説明

多段触媒系、ならびにアルカンをアルケンおよびそれらの対応する酸素化生成物へ転化させる方法

【課題】多段触媒系、ならびにアルカンのアルケンおよびそれらの対応する酸素化生成物への転化方法。
【解決手段】アルケン、不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸およびそれらのより高級の類似体を、対応するアルカンから多段触媒系および多段工程を使用して累積的に調製する。これは短接触時間リアクター条件を使用して、対応するアルケンを更に対応する酸素化生成物に接触的に転化させるための1以上の酸化触媒と組み合わせ、火炎温度および短接触時間において、対応するアルケンへのアルカンのスチームクラッキングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカン酸化/脱水素化触媒、ならびにアルカンおよび酸素を、火炎温度で、脱水素化された生成物および/または酸素化された生成物に転化させるための方法に関する。更に特に、本発明は、これに限定されないが、アルカンをスチームクラッキングによって対応するアルケンに転化させ、続いてアルケンを短接触時間リアクター条件下で対応する酸素化された生成物に転化させることを含む、多段方法に関する。更に、本発明は、特定のアルカンを、短接触時間リアクター内において火炎温度で、それらの対応するアルケン、ならびに酸素化物、たとえば不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステルおよびそれらのそれぞれのより高級の類似体(analogue)に転化させるための触媒系;この触媒系の製造方法;ならびにこの触媒系を使用するアルカンの気相接触酸化のための複合方法に関する。本発明は、また、飽和カルボン酸を、それらの対応する不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のより高級の類似体エステルに転化させるための触媒系、ならびに飽和カルボン酸の気相接触酸化のための多段製造方法に関する。本発明は、また、この触媒系を使用して、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステルおよびそれらのそれぞれのより高級の類似体を調製するための、アルケン、酸素、ホルムアルデヒドおよびアルコールを含む追加供給物の段階化を含む、アルカンの気相酸化のための多段方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケンの、不飽和カルボン酸およびそれらの対応するエステルへの選択的部分酸化は、重要な商業プロセスである。しかしながら、アルカンの、生成物、たとえばオレフィン、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のエステルへの選択的部分酸化/脱水素化は、克服するべき多数の難問を有する重要な工業的問題である。アルカンの短接触時間酸化脱水素化の一つの制限は、第一段に関係している。即ち、幾つかの競争反応、たとえばこれらに限定されないが、たとえば、CO、CO、水、アルカンフラグメント(Cn−m)およびアルケンフラグメント(C2n−m)に至る過剰酸化、に起因するアルカンをそれらの対応するアルケンに転化させる際の低収率に関係している。混合金属酸化物触媒を使用して、短接触時間リアクター条件下でアルカンをそれらの対応するアルケンに転化させる場合の比較的低い選択性は、幾つかの要因に起因し、これらに限定されないが、たとえば、下記のこと、即ち、(a)火炎温度条件を起こす触媒は、また、アルカンおよび対応するアルケンの過剰酸化反応を触媒する傾向があること、(b)火炎温度条件を維持するために必要な比較的低いアルカン/酸素比は、また、アルカンおよび対応するアルケンの過剰酸化反応を触媒する傾向があること、(c)総括反応速度論は、アルカンの、対応するアルケンを含む所望の酸化的脱水素化生成物を越えた、COおよび二酸化炭素への酸化に有利であること、が挙げられる。
【0003】
米国特許第5,705,684号には、複数段階で異なる多金属酸化物触媒を使用する、プロパンからアクロレインおよびアクリル酸を調製する方法が記載されている。第一段階において、プロパンは、Mo−Bi−Fe酸化物触媒によってプロピレンに脱水素化され、このプロピレンは、第二段階において、Mo−V酸化物触媒を含有する酸化リアクターへの供給物として使用され、酸素と接触して、アクロレインおよびアクリル酸の混合物を製造する。しかしながら、この吸熱方法は、第一段階での費用のかかる水素の除去を必要とし、これによりこのプロセスは商業的規模になり難い。更に、火炎温度において、記載されたMo−Bi−Fe酸化物触媒は熱的に不安定である。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,705,684号明細書
【特許文献2】特開平06−199731号公報
【特許文献3】米国特許第3,825,600号明細書
【特許文献4】米国特許第3,649,930号明細書
【特許文献5】米国特許第4,339,355号明細書
【特許文献6】特開平09−020700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、新規な触媒系を使用して、火炎温度で、最初の段階としての対応するアルカンのスチームクラッキングと組み合わせた短接触時間リアクター内で、特定のアルカンを、それらの対応するアルケン、ならびに酸素化生成物、たとえば不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のエステルに転化させるための、独特で効率的および商業的に実行可能な多段解決法を見出した。更に、火炎温度において短接触時間リアクター内で多段製造方法を使用して、飽和カルボン酸を、それらの対応する不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のより高級の類似体エステルに転化させるための触媒が見出された。アルカンを対応するアルケンに接触的に転化させることの総合収率および選択率を改良するために、本発明者らは、アルカンのスチームクラッキング、続いて対応して製造されたアルケンを、短接触時間リアクター条件下で更に対応する酸素化生成物に反応させることを含む、多段方法を見出した。他の多段方法において、たとえば、少量の対応するアルカンは、全酸化のために十分な化学量論的量の酸素と反応して、二酸化炭素および水になる。二酸化炭素およびスチームの熱気体流は、当該技術分野で知られている一般的なクラッキング触媒を含有するクラッキング帯域の中に向けられる。この加熱されたスチームは、クラッキング触媒床を加熱することとクラッキング工程のためのスチームを提供することとの二重の目的を有する。対応するアルカンの残りの主な量は、乱流条件下で二酸化炭素スチーム混合物と組み合わされる。次いで、この気体の混合物は、クラッキング触媒と接触して、より高い収率および選択率で対応するアルケンを提供する。次いで、転化された対応するアルケンを、短接触時間リアクター条件下で、対応する酸素化物に更に接触的に転化させる。他の多段方法において、たとえば、このような触媒を使用してアルカンの脱水素化から製造されたアルケンを、スチームクラッキングによって工程内化学中間体として意図的に製造し、酸素化生成物への選択的部分酸化の前に単離しない。
【0006】
本発明の幾つかの利点には、これらに限定されないが、たとえば、減少したリアクターサイズによる低下した資本投下、ライトオフおよび熱発生のための犠牲的アルカン燃焼に起因するエネルギーの節約が挙げられ、多段方法は第一フェーズ(クラッキング工程)でそれ自身スチームを発生するので、追加のスチーム統合工程のための必要性を除き、最小の触媒投入および保全でアルケン製造の熱力学的限界を容易に達成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、アルカンを、火炎温度および短接触時間において、それらの対応するアルケンに転化させるための少なくとも1つのクラッキング触媒、ならびに対応するアルケンを、火炎温度および短接触時間において、それらの対応する酸素化生成物、たとえばこれらに限定されないが、たとえば、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に更に転化させるための少なくとも1つの酸化触媒を含む多段触媒系であって、少なくとも1つの酸化触媒が、(a)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(b)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(c)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、触媒が金属酸化物担体上に含浸されている多段触媒系を提供する。
【0008】
別の態様に従って、この多段触媒系は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含む、短接触時間で飽和カルボン酸をそれらの対応する不飽和カルボン酸に転化させるための追加の触媒を含有する。
【0009】
本発明は、アルカンを、それらの対応するアルケン、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に累積的に転化させるための多段触媒床であって、
(a)火炎温度および短接触時間における、少なくとも1つのスチームクラッキング触媒を含有する第一触媒層、
(b)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、更に含有する第二触媒層(ここで第一層の触媒は金属酸化物担体上に含浸されている)、ならびに
(c)金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する第三触媒層(第三層の触媒は、金属酸化物担体上に含浸されており、第二触媒層から下流に配置されており、かつ、第一触媒層から更に下流に配置されており、その対応するアルカンからの不飽和カルボン酸の総合収率を増加させる)
を含む多段触媒床を提供する。
【0010】
別の態様に従って、触媒床は、金属V、Nb、Taおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する、短接触時間で飽和カルボン酸を、それらの対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のエステルに転化させるための追加の触媒層を含有する。
【0011】
本発明は、アルケンを、それらの対応する不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステルおよびそれらのそれぞれのより高級の類似体に累積的に転化させるための多段触媒床であって、
(a)火炎温度および短接触時間における、少なくとも1つのスチームクラッキング触媒を含有する第一触媒層、
(b)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、更に含有する第二触媒層(第一触媒層は、アルケンを、その対応する飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に転化させるために累積的に有効であり、第一層の触媒は金属酸化物担体上に含浸されている)ならびに
(c)飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸を、アルデヒドの存在下でその対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸に、アルコールの存在下でその対応する不飽和カルボン酸のエステルに、ホルムアルデヒドおよびアルコールの両方の存在下でその対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体エステルに転化させるために累積的に有効である第三触媒層
を含有する多段触媒床を提供する。
【0012】
一つの態様に従って、第二触媒層は、1以上の超酸を含み、自己担持的であるかまたは任意に金属酸化物担体上に含浸されており、第二触媒層から下流に配置され、対応する不飽和カルボン酸のエステル、より高級の類似体不飽和カルボン酸およびこれらのエステルの総合収率を増加させる。
【0013】
一つの態様に従って、この触媒系を使用して、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステルおよびそれらのそれぞれのより高級の類似体を調製するための、アルケン、酸素、ホルムアルデヒドおよびアルコールを含む追加の供給物が導入される(また、段階化と呼ぶ)。2つの触媒層の間のホルムアルデヒドを段階化させることによって、対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸(C+C)が製造される。たとえば、第一触媒は、プロパン(Cアルカン)をプロピオン酸(C飽和カルボン酸)に転化させ、第二触媒は、ホルムアルデヒドの存在下で、プロピオン酸を、より高級の類似体メタクリル酸(C不飽和カルボン酸)に転化させる。
【0014】
別の態様に従って、2つの触媒床の間にホルムアルデヒドをスパージングし、かつアルコールを段階化することによって、対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体エステルが製造される。たとえば、第一触媒は、プロパン(C)をプロピオン酸(C)に転化させ、第二触媒は、ホルムアルデヒドおよびメタノールの存在下で、プロピオン酸(C)を、メチルメタクリレート(C)に転化させる。
【0015】
本発明は、対応するアルカンからアルケンを調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を組み合わせ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて転化させる工程、
(リアクターは、(a)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(b)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を含む触媒系を含み、
触媒系は、気体状アルカンをその対応する気体状アルケンに転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
リアクターを、700℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転する方法を提供する。
【0016】
本発明は、対応するアルカンから不飽和カルボン酸を調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、ならびに
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、
(1)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有する第一触媒層(第一層の触媒は、金属酸化物担体上に含浸されている)ならびに
(2)金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する第二触媒層
を含有する混合触媒床を含み、
混合床触媒は、気体状アルケンをその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
第二触媒層は、第一触媒層から下流の一定の距離に分離され、リアクターを、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転し、1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターから上流の一定の距離に分離される、多段方法を提供する。
【0017】
別の態様として、本発明は、対応するアルカンから不飽和カルボン酸を調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含有する混合触媒床を含み、第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)、ならびに
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸させた触媒を含有する第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は、気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含有する第一および第二触媒帯域への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
第一触媒帯域を、リアクターを通過する気体流の流れの方向に対して第二触媒帯域の上流に配置し、
第一触媒帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二触媒帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し、
アルケンの気体流を、一回通過でリアクターに通過させ、または任意の未反応アルケンをリアクターに入るアルケンの気体流の中に戻し再循環させ、任意の飽和カルボン酸を第二触媒帯域の中に戻し再循環させて、不飽和カルボン酸の総合収率を増加させる、多段方法を提供する。
【0018】
本発明は、アルカンを、それらの対応する不飽和カルボン酸のエステルに転化させる多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、ならびに
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、
(1)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有する第一触媒層(第一触媒層は、気体状アルカンをその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効であり、第一層の触媒は金属酸化物担体上に含浸されている)、ならびに
(2)気体状不飽和カルボン酸をその対応する気体状エステルに転化させる際に累積的に有効である1以上の触媒を含有する第二触媒層
を含む混合触媒床を含む)
を含み、
第二触媒層は、第一触媒層から下流に一定の距離に分離され、
リアクターを、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転し、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターへの反応体の気体流の流れに対して上流の一定の距離に分離される、多段方法を提供する。
【0019】
一つの態様に従って、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する追加の触媒層を、第一層と第二層との間に含み、この触媒追加層は、気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である。
【0020】
本発明は、アルカンを、それらの対応する不飽和カルボン酸のエステルに転化させる多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含有する混合触媒床を含み、
第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸されている触媒を含有する第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)、ならびに
(e)アルコールを含む第二気体流をリアクターに通過させる工程
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含む第一および第二反応帯域内の第一および第二触媒への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
リアクターは、アルケンを、その対応する不飽和カルボン酸とアルコールのエステルに転化させるために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含み、
1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応する不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第一触媒系およびエチレン性不飽和カルボン酸を、アルコールの存在下で、その対応するエチレン性不飽和カルボン酸とアルコールのエステルに転化させるために有効な第二触媒を含み、
第一触媒を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第一反応帯域は、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置され、
第二気体流を、第一反応帯域と第二反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転する、多段方法を提供する。
【0021】
本発明は、また、より高級の不飽和カルボン酸を製造する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含む混合触媒床を含み、
第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸されている触媒を含む第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
(e)アルカンおよび分子酸素を含む第一気体流をリアクターに通過させる工程、ならびに
(f)アルデヒドを含む第二気体流をリアクターに通過させる工程
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含む第一および第二反応帯域内の第一および第二触媒への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
リアクターは、アルカンを、その対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体に転化させるために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含み、
1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応する飽和カルボン酸に転化させるために有効な第一触媒系および飽和カルボン酸を、アルデヒドの存在下で、アルデヒドと共にその対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第二触媒を含み、
第一触媒を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し、
第二気体流を、第一反応帯域と第二反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転する、多段方法を提供する。
【0022】
本発明は、アルカンを、その対応する不飽和カルボン酸に転化させる多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含む混合触媒床を含み、
第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)、ならびに
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸されている触媒を含む第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含む第一および第二反応帯域内の第一および第二触媒への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
リアクターは、アルケンを、その対応する不飽和カルボン酸に転化させるために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含み、
1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応するアルケンに転化させるために有効な少なくとも1つのスチームクラッキング触媒、アルケンを、その対応する飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第一および第二触媒、ならびに飽和カルボン酸を、その対応する不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第三触媒を含み、
第一触媒を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第三触媒を第三反応帯域内に配置し、
第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し、
第二反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第三反応帯域の上流に配置し、
第二気体流を、第二反応帯域と第三反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し、
第三反応帯域を、100℃〜300℃の温度で、100ミリ秒以下の第三反応帯域滞留時間で運転する多段方法を提供する。
【0023】
本発明は、アルカンを、対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸に転化させる多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含む混合触媒床を含み、
第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)、ならびに
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸されている触媒を含む第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)、ならびに
(e)アルデヒドを含む第二気体流をリアクターに通過させる工程
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含む第一および第二反応帯域内の第一および第二触媒への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
リアクターは、アルカンを、アルデヒドと共にその対応する不飽和カルボン酸に酸化するために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含み、
1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応するアルケンに転化させるために有効な第一触媒、アルケンを、その対応する飽和カルボン酸に転化させるために有効な第二触媒および飽和カルボン酸を、アルデヒドの存在下で、アルデヒドと共にその対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第三触媒を含み、
第一触媒を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第三触媒を第三反応帯域内に配置し、
第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し、
第二反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第三反応帯域の上流に配置し、
第二気体流を、第二反応帯域と第三反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し、
第三反応帯域を、100℃〜300℃の温度で、100ミリ秒以下の第三反応帯域滞留時間で運転する多段方法を提供する。
【0024】
本発明は、アルカンを、対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体エステルに転化させる多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を通過させ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、このスチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて接触的に転化させる工程、
(リアクターは、少なくとも1つの触媒帯域を含む混合触媒床を含み、
第一触媒帯域は、更に、(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(3)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、
触媒は、対応する気体状アルケンを、対応する気体状不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化させる)
(d)この気体流を、金属酸化物担体上に含浸されている触媒を含む第二触媒帯域に通過させる工程、
(触媒は、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含み、
触媒帯域は気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
(e)ホルムアルデヒドを含むアルデヒドを含む第二気体流をリアクターに通過させる工程、ならびに
(f)アルコールを含む第三気体流をリアクターに通過させる工程、
を含み、
リアクターは、アルカンを、アルデヒドおよびアルコールと共に、その対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体のエステルに転化させるために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含み、
1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応するその対応する飽和カルボン酸に転化させるために有効な第一触媒系、飽和カルボン酸を、アルデヒドの存在下で、その対応するより高級の類似体不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第二触媒およびより高級の類似体不飽和カルボン酸を、アルコールの存在下で、その対応する不飽和カルボン酸のより高級の類似体とアルコールのエステルに転化させるために有効な第三触媒を含み、
第一触媒系を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第三触媒を第三反応帯域内に配置し、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターを含む第一および第二反応帯域内の第一および第二触媒への気体流の流れの方向に対して上流の一定の距離に分離され、
第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し、
第二反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第三反応帯域の上流に配置し、
第二気体流を、第一反応帯域と第二反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第三気体流を、第二反応帯域と第三反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し、
第三反応帯域を、100℃〜300℃の温度で、100ミリ秒以下の第三反応帯域滞留時間で運転する多段方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、(a)アルカンを、1以上のスチームクラッキング触媒を使用して、アルケンから選択されるその対応する生成物に転化させる工程、(b)この対応するアルケンを、短接触時間リアクター内で、本発明の触媒系を使用して、不飽和カルボン酸およびより高級の類似体不飽和カルボン酸から選択される更に酸素化された生成物に転化させる工程、ならびに(c)得られた生成物または生成物群を、第二リアクターへの供給物として作用する第一スチームクラッキングリアクターからの生成物(群)と共に、短接触時間条件下で第二固定床酸化リアクターの前端に添加する工程を含む、多段再循環方法を提供する。一つの態様に従って、これには、第一スチームクラッキングリアクターからの任意の未反応アルカンおよび短接触時間リアクターからの任意の未反応アルケンを、短接触時間リアクターに供給して、それぞれのアルカンおよびアルケンを再循環させることが含まれる。
【0026】
本発明は、また、アルカンを、不飽和カルボン酸、より高級の類似体不飽和カルボン酸およびこれらのエステルから選択される、その対応する生成物に転化させる多段方法であって、所望する酸素化生成物へのアルカンの転化率を改良する累積的効果を有する温度勾配を提供する工程を含む多段方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、アルカンを、不飽和カルボン酸、より高級の類似体不飽和カルボン酸およびこれらのエステルから選択される、その対応する生成物に転化させる多段方法であって、所望する酸素化生成物へのアルカンの転化率を改良する累積的効果を有する1以上の触媒系を更に含む触媒カスケードを提供する工程を含む多段方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「多段方法」は、2以上のリアクターを含む2以上の段階の組合せであって、それぞれのリアクターが少なくとも1つの触媒を含み、リアクターは、1以上のアルカンの、1以上の対応する酸素化生成物への累積的転化を実施する、少なくとも1つの触媒リアクターと短接触時間リアクター内の少なくとも1つの触媒の組合せをさらに含む。一つの態様に従って、この多段方法は、短接触時間リアクター内の少なくとも1つの触媒と組み合わせて、スチームクラッキングリアクターを含み、該スチームクラッキングリアクターは1以上のアルカンを1以上の対応するアルケンに転化させ、さらに短接触時間リアクターは、対応する1以上のアルケンを1以上の更に対応する酸素化生成物に転化させる。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「累積的に転化させること」は、本発明の触媒系を使用して、特定の反応条件下で、1以上の特定の反応体から所望の生成物流を製造することを意味する。例示的例として、アルカンを、その対応する不飽和カルボン酸とアルコールのエステルに累積的に転化させるとは、使用される触媒(群)が、設計された反応条件下で、アルカンおよびアルコールを含有する供給物流(群)に作用した場合、添加されたアルコールと添加されたアルカンに対応する不飽和カルボン酸とのエステルを含む生成物流を製造するであろうことを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「触媒系」は、2以上の触媒を意味する。用語「多段触媒系」は、アルケンを対応する酸素化生成物に累積的に転化させるための1以上の酸化触媒と組み合わせた1以上のスチームクラッキング触媒を意味する。たとえば、アルミナ担体上に含浸させた白金金属および酸化インジウムは触媒系を規定する。他の例は、白金ガーゼ上に含浸させた酸化ニオブである。更に他の例は、シリカ上に含浸させたパラジウム金属、酸化バナジウムおよび酸化マグネシウムである。
【0031】
従って、本発明は、短接触時間でアルカンおよび酸素から脱水素化生成物および酸素化生成物を調製する、多段酸化/脱水素化触媒、ならびに多段方法に関する。適切なアルカンとしては、直鎖または分枝鎖を有するアルカンが挙げられる。適切なアルカンの例には、C〜C25アルカン、好ましくはC〜Cアルカン、たとえば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサンおよびヘプタンが挙げられる。特に好ましいアルカンは、プロパンおよびイソブタンである。
【0032】
本発明の多段触媒系は、アルカンを、それらの対応するアルケン、ならびに酸素化物、たとえば、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、それらのエステル、ならびにより高級の類似体不飽和カルボン酸およびそれらのエステルに累積的に転化させる。この触媒系は、特定のアルケン、酸素化物およびこれらの組合せを提供するように設計されている。一つの態様に従って、1以上の一般的なスチームクラッキング触媒を使用して、アルカンを、対応するアルケンに接触的に転化させる。クラッキングリアクター内で製造された対応するアルケンは、短接触リアクター内の1以上の酸化触媒に向けられ、対応する酸素化生成物を提供する。別の態様に従って、任意の未反応アルカン、アルケンまたは中間体は再循環され、本発明に従ってそれをその対応する酸素化物に接触的に転化させる。別の態様に従って、本発明のスチームクラッキング触媒または触媒系を使用して、対応するアルカンの脱水素化から製造されたアルケンを、工程内化学中間体として意図的に製造し、更に対応する酸素化生成物への選択的部分酸化の前に、対応するアルケンとして単離しない。たとえば、アルカンをその対応するエチレン性不飽和カルボン酸に接触的に転化させる場合、製造された任意の未反応アルケンを回収し、再循環し、それを、その対応するエチレン性不飽和カルボン酸生成物流に接触的に転化させる。
【0033】
一つの態様に従って、アルカンを、また、2以上のスチームクラッキング触媒帯域に通して、その対応するアルケン中間体に接触的に転化させる。たとえば、プロパンを、スチームクラッキングリアクターを通してプロピレンに転化させる。別の態様に従って、アルカンを、混合複合触媒床の第一および第二段触媒帯域または層内で、その対応する飽和カルボン酸に接触的に転化させる。この飽和カルボン酸を、追加のホルムアルデヒド流の存在下で、混合床触媒の第二触媒帯域または層内で、その対応するより高級の類似体エチレン性不飽和カルボン酸に転化させる。特別の例において、プロパンを、プロピオン酸に接触的に転化させ、このプロピオン酸を、ホルムアルデヒドの存在下で、メタクリル酸に接触的に転化させる。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「より高級の類似体不飽和カルボン酸」および「より高級の類似体不飽和カルボン酸のエステル」は、アルカンまたはアルケン反応体に比較した場合、最終生成物中に少なくとも1つの追加の炭素原子を有する生成物を意味する。前記の例について、プロパン(Cアルカン)を、プロピオン酸(C飽和カルボン酸)に転化させ、このプロピオン酸を、ホルムアルデヒドの存在下で、本発明の触媒を使用して、その対応するより高級の類似体(C)カルボン酸であるメタクリル酸に転化させる。
【0035】
本発明において使用される適切なアルケンとしては、直鎖または分枝鎖を有するアルケンが挙げられる。適切なアルケンの例としては、C〜C25アルケン、好ましくはC〜Cアルケン、たとえば、プロペン(プロピレン)、1−ブテン(ブチレン)、2−メチルプロペン(イソブチレン)、1−ペンテンおよび1−ヘキセンが挙げられる。特に好ましいアルケンは、プロピレンおよびイソブチレンである。
【0036】
本発明において使用される適切なアルデヒドは、たとえば、ホルムアルデヒド、エタナール、プロパナールおよびブタナールである。
【0037】
本発明のスチームクラッキング触媒系は、アルカンをそれらの対応するアルケンに転化させる。酸化触媒系は、対応するアルケンを、直鎖または分枝鎖を有する不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む更に対応する酸素化物に転化させる。多段触媒系は、対応するアルカンを、対応するアルケンに、また更にこれらに限定されないが、直鎖または分枝鎖を有する不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む対応する酸素化物に累積的に転化させる。例としては、C〜C飽和カルボン酸、たとえば、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸およびヘキサン酸が挙げられる。一つの態様に従って、本発明の触媒系を使用して、対応するアルカンから製造された飽和カルボン酸を、工程内化学中間体として意図的に製造し、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステルおよび不飽和カルボン酸のより高級のエステルを含む酸素化生成物への選択的部分酸化の前に単離しない。別の態様に従って、製造された任意の飽和カルボン酸を、本発明の触媒を使用して、エチレン性不飽和カルボン酸、それらのエステル、より高級の類似体不飽和カルボン酸またはそれらのエステルを含む、その対応する生成物流に転化させる。
【0038】
一つの態様に従って、ある種の酸化触媒系は、アルケンをそれらの対応する酸素化生成物に累積的に転化させ、本発明の多段触媒系は、アルカンを、直鎖または分枝鎖を有する、それらの対応するエチレン性不飽和カルボン酸およびより高級の類似体に累積的に転化させる。例としては、C〜Cエチレン性不飽和カルボン酸、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、マレイン酸およびクロトン酸が挙げられる。より高級の類似体エチレン性不飽和カルボン酸を、対応するアルカンおよびアルデヒドから調製する。たとえば、メタクリル酸を、プロパンおよびホルムアルデヒドから調製する。別の態様に従って、対応する酸無水物は、また、エチレン性不飽和カルボン酸をそれらのそれぞれのアルカンから調製する場合に製造される。本発明の触媒は、プロパンをアクリル酸およびそのより高級の不飽和カルボン酸であるメタクリル酸に転化させるために、およびイソブタンをメタクリル酸に転化させるために、有用に使用される。
【0039】
一つの態様に従って、本発明のある種の酸化触媒系は、また、アルケンをそれらの対応する不飽和カルボン酸のエステルおよびより高級の類似体に転化させるために有利に使用され、本発明の多段触媒系は、また、アルケンをそれらの対応する不飽和カルボン酸のエステルおよびより高級の類似体に累積的に転化させるために有利に使用される。特に、これらのエステルには、これらに限定されないが、ブチルアルコールおよびプロパンからのブチルアクリレート、エチレングリコールおよびプロパンからのβ−ヒドロキシエチルアクリレート、メタノールおよびイソブタンからのメチルメタクリレート、ブチルアルコールおよびイソブタンからのブチルメタクリレート、エチレングリコールおよびイソブタンからのβ−ヒドロキシエチルメタクリレート、ならびにプロパン、ホルムアルデヒドおよびメタノールからのメチルメタクリレートが挙げられる。
【0040】
これらのエステルに加えて、本発明により、リアクターの中に導入されるアルコール、ならびに/またはリアクターの中に導入されるアルカン、アルケンおよび対応する酸素化物の種類を変化させることによって、他のエステルが生成される。
【0041】
適切なアルコールとしては、一価アルコール、二価アルコールおよび多価アルコールが挙げられる。一価アルコールに関して、限定されないが、C〜C20アルコール、好ましくはC〜Cアルコール、最も好ましくはC〜Cアルコールを挙げることができる。一価アルコールは、芳香族、脂肪族または脂環式;直鎖または分枝鎖;飽和または不飽和;および第一級、第二級または第三級であってよい。特に好ましい一価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールおよび第三級ブチルアルコールが挙げられる。二価アルコールに関して、限定されないが、C〜Cジオール、好ましくはC〜Cジオールを挙げることができる。二価アルコールは、脂肪族または脂環式;直鎖または分枝鎖;および第一級、第二級または第三級であってよい。特に好ましい二価アルコールとしては、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオールおよび2,3−ブタンジオールが挙げられる。多価アルコールに関して、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)のみを挙げることができる。
【0042】
添加したアルカンに対応する不飽和カルボン酸は、出発アルカンと同じ数の炭素原子および出発アルカンと同じ炭素鎖構造を有するα,β−不飽和カルボン酸であり、たとえば、アクリル酸はプロパンに対応する不飽和カルボン酸であり、メタクリル酸はイソブタンに対応する不飽和カルボン酸である。
【0043】
同様に、アルケンに対応する不飽和カルボン酸は、アルケンと同じ数の炭素原子およびアルケンと同じ炭素鎖構造を有するα,β−不飽和カルボン酸であり、たとえば、アクリル酸はプロペンに対応する不飽和カルボン酸であり、メタクリル酸はイソブテンに対応する不飽和カルボン酸である。
【0044】
同様に、不飽和アルデヒドに対応する不飽和カルボン酸は、不飽和アルデヒドと同じ数の炭素原子および不飽和アルデヒドと同じ炭素鎖構造を有するα,β−不飽和カルボン酸であり、たとえば、アクリル酸はアクロレインに対応する不飽和カルボン酸であり、メタクリル酸はメタクロレインに対応する不飽和カルボン酸である。
【0045】
添加したアルカンに対応するアルケンは、出発アルカンと同じ数の炭素原子および出発アルカンと同じ炭素鎖構造を有するアルケンであり、たとえば、プロペンはプロパンに対応するアルケンであり、イソブテンはイソブタンに対応するアルケンである。(4以上の炭素原子を有するアルケンについて、二重結合は、アルケンの炭素−炭素鎖の2−位に存在する。)
【0046】
添加したアルカンに対応する不飽和アルデヒドは、出発アルカンと同じ数の炭素原子および出発アルカンと同じ炭素鎖構造を有するα,β−不飽和アルデヒドであり、たとえば、アクロレインはプロパンに対応する不飽和アルデヒドであり、メタクロレインはイソブタンに対応する不飽和カルボン酸である。
【0047】
同様に、アルケンに対応する不飽和アルデヒドは、アルケンと同じ数の炭素原子およびアルケンと同じ炭素鎖構造を有するα,β−不飽和アルデヒドであり、たとえば、アクロレインはプロペンに対応する不飽和アルデヒドであり、メタクロレインはイソブテンに対応する不飽和アルデヒドである。
【0048】
本発明の触媒中に使用される金属に関して、周期表に基づく下記の定義が適用される。
第1族には、Li、Na、K、RbおよびCsが含まれる。
第2族には、Mg、Ca、SrおよびBaが含まれる。
第3族には、B、Al、Ga、InおよびTlが含まれる。
ランタニドには、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luおよびアクチニド系列の全ての安定な元素が含まれる。
第4A族には、C、Si、Ge、SnおよびPbが含まれる。
第4B族には、Ti、ZrおよびHfが含まれる。
第5A族には、N、P、As、SbおよびBiが含まれる。
第5B族には、V、NbおよびTaが含まれる。
第6B族には、Cr、MoおよびWが含まれる。
第7B族には、Mn、TcおよびReが含まれる。
第8族には、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtが含まれる。
【0049】
従って、本発明は、スチームクラッキング条件下でアルカンをそれらの対応するアルケンに転化させる、および短接触時間でアルケンを対応する酸素化物に転化させる、担持された触媒系を提供する。
【0050】
担体構造物は三次元である。即ち、担体は、デカルト座標系のx、yおよびz直交軸に沿った寸法を有し、比較的高い単位体積当たりの表面積を与える。より低い量およびより高い量が可能であるが、一つの態様において、担体構造物は、0.01〜50m/g、好ましくは0.1〜10m/gの表面積を示す。
【0051】
好ましくは、担体構造物は、多孔質構造を有し、1〜95%、より好ましくは5〜80%、なおより好ましくは10〜50%の範囲内の細孔体積パーセントを示すであろう。従って、担体構造物は、僅かな圧力低下で比較的高い供給速度を可能にする。
【0052】
更に、担体構造物は、十分に強く、触媒の重量下で破壊せず、これは触媒および担体構造物の組合せの重量の殆ど100%までの範囲になりえる。しかしながら、より好ましくは、担体構造物は、この組合せの重量の少なくとも60%である。なおより好ましくは、これは、この組合せの重量の70〜99.99%である。なおより好ましくは、担体構造物は、この組合せの重量の90〜99.9%である。
【0053】
担体構造物の実際の物理的形状は、それが上記の一般的規準に適合する限り、特に重要ではない。適切な物理的形状の例としては、フォーム、ハニカム、格子、メッシュ、モノリス、織布、不織布、ガーゼ、穿孔された支持体(たとえば、箔)、粒子コンパクト、繊維状マットおよびこれらの混合物が挙げられる。これらの担体について、典型的に1以上の開口セルがこの構造物内に含まれることが認められるであろう。セルサイズ、ならびにセル密度、セル表面積、開口前面面積(open frontal area)および他の対応する寸法は、所望により変えることができる。たとえば、一つのこのような構造物は、少なくとも75%の開口前面面積を有する。セル形状も変えることができ、これには、多角形状、円形、楕円形およびその他の形状を含むことができる。
【0054】
担体構造物は、この接触反応の反応環境に対して不活性である物質から製作することができる。適切な物質には、セラミックスおよびそれらの同形体、たとえば、シリカ、アルミナ(α−、β−およびγ−同形体を含む)、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、ジルコニア、チタニア、ボリア(boria)、ムライト、ケイ酸アルミニウムリチウム、オキシド結合炭化ケイ素、金属合金モノリス、フリッカー型金属合金、FeCrAl合金およびこれらの混合物が挙げられる。(代替的に、触媒を、たとえば、「グリーン(green)」圧縮または他の適切な技術によって、担体構造物自体を規定するように製造することができる。)
【0055】
この触媒は、任意の適切な技術開示された技術を使用して、担体構造物に適用することができる。たとえば、触媒を、(たとえば、スパッタリング、プラズマ蒸着または蒸着の幾つかの他の形態により)蒸着させることができる。触媒は、(たとえば、担体を、触媒の溶液、スラリー、懸濁液または分散液で洗浄被覆することにより)その上に含浸または被覆することができる。担体を、触媒粉末で被覆することができる(即ち、粉末被覆)。(代替的に、担体構造物が触媒自体である場合、触媒の「グリーン」体を圧縮して、所望の構造物を得ることができる。)
【0056】
本発明の多段触媒系は、アルカンをそれらの対応するアルケンおよび酸素化物に累積的に転化させる。スチームクラッキング触媒には、少なくとも1つのスチームクラッキング触媒が含まれている。短接触時間下での酸化触媒は、3種の成分を、即ち、(a)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(b)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(c)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有し、ここで触媒は金属酸化物担体上に含浸されている。
【0057】
触媒成分(a)は、アルカンを、それらの対応するアルケンに酸化的に脱水素化するために有用に使用されるプロモータである。触媒は、担体上に、高表面積を有する微細に分散された、合金を含む金属粒子の形態(ミクロン〜ナノメートル)で存在している。代替的に、触媒は、ナノメートルサイズのワイヤーを含む微細なガーゼの形態で存在している。この触媒は、金属スパッタリング、化学蒸着、金属酸化物の化学的および/または電気化学的還元から選択される技術を使用して、担体上に含浸されている。プロモータおよびそれらの合金の組合せが、有用に使用される。この触媒系成分には、金属酸化物およびこのプロモータと組み合わせて使用される金属酸化物が含まれている。
【0058】
触媒成分(b)は、特に、アルカンを、それらの対応する飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に部分酸化するために有用に使用される調節剤である。金属酸化物触媒は、二成分、三成分、四成分またはより高次の混合金属酸化物の形態で存在する。還元性金属酸化物は、Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、Y、Sc、La、Zr、Ta、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物であってよい。この調節剤は、好ましくは、触媒組成物(プロモータプラス還元性金属酸化物)の0.0001〜10重量%、より好ましくは触媒組成物の0.001〜5重量%、なおより好ましくは触媒組成物の0.01〜2重量%の量で存在することができる。
【0059】
触媒成分(c)は、アルカンを、それらの対応するアルケン、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸に部分酸化するために、有用に使用される。金属酸化物触媒は、二成分、三成分、四成分またはより高次の混合金属酸化物の形態で存在する。この還元性金属酸化物は、Cu、Cd、Co、Cr、Fe、V、Mn、Ni、Nb、Mo、W、Re、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Te、As、Se、V、Zn、Y、Zr、Taおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物であってよい。好ましくは、この還元性金属酸化物は、金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ta、Vおよびこれらの組合せ、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。このプロモータは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtから選択される金属、好ましくはPt、Pd、Rh、Ir、Ruおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属である。プロモータは、好ましくは、触媒組成物(プロモータプラス還元性金属酸化物)の0.0001〜10重量%、より好ましくは触媒組成物の0.001〜5重量%、なおより好ましくは触媒組成物の0.01〜2重量%の量で存在することができる。この触媒は、担体上に、高表面積を有する、微細に分散された金属酸化物粒子の形態(ミクロン〜ナノメートル)で存在している。この触媒系成分には、金属酸化物および担持された金属酸化物と接触状態でプロモータと組み合わせて使用される金属酸化物が含まれている。
【0060】
一つの態様に従って、触媒系には触媒(a)および(b)が含まれる。別の態様に従って、触媒系には触媒(a)、(b)および(c)の組合せが含まれる。触媒は、典型的に、三次元構造を有する金属酸化物担体と接触状態にある(好ましくは、担体上に含浸されている)。
【0061】
前記のような本発明の種々の混合金属酸化物は、下記の方法で調製することができる。
【0062】
第一工程において、金属化合物(好ましくは、その少なくとも1種は酸素を含有する)および適切な量の少なくとも1つの溶媒を混合して、スラリーまたは溶液を形成することによって、スラリーまたは溶液を形成することができる。好ましくは、触媒調製のこの段階で溶液を形成する。一般的に、金属化合物には、前記定義したような特別の触媒のために必要な元素を含有する。
【0063】
適切な溶媒には、水、アルコール、たとえばこれらに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノールおよびジオール、ならびに当該技術分野で知られている他の極性溶媒が含まれる。一般的に、水が好ましい。水は、限定されないが、蒸留水および脱イオン水を含む、化学合成において使用するために適している任意の水であってよい。存在する水の量は、好ましくは、元素を、調製工程の間に組成および/または相分離を回避するまたは最小にするために十分長く溶液中に実質的に保持するために十分な量である。従って、水の量は、組み合わせる物質の量および溶解度に従って変化するであろう。しかしながら前記のように、水の量は、混合時間で水溶液が確実に形成されるために十分であることが好ましい。
【0064】
たとえば、式MoTeNbの混合金属酸化物を製造する場合、テルル酸の水溶液、シュウ酸ニオブの水溶液およびパラモリブデン酸アンモニウムの溶液またはスラリーを、メタバナジン酸アンモニウムの予定量を含有する水溶液に逐次的に添加して、それぞれの金属元素の原子比が前記の比率になるようにすることができる。
【0065】
水性スラリーまたは溶液(好ましくは溶液)が形成されると、当該技術分野で知られている任意の適切な方法によって水を除去して、触媒前駆体を生成させる。このような方法としては、限定されないが、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーションおよび空気乾燥が挙げられる。真空乾燥は、一般的に、10mmHg〜500mmHgの範囲内の圧力で実施される。凍結乾燥は、典型的に、たとえば、液体窒素を使用してスラリーまたは溶液を凍結し、凍結したスラリーまたは溶液を真空下で乾燥させることを伴う。噴霧乾燥は、一般的に、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下で、125℃〜200℃の範囲内の入口温度および75℃〜150℃の範囲内の出口温度で実施される。ロータリーエバポレーションは、一般的に、25℃〜90℃の浴温度でおよび10mmHg〜760mmHgの圧力で、好ましくは40℃〜90℃の浴温度でおよび10mmHg〜350mmHgの圧力で、より好ましくは40℃〜60℃の浴温度でおよび10mmHg〜40mmHgの圧力で実施される。空気乾燥は、25℃〜90℃の範囲内の温度で実施することができる。ロータリーエバポレーションまたは空気乾燥が一般的に使用される。
【0066】
得られた後、触媒前駆体を焼成する。この焼成は、通常、酸化雰囲気中で実施されるが、焼成を非酸化雰囲気中で、たとえば、不活性雰囲気または真空中で実施することも可能である。不活性雰囲気は、実質的に不活性である、即ち、触媒前駆体と反応または相互作用しない任意の物質であることができる。適切な例としては、限定されないが、窒素、アルゴン、キセノン、ヘリウムまたはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、不活性雰囲気はアルゴンまたは窒素である。不活性雰囲気は、触媒前駆体の表面の上に流すことができ、またはその上に流さないことができる(静的環境)。不活性雰囲気を触媒前駆体の表面の上に流す場合、その流速は、広範囲に亘って、たとえば、1〜500時−1の空間速度で変化させることができる。
【0067】
焼成は、通常、350℃〜1000℃、たとえば400℃〜900℃、およびたとえば500℃〜800℃の温度で実施される。焼成は、前記の触媒を形成するために適した時間の長さの間実施される。典型的に、焼成は、所望の混合金属酸化物を得るために、0.5〜30時間、好ましくは1〜25時間、より好ましくは1〜15時間実施される。
【0068】
運転の一つの様式において、触媒前駆体は、2段階で焼成される。第一段階において、触媒前駆体は、酸化雰囲気(たとえば空気)中で、200℃〜400℃、たとえば275℃〜325℃の温度で、15分間〜8時間、たとえば1〜3時間焼成される。第二段階において、第一段階からの物質は、非酸化環境(たとえば、不活性雰囲気)中で、500℃〜900℃、たとえば550℃〜800℃の温度で、15分間〜8時間、たとえば1〜3時間焼成される。
【0069】
任意に、たとえばアンモニアまたは水素のような還元ガスを、第二段階焼成の間に添加する。
【0070】
運転の別の様式において、第一段階における触媒前駆体を、所望の酸化雰囲気中に室温で置き、次いで、第一段階焼成温度まで上昇させ、そこで所望の第一段階焼成時間の間保持する。次いで、この雰囲気を、第二段階焼成のための所望の非酸化雰囲気で置き換え、温度を所望の第二段階焼成温度まで上昇させ、そこで所望の第二段階焼成時間の間保持する。
【0071】
任意の形式の加熱機構、たとえば炉を焼成の間に利用することができるが、設計された気体環境の流れの下で焼成を実施することが好ましい。従って、固体触媒前駆体粒子の床を通過する所望の気体(群)の連続流を有する床内で、焼成を実施することが有利である。
【0072】
焼成により、化学量論的または非化学量論的量のそれぞれの元素を有する混合金属酸化物触媒が形成される。
【0073】
本発明は、また、アルカンを、短接触時間でそれらの対応するアルケンおよび酸素化物に転化させる金属酸化物および混合金属酸化物触媒を調製する方法であって、
Mo、Te、V、TaおよびNbからなる群から選択される金属の塩を、最高溶融塩の融点よりも高い温度で混合して、混和性溶融塩を形成する工程、ならびに
この塩の混合物を、酸素の存在下で焼成して(任意に溶媒として、金属ハロゲン化物塩または金属オキシハロゲン化物塩を使用して)、混合金属酸化物触媒を提供する工程
を含む方法を提供する。
【0074】
上記の混合金属酸化物のための出発物質は、上記のものに限定されない。広範囲の物質、たとえば酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物、アルコキシド、アセチルアセトネートおよび有機金属化合物を使用することができる。たとえば、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(ammonium heptamolybdate)を、触媒におけるモリブデン源として使用することができる。しかしながら、MoO、MoO、MoCl、MoOCl、Mo(OC、モリブデンアセチルアセトネート、ホスホモリブデン酸およびシリコモリブデン酸のような化合物を、ヘプタモリブデン酸アンモニウムの代わりに使用することもできる。同様に、メタバナジン酸アンモニウムを触媒におけるバナジウム源として使用することができる。しかしながら、V、V、VOCl、VCl、VO(OC、バナジウムアセチルアセトネートおよびバナジルアセチルアセトネートのような化合物を、メタバナジン酸アンモニウムの代わりに使用することもできる。テルル源には、テルル酸、TeCl、Te(OC、Te(OCH(CHおよびTeOを挙げることができる。ニオブ源には、アンモニウムニオブオキサレート(ammonium niobium oxalate)、Nb、NbCl、ニオブ酸またはNb(OC、ならびに更に一般的なシュウ酸ニオブを挙げることができる。
【0075】
低溶融塩の使用によって、混合金属酸化物触媒を調製するための新しいアプローチが開かれる。現在の水性懸濁方法を超える利点には、難溶性金属塩のより高い含有、金属比のより良い制御、およびより均一な触媒系が挙げられる。一つの独特のアプローチは、塩溶液を調製するために、所望のMMO金属の低溶融ハロゲン化物を使用することである。このアプローチの変形を、以下更に詳細に検討する。
【0076】
所望の金属のハロゲン化物塩を、最高溶融塩の融点よりも高い温度で混合することによって組み合わせる。この溶融塩は、お互いに混和性であって、溶融塩の安定で均一な溶液を形成しなくてはならない。
【0077】
この方法の一つの利点は、それが、水性スラリー系に固有の溶解度制限を排除することである。溶融塩を使用することによって、本発明者らは、遙かに高いレベルのニオブ、バナジウムおよびパラジウムのような金属(これらの金属の塩は、水性媒体中で比較的低い溶解度を有する)を含有させることができる。金属塩の例およびそれらの融点を、表4に示す。これらの塩は、容易に入手でき、比較的安価であり、適度に低い融点を有する。
【0078】
一つの態様に従って、ある種の金属オキシハロゲン化物が、この方法を使用して金属酸化物を調製する際の溶媒として有用である。四塩化バナジウムVClおよび三塩化バナジル(VOCl)のようなバナジウムハロゲン化物は、室温で液体であり、それらの極性および低い沸点(BP(VCl)=148℃、BP(VOCl)=127℃)のために、他の金属の塩化物塩のための理想的な溶媒である。金属ハロゲン化物を、これらの溶媒の1種に、所望のモル比で溶解させ、次いで、過剰のバナジウムを、減圧下および不活性雰囲気下での蒸発によって除去する。次いで、触媒ケークを、O/アルゴン下で焼成して、塩素の酸化物を遊離させ、混合金属酸化物触媒を生じさせる。代替的に、触媒ケークを湿潤アルゴン下で焼成して、混合金属酸化物(MMO)触媒およびHClを生じさせることができる。更に、混合金属ハロゲン化物(MMH)を、また、以下更に詳細に検討するように、MMOに転化させる。
【0079】
別の態様に従って、合成において早期に酸素を導入することが有利である。これは、金属酸化物を、溶融塩溶液またはVCl/VOCl溶液の中に早期に混合することによって達成される。この方法は、焼成の間に除去しなくてはならない塩素の量を減少させ、既に最終触媒の所望の特性の幾らかを有する混合オキシ塩化物前駆体を生じさせる。一つの調製法は、ニオブ、テルルおよびモリブデンの酸化物をVCl/VOCl中に溶解させることである。得られる前駆体は、高い酸素含有量を既に有しているであろう。
【0080】
別の態様に従って、混合金属ハロゲン化物(MMH)を、また、MMOに転化させる。混合金属ハロゲン化物(MMH)および混合金属オキシハロゲン化物(MMOH)を、混合金属酸化物(MMO)に転化させるための三つの方法を説明する。
(A)MMH前駆体を、湿潤(1%)アルゴン下で加熱温度(600℃)で焼成する。オフガスを苛性物質でスクラビングして、生成物HClを捕捉する。
(B)MMH前駆体を、低いO濃度で、アルゴン下で焼成する。低いO濃度は、反応を穏やかにする。オキシハロゲン化物ガスを苛性物質でスクラビングする。
(C)MMH前駆体を、穏和な条件下で金属アルコキシドに化学的に転化させ、続いてO/アルゴン下で焼成して、MMO触媒を生じさせる。アルコキシド中間体を使用することによって、最終触媒の結晶構造を変えることができる。
【0081】
溶融塩方法から調製されたMMOを、金属酸化物担体を含む担体物質上に調製することができる。溶融塩またはVCl/VOCl中の塩溶液を使用することの一つの利点は、担体物質、たとえばアルミナ、ジルコニア、シリカまたは酸化チタンに含浸させることが比較的容易であり、真珠技術(pearl technique)または逐次搭載(loading)の使用を可能にすることである。溶液中の比較的高い金属濃度によって、担体物質の上への金属搭載を増加させ、ミリ秒接触時間反応のための理想的な触媒を提供することが可能になる。
【0082】
代替的に、担持MMO触媒を調製するための他のアプローチは、懸濁液/スラリーを作るための、塩溶液(溶融塩またはVCl/VOCl溶液)の中への、酸化アルミニウムのような微細に分割された担体物質の添加である。濃縮および焼成の後、調製される最終触媒は、非常に高い表面積を有する担持MMO触媒である。
【0083】
このようにして得られた混合金属酸化物は、それ自体優れた触媒活性を示す。しかしながら、混合金属酸化物は、粉砕することによってより高い活性を有する触媒に転換させることができる。
【0084】
粉砕方法について特別の制限は存在せず、一般的な方法を使用することができる。乾式粉砕方法として、たとえば、粗い粒子を、粉砕のための高速度気体流中でお互いに衝突させる気体流粉砕機を使用する方法を挙げることができる。この粉砕は、機械的に実施することができるのみならず、小規模運転の場合に乳鉢などを使用することによって実施することができる。
【0085】
水または有機溶媒を上記の混合金属酸化物に添加することによって、粉砕を湿潤状態で実施する湿式粉砕方法として、回転円筒型媒体ミルまたは媒体攪拌型ミルを使用する一般的な方法を挙げることができる。回転円筒型媒体ミルは、粉砕すべき対象物のための容器が回転する形式の湿式ミルであり、これには、たとえばボールミルおよびロッドミルが含まれる。媒体攪拌型ミルは、容器内に含まれている粉砕すべき対象物を、攪拌装置によって攪拌する形式の湿式ミルであり、これには、たとえば回転スクリュー型ミルおよび回転ディスク型ミルが含まれる。
【0086】
粉砕するための条件は、上記の混合金属酸化物の性質;湿式粉砕の場合に使用する溶媒の粘度、濃度など;または粉砕装置の最適条件に適合するように適切に設定することができる。しかしながら、粉砕を、粉砕された触媒前駆体の平均粒子サイズが、通常最大20μm、より好ましくは最大5μmになるまで実施することが好ましい。触媒性能における改良を、このような粉砕によってもたらすことができる。
【0087】
更に、幾つかの場合に、溶媒を粉砕した触媒前駆体に更に添加して、溶液またはスラリーを形成し、続いて再び乾燥させることによって、触媒活性を更に改良することが可能である。溶液またはスラリーの濃度について特別の制限は存在せず、粉砕された触媒前駆体のための出発物質化合物の全量が、10〜60重量%となるように、溶液またはスラリーを調節することが普通である。次いで、この溶液またはスラリーを、噴霧乾燥、凍結乾燥、乾固までの蒸発または真空乾燥のような方法によって乾燥させる。更に、湿式粉砕を実施する場合にも、同様の乾燥を実施することができる。
【0088】
上記の方法によって得られた酸化物を、最終触媒として使用することができるが、これを更に、通常200℃〜800℃の温度で0.1〜10時間の熱処理に付すことができる。
【0089】
このようにして得られた混合金属酸化物は、典型的に、それ自体固体触媒として使用されるが、適切な担体、たとえばシリカ、アルミナ、チタニア、アルミノケイ酸塩、珪藻土またはジルコニアと一緒に触媒に形成することができる。更に、これは、リアクターの規模またはシステムに依存する適切な形状および粒子サイズに成形することができる。
【0090】
代替的に、現在意図される触媒の金属成分は、一般的な初期湿潤技術(incipient wetness technique)によって、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアなどのような物質の上に担持させることができる。一つの典型的な方法において、金属を含有する溶液を、乾燥担体と接触させて、担体を濡らし、次いで、得られた湿潤した物質を、たとえば、室温から200℃までの温度で乾燥させ、続いて前記のようにして焼成する。他の方法において、金属溶液を担体と、典型的に3:1(金属溶液:担体)よりも大きい体積比で接触させ、この溶液を、金属イオンが担体の上でイオン交換されるように攪拌する。次いで、金属含有担体を乾燥させ、前記詳述したようにして焼成する。
【0091】
2以上の触媒を含有する触媒系を使用する場合、この触媒は、幾つかの触媒の物理的ブレンドの形態をとることができる。好ましくは、触媒の濃度は、第一触媒成分がリアクター入口で高濃度になる傾向を有し、一方、次の触媒が、リアクター出口の方に伸びている次の帯域内で高濃度になる傾向を有するように、変化させることができる。最も好ましくは、触媒は層状になった床(また、混合床触媒と呼ばれる)を形成し、第一触媒成分はリアクター入口に最も近い層を形成し、次の触媒がリアクター出口への次の層を形成する。層はお互いに隣接するかまたは不活性物質の層またはボイドスペースによってお互いから分離することができる。
【0092】
短接触時間リアクターは、反応体の気体流と接触させて固定触媒床を使用するために適している型のものである。たとえば、1以上の管に触媒(群)が充填され、そうして反応体気体流を管(群)の一端に通過させ、生成物流を管(群)の他端から取り出すことが可能になっている、シェル管型のリアクターを使用することができる。管(群)がシェルの中に配置され、そうして熱移動媒体が管(群)の周りを循環することができるようになっている。
【0093】
単一触媒、複合触媒、触媒系または複合触媒系を利用する場合に、アルカン、分子酸素、ならびに任意の追加の反応体供給物、たとえばこれらに限定されないが、アルケン、酸素、空気、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、ホルムアルデヒドおよびアルコール、スチーム、ならびに任意の希釈剤、たとえば窒素、アルゴンを含む気体流を、管(群)の前端(群)の中に全部一緒に供給することができる。代替的に、アルカンおよび分子酸素含有ガスを管(群)の前端(群)の中に供給し、一方、追加の反応体、スチームおよび希釈剤を、予定された下流の位置(典型的に、管(群)を通過する気体流中に存在する生成物アルケンの一定の最小濃度、たとえば3%、好ましくは5%、最も好ましくは7%を有するように選択される)で、管(群)の中に供給することができる(また、段階化と呼ばれる)。
【0094】
2以上の触媒、たとえば、前記のような第一触媒成分および第二触媒成分を含む触媒系を使用する場合に、再び、アルカン、酸素含有ガス、ならびに任意の追加の反応体供給物、たとえばこれらに限定されないが、アルケン、酸素、空気、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、ホルムアルデヒドおよびアルコール、スチーム、ならびに任意の希釈剤、たとえば窒素、アルゴンを含む気体流を、管(群)の前端(群)に一緒に供給する。代替的に好ましくは、アルカンおよび分子酸素含有ガスを管(群)の前端(群)の中に段階化し、一方、任意の追加の反応体供給物、スチームおよび希釈剤を、予定された下流の位置(典型的に、前記のような管(群)を通過する気体流中に存在する所望の生成物の一定の最小濃度を有するように選択され;または前記のような触媒の層状になった床を使用する場合には、2つの層状になった触媒床の中間)で、管(群)の中に段階化する。
【0095】
分子酸素に加えて、二酸化炭素を、本発明の多段方法における一層穏和な酸化剤として使用することもできる。本発明の一つの利点は、当該技術分野でよく知られている一般的なスチームクラッキング触媒を使用して、スチームに加えてスチームクラッキングの最初の工程でアルカンの小部分を犠牲にすることによって、二酸化炭素を発生させることである。より穏和な酸化剤を提供することに加えて、アルカンをアルケンに転化させることの発熱性は最小になり、これは次いで、これらに限定されないが、CO、アルカンフラグメントおよびアルケンフラグメント、ならびにこれらの組合せを含む、過度の酸化生成物を最小にする。第二の利点は、分子酸素とは違って、二酸化炭素は、気相ラジカル反応を誘発しないことである。このような酸化性カップリング反応は、不均一触媒によって制御されるであろう。結果としておよび代表的態様に従って、メタンは、酸化的にカップリングされて過度の酸化無しにエチレンを提供することができ、同様にメタンおよびエタンを組み合わせて、プロピレンに接触的に転化させることができる。適切な触媒としては、これらに限定されないが、PbO/MgO、ランタニド酸化物、ランタニド酸化物の混合物、CaO/CeO、金属酸化物、第1〜3族酸化物と金属酸化物との組合せ、たとえばCaO/MnO、CaO/Cr、CaO/ZnO、金属酸化物の組合せ、多成分金属酸化物触媒、前記のような担持された金属酸化物、たとえばSiO/Cr、ある種の非金属酸化物、ある種の非酸化物金属、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0096】
別の態様に従って、アルカン、たとえばこれらに限定されないが、たとえばエタン、プロパン、イソブタンおよびブタンは、幾らかの最初のアルカンを部分的に犠牲にして酸化剤としての二酸化炭素を生じさせ、この酸化剤を残りの対応するアルカンと組み合わせることによって、スチームクラッキング方法において二酸化炭素およびスチームを使用してそれらの対応するアルケンに酸化される。前に記載したような本発明の他の利点は、より高い温度でコーキングに至る望まない反応が、最小化され、加えて分子水素を完全に酸化し、酸化をより低い温度で起こし、更にアルカンの過度の酸化を最小にすることである。前記のものに加えて適切な触媒としては、これらに限定されないが、たとえば、金属酸化物触媒、混合金属酸化物触媒、多成分金属酸化物触媒、たとえば前記のような担持された金属酸化物、たとえばK−Cr−Mn/SiO、SiO/CrおよびFe/Mnケイ酸塩、ならびにこれらの組合せが挙げられる。酸化剤としての二酸化炭素の他の利点は、それらのレドックス特性が、望まないラジカル工程を含む接触工程よりも優位であることである。二酸化炭素は、酸化剤として作用する活性酸素種を生成し、二酸化炭素は還元された酸化物を再酸化して連続レドックスサイクルを形成し、二酸化炭素は炭素を酸化してコーキングを減少する。本発明の実施において利用される、対応するアルケンへのアルカンの酸化のための典型的な反応条件には、200℃から700℃まで変化することができるスチームクラッキング反応温度が含まれる。一般的なスチームクラッキングリアクターおよび触媒は、当該技術分野でよく知られており、Journal Energy & Fuels、第18巻、第1126−1139頁、2004年に記載されている。
【0097】
アルケン、たとえばこれらに限定されないが、たとえばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンの、本発明の実施において利用される、アクリル酸またはメタクリル酸、ならびにそれらのそれぞれのエステルへの酸化のための典型的な反応条件は、300℃から1000℃まで変化させることができ、通常火炎温度の範囲(500℃から1000℃まで)内である反応温度;100ミリ秒以下、たとえば80ミリ秒以下、たとえば50ミリ秒以下である、触媒との平均接触時間(即ち、リアクター滞留時間);通常、0〜75psig、たとえば50psig以下の範囲である反応帯域内の圧力が含まれる。
【0098】
本発明は、対応するアルカンから不飽和カルボン酸を調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を組み合わせ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、スチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、ならびに
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて転化させる工程、
(リアクターは、
(1)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有する第一触媒層(第一層の触媒は、金属酸化物担体上に含浸されている)、ならびに
(2)金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する第二触媒層
を含む混合触媒床を含み、
混合床触媒は、気体状アルカンをその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
第二触媒層は、第一触媒層から下流の一定の距離に分離され、
リアクターを、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転し、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターから上流の一定の距離に分離される、多段方法を提供する。
【0099】
別の態様として、本発明は、対応するアルカンから不飽和カルボン酸を調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を組み合わせ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、スチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、ならびに
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて転化させる工程、
(リアクターは、
(1)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有する第一触媒層(第一層の触媒は、金属酸化物担体上に含浸されている)、ならびに
(2)金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する第二触媒層
を含む混合触媒床を含み、
混合床触媒は、気体状アルカンをその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターから上流の一定の距離に分離され、
第一触媒帯域を、リアクターを通過する気体流の流れの方向に対して第二触媒帯域の上流に配置し、
第一触媒帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二触媒帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し、
アルカンの気体流を、一回通過でリアクターに通過させるか、または任意の未反応アルカンをリアクターに入るアルカンの気体流の中に戻し再循環させ、任意の飽和カルボン酸を第二触媒帯域の中に戻し再循環させて、不飽和カルボン酸の総合収率を増加させる多段方法を提供する。
【0100】
プロパンまたはイソブタンおよび分子酸素を含む気体流をリアクターに通過させることが有用である。更に、供給物には、追加の反応体、アジュバント、たとえばスチームまたは希釈剤、たとえば不活性ガス、たとえば窒素、アルゴンまたは穏和な酸化剤、たとえば二酸化炭素を含有することができる。
【0101】
別の態様において、アルカンまたはアルケンの気体流を、一回通過でそのそれぞれのSCRまたはSCTRに通過させるか、または任意の未反応アルカンまたはアルケンをそのそれぞれのSCTRに入るアルケンの気体流の中に戻し再循環させ、任意の飽和カルボン酸を第二触媒帯域の中に戻し再循環させて、不飽和カルボン酸の総合収率を増加させる。
【0102】
本発明は、また、(a)アルカンを、1以上のスチームクラッキング触媒を使用して、その対応するアルケンに累積的に転化させる工程、(b)この対応するアルケンを、短接触時間リアクター内で、本発明の触媒系を使用して、不飽和カルボン酸およびより高級の類似体不飽和カルボン酸から選択される更なる対応する酸素化された生成物に接触的に転化させる工程、ならびに(c)得られた生成物または生成物群を、第二リアクターへの供給物として作用する第一リアクターからの生成物(群)と共に、第二固定床酸化リアクターの前端に添加する工程を含む、多段方法を提供する。たとえば、プロパンを最初にスチームクラッキングし、接触的にプロピレンに転化させ、プロピレンを、短接触時間リアクター内の触媒系を使用して対応する酸素化物に更に接触的に転化させる。プロピレンを、それをアクリル酸に転化させる第二酸化リアクターに供給する。一つの態様に従って、これには、第一リアクターからの任意の未反応アルカンおよび第二リアクターからの任意の未反応アルケンを、それぞれのアルカンおよびアルケンを再循環するために供給することが含まれる。たとえば、任意の未反応プロパンを、第一スチームクラッキングリアクター若しくはSCRに再循環し、または任意に、供給物として第二酸化リアクターに添加する。第二酸化リアクターには、より長い滞留時間(秒)でアルケンを不飽和カルボン酸に転化させるために使用される、任意の一般的な工業的規模の酸化リアクターが含まれる。代替的に、第二酸化リアクターには、ミリ秒滞留時間で運転する第二SCTRが含まれる。
【0103】
任意の分子酸素の源、たとえば、酸素、酸素富化ガスまたは空気を、この方法で使用することができる。特に任意の再循環が存在しない場合に、空気が最も経済的な酸素の源でありうる。
【0104】
代替的に、金属酸化物触媒成分または第二触媒層は、下記のものを含むことができる。
【0105】
(A)実験式:
Mo
(式中、Mは、TeおよびSbからなる群から選択され、
Nは、Nb、Ta、W、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、B、In、As、Ge、Sn、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、HfおよびPからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
a、b、c、dおよびeは、元素の相対的原子量を表し、a=1のとき、b=0.01〜1.0、c=0.01〜1.0、d=0.01〜1.0、かつeは酸素以外の元素の酸化状態に依存する)
を有する混合金属酸化物触媒。
火炎温度で、混合金属酸化物触媒の、MoおよびTeを含むある種の金属成分は揮発して、異なる混合金属酸化物触媒、金属間触媒およびそれらの複合触媒を残す。
【0106】
(B)実験式:
MoSb
(式中、a、bおよびcは、元素の相対的原子量を表し、a=1のとき、b=0.01〜1.0、かつcは酸素以外の元素の酸化状態に依存する)
を有する混合金属酸化物を含む触媒。
火炎温度で、混合金属酸化物触媒のある種の金属成分は揮発して、異なる混合金属酸化物触媒、金属間触媒およびそれらの複合触媒を残す。
【0107】
(C)実験式:
MoSbBi
(式中、a、b、cおよびdは、元素の相対的原子量を表し、a=1のとき、b=0.01〜1.0、c=0.01〜1.0、かつdは酸素以外の元素の酸化状態に依存する)
を有する混合金属酸化物を含む触媒。
火炎温度で、混合金属酸化物触媒のある種の金属成分は揮発して、異なる混合金属酸化物触媒、金属間触媒およびそれらの複合触媒を残す。
【0108】
代替的に、触媒は、触媒(A)、(B)および(C)の組合せを含むことができる。
【0109】
更に他の代替の酸化触媒には、
(a)元素の周期表の第1B族から選択される少なくとも1つの元素プラス酸化ビスマスアセテート(bismuth oxide acetate)で促進された、元素の周期表の第5B族、第6B族、第7B族および第8族からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む担持触媒または
(b)ルテニウムを含む触媒または
(c)担体上にPbおよびBiを含む触媒または
(d)Pd、ならびに元素の周期表の第3A族、第4A族、第5A族および第6B族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、ならびに元素の周期表の第3B族および第4B族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む担持触媒または
(e)Pdおよび元素の周期表の第1B族の少なくとも1つの元素を含む担持触媒または
(f)PdおよびPbを含む担持触媒または
(g)Pd、ならびにBa、Au、La、Nb、Ce、Zn、Pb、Ca、Sb、K、Cd、VおよびTeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む担持触媒または
(h)これらの組合せ
を含むことができる。
【0110】
他の代替の触媒には、Mo、V、Nbおよび/またはTaを含有するリン酸塩触媒が含まれる。(特開平06−199731 A2号参照)。更に他の代替の触媒には、米国特許第3,825,600号、米国特許第3,649,930号および米国特許第4,339,355号に開示されているもののような、任意のよく知られているモリブデン、ビスマス、鉄系の混合金属酸化物が含まれる。
【0111】
本発明は、不飽和カルボン酸のエステルを製造する多段方法であって、当該方法は以下の行程:
(a)気体状アルカンの5〜30重量%および化学量論的量の分子酸素を組み合わせ、アルカンを、二酸化炭素およびスチームの形態の水蒸気に完全に酸化する工程、
(b)スチームおよびアルカンの残りの量を、スチームおよび二酸化炭素と組み合わせ、それを1以上のスチームクラッキング触媒と接触させる工程、ならびに
(c)(b)から発生した対応するアルケンおよび分子酸素を、短接触時間リアクターにおいて転化させる工程、
(リアクターは、
(1)(i)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(ii)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組合せを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を、(iii)金属Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、これらの二成分組合せ、これらの三成分組合せおよびこれらのより高次の組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせてまたは組み合わせずに、含有する第一触媒層(第一層の触媒は、金属酸化物担体上に含浸されている)、ならびに
(2)金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する第二触媒層
を含む混合触媒床を含み、
混合床触媒は、気体状アルカンをその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効である)
を含み、
1以上のクラッキング触媒は、短接触時間リアクターから上流の一定の距離に分離され、
第二触媒層は、第一触媒層から下流の一定の距離に分離され、
リアクターを、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転する多段方法を提供する。
【0112】
一つの態様に従って、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する追加の触媒層が、第一層と第二層との間に含有され、この触媒追加層は、気体状飽和カルボン酸をその対応する気体状不飽和カルボン酸に転化させる際に累積的に有効であり、その後不飽和カルボン酸を、アルコールの存在下でその対応するエステルに接触的に転化させる。
【0113】
本発明は、また、アルカンをそれらの対応する不飽和カルボン酸のエステルに累積的に転化させる多段方法であって、リアクターは、アルカンをその対応する不飽和カルボン酸とアルコールのエステルに転化させるために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含有し、1以上の酸化触媒は、アルカンをその対応する不飽和カルボン酸に転化させるために有効な第一触媒系およびエチレン性不飽和カルボン酸を、アルコールの存在下で、その対応するエチレン性不飽和カルボン酸とアルコールのエステルに転化させるために有効な第二触媒を含み、
第一触媒を第一反応帯域内に配置し、
第二触媒を第二反応帯域内に配置し、
第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し、
第二気体流を、第一反応帯域と第二反応帯域との中間でリアクターに供給し、
第一反応帯域を、500℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し、
第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転する多段方法を提供する。
【0114】
更に他の態様に従って、アルカンをそれらの対応するより高級の不飽和カルボン酸に接触的に、かつ累積的に転化させ、次いでこれらを特定のアルコールの存在下でそれらの対応するエステルに接触的に転化させるための多段方法が提供される。
【0115】
本発明の多段触媒系を使用して、エチレン性不飽和カルボン酸およびそれらのより高級の類似体のエステルを調製する際に、プロパンまたはイソブタンおよび分子酸素を含む第一気体流をSCRに通過させて、二酸化炭素を発生させ、さらに残りのアルカンを対応するアルケンであるプロピレンおよびイソブチレンに酸化し、対応するアルケンを1以上の酸化触媒を有するSCTRに通過させて、アルケンを対応する不飽和カルボン酸に累積的に転化させ、アルコールを含む第二気体流をリアクターに別に通過させることが有用である。更に、この供給物は、追加の反応体、アジュバント、たとえばスチームまたは希釈剤、たとえば不活性ガス、たとえば窒素、アルゴンまたは追加の酸化剤、たとえば二酸化炭素を含有することができる。追加の反応体供給物としては、これらに限定されないが、アルケン、酸素、空気、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびホルムアルデヒドが挙げられる。
【0116】
プロパンまたはイソブタンおよび分子酸素を含む第一気体流をSCRに通過させ、次いで対応するアルケン気体流をSCTRに通過させ、さらにアルコールおよび任意の追加の供給物を含む第二気体流をSCTRに別に通過させることが有用である。更に、この供給物は、アジュバント、たとえばスチームまたは希釈剤、たとえば不活性ガス、たとえば窒素、アルゴンまたは二酸化炭素を含有することができる。
【0117】
分子酸素または他の穏和な酸化剤、たとえば二酸化炭素の任意の源、たとえば、酸素、酸素富化ガスまたは空気を、この方法で使用することができる。特に任意の再循環が存在しない場合に、空気が最も経済的な酸素の源でありうる。
【0118】
代替の第一触媒は、実験式:
Mo
(式中、Mは、TeおよびSbからなる群から選択される元素であり、
Nは、Nb、Ta、W、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、B、In、As、Ge、Sn、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、HfおよびPからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
Qは、元素の周期表の第8族から選択される少なくとも1つの元素であり、
Xは、PbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
a、b、c、d、e、fおよびgは、元素の相対的原子量を表し、a=1のとき、b=0.01〜1.0、c=0.01〜1.0、d=0.01〜1.0、e=0.001〜0.1、f=0.001〜0.1、かつgは酸素以外の元素の酸化状態に依存する)
を有する混合金属酸化物を含むことができる。
火炎温度で、混合金属酸化物触媒の、MoおよびTeを含むある種の金属成分は揮発して、異なる混合金属酸化物触媒、金属間触媒およびそれらの複合触媒を残す。
【0119】
他の代替の第一触媒には、Mo、V、Nbおよび/またはTaを含有するリン酸塩触媒が含まれる。(特開平06−199731 A2号参照)。
【0120】
更に他の代替の第一触媒には、式PMoBi(式中、Xは、As、Sb、Si、B、GeまたはTeであり、Yは、K、Cs、RbまたはTlであり、Zは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Ga、In、Sn、Zn、Ce、YまたはWであり、a、b、c、d、e、f、gおよびhは、元素の相対的原子量を表し、b=12のとき、0<a≦3、c=0〜3、0<d≦3、0<e≦3、f=0〜3、g=0〜3、かつhは他の元素の酸化状態に依存する)を有する混合金属酸化物があげられる。(特開平09−020700 A2号参照)。
【0121】
他の代替の混合金属酸化物触媒が有用に使用され、本明細書において前に記載されている。
【0122】
第二触媒は、エチレン性不飽和カルボン酸の、その対応するエステルへの転化を触媒するのに有用である。
【0123】
第二触媒には超酸が含まれる。超酸は、Gillespieの定義に従うと、100%硫酸よりも強い酸である。即ち、これは、ハメット酸度値H0<−12を有する。代表的超酸には、これらに限定されないが、ゼオライト担持された、TiO/(SO、(SO/ZrO−TiO、(SO/ZrO−Dy、(SO/TiO、(SO/ZrO−NiO、SO/ZrO、SO/ZrO−Al、(SO/Fe、(SO/ZrO、CSOH−SbF、CFSOH−SbF、Pt/硫酸化した酸化ジルコニウム、HSOF−SOClF、SbF−HSOF−SOClF、MF/AlF(M=Ta、Nb、Sb)、B(OSOCF、B(OSOCF−CFSOH、SbF−SiO−Al、SbF−TiO−SiOおよびSbF−TiOが挙げられる。好ましくは、固体超酸、たとえば、硫酸化した酸化物、担持されたルイス酸および担持された液体超酸が使用される。ZrO、TiO、HfO、FeおよびSnOを含む、小数の酸化物のみが、硫酸化において超酸部位を作る。この酸部位は、これらの元素の無定形オキシ水和物(oxyhydrate)をHSOまたは(NHSOで処理し、生成物を500℃〜650℃の温度で焼成することによって生成される。焼成の間に、酸化物は結晶性正方晶相に転換され、これは小数の硫酸塩基によって覆われる。酸化物を活性化するために、HMoOまたはHWOを使用することもできる。
【0124】
更に他の代替の触媒には、米国特許第3,825,600号、米国特許第3,649,930号および米国特許第4,339,355号に開示されているもののような、任意のよく知られているモリブデン、ビスマス、鉄系の混合金属酸化物が含まれる。
【0125】
別の態様において、不飽和カルボン酸のエステルを調製する多段方法であって、当該方法は以下の行程:アルカンおよび分子酸素を含む第一気体流をリアクターに通過させる工程、アルコールを含む第二気体流をリアクターに通過させる工程(リアクターは、アルカンの、その対応する不飽和カルボン酸とアルコールのエステルへの酸化のために累積的に有効な1以上の酸化触媒を含む)を含み;1以上の酸化触媒は、アルカンのその対応するアルケンへの酸化のために有効な第一触媒、アルケンのその対応する不飽和アルデヒドへの酸化のために有効な第二触媒、および不飽和アルデヒドの、アルコールの存在下で、その対応する不飽和カルボン酸とアルコールのエステルへの酸化のために有効な第三触媒を含み;第一触媒を第一反応帯域内に配置し;第二触媒を第二反応帯域内に配置し;第三触媒を第三反応帯域内に配置し;第一反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第二反応帯域の上流に配置し;第二反応帯域を、リアクターを通過する第一気体流の流れの方向に対して第三反応帯域の上流に配置し;第二気体流を、第二反応帯域と第三反応帯域との中間でリアクターに供給し;第一反応帯域を、500℃〜900℃の温度で、100ミリ秒以下の第一反応帯域滞留時間で運転し;第二反応帯域を、300℃〜400℃の温度で、100ミリ秒以下の第二反応帯域滞留時間で運転し;第三反応帯域を、100℃〜300℃の温度で、100ミリ秒以下の第三反応帯域滞留時間で運転する多段方法が提供される。
【0126】
本発明のこの面において、プロパンまたはイソブタンおよび分子酸素を含む第一気体流をSCRに通過させ、対応するアルケン気体流をSCTRに通過させ、さらにアルコールを含む第二気体流をSCTRに別に通過させることが有用である。更に、この供給物は、アジュバント、たとえばスチームまたは希釈剤、たとえば不活性ガス、たとえば窒素、アルゴンまたは二酸化炭素を含む追加の酸化剤を含有することができる。
【0127】
分子酸素または穏和な酸化剤、たとえば二酸化炭素の任意の源、たとえば、酸素、酸素富化ガスまたは空気を、この方法で使用することができる。特に任意の再循環が存在しない場合に、空気が最も経済的な酸素の源でありうる。
【0128】
適切な触媒は、前記のそれぞれの触媒から選択される。代替の触媒成分は、元素の周期表の第8族から選択される金属によって促進され、三次元担体構造物上に担持された還元性金属酸化物を含むことができる。
【0129】
担体構造物は、三次元であり、即ち、デカルト座標系のx、yおよびz直交軸に沿った寸法を有し、単位体積当たり比較的高い表面積を与える。より低い量およびより高い量が可能であるが、一つの態様において、担体構造物は、0.01〜50m/g、好ましくは0.1〜10m/gの表面積を示す。
【0130】
好ましくは、担体構造物は、多孔質構造を有し、1〜95%、より好ましくは5〜80%、なおより好ましくは10〜50%の範囲内の細孔体積パーセントを示すであろう。従って、この担体構造物は、実質的に圧力低下を伴わずに比較的高い供給速度を可能にする。
【0131】
更に、この担体構造物は、十分に強く、触媒の重量下で破壊せず、触媒の重量は触媒と担体構造物との組合せの重量の殆ど100%までの範囲となることができる。しかしながら、より好ましくは、担体構造物は、この組合せの重量の少なくとも60%である。なおより好ましくは、これはこの組合せの重量の70〜99.99%である。更になおより好ましくは、担体構造物は、この組合せの重量の90〜99.9%である。
【0132】
担体構造物の実際の物理的形状は、それが上記の一般的規準に適合する限り、特に重要ではない。適切な物理的形状の例としては、フォーム、ハニカム、格子、メッシュ、モノリス、織布、不織布、ガーゼ、穿孔された支持体(たとえば、箔)、粒子コンパクト、繊維状マットおよびこれらの混合物が含まれる。これらの担体について、典型的に1以上の開口セルがこの構造物内に含まれることが認められるであろう。セルサイズ、ならびにセル密度、セル表面積、開口前面面積および他の対応する寸法は、所望により変えることができる。たとえば、一つのこのような構造物は、少なくとも75%の開口前面面積を有する。セル形状も変えることができ、これには、多角形状、円形、楕円形およびその他の形状を含むことができる。
【0133】
担体構造物は、この接触反応の反応環境に対して不活性である物質から製作することができる。適切な物質には、セラミックス、たとえば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、ジルコニア、チタニア、ボリア、ムライト、ケイ酸アルミニウムリチウム、オキシド結合炭化ケイ素およびこれらの混合物が含まれる。(代替的に、触媒を、たとえば、「グリーン」圧縮または他の適切な技術によって、担体構造物自体を規定するように製造することができる。)
【0134】
この触媒は、任意の適切な技術開示された技術を使用して、担体構造物に適用することができる。たとえば、触媒を、(たとえば、スパッタリング、プラズマ蒸着または蒸着の幾つかの他の形態により)蒸着させることができる。触媒は、(たとえば、担体を、触媒の溶液、スラリー、懸濁液または分散液で洗浄被覆することにより)その上に被覆することができる。担体を、触媒粉末で被覆することができる(即ち、粉末被覆)。(代替的に、担体構造物が触媒自体である場合、触媒の「グリーン」体を圧縮して、所望の構造物を得ることができる。)
【0135】
適切な第一触媒は、前記の触媒から選択することができる。代替の第一触媒は、また、前記の触媒から選択することができる。代替の第一触媒は、二成分、三成分、四成分またはより高次の金属酸化物であってよい。この還元性金属酸化物は、Cu、Cr、V、Mn、Nb、Mo、W、Re、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Te、As、Se、Zn、Y、Zr、Ta、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物であってよい。好ましくは、この還元性金属酸化物は、Cu、Cr、V、Mn、Znおよびこれらの混合物からなる群から選択される。プロモータは、元素の周期表の第8族(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPt)からの金属、好ましくは、Pt、Pd、Rh、Ir、Ruおよびこれらの混合物からなる群から選択される金属である。プロモータは、好ましくは、触媒組成物(プロモータプラス還元性金属酸化物)の0.0001〜10重量%、より好ましくは触媒組成物の0.001〜5重量%、なおより好ましくは触媒組成物の0.01〜2重量%の量で存在することができる。
【0136】
適切な第二触媒は、前記の触媒から選択される。代替の第二触媒には、米国特許第3,825,600号、米国特許第3,649,930号および米国特許第4,339,355号に開示されているもののような、任意のよく知られたモリブデン、ビスマス、鉄系の混合金属酸化物を含むことができる。
【0137】
適切な第三触媒は、前記の触媒から選択される。第三触媒には超酸が含まれる。超酸は、Gillespieの定義に従うと、100%硫酸よりも強い酸である。即ち、これは、ハメット酸度値H0<−12を有する。代表的超酸には、これらに限定されないが、ゼオライト担持された、TiO/(SO、(SO/ZrO−TiO、(SO/ZrO−Dy、(SO/TiO、(SO/ZrO−NiO、SO/ZrO、SO/ZrO−Al、(SO/Fe、(SO/ZrO、CSOH−SbF、CFSOH−SbF、Pt/硫酸化した酸化ジルコニウム、HSOF−SOClF、SbF−HSOF−SOClF、MF/AlF(M=Ta、Nb、Sb)、B(OSOCF、B(OSOCF−CFSOH、SbF−SiO−Al、SbF−TiO−SiOおよびSbF−TiOが含まれる。好ましくは、固体超酸、たとえば、硫酸化した酸化物、担持されたルイス酸および担持された液体超酸が使用される。ZrO、TiO、HfO、FeおよびSnOを含む、小数の酸化物のみが、硫酸化において超酸部位を作る。この酸部位は、これらの元素の無定形オキシ水和物をHSOまたは(NHSOで処理し、生成物を500℃〜650℃の温度で焼成することによって生成される。焼成の間に、酸化物は結晶性正方晶相に転換され、これは小数の硫酸塩基によって覆われる。酸化物を活性化するために、HMoOまたはHWOを使用することもできる。
【0138】
本発明の更に別の態様において、不飽和カルボン酸のエステルの製造方法であって、方法が、不飽和アルデヒドをアルコールと反応させて、アセタールを生成する工程、このようにして生成されたアセタールおよび分子酸素を含む気体流をリアクターに通過させる工程(リアクターは、このアセタールのその対応するエステルへの酸化のために有効な少なくとも1つの触媒を含む)を含み、リアクターを、300℃〜1000℃の温度で、100ミリ秒以下のリアクター滞留時間で運転する製造方法が提供される。
【0139】
本発明の別の態様において、アルコールを不飽和アルデヒドと反応させて、アセタールを生成する。このような反応は、アルデヒドを、過剰の無水アルコールと、少量の無水酸、たとえば無水HClの存在下で接触させることによって実施することができる。好ましくは、アルデヒドおよびアルコールを、酸触媒を含有する床、たとえば、Amberlyst 15のような強酸性イオン交換樹脂の床に通過させることができる。
【0140】
このようにして生成されたアセタールおよび分子酸素を、アセタールのその対応するエステルへの酸化のために有効な少なくとも1つの触媒を含有するリアクターに供給する。このような触媒の例としては、アルミナまたはV酸化物上のPdおよびBiが挙げられる。
【0141】
本発明のこの面において、分子酸素の任意の源、たとえば、酸素、酸素富化ガスまたは空気を、この方法で使用することができる。特に任意の再循環が存在しない場合に、空気が最も経済的な酸素の源でありうる。
【0142】
本発明のこの面の別の態様において、不飽和アルデヒドは、アルカンのその対応する不飽和アルデヒドへの酸化によって生成される。この酸化は、アルミナまたはV酸化物上のPdおよびBiのような触媒の存在下での、アルカンの蒸気相酸化として実施することができる。
【実施例】
【0143】
比較例1
アルミナフォーム上に洗浄被覆されたMo上に含浸させたPt
【0144】
70℃で水中に対応する塩を溶解させることによって形成した、ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物(1.0M Mo)、メタバナジン酸アンモニウム(0.3M V)およびテルル酸(0.23M Te)を含有する水溶液(200mL)を、2000mLのロータリーエバポレーター用フラスコに添加した。次いで、200mLの、シュウ酸アンモニウムニオブ(0.17M Nb)、シュウ酸(0.155M)、硝酸パラジウム水和物(0.01M Pd)および硝酸(0.24M HNO)の水溶液を、それに添加した。50℃および28mmHgで温水浴付きロータリーエバポレーターにより水を除去した後、固体物質を、真空オーブン内で25℃で一晩更に乾燥させ、次いで焼成した。(焼成は、固体物質を空気雰囲気内に置き、次いでこれを275℃まで10℃/分で加熱し、これを空気雰囲気下で275℃で1時間保持することによって実施した。次いで、雰囲気をアルゴンに変え、この物質を275℃から600℃まで2℃/分で加熱し、この物質を、アルゴン雰囲気下で600℃で2時間保持した)。最終触媒は、Mo1.00.3Te0.23Nb0.17Pd0.01の名目組成を有していた。この触媒の30gを粉砕し、水中の30%シュウ酸の溶液100mLに添加した。得られた懸濁液を、Parrリアクター内で125℃で5時間攪拌し、次いで固体を重力濾過によって集め、真空オーブン内で一晩25℃で乾燥させた。
【0145】
≦75ミクロンのサイズの上記からの乾燥した物質を、白金酸の水溶液で初期湿潤法により含浸させて、Moに対して0.01モルのPtの含有量にした。過剰の水を、50℃の温度および28mmHgの圧力でロータリーエバポレーターにより除去し、次いで石英管内で600℃で100cc/分のAr流下で2時間焼成した。得られた物質を粉砕して、≦75ミクロンのサイズにし、アセトン中に懸濁させ(1g/10cc)、30分間超音波処理した。45ppiのα−アルミナフォーム(直径12mmおよび厚さ0.5cmの寸法のベスビウス・ハイテク(Vesuvius Hi−Tech))を、洗浄被覆したフォームについて更なる重量増加が観察されなくなるまで数回、攪拌した触媒/アセトン懸濁液の中に浸漬し、次いで室温でN下で乾燥させた。フォームの交互の側を、洗浄被覆の各サイクルについて揃えて、フォームの細孔の目詰まりを防止した。得られた洗浄被覆したフォームは0.112gの重量であり、20重量%の触媒からなっていた。
【0146】
比較例2
α−アルミナフォームモノリス上に担持させたPt/In酸化物
【0147】
α−Alフォームモノリス(1インチ当たり45個の細孔)を、2組の触媒の製造における担体として使用した。第一組には、表1で特定したような分類した比の白金およびインジウム酸化物で製造した6種の触媒が含まれている。8%HPtCI(白金酸)の5つの水溶液に、種々の量のIn(NO・5HOを添加して、表1で特定した白金:ニオブ比を有する混合物を生じさせた。これらの混合物を、均一な溶液が得られるまで(約30分間)、40℃で攪拌しながら保持した。この5つの混合物のそれぞれに、3つのモノリスを添加した。この触媒調製は、モノリスを対応する溶液中に、環境温度で1時間浸漬し、続いて乾燥工程(100℃、1時間、N)および最後に焼成工程(600℃、4時間、空気)によって実施した。この方法を2回繰り返した(「pearl」手順)。上記シリーズからの1種の触媒(Pt:In=1:1.78)を、異なる方法である「逐次的被覆方法」によって調製した。この手順において、モノリスを最初に硝酸インジウム溶液で1時間処理し、続いて上記の乾燥工程および焼成工程を行った。これに続いて、白金被覆工程を行った。重量およびパーセント金属搭載量を、表1に要約する。
【0148】
【表1】

【0149】
比較例3
α−アルミナフォームモノリス上に担持させたPt/Nb酸化物
【0150】
α−Alフォームモノリス(1インチ当たり45個の細孔)を、2組の触媒の製造における担体として使用した。第一組には、表2で特定したような分類した比の白金およびニオブ酸化物で調製した6種の触媒が含まれている。8%HPtCI(白金酸)の5つの水溶液に、種々の量のシュウ酸アンモニウムニオブ(0.17M Nb)を添加して、表2で特定した白金:ニオブ比を有する混合物を生じさせた。これらの混合物を、均一な溶液が得られるまで(約30分間)、40℃で攪拌しながら保持した。この5つの混合物のそれぞれに、3つのモノリスを添加した。この触媒調製は、モノリスを対応する溶液中に、環境温度で1時間浸漬し、続いて乾燥工程(100℃、1時間、N)および最後に焼成工程(600℃、4時間、空気)によって実施した。この方法を2回繰り返した(「pearl」手順)。この結果を表2に要約する。
【0151】
【表2】

【0152】
比較例4
α−アルミナフォームモノリス上に担持させたPt/Nb/V酸化物
【0153】
α−Alフォームモノリス(1インチ当たり45個の細孔)を、Pd−Nb−V触媒の製造における担体として使用した。8%Pd(硝酸パラジウム水和物)、2%In(硝酸インジウム水和物)、0.4%V(メタバナジン酸アンモニウム)、シュウ酸(5重量%)から製造した溶液を、攪拌しながら40℃で保持した。濃硝酸を添加して、2.0pHの均一溶液を生じさせた。触媒調製は、モノリスを対応する溶液中に、環境温度で1時間浸漬し、続いて乾燥工程(100℃、1時間、N)および最後に焼成工程(600℃、4時間、空気)によって実施した。この方法を2回繰り返して、4.7%搭載になった。
【0154】
本発明の短接触時間リアクター(SCTR)内でこれらの触媒系を使用する、プロパン転化についての比較リアクターデータを、表3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
表4に、混合金属酸化物触媒および触媒系を調製するための溶融塩方法の物理的特性を要約する。
【0157】
【表4】

【0158】
多段触媒系実施例1
第一触媒は、プロパンを燃料として、分子酸素と共に使用して、穏和な酸化剤である二酸化炭素およびスチームを発生させ、短接触時間でのプロパンのプロピレンへの転化の温度を低下させる。燃料として犠牲になり、二酸化炭素を発生するためのプロパンの量は、プロパンのプロピレンへの接触脱水素化である第二接触段階のために必要な熱量を発生するために十分なもの(5〜30重量%)である。代表的第一触媒には、ガーゼ、メッシュ、ワイヤおよびこれらの組合せの形態での、第8族、Pt、Rh、Pd、Irから選択される金属が含まれる。この触媒は担持されていないかまたはシリカ、アルミナ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩およびゼオライトから選択される、フォーム、モノリス、被覆されたチャンネルまたはマイクロリアクターを含む三次元構造物の上に担持されている。この反応は、ミリ秒のオーダーの接触時間で、700℃よりも高い温度で実施される。
【0159】
全プロパン酸化から発生した発熱は、スチームクラッキング条件下でのプロパンのプロピレンへの吸熱脱水素化のための熱を提供するために使用される。更に、発生した任意の水素は、アルカンのその対応するアルケンへの転化のための燃料として使用される。本発明の他の利点は、L.Schmidtらによって報告されたC2転化での研究と一致する、転化における燃料としての水素の使用による。スチームクラッキング触媒には、そのクラッキング効率を最適化するためにイオン交換されたまたは枠組み置換された活性化ゼオライト、ZSM−5が含まれる。スーパーフレックス(Superflex)技術において、ZSM−5の中にリンを含有させることによって、秒のオーダーの滞留時間でFCC性能が改良されたことが報告されている。この反応は、短接触時間および500℃よりも高い温度下で実施される。短接触時間からの排出物は、選択的酸化のための第三段階または触媒構造物に向けられる。この段階で、追加のスチームを含む、空気、酸素、二酸化炭素および亜酸化窒素から選択される1以上の追加の酸化剤を添加することも有用である。製造された有用なまたは望ましい酸素化物には、アクリル酸、アクロレイン、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルが含まれる。エステルは、アルコールのための追加の段階化を必要とし、より高級の類似体は、また、適切な追加の段階化を必要とする。選択的酸化は、300℃よりも高い温度で実施される。混合金属酸化物触媒が有用である。
【0160】
多段触媒は、記載されたような適切な触媒段階化と連続して、管型リアクター内に設置される。追加の熱を、有用な転化収率を達成するために必要な場合、第二および第三段階触媒帯域に供給することができる。最適化されたエネルギーバランスのために熱的に統合された統合触媒帯域を、また有用に使用することができる。構造物には、Fe−Cr−Al酸化物の合金を含む、有効な熱交換物質を含むことができる。触媒をアルミナモノリスの上に担持させることができる。他の種類の段階化触媒を有用に使用することもできる。
【0161】
多段触媒系実施例2
Pt/Na−[Fe]−ZSM−5型を使用して、短接触時間で、イソブタンをメタクリル酸に接触的に転化させた。この触媒は、L.Schmidtらによって、一般的な酸化的脱水素化におけるプロパンのプロピレンへの転化において、高い選択率を示すことが示されている。低レベルのPtの添加は、この触媒を、SCTRにおける火炎温度のために適切にするであろう。ZSM−5の中にリンを含有させることによって、一定のアルカン転化で、選択率および収率が更に改良されると期待される。この排出気体流を、選択的酸化のための第二触媒帯域に向ける。この段階で、酸化された水素の形での追加のスチームおよび燃料を含む、空気、酸素、二酸化炭素および亜酸化窒素から選択される1以上の追加の酸化剤を添加することも有用である。更に、発生した任意の水素は、アルカンのその対応するアルケンへの転化のための燃料として使用される。本発明の他の利点は、L.Schmidtらによって報告されたC2転化での研究と一致する、転化における燃料としての水素の使用からである。製造された有用なまたは望ましい酸素化物には、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルが含まれる。エステルは、アルコールのための追加の段階化を必要とし、より高級の類似体は、また、適切な追加の段階化を必要とする。選択的酸化は、300℃よりも高い温度で実施される。混合金属酸化物触媒が有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−Cアルケンを対応するC−Cアルカンから調製するための多段方法であって、
(a)5〜30重量%のC−Cアルカンと化学量論的量の分子酸素とを組み合わせ、前記アルカンを完全に酸化して、二酸化炭素、水蒸気および未反応アルカンを生成する工程、
(b)前記二酸化炭素、水蒸気および未反応アルカンを組み合わせて、複合供給物流を形成する工程、および
(c)700℃〜1000℃の温度および100ミリ秒以下の滞留時間で、前記複合供給物流を1以上のスチームクラッキング触媒と接触させて、対応するC−Cアルケンを生成する工程を含む多段方法。
【請求項2】
前記1以上のスチームクラッキング触媒が、C−Cアルカンをそれに対応するC−Cアルケンに転化させる際に累積的に有効である触媒系を含み、かつ(1)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、これらの合金およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属、ならびに(2)金属Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、第1〜3族金属、ランタニド金属およびこれらの組み合わせを含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1つの調節剤を含む請求項1記載の多段方法。
【請求項3】
前記1以上のスチームクラッキング触媒が、(3)Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Znおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物をさらに含む請求項2記載の多段方法。
【請求項4】
−Cアルカンをそれらの対応するC−C酸素化物に累積的に転化するための多段方法であって、
(A)C−Cアルケンを対応するC−Cアルカンから調製するための請求項1記載の多段方法を実行して、対応するC−Cアルケンを生成する工程、および
(B)前記対応するC−Cアルケンを、金属Mo、Fe、P、Vおよびこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの金属酸化物を含有する少なくとも1つの選択的酸化触媒と接触させて、カルボン酸およびそのエステルからなる群から選択される少なくとも1つの対応するC−C酸素化物を生成する工程を含む多段方法。
【請求項5】
前記選択的酸化触媒が、クラッキング触媒から下流に一定の距離を置いて分離されている請求項4記載の多段方法。

【公開番号】特開2009−67808(P2009−67808A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−283785(P2008−283785)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【分割の表示】特願2005−332699(P2005−332699)の分割
【原出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】