説明

多数個取り配線基板および配線基板ならびに配線基板の製造方法

【課題】個片分割時の結晶粒子の脱落が抑制された、多数個取り配線基板および配線基板ならびに配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック焼結体からなり、複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された母基板1と、母基板1の主面に配線基板領域2の境界に沿って形成された分割溝4とを備え、母基板1の厚み方向の一部が、セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層1bであり、分割溝4の底部が大粒子層1b内に位置している多数個取り配線基板9である。焼結性が高い大粒子層1b内で母基板1の破断が始まるため、破断に伴う衝撃に起因したセラミックの結晶粒子脱落を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック焼結体からなる母基板に複数の配線基板領域が配列され、配線基板領域の境界に沿って分割溝が形成されてなる多数個取り配線基板、および多数個取り配線基板が分割されて作製された配線基板、ならびに配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板として、セラミック焼結体からなる絶縁基板に、電子部品と電気的に接続される配線導体が形成されてなる配線基板が多用されている。このような配線基板は、一般に、配線基板となる領域が母基板に縦横に配列されてなる多数個取り配線基板の形態で製作されている。
【0003】
多数個取り配線基板の製作は、酸化アルミニウムやガラス等の原料の粉末に有機溶剤およびバインダを添加してシート状に成形したセラミックグリーンシートにタングステン等の金属ペーストを所定の配線導体のパターンに印刷して焼成することによって行なわれる。
【0004】
多数個取り配線基板の分割は、あらかじめ、配線基板領域の境界に沿って母基板の主面(上面および下面の少なくとも一方)に分割溝を形成しておくことによって行なわれる。多数個取り配線基板に対して分割溝に沿って応力を加え、分割溝が形成された部分で母基板を厚み方向に破断させれば、多数個取り配線基板を個片の配線基板に分割することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318153号公報
【特許文献2】特開2010−135657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においては、多数個取り配線基板の個片の配線基板への分割の際に、母基板の破断にともなう機械的な衝撃で、母基板を形成しているセラミック焼結体中の結晶粒子が脱落する可能性があるという問題点があった。
【0007】
このような結晶粒子の脱落が生じると、個片の配線基板において寸法や外観の不具合を生じる可能性がある。また、脱落した結晶粒子が配線導体等に付着して、配線導体と電子部品との電気的な接続が妨げられる可能性がある。
【0008】
特に、近年、配線基板の小型化等が進んでいるため、わずかな結晶粒子の脱落でも上記不具合を生じる可能性が高くなってきている。
【0009】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、個片の配線基板に分割する際にセラミックの結晶粒子が脱落することを抑制することが可能な多数個取り配線基板を提供すること、および側面におけるセラミックの結晶粒子の脱落が抑制された配線基板、ならびにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多数個取り配線基板は、セラミック焼結体からなり、複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された母基板と、該母基板の主面に前記配線基板領域の境界に沿って形成された分割溝とを備える多数個取り配線基板であって、前記母基板の厚み方向の一部が、前記セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層であり、前記分割溝の底部が前記大粒子層内に位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明の配線基板は、セラミック焼結体からなる絶縁基板に配線導体が形成されてなる配線基板であって、前記絶縁基板の側面の上端部および下端部の少なくとも一方が剪断面であるとともに、前記側面の他の部分が破断面であり、前記絶縁基板の厚み方向の一部が、前記セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層であり、前記側面の前記剪断面と前記破断面との境界が前記大粒子層内に位置していることを特徴とする。
【0012】
本発明の配線基板の製造方法は、セラミック粉末をシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製する第1工程と、
前記セラミックグリーンシートの主面に分割溝を形成する第2工程と、
前記セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック焼結体からなり、複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された母基板と、該母基板の主面に前記配線基板領域の境界に沿って形成された分割溝とを備える多数個取り配線基板を作製する第3工程と、
該多数個取り配線基板を、前記分割溝を形成した部分において厚み方向に破断させて、個片の配線基板に分割する第4工程とを備え、
前記第1工程において、前記セラミックグリーンシートの厚み方向の一部に前記セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも大きい高充填層を形成し、
前記第2工程において、前記分割溝を、該分割溝の底部が前記高充填層内に位置するようにして形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多数個取り配線基板によれば、母基板の厚み方向の一部が、セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層であり、分割溝の底部が大粒子層内に位置していることから、分割溝が形成された部分において母基板が破断する際の結晶粒子の脱落を抑制することができる。
【0014】
これは、大粒子層においては、他の部分に比べて結晶粒子が大きいため、結晶粒子同士の間の隙間が小さく、結晶粒子間の焼結性が他の部分よりも高いことによる。なお、結晶粒子の大きさは、焼成時のセラミック粉末同士の焼結により大きくなる傾向があり、セラミック粉末同士の焼結が進んだ部分ほど結晶粒子の焼結性が高くなる。
【0015】
本発明の配線基板によれば、絶縁基板の側面の剪断面と破断面との境界、つまり、多数個取り配線基板における分割溝の底部に相当する部分が大粒子層内に位置していることから、絶縁基板の側面における結晶粒子の脱落が効果的に抑制された配線基板を提供することができる。
【0016】
本発明の配線基板の製造方法によれば、上記各工程を備え、第1工程において、セラミックグリーンシートの厚み方向の一部に、セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも大きい高充填層を形成し、第2工程において、分割溝を、その分割溝の底部が高充填層内に位置するようにして形成することから、第4工程において多数個取り配線基板を個片の配線基板に分割する際のセラミック結晶体からの結晶粒子の脱落を抑制することができる。すなわち、高充填層においてはセラミック粉末間の焼結性が他の部分よりも高いため、焼成後の多数個取り配線基板において、結晶粒子の大きさが他の部分よりも大きい大粒子層内に分割溝の底部が位置する。そのため、多数個取り配線基板の分割、つまり母基板の破
断時における結晶粒子の脱落を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明の配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の多数個取り配線基板について、添付の図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。また、図2は、図1に示す多数個取り配線基板の要部を拡大して示す断面図である。
【0020】
図1および図2において、1はセラミック焼結体からなる母基板,2は配線基板領域,3は配線導体,4は分割溝である。それぞれが配線導体3を備える配線基板領域2が母基板1の縦横の並びに配列され、配線基板領域2の境界に沿って分割溝4が形成されて多数個取り配線基板9が基本的に構成されている。なお、配線導体3は、図を見やすくするために、詳しいパターンを省略して示している。
【0021】
母基板1は、例えば平板状であり、酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体,ムライト質焼結体等のセラミック焼結体からなる四角平板状の複数の絶縁層1aが積層されて形成されている。図1に示す例では絶縁層1aが4層積層されて母基板1が形成されているが、これ以外の積層数でも構わない。
【0022】
なお、図1に示す例においては、母基板1の外周部に枠状のダミー領域5が形成されている。ダミー領域5は、多数個取り配線基板9の取り扱いを容易とすることや、配線導体3等にめっき層(図示せず)を被着させるときのめっき用引き出し線を配置するスペースを確保すること等のために設けられている。
【0023】
母基板1は、例えば以下のようにして作製されている。
【0024】
すなわち、まず、酸化アルミニウム等のセラミック粉末に、酸化ケイ素や酸化カルシウム,酸化マンガン等の添加材の粉末を混合するとともに、有機溶剤,バインダと混練した後、ドクターブレード法やリップコータ法等の成形方法でシート状に成形して複数のセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらのセラミックグリーンシートを積層した後に約1300〜1600℃で焼成すれば、絶縁層1aが積層されてなる母基板1を作製することができる。
【0025】
焼成時に、セラミック粉末同士は、酸化ケイ素等のガラス成分を介して互いに焼結(液相焼結)する。
【0026】
配線基板領域2は、半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品(図示せず)を搭載するための電子部品搭載用等の配線基板となる領域であり、例えば、それぞれの上面の中央部
に電子部品が搭載される。
【0027】
配線基板領域2(個片の配線基板)に搭載される電子部品としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子、およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子、弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子、容量素子、抵抗器、半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。
【0028】
図1および図2に示す例において、配線基板領域2には、上面の電子部品が搭載される部分から下面(母基板1の各配線基板領域2における下面)にかけて配線導体3が形成されている。この配線導体3のうち、配線基板領域2の上面に形成された部分に電子部品の電極がはんだやボンディングワイヤ等を介して電気的に接続される。
【0029】
配線導体3は、例えばタングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料により形成されている。配線導体3は、例えばタングステンからなる場合であれば、タングステン粉末を有機溶剤,バインダと混練して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを、所定の配線導体3のパターンでセラミックグリーンシートに印刷した後、セラミックグリーンシートと同時焼成することによって形成することができる。
【0030】
分割溝4は、母基板1を厚み方向に破断させて、多数個取り配線基板9を個片の配線基板に分割するためのものである。分割溝4が形成された部分において母基板1に応力を加えれば、母基板1を厚み方向に破断させることができる。分割溝4は配線基板領域2の境界(配線基板領域2同士の間の境界および配線基板領域2とダミー領域5との間の境界)に沿って形成されているので、上記母基板1の破断によって配線基板領域2が個片の配線基板に分割される。
【0031】
分割溝4は、母基板1となるセラミックグリーンシートまたはセラミックグリーンシートの積層体の主面(図1の例では上面のみ)に、配線基板領域2の境界に沿ってカッター刃等で切り込みを入れることによって形成することができる。
【0032】
また、この多数個取り配線基板9において、母基板1の厚み方向の一部が、セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子(図示せず)が他の部分よりも大きい大粒子層1bであり、分割溝4の底部が、その大粒子層1b内に位置している。分割溝4の底部が大粒子層1b内に位置していることから、分割溝4が形成された部分において母基板1が破断する際の結晶粒子の脱落を抑制することができる。
【0033】
これは、大粒子層1bにおいては、他の部分に比べて結晶粒子が大きいため、結晶粒子同士の間の隙間が小さく、結晶粒子間の焼結性が他の部分よりも高いことによる。なお、結晶粒子の大きさは、焼成時のセラミック粉末同士の焼結により大きくなる傾向があり、セラミック粉末同士の焼結が進んだ部分ほど結晶粒子の焼結性が高くなる。
【0034】
大粒子層1bは、例えば母基板1の絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートについて、その内部に、セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも高い部分を層状に設け、このセラミックグリーンシートを焼成することによって形成することができる。焼成の際に、セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも高い部分においてはセラミック粉末同士の焼結が進み、焼成後の絶縁層1aの厚み方向の一部に、結晶粒子の大きさが他の部分よりも大きい大粒子層1bを形成することができる。セラミックグリーンシートにおいてセラミック粉末の充填密度が他の部分よりも高い部分は、例えば、セラミックグリーンシートを成形する際に、重力に従ってセラミックグリーンシートの下面側により多くセラミック粉末が充填されるように、有機溶剤の乾燥速度等の成形条件を調整すればよい。
【0035】
大粒子層1bが、絶縁層1aの下面からほぼ一定の厚み(例えば約0.1〜0.2mm程度)で形成されている場合であれば、分割溝4は、その底部が、絶縁層1a同士の層間を下限とし、この層間から上側に約0.15mm程度の位置を上限とした範囲に位置するように(この深さでカッター刃による切り込みをストップさせるように)して形成すればよい。
【0036】
また、大粒子層1bは、例えば図3に示すように、母基板1を形成する複数の絶縁層1aのうち一部のものについて、他のものよりもセラミック粉末の充填密度を高くして形成されたものであってもよい。なお、図3は、本発明の多数個取り配線基板9の実施の形態の他の例を示す断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。この場合、絶縁層1aとなる複数のセラミックグリーンのうち一部のものについて、セラミック粉末の充填密度を他のものよりも高くしておく。これらの複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することによって、大粒子層1bを母基板1に形成することができる。
【0037】
なお、セラミック粉末は、例えば球形状や楕円球状,またはこのような形状であって表面に凹凸を有する形状である。また、セラミック粉末の大きさは、例えば球形状であれば直径が算術平均で約2〜7μm程度である。
【0038】
セラミック粉末の充填密度は、充填密度が高い部分(大粒子層1bとなる部分)において3.8〜4.0g/cm程度であり、他の部分において3.5〜3.8g/cm程度である。
【0039】
このようなセラミック粉末により作製されたセラミックグリーンシートが焼成されてなる絶縁層1aにおいて、大粒子層1bにおけるセラミック粒子の粒径は約4〜7μm程度であり、他の部分において2〜4μm程度である。
【0040】
また、このようなセラミック粉末により作製されたセラミックグリーンシートが焼成されてなる絶縁層1aにおいて、大粒子層1bにおけるセラミック粒子の粒径は、他の部分に比べて約2〜3倍程度である。
【0041】
また、このようなセラミック粉末により作製されたセラミックグリーンシートが焼成されてなる絶縁層1aにおいて、大粒子層1bにおける密度は、他の部分に比べて約1.1〜1.14倍程度であると推定される。
【0042】
結晶粒子の粒径は、例えば、母基板1の厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察し、結晶粒子の大きさを計測することによって測定することができる。
【0043】
本発明の多数個取り配線基板9について、具体例を挙げて実際の効果の一例を説明する。具体例の多数個取り配線基板9において、母基板1は、酸化アルミニウム質焼結体からなる絶縁層1aを3層積層して作製した。絶縁層1aの厚みは約0.25mmとし、母基板1の厚みは約0.75mmとした。また、母基板1は、1辺の長さが約100mmの正方形板状で
作製し、これに、1辺の長さが約5.5mmの正方形状の配線基板領域2を16×16の縦横の
並びに配列した。この具体例の母基板1について、最上層の絶縁層1aの下面側(下側の絶縁層1aとの層間側)に約0.15mmの厚さで大粒子層1bを形成した。また、比較例として、大粒子層を含まない母基板(図示せず)を用いて従来技術の多数個取り配線基板(図示せず)を作製した。
【0044】
これの具体例の多数個取り配線基板9および比較例の多数個取り配線基板(それぞれ10枚ずつであり、配線基板領域(2)の個数にして2560個ずつ。)について、母基板1の上面から最上層の絶縁層1aの、下側の絶縁層1aとの層間に近接する部分(層間からの距
離が約数十μm程度)に底部が位置するように分割溝4を形成し、分割溝4において母基板1の破断による分割を行なった。分割の際に、セラミックの結晶粒子の脱落の有無を目視(倍率100倍)による外観検査により行なった。
【0045】
その結果、具体例の多数個取り配線基板9においては、結晶粒子の脱落が見られなかったのに対し、比較例の多数個取り配線基板においては、約25個(25/2560個で、約1%)の配線基板において、直径が約10〜100μm程度の結晶粒子の脱落が見られた。
【0046】
なお、多数個取り基板9において、分割溝4は、母基板1の下面のみに形成されていてもよく、上面および下面の両方に形成されていてもよい。図4に示す例において、母基板1の上下両面に分割溝4が形成されている。また、大粒子層1bは、各絶縁層1aの上面側に形成されている。上下両面の分割溝4は、それぞれ、その底部が大粒子層1b内に位置するように形成されている。なお、図4は、本発明の多数個取り配線基板9の実施の形態の他の例を示す断面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0047】
母基板1の上下両面に、互いに対向し合うように分割溝4を形成した場合には、母基板1の破断がより容易であり、個片の配線基板の生産性がより高い多数個取り配線基板9とすることができる。
【0048】
絶縁層1aの上面側に大粒子層1bが配置された例は、例えば絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートのうち成形時に下側になっていた面が上側になるように、セラミックグリーンシートがひっくり返されて積層された例である。
【0049】
本発明の配線基板は、例えば図1に示すような多数個取り配線基板9が個片に分割されて作製されている。図5(a)は、本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、図5(b)はその側面図である。図5において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
【0050】
配線基板10は、セラミック焼結体からなる絶縁基板11に配線導体3が形成されて、基本的に構成されている。この絶縁基板11の側面の上端部および下端部の少なくとも一方が、絶縁基板11の主面と側面との境界に沿った帯状の領域において剪断面11aであるとともに、側面の他の部分が破断面11bである。図5に示す例においては、破線Bよりも上側が剪断面11aであり、下側が破断面11bである。
【0051】
絶縁基板11の側面のうち剪断面11aは、多数個取り配線基板9において分割溝4が形成されていた部分に相当する。多数個取り配線基板9において分割溝4の内側面は、カッター刃等の切り込みに伴い、剪断面となって露出している。そのため、絶縁基板11の側面のうち分割溝4が形成されていた部分に相当する部分は、上記のような剪断面になっている。
【0052】
また、絶縁基板11の側面のうち、上記剪断面11a以外の部分、つまり多数個取り配線基板9において分割溝4に沿った母基板1の破断に伴い新たに露出した部分は、上記のような破断面になっている。
【0053】
また、この配線基板10は、絶縁基板11の厚み方向の一部が、セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層1bである。この大粒子層1b内に、側面の剪断面と破断面との境界が位置している。絶縁基板11の側面の剪断面と破断面との境界、つまり、多数個取り配線基板9における分割溝4の底部に相当する部分が大粒子層1b内に位置していることから、絶縁基板11の側面における結晶粒子の脱落が効果
的に抑制された配線基板10を提供することができる。
【0054】
次に、本発明の配線基板の製造方法の一例を説明する。なお、以下の説明において、前述した多数個取り配線基板9および配線基板10についての説明と同様の点については、説明を省略する。
【0055】
図6(a)〜(d)は、それぞれ本発明の配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。図6において図1および図5と同様の部位については同様の符号を付している。
【0056】
まず、図6(a)に示すように、セラミック粉末を溶剤とともにシート状に成形してセラミックグリーンシート21を作製する(第1工程)。
【0057】
セラミック粉末としては、前述した本発明の多数個取り配線基板9の場合と同様に、酸化アルミニウムや酸化ケイ素等が用いられる。こセラミック粉末に適当な添加材を混合し、これを有機溶剤およびバインダとともに混練した後、ドクターブレード法等の方法でシート状に成形すれば、セラミックグリーンシート21を作製することができる。
【0058】
この第1工程において、セラミックグリーンシート21の厚み方向の一部に、セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも大きい高充填層21bを形成する。高充填層21bは、例えば前述したように、セラミックグリーンシート21を成形する際の成形条件の調整によって、重力に従ってセラミックグリーンシート21の下面側により多くのセラミック粉末を充填させるよう方法で形成することができる。
【0059】
次に、図6(b)に示すように、セラミックグリーンシート21の主面に分割溝4を形成する(第2工程)。なお、この例では、複数のセラミックグリーンシート21を積層して積層体(符号なし)としている。また、各セラミックグリーンシート21は上下に分かれた状態で示している。
【0060】
分割溝4は、セラミックグリーンシート21(積層体)の主面に、配線基板となる領域(符号なし)の境界に沿って、カッター刃等で切り込みを入れることによって形成することができる。この場合、分割溝4の底部が高充填層21b内に位置するように、カッター刃の切り込み深さを調整する。複数のセラミックグリーンシート21を積層した場合であれば、そのセラミックグリーンシート21同士の層間を基準にして、カッター刃の切り込み深さを設定する。
【0061】
なお、セラミックグリーンシート21の高充填層21bの位置は、上記のようにセラミックグリーンシート21の成形時の下面側となるようにしておけば、容易に特定することができる。これは、複数のセラミックグリーンシート21を積層したときも同様である。すなわち、セラミックグリーンシート21のうち成形時に下面側となっていた部分が大粒子層1bであるため、このセラミックグリーンシート21の主面(下面)の位置、つまりセラミックグリーンシート21同士の層間の位置を基準にして、それと同じ、または若干上側の位置にまでカッター刃を切り込ませればよい。
【0062】
また、セラミックグリーンシート21には、所定のパターンで金属ペースト23を印刷している。金属ペースト23は、多数個取り配線基板9および配線基板10の配線導体3となるものである。金属ペースト23は、前述した配線導体3と同様の金属材料(タングステンやモリブデン等)を用いて作製することができ、例えば、タングステン粉末を有機溶剤,バインダと混練して作製することができる。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、セラミックグリーンシート21を焼成して、セラミック
焼結体からなり、複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された母基板1と、母基板1の主面に配線基板領域2の境界に沿って形成された分割溝4とを備える多数個取り配線基板9を作製する(第3工程)。
【0064】
この多数個取り配線基板9は、前述した本発明の多数個取り配線基板9と同様の構造であり、母基板1の厚み方向の一部に、セラミック粒子の結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層1bになっている。大粒子層1bは、セラミックグリーンシート21における高充填層21bのセラミック粉末が焼結して形成されている。高充填層21bでは他の部分よりもセラミック粉末の充填密度が高いため、焼成の際にセラミック粉末同士の焼結が進みやすく、焼成後の結晶粒子が大きく、焼結性が相対的に高くなる。
【0065】
その後、図6(d)に示すように、多数個取り配線基板9(母基板1)を、分割溝4を形成した部分において厚み方向に破断させて、個片の配線基板10に分割する(第4工程)。分割溝4を形成した部分における破断は、分割溝4を挟んで母基板1に曲げ応力を加えることによって行なうことができる。この場合、母基板1の分割溝4の底部から母基板1の反対側の主面、またはこの反対側の主面に形成した他の分割溝4の底部にかけて亀裂が生じる。
【0066】
この分割時の破断の起点は、分割溝4の底部であり、この部分において破断に伴う衝撃が大きく作用する。これに対して、上記製造方法によれば、セラミックグリーンシート21高充填層21b内に分割溝4の底部を位置させたことから、大粒子層1b内に分割溝4の底部を位置させて分割することができ、母基板1の破断時における結晶粒子の脱落を効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、上記製造方法において、母基板1を分割溝4において破断させる際に、不要なダミー領域5を除去している。ダミー領域5は、多数個取り配線基板9においては、この多数個取り配線基板9の取り扱いを容易とすることや、めっき用の引き出し線(図示せず)等を配置するためのスペースを確保すること等に役立つが、個片の配線基板10においては不要である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・母基板
1a・・絶縁層
1b・・大粒子層
2・・・配線基板領域
3・・・配線導体
4・・・分割溝
5・・・ダミー領域
9・・・多数個取り配線基板
10・・・配線基板
11・・・絶縁基板
21・・・セラミックグリーンシート
21b・・高充填層
23・・・金属ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体からなり、複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された母基板と、該母基板の主面に前記配線基板領域の境界に沿って形成された分割溝とを備える多数個取り配線基板であって、
前記母基板の厚み方向の一部が、前記セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層であり、前記分割溝の底部が前記大粒子層内に位置していることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
セラミック焼結体からなる絶縁基板に配線導体が形成されてなる配線基板であって、
前記絶縁基板の側面の上端部および下端部の少なくとも一方が剪断面であるとともに、前記側面の他の部分が破断面であり、
前記絶縁基板の厚み方向の一部が、前記セラミック焼結体を形成するセラミックの結晶粒子が他の部分よりも大きい大粒子層であり、
前記側面の前記剪断面と前記破断面との境界が前記大粒子層内に位置していることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
セラミック粉末をシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製する第1工程と、前記セラミックグリーンシートの主面に分割溝を形成する第2工程と、
前記セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック焼結体からなり、複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された母基板と、該母基板の主面に前記配線基板領域の境界に沿って形成された分割溝とを備える多数個取り配線基板を作製する第3工程と、
該多数個取り配線基板を、前記分割溝を形成した部分において厚み方向に破断させて、個片の配線基板に分割する第4工程とを備え、
前記第1工程において、前記セラミックグリーンシートの厚み方向の一部に前記セラミック粉末の充填密度が他の部分よりも大きい高充填層を形成し、
前記第2工程において、前記分割溝を、該分割溝の底部が前記高充填層内に位置するようにして形成することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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