説明

多機能性ブロックマット

【課題】法面に敷設するブロックマットで、ブロックの形状が不規則であるため、設置面の凹凸に対して、一行若しくは一列単位でブロックの浮き上がりや陥没が起こりにくく、全体として自然な仕上がりが期待できるほか、景観を阻害しにくいブロックマットで、ブロックの厚さを不均一としたり、一ブロック内で厚さを不均一とすることにより、コンクリート表面での光の反射が散乱しやすく、近隣を走行する車への集中的な照り返しを極力回避でき、安全性に優れるブロックマットを提供する。
【解決手段】法面に敷設するブロックマットAであって、透水性を備えたシート1と、シート部材の前面に配列した複数のブロック2とからなり、各ブロック2の形状をランダムに構成してある。また、ブロックの厚さをそれぞれ不均一に形成したり、ブロックの表面に凹凸加工を施したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜面等に敷設する多機能性のブロックマットに関し、より詳しくは、法面保護、防草又は防火用のブロックマットに関する。
【背景技術】
【0002】
山間部等を切り開いて道路を作った箇所では多数の切土斜面が存在し、当該切切土斜面の浸食防止のために、何らかの処理を行う必要がある。
前記浸食防止の処理としては植生工が一般的であるが、煙草の投げ捨て等による火災発生の懸念から、斜面の下部約2m程度はコンクリートで斜面を被覆する処置がとられている。
【0003】
斜面等をコンクリートで被覆する一般的な方法としては、斜面等に型枠を設置してコンクリートを現場打ちする方法があるが、施工期間や施工コスト等の施工性の面で効率化に限界があることから、以下の特許文献のようなブロックマットを斜面に敷設する方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の処置では、以下のような問題のうち、少なくとも一つの問題がある。
(1)ブロックマットの敷設は、設置面の凹凸に応じてコンクリート面が浮き上がって見えるなど、不陸性の面で現場打ちと同等の性能が得られないため、景観性が悪い。
(2)コンクリート面は光が反射しやすく、照り返しによって近隣を走行する車の運転者の視界を遮るという安全上の問題がある。上記問題を解消すべく、コンクリート表面に模様をつける等の処置もあるが、現場での作業が増えたり、製造コストの増大を招く為、現実的な対応とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決すべくなされた本願発明は、法面に敷設するブロックマットであって、透水性を備えたシートと、前記シート部材の前面に配列した複数のブロックと、からなり、前記各ブロックの形状をランダムに構成してあることを特徴とするものである。
また、前記発明において、前記ブロックの厚さをそれぞれ不均一に形成することができる。
また、前記発明において、前記ブロックの表面に凹凸加工を施してもよい。
また、前記発明において、ブロックマットの全面に亘って前記各ブロック間の目地が一直線上に連通しないように構成することができる。
また、前記ブロックをプラスチック、コンクリート、木材、鉄、アスファルト及びレンガのうち何れか一つで形成することができる。
また、前記ブロックにテーパを有する開口部を設け、該開口部に対応する形状を備えた固定具を打ち込むことによって該固定具の打ち終わりを視認可能に構成しすることができる。
また、前記シートの周縁のうち少なくとも上縁に敷設しろを設け、該敷設しろを吊り上げ時の把持部として兼用することができる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、以下の効果のうち、少なくとも一つの効果を得ることができる。
(1)規則的に分割されたブロックマットを敷設した場合には、ブロック間の目地が一直線上に連通しており、設置面の凹凸に対して、一行若しくは一列単位でブロックの浮き上がりや陥没が起こりやすい。一方、本願発明のブロックマットは、ブロックの形状が不規則であるため、設置面の凹凸に対して、一行若しくは一列単位でブロックの浮き上がりや陥没が起こりにくく、全体として自然な仕上がりが期待できるほか、景観を阻害しにくい。
(2)ブロックの厚さを不均一としたり、一ブロック内で厚さを不均一とすることにより、コンクリート表面での光の反射が散乱しやすく、近隣を走行する車への集中的な照り返しを極力回避でき、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のブロックマットの一例を示す概略平面図。
【図2】図1におけるI−I断面図。
【図3】本発明のブロックマットの施工例を示す概略斜視図。
【図4】本発明のブロックマットのブロックの配置例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本願発明のブロックマットの実施の態様について説明する。
【実施例1】
【0010】
<1>全体構成
図1は、本発明のブロックマットの一例を示す図である。
ブロックマットAは、切土斜面などの設置面Bに敷設して法面保護等を行うための部材である。
ブロックマットAは、透水性を備えたシート1と、前記シート1の前面に配列した複数のブロック2と、からなる。
【0011】
<2>シート
シート1は、設置面の不陸に追従する可撓性と、当該シートの前面に設置するブロック2の重量による引張力に抵抗できる程度の強度を備えている織物もしくは不織物で構成した部材を用いることができる。また、場合に応じて透水性を付与して地山の湧水に対するドレーン材として機能させたり、紫外線による劣化や腐食への耐性を付与すべくコーティングを施してもよい。
【0012】
前記所望される機能を備えた素材として、盛土や堤体などの補強土構造体に用いるジオテキスタイルを採用することができる。
【0013】
[シートの外周]
シート1の外周付近は他方のブロックマットの敷設しろ11とする。この敷設しろ11を少なくとも上縁に設けておけば、該敷設しろがブロックマットの敷設時に重機でもってブロックマットを吊り上げる際の把持部分としても機能する。
なお敷設しろ11を設ける位置および長さは本実施例の構成に特に限定されるものではない。
【0014】
<2>ブロック
ブロック2は、法面などの設置面Bを覆って保護機能(防草・防火・浸食など)を発揮するための部材である。
【0015】
[ブロック単体の構造]
各ブロック2の平面形状は多角形あるいは丸形、その他あらゆる形状を採用することができる。
なお、図1に係る実施例では、ブロック2の平面形状は四角形状とし、正方形や縦横比の異なる長方形を呈している。
ブロック2の周側縁の面方向は、設置面に対して鉛直としたり、テーパを設けたりすることができる。なお、図1に係る実施例では、断面視して台形型を呈するよう、下方につれて拡張方向にテーパが設けてある。
【0016】
[壁体の構成]
複数のブロック2を前記シート上に敷き詰めるように配列して壁体3を構築する。
前記の通り、各ブロック2の形状はランダムであり、それらのブロック間に形成される目地31が極力一直線上に連通しないように配列してある構成とすることが望ましい。
【0017】
図1に係る実施例では、壁体3は、同形状の正方形を隣接配置した第1のブロック群3aと、複数のブロックの組み合わせでもって正方形状を呈する第2のブロック群3bと、前記第2のブロック群を90度回転してなる第3のブロック群3cとを上下に順番に配列して、長方形状を呈するよう構成してある。
上記壁体3の隣には、当該壁体3を180度回転して上下を入れ替えた壁体3を隣接して配置するよう構成してある。
このとき、前記第1のブロック群3aと、前記第2のブロック群3b及び第3のブロック群3cとの縦方向の長さが異なるように構成しておけば、前記壁体3の上下を入れ替えた場合であっても、少なくとも横方向に伸びる目地31が壁体を跨いで一直線上に連通することはない。
本構成によれば、設置面Bの不規則な凹凸への追従に柔軟性が生まれるため、設置後のブロック2の一部が不自然に突出したり、陥没していたりするような問題が発生しにくく、景観を阻害しにくい。
【0018】
[ブロックの表面加工]
各ブロック2の表面は、はつり加工などで、表面に凹凸を設ける加工を行ってもよい。当該表面加工でもってブロック2表面の光の反射方向を散乱させることができる。
なお、前記表面加工は、設置前でも設置後でもよいし、全てのブロック2に対して行うことを必須とするものでもない。
【0019】
[ブロック毎の厚さ設定]
図2は、図1におけるI−I断面図である。
図2に示すように、各ブロック2の厚さ(t1,t2,t3・・・)を互いに不均一(不規則)にしておいてもよい。
このようにすれば、厚さの異なるブロック2でもってブロックマット表面に自然な凹凸が生まれ、全体としてより自然な仕上がりを演出するため景観性の向上に寄与する。
また、設置面Bの凹凸が大きい現場で、シート1自体が不規則に波打つように敷設されている場合であっても、厚さの異なるブロック2でもってそれらの凹凸の吸収が期待できるため、全体としてより自然な仕上がりを演出し、景観性に違和感が生じにくい。
【0020】
[ブロック中の厚さ設定]
また、図示しないが、一つのブロック2上で、厚さを不均一(不規則)にしておいてもよい。
なお、前記したブロック2への表面加工と異なる点は、当該表面加工が微細な凹凸を形成するものであるのに対し、本構成はブロック2表面に窪みや突起を設けたり、テーパを設けるなど、前記表面加工より積極的に厚さを変更する点である。
このようにすれば、前記した自然な仕上がりをより強調することができたり、ブロック2表面の反射方向をより散乱させることができる。
【0021】
[固定用のピン孔の形成]
また、図2に示すように、各ブロック2の何れかには、適宜上下に貫通したピン孔4を設けておく。
当該ピン孔4に周知の固定ピン(図示せず)を打ち込むことで、ブロックマットAを設置面Bに固定することができる。
本実施例では、ピン4はブロック2の表面から裏側にかけて開口面積が狭くなるように構成してあり、打ち込む固定ピンも対応するテーパを設けておくことで、打ち終わりの視認性を高めて打ち込みの明確化や、密着性の向上を意図している。
【0022】
[ブロックの素材]
ブロック2の素材としては、防草機能の発揮が求められる場合には、プラスチック製、コンクリート製、木製、鉄製などであることが望ましく、特に防火機能の発揮が求められる場合には、コンクリートや鉄製であることが望ましい。
【0023】
[目地部分の処理]
なお、シート1に紫外線防止処理を施していない場合には、各ブロック2間の目地31部分には玉砂利を敷いたり、紫外線防止用のコーティング処理等を施して、シートへと日光が直射しないように構成してもよい。
【0024】
<3>敷設方法
図3を参照しながら、本発明のブロックマットの敷設方法について説明する。
図3に係る実施例では、本発明のブロックマットを左隅を基準として順に右方に隣接並びに情報へと積層配置して構成する。
【0025】
(1)位置決め用治具の設置
まず、ブロックマットAの設置位置の基準を設定すべく、左右方向に亘って長尺の鋼管4通りに合わせ設置する。鋼管4は設置面Bに固定ピンなどを用いてずれないように固定する。
【0026】
(2)不陸シートの敷設
次に、設地面Bにボトルフリース等の不陸シート5を設置する。なお、前記不陸シートの設置は、設置面の凹凸具合が小さく、前記ブロックマット単体で吸収できる程度のものであれば、適宜省略しても良い。
【0027】
(3)ブロックマットの敷設
次に、前記鋼管4に沿うようにブロックマットAを敷設する。一般的には、クレーンなどの重機で前記シート1の敷設しろ11部分を把持して現場まで運び、位置を微調整しながら徐々にブロックマットAを下降させて設地面Bに載置していく。
載置したブロックマットAはピン孔4に固定ピンを打ち込んで設置面Bに固定していく。
そして、敷設済みのブロックマットAの隣に、新たなブロックマットAを敷設していく。このとき、敷設済みのブロックマットAのシート1の敷設しろ11と新たなブロックマットAとが重なるように敷設していくことで、全体としての一体化を計っていく。
【0028】
上記作業を順番に繰り返して、防護面を構築していく。
【実施例2】
【0029】
図4は、本発明のブロックマットのブロックの配置例を示す概略平面図である。
【0030】
図4(a)は、ブロックの配列を石垣状としたものである。本実施例でも各ブロック間の目地は、一直線上に連通しないように構成されている。
【0031】
図4(b)は、正方形を異なる形状となるよう3分割したブロック群を上下に90度ずつ回転させながら積層してなる壁面を、上下方向にやや偏移させながら左右に敷設してなるものである。本実施例でも各ブロック間の目地は、左右方向に一直線上に連通しないように構成されている。
【0032】
図4(c)は、前記実施例1に示す第2のブロック群3b又は第3のブロック群3cを上下に順位積層してなる壁面を、上下方向にやや偏移させながら左右に敷設してなるものである。本実施例でも各ブロック間の目地は、左右方向に一直線上に連通しないように構成されている。
【符号の説明】
【0033】
1 シート
11 敷設しろ
2 ブロック
3 壁体
31 目地
4 ピン孔
5 不陸シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に敷設するブロックマットであって、
透水性を備えたシートと、
前記シート部材の前面に配列した複数のブロックと、からなり、
前記各ブロックの形状をランダムに構成してあることを特徴とする、ブロックマット。
【請求項2】
前記ブロックの厚さをそれぞれ不均一に形成してあることを特徴とする、請求項1にブロックマット。
【請求項3】
前記ブロックの表面に凹凸加工を施したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のブロックマット。
【請求項4】
ブロックマットの全面に亘って前記各ブロック間の目地が一直線上に連通しないように構成してあることを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のブロックマット。
【請求項5】
前記ブロックをプラスチック、コンクリート、木材、鉄、アスファルト及びレンガのうち何れか一つで形成してあることを特徴とする、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のブロックマット。
【請求項6】
前記ブロックにテーパを有する開口部を設け、該開口部に対応する形状を備えた固定具を打ち込むことによって該固定具の打ち終わりを視認可能に構成したことを特徴とする、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のブロックマット。
【請求項7】
前記シートの周縁のうち少なくとも上縁に敷設しろを設け、該敷設しろを吊り上げ時の把持部として兼用することを特徴とする、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のブロックマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180724(P2012−180724A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46062(P2011−46062)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】