説明

多成分シーリングリムを有する膜−電極接合体

本発明は、多成分シーリングリムを有する膜−電極接合体に関し、その際、該リム成分は少なくとも2つの異なる接合法によって接合されている。膜−電極接合体のリム構造は、接着および物理的固定の両方によって互いに接合されている少なくとも2つの材料(シーリング材料AおよびフレームB)を有する。フレームBは少なくとも1つの穿孔を有し、そこにシーリング材料が貫入しかつ、かみ合い接続を起こさせる。接着接合法、ラミネーションプロセスおよび/または射出成形プロセスは、多成分リムおよびそれに相応する膜−電極接合体を作製するのに適している。該多成分リム構造は、高い結合強度を有する。多成分リムを有する膜−電極接合体は、燃料電池(PEMFCs、DMFCs等)、電解装置または電気化学センサーのような電気化学装置中で使用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分シーリングリムを有する膜−電極接合体("MEA")、およびまたそれの製造法に関する。少なくとも2つのリム成分は、2つの異なる接合法によって接合されている。膜−電極接合体は、燃料電池(膜燃料電池、PEMFCs、DMFCs等)、電解装置または電気化学センサーのような電気化学装置中で使用されている。該リム構造は、高い接着強度を有する。
【0002】
燃料電池は、燃料および酸化剤を2つの電極での分離された領域で、電力、熱および水に変換する。酸素または空気が酸化剤として用いられる一方で、燃料として水素または水素リッチガスを使用することが可能である。燃料電池中のエネルギー変換のプロセスは、とりわけ高い効率を有する。このため、燃料電池は、移動用アプリケーション、据付用アプリケーションおよび携帯用アプリケーションにおいてますます重要になってきている。
【0003】
本発明の目的として、PEM燃焼電池スタックとは、燃料電池ユニットが積み重ねられた集成装置("スタック")である。燃料電池ユニットは、下で略して燃料電池とも呼ばれる。それは、いずれの場合も、セパレート板とも呼ばれかつガスの供給および電気の導通に用いられるバイポーラ板の間に配置されている膜−電極接合体を有する。
【0004】
PEM/DMFC燃料電池の重要な構成要素は、膜−電極接合体("MEA")である。膜−電極接合体はサンドイッチ様の構造を有し、かつ一般に5つの層から成る。5層の膜−電極接合体を作製するために、真ん中のイオノマー膜に対してサンドイッチ様の形でアノードガス拡散層(アノード"GDL")およびそれに相応するアノード触媒層が前面で接合または積層され、カソードガス拡散層およびそれに相応するカソード触媒層が背面で接合または積層される。シーリングは、適したシーリング材料によって行われる。
【0005】
MEAの作製において、触媒層は一般にまずガス拡散層に塗布される。そのように作製されたガス拡散電極("GDEs")は、次いでイオノマー膜の前面または背面に取り付けられる("CCB法")。その後、シーリング材料がエッジの周りに塗布される。
【0006】
単一のシーリングリムを有する膜−電極接合体は、従来技術から公知である。
【0007】
DE19703214は、組み込まれたシーリングリムを有する膜−電極接合体を開示し、その際、膜は電極によって完全に覆われており、かつシーリングリムは電極および膜への接着によって接合されている。
【0008】
WO2000/10216は、多成分シーリングリムを有する膜−電極接合体を開示し、その際、異なる材料は接着によって互いに接合されている。
【0009】
WO2005/006473は、半分が同一の広がりをもつデザインを有する、すなわち、それぞれ大きさの異なるガス拡散層を前面および背面に有する膜−電極接合体を開示する。該膜−電極接合体のエッジはシーリング材料によって取り囲まれている。多成分リムを有する膜−電極接合体および付加的な外部フレームを有するものが記載されている。これらの全ての場合において、リム成分は接着によって互いに結合されている。組み合わせられた接合法は開示されていない。
【0010】
多成分リムを有する公知の膜−電極接合体の欠点は、リム成分間の結合の強度が欠如していることである。(例えば、濡れの欠如および/または乏しい接着作用のために)互いに良好な接着結合を形成しない材料は、複合体中で乏しい接着を示す。
【0011】
加えて、これまで公知の構造は、リム成分がクリープを起こしやすいために燃料電池の長期の運転において不十分な安定性を示す。
【0012】
従って、本発明の目的は、改善された多成分リムを有する膜−電極接合体を準備することであった。本発明に従うリムは、例えば、より高い接着強度、より良好なシーリング特性、クリープが起きることに対する低い傾向および、より高い長期の安定性を有するべきである。同時に、多成分リムを有するそのような膜−電極接合体の製造法が準備されるべきである。この場合、非常に違ったフレーム材料は、改善された結合強度を伴って互いに接合されうるべきである。
【0013】
この目的は、請求項1記載の膜−電極接合体を準備することによって達成される。さらなる請求項は、本発明の有利な実施態様および該膜−電極接合体の製造法に関する。
【0014】
本発明は、少なくとも2つのリム成分が接着および物理的固定(physical locking)の両方によって互いに接合されている多成分シーリングリムを有する膜−電極接合体を記載する。それゆえ、2つの接合法(接着および物理的固定)が、少なくとも2つのリム成分を接合するために用いられる。物理的固定による接続が、例えば、少なくとも2つの成分の付加的なかみ合わせによって行われうる一方で、接着接続は、一般に接着技術によって行われうる。
【0015】
2つの接合法を組み合わせて用いることで、接着接続しか有さない慣例のリムと比較して、より高い強度、とりわけ高い引張強度が該シーリングリムに生じる。本発明に従うリム構造は、リム成分に関して材料のより幅広い選択が可能であるというさらなる利点を提供する。とりわけ、低いクリープ特性を有するより強い材料がフレーム(成分B)のために使用されうる。さらに本発明は、機械的に安定なフレーム材料(成分B)と、たいてい理想的な接着を付与しないより軟質のシーリング材料(成分A)との間で強い結合が、互いに接合されるに際して達成されうるという利点を提供する。
【0016】
それゆえ、接着と物理的固定とを組み合わせた本発明に従う接合法により、MEA製造において、かなり多くの材料組み合わせおよび変化の自由度が可能となる。
【0017】
本発明の目的として、一般に5層の膜−電極接合体自体が、同一の広がりをもつ(coextensive)デザインまたは半分が同一の広がりをもつ(semi-coextensive)デザインに従って組み立てられているかどうか、またはそれが突出した膜面を有するかどうかは無関係である。慣例のリム構造についての改善は、MEAのデザインからは独立している。組み合わせられた接着および物理的固定は、種々のリム成分間かまたはMEA成分とリム成分間のどちらかで行ってよい。これらの他の選択肢の組み合わせも可能である。
【0018】
図1は、2成分のリムを有する通例の膜−電極接合体の構造を示し、その構造において、該成分は接着によってのみ互いに接合されている。5層の膜−電極接合体は半分が同一の広がりをもつデザインを有し、かつイオノマー膜(1)を有し、該膜の前面に触媒層(2)が塗布されており、かつ該膜の背面に触媒層(3)が塗布されている。この上に、ガス拡散層(4)が前面に存在しており、かつガス拡散層(5)が該膜の背面に存在している。膜−電極接合体の周縁部はシーリング材料(6)によって取り囲まれている。フレーム(7)がこのシーリング材料中に埋め込まれており、かつシーリング材料(6)への接着によって接合されている。これがシーリング材料(6)およびフレーム(7)を有する2成分リムである。
【0019】
図2は、2成分が接着および物理的固定の両方によって互いに接合されているリムを有する、本発明に従う膜−電極接合体の構造を例によって示す。5層の膜−電極ユニットは半分が同一の広がりをもつデザインを有し、かつ触媒層(2)および(3)およびガス拡散層(4)および(5)を有するイオノマー膜(1)を有する。膜−電極接合体の周縁部はシーリング材料(6)によって取り囲まれている。少なくとも1つの穿孔または貫通−通路(7a)を有するフレーム(7)は、このシーリング材料の中に差し込まれている。フレーム(7)は、接着および物理的固定によってシーリング材料に接合されている。シーリング材料(6)("成分A")は液体または塑性状態においてフレーム(7)("成分B")を介して穿孔箇所に貫入しかつ、硬化または冷却後に、フレーム(7)とかみ合う、物理的に固定された接続を形成する。フレーム(7)における個々の穿孔(または開口部、ホールまたは貫通−通路)の形状、数および位置決めは、個々の構造の要求に依存し、かつMEAデザインに整合させられうる。少なくとも1つの穿孔(7a)がフレーム(7)に準備されているべきである。
【0020】
本発明は多成分リムを有する膜−電極接合体を提供し、該接合体中では、有利な一実施態様において、外部領域におけるフレーム(7)は、全体の膜−電極接合体の厚さより小さい厚さを有する。従って、本発明の膜−電極接合体は、高出力密度を有する小型PEMスタックにおける使用、例えば移動用の燃料電池アプリケーションにとりわけ適している。
【0021】
さらなる一実施態様において、外部領域におけるフレーム(7)は、全体の膜−電極接合体の厚さと同じかまたはそれより大きい厚さを有する。
【0022】
本発明に従うリム構造は、公知の量産法、例えば射出成形プロセスまたはラミネーションプロセスを用いたMEA製造にとりわけ適している。
【0023】
接続および接合技術は、原則的に3つの物理的機構:動力−伝達接続(force-transmitting connection)、物理的固定接続および接着剤接続(接着)に分類されうる。
【0024】
動力−伝達接続は、動力の伝達によって引き起こされる。これらは、例えば圧力による力または摩擦力を含む。動力−伝達接続は、接続において作用する力によってのみ保たれる。
【0025】
物理的な固定接続は、接合の少なくとも2つの成分のかみ合わせによって引き起こされる。機械的な接続の結果として、接合の成分は、動力の伝達なしであってもまたは動力の伝達が遮られる場合であってもばらばらになりえない。例は、かみ合い継手およびギヤホイールである。
【0026】
接着接続は、接合の成分が原子または分子力によって保たれる全ての接続である。接着接続は、例えば接着結合、はんだ付けおよび溶接によって引き起こされる。
【0027】
多成分リムを有する本発明の膜−電極接合体の個々の成分は、以下に記載されている。
【0028】
有利には、イオノマー膜はプロトン伝導性ポリマー材料を含有する。これらの材料は、下で略してイオノマーとも呼ばれる。有利には、スルホン酸基を有するテトラフルオロエチレン−フルオロビニルエーテルコポリマーが使用される。この材料は、例えば、DuPontによって商品名Nafion(R)で市販されている。しかしながら、とりわけフッ素不含の他のイオノマー材料、例えばドープされたスルホン化されたポリエーテルケトン、ドープされたスルホン化されたまたはスルフィン化されたアルキルケトン、ドープされたポリベンズイミダゾールおよびその混合物を使用することも可能である。
【0029】
電極−触媒(アノードおよびカソード触媒)として、貴金属、とりわけ元素の周期律表の白金族の金属を使用することが有利である。最も頻繁には、触媒活性白金族金属(例えばPtおよび/またはPt/Ru)が高分散した形で伝導性担持材料(例えばカーボンブラックまたはグラファイト)の表面上に析出されている担持触媒が使用される。
【0030】
ガス拡散層("GDLs")は、多孔質の導電性材料、例えば炭素繊維紙、炭素繊維不織布、炭素繊維織物(woven carbon fibre fabrics)、金属メッシュ、金属化繊維織物(metallized woven fibre fabrics)等を含んでよい。それらは疎水化されていてよくかつ/または微孔質の層("マイクロ層(microlayer)")を有する。
【0031】
膜−電極接合体をシーリングするためのシーリング材料(6)(成分A)として、燃料電池の運転条件下で不活性でありかつどんな妨害物質も放出しない有機ポリマーを使用することが可能である。該ポリマーはガス拡散層を湿らせ、かつそれらを気密式にシールまたは密閉することができなければならない。そのようなポリマーが満たさなければならないさらに重要な要件は、イオン伝導膜の自由表面に対する良好な接着および良好な湿潤特性である。適切な材料は、熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE、PVDF、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンまたはポリエステル;それに熱硬化性ポリマー、例えばエポキシ樹脂またはシアノアクリレートである。さらに適切なポリマーは、エラストマー、例えばシリコーンゴム、EPDM、フッ素ゴム、パーフルオロゴム、クロロプレンゴム、フルオロシリコーンエラストマー(fluorosilicone elastomers)である。シーリング材料(成分A)は、シート、フィルムまたはプリフォームの形で、接着剤、ペーストまたはインキの形でまたは顆粒または粉状調製物の形で(例えば射出成形用途用)使用されうる。
【0032】
フレーム(7)(成分B)のための材料として、とりわけ、耐クリープ性材料、例えば100℃を上回る、有利には120℃を上回るガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを使用することが可能である。高い融点および/または高い耐熱変形性を有するポリマーも有利である。そのような材料の例は、一般に、熱安定性ポリマー材料、例えばポリエステル、ポリフェニレン、スルフィド、ポリイミド、ガラス繊維強化プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、特殊ポリアミドならびに高融点ポリマーである。一般に、フレーム材料は、0.01〜1mmの範囲の厚さ、有利には0.05〜0.5mmの範囲の厚さを有するシート、テープまたはフィルムの形で使用される。
【0033】
所望される少なくとも1つの穿孔(貫通−通路またはホール)は、取付け前にフレーム(7)の中に導入される。これは、例えば、打抜き、切断、ウォータージェット切断、超音波切断、レーザー切断、フライス削り、穴あけまたはエッチングによって行われうる。穿孔は任意の形状を有してよく、幾何学的に単純な形状(例えば円形、三角形、長方形または長円形の形状)は、それらをより迅速にかつさらに効率的に製造できることから有利である。穿孔の内径は、0.1〜100mmの範囲、有利には0.5〜50mmの範囲にある。しかしながら、フレームは少なくとも1つの引き伸ばされたスリット状の穿孔を有してもよい。
【0034】
多数の穿孔が準備される場合、それらの典型的な間隔は、0.1〜100mmの範囲、有利には0.5〜50mmの範囲にある。フレーム(7)における穿孔の数および大きさは、個々の成分間の接着接続の要求される強度に依存する。接着が弱ければ弱いほど、それだけ物理的な固定接続は強くなされているべきである。例えばポリアミド(シーリング材料A)は、メルトからの冷却に際しポリエステル(フレームB)に対して弱い結合しか形成しないので、接続の強度を増加させるために付加的な物理的固定が必要とされる(実施例1を参照のこと)。
【0035】
多成分リムを有する膜−電極接合体を作製するために、MEA成分は慣例の方法によって少なくとも2つのリム成分に接合される。多段階プロセスにおいて、5層MEAの作製、すなわちイオノマー膜(1)、触媒層(2,3)およびガス拡散層(4,5)の接合は、まず別個に、例えばラミネーションプロセスによって実施してもよい。次いで、1つまたは2つ以上の工程においてリムが作製される。
【0036】
しかしながら、MEA成分はリムの作製と一緒に単一工程において互いに接合してもよい。これは連続的なプロセスの場合にとりわけ有利である。
【0037】
しかしながら、多成分リムをその後に作製してもよく、そこで例えば、フレームBが、存在するシールに付加される。
【0038】
原則的に、例えば、MEA成分およびリム成分を接合するための接着接合法(室温または高められた温度のどちらかで、使用される接着剤に依存する)、ラミネーションプロセス(一般に、高められた温度および加圧下で)または射出成形プロセスを用いることが可能である。他の方法も、それらがリム成分の組み合わせられた接着および物理的な固定接続を引き起こす限り可能である。一般に、ラミネーションプロセスには特別なプレス工具およびプレス金型が使用され、かつ適切な温度は50〜200℃の範囲にあり、プレス圧力は10〜100N/mmの範囲にある。
【0039】
記載されたプロセス工程は、適した形で合わせられるかまたは変性される場合、膜−電極接合体の連続的な製造プロセスにも適している。
【0040】
以下の実施例は本発明を、その範囲を制限することなく説明する。
【0041】
実施例1
本発明に従う製品を作製するために、膜−電極接合体をまず準備する。このMEAは、以下の構成要素を有する:
a)カソード電極(カソードCCB):SGL(Meitingen)社製の、マイクロ層を有する、疎水化された基礎材料のSigracet;貴金属量:0.5mg Pt/cm;白金触媒:カーボンブラック上の白金60%
b)アノード電極(アノードCCB):SGL(Meitingen)社製の、ミクロ層を有する、疎水化された基礎材料のSigracet;貴金属量:0.3mg Pt/cm;白金触媒:カーボンブラック上の白金60%
c)ポリマー電解質膜:プロトン化された形のNafion(R)111(DuPont社製)
これらの3つの構成要素を一緒に配置し、かつホットプレスにおいて積層し5層の膜−電極接合体を作製した。プレス工程は150℃で行われ、かつ150N/cmの単位圧を必要とする。
【0042】
半分が同一の広がりをもつMEAデザインを、本発明の実施例において使用する。この場合、方形アノードは5.4×5.4cmの外部寸法を有し、かつカソードおよび膜は6×6cmの寸法に打抜く。これにより0.3cmの幅を有する周縁ステップが生じ、そのため未被覆の膜の領域がアノードの周りに存在しかつ集成装置の周縁全体に及ぶ。
【0043】
次の工程において、燃料電池スタック中への取付けおよび該スタックのシーリングを可能にする多成分リムを、記載された膜−電極接合体に備え付ける。
【0044】
それは、ベンチレーションホール(ventilation holes)を有するプレスプレートおよび内側凹部(interior recess)を囲むテンプレートを有するプレス工具を用いて作製する。膜−電極接合体をこの凹部に2つのポリアミドフィルムウィンドウ(polyamide film windows)(Vestamelt(R),Degussa,Duesseldorf)と一緒に、該フィルムがMEAを囲むように敷設する。フレーム(6)をポリアミドフィルムウィンドウの周縁部領域内へと突き出し、そうして、その内部領域をポリアミドフィルム間に設置し、一方でその外部領域をポリアミドフィルムの寸法を超えて突き出させる。
【0045】
突出するフレーム(6)は、打抜かれたポリエステルフィルム(Hostaphan RN 190)からなる。このため、2mmの直径を有する48個のホールをポリエステルフレーム内に打抜き、溶融ポリアミドがラミネーションプロセス中に該ポリエステルフィルムを貫入できるようにする。穿孔を施されたポリエステルフレームは、いずれの場合も、8×8cmの外径および0.30mmの厚さを有する。ホールは、互いに4mmの間隔を空ける。
【0046】
成分を、特別に製造されたプレス工具に導入する。プレス金型をホットプレスに配置し、かつ185℃の加熱表面温度で60秒間プレスする。プレス金型の冷却後、膜−電極接合体を取り出す。
【0047】
電気化学測定:このプロセスに従って製造した2つの試料を、電気化学PEM単セル内に導入し、かつ完全に湿らせた条件下で75℃/1.5barにて水素/空気運転において試験した。600mA/cmの電流密度にて720〜730mVのセル電圧が得られる。
【0048】
比較例(CE1)
製品を上の実施例において記載されたように作製するが、しかしながら、穿孔(ホール)を有さないポリエステルフレームを使用し、そのためリム成分を接着によってのみ接合する。
【0049】
再度3つの構成要素を一緒に配置し、かつホットプレスにおいて積層しMEAを作製した。プレス工程は150℃で行われ、かつ150N/cmの単位圧を必要とする。他の全てのプロセス工程は、上の実施例のものと同一である。
【0050】
引張強度測定
本発明の膜−電極接合体におけるシーリング材料(6)およびフレーム(7)の接合と同様の方法を用いて、単に接着剤接続を有する(比較例CE1におけるものとして)および付加的な物理的固定(本発明に従う実施例1におけるものとして)による試験ストリップを作製した。これらの試験ストリップの強度を、引張試験において調べた。引張試験を、DIN EN 1465("Determination of the tensile shear strength of high-strength overlapping adhesive bonds")に基づく方法で、万能材料試験機タイプ5543(Instron社製)を用いて実施した。試料の引張強度を、2つの伸張速度で測定した(v1=5mm/minおよびv2=50mm/min)。結合の断裂に必要とされる力を記録した。結合の断裂に必要とされる力を記録した。
【0051】
結果を第1表にまとめる。そこから、接着および物理的固定を有する本発明に従うリム構造が、慣例のリム構造の引張せん断強度より約2倍優れた強度を有していることを読み取ることができる。
【0052】
【表1】

【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオノマー膜(1)、前面のガス拡散層(4)および触媒層(2)、背面のガス拡散層(5)および触媒層(3)および多成分リムを有する、電気化学装置用の膜−電極接合体であって、その際、該リムは、少なくとも1つのシーリング材料(6)および、少なくとも1つの穿孔(7a)を有する少なくとも1つのフレーム(7)有し、かつその際、シーリング材料(6)およびフレーム(7)は、接着および物理的固定の両方によって互いに接合されている、膜−電極接合体。
【請求項2】
外部領域におけるフレーム(7)が膜−電極接合体より小さい厚さを有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項3】
フレーム(7)が、ポリマー材料、例えばポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ガラス繊維強化プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドおよび/またはその組み合わせ物を有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項4】
フレーム(7)が、100℃を上回る、有利には120℃を上回るガラス転移温度(Tg)を有するポリマー材料を有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項5】
シーリング材料(6)が、熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE、PVDF、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンまたはポリエステル;熱硬化性ポリマー、例えばエポキシ樹脂またはシアノアクリレートまたはエラストマー、例えばシリコーンゴム、EPDM、フッ素ゴム、パーフルオロゴム、クロロプレンゴム、フルオロシリコーンエラストマーを有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項6】
フレーム(7)における少なくとも1つの穿孔(7a)が、0.1〜100mmの範囲の、有利には0.5〜50mmの範囲の内径を有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項7】
イオノマー膜(1)が、プロトン伝導性イオノマー材料、例えばスルホン酸基を有するテトラフルオロエチレン−フルオロビニルエーテルコポリマーまたはフッ素不含のイオノマー材料、例えばドープされたスルホン化されたポリエーテルケトン、ドープされたスルホン化されたまたはスルフィン化されたアリールケトンまたはドープされたポリベンズイミダゾールまたはその混合物を含有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項8】
ガス拡散層(4,5)が、多孔質の導電性材料、例えば炭素繊維紙、炭素繊維不織布、炭素繊維織物、金属メッシュまたは金属化繊維織物を有する、請求項1記載の膜−電極接合体。
【請求項9】
イオノマー膜(1)、前面のガス拡散層(4)および触媒層(2)、背面のガス拡散層(5)および触媒層(3)およびまた多成分リムを有する、電気化学装置用の膜−電極接合体の製造法であって、その際、該リムは、少なくとも1つのシーリング材料(6)および、少なくとも1つの穿孔(7a)を有する少なくとも1つのフレーム(7)を有し、かつその際、シーリング材料(6)およびフレーム(7)を、接着および物理的固定の両方によって互いに接合する、製造法。
【請求項10】
イオノマー膜(1)、触媒層(2,3)、ガス拡散層(4,5)およびまたシーリング材料(6)およびフレーム(7)の接合を、接着剤接合法、ラミネーションプロセス、射出成形プロセスまたはその組み合わせによって一工程で実施する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
イオノマー膜(1)、触媒層(2,3)、ガス拡散層(4,5)およびまたシーリング材料(6)およびフレーム(7)の接合を、接着剤接合法および/またはラミネーションプロセスおよび/または射出成形プロセスによって種々の工程で実施する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
イオノマー膜(1)、触媒層(2,3)およびガス拡散層(4,5)の接合をラミネーションプロセスによって実施し、かつ多成分リムをさらなるラミネーションプロセスによって製造する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
イオノマー膜(1)、触媒層(2,3)およびガス拡散層(4,5)の接合をラミネーションプロセスによって実施し、かつ多成分リムを射出成形プロセスによって製造する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
電気化学装置における、とりわけ膜燃料電池における、電解装置におけるまたは電気化学センサーにおける、請求項1から8までのいずれか1項記載の膜−電極接合体の使用。

【公表番号】特表2009−525572(P2009−525572A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552744(P2008−552744)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000853
【国際公開番号】WO2007/088049
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】