説明

多方向スイッチ装置

【課題】2つのゴム接点を共に接点オン状態となす押下操作が確実に行えて操作性および操作感触が良好な多方向スイッチ装置を提供すること。
【解決手段】操作方向に応じて対をなす2つのゴム接点の組み合わせが選択され、これら両ゴム接点を共に押下操作してそれぞれを対応する固定接点9に当接(接点オン)させることによりスイッチングが行われる多方向スイッチ装置において、対をなす2つのゴム接点のうちの一方はクリック生成型ゴム接点6であるが、他方はクリック感が非常に弱いかクリック感を生起しない無クリック型ゴム接点7であり、押下操作時に無クリック型ゴム接点7はクリック生成型ゴム接点6に先行して接点オンする。また、無クリック型ゴム接点7の頂部7bは、押下操作時のオーバーストロークによって弾性変形する二次変形部となっており、この頂部7bを弾性変形させながら押下操作することによってクリック生成型ゴム接点6を接点オンさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのゴム接点を共に接点オン状態となす押下操作によってスイッチングが行われ、例えば自動車のミラー角度調整スイッチなどとして好適な多方向スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多方向スイッチ装置としては、従来より、図5に示すような接点構造の4方向スイッチ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同図において、回路基板20上には接点シート部材21が載置されている。この接点シート部材21は、シリコンゴム等からなる絶縁性弾性シートの複数箇所に膨出形状のゴム接点22を突設したものであり、各ゴム接点22には可動接点22aが内設されている。図5では隣接する2つのゴム接点22を図示しているが、接点シート部材21には8つのゴム接点22が略同一円周上に分散して突設されており、各ゴム接点22の可動接点22aがそれぞれ回路基板20上に設けられた固定接点23と接離可能に対向している。これらゴム接点22は、その頂部22bが所定ストローク押下操作されると、スカート部22cが座屈変形(反転)してクリック感を生起すると共に、可動接点22aが固定接点23に当接して接点オンするという公知のものである。
【0003】
また、図5において、ゴム接点22を押圧駆動するアクチュエータとして駆動体24や加圧体25が配設されている。駆動体24は、図示せぬハウジングと一体のガイド壁26によって位置規制される。加圧体25はゴム接点22の頂部22b上に搭載されており、この加圧体25が駆動体24によって押下される。すなわち、ユーザが図示せぬ操作部材を所望方向へ押し込むと、その方向に位置する駆動体24が押下されるため、操作方向に応じて選択された一対のゴム接点22が加圧体25に押下操作されるようになっている。各ゴム接点22は全て同一形状に形成されているため、押下操作された一対のゴム接点22はほぼ同時にクリック感を生起して接点オン状態に切り替えられる。こうして対をなす2つのゴム接点22をそれぞれ対応する固定接点23に導通させると、所定のスイッチングが実行される。
【0004】
したがって、ユーザが操作部材をどの方向へ押し込むかに応じて相異なる4種類のスイッチングが選択的に実行できることになり、例えば自動車のミラー角度調整スイッチの場合、ユーザは操作部材を所望方向へ押し込むことによってミラーの向きをその方向(上下左右のいずれか一方向)へ変更することができる。なお、操作力が取り除かれると座屈変形していたスカート部22cが自身の弾性で元の形状に戻るため、可動接点22aが固定接点23から離隔してゴム接点22は接点オフ状態に自動復帰し、それに伴って駆動体24や加圧体25も元の高さ位置まで押し上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−287787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図5に示すような接点構造を採用している従来の多方向スイッチ装置において、製造上のばらつきなどによって対をなす2つのゴム接点22の非操作時の高さ位置が揃っていないと、操作時にいずれか一方のゴム接点が他方のゴム接点よりも先に座屈変形(反転)してしまうことがある。また、これら2つのゴム接点22の非操作時の高さ位置が揃っていても、ユーザが操作部材を端押しして、いずれか一方のゴム接点側へ偏った位置に操作力が加えられると、やはり一方のゴム接点が他方のゴム接点よりも先に座屈変形してしまうことがある。このように対をなす2つのゴム接点22の反転タイミングに時間差が生じたとしても、操作力が強ければ時間差は僅かなのでさほど問題は起こらない。しかしながら操作力が弱いと、先に座屈変形した一方のゴム接点の生じるクリック感をユーザが感得した時点で、操作部材に対する操作力が取り除かれてしまう可能性があり、その場合、他方のゴム接点は接点オン状態に切り替わっていないのでスイッチングは実行されない。
【0007】
それゆえ、図5に示すような接点構造において対をなす2つのゴム接点22の反転タイミングがずれてしまうと、誤操作を誘発しやすくなって操作性が悪化するのみならず、ユーザに動作不良と誤認されやすくなる。また、操作力を強くすれば正常に動作することが認識されたとしても、クリック感が断続的に生じてしまうため操作感触が悪くなる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、2つのゴム接点を共に接点オン状態となす押下操作が確実に行えて操作性および操作感触が良好な多方向スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、操作部材と、この操作部材から操作力が加えられるアクチュエータと、このアクチュエータによって押下操作される複数のゴム接点と、これらゴム接点と個別に接離可能な複数の固定接点とを備え、前記複数のゴム接点のうち対をなす2つのゴム接点の組み合わせが操作方向に応じて選択され、これら2つのゴム接点を共に押下操作してそれぞれを対応する前記固定接点に当接させることによりスイッチングが行われる多方向スイッチ装置において、対をなす前記2つのゴム接点のうちの一方が押下操作時に座屈変形してクリック感を生起する形状に形成されていると共に、他方のゴム接点が、押下操作時に前記一方のゴム接点に比して十分に弱いクリック感を生起するか、もしくはクリック感を生起しない形状に形成されており、これら2つのゴム接点が共に押下操作されるときに、前記他方のゴム接点が前記一方のゴム接点に先行して対応する前記固定接点に当接するように構成した。
【0010】
このように構成された多方向スイッチ装置では、ユーザが操作部材を所望方向へ押し込むと、操作方向に応じて選択された2つのゴム接点がアクチュエータによって押下操作されるが、その際、明瞭なクリック感を生起して接点オン状態に切り替わる一方のゴム接点よりも先に、他方のゴム接点がクリック感をほとんどもしくは全く生起しないで接点オン状態に切り替わるため、ユーザに明瞭なクリック感が感得されたときには、これら2つのゴム接点は共に接点オン状態となっている。つまり、この多方向スイッチ装置は、押下操作時に明瞭なクリック感が生起されるまではスイッチングが実行されず、明瞭なクリック感が生起された時点でスイッチングが実行されるようにしてあるため、誤操作を誘発しにくくて操作性が良好である。また、押下操作時に明瞭なクリック感が断続的に生じる虞がないので、操作感触も良好となる。なお、一方のゴム接点をクリック生成型ゴム接点、他方のゴム接点を無クリック型ゴム接点と称すると、例えば、クリック生成型ゴム接点は頂部の周囲のスカート部が断面逆V字形の円錐面に沿って形成されており、無クリック型ゴム接点のスカート部は断面逆U字形の略円筒面に沿って形成されている。
【0011】
上記の構成において、無クリック型ゴム接点には押下操作時のオーバーストロークによって弾性変形する二次変形部が設けられており、この二次変形部を弾性変形させながら押下操作することによってクリック生成型ゴム接点を対応する固定接点に当接させるようにしてあると、無クリック型ゴム接点を接点オン状態に切り替えた後も違和感なく押下操作が続行されやすくなるため、一対のゴム接点を連続的に接点オンさせる押下操作を円滑に行うことができて好ましい。しかも、クリック生成型ゴム接点の生起するクリック感の明瞭さが、接点オン状態の無クリック型ゴム接点によって損なわれにくくなるため、この点でも良好な操作感触が期待できる。
【0012】
また、上記の構成において、無クリック型ゴム接点を接点オンさせるために必要な作動力を、クリック生成型ゴム接点を接点オンさせるために必要な作動力よりも弱く設定しておくと共に、これら2つのゴム接点に対して押下操作力が略同等の大きさで付与されるようにしておけば、押下操作時に無クリック型ゴム接点、クリック生成型ゴム接点の順序で確実に両ゴム接点を接点オン状態に切り替えることができるため好ましい。ただし、これら2つのゴム接点の作動力が同等であったとしても、無クリック型ゴム接点側へ偏った位置に押下操作力が付与されるようにしておけば、押下操作時に無クリック型ゴム接点とクリック生成型ゴム接点を順次かつ確実に接点オンさせることはできる。
【0013】
また、上記の構成において、アクチュエータが、対をなす2つのゴム接点(無クリック型ゴム接点とクリック生成型ゴム接点)の頂部どうしを橋絡するように両ゴム接点上に搭載された加圧体と、この加圧体の所定位置に搭載されて操作部材に押下される駆動体とを備え、加圧体が駆動体に傾動可能に支持されていると、無クリック型ゴム接点とクリック生成型ゴム接点の各頂部の上下動に加圧体の傾動を円滑に追随させることができると共に、押下操作力を常に加圧体の所定位置に付与することができるため、信頼性が高めやすくなる。
【0014】
また、上記の構成において、略同一円周上に対をなす2つのゴム接点(無クリック型ゴム接点とクリック生成型ゴム接点)を複数組分散して配設した接点シート部材と、これらゴム接点が個別に接離可能な複数の固定接点を配設した回路基板とを備え、ミラー角度を相異なる4方向へ調整するための4種類のスイッチングが操作方向に応じて選択的に行えるようにしてあると、自動車のミラー角度調整スイッチとして好適な多方向スイッチ装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多方向スイッチ装置は、対をなす2つのゴム接点のうちの一方がクリック生成型ゴム接点で、他方はクリック感が非常に弱いかクリック感を生起しない無クリック型ゴム接点であり、これら2つのゴム接点が共に押下操作されるときに、無クリック型ゴム接点がクリック生成型ゴム接点に先行して接点オンするように構成されているため、ユーザに明瞭なクリック感が感得されたときにはこれら2つのゴム接点は共に接点オン状態となっている。つまり、この多方向スイッチ装置は、押下操作時に明瞭なクリック感が生起されるまではスイッチングが実行されず、明瞭なクリック感が生起された時点でスイッチングが実行されるようにしてあるため、誤操作を誘発しにくくて操作性が良好である。また、押下操作時に明瞭なクリック感が断続的に生じる虞がないので操作感触が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態例に係る多方向スイッチ装置の平面構造を示す説明図である。
【図2】該多方向スイッチ装置に配設された対をなす2つのゴム接点の非操作時の状態を示す要部説明図である。
【図3】図2の2つのゴム接点が押下操作されて一方が接点オン状態に切り替わった状態を示す要部説明図である。
【図4】図2の2つのゴム接点が押下操作されて共に接点オン状態に切り替わった状態を示す要部説明図である。
【図5】従来例に係る多方向スイッチ装置に配設された対をなす2つのゴム接点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態について図1〜図4を参照しつつ説明する。これらの図に示す多方向スイッチ装置1は自動車のミラー角度調整スイッチとして使用されるものであり、ミラー角度を相異なる4方向へ調整するための4種類のスイッチングが操作方向に応じて選択的に行えるようになっている。
【0018】
この多方向スイッチ装置1は、操作部材2と、操作部材2から操作力が加えられる駆動体3および加圧体4と、接点シート部材5に4つずつ分散して突設された2種類のゴム接点6,7と、回路基板8上で各ゴム接点6,7と対向する位置にそれぞれ設けられた固定接点9とによって主に構成されている。操作部材2は外周部の等間隔な4箇所を選択的に押し込んで傾倒させることができる。駆動体3と加圧体4は各ゴム接点6,7を押圧駆動するためのアクチュエータである。接点シート部材5はシリコンゴム等からなる絶縁性弾性シートに膨出形状のゴム接点6,7を分散して突設したものであり、この接点シート部材5は回路基板8上に載置されている。そして、操作時に操作部材2が駆動体3を介して加圧体4を押下し、この加圧体4が、操作方向に応じて選択された2つのゴム接点6,7を共に押下して対応する固定接点9に当接させることにより、所定のスイッチングが行われるようになっている。
【0019】
図1に示すように、接点シート部材5には、略同一円周上に2種類のゴム接点6,7が交互に計8つ突設されており、このうち隣接する2つのゴム接点6,7どうしは対をなしている。すなわち、接点シート部材5には等間隔な4箇所にそれぞれ、2種類のゴム接点6,7が対をなして配設されている。そして、図2に示すように、各ゴム接点6,7に内設されている可動接点6a,7aがそれぞれ対応する固定接点9と接離可能に対向している。
【0020】
2種類のゴム接点6,7について説明すると、一方のゴム接点6はクリック生成型であり、他方のゴム接点7は無クリック型である。クリック生成型のゴム接点6は、頂部6bの周囲のスカート部6cが断面逆V字形の円錐面に沿って形成されており、頂部6bが所定ストローク押下操作されると、スカート部6cが座屈変形(反転)してクリック感を生起すると共に、可動接点6aが対応する固定接点9に当接して接点オン状態に切り替えられる。また、無クリック型のゴム接点7は、頂部7bの周囲のスカート部7cが断面逆U字形の略円筒面に沿って形成されており、頂部7bが押下操作されるのに伴い該頂部7bの周囲でスカート部7cが内方へ陥没するように徐々に撓んでいくため、頂部7bが所定ストローク押下操作されると、クリック感をほとんど(あるいは全く)生起せずに可動接点7aが対応する固定接点9に当接して接点オン状態に切り替えられる。なお、無クリック型のゴム接点7の頂部7bは、オーバーストロークを阻害しないように弾性変形しやすい中空状の二次変形部として形成されている。
【0021】
図2に示すように、対をなす2種類のゴム接点6,7は非操作時の高さ位置が揃うように形成されているが、無クリック型のゴム接点7を接点オンさせるために必要な作動力は、クリック生成型のゴム接点6を接点オンさせるために必要な作動力よりも弱く設定されている。また、対をなす両ゴム接点6,7に対して押下操作力が略同等の大きさで付与されるように配慮して、駆動体3および加圧体4が操作部材2と接点シート部材5との間に介設されている。そのため、対をなすゴム接点6,7が加圧体4に押下操作されると、無クリック型のゴム接点7がクリック生成型のゴム接点6に先行して接点オンするようになっている。
【0022】
すなわち、加圧体4は、対をなすゴム接点6,7の頂部6b,7bどうしを橋絡するように両ゴム接点6,7上に搭載されており、この加圧体4には両ゴム接点6,7から等距離の位置に球面状の受け面を有する受け部4aが設けられている。そして、この受け部4aに駆動体3の球状端部3aが摺動可能に圧接しているため、加圧体4は駆動体3に傾動可能に支持されている。それゆえ、ユーザが操作部材2を押し込んで駆動体3の球状端部3aが加圧体4を押下するときには、対をなす2つのゴム接点6,7に対して略同等の大きさの押下操作力が付与されることになる。また、かかる押下操作の過程でゴム接点7がゴム接点6よりも先に接点オンするため、頂部7b,6bの押下量が図3に示すように相違することになるが、加圧体4は駆動体3に対して傾動できるので、頂部7b,6bどうしの高さ位置がばらついても加圧体4を円滑に追随させることができる。なお、駆動体3を位置規制するために設けられているガイド壁10は図示せぬハウジングと一体である。
【0023】
次に、このように構成された多方向スイッチ装置1の動作について説明する。図2に示すように、非操作時には対をなす2種類のゴム接点6,7の高さ位置が同等なため、加圧体4は回路基板8に対して略平行に延在している。このとき、各ゴム接点6,7は、可動接点6a,7aが対応する固定接点9から離隔しているため、いずれも接点オフ状態となっている。
【0024】
この状態でユーザが操作部材2を所望方向へ押し込むと、その方向に位置する駆動体3が押下されるため、操作方向に応じて選択された一対のゴム接点6,7が加圧体4に押下されるようになる。その際、2つのゴム接点6,7に付与される押下操作力は略同等であるが、無クリック型のゴム接点7のほうがクリック生成型のゴム接点6よりも作動力が弱いため、図3に示すように、まず先にゴム接点7のスカート部7cが大きく撓んで可動接点7aが対応する固定接点9に当接する。つまり、ゴム接点7がゴム接点6に先行して接点オン状態に切り替わる。この段階ではまだゴム接点6が接点オフ状態のままなのでスイッチングは実行されないが、ゴム接点7はクリック感をほとんど(あるいは全く)生起せずに接点オン状態に切り替わり、かつゴム接点7のオーバーストローク時に中空状の頂部(二次変形部)7bが容易に弾性変形するため、ユーザは違和感なく押下操作を続行して駆動体3および加圧体4はさらに押し込まれていく。
【0025】
そして、接点オフ状態のゴム接点6の頂部6bが加圧体4によって所定ストローク押下操作された時点で、スカート部6cが座屈変形してクリック感を生起すると共に、可動接点6aが対応する固定接点9に当接して接点オン状態に切り替わる(図4参照)。その結果、対をなす2つのゴム接点6,7がそれぞれ対応する固定接点9に導通されたことにより所定のスイッチングが実行される。すなわち、ユーザは操作部材2をどの方向へ押し込むかに応じて相異なる4種類のスイッチングを選択的に行わせることができる。具体的には、ユーザは操作部材2を所望方向へ押し込むことによってミラーの向きをその方向(上下左右のいずれか一方向)へ変更することができる。
【0026】
なお、操作部材2に対する操作力が取り除かれると、スカート部6c,7cや頂部7bが自身の弾性で元の形状に戻るため、可動接点6a,7aは固定接点9から離隔して、ゴム接点6,7はそれぞれ図2に示す接点オフ状態に自動復帰する。また、ゴム接点6,7が元の形状に戻るのに伴い、駆動体3や加圧体4も元の高さ位置まで押し上げられる。
【0027】
以上説明したように本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は、対をなす2つのゴム接点6,7のうちの一方がクリック生成型で他方が無クリック型であり、これら一対のゴム接点6,7が共に押下操作されるときに、無クリック型のゴム接点7がクリック生成型のゴム接点6に先行して接点オンするように構成してあるため、ユーザに明瞭なクリック感が感得されたときには両ゴム接点6,7が共に接点オン状態となっている。つまり、この多方向スイッチ装置1は、押下操作時に明瞭なクリック感が生起されるまではスイッチングが実行されず、明瞭なクリック感が生起された時点でスイッチングが実行されるようにしてあるため、誤操作を誘発しにくくて操作性が良好である。また、押下操作時に明瞭なクリック感が断続的に生じる虞がないので、操作感触も良好となる。
【0028】
特に、本実施形態例においては、無クリック型のゴム接点7を接点オンさせるために必要な作動力を、クリック生成型のゴム接点6を接点オンさせるために必要な作動力よりも弱く設定し、かつ両ゴム接点7,6に押下操作力が略同等の大きさで付与されるように設定してあるため、押下操作時に無クリック型のゴム接点7、クリック生成型のゴム接点6の順序で確実に両ゴム接点7,6を接点オン状態に切り替えることができる。ただし、これら2つのゴム接点7,6の作動力が同等であったとしても、無クリック型のゴム接点7側へ偏った位置に押下操作力が付与されるようにしておけば、押下操作時に無クリック型のゴム接点7とクリック生成型のゴム接点6を順次かつ確実に接点オンさせることは可能である。
【0029】
また、本実施形態例に係る多方向スイッチ装置1は、無クリック型のゴム接点7に、押下操作時のオーバーストロークによって弾性変形する二次変形部として中空状の頂部7bが設けられており、この頂部7b(二次変形部)を弾性変形させながら押下操作することによってクリック生成型のゴム接点6が接点オン状態に切り替わるようにしてある。そのため、無クリック型のゴム接点7を接点オン状態に切り替えた後も違和感なく押下操作が続行されやすくなり、一対のゴム接点7,6を連続的に接点オンさせる押下操作を円滑に行うことができる。しかも、クリック生成型のゴム接点6の生起するクリック感の明瞭さが、接点オン状態の無クリック型のゴム接点7によって損なわれにくくなるため、この点でも良好な操作感触が期待できる。
【0030】
なお、上記の実施形態例においては、対をなす2つのゴム接点6,7上に搭載された加圧体4の受け部4aに駆動体3の球状端部3aが摺動可能に圧接しており、加圧体4が駆動体3に傾動可能に支持されている。そのため、ゴム接点6,7の各頂部6b,7bの上下動に加圧体4の傾動を円滑に追随させることができると共に、押下操作力を常に加圧体4の所定位置(受け部4a)に付与することができて、信頼性が高めやすくなっている。ただし、ゴム接点6,7を押圧駆動するためのアクチュエータの構造は上記の実施形態例に限定されるものではなく、例えば、操作部材に突設した駆動体を加圧体と組み合わせたものや、加圧体と一体的に傾動する駆動体を用いたものなどであってもよい。
【0031】
また、上記の実施形態例では、自動車のミラー角度調整スイッチとして使用される多方向スイッチ装置(4方向スイッチ装置)について説明したが、対をなす2つのゴム接点を共に接点オン状態となす押下操作によってスイッチングが行われる多方向スイッチ装置であれば、本発明を適用することによって上記の実施形態例と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
1 多方向スイッチ装置
2 操作部材
3 駆動体(アクチュエータ)
4 加圧体(アクチュエータ)
5 接点シート部材
6 (クリック生成型)ゴム接点
6a 可動接点
6b 頂部
6c スカート部
7 (無クリック型)ゴム接点
7a 可動接点
7b 頂部(二次変形部)
7c スカート部
8 回路基板
9 固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、この操作部材から操作力が加えられるアクチュエータと、このアクチュエータによって押下操作される複数のゴム接点と、これらゴム接点と個別に接離可能な複数の固定接点とを備え、前記複数のゴム接点のうち対をなす2つのゴム接点の組み合わせが操作方向に応じて選択され、これら2つのゴム接点を共に押下操作してそれぞれを対応する前記固定接点に当接させることによりスイッチングが行われる多方向スイッチ装置であって、
対をなす前記2つのゴム接点のうちの一方が押下操作時に座屈変形してクリック感を生起する形状に形成されていると共に、他方のゴム接点が、押下操作時に前記一方のゴム接点に比して十分に弱いクリック感を生起するか、もしくはクリック感を生起しない形状に形成されており、これら2つのゴム接点が共に押下操作されるときに、前記他方のゴム接点が前記一方のゴム接点に先行して対応する前記固定接点に当接するように構成したことを特徴とする多方向スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記他方のゴム接点には押下操作時のオーバーストロークによって弾性変形する二次変形部が設けられており、この二次変形部を弾性変形させながら押下操作することによって前記一方のゴム接点を対応する前記固定接点に当接させるようにしたことを特徴とする多方向スイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記他方のゴム接点を接点オンさせるために必要な作動力を、前記一方のゴム接点を接点オンさせるために必要な作動力よりも弱く設定しておくと共に、これら2つのゴム接点に対して押下操作力が略同等の大きさで付与されるようにしてあることを特徴とする多方向スイッチ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記アクチュエータが、対をなす前記2つのゴム接点の頂部どうしを橋絡するように両ゴム接点上に搭載された加圧体と、この加圧体の所定位置に搭載されて前記操作部材に押下される駆動体とを備え、前記加圧体が前記駆動体に傾動可能に支持されていることを特徴とする多方向スイッチ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、略同一円周上に対をなす前記2つのゴム接点を複数組分散して配設した接点シート部材と、これらゴム接点が個別に接離可能な複数の固定接点を配設した回路基板とを備え、ミラー角度を相異なる4方向へ調整するための4種類のスイッチングが操作方向に応じて選択的に行えるようにしてあることを特徴とする多方向スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−44304(P2011−44304A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191051(P2009−191051)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】