティングの厚さは、テープが使用される最終用途に応じて、数ミクロンから数十ミクロンの範囲とすることができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態で使用するための適合性感光性誘電体「グリーン」(すなわち「未焼成」)テープは、上述の無機結合剤、任意選択のセラミック固体、ポリマー結合剤、可塑剤、光開始剤、光硬化性モノマーおよび溶媒のスラリー分散物の所望の厚さの層を、可撓性バッキング上にキャスティングし、このキャスティングされた層を風乾または加熱して揮発性溶媒を取り除くことによって形成される。バッキングは、多くの可撓性材料から製造することができるが、典型的にはマイラー(登録商標)である。次いで、このテープ(コーティング+たとえばマイラー(登録商標)バッキング)をシート状に形成またはロール状に収集し、テープの使用目的となる最終用途の指示に従った寸法にすることができる(注:テープが熱ロールラミネーションよって剛性基板に付着されたならば、通常、バッキングは除去および破棄される)。
【0093】
PTOS用途向けのバッキング材料は通常、熱ロールラミネーション段階を通して感光性セラミック含有テープと共に残存し、感光性テープの露光前に取り除かれる。バッキング材料が透明なマイラー(登録商標)またはUV化学光への露光を可能にする他の適切な材料である場合には、バッキング材料は、たとえば望ましくない汚染物質から表面を保護するために、UV化学光への露光を通してさえテープ表面上に残存することができる。この場合、現像ステップの直前に透明なバッキング材料を取り除くことになる。
【0094】
乾燥させたテープは、65〜75ミル(1.65〜1.91mm)の厚さを超えないことが好ましい。より厚いテープは、30〜60分の総焼成サイクル時間(100℃よりも高い時間の合計として定義される)で慣用のベルト炉を使用する場合、焼成工程中にしばしば問題を引き起こす。より厚い膜がその用途に必要とされる場合には、多くのハイブリッド回路の製造に実用上適してない延長した焼成プロファイルを用いることによって、焼成の過敏性を回避することが可能であろう。
【0095】
加えて、テープを「ワイドストック(widestock)」(マスター)ロールとして巻き上げる前に、カバーシートをテープに貼り付けることができる。典型的なカバーシートの例は、マイラー(登録商標)、シリコーン被覆マイラー(登録商標、テレフタレートPET)、ポリプロピレン、およびポリエチレン、またはナイロンを含む。通常、このカバーシートは、最終剛性基板への熱ロールラミネーションの直前に取り除かれる。
【0096】
適切な寸法安定基板
本明細書に記載の「寸法安定基板」は、膜材料の焼結および基板への接着に必要な焼成条件下で形状または寸法が顕著に変化しないセラミック、ガラスおよび金属を含む固体材料を含む任意の固体材料である。適切な寸法安定基板は、アルミナ、α−石英、CaZrO、ムライト、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ジルコニア、BaTiO、CaTiO、MgTiO、SiOのような慣用のセラミックス、ガラス−セラミックスおよびガラス(たとえば、ソーダ石灰ガラスからなる非晶質構造またはより高融点の非晶質構造)、非晶質シリカまたはそれらの混合物が含むが、それらに限定されない。他の適切な寸法安定基板材料は、ステンレス鋼、鉄およびその様々な合金、ほうろう引き鋼、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅など他の卑金属、ならびに白金、銀、パラジウム、金およびそれらの合金、または他の貴金属およびそれらの合金、ならびに最終用途に基づき適切であると決定された他の金属基板でもよい。特に、適切な基板である1つの鉄合金は、Kovar(登録商標)(Ni−Fe合金)基板である。電気回路の機能をさらにカスタマイズするために、既に形成(焼成)された他の電気基板組立体にテープを積層することもできる。このような基板は、アルミナ上に既に焼成されたセラミックハイブリッドマイクロエレクトロニクス回路、または951「Green Tape(商標)」、943「Green Tape(商標)」(共に本出願人による)からなる回路、または現在市販されている他のLTCC回路であってもよい。
【0097】
多層回路形成
多層電気回路は、寸法安定基板を供給することによって形成される。この寸法安定基板は、基板材料上で焼成した後に適合性感光性誘電体テープの熱膨張係数(TCE)と適合する任意の基板であってもよい。寸法安定基板の例は、アルミナ、ガラス、セラミック、α−石英、CaZrO、ムライト、コーディエライト、フォルステライト、ジルコン、ジルコニア、BaTiO、CaTiO、MgTiO、SiO、非晶質シリカまたはこれらの混合物が含むが、それらに限定されない。他の適切な寸法安定基板材料は、ステンレス鋼、鉄およびその様々な合金、ほうろう引き鉄鋼、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅など他の卑金属、ならびに白金、銀、パラジウム、金およびそれらの合金、または他の貴金属およびそれらの合金、ならびに最終用途に基づき適切であると決定された他の金属基板でもよい。電気回路の機能をさらにカスタマイズするために、既に形成(焼成)された他の電気基板組立体にテープを積層することもできる。このような基板は、アルミナ上に既に焼成されたセラミックハイブリッドマイクロエレクトロニクス回路、または951「Green Tape(商標)」、943「Green Tape(商標)」(共に本出願人から入手可能である)からなる回路、または現在市販されている他のLTCC回路でよい。
【0098】
次いで、任意選択的に、寸法安定基板を、慣用のスクリーン印刷によってまたは商業的に使用可能な光画定(photo definition)技術によって所望のパターンで適用される機能層または導電層でコーティングする(たとえば、本発明の導電性組成物、または本出願人製のFodel(登録商標)銀ペースト、製品番号6453のような他の導電性組成物。続行する前に、典型的には、この導電性ペーストを適切な温度で乾燥させて、全ての溶媒を取り除く。剛体基板上の最初のメタライゼーション層については、感光性誘電体テープ層を適用する前にこの導電性機能膜を焼成しなければならない。)。
【0099】
次に、感光性誘電体「グリーン」テープを、寸法安定基板に熱ロールラミネーションする。次いで、この感光性テープを所望のパターンに露光し、それによって化学線が照射された架橋または重合領域、および光が照射されなかった非架橋または非重合領域を形成する。次いで、0.4〜2.0重量%の炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの希薄溶液を用いて非架橋(非重合)領域を洗浄除去し、それによって所望されるパターンのビアまたは他の所望の構造(たとえば、空洞、段差、壁)を形成する。次いで、たとえばビアを、導電性メタライゼーション(すなわち本発明のビア充填組成物)で充填することができる。次に、パターン状の機能性導電層(追加のメタライゼーション層)をビアが充填されたテープ層上にコーティングして、回路組立体を形成することができる。また、1つまたは複数のこれらの層を、本発明の導電性厚膜組成物から形成することができる。この最初の誘電体組立層を焼成した後、必要または要望に応じて、これらのプロセスステップを反復することができる。すなわち、感光性テープの熱ロールラミネーションから機能層の塗布、次の層へと進む前の、それぞれの組立誘電体テープ層の焼成を反復することができる。
【0100】
層間の相互接続部は、ビアホールを厚膜導電性インクで充填することによって形成される。通常、このインクは、標準的なスクリーン印刷技術によって塗布される。各層の回路は、導体導電路(track)をスクリーン印刷することによって完成させる。また、選択された層上に抵抗インクまたは高誘電率インクを印刷して、抵抗性または容量性回路素子を形成することもできる。
【0101】
本明細書で使用する「焼成」という用語は、組立体の層内にある有機材料をすべて揮発(焼尽)させて、層内のガラス、金属または誘電体材料を焼結させ、それによって組立体全体を緻密化するのに十分な温度および時間で、空気のような酸化性雰囲気中で組立体を加熱することを意味する。典型的には、焼成は、ベルト炉内、中でもSierraTherm、BTUおよびLindbergにより製造される物のようなベルト炉内で行われる。
【0102】
「機能層」といよう用語は、スクリーン印刷、ステンシル法、インクジェット法または他の方法によって、既に寸法安定基板に熱ロールラミネーションされたテープに塗布される導電性組成物を指す。機能層は、導体、抵抗またはキャパシタの機能を有することができる。したがって、前述のように、それぞれの典型的な未焼成テープ層上に、抵抗体、キャパシタおよび/または導電性回路素子の1種または複数種の組合せを印刷することができ、この組立体を焼成すると、これらの層は機能するようになる。
【0103】
本発明の組成物を使用して、LTCC多層回路、MLI多層回路(すなわち、テープの代わりに厚膜誘電体ペーストを用いて作製される多層回路)およびPTOS多層回路を含めた、様々なタイプの多層回路を作製することができる。
【0104】
本発明の一般的な配合および用途
本発明の組成物の調製では、粒子状無機固体を有機キャリアと混合し、三本ロールミルのような適切な機器で分散させて懸濁物を形成し、それにより4秒−1のずり速度で粘度が100〜450パスカル秒の範囲となる組成物を得る。いくつかの実施形態では、組成物の粘度は、4秒−1のずり速度で100〜200パスカル秒の範囲である。この範囲は、基板上感光性テープ(PTOS)の用途で特に有用である。他の実施形態では、組成物の粘度は、4秒−1のずり速度で250〜450パスカル秒の範囲である。
【0105】
以下の実施例では、以下の方法で配合を行った。ペーストの原料を秤量し、一緒に容器に入れる。次いで、これらの成分を激しく混合して、均一なブレンドを形成する。次いで、このブレンドを三本ロールミルなどの分散機器に通して、粒子を良好に分散させる。Hegmanゲージを使用して、ペースト中の粒子の分散状態を決定する。この機器は、一端が深さ25μm(1ミル)であり、他端の深さ0インチに至る傾斜をなす鋼ブロック中のチャネルからなる。ブレードを使用して、ペーストをチャネルの長さに沿って引き下ろす。凝集物の直径がチャネルの深さよりも大きい場合に、チャネル内にすり傷が現れる。満足な分散物は通常、10〜18μmの第4すり傷点をもたらす。>20μmの第4すり傷測定値および>10μmのハーフチャネル測定値は、分散が不十分な懸濁液/ペーストを示す。次いで、この組成物を500メッシュのふるいを用いてふるいにかけて、大きな粒子を取り除く(存在する場合)。
【0106】
次いで、この組成物を、アルミナまたは耐熱セラミックス、基板上感光性テープ(PTOS、特許文献1参照)、または「グリーンテープ」(特許文献4参照)などの基板に塗布する。たとえば、「グリーンテープ」用途の詳細を以下に記載する。典型的な「グリーンテープ」は、「テープキャスティング」の技術に記載されているように、ガラスおよびセラミック充填剤の微粒子、ポリマー結合剤および溶媒のスラリー分散物の1〜20ミル(0.0254〜0.508mm)、好ましくは2〜10ミル(0.0508〜0.254mm)の薄層を可撓性基板にキャスティングし、このキャスティングされた層を加熱して揮発性溶媒を除去することによって形成する。このテープをシートまたはロール状に打ち抜く。グリーンテープは、アルミナや他の耐熱セラミック基板など慣用の基板に代えて、多層電子回路/デバイス用の絶縁性基板として使用される。このグリーンテープシートに、機械的打抜きを用いて、4つの隅部の位置合わせホール、および別個の導体層を接続するためのビアホールを打ち抜く。ビアホールの寸法は、回路設計および回路特性の要件に依存して変化する。テープの導体導電路層間の回路の相互接続は、導電性インクをこれらのビアホールにスクリーン印刷することによって行われる。
【0107】
グリーンテープのシートに対して、通常はスクリーン印刷のプロセスを用いて、導体配線として約10〜30μm、好ましくは15〜20μmの湿潤厚さまで、本発明の導電性配線組成物を塗布し、同時に同じインクでビアホールを充填する。
【0108】
各層のテープに、回路設計に応じた導体配線およびビアホールを印刷した後、個々の層を揃え、積層し、一軸加圧成形ダイまたは静水圧加圧成形ダイおよびテープ加圧成形/ラミネーション技術において他で記載されている技術を用いて圧縮する。積層工程のそれぞれにおいて、ビアが隣接する機能層の適切な導体配線を正確に接続し、かつサーマルビアの場合には各ビアが適切に次位のビアと接続されるように、印刷したテープ層の位置合わせが正確でなければならないことが当業者には理解されるであろう。
【0109】
グリーンテープの組成物および無機結合剤、ならびに金属の微細粒子を焼結させるための焼成は、好ましくは、良好に換気されたベルトコンベヤ炉あるいはプログラム制御される箱型炉内で行われる。ここで焼成に用いられる温度プロファイルは、約300〜600℃における高分子の解重合および/または有機物の焼尽を可能にし、約800〜950℃の最高温度の期間が約5〜20分間にわたって継続し、引き続いて、制御された冷却サイクルを実施し、過度の焼結および結晶成長、中間温度における望ましくない化学反応、または急速すぎる冷却による基板/焼成セラミックテープの破壊を防止する。焼成手順全体は、好ましくは3.5から5時間に及び、場合によっては、積層されるグリーンテープの層数および/またはグリーンテープ層の厚さに依存して24時間以上かかる可能性もある。
【0110】
導体の焼成後の厚さは、固形分の割合、組成物を印刷する際のスクリーンのタイプ、印刷装置の設定、および無機固体の焼結度によって、約5から約15μmの範囲で変動し得る。ビア導体の厚さは、使用されるグリーンテープの厚さおよびビア組成物の焼結度に依存して変化する。2つの大きな欠陥であるビアの陥凹形成(dimpling)およびポスティングを回避するためには、組成物の粘度および固体含有率の選択が重要である。一般に、固体含有率を増大させるとポスティングをもたらす可能性があり、固体含有率がより低くなると陥凹形成をもたらす。
【0111】
本発明の導体組成物は、自動印刷装置または手動印刷装置を慣用の方法で使用することによって、グリーンテープまたはセラミック基板上に、あるいは他の厚膜上に被膜として印刷することができる。好ましくは、0.5μmのエマルション厚さで200から325メッシュのふるいを用いる自動スクリーン印刷技術が用いられる。特に寸法4〜8μmのより小さいビアの充填には、慣用のステンシル印刷技術を使用することもできる。
【0112】
より厚いテープの印刷および加熱加工
デバイスの小型化のために、多くの用途が、高速印刷、より厚いテープおよび多数の層を必要とする。慣用のLTCC厚膜ビア充填組成物は、テープ側に印刷されていた。多くの装置製造業者が、生産性および印刷の品質を向上させるために、テープの焼付け側に印刷することを好む。10ミル(0.254mm)のようなより厚いテープの場合には、印刷−乾燥、印刷−乾燥モードおよび/または非常に低速な印刷を使用して、陥凹形成および/またはポスティングなしにビアを充填する。本発明に記載の組成物は1回で印刷することができ、高速になり得る。また、1回の印刷において、ビアを充填し、かつ配線導体を1回で印刷することができ、加工コストを大幅に削減することができる。たとえば、LTCC(943−KX)テープ(本出願人)用のいくつかのビア印刷条件およびパラメータを以下に列挙する。
【0113】
(1)バッキング付き943−KXテープ(本出願人)中の10ミル(0.254mm)のビア
(2)平坦またはボタン状の湿式印刷
(3)平坦で硬質に乾燥
(4)25〜100回の自動化サイクルによる着実な充填
(5)p−バッキング側からの充填
(6)「ピーキング」も鋭い「ポスティング」もなし
(7)清浄で平坦な着実なバッキングの分離
【0114】
以下に列挙されている2組の異なる印刷パラメータを使用して、2つの異なる印刷装置(Micro Tecおよび9156AMI)を用い、本発明のメタライゼーションの1つを印刷する。
【0115】
【表4】

【0116】
印刷テープの印刷の質を評価したところ、良好な結果、(1)湿式印刷特性(良好なフラッドバック挙動、ボタン状の印刷、ティシュからの取外し後にテープ側に「ピーキング」なし)、(2)乾燥後の印刷特性(乾燥後の落ち込みなし、バッキング除去後平坦またはボタン状のビア、バッキングの除去後最小限の乾燥剥離)を示した。印刷したテープを積層し、850℃の最高温度に至る特定の26.5加熱プロファイルを用いて熱処理する。この膜の特性を評価したところ、良好な結果、(1)焼成後の特性(完全な電気的相互接続、低ポスティング)、(2)SEMによる断面微細構造(ビア層間の格差のない接触、接続したサーマルビア25層を通して均一な粒子構造/微細構造)を示した。
【0117】
標準的なビア充填組成物、標準的なビア充填印刷、および最高温度850℃で3.5時間という標準的なテープ熱処理を用いて上述したこれらの特性をすべて得ることは困難であり、不可能でさえある。
【0118】
信頼性試験手順
以下の実施例では、抵抗変化を以下の方法で測定する。
繰り返し焼成の後の抵抗変化を試験すべきサンプルを次のとおり調製する。
試験すべき導体配合物の図2に示される「デイジーチェーン」パターンを、テープのグリーンシート上にスクリーン印刷し、積層し、前述の「テープ加熱および冷却プロファイル」を用いてベルト炉内で焼成する。この「デイジーチェーン」パターンは、直列に接続された5133個の正方形の導体配線と318個のビア充填導体とからなる。これらの配線導体および/またはビア充填接続部内の断線は、無限大の抵抗をもたらす。最初の焼成後、一部分を取り外して抵抗値を測定し、焼成を繰り返した。それぞれの焼成の終了時に、一部分を取り出し、抵抗値を測定した。試験部分は、端子に取り付けられ、デジタル抵抗計に電気的に接続された。温度を25℃に調整した。ミリオーム単位の全抵抗値を、ビア充填導体の区域を除いた導体正方形の総数で除算した。結果は、ミリオーム毎平方として記録した。配線の抵抗率は、導体線路をより細くまたはより太く印刷すること、および/または配合物中の全固形分を変えることによって調節することができる。一般に、銀をベースとする系は、それぞれの焼成および/または接続配線の断線後により抵抗を増大させる傾向にあった。これらの結果(図3および図4)は、最大10回の繰り返し焼成後に、いずれの回路にも電気的短絡や電気的故障のない非常に安定した特性の性能を示す。
【0119】
焼成した部分をダイアモンドカッタを用いて切断し、研磨し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて微細構造を撮影して、全体的な微細構造、ビア充填導体と配線導体の間の相互接続、ビア充填導体と周辺の誘電体側壁との間の界面構造を評価した。SEM写真の評価は、誘電体側壁からのビアの分離も配線導体からのビアの分離も存在しないことを示した。微細構造は、均一な粒径分布を有し、全体にわたって良好に緻密化されていた。このような微細構造は、それぞれの再焼成の後、良好な導電性および導電特性の一貫性をもたらすはずである。図面に示す電気的測定が、この結論を支持する。
【0120】
性能評価において本発明で使用される様々なGreen Tape(商標)は、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献21および出願人整理番号EL0518 US NAの特許出願、ならびに上記および特許文献1に記載されているPTOSの記載に記載されており、および本出願人による市販製品、943PX、951-AT Green Tape(商標)である。
【0121】
(実施例)
以下の実施例では、第4表に列挙するガラス組成物を使用した。ガラスA、BおよびCは本発明で有用なガラスを示す。
【0122】
【表5】

【実施例1】
【0123】
【表6】

【実施例2】
【0124】
【表7】

【実施例3】
【0125】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】エチルセルロースの構造式を示す図である。
【図1B】完全に(54.88%)エトキシル置換されたエチルセルロースの構造式を示す図である。
【図2】308個のビアおよび5133個の正方形導体からなる「デイジーチェーンテストパターン」を示す図であり、導体配線の幅は6ミル(0.152mm)であり、破線が内部に埋め込まれたビア接続部を示し、実線が表層ビア接続部を示す図である。
【図3】低損失テープ943−PX(本出願人)上の銀導体の、再焼成の回数の関数としての抵抗変化を示す図であり、(1)ビアの充填と配線導体の印刷を一緒に行う「ダブルウエットパス(Double wet pass)」、および(2)最初にビアを充填し、その上に同じ組成物を用いて配線導体を印刷する、2つのタイプの加工条件を使用した場合を示す図である。
【図4】951−ATテープ(本出願人)上の金導体の、再焼成の回数の関数としての抵抗変化を示す図であり、(1)ビアの充填と配線導体の印刷を一緒に行う「ダブルウエットパス」、および(2)最初にビアを充填し、その上に同じ組成物を用いて配線導体を印刷する、2つのタイプの加工条件を使用した場合を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温同時焼成セラミック回路に使用するための厚膜組成物であって、厚膜組成物全体に対する重量%に基づいて、
(a)貴金属、貴金属合金およびこれらの混合物から選択される30〜96重量%の微細粒子と、
(b)(1)前記回路の焼成温度で6〜7.6の範囲の比粘度(log n)を有する、0.2〜10重量%の1種または複数種の耐熱ガラス組成物、
(2)(i)金属酸化物、(ii)金属酸化物前駆体、(iii)非酸化物ホウ化物、(iv)非酸化物シリサイドおよび(v)これらの混合物から選択される、0.1〜5重量%の追加の無機結合剤、ならびに
(3)これらの混合物
から選択される1種または複数種の無機結合剤と、
(c)2〜20重量%の有機媒体であって、エトキシル基の比含有率が45.0〜51.5の範囲にあり、アンヒドログルコース単位当たりのエトキシル基置換度が2.22〜2.73の範囲にあるエチルセルロースを含む有機媒体と
を含み、成分(a)および(b)は成分(c)中に分散されていることを特徴とする厚膜組成物。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、焼成条件において低温同時焼成セラミック基板ガラス中に存在する残留ガラスと混和しない、あるいは部分的に混和性であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エチルセルロースの前記エトキシル基含有率は、48.0〜49.5%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アンヒドログルコース単位当たりの前記エトキシル基置換度は、2.46〜2.58単位の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記貴金属は、Au、Ag、PdおよびPtから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記貴金属合金は、Au、Ag、PdおよびPtから選択される金属の合金であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物は、Zn、Mg、Co、Al、Zr、Mn、Ni、Cu、Ta、W、Laおよびこれらの混合物の酸化物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物前駆体は、Zn、Mg、Co、Al、Zr、Mn、Ni、Cu、Ta、W、Laおよびこれらの混合物の前駆体であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記耐熱ガラス組成物は、ガラス組成物全体に対する重量%に基づき、25〜60%のSiO、10〜20%のAl、10〜15%のB、5〜25%のCaO、および残余である1〜5%の他のネットワーク修飾イオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記貴金属は球状のAuであり、前記Auの平均粒径分布は1から6ミクロンの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含む低温同時焼成セラミック回路であって、前記組成物は、前記ガラスフリット、金属粉末および/または他の焼結助剤を焼結させ、前記有機媒体を取り除いて加工されていることを特徴とする低温同時焼成セラミック回路。
【請求項12】
a)複数のグリーンテープ層内にビアのパターン状アレイを形成する工程と、
b)工程(a)のグリーンテープ層内のビアを、ビア充填厚膜組成物で充填する工程と、
c)工程(b)のビアが充填されたグリーンテープ層のいずれかまたはすべての表面の上にパターン状厚膜機能層を印刷する工程と、
d)工程(c)のグリーンテープ層の最外表面の上に表面厚膜のパターン状の層を印刷する工程と、
e)工程(d)の印刷されたグリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープによって分離されている複数の未焼成の相互接続される機能層を備える組立体を形成する工程と、
f)工程(e)の組立体を同時焼成する工程と
を含み、
前記ビア充填厚膜組成物、前記パターン厚膜機能層および前記表面厚膜のうちの1種または複数種が、請求項1に記載の組成物を使用することを特徴とする多層回路を形成する方法。
【請求項13】
a)複数のグリーンテープ層内にビアのパターン状アレイを形成する工程と、
b)工程(a)のグリーンテープ層内のビアを、ビア充填厚膜組成物で充填する工程と、
c)工程(b)のビア充填済グリーンテープ層のいくつかまたはすべての表面の上にパターン状厚膜機能層を印刷する工程と、
d)工程(c)の印刷されたグリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープによって分離されている複数の未焼成の相互接続される機能層を備える組立体を形成する工程と、
e)工程(d)の組立体の上に、表面厚膜組成物のパターン状の層を少なくとも1層印刷するステップと、
f)工程(e)の組立体と前記パターン層とを同時焼成するステップと
を含み、
前記ビア充填厚膜組成物、前記パターン厚膜機能層および前記表面厚膜のうちの1種または複数種で、請求項1に記載の組成物を使用することを特徴とする多層回路を形成する方法。
【請求項14】
前記ビア充填厚膜組成物、ならびに前記厚膜機能層のうち少なくとも1層で請求項1に記載の組成物を使用し、前記ビア充填厚膜組成物および前記厚膜機能層を単一の工程で同時に印刷することを特徴とする請求項12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項12または13のいずれか一項に記載の方法によって形成されることを特徴とする多層回路。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物の、アンテナ、フィルタ、バラン、ビーム形成器、I/O、カプラ、ビア貫通接続、EM結合貫通接続、ワイヤボンド接続および伝送配線を含む群から選択されるマイクロ波回路部品および他の高周波回路部品を形成するための使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−184247(P2007−184247A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−315613(P2006−315613)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】