説明

多点切換え型測定装置

【課題】特定チャンネル測定の更新周期を早くし他のチャンネル測定の更新周期を遅くすることで全チャンネルの測定を可能とする多点切換え型測定装置を実現する。
【解決手段】複数チャンネルのアナログ入力信号及び内部キャリブレーション信号を順次マルチプレクサで切換え、ADコンバータによりデジタル変換してデジタル処理装置に入力する多点切換え型測定装置において、
前記デジタル処理装置は、
前記複数チャンネルの入力信号のうち、高速更新を要するチャンネルと他のチャンネル又は前記内部キャリブレーション信号との組み合わせを順次切り換えて前記ADコンバータに入力するための操作信号を前記マルチプレクサに与えるシーケンス操作手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数チャンネルのアナログ入力信号及び内部キャリブレーション信号を順次マルチプレクサで切換え、ADコンバータによりデジタル変換してデジタル処理装置に入力する多点切換え型測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多点切換え型測定装置では、複数チャンネルのアナログ入力信号をマルチプレクサで切り換え、1つのADコンバータでデジタル変換してデジタル処理装置に入力することでチャンネル単価を下げている。
【0003】
図3は、従来の多点切換え型測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。破線のブロックで示す多点切り換え型測定装置1は、チャンネルCH1、CH2,CH3、CH4で示す外部のアナログ信号源11乃至14からの信号S1乃至S4並びに内部のキャリブレーションチャンネルCAL1、CAL2で示すキャリブレーション信号源21、22からの信号C1,C2を入力し、これら信号をマルチプレクサ30で順次切り換える。
【0004】
マルチプレクサ30で切り換えられた信号は、1台のADコンバータ40で順次デジタル値に変換されてデジタル処理装置50に入力され、信号処理手段51で所定の演算処理等を実行して出力手段52を介して外部装置に出力される。
【0005】
チャンネルCH1乃至CH4で示すアナログ信号源11乃至14の信号S1乃至S4は、物理量の測定値を示す電圧値、電流値、抵抗値であり、キャリブレーションチャンネルCAL1、CAL2で示すキャリブレーション信号源21、22からの信号C1,C2は、ゼロ点調整信号、スパン調整信号または内部端子温度である。
【0006】
図4は、従来装置の動作手順を説明する他のフローチャートである。ステップS1でチャンネルCH1の入力信号を処理し、以下ステップS2乃至S4でチャンネルCH2乃至CH4の入力信号を処理し、ステップS5で内部キャリブレーション信号を処理してステップS1に戻る。
【0007】
図5は、従来装置の動作手順を説明するフローチャートである。チャンネルCH1の信号処理の周期を早めるために、チャンネルCH2乃至CH4の測定はスキップし、ステップS1でチャンネルCH1の入力信号を処理し、ステップS2で内部キャリブレーション信号を処理してステップS1に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−015921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来装置では次のような問題がある。
(1)例えば1チャンネルの測定に25ms程度が必要な場合、図4に示す手順による測定では、125ms(25ms×5)で4入力+内部CALの測定ができるが。チャンネルCH1乃至CH4測定の更新周期は125msを要する。
【0010】
(2)図5に示す手順による測定では、50ms(25ms×2)の更新周期でチャンネルCH1の測定が可能であるが、チャンネルCH2乃至CH4の測定が犠牲になる。即ち、遅くて多チャンネル測定、早くて少チャンネル測定のどちらかを選択せざるを得なかった。
【0011】
本発明の目的は、特定チャンネル測定の更新周期を早くし他のチャンネル測定の更新周期を遅くすることで全チャンネルの測定を可能とする多点切換え型測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)複数チャンネルのアナログ入力信号及び内部キャリブレーション信号を順次マルチプレクサで切換え、ADコンバータによりデジタル変換してデジタル処理装置に入力する多点切換え型測定装置において、
前記デジタル処理装置は、
前記複数チャンネルの入力信号のうち、高速更新を要するチャンネルと他のチャンネル又は前記内部キャリブレーション信号との組み合わせを順次切り換えて前記ADコンバータに入力するための操作信号を前記マルチプレクサに与えるシーケンス操作手段を備えることを特徴とする多点切換え型測定装置。
【0013】
(2)前記内部キャリブレーション信号は、ゼロ点調整信号、スパン調整信号または内部端子温度の少なくともいずれかであることを特徴とする(1)に記載の多点切換え型測定装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)例えば1チャンネルの測定に25ms程度が必要な場合、特定のチャンネルCH1は50ms(25ms×2)の更新周期で測定が可能である。
【0015】
(2)内部キャリブレーションの測定を2チャンネルとした場合、他のチャンネルCH2乃至CH4の更新周期は250ms(25ms×10)となるが、図5のように他のチャンネルCH2乃至CH4の測定を犠牲にすることなく、全チャンネルの測定が可能である。
【0016】
(3)実際の測定現場では、全チャンネルの更新周期が早い必要はなく、例えば変化の激しい電圧測定は早い更新周期が必要であるが、変化が緩慢な温度測定等は更新周期を遅くしても良いので、更新周期を差別化しても差し障りはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した多点切り換え型測定装置の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明装置の動作手順を説明するフローチャートである。
【図3】従来の多点切り換え型測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】従来装置の動作手順を説明するフローチャートである。
【図5】従来装置の動作手順を説明する他のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した多点切り換え型測定装置の一実施例を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
図3の従来構成に追加された本発明の特徴部は、デジタル処理装置50の機能としてマルチプレクサ30の切り換えを制御するシーケンス操作手段100及び管理手段200を備える構成にある。
【0020】
シーケンス操作手段100は、複数チャンネルの入力信号のうち、高速更新を要するチャンネルCH1と他のチャンネルCH2乃至CH4又は内部キャリブレーション信号CAL1、CAL2との組み合わせを順次切り換えてADコンバータ40に入力するための操作信号Mをマルチプレクサ30に与える。
【0021】
管理手段200は、シーケンス操作手段100及び信号処理処断51に信号処理のスタート及びストップ指令Pを与える。
【0022】
図2は、本発明装置の動作手順を説明するフローチャートである。ステップS1で測定がスタートすると、ステップS2のチェックでストップでないときにはステップS3で高速更新対象のチャンネルCH1の測定の次に他のチャンネルCH2を測定する。
【0023】
ステップS4のチェックでストップでないときにはステップS5で高速更新対象のチャンネルCH1の測定の次に他のチャンネルCH3を測定する。
【0024】
ステップS6のチェックでストップでないときにはステップS7で高速更新対象のチャンネルCH1の測定の次に他のチャンネルCH4を測定する。
【0025】
ステップS8のチェックでストップでないときにはステップS9で高速更新対象のチャンネルCH1の測定の次に内部キャリブレーションチャンネルCAL1を測定する。
【0026】
ステップS10のチェックでストップでないときにはステップS11で高速更新対象のチャンネルCH1の測定の次に内部キャリブレーションチャンネルCAL2を測定してステップS2に戻る。
【0027】
ステップS2、S4、S6、S8、S10のチェックでストップ指令があればステップS12にスキップして測定を終了する。
【0028】
この実施例では、高速更新対象のチャンネルをCH1の1チャンネルとしたが複数チャンネルのうち、高速更新対象のグループと他のグループを分け、高速更新を要するチャンネルの測定を終了した後に他のチャンネルの測定又は内部キャリブレーション信号の測定を順次実行するようにしてもよい。
【0029】
内部キャリブレーションチャンネルは、ゼロ点調整信号のチャンネルCAL1及びスパン調整信号のチャンネルCAL2を示したが、どちらか一方であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 多点切り換え型測定装置
11〜14 入力信号チャンネルCH1〜CH4
21、22 内部キャリブレーションチャンネルCAL1、CAL2
30 マルチプレクサ
40 ADコンバータ
50 デジタル処理装置
51 信号処理手段
52 出力手段
100 シーケンス操作手段
200 管理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネルのアナログ入力信号及び内部キャリブレーション信号を順次マルチプレクサで切換え、ADコンバータによりデジタル変換してデジタル処理装置に入力する多点切換え型測定装置において、
前記デジタル処理装置は、
前記複数チャンネルの入力信号のうち、高速更新を要するチャンネルと他のチャンネル又は前記内部キャリブレーション信号との組み合わせを順次切り換えて前記ADコンバータに入力するための操作信号を前記マルチプレクサに与えるシーケンス操作手段を備えることを特徴とする多点切換え型測定装置。
【請求項2】
前記内部キャリブレーション信号は、ゼロ点調整信号、スパン調整信号または内部端子温度の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の多点切換え型測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220698(P2011−220698A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86694(P2010−86694)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】