説明

多方活栓および薬液投与具

【課題】操作性に優れた多方活栓および薬液投与具を提供すること。
【解決手段】三方活栓3は、シリンジ6が接続される第1のポート331と、バイアル7が接続されるアダプタ9が接続される第2のポート332と、円筒状をなし、その外周部に第1のポート331および第2のポート332がそれぞれ配置された筒状部32と、筒状部32内に回動自在に挿入され、流路371〜373が形成された円柱状の胴部36を有するコック35とを備え、コック35を回動操作することにより、第1のポート331と第2のポート332とが連通した第1の状態と、第2のポート332を閉鎖して、第1のポート331と第2のポート332との連通を遮断した第2の状態とを取り得る。この三方活栓3は、第1の状態でアダプタ9の第2のポート332からの離脱を防止し、第2の状態でアダプタ9を第2のポート332から離脱させ得る離脱機構30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方活栓および薬液投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者が血液製剤等の薬液を自己注射する場合、薬剤を液体で溶解または希釈し、その薬液をシリンジで吸引して用いる場合がある。これらの操作は、下記のようにして行われる。
【0003】
まず、両頭針または中空針を備えたアダプタを用い、その両頭針または中空針の一端側に、薬剤が収納された薬剤容器を接続し、他端側に、液体が収納された液体容器を接続し、液体容器内の液体を薬剤容器内に移送する。これにより、薬剤容器内の薬剤が液体で溶解または希釈され、薬液が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
次に、薬剤容器からアダプタを抜去し、先端に鋭利な針先を有する穿刺針が接続されたシリンジを用い、その穿刺針を薬剤容器の栓体に刺通し、薬剤容器内の薬液をシリンジの外筒内に吸引、充填する。その後、このシリンジを用いて薬液を投与することができる。
【0005】
ところで、このような従来のアダプタに代えて、3つのポートを有する三方活栓を用いることが考えられる。この場合、3つのポートのうちの1つ目のポートにアダプタを介して薬剤容器を接続し、2つ目のポートに液体容器となるシリンジを接続し、3つ目のポートに翼付き針をチューブを介して接続し、この状態でコックを操作して、ポート同士の連通状態と遮断状態とを切り換えることができる。これにより、シリンジから薬液を翼付き針から投与することができる。
【0006】
しかしながら、このような三方活栓を用いた場合、薬液を投与する際に、空の薬剤容器がそのまま三方活栓に接続された状態となっているため、当該薬剤容器が薬液投与操作の邪魔になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−516696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、操作性に優れた多方活栓および薬液投与具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) 第1の医療器具が接続される第1のポートと、
第2の医療器具を接続するためのアダプタが接続される第2のポートと、
円筒状をなし、その外周部に前記第1のポートおよび前記第2のポートがそれぞれ配置された筒状部と、
前記筒状部内に回動自在に挿入され、前記第1のポートおよび前記第2のポートにそれぞれ対応する流路が形成された円柱状の胴部を有するコックとを備え、
前記コックを回動操作することにより、前記第1のポートと前記第2のポートとが連通した第1の状態と、前記第2のポートを閉鎖して、前記第1のポートと前記第2のポートとの連通を遮断した第2の状態とを取り得る多方活栓であって、
前記第1の状態で前記アダプタの前記第2のポートからの離脱を防止し、前記第2の状態で前記アダプタを前記第2のポートから離脱可能となる離脱機構を備えることを特徴とする多方活栓。
【0010】
(2) 前記アダプタは、前記第2のポートに接続するための管状部を有し、
前記離脱機構は、前記管状部の外周部に突出形成された突片と、
前記コックに設けられ、該コックの回動操作に連動して前記胴部の中心軸を中心とする円周上を移動する係合片とを有し、
前記第1の状態では、前記係合片が前記突片と係合して、前記アダプタの前記第2のポートからの離脱を防止し、前記第2の状態では、前記係合が解除され、前記アダプタの前記第2のポートからの離脱が可能となる上記(1)に記載の多方活栓。
【0011】
(3) 前記突片は、前記第2のポートの中心軸を介して互いに反対側に一対設けられ、
前記係合片は、前記一対の突片に対応して一対設けられている上記(2)に記載の多方活栓。
【0012】
(4) 第3の医療器具が接続される第3のポートをさらに備え、
前記第2の状態では、前記第1のポートと第3のポートとが連通する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の多方活栓。
【0013】
(5) 前記第1のポート、前記第2のポート、前記第3のポートは、それぞれ、筒状に突出形成されており、
前記第2のポートは、前記第1のポートおよび前記第3のポートの側方に向かって突出しており、前記第1のポートと前記第3のポートとは、一直線上に配置されている上記(4)に記載の多方活栓。
【0014】
(6) 前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のうちの一方の医療器具は、薬剤が収納された薬剤容器を有するものであり、他方の医療器具は、前記薬剤を溶解または希釈する液体が封入され、液体の吸入・排出が可能なシリンジを有するものであり、前記第3の医療器具は、穿刺針を有するものである上記(4)または(5)に記載の多方活栓。
【0015】
(7) 前記第2のポートに接続された管状部と、前記第2の医療器具と接続するための中空針と、前記管状部と前記中空針とを連通するチューブとを有するアダプタを備えた上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の多方活栓。
【0016】
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の多方活栓と、
前記第1のポートに接続される第1の医療器具と、
前記アダプタに接続される第2の医療器具とを備え、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のうちの一方の医療器具は、薬剤が収納されたものであり、他方の医療器具は、前記薬剤を溶解または希釈する液体が封入され、液体の吸入・排出が可能なものであることを特徴とする薬液投与具。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薬液投与操作を行う場合、その操作途中で不用となった、第2のポートにアダプタを介して接続されている医療器具を、アダプタごと取り外すことができる。これにより、前記不用となった医療器具が、以降の操作の邪魔にならず、その操作を容易に行なうことができ、よって、操作性に優れる。
【0018】
また、多方活栓が第1の状態と第2の状態とを切り換えるコックを備え、離脱機構が前記アダプタに突出形成された突片と、コックに設けられ、当該コックの回動操作に連動して突片に対し係合・非係合状態とすることができる係合片とを有する場合には、アダプタの離脱操作を迅速に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の薬液投与具の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す薬液投与具が備える三方活栓の操作(第1の状態から第2の状態)を順に示す斜視図である。
【図3】図1に示す薬液投与具が備える三方活栓の操作(第1の状態から第2の状態)を順に示す斜視図である。
【図4】図2中のA−A線断面図である。
【図5】図3中のB−B線断面図である。
【図6】図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。
【図7】図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。
【図8】図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。
【図9】図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。
【図10】図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。
【図11】本発明の薬液投与具の第2実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の多方活栓および薬液投与具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の薬液投与具の第1実施形態を示す側面図、図2および図3は、それぞれ、図1に示す薬液投与具が備える三方活栓の操作(第1の状態から第2の状態)を順に示す斜視図、図4は、図2中のA−A線断面図、図5は、図3中のB−B線断面図、図6〜図10は、それぞれ、図1に示す薬液投与具の使用手順を説明するための縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図6〜図10中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。また、図4〜図10中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0022】
図1に示す薬液投与具1は、薬液の自己注射を行う場合に用いられる器具である。この薬液投与具1は、三方活栓(多方活栓)3と、液体の吸入・排出が可能な第1の医療器具(吸入・排出器具)であるシリンジ6と、薬剤が収納された第2の医療器具であるバイアル(薬剤容器)7と、薬液投与ラインを構成する第3の医療器具である穿刺針5およびチューブ4とを備えている。
【0023】
なお、第1の医療器具としては、液体の吸入・排出が可能なものであれば、シリンジに限らず、この他、例えば、輸液バッグ等の軟質容器等が挙げられる。また、第2の医療器具としては、薬剤が収納された容器であればバイアルに限らず、この他、例えば、輸液バッグ等の軟質容器等が挙げられる。また、薬液投与具1は、自己注射以外にも、例えば医師や看護師等の医療従事者が患者に対して注射を行う場合にも使用することができる。以下、各部の構成について説明する。
【0024】
シリンジ6は、外筒61と、外筒61内で摺動し得るガスケット66と、ガスケット66を外筒61の軸方向(長手方向)に沿って移動操作する押し子65とを備えている。ガスケット66は、押し子65の先端に連結されている。
【0025】
外筒61は、有底筒状の部材で構成され、その先端部、すなわち、先端側底部の中央部には、外筒61の胴部に対し縮径した口部62が一体的に突出形成されている。この口部62からは、薬液等の液体が吸入または排出される。また、口部62には、三方活栓3の第1のポート331が着脱自在に接続されるようになっている。
【0026】
また、シリンジ6の外筒61とガスケット66とで囲まれた空間(貯液空間)には、バイアル7に収納された薬剤を溶解または希釈する液体が封入されている。この液体としては、特に限定されず、前記薬剤に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、注射用水、生理食塩水、ブドウ糖溶液等が挙げられる。
【0027】
なお、シリンジ6への前記液体の封入は、予め行われていてもよく、また、使用する際に、前記液体をシリンジ6内に吸引するようにしてもよい。
【0028】
前述したように、シリンジ6は、三方活栓3の第1のポート331に接続されるものであるが、シリンジ6が接続される前の第1のポート331には、フィルタ8が着脱自在に装着される(図1、図6、図7参照)。
【0029】
フィルタ8は、ハウジング81と、ハウジング81内に設置され、気体は通過するが細菌は通過しないフィルタ部材82とを有している。
【0030】
なお、フィルタ部材82としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の不織布や紙、またはそれらに目止め加工を施したもの等が挙げられる。
【0031】
バイアル7は、薬剤が収納された有底筒状の硬質の本体71と、本体71の下側の口部に設けられ、本体71内の空間を気密的に封止する栓体72とを有している。本体71の口部と栓体72との周囲には、環状部材73が装着され、これにより、栓体72の本体71からの離脱が防止される。また、バイアル7内は、陰圧になっている。このバイアル7は、三方活栓3のアダプタ9に接続される。
【0032】
また、薬剤としては、特に限定されないが、例えば、乾燥人血液凝固第VIII因子等の血液製剤、インスリン製剤等のホルモン製剤、インターフェロン製剤等の抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0033】
また、薬剤の形態としては、特に限定されず、例えば、固体(錠剤、顆粒剤、凍結乾燥剤等)、粉体(散剤等)等の固形のものや、液体(液剤等)等が挙げられる。
【0034】
チューブ4は、その基端部が連結部11を介して三方活栓3の第3のポート333に接続され、第3のポート333の流路343に連通している。なお、チューブ4の長さは、特に限定されないが、15〜40cm程度であることが好ましく、20〜30cm程度であることがより好ましい。これにより、自己注射をより容易に行うことができる。また、連結部11は、筒状をなし、硬質樹脂材で構成された部材である。
【0035】
また、チューブ4の先端部には、鋭利な針先を有する中空の穿刺針5が接続されている。この穿刺針5は、未使用状態および使用済み状態でキャップが装着される。
【0036】
穿刺針5の基端側の側方には、1対の翼51a、51bが形成されている。すなわち、穿刺針5は、翼付き針である。翼51a、51bは、それぞれ可撓性を有し、翼51a、51bが屈曲または湾曲することにより、開閉可能に構成されている。
【0037】
穿刺針5を穿刺する際には、翼51a、51bを手指で摘んで閉じた状態とし、穿刺の操作を行うことができる。なお、翼51a、51bを摘まず、他の部位を摘んで穿刺することもできる。穿刺針5を穿刺した後は、翼51a、51bを開いた状態とし、翼51a、51bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0038】
図2〜図10に示すように、三方活栓3は、本体31と、コック35と、離脱機構30とを有している。
【0039】
本体31は、円筒状をなす筒状部32と、筒状部32の外周部に配置され、その径方向外方に向けて突出する第1のポート331、第2のポート332および第3のポート333とを有している。また、第2のポート332には、アダプタ9が着脱自在に接続される。
【0040】
第1のポート331、第2のポート332、第3のポート333は、それぞれ、管状をなし、等角度間隔、すなわち、90°の角度を隔てて配置されている。この場合、第1のポート331と第3のポート333とは、180°の角度を隔てて配置、すなわち、直線上に配置されている。また、第2のポート332は、第1のポート331および第3のポート333の側方に向って突出、すなわち、第1のポート331および第3のポート333のそれぞれに対し、90°の角度を隔てて配置されている。第1のポート331、第2のポート332、第3のポート333は、筒状部32の等しい高さ位置に配置されている。
【0041】
前述したように、第1のポート331には、シリンジ6が着脱自在に接続され、また、フィルタ8が着脱自在に装着されようになっている。すなわち、第1のポート331には、フィルタ8とシリンジ6とが選択的に取り付けられる。
【0042】
この第1のポート331は、筒状をなす。そして、第1のポート331は、筒状部32と一体的に形成されている。
【0043】
また、第1のポート331の内部に形成された流路341は、筒状部32の内腔320に連通している。
【0044】
第3のポート333は、筒状をなし、連結部11を介してチューブ4が接続されるポートである。この第3のポート333は、筒状部32と一体的に形成さている。
【0045】
また、第3のポート333の内部に形成された流路343は、筒状部32の内腔320に連通している。
【0046】
図6〜図10に示すように、流路343には、連結部11との接続を補助する管状の補助部材39aが挿入されている。補助部材39aは、融着、接着等の方法により、第3のポート333に液密に固定されており、流路343と連結部11との液密性を維持することができる。
【0047】
また、流路343には、補助部材39aの基端側に、薬液中の異物を取り除くためのろ過網が固定されたろ過部材39bが配置されている。なお、ろ過部材39bは、第3のポート333の内周面に当接するように固定されており、その固定方法としては、例えば、嵌合や融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)、接着(接着剤や溶媒による接着)等が挙げられる。また、ろ過網は、ろ過部材39bに対し、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)、接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により固定されている。
【0048】
第2のポート332は、アダプタ9が接続されるポートである。第2のポート332は、筒状部32(第1のポート331、第3のポート333)と一体的に形成された筒状をなす部材である。この第2のポート332の内部に形成された流路342は、筒状部32の内腔320に連通している。
【0049】
また、アダプタ9の内周部と第2のポート332の外周部との間には、弾性材料で構成された筒状の封止部材39cが配置されている。封止部材39cは、アダプタ9が第2のポート332に接続されているときの液密性を維持するものである。これにより、バイアル7と三方活栓3との間を液体が行き来する際に不本意に漏出するのが防止される。なお、封止部材39cは、第2のポート332に対し例えば嵌合や、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)、接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により固定されている。また、封止部材39cに外周面は、その外形が上方に向かって漸減したテーパ状をなしている。なお、封止部材39cは、アダプタ9側に固定されていてもよい。この場合、第2のポート332の外周面は、その外径が上方に向かって漸減したテーパ状をなしている。
【0050】
アダプタ9は、第2のポート332に対し着脱自在に装着されるよう構成されている。
このアダプタ9は、本体部91と、バイアル7の栓体72を刺通可能な中空針92とを有している。本体部91は、中空針92の周囲を囲う有底筒状のホルダ911と、ホルダ911の底部に、ホルダ911の軸方向に突出するように形成された管状部912とを有している。管状部912は、封止部材39cに液密に嵌合する。なお、管状部912の径は、ホルダ911の径よりも小さく設定されている。
【0051】
中空針92は、ホルダ911内に位置し、そのホルダ911の底部に、ホルダ911の軸方向(上方に向かって)に突出するように形成されている。また、中空針92は、第2のポート332の流路342に連通する。また、中空針92の長手方向の途中の側部には、当該側部を貫通する孔921が複数形成されており、各孔921を介して中空針92の内部と外部とが連通している。これにより、中空針92がバイアル7の栓体72を刺通すると、中空針92を介して、バイアル7内と第2のポート332の流路342とが連通する(図7〜図9参照)。
【0052】
図2〜図10に示すように、コック35は、円柱状の胴部36と、胴部36の一端に設けられた側板部362と、側板部362に胴部36の軸方向と直交する方向に形成されたレバー38とを有している。胴部36は、円柱形状または円筒形状(図示の構成では円柱形状)をなし、筒状部32の内腔320内に気密性または液密性をもって回動自在に挿入されている。また、レバー38を手指で把持し、コック35の回動操作を行うことができる。
【0053】
このような構成の三方活栓3は、コックを35回動操作することにより、図6〜図8に示す第1の状態と、図9および図10に示す第2の状態とを取り得る。
【0054】
レバー38を図2に示すように第1のポート331、第3のポート333の方向に位置させると第1の状態となる。この第1の状態は、第1のポート331とアダプタ9とが胴部36の流路372、373を介して連通した状態である。また、第3のポート333は、胴部36の外周面によって閉鎖されて、第1のポート331、アダプタ9から遮断されている。
【0055】
また、レバー38を図3に示すようにアダプタ9の方向に位置させると第2の状態となる。この第2の状態は、第1のポート331と第3のポート333とが胴部36の流路371、373を介して連通した状態である。また、アダプタ9は、胴部36の外周面によって閉鎖されて、第1のポート331、第3のポート333から遮断されている。
【0056】
また、図示しないが、コック35の回動操作を規制する手段として、筒状部32および側板部362には、それぞれ、突起が設けられていてもよい。これにより、第1のポート331、第2のポート332および第3のポート333の連通が前述の第1の状態および第2の状態のみに規制される。このようなコック35の回動操作規制手段を設けることで、後述するように、薬剤投与時の誤操作を防止することができる。
【0057】
さて、前述したように、アダプタ9は、第2のポート332に着脱自在に装着されている。そして、離脱機構30は、第1の状態でアダプタ9の第2のポート332(第1のポート331、第3のポート333)からの離脱を防止し(図2、図4参照)、第2の状態でアダプタ9を第2のポート332から離脱させることができる(図3、図5参照)よう構成された機構である。
【0058】
図2〜図5に示すように、離脱機構30は、アダプタ9の管状部912の外周部の下部に突出形成された一対の突片931、932と、一対の突片931、932に対応してコック35に設けられた一対の係合片351、352とで構成されている。
【0059】
突片931と突片932とは、アダプタ9の中心軸を介して互いに反対側(外側)に向かって突出している。突片931、932は、それぞれ、その上面が筒状部32の外周部と同じように円弧状に湾曲している。また、突片931、932の下面は、それぞれ、平面となっている。
【0060】
一方、係合片351は、側板部362に設けられており、係合片352は、コック35の胴部36のレバー38と反対側の端部にある板状のフランジ部361に設けられている。係合片351と係合片352とは、互いに対向して配置され、第2のポート332側(内側)に向かって突出している。また、係合片351、352は、それぞれ、突片931、932と同様に、円弧状に湾曲している。
【0061】
そして、コック35を回動操作すると、その操作に連動して、係合片351は、コックの胴部の中心軸を中心とする円周上を移動し、突片931に対し係合・非係合状態とすることができ、係合片352は、突片932に対し係合・非係合状態とすることができる。
【0062】
図2、図4に示すように、係合片351は、三方活栓3が第1の状態では、当該突片931にその上側から係合(当接)することができる。また、係合片351と同様に、係合片352も、三方活栓3が第1の状態では、当該突片932にその上側から係合することができる。このような係合により、アダプタ9の第2のポート332からの離脱(上方への移動)を確実に防止することができる。
【0063】
さらに、前記係合により、アダプタ9の管状部912の内周面の下側の部分が、封止部材39cのテーパ状をなす外周面の下側の部分に押し付けられた(密着した)状態となり、アダプタ9と封止部材39cとの液密性が保たれる。なお、前述したように封止部材39cがアダプタ9側に固定されている場合、アダプタ9の管状部912の内周面が第2のポート332の外周面と密着した状態となる。
【0064】
図3、図5に示すように、コック35のレバー38を当該レバー38に向かって時計回りに90度回転操作して、三方活栓を第2の状態とすると、係合片351は、突片931に対して非係合状態となり、係合片352も、突片932に対して非係合状態となる。このような離間により、突片931、932のそれぞれに対する係合が解除され、よって、アダプタ9を第2のポート332から確実に離脱させることができる。そして、この離脱により、後述するように、バイアル7をアダプタ9ごと三方活栓3から取り外すことができ、よって、その後の薬液投与操作を容易に行なうことができ、操作性に優れる。
【0065】
図10(図6〜図9についても同様)に示すように、三方活栓3には、アダプタ9を第2のポート332に装着する際にこれらを位置決めを行なう位置決め手段としての突起334と欠損部(切欠き部)913とが設けられている。
【0066】
突起334は、・第1のポート331の外周面上に、第2のポート332と同じ向き、すなわち、上方に向かって板状に突出している。
【0067】
欠損部913は、アダプタ9の管状部912の下部に設けられたリング状のフランジ部914の周方向の途中(係合片351と係合片352との間)に設けられている。
【0068】
そして、図6〜図9に示すように、突起334が欠損部913に係合することにより、アダプタ9と第2のポート332との位置決めがなされる。
【0069】
三方活栓3の各部の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0070】
図1、図6に示すように、三方活栓3は、シリンジ6が接続される前の状態では、箱状のケース(カバー)10に収納されている。
【0071】
ケース10は、平面視で四角形状をなす底板101と、底板101の4つの辺から立設した側板102とで構成されている。また、4枚の側板102のうちの1枚の側板102には、三方活栓3の第3のポート333が突出するスリット103が形成されている。
【0072】
このようなケース10に三方活栓3が収納されていることにより、当該三方活栓3の第2のポート332に接続されたアダプタ9にバイアル7を接続する際、三方活栓3をケース10ごと把持することができるため、その接続操作を容易に行なうことができる。
【0073】
次に、自己注射を行う際の薬液投与具1の使用手順(作用)を説明する。
まず、図1、図2に示すように、三方活栓3は、ケース10に収納されており、第3のポート333には、チューブ4を介して、穿刺針5が接続されている。この三方活栓3は、レバー38が第1のポート331、第3のポート333の位置に合わせられており、第1のポート331とアダプタ9とが連通した、図6に示す第1の状態となっている。また、第1のポート331には、フィルタ8が装着されている。
【0074】
次いで、図7に示すように、第1のポート331にフィルタ8が装着された状態で、アダプタ9にバイアル7を接続するとともに、三方活栓3をケース10から取り出す。バイアル7の接続は、当該バイアル7をその栓体72側からアダプタ9のホルダ911内に押し込むことにより行なわれる。これにより、アダプタ9の中空針92がバイアル7の栓体72を刺通し、中空針92を介してバイアル7内と第2のポート332とが連通する。バイアル7内は陰圧になっているので、外部の空気がフィルタ8を通過し、三方活栓3を経てバイアル7内に導入され、バイアル7内が大気圧となる。この際、フィルタ8により、三方活栓3内やバイアル7内等の薬液投与具1内への細菌の侵入を防止することができる。
【0075】
次いで、図8に示すように、第1のポート331からフィルタ8を取り外して、その第1のポート331にシリンジ6の口部62を接続する。そして、押し子65を先端方向に押圧して移動し、シリンジ6内に封入されている液体をそのシリンジ6からバイアル7内に導入し、バイアル7を数回振る。これにより、バイアル7内の薬剤は、流入した液体で溶解または希釈され、バイアル7内に薬液が収納された状態となる。薬剤が生成された後、押し子65を基端方向に引っ張って移動し、バイアル7内の薬液をそのバイアル7からシリンジ6内に所定量吸入する。薬液が吸引されたこのバイアル7は、薬液が残存した状態であってもよいし、空の状態であってもよいが、以降の操作では、用いられないものである。
【0076】
次いで、図3に示すように、三方活栓3のレバー38を第2のポート332の位置に合わせ、第1のポート331と第3のポート333とが連通した、図9に示す第2の状態とする。このとき、前操作で不用となったバイアル7を、前述したように離脱機構30の作動によってアダプタ9ごと第2のポート332から離脱させることができる(図5、図10参照)。これにより、バイアル7が以降の操作の邪魔にならず、その操作を容易に行なうことができる。なお、この際、前述のようなコック35の回動操作規制手段を設けることで、誤って第2のポート332と第3のポート333とが連通した状態、および、第1のポート331と第2のポート332と第3のポート333との全てが連通した状態となることがなく、薬液を投与できない、または、第2のポート332から漏れるといった誤操作を防止することができる。
【0077】
次いで、穿刺針5から前記キャップを取り外し、プライミングを行う。
次いで、穿刺針5の針先を目的部位に穿刺し、シリンジ6内の薬液を投与する。すなわち、押し子65を先端方向に押圧して移動する。これにより、シリンジ6内の薬液は、そのシリンジ6から排出され、三方活栓3およびチューブ4を介して穿刺針5から流出し、投与される。この際、ろ過部材39bのろ過網により、薬液中の溶解しきれなかった固形の薬剤等の異物が除去されてから投与される。
【0078】
ここで、シリンジ6が接続された第1のポート331と、チューブ4が連結部11を介して接続されている第3のポート333とは、直線上に配置されているので、プライミング時に空気が残留し難く、また、薬液を投与する際の抵抗も少なくなる。
【0079】
以上説明したように、この薬液投与具1(三方活栓3)によれば、薬液投与操作を行う際、その操作途中で不用となったバイアル7をアダプタ9ごと取り外すことができ、操作性に優れたものとなっている。また、薬液投与具1では、バイアル7内の薬剤を溶解または希釈して薬液を得、その薬液をシリンジ6内に吸入し、穿刺針5から流出させる操作を容易かつ迅速に行うことができる。
【0080】
<第2実施形態>
図11は、本発明の薬液投与具の第2実施形態を示す斜視図である。
【0081】
以下、この図を参照して本発明の多方活栓および薬液投与具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、アダプタの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0082】
図11に示す薬液投与具1では、三方活栓3の第2のポート332に接続されるアダプタ9Aは、管状部912とホルダ911との間に、第2のポート332と中空針92とを連通するチューブ12を有している。
【0083】
また、アダプタ9Aは、前記第1実施形態でのアダプタ9と異なり、管状部912に対し直交する方向に一体的に突出形成された管状のチューブ接続部94を有し、チューブ接続部94にチューブ12が接続されている。
【0084】
このような構成の薬液投与具1では、バイアル7内の薬剤をシリンジ6からの液体で溶解(または希釈)する際に、バイアル7のみを振盪することができるため、溶解時の操作性に優れる。また、薬液投与具1を包装する際に、アダプタ9Aを三方活栓3とは別の位置に配置することができるため、包装を小さくすることができる。これにより、輸送時や保管時に薬液投与具1がかさばるのを抑制することができる。
【0085】
以上、本発明の多方活栓および薬液投与具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、多方活栓および薬液投与具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0086】
また、本発明の多方活栓および薬液投与具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0087】
また、前記各実施形態では、それぞれ、多方活栓として、三方活栓を用いたが、本発明では、これに限らず、例えば、ポートの数が4以上のものを用いてもよい。
また、アダプタと第2の医療器具とは、一体的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 薬液投与具
3 三方活栓
30 離脱機構
31 本体
32 筒状部
320 内腔
331 第1のポート
332 第2のポート
333 第3のポート
334 突起
341、342、343 流路
35 コック
351、352 係合片
36 胴部
361 フランジ部
362 側板部
371、372、373 流路
38 レバー
39a 補助部材
39b ろ過部材
39c 封止部材
4 チューブ
5 穿刺針
51a、51b 翼
6 シリンジ
61 外筒
62 口部
65 押し子
66 ガスケット
7 バイアル(薬剤容器)
71 本体
72 栓体
73 環状部材
8 フィルタ
81 ハウジング
82 フィルタ部材
9、9A アダプタ
91 本体
911 ホルダ
912 管状部
913 欠損部(切欠き部)
914 フランジ部
92 中空針
921 孔
931、932 突片
94 チューブ接続部
10 ケース(カバー)
101 底板
102 側板
103 スリット
11 連結部
12 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の医療器具が接続される第1のポートと、
第2の医療器具を接続するためのアダプタが接続される第2のポートと、
円筒状をなし、その外周部に前記第1のポートおよび前記第2のポートがそれぞれ配置された筒状部と、
前記筒状部内に回動自在に挿入され、前記第1のポートおよび前記第2のポートにそれぞれ対応する流路が形成された円柱状の胴部を有するコックとを備え、
前記コックを回動操作することにより、前記第1のポートと前記第2のポートとが連通した第1の状態と、前記第2のポートを閉鎖して、前記第1のポートと前記第2のポートとの連通を遮断した第2の状態とを取り得る多方活栓であって、
前記第1の状態で前記アダプタの前記第2のポートからの離脱を防止し、前記第2の状態で前記アダプタを前記第2のポートから離脱可能となる離脱機構を備えることを特徴とする多方活栓。
【請求項2】
前記アダプタは、前記第2のポートに接続するための管状部を有し、
前記離脱機構は、前記管状部の外周部に突出形成された突片と、
前記コックに設けられ、該コックの回動操作に連動して前記胴部の中心軸を中心とする円周上を移動する係合片とを有し、
前記第1の状態では、前記係合片が前記突片と係合して、前記アダプタの前記第2のポートからの離脱を防止し、前記第2の状態では、前記係合が解除され、前記アダプタの前記第2のポートからの離脱が可能となる請求項1に記載の多方活栓。
【請求項3】
前記突片は、前記第2のポートの中心軸を介して互いに反対側に一対設けられ、
前記係合片は、前記一対の突片に対応して一対設けられている請求項2に記載の多方活栓。
【請求項4】
第3の医療器具が接続される第3のポートをさらに備え、
前記第2の状態では、前記第1のポートと第3のポートとが連通する請求項1ないし3のいずれかに記載の多方活栓。
【請求項5】
前記第1のポート、前記第2のポート、前記第3のポートは、それぞれ、筒状に突出形成されており、
前記第2のポートは、前記第1のポートおよび前記第3のポートの側方に向かって突出しており、前記第1のポートと前記第3のポートとは、一直線上に配置されている請求項4に記載の多方活栓。
【請求項6】
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のうちの一方の医療器具は、薬剤が収納された薬剤容器を有するものであり、他方の医療器具は、前記薬剤を溶解または希釈する液体が封入され、液体の吸入・排出が可能なシリンジを有するものであり、前記第3の医療器具は、穿刺針を有するものである請求項4または5に記載の多方活栓。
【請求項7】
前記第2のポートに接続された管状部と、前記第2の医療器具と接続するための中空針と、前記管状部と前記中空針とを連通するチューブとを有するアダプタを備えた請求項1ないし6のいずれかに記載の多方活栓。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の多方活栓と、
前記第1のポートに接続される第1の医療器具と、
前記アダプタに接続される第2の医療器具とを備え、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のうちの一方の医療器具は、薬剤が収納されたものであり、他方の医療器具は、前記薬剤を溶解または希釈する液体が封入され、液体の吸入・排出が可能なものであることを特徴とする薬液投与具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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