説明

多気筒エンジンのEGR装置

【課題】EGRクーラに関連する構造の簡素化がはかれる多気筒エンジンのEGR装置を提供する。
【解決手段】排気脈動圧を利用してEGRガスを吸気通路20に還流させる多気筒エンジン1のEGR装置60であって、冷媒が流れる冷媒流路97を画成するクーラハウジング74と、このクーラハウジング74内に並列に配置される複数の冷却管73と、を備え、この冷却管73が第一、第二のEGR支流通路61、62によって取り出されるEGRガスをそれぞれ同一方向に導く第一、第二のEGR冷却流路71、72を画成し、この第一、第二のEGR冷却流路71、72を通過したEGRガスを合流させるクーラ出口ジャンクション63とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気脈動圧を利用してEGRガスを還流させる多気筒エンジンのEGR装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された多気筒エンジンのEGR装置は、着火順序が互いに連続しない気筒群からの排気をそれぞれ集める二つの排気マニホールドと、各排気マニホールドからそれぞれEGRガスを取り出して吸気通路へと導く二つのEGR通路と、各EGR通路によって導かれるEGRガスが逆流することを止める二つの逆止弁(リードバルブ)とを備え、過給器の作動により排気圧力より吸気圧力の方が高くなる高負荷運転状態でも二つのEGR通路に伝播する排気脈動圧を利用して逆止弁が開弁し、EGRガスを各気筒に還流させるようになっている。
【0003】
このEGR装置は、二つのEGR通路を集合する合流部を備え、この合流部に各EGR通路によって導かれるEGRガスが逆流することを止める逆止弁(リードバルブ)が介装される。
【0004】
特許文献2に開示された多気筒エンジンのEGR装置は、EGRガスを冷却するEGRクーラを備える。このEGRクーラは、冷媒が流れる冷媒流路を画成する二つのクーラハウジングと、各クーラハウジング内に並列に配置される複数の冷却管と、各冷却管を通過したEGRガスがそれぞれ逆流することを止める二つ逆止弁とを備え、二つのEGR通路によって取り出されるEGRガスが各クーラハウジング内の冷却管を通って冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−215983号公報
【特許文献2】特開2007−327382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、排気脈動圧を利用してEGRガスを吸気通路に還流させる多気筒エンジンのEGR装置にあって、二つの逆止弁の上流側に二つのクーラハウジングがそれぞれ設置されると、二つのクーラハウジングに関連して構造が複雑化し、製品の大型化とコストアップを招くという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、EGRクーラに関連する構造の簡素化がはかれる多気筒エンジンのEGR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排気脈動圧を利用してEGRガスを吸気通路に還流させる多気筒エンジンのEGR装置であって、着火順序が互いに連続しない気筒群からの排気をそれぞれ集める第一、第二の排気マニホールドからそれぞれEGRガスを取り出す第一、第二のEGR支流通路と、この第一、第二のEGR支流通路によってそれぞれ導かれるEGRガスが逆流することを止める第一、第二の逆止弁と、EGRガスを冷却するEGRクーラと、を備え、このEGRクーラは、冷媒が流れる冷媒流路を画成するクーラハウジングと、このクーラハウジング内に並列に配置される複数の冷却管と、を備え、この冷却管が第一、第二のEGR支流通路によって取り出されるEGRガスをそれぞれ同一方向に導く第一、第二のEGR冷却流路を画成し、この第一、第二のEGR冷却流路を通過したEGRガスを合流させるクーラ出口ジャンクションを備えることを特徴とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、第一、第二のEGR支流通路によってそれぞれ導かれるEGRガスは、EGRクーラにおける第一、第二のEGR冷却流路を通過する過程にて冷却され、吸気に対する充填効率を高められる。
【0010】
EGRクーラは、単一のクーラハウジング内に第一、第二のEGR冷却流路を画成する冷却管が並列に配置される構造のため、二つのクーラハウジングか設けられる従来装置に比べて、構造の簡素化がはかれ、エンジン本体まわりの限られたスペースにおいてEGRクーラを設置する自由度を高められるとともに、製品の小型化とコストダウンがはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す多気筒エンジンのEGR装置の概略構成図。
【図2】同じく第一、第二の排気マニホールドの側面図。
【図3】同じく中央ブロックのタービンに接続する部位を示す断面図。
【図4】同じくEGRクーラの構成図。
【図5】同じくEGRクーラの断面図。
【図6】同じくクーラ出口ジャンクションの断面図と側面図。
【図7】同じくEGRガス流量検出器の断面図と側面図。
【図8】同じくEGRガス流量検出器の斜視図。
【図9】同じくEGRガス流量検出器の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に概略構成を示すように、多気筒エンジン1は、吸気を各気筒に導く吸気通路20、各気筒からの排気を排出する排気通路30、排気の一部(以下EGRガスという)を吸気通路20を介して各気筒に還流させるEGR装置60、排気エネルギによって吸気を過給するターボチャージャ10等を備える。
【0014】
吸気通路20は、上流側より順に、外気から塵埃等の異物を取り除くエアクリーナ21、ターボチャージャ10を構成するコンプレッサ11、吸気を冷却するインタークーラ22、吸気を各気筒に分配する吸気マニホールド19、各気筒の燃焼室壁に開口する吸気ポート(図示せず)等を備える。
【0015】
排気通路30は、上流側より順に、各気筒の燃焼室壁に開口する排気ポート(図示せず)、各排気ポートからの排気を集める第一、第二の排気マニホールド31、32、ターボチャージャ10を構成するタービン12、触媒を介して排気を浄化するとともに排気音を消音する触媒付きマフラ39等を備える。
【0016】
ディーゼル式のエンジン1は、吸気ポートから吸気を気筒に吸入する吸入行程、気筒に噴射供給される燃料を圧縮着火して燃焼させる燃焼行程、気筒内におけるピストンの下降により出力軸を回転駆動する膨張行程、気筒内の排気を排気ポートから排出する排気行程が順に各気筒毎にて行われる。
【0017】
なお、本発明は、ディーゼル式のエンジン1に限らず、火花点火式のエンジンにも適用できる。
【0018】
エンジン1は、#1〜#6の6気筒を備え、例えば#1、#4、#2、#6、#3、#5気筒の順に120degの間隔を持って排気行程を迎える。
【0019】
第一の排気マニホールド31は、着火順序が互いに連続しない(排気開弁期間が重ならない)#1、#2、#3気筒からの排気を集める。同様に、第二の排気マニホールド32は、着火順序が互いに連続しない#4、#6、#5気筒からの排気を集める。これにより、第一、第二の排気マニホールド31、32には、各気筒から排出される排気流が交互に流入し、エンジン速度域に応じて排気の圧力脈動が生じる。
【0020】
なお、本発明は、6気筒エンジン1に限らず、例えば8気筒、10気筒を有する他の多気筒エンジンにも適用できる。そして、排気通路30は、第一、第二の排気マニホールド31、32に限らず、第三、第四、それ以上の排気マニホールドを備える構成としても良い。これに対応して後述する第一、第二のEGR支流通路61、62、第一、第二の逆止弁51、52等の設置数も増やされる。
【0021】
図2は、第一、第二の排気マニホールド31、32の側面図である。第一、第二の排気マニホールド31、32は、中央ブロック41と、前後ブロック42、43を組み立てて形成される。
【0022】
前ブロック42は、#1、#2気筒の排気ポートに対する開口(排気入口)と、中央ブロック41に対する開口(排気出口)と、EGR支流通路61に対する開口(EGRガス取り出し口)とを有する。
【0023】
後ブロック43は、#5、#6気筒の排気ポートに対する開口(排気入口)と、中央ブロック41に対する開口(排気出口)と、EGR支流通路62に対する開口(EGRガス取り出し口)とを有する。
【0024】
図3は、中央ブロック41のタービン12に接続する部位を示す断面図である。中央ブロック41は、#5、#6気筒の排気ポートに対する開口(排気入口)47、48と、前後ブロック42、43に対する開口(排気入口)45、46と、ターボチャージャ10ののタービン12に対する開口として第一、第二エゼクタ49、50を有する。
【0025】
排気通路30は、第一、第二の排気マニホールド31、32によって導かれる排気を合流してターボチャージャ10のタービン12へと導く排気ジャンクション33を備える。この排気ジャンクション33において、第一、第二のエゼクタ49、50は、それぞれの流路断面積が上流側の流路断面積より小さく形成され、互いに並列に並んでタービン12のハウジング入口13に接続される。図4に矢印で示すように、各気筒における排気行程初期の排気ブローダウン流が第一、第二のエゼクタ49、50から交互にハウジング入口13へと流出することによって、第一、第二のエゼクタ49、50からの排気が交互にハウジング入口13へと吸引され、排気効率を高められる。
【0026】
過給器付きエンジン1は、過給器としてターボチャージャ10が設けられる。ターボチャージャ10は、タービン12の翼車(図示せず)とコンプレッサ11の翼車(図示せず)が同軸上にて連結されている。排気のエネルギによってタービン12の翼車が高速回転し、コンプレッサ11の翼車がその回転により回転軸方向から吸気を吸引し、圧縮した吸気をその回転半径方向に吐出する。
【0027】
可変容量式のターボチャージャ10は、タービン12の翼車に排気を導く入口に図示しない可変ノズルが設けられ、この可変ノズルが回動することによってノズル面積が変えられる。
【0028】
可変ノズルの開度は、コントローラ9によってエンジン1の運転状態に応じて制御される。これにより、可変ノズルの開度に応じてターボチャージャ10の回転速度が調節され、エンジン1の運転状態に応じた目標過給圧が得られる。
【0029】
EGR装置60は、排気通路30のタービン12より上流側から排気の一部をEGRガスとして取り出し、吸気通路20のコンプレッサ11より下流側に導き、各気筒に還流させるようになっている。
【0030】
EGR装置60は、第一、第二の排気マニホールド31、32からEGRガスをそれぞれ取り出す第一、第二のEGR支流通路61、62と、第一、第二のEGR支流通路61、62を通過するEGRガスをEGRクーラ70に導入するクーラ入口ジャンクション93と、EGRクーラ70を通過したEGRガスを合流させるクーラ出口ジャンクション63と、このクーラ出口ジャンクション63にて合流したEGRガスを吸気通路20に導くEGR合流通路64とを備える。
【0031】
図4はEGRクーラ70の構成図であり、図5は同じくEGRクーラ70の断面図である。
【0032】
EGRクーラ70は、筒状のクーラハウジング74を備え、クーラハウジング74内に多数の冷却管(パイプ)73が直線状に延び、互いに並列に並び、かつ互いに間隔を持つように配置される。この冷却管73によってEGRガスが流れる第一、第二のEGR冷却流路71、72が画成される。
【0033】
EGRクーラ70は、冷媒としてエンジン冷却水が流れる冷媒流路97を備える。この冷媒流路97は、クーラハウジング74の内部にて冷却管73のまわりに設けられる。クーラハウジング74に冷媒入口管75と冷媒出口管76が設けられる。この冷媒入口管75と冷媒出口管76は、図示しない配管を介してエンジン1の冷却水循環回路(図示せず)に接続される。エンジン1の冷却水循環回路を循環するエンジン冷却水は、冷媒入口管75からクーラハウジング74内の冷媒流路97に流入し、冷媒流路97を流れる過程で第一、第二のEGR冷却流路71、72を流れるEGRガスの熱を吸収し、冷媒出口管76からエンジン1の冷却水循環回路へと戻される。EGRクーラ70を通過するEGRガスは、第一、第二のEGR冷却流路71、72を流れる過程にて、エンジン冷却水との間で熱交換が行われ、冷却される。
【0034】
クーラハウジング74の入口側と出口側のそれぞれにフランジ77、78を有する。入口側のフランジ77には、クーラ入口ジャンクション93を介して第一、第二のEGR支流通路61、62の配管65、66がそれぞれ接続される。
【0035】
クーラ入口ジャンクション93は、筒型のクーラ入口ハウジング98を備える。このクーラ入口ハウジング98は、その入口側と出口側のそれぞれにフランジ101、102、103を有し、その内側に隔壁96を有する。入口側のフランジ102、103には、第一、第二のEGR支流通路61、62の配管65、66がそれぞれ接続される。
【0036】
クーラ入口ハウジング98の出口側のフランジ103は、クーラハウジング74の入口側のフランジ77が接続される。
【0037】
クーラ入口ハウジング98の内側には、隔壁96によって第一、第二のクーラ導入路94、95に仕切られる。第一、第二のクーラ導入路94、95は、第一、第二のEGR冷却流路71、72にそれぞれ連通し、第一、第二のEGR支流通路61、62を構成する。換言すると、EGRクーラ70の各冷却管73は、第一のクーラ導入路94に連通するものが第一のEGR冷却流路71を画成し、第二のクーラ導入路95に連通するものが第二のEGR冷却流路71、72を画成する。これにより、第一、第二のEGR支流通路61、62を流れるEGRガスは、第一、第二のクーラ導入路94、95を介して第一、第二のEGR冷却流路71、72へと導かれる。
【0038】
EGRクーラ70の第一、第二のEGR冷却流路71、72を通過したEGRガスは、クーラ出口ジャンクション63にて合流し、EGR合流通路64を通って吸気通路20へと導かれる。
【0039】
EGR合流通路64には、EGRガス流量検出器3とEGRガス流量検出器4が介装される。
【0040】
第一、第二のEGR支流通路61、62には、エンジン速度域に応じて第一、第二の排気マニホールド31、32に生じる排気の圧力脈動が伝播する。
【0041】
クーラ出口ジャンクション63は、第一、第二のEGR支流通路61、62をそれぞれ開閉する第一、第二の逆止弁51、52を備える。
【0042】
図6の図(a)は、図(b)のA−A線に沿うクーラ出口ジャンクション63の断面図であり、図(b)は、クーラ出口ジャンクション63の側面図である。
【0043】
クーラ出口ジャンクション63は、筒型のクーラ出口ハウジング14を備える。このクーラ出口ハウジング14は、その入口側と出口側のそれぞれにフランジ15、16を有し、その内側に隔壁17を有する。入口側のフランジ15には、クーラハウジング74の出口側フランジ78が接続される。出口側のフランジ16には、配管(図示せず)を介してEGRガス流量検出器3のフランジ35(図7参照)が接続される。
【0044】
クーラ出口ハウジング14の内側には、第一、第二のEGR支流通路61、62の下流端となる第一、第二のEGR支流端81、82と、EGR合流通路64の上流端となるEGR合流端83とが設けられる。
【0045】
クーラ出口ハウジング14内の上流側は、隔壁17によって第一、第二のEGR支流端81、82に仕切られる。第一、第二のEGR支流端81、82には、第一、第二の逆止弁51、52がそれぞれ収容される。
【0046】
第一、第二の逆止弁51、52は、クーラ出口ハウジング14内に介装されるバルブシート53と、このバルブシート53に着座する2枚のリードバルブ54とを備える。
【0047】
バルブシート53は、その断面形状がV字形を中空構造をして、互いに傾斜するバルブシート面55を有する。バルブシート面55は、リードバルブ54の端部を着座させるように環状に形成される。バルブシート面55の内側にEGRガスが通り抜ける開口(図示せず)が形成されている。
【0048】
リードバルブ54は、矩形のバネ板からなり、その基端部が複数のビス91によってバルブシート53に締結される。
【0049】
第一、第二の逆止弁51、52は、それぞれの前後差圧が所定値以下の場合には、リードバルブ54がその弾性復元力によってバルブシート面55に着座し、第一、第二のEGR支流端81、82をそれぞれ閉塞する。
【0050】
第一、第二の逆止弁51、52は、それぞれの前後差圧が所定値を超えて高まる場合には、リードバルブ54がその弾性復元力に抗して撓み、バルブシート面55から離れて、第一、第二のEGR支流端81、82をそれぞれ開通する。こうして第一、第二の逆止弁51、52が開弁すると、EGRガスが、図7に矢印で示すように、バルブシート53を抜けて第一、第二のEGR支流端81、82を流れる。
【0051】
これにより、第一、第二の排気マニホールド31、32に生じる排気脈動圧が第一、第二のEGR支流通路61、62に伝播し、排気脈動圧のピーク値が吸気通路20の吸気圧力を超える運転状態において、第一、第二の逆止弁51、52が交互に開弁し、第一、第二のEGR支流通路61、62に導かれるEGRガスが、クーラ出口ジャンクション63にて合流し、EGR合流通路64を通って吸気通路20へと導かれる。
【0052】
隔壁17は、リードバルブ54、バルブシート53の先端より下流方向に突出して形成される。第一、第二の逆止弁51、52が交互に開弁する運転状態において、第一、第二のEGR支流端81、82を流れるEGRガスがハウジング内壁面18と隔壁17に沿ってEGR合流通路64へと導かれるとともに、第一、第二のEGR支流端81、82の一方に伝播する排気圧力波が隔壁17を超えて他方に伝播することを抑えられる。
【0053】
第一、第二のクーラ導入路94、95、各第一、第二のEGR冷却流路71、72、第一、第二のEGR支流端81、82は、直線状にそれぞれ延び、中心線Oについて互いに対称的に形成される。
【0054】
第一、第二のEGR支流通路61、62をそれぞれ通るEGRガスは、図中矢印で示すように第一、第二のクーラ導入路94、95を通ってクーラハウジング74の入口側端部から互いに合流することなく各第一、第二のEGR冷却流路71、72に流入し、各第一、第二のEGR冷却流路71、72を通って冷却された後に、第一、第二のEGR支流端81、82を通ってEGR合流通路64へと導かれる。
【0055】
クーラ出口ハウジング14は、筒形のハウジング内壁面18を有する。ハウジング内壁面18の内側に画成される流路の断面積は、上流側から下流側にかけて次第に減少する。
【0056】
流路の距離に対して流路断面積が減少する比率は、隔壁17が設けられる第一、第二のEGR支流端81、82より、隔壁17より下流側に設けられるEGR合流端83の方が小さくなる。
【0057】
ハウジング内壁面18は、中心線Oに対する傾斜角度θ/2が、第一、第二のEGR支流端81、82を画成する部位より、EGR合流端83を画成する部位の方が大きくなるように形成される。
【0058】
EGR合流端83を画成する部位におけるハウジング内壁面18の絞り角度θは、45°以下の範囲で、例えば30°程度に設定される。
【0059】
これにより、EGRガスは、第一、第二のEGR支流端81、82からEGR合流端83へと円滑に流れて、EGRガス流量検出器3へと導かれる。
【0060】
図7の図(a)は、図(b)のA−A線に沿うEGRガス流量検出器3の断面図であり、図(b)は、EGRガス流量検出器3の側面図である。
【0061】
EGRガス流量検出器3は、EGR合流通路64に介装される筒状のセンサハウジング34を備え、センサハウジング34内の圧力によりEGRガスの流量を検出するようになっている。
【0062】
センサハウジング34は、その入口側と出口側のそれぞれにフランジ35、36を有する。入口側のフランジ35は、クーラ出口ハウジング14のフランジ16に接続される。出口側のフランジ36には、配管を介してEGRガス流量検出器4が接続される。
【0063】
センサハウジング34の内壁面92は、絞り部37を画成する。この絞り部37は、その断面積が上流側からその中央部にかけて次第に減少し、その中央部から下流側にかけて次第に増大する。
【0064】
絞り部37の上流側には孔38が開口し、この孔38にその圧力を検出する高圧側圧力検出器(図示せず)が介装される。
【0065】
絞り部37の中央部には孔89が開口し、この孔89にその圧力を検出する低圧側圧力検出器(図示せず)が介装される。
【0066】
絞り部37の下流側には孔44が開口し、この孔44にその温度を検出する温度検出器(図示せず)が介装される。
【0067】
コントローラ9は、高圧側圧力検出器と低圧側圧力検出器の検出信号を入力し、両者の圧力差に基づいてEGRガスの流量を算出する。さらに、コントローラ9は、温度検出器の検出信号を入力し、検出されたEGRガスの温度に基づいてEGRガスの流量を補正するようになっている。
【0068】
図8は、EGRガス流量検出器4の斜視図である。図9は、EGRガス流量検出器4の正面図である。
【0069】
EGRガス流量検出器4は、EGRガス流量検出器3から流出するEGRガスを吸気マニホールド19へと導くバルブハウジング23と、このバルブハウジング23内に収容されるバルブ(図示せず)と、このバルブを開閉駆動するアクチュエータ27とを備える。
【0070】
バルブハウジング23は、3つのフランジ24、25、26を有する。2つの入口側フランジ24、25は、配管を介してセンサハウジング34の出口側のフランジ36に接続される。バルブハウジング23の出口側のフランジ26は、吸気マニホールド19に接続される。
【0071】
EGRガス流量検出器4が開弁すると、EGRガスが、図8に矢印で示すように、2つの入口側フランジ24、25の開口からバルブハウジング23内に流入し、出口側のフランジ26の開口から吸気マニホールド19へと流出する。EGRガス流量検出器4は、その開度に応じてEGRガスの流量を変えるようになっている。
【0072】
エンジン1の運転時、第一、第二の排気マニホールド31、32には、各気筒から排出される排気流が交互に流入し、エンジン速度域に応じて排気の圧力脈動が生じる。排気ジャンクション33において、各気筒における排気行程初期の排気ブローダウン流が第一、第二のエゼクタ49、50から交互にハウジング入口13へと流出することによって、第一、第二のエゼクタ49、50からの排気が交互にハウジング入口13へと吸引され、排気効率を高められる。
【0073】
EGR装置60は、排気通路30のタービン12より上流側からEGRガスを取り出し、吸気通路20のコンプレッサ11より下流側へと導入する。EGRガスが各気筒に再循環されることにより、燃焼室内での燃焼温度が下げられて窒素酸化物の発生量が抑えられる。
【0074】
EGRガスは、EGRクーラ70によって冷却されることにより、吸気に対する充填効率(EGR率)を高められるとともに、第一、第二の逆止弁51、52等が過熱されることを防止できる。
【0075】
ターボチャージャ10は、排気のエネルギによって圧縮した吸気を吸気通路20から各気筒へと過給する。これにより、各気筒に供給される吸気中の酸素量が確保される。
【0076】
第一、第二の排気マニホールド31、32に生じる排気脈動圧が第一、第二のEGR支流通路61、62に伝播し、排気脈動圧のピーク値が吸気通路20の吸気圧力を超える運転状態において、第一、第二の逆止弁51、52が交互に開弁し、第一、第二のEGR支流通路61、62に導かれるEGRガスが、クーラ出口ジャンクション63にて合流し、EGR合流通路64を通って吸気通路20へと導かれる。これにより、吸気マニホールド19の吸気圧力が第一、第二の排気マニホールド31、32の平均排気圧力よりも高くなる高負荷運転状態でもEGRガスを各気筒に還流させることが可能になる。
【0077】
コントローラ9は、予め設定されたマップに基づきエンジン1の運転状態に応じてEGRガスの流量の目標値を求め、EGRガス流量検出器3を介して検出されるEGRガスの流量が目標値に近づくようにEGRガス流量検出器4の開度をフィードバック制御する。
【0078】
以下、本実施形態の要旨と作用、効果を説明する。
【0079】
本実施形態では、排気脈動圧を利用してEGRガスを吸気通路20に還流させる多気筒エンジン1のEGR装置60であって、排気行程が互いに連続しない気筒群からの排気をそれぞれ集める第一、第二の排気マニホールド31、32からそれぞれEGRガスを取り出す第一、第二のEGR支流通路61、62と、この第一、第二のEGR支流通路61、62によってそれぞれ導かれるEGRガスが逆流することを止める第一、第二の逆止弁51、52と、EGRガスを冷却するEGRクーラ70と、を備え、このEGRクーラ70は、冷媒が流れる冷媒流路97を画成するクーラハウジング74と、このクーラハウジング74内に並列に配置される複数の冷却管73と、を備え、この冷却管73が第一、第二のEGR支流通路61、62によって取り出されるEGRガスをそれぞれ同一方向に導く第一、第二のEGR冷却流路71、72を画成し、この第一、第二のEGR冷却流路71、72を通過したEGRガスを合流させるクーラ出口ジャンクション63を備えることを特徴とした。
【0080】
上記構成に基づき、第一、第二のEGR支流通路61、62によってそれぞれ導かれるEGRガスが第一、第二の逆止弁51、52を開弁し、クーラ出口ジャンクション63にて合流する。排気圧力より吸気圧力の方が高くなる高負荷運転状態でも第一、第二のEGR支流通路61、62に伝播する排気脈動圧を利用して第一、第二の逆止弁51、52が交互に開弁してEGRガスを各気筒に還流させることが可能になる。
【0081】
第一、第二のEGR支流通路61、62によってそれぞれ導かれるEGRガスは、EGRクーラ70における第一、第二のEGR冷却流路71、72を通過する過程にて冷却され、吸気に対する充填効率を高められる。
【0082】
EGRクーラ70は、単一のクーラハウジング74内に第一、第二のEGR冷却流路71、72を画成する冷却管73が並列に配置される構造のため、二つのクーラハウジングか設けられる従来装置に比べて、構造の簡素化がはかれ、エンジン本体まわりの限られたスペースにおいてEGRクーラ70を設置する自由度を高められるとともに、製品の小型化とコストダウンがはかれる。
【0083】
本実施形態では、クーラ出口ジャンクション63は、筒型のクーラ出口ハウジング14と、このクーラ出口ハウジング14の内側に設けられる隔壁17と、この隔壁17によって仕切られ第一、第二のEGR支流通路61、62の下流端となる第一、第二のEGR支流端81、82とを備え、第一、第二のEGR支流端81、82に第一、第二の逆止弁51、52がそれぞれ介装される構成とした。
【0084】
上記構成に基づき、第一、第二の逆止弁51、52が交互に開弁する高負荷運転状態において、第一、第二のEGR支流端81、82を流れるEGRガスが隔壁17に沿ってEGR合流通路64へと導かれるとともに、第一、第二のEGR支流端81、82の一方に伝播する排気圧力波が隔壁17を超えて他方に伝播することを抑えられ、排気脈動圧を利用してEGRガスを効率良く各気筒に還流させることが可能になる。
【0085】
本実施形態では、クーラ出口ジャンクション63は、隔壁17の下流側にてEGR合流通路64の上流端となるEGR合流端83を備え、EGR合流端83の流路断面積が上流側から下流側にかけて次第に減少する構成とした。
【0086】
上記構成に基づき、第一、第二のEGR支流端81、82からEGR合流端83へと向かうEGRガスの流れは、円滑に絞られ、EGRガス流量検出器3が排気脈動圧の影響を受けることを抑えられる。
【0087】
本実施形態では、第一、第二のEGR冷却流路71、72と第一、第二のEGR支流端81、82とが直線状に延びる構成とした。
【0088】
上記構成に基づき、第一、第二のEGR冷却流路71、72から第一、第二のEGR支流端81、82へと向かうEGRガスは、直線状に流れ、EGRクーラ70とクーラ出口ジャンクション63を通過するEGRガスの損失抵抗を抑えられ、吸気に対する充填効率を高められる。
【0089】
本実施形態では、EGR合流通路64を流れるEGRガスの流量を検出するEGRガス流量検出器3と、EGRガスの流量を調節するEGRガス流量検出器4と、を備え、EGRガス流量検出器3の検出信号に応じてEGRガス流量検出器4の開度が制御される構成とする。
【0090】
上記構成に基づき、第一、第二のEGR支流通路61、62によって伝播する排気脈動圧がクーラ出口ジャンクション63にて互いに干渉し合い、脈動圧が弱められたEGRガスがEGRガス流量検出器3に導かれる。これにより、EGRガス流量検出器3が排気脈動圧の影響を受けることを抑えられ、EGRガスの流量の検出が安定して行われるため、EGRガス流量検出器4を介してEGRガスの流量を精度良くフィードバック制御することができる。
【0091】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン
3 EGRガス流量検出器
4 EGRガス流量検出器
10 ターボチャージャ
17 隔壁
20 吸気通路
30 排気通路
31 第一の排気マニホールド
32 第二の排気マニホールド
51 第一の逆止弁
52 第二の逆止弁
60 EGR装置
61 第一のEGR支流通路
62 第二のEGR支流通路
63 クーラ出口ジャンクション
64 EGR合流通路
70 EGRクーラ
71 第一のEGR冷却流路
72 第二のEGR冷却流路
73 冷却管
74 クーラハウジング
81 第一のEGR支流端
82 第二のEGR支流端
97 冷媒流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気脈動圧を利用してEGRガスを吸気通路に還流させる多気筒エンジンのEGR装置であって、
着火順序が互いに連続しない気筒群からの排気をそれぞれ集める第一、第二の排気マニホールドからそれぞれEGRガスを取り出す第一、第二のEGR支流通路と、
前記第一、第二のEGR支流通路によってそれぞれ導かれるEGRガスが逆流することを止める第一、第二の逆止弁と、
EGRガスを冷却するEGRクーラと、を備え、
前記EGRクーラは、
冷媒が流れる冷媒流路を画成するクーラハウジングと、
前記クーラハウジング内に並列に配置される複数の冷却管と、を備え、
前記冷却管が前記第一、第二のEGR支流通路によって取り出されるEGRガスをそれぞれ同一方向に導く第一、第二のEGR冷却流路を画成し、
前記第一、第二のEGR冷却流路を通過したEGRガスを合流させるクーラ出口ジャンクションを備えることを特徴とする多気筒エンジンのEGR装置。
【請求項2】
前記クーラ出口ジャンクションは、
筒型のクーラ出口ハウジングと、
前記クーラ出口ハウジングの内側に設けられる隔壁と、
前記隔壁によって仕切られ前記第一、第二のEGR支流通路の下流端となる第一、第二のEGR支流端とを備え、
前記第一、第二のEGR支流端に前記第一、第二の逆止弁がそれぞれ介装されることを特徴とする請求項1に記載の多気筒エンジンのEGR装置。
【請求項3】
前記第一、第二のEGR冷却流路と前記第一、第二のEGR支流端とが直線状に延びる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の多気筒エンジンのEGR装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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