説明

多波長光発生方法及び多波長光発生装置

【課題】単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができる多波長光発生方法及び多波長光発生装置を提供する。
【解決手段】周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段(例えばCW光源2、変調器3、信号発生装置4)と、平行に対向する2枚の反射鏡を有して成るファブリペローフィルタ5とを有し、多波長光生成手段で生成した周波数間隔fmの多波長光を、ファブリペローフィルタ5に入射し、2枚の反射鏡の距離Lを制御して、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)が周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数とファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、ファブリペローフィルタ5から、周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多波長光発生方法及び多波長光発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ通信の伝送容量は波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送技術の登場により急速に増加している。研究レベルでは、1心の光ファイバへ多重される光は数千波にまで達している。しかしながら、波長多重数と同じ数の光源を用意する必要があり、コストや運用の面で問題となっている。そこで、一台の光源から複数の波長のキャリア光を発生させる多波長光発生装置(多波長光源)の検討が進められている。
例えば、短パルス光源を光ファイバに入射し、自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation)を発生させ、スペクトルを広げて多波長光を発生させる手法(非特許文献1)や、変調器を用いて光周波数コムと呼ばれる光を多波長光として用いる手法(非特許文献2,3)がある。これらの手法によって発生する多波長光は、互いに位相関係が固定されているため、WDMキャリア光源として適している。
【0003】
発生する多波長光の周波数間隔は、伝送する信号のビットレートや隣接チャネル間クロストーク、光ファイバ中で発生する四光波混合や相互位相変調等の非線形現象による信号劣化に応じて設計する必要があるが、上記の手法では、発生する多波長光の周波数間隔に制限があり、周波数間隔は10〜25GHz程度となっている。
例えば、非特許文献1に記載の手法では、短パルスレーザの繰返し周波数が、多波長光の周波数間隔となるが、数十GHz以上の高速な繰り返しを持つ短パルス光源の実現が困難である。
また、非特許文献2又は3に記載の手法では、変調器に印加する正弦波の周波数に応じた周波数間隔で多波長光が発生し、10波以上の多波長光を発生させるためには振幅の大きな正弦波信号を変調器に印加する必要があるが、正弦波発生器の出力制限や電気の高出力増幅器の帯域不足といった電気のコンポーネントの制限により、50GHz以上の周波数間隔を有する多波長光は実現されていない。
【0004】
そこで、前記多波長光源と、方向性結合器を用いたインターリーバを用いることで、50GHz以上の周波数間隔を有する多波長光を発生させることができる。このインターリーバは、周期的な透過周波数を有するフィルタであり、例えば25GHz間隔の多波長光源と、50GHz間隔の透過周波数特性を有するインターリーバを用いることで50GHz間隔の多波長光源を実現することができる。このとき、隣接するキャリア光(上記の例では25GHz離れた光)との消光比が十分に大きくないと、データ変調されたWDM信号間のクロストークが発生し、信号が劣化してしまう。
【0005】
光伝送システムにおいては、WDM信号間のクロストークが−24dBでパワーペナルティが約2dBであり、それ以上となると急速に信号品質が劣化することが報告されている(非特許文献1)。
つまり、1つ以上離れたキャリア光とのクロストークは十分小さいとして無視すると、隣接する2つのキャリア光との消光比を27dB以上とすることで、クロストークを−24dB以下とすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Ohara, H. Takara, T. Yamamoto, H. Masuda, T. Morioka, M. Abe, and H. Takahashi, "Over-1000-Channel Ultradense WDM Transmission With Supercontinuum Multicarrier Source," J. Lightwave Technol. 24, pp. 2311- (2006).
【非特許文献2】T. Yamamoto, T. Komukai, K. Suzuki and A. Takada, "Spectrally flattened phase-locked multi-carrier light generator with phase modulators and chirped fibre Bragg grating," Electron. Lett., 43, pp. 1040-1042 (2007).
【非特許文献3】M. Doi, M. Sugiyama, K. Tanaka, and M. Kawai, "Advanced LiNbO3 optical modulators for broadband optical communications," J. of Selected Topics in Quantum Electronics, 12, pp. 745-750 (2006).
【非特許文献4】M. Oguma, K. Jinguji, T. Kitoh, T. Shibata, A.Himeno, "Flat-passband interleave filter with 200 GHz channel spacing basedon planar lightwave circuit-type lattice structure," Electronics Letters, Volume: 36, Issue: 15, pp. 1299-1300 (2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記インターリーバのようなデバイスでは透過周波数間隔を柔軟に制御することができないため、さまざまな信号を伝送する際に柔軟に周波数間隔を制御することができない。
【0008】
以上のことから、本発明は、単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができる多波長光発生方法及び多波長光発生装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1発明の多波長光発生方法は、周波数間隔fmの多波長光を、平行に対向する2枚の反射鏡を有して成るファブリペローフィルタに入射し、
前記2枚の反射鏡の距離を制御して、前記ファブリペローフィルタの透過周波数間隔が、前記周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、前記周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と前記ファブリペローフィルタの透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、
前記ファブリペローフィルタから、前記周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射することを特徴とする。
【0010】
また、第2発明の多波長光発生方法は、第1発明の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、CW光源から出射されるCW光を、信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて変調器で変調することにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする。
【0011】
また、第3発明の多波長光発生方法は、第1発明の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、CW光源から出射されるCW光を、正弦波発生装置から発せられる周波数fmの正弦波電圧に基づいてマッハツェンダ型強度変調器で強度変調し且つ位相変調器で位相変調することにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記正弦波発生装置から発せられる正弦波電圧の周波数fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする。
【0012】
また、第4発明の多波長光発生方法は、第1発明の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号をモード同期レーザに印加して、前記繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスを前記モード同期レーザから発生させた後、このモード同期レーザから発せられるパルスを光ファイバに入射して、自己位相変調させることにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする。
【0013】
また、第5発明の多波長光発生方法は、第1〜第4発明の何れかの多波長光発生方法において、
前記ファブリペローフィルタは、
【数1】

を満たす振幅反射率rを有することを特徴とする。
【0014】
また、第6発明の多波長光発生装置は、周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段と、
平行に対向する2枚の反射鏡を有して成るファブリペローフィルタとを有し、
前記多波長光生成手段で生成した前記周波数間隔fmの多波長光を、前記ファブリペローフィルタに入射し、前記2枚の反射鏡の距離を制御して、前記ファブリペローフィルタの透過周波数間隔が前記周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、前記周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と前記ファブリペローフィルタの透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、前記ファブリペローフィルタから、前記周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成としたことを特徴とする。
【0015】
また、第7発明の多波長光発生装置は、第6発明の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、CW光源と信号発生装置と変調器とを有し、前記CW光源から発せられるCW光を、前記信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて前記変調器で変調することにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする。
【0016】
また、第8発明の多波長光発生装置は、第6発明の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、CW光源と正弦波発生装置とマッハツェンダ型強度変調器と位相変調器とを有し、前記CW光源から出射したCW光を、前記正弦波発生装置から発せられる周波数fmの正弦波電圧に基づいて前記マッハツェンダ型強度変調器で強度変調し且つ前記位相変調器で位相変調することにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記正弦波発生装置から発せられる正弦波電圧の周波数fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする。
【0017】
また、第9発明の多波長光発生装置は、第6発明の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、信号発生装置とモード同期レーザと光ファイバとを有し、前記信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号を前記モード同期レーザに印加して、前記繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスを前記モード同期レーザから発生させた後、このモード同期レーザから発せられるパルスを前記光ファイバに入射して、自己位相変調させることにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする。
【0018】
また、第10発明の多波長光発生装置は、第6〜第9発明の何れかの多波長光発生装置において、
前記ファブリペローフィルタは、
【数2】

を満たす振幅反射率rを有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができるため、経済的であるという効果を奏する。
また、本発明によれば、伝送信号のビットレートや伝送路の状況の変化に応じて周波数間隔を連続的に変化させることができるため、伝送信号の品質が向上するという効果も奏する。
また、本発明によれば、WDM信号間のクロストークを−24dB以下とすることができるため、信号の品質が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る多波長光発生装置を備えた光伝送システムの構成を示す図である。
【図2】前記多波長光発生装置におけるファブリペローフィルタの構成例を示す図である。
【図3】前記多波長光発生装置におけるファブリペローフィルタの透過特性を示す図である。
【図4】前記多波長光発生装置のファブリペローフィルタを用いた周波数間隔の制御の概要を示す図である。
【図5】前記多波長光発生装置において任意の周波数間隔を実現するためのfout、fm、fFSRの関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態例2に係る多波長光発生装置を備えた光伝送システムの構成を示す図である。
【図7】実験に用いた多波長光発生装置の構成を示す図である。
【図8】(a)は位相変調後の多波長光の光スペクトルを示す図、(b)はファブリペローフィルタを通過後の多波長光の光スペクトルである。
【図9】(a)及び(b)は実験に用いたファブリペローフィルタの透過特性を示す図であり、(b)は(a)の破線部の拡大図である。
【図10】実験に用いた伝送系の構成を示す図である。
【図11】(a)はチャネル0におけるED受信前の光スペクトルを示す図、(b)はチャネル0におけるビット誤り率・アイパターンを示す図である。
【図12】15チャネル分のBack-to-backと伝送後の10-9となる受信強度を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態例3に係る多波長光発生装置を備えた光伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
〔実施の形態例1〕
図1に示す光伝送システムは、本発明の実施の形態例1に係る多波長光発生装置1と、光伝送用の光ファイバ6と、受信機7とを有して成るものである。この光伝送システムでは、多波長光発生装置1から発せられた多波長光を、その後段の変調器(図示省略)で伝送データにより変調してWDM信号とした後、このWDM信号を光ファイバ6で伝送して、受信機7で受信する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態例1の多波長光発生装置1は、CW(Continuous Wave)光源2と、変調器3と、信号発生装置4と、ファブリペローフィルタ5とを有して成るものである。CW光源2と変調器3と信号発生装置4は、ファブリペローフィルタ5に入射する周波数間隔fmの多波長光を生成するための多波長光生成手段を構成している。
【0024】
CW光源2は周波数fSのCW光を発生し、このCW光は変調器3に入射される。信号発生装置4は繰り返し周期fmの電気信号を発生し、この電気信号は変調器3に印加される。変調器3では、CW光源2から発せられた周波数fSのCW光を、信号発生装置4から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて変調することにより、周波数間隔fmの多波長光を生成して出射する。変調器3から出射された周波数間隔fmの多波長光は、その後段に設置されたファブリペローフィルタ5に入射される。
【0025】
図2に示すように、ファブリペローフィルタ5は、平行に対向する2枚の反射鏡8を有して成るものである。2枚の反射鏡8は間隔Lを有している。これら2枚の反射鏡8に垂直な方向をX軸方向とする。ファブリペローフィルタ5では、このX軸方向に沿って或いはX軸方向に対してある入射角度を有して光が、一方の反射鏡8に入射すると、これに対向する他方の反射鏡8からは特定の周波数の光のみが透過してくる。2枚の反射鏡8の間には空気等の屈折率がnである気体又は固体が存在しており、反射鏡8のX=0又はX=Lにおける振幅反射率をr、振幅透過率をdとすると、ファブリペローフィルタの透過特性I(透過光の強度)は以下の[数3]式で表わされる。
【数3】

但し、I0は入射光の強さ、R=r2、D=d2、k=2πn/λ(λは入射光の真空中における波長)、θは入射光のX軸方向に対する入射角度である。
【0026】
例えば、反射鏡8の光損失が2%であると仮定し、R+D=1−0.02とすると、n=1、R=0.7、D=0.28、L=0.003m、θ=0とした場合、図3に示す透過特性が実現できる。このときの透過周波数の間隔はFSR(Free spectral range)と呼ばれ、以下の[数4]式で求められる。
【数4】

ここで、Cは真空中の光の速度である。
【0027】
つまり、ファブリペローフィルタ5内の反射鏡間隔Lを制御することで、透過周波数間隔(FSR)は連続的に制御することができる。なお、以降、入射角度θ=0と仮定して議論を進めるが、θ≠0の場合には[数4]式中のLをファブリペローフィルタ5の実効的な共振器長L´=L×cosθとすればよい。
【0028】
なお、ファブリペローフィルタ5には、石英基板の両面に反射膜を成膜して2枚の反射鏡8を形成したソリッドエタロンや、2枚の反射鏡8の間に気体が存在するエアギャップエタロンがある。
ファブリペローフィルタ5がソリッドエタロンの場合、反射鏡間隔Lの制御は、石英基板の温度制御により石英基板の体積や屈折率を変化させることで実現できる。なお、石英基板の温度制御としては、例えば、石英基板に設けた電気ヒータに通電する電流を制御することによって実現できる。
ファブリペローフィルタ5がエアギャップエタロンの場合、反射鏡間隔Lの制御は、反射鏡移動手段によって、何れか一方の反射鏡8を、反射鏡8に垂直な方向(X軸方向)に移動させることによって実現できる。なお、反射鏡移動手段としては、例えば、何れか一方の反射鏡8を、アクチュエータでX軸方向に駆動される移動台上に設け、前記アクチュエータの駆動により、前記移動台とともに前記反射鏡8を、反射鏡8に垂直な方向(X軸方向)に移動させる構成とすることによって実現できる。
【0029】
そして、ファブリペローフィルタ5は、その反射鏡間隔Lを制御することにより、変調器3から出射された周波数間隔fmの多波長光がファブリペローフィルタ5に入射するとき、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)fFSRが、前記周波数間隔fmの整数N倍(fFSR=N×fm)となるように設定されている。なお、Nは正の整数である。また、変調器3から出射される周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と、ファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように、CW光源2のCW光の周波数fSが調整されている。
【0030】
このため、ファブリペローフィルタ5から出射される多波長光の周波数間隔は、周波数間隔fmの整数N倍(N×fm)となる。図4にN=2の場合について示す。この場合、ファブリペローフィルタ5によって、図4(a)に示すように周波数間隔fmの多波長光の線スペクトルが1本おきに取り出され、図4(b)に示すような周波数間隔fmの2倍の周波数間隔2×fm(=fFSR)を持つ多波長光を発生することができる。
【0031】
例えば、最終的に多波長光発生装置1(ファブリペローフィルタ5)から出力したい多波長光の周波数間隔をfoutとし、ファブリペローフィルタ5に入射する多波長光の周波数間隔fmの限界(上限)をflimitすると、fout<flimitではfm=fFSR とし、fout=flimit 〜2flimitのときは、fFSR=2×fm、且つ、flimit≧fm≧flimit/2とすることで、fmをflimit以下にしつつflimit以上の周波数間隔foutを持つ多波長光を発生させることができる。
【0032】
つまり、図5にflimitが25GHzの場合のfout、fm、fFSRの関係を例示しているように、(N−1)flimit<fout<Nflimitのとき、fFSR= N×fmとすることで、任意の周波数間隔foutの多波長光を得ることができる。
【0033】
即ち、図5の例では、ファブリペローフィルタ5に入射する多波長光の周波数間隔fmとファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)fFSRの関係が図5中に実線で示すような関係となるように信号発生装置4の繰り返し周期fmの制御と、ファブリペローフィルタ5の反射鏡間隔Lの制御とを行なうことにより、図5中に点線で示すようにファブリペローフィルタ5から出射する多波長光の周波数間隔foutを連続的に変更して、任意の周波数間隔foutの多波長光を得ることができる。
また、ファブリペローフィルタ5に入射する多波長光の周波数間隔(信号発生装置4の繰り返し周期)fmは変えず(例えば25GHzのままとし)、ファブリペローフィルタ5の反射鏡間隔Lだけを制御して(変えて)、fmとfFSRの関係が図5中の実線上の関係となるようにすることにより、foutを離散的(25、50、75GHz)に変更することもできる。
なお、上記のようなfoutの変更(設定)、即ち周波数間隔(繰り返し周期)fmの制御や反射鏡間隔Lの制御は、光伝送システムにおいてWDM信号の送信を開始する前だけでなく、WDM信号の送信中にも行なうことができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態例1の多波長光発生装置1は、周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段と、平行に対向する2枚の反射鏡8を有して成るファブリペローフィルタ5とを有し、多波長光生成手段で生成した周波数間隔fmの多波長光を、ファブリペローフィルタ5に入射し、2枚の反射鏡8の距離Lを制御して、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)が周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数とファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、ファブリペローフィルタ5から、周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成としたことを特徴としている。
また、多波長光生成手段は、CW光源2と信号発生装置4と変調器3とを有し、CW光源2から発せられるCW光を、信号発生装置4から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて変調器3で変調することにより、周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、ファブリペローフィルタ5は、信号発生装置4から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであることを特徴としている。
【0035】
このため、本実施の形態例1の多波長光発生装置1によれば、単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができるため、経済的であるという効果を奏する。
また、本実施の形態例1の多波長光発生装置によれば、伝送信号のビットレートや伝送路の状況の変化に応じて周波数間隔を連続的に変化させることができるため、伝送信号の品質が向上するという効果も奏する。
【0036】
〔実施の形態例2〕
図6に示す光伝送システムは、本発明の実施の形態例2に係る多波長光発生装置11と、光伝送用の光ファイバ6と、受信機7とを有して成るものである。この光伝送システムでは、多波長光発生装置11から発せられた多波長光を、その後段の変調器(図示省略)で伝送データにより変調してWDM信号とした後、このWDM信号を光ファイバ6で伝送して、受信機7で受信する。
【0037】
図6に示すように、本実施の形態例2の多波長光発生装置11は、CW光源12と、マッハツェンダ型強度変調器13と、正弦波発生装置14と、位相変調器15と、ファブリペローフィルタ5とを有して成るものである。CW光源12とマッハツェンダ型強度変調器13と正弦波発生装置14と位相変調器15は、ファブリペローフィルタ5に入射する周波数間隔fmの多波長光を生成するための多波長光生成手段を構成している。ファブリペローフィルタ5は上記実施の形態例1(図1)のファブリペローフィルタ5と同様のものである。
【0038】
CW光源12は周波数fSのCW光を発生し、このCW光はマッハツェンダ型強度変調器13に入射される。
正弦波発生装置14は周波数fmの正弦波の電圧を発生して、マッハツェンダ型強度変調器13と位相変調器15とに印加する。なお、図示は省略するが、正弦波発生装置14では正弦波発生器と位相シフタと各変調器13,15毎に設けた電気増幅器とを備えており(図7参照)、マッハツェンダ型強度変調器13に印加する正弦波電圧と位相変調器15に印加する正弦波電圧に関して、両者とも周波数fmは同じであるが、振幅は前記電気増幅器でそれぞれ増幅して各変調器13,15に適した値とし、位相は前記位相シフタで位相シフト(位相調整)して各変調器13,15における変調のタイミングを調整するようにしている。
【0039】
CW光源12から出射されるCW光を、正弦波発生装置14から発せられる(印加される)周波数fmの正弦波電圧に基づいて、マッハツェンダ型強度変調器13で強度変調し且つ位相変調器15で位相変調することにより、周波数間隔fmの多波長光を生成して、ファブリペローフィルタ5に入射する。
【0040】
このとき、正弦波発生装置14から発せられる周波数fmの正弦波電圧の振幅をマッハツェンダ型強度変調器13の半波長電圧Vπ1の半分(Vπ1/2)に設定し、この正弦波電圧を用いてマッハツェンダ型強度変調器13において、50%デューティー比の繰り返しパルスを生成し、このパルスに対して位相変調器15で正弦波発生装置14から発せられる同じ周波数fmの正弦波電圧を用いて位相変調することにより、発生する各多波長光の強度を平坦にすることができるため、光伝送システムに適した多波長光を発生させることができる。また、発生する多波長光の数は位相変調器15において実現される変調指数Δθに比例して増加するため、柔軟に多波長光の発生を制御できる。
【0041】
そして、本実施の形態例2でも上記実施の形態例1と同様に、ファブリペローフィルタ5は、その反射鏡間隔Lを制御することにより、位相変調器15から出射された周波数間隔fmの多波長光がファブリペローフィルタ5に入射するとき、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)fFSRが、前記周波数間隔fmの整数N倍(fFSR=N×fm)となるように設定されている。また、位相変調器15から出射される周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と、ファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように、CW光源12のCW光の周波数fSが調整されている。
このため、ファブリペローフィルタ5から出射される多波長光の周波数間隔は、周波数間隔fmの整数N倍(N×fm)となる。
【0042】
即ち、本実施の形態例2の構成においても、上記実施の形態例1に記載の方法を用いることができ、正弦波発生装置14から発せられる正弦波電圧の周波数fmと、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)fFSRを、(N−1)flimit<fout<Nflimitのとき、fFSR= n×fmとすることで、任意の周波数間隔foutの多波長光を得ることができる。
【0043】
上記の発明の効果を確認するために、実際に図7に示す実験系において、多波長光を発生させた。CW光源12から発せられたCW光(波長は1310nm)を、PDFA(Praseodymium doped fiber amplifier)16で増幅した後、マッハツェンダ型強度変調器の一種であるLN(LiNbO3)強度変調器13に入射した。なお、PDFA16は必要に応じて適宜設ければよい。
【0044】
正弦波発生装置14では周波数fmの正弦波電圧を発生して、LN強度変調器13と変調器の一種であるLN(LiNbO3)位相変調器15とに印加した。正弦波発生装置14では正弦波発生器17と位相シフタ20と各変調器13,15毎に設けた電気増幅器18,19とを備えており、LN強度変調器13に印加する正弦波電圧とLN位相変調器15に印加する正弦波電圧に関して、両者とも周波数fmは同じであるが、振幅は電気増幅器18,19でそれぞれ増幅して各変調器13,15に適した値とする。また、位相シフタ20は、LN位相変調器15に印加する正弦波電圧の位相をシフトして、LN強度変調器13における強度変調とLN位相変調器15における位相変調のタイミングの調整のために用いている。
【0045】
LN強度変調器13では、正弦波発生装置14から印加される周波数fmが25GHzの正弦波電圧に基づいて強度変調することにより、繰り返し周期が25GHzの繰り返しパルスを生成し、その後段のLN位相変調器15では、正弦波発生装置14から印加される周波数fmが25GHzの正弦波電圧に基づき、変調指数Δθ=4.67πで位相変調を行った。
【0046】
なお、変調指数Δθは、LN位相変調器15において、位相をπずらすために必要な半波長電圧Vπ2と、正弦波発生装置14から印加される正弦波電圧の振幅Vより、以下の[数5]式で求められる。
【数5】

【0047】
LN位相変調器15で発生した多波長光の光スペクトルを図8(a)に示す。この図8(a)から、25GHzの周波数間隔で30以上の多波長光が発生していることがわかる。
この多波長光を、透過周波数間隔(FSR)fFSR=50GHzのファブリペローフィルタ5に入射することにより、図8(b)に示すような光スペクトルの多波長光を得た。図8(b)より、50GHzの周波数間隔で15以上の多波長光を得ることに成功したことがわかる。これ以降、ファブリペローフィルタ5で発生した各多波長光を、図8(b)に示すとおり、チャネル−7〜7と呼ぶこととする。
なお、ここで用いたファブリペローフィルタ5の透過特性は図9に示すとおりであり、帯域は1GHzである。
また、CW光源12のCW光の周波数fSはファブリペローフィルタ5の中心周波数に合うように調整した。
【0048】
次に、この多波長光発生装置11で発生した50GHzの周波数間隔の多波長光を用いて伝送実験を行った。実験系は図10に示すとおりである。図10中の多波長光発生装置11は図7に示したものである。
多波長光発生装置11で発生した多波長光を、PDFA31で増幅した後、LN強度変調器32で一括にパルスパターン発生器33から発せられる10Gbps信号(215−1ビット長のパターンを有する擬似ランダム信号)に基づいて変調することによりWDM信号を生成し、このWDM信号をPDFA34で増幅した後、長さ24kmの光ファイバ35に入射した。ここで用いた光ファイバ35の損失と波長分散量は、1310nmにおいて0.6dB/km、14ps/nm/kmである。
【0049】
光ファイバ35を通過後のWDM信号は、PDFA36で増幅した後、光バンドパスフィルタ37、可変光減衰器38、PDFA39、光バンドパスフィルタ40及び光/電気変換器41を介して、エラー測定器42に入力した。即ち、光ファイバ35を通過後のWDM信号から、1つの信号を光バンドパスフィルタ37,40で取り出し、この取り出した信号を光/電気変換器41で電気に変換してエラー測定器42に入力することにより、エラー測定器42で前記信号の品質を評価した。
【0050】
図11(a)にチャネル0におけるエラー測定器42の受信前の光スペクトルを示す。光バンドパスフィルタ37,40によってチャネル0の信号のみが取り出されていることがわかる。図11(b)にチャネル0のビット誤り率、アイパターンの測定結果を示す。図11(b)から、光ファイバを伝送させずに測定したビット誤り率(Back-to-back)と比較して低いパワーペナルティで伝送できたことがわかる。また、サンプリングオシロスコープにより測定した結果においても良好なアイパターンが得られていることが確認できた。
図12は全てのチャネルについて、ビット誤り率が10-9となる受光強度を示したものである。図12に示すように、全てのチャネルについて、Back-to-backと比較し、平均0.7dBの劣化に抑えることができている。
【0051】
以上のように、本実施の形態例2の多波長光発生装置11は、周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段と、平行に対向する2枚の反射鏡8を有して成るファブリペローフィルタ5とを有し、多波長光生成手段で生成した周波数間隔fmの多波長光を、ファブリペローフィルタ5に入射し、2枚の反射鏡8の距離Lを制御して、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)が周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数とファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、ファブリペローフィルタ5から、周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成としたことを特徴としている。
また、多波長光生成手段は、CW光源12と正弦波発生装置14とマッハツェンダ型強度変調器13と位相変調器15とを有し、CW光源12から出射したCW光を、正弦波発生装置14から発せられる周波数fmの正弦波電圧に基づいてマッハツェンダ型強度変調器13で強度変調し且つ位相変調器15で位相変調することにより、周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、ファブリペローフィルタ5は、正弦波発生装置14から発せられる正弦波電圧の周波数fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであることを特徴としている。
【0052】
このため、本実施の形態例2の多波長光発生装置11によれば、単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができるため、経済的であるという効果を奏する。
また、本実施の形態例11の多波長光発生装置によれば、伝送信号のビットレートや伝送路の状況の変化に応じて周波数間隔を連続的に変化させることができるため、伝送信号の品質が向上するという効果も奏する。
【0053】
〔実施形態3〕
図13に示す光伝送システムは、本発明の実施の形態例3に係る多波長光発生装置51と、光伝送用の光ファイバ6と、受信機7とを有して成るものである。この光伝送システムでは、多波長光発生装置51から発せられた多波長光を、その後段の変調器(図示省略)で伝送データにより変調してWDM信号とした後、このWDM信号を光ファイバ6で伝送して、受信機7で受信する。
【0054】
図13に示すように、本実施の形態例3の多波長光発生装置51は、モード同期レーザ52と、信号発生装置53と、光ファイバ54と、ファブリペローフィルタ5とを有して成るものである。モード同期レーザ52と信号発生装置53と光ファイバ54は、ファブリペローフィルタ5に入射する周波数間隔fmの多波長光を生成するための多波長光生成手段を構成している。ファブリペローフィルタ5は上記実施の形態例1(図1)のファブリペローフィルタ5と同様のものである。
【0055】
信号発生装置53は、繰り返し周期fmの電気信号を発生して、モード同期レーザ52に印加する。モード同期レーザ52は、信号発生装置53から発せられる電気信号の繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスを発生する。このモード同期レーザ52から発せられたパルスを光ファイバ54に入射して、光ファイバ54で自己位相変調を発生させることにより、信号発生装置53から発せられる電気信号の繰り返し周期fmと同じ周波数間隔fmの多波長光を生成して、ファブリペローフィルタ5に入射する。
【0056】
そして、本実施の形態例3でも上記実施の形態例2と同様に、ファブリペローフィルタ5は、その反射鏡間隔Lを制御することにより、光ファイバ54から出射された周波数間隔fmの多波長光がファブリペローフィルタ5に入射するとき、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)fFSRが、前記周波数間隔fmの整数N倍(fFSR=N×fm)となるように設定されている。また、光ファイバ54から出射される周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と、ファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように、モード同期レーザ52に含まれているCW光源のCW光の周波数が調整されている。
このため、ファブリペローフィルタ5から出射される多波長光の周波数間隔は、周波数間隔fmの整数N倍(N×fm)となる。
【0057】
即ち、本実施の形態例3の構成においても、上記実施形態1に記載の方法を用いることができ、信号発生装置53から発せられる電気信号の繰り返し周期fmと、ファブリペローフィルタの透過周波数間隔(FSR)fFSRを、(N−1)flimit<fout<Nflimitのとき、fFSR= n×fmとすることで、任意の周波数間隔foutの多波長光を得ることができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態例3の多波長光発生装置51は、周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段と、平行に対向する2枚の反射鏡8を有して成るファブリペローフィルタ5とを有し、多波長光生成手段で生成した周波数間隔fmの多波長光を、ファブリペローフィルタ5に入射し、2枚の反射鏡8の距離Lを制御して、ファブリペローフィルタ5の透過周波数間隔(FSR)が周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数とファブリペローフィルタ5の透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、ファブリペローフィルタ5から、周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成としたことを特徴としている。
また、多波長光生成手段は、信号発生装置53とモード同期レーザ52と光ファイバ54とを有し、信号発生装置53から発せられる繰り返し周期fmの電気信号をモード同期レーザ52に印加して、前記繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスをモード同期レーザ52から発生させた後、このモード同期レーザ52から発せられるパルスを光ファイバ54に入射して、自己位相変調させることにより、周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、ファブリペローフィルタ5は、信号発生装置53から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであることを特徴としている。
【0059】
このため、本実施の形態例3の多波長光発生装置51によれば、単一の多波長光発生装置で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができるため、経済的であるという効果を奏する。
また、本実施の形態例51の多波長光発生装置によれば、伝送信号のビットレートや伝送路の状況の変化に応じて周波数間隔を連続的に変化させることができるため、伝送信号の品質が向上するという効果も奏する。
【0060】
〔実施形態4〕
本発明の実施の形態例4に係る多波長光発生装置は、図1の構成の多波長光発生装置1又は図6の構成の多波長光発生装置11又は図13の構成の多波長光発生装置51において、fFSR=N×fmであるとき、ファブリペローフィルタ5が、
【数6】

を満たす振幅反射率rを有することを特徴とするものである。
【0061】
上記実施の形態例1〜3において、多波長光発生装置1,11,51は任意の周波数間隔foutの多波長光を発生させることができることを述べたが、光伝送システムにおいては、背景技術の欄で述べたようにWDM信号間のクロストークを−24dB以下としなければならない。
つまり、ファブリペローフィルタ5で任意の周波数間隔foutの多波長光を取り出してキャリア光とするとき、1つ以上離れたキャリア光とのクロストークは十分小さいとして無視すると、隣接する2つのキャリア光との消光比を27dB以上とする必要がある。
【0062】
ファブリペローフィルタ5の透過スペクトルの最大値は[数3]式においてcos(2kL)=1のときであり(θ=0と仮定したとき)、
【数7】

で求められる。多波長光の一つの線スペクトルの周波数が、この透過強度が最大となる周波数と一致しているとし、fFSR=N×fmであるときの隣接線スペクトルの透過強度I´は、
【数8】

となる。この線スペクトルとの消光比はImax/I´で求められ、
【数9】

となる。これは、デシベル単位で表記すると、
【数10】

となり、[数10]式を27dB以上とするようなRをファブリペローフィルタ5内の反射鏡8を設定することで、WDM信号間のクロストークを−24dB以下とすることができる。
【0063】
図8(b)に示した結果では、[数10]式を27dB以上とするような振幅反射率rを有するファブリペローフィルタ5(fFSR=50GHz、フィネスF=50)を用いている。なおフィネスFは
【数11】

で求められ、計算による隣接線スペクトルとの消光比は30dBであり、図8(b)から27dB以上の消光比が得られていることがわかる。
【0064】
以上のように、本実施の形態例4の多波長光発生装置によれば、ファブリペローフィルタ5が、上記[数6]式を満たす振幅反射率rを有するものであることを特徴としているため、WDM信号間のクロストークを−24dB以下とすることができ、信号の品質が向上するという効果を奏する。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は多波長光発生方法及び多波長光発生装置に関するものであり、単一の多波長光発生装置(多波長光源)で任意の周波数間隔の多波長光を発生することができるため、経済的であり、伝送信号のビットレートや伝送路の状況の変化に応じて周波数間隔を連続的に変化させることができ、信号の品質を向上させることができるため、大容量・長距離通信を実現することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 多波長光発生装置
2 CW光源
3 変調器
4 信号発生装置
5 ファブリペローフィルタ
6 光ファイバ
7 受信機
8 反射鏡
11 多波長光発生装置
12 CW光源
13 マッハツェンダ型強度変調器(LN強度変調器)
14 正弦波発生装置
15 位相変調器(LN位相変調器)
16 PDFA
17 正弦波発生器
18,19 電気増幅器
20 位相シフタ
51 多波長光発生装置
52 モード同期レーザ
53 信号発生装置
54 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数間隔fmの多波長光を、平行に対向する2枚の反射鏡を有して成るファブリペローフィルタに入射し、
前記2枚の反射鏡の距離を制御して、前記ファブリペローフィルタの透過周波数間隔が、前記周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、前記周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と前記ファブリペローフィルタの透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、
前記ファブリペローフィルタから、前記周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射することを特徴とする多波長光発生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、CW光源から出射されるCW光を、信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて変調器で変調することにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする多波長光発生方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、CW光源から出射されるCW光を、正弦波発生装置から発せられる周波数fmの正弦波電圧に基づいてマッハツェンダ型強度変調器で強度変調し且つ位相変調器で位相変調することにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記正弦波発生装置から発せられる正弦波電圧の周波数fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする多波長光発生方法。
【請求項4】
請求項1に記載の多波長光発生方法において、
前記周波数間隔fmの多波長光は、信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号をモード同期レーザに印加して、前記繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスを前記モード同期レーザから発生させた後、このモード同期レーザから発せられるパルスを光ファイバに入射して、自己位相変調させることにより、生成し、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有すること、
を特徴とする多波長光発生方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の多波長光発生方法において、
前記ファブリペローフィルタは、
【数12】

を満たす振幅反射率rを有することを特徴とする多波長光発生方法。
【請求項6】
周波数間隔fmの多波長光を生成する多波長光生成手段と、
平行に対向する2枚の反射鏡を有して成るファブリペローフィルタとを有し、
前記多波長光生成手段で生成した前記周波数間隔fmの多波長光を、前記ファブリペローフィルタに入射し、前記2枚の反射鏡の距離を制御して、前記ファブリペローフィルタの透過周波数間隔が前記周波数間隔fmの整数N倍となるように設定し、且つ、前記周波数間隔fmの多波長光の何れか1つの光の周波数と前記ファブリペローフィルタの透過周波数の何れか1つとが一致するように設定することにより、前記ファブリペローフィルタから、前記周波数間隔fmの整数N倍の周波数間隔N×fmの多波長光を出射する構成としたことを特徴とする多波長光発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、CW光源と信号発生装置と変調器とを有し、前記CW光源から発せられるCW光を、前記信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号に基づいて前記変調器で変調することにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする多波長光発生装置。
【請求項8】
請求項6に記載の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、CW光源と正弦波発生装置とマッハツェンダ型強度変調器と位相変調器とを有し、前記CW光源から出射したCW光を、前記正弦波発生装置から発せられる周波数fmの正弦波電圧に基づいて前記マッハツェンダ型強度変調器で強度変調し且つ前記位相変調器で位相変調することにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記正弦波発生装置から発せられる正弦波電圧の周波数fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする多波長光発生装置。
【請求項9】
請求項6に記載の多波長光発生装置において、
前記多波長光生成手段は、信号発生装置とモード同期レーザと光ファイバとを有し、前記信号発生装置から発せられる繰り返し周期fmの電気信号を前記モード同期レーザに印加して、前記繰り返し周期fmと同じ繰り返し周期fmのパルスを前記モード同期レーザから発生させた後、このモード同期レーザから発せられるパルスを前記光ファイバに入射して、自己位相変調させることにより、前記周波数間隔fmの多波長光を生成するものであり、
前記ファブリペローフィルタは、前記信号発生装置から発せられる電気信号の繰り返し周期fmの整数N倍の透過周波数間隔N×fmを有するものであること、
を特徴とする多波長光発生装置。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載の多波長光発生装置において、
前記ファブリペローフィルタは、
【数13】

を満たす振幅反射率rを有するものであることを特徴とする多波長光発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−2623(P2011−2623A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145100(P2009−145100)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】