説明

多相流体混合物を特性づけるための方法及び装置

多相流体混合物の少なくとも1つの特性を決定するための方法であって、前記多相流体混合物の一部に所定の強度の交流エネルギーを印加する工程と、前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、前記多相流体混合物の前記特性を前記測定された電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工神経ネットワークなどの予知数学的アルゴリズムを用いた電気的インピーダンススペクトルの解析に基づいた多相流体混合物(例えば、スラリー、乳濁液、泡状の懸濁液、液体中の固体微粒子、気泡相)を特性化するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物や混合物が浴中において静止あるいは移動しているような、さらには連続的に流れているような多相流体混合物を含む多くの工業的プロセスにおいては、正確かつ廉価に相濃度を検出する方法及び手段の必要性が高まっている。また、これらの方法及び手段は、前記工業的プロセスにおいてオンラインで駆動するようなものであることが望ましい。従来においては、多相流体混合物の相濃度を検出するために、数多くの方法が用いられてきた。一般に、これらの方法では、各相間の特徴的な特性を見出すことによって、各相の相濃度を検出する。各相に対する前記特徴的な特性は前記各相の相濃度に依存する。したがって、その特性を計測することにより、前記相濃度を決定することができるようになる。前記特性としては、電気的特性(すなわち、伝導性及び容量)、密度、粘度、光の吸収や放射線の吸収などの特性を例示することができる。
【0003】
上述した導電性や容量を正確かつ安全に測定するには、相対的に単純な構成の装置を用いるのみで実施することができる。したがって、導電性及び容量に基づく特性化方法は、固液系のみでなく気液系における相濃度計測のために広く実用的に用いられている。
【0004】
このような導電性あるいは容量を計測するための装置としては、オルポート(Allport)らによるUSP4,266,425あるいはラブ(love)らによるUSP3,523,245に開示されている。
【0005】
しかしながら、このような先行技術に記載されたような装置においては、ある意味で致命的な欠点がある。電気的導電性に基づく方法では、多相流体混合物の液相における電気的導電性に対して極めて鋭敏に反応する。例えば、水性スラリーの電気的導電性は、水相に対して2.5重量%の割合で塩(NaCl)を加えると、約50倍にまで増大する。液相中の導電性が実質上時間的変化する場合、固相濃度を計算するに際しては、スラリー混合物及び液相の導電性が必要になる。しかしながら、スラリー混合物中における液相の導電性をオンラインで計測するに際しては、相分離の観点から一般には困難である。また、電気的導電性に基づく方法は、極めて低い電気的導電性を有する多相流体混合物に対して適用するには、一般的に困難である。また、容量に基づく方法では、連続相が非導電性である多相流体混合物に対してのみ適用することができる。水性スラリーの場合は、水相の高い電気的導電性に起因して誘電的な測定を妨げることとなる。
【0006】
油/水乳濁液混合物における水含有量の決定に際しては、水含有量がたとえ同じであっても、水連続乳濁液及び油連続乳濁液の電気的特性が全く異なるので、先行技術で述べたような装置では限界がある。また、先行技術で述べたような装置は、2相以上の流体混合物中における相組成を決定するための方法あるいは手段を提供してはいない。これは、互いに異なる相組成において、類似の導電性あるいは容量を示すことに起因する。また、先行技術で述べたような装置では、2相流体混合物中における分散相の濃度が低いときには、正確な測定を行うことができない。また、導電性あるいは容量に基づく方法は、励起交流電流(AC)信号の単一の周波数において得た、特定の限られた情報しか得ることができないという点で限界がある。混合物の導電性あるいは容量について、単一の値しか得られない場合においては、前記混合物における相組成及び前記相の内の1つの電気的特性が未知の場合において、前記相組成を決定するには不十分である。
【0007】
石炭及び鉱石の高密度の媒体分離、及び鉱物加工産業における研削などの工業的プロセスにおいては、固体が高濃度に水性スラリー中に存在する場合の、前記水性スラリー中の懸濁微粒子の平均的な粒子径をモニタリングすることが好ましい。現状においては、このような測定をオンラインにおいて実現でき、さらに簡易な構造で商業的に利用することができるようなモニタリング方法は存在しない。
【0008】
粒子サイズ分布を測定する慣用の方法では、対象となる気流中から試料を取り除き、これらの試料に対してスクリーン解析を行う。このスクリーン解析によれば、約45μm以上の粒径分布をかなり正確に決定することができる。また、超音波減衰、スキャンレーザ顕微鏡及び往復キャリパスなどを利用した商業的に利用可能な、3種類のオンライン粒子径アナライザーが存在する。しかしながら、これらのアナライザーは、平均粒子径が45μm以下であるスラリー混合物や、固体濃度が高いスラリー混合物や、液体が透明でないスラリー混合物などに対しては適していない。
【0009】
フロス浮選は、鉱石やその他の原料からの鉱物や他の貴重な成分を濃縮して得ようとする際に広く用いられている。前記鉱石などは、疎水性の相違に基づいて脈石から分離される。このような相違は自然に発生する場合もあるし、集積剤の添加によって制御することもできる。フロス浮選は、一般に、容器中において、水、鉱物、及び脈石粒を含むスラリーに対してエアーインジェクションを施す。分散した気泡は、疎水性の貴重な鉱物を引き付け、浮選セルの上部へ搬送する。かかる箇所において、前記鉱物は粉体鉱物を含むとともに、これを支持するようなフロス床あるいはフロス層を形成する。前記フロスははがされて、前記セルのへりに流されて分離を実現することができるようになる。この結果、凝縮された鉱物ベアリングフロスは、集積されるとともに加工され、所望の濃度まで凝縮されることになる。パルプはさらに加工され、他の貴重な鉱物を回収する。
【0010】
プロセスパラメータのオンライン測定は、フロス浮選工程の制御に対して必須の要件である。しかしながら、いくつかのプロセスパラメータは、低コストで高信頼性の測定装置を用いることにより、オンラインでモニタリングすることができるが、フロス浮選における効果的なオンラインモニタリングや制御の最適化は、浮選過程における強い慣性や、プロセス効率化のためのオンラインモニタリングにおける最適な変数の不周知、及び適当なオンライン測定装置が存在しないなどの理由で、達成は未だ困難である。
【0011】
フロス浮選工程におけるフロス相は、気泡サイズ、安定性、移動性、固体含有量及び水分含有量などの数多くの特性を含んでいる。試薬のタイプ、試薬投薬量、水化学、パルプレベル、投入速度、エアレーション速度などの操作条件は、フロス特性に反映される。
【0012】
フロス層の特性は、浮選品質及び回収率に関係する。フロス特性を直接的に測定することが困難であることを考慮すると、モニタリングツールとして簡易にオンライン測定することが可能であり、浮選品質及び回収率と密接に関係する他のフロス特性を用いることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、好ましくは、化合物及び混合物が、浴中で静止したあるいは移動した、さらいは導管中で連続的に流れているような、多相流体混合物を特性化付ける代替的な方法及び装置を提供する。特には、多相流体混合物を構成する各相の比率、油/水乳濁液混合物のタイプ、液固スラリー中における微細粒子の粒子径、及び気泡フロス相の特性を決定するための方法及び装置を提供する。
【0014】
なお、以下の記述において“電気的インピーダンススペクトル”なる記述は、複数の異なるエネルギー周波数に対する、虚数部のインピーダンス値と実部のインピーダンス値との、複素平面内におけるプロット、すなわち虚数的なインピーダンス値及び実数的なインピーダンス値から得られた量をプロットすることによって得た、複素平面内のプロットを意味するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様においては、多相流体混合物の少なくとも1つの特性を決定するための方法であって、
前記多相流体混合物の一部に所定の強度の交流エネルギーを印加する工程と、
前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、
前記多相流体混合物の前記特性を前記測定された電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする、多相流体混合物の特性決定方法を提供する。
【0016】
上記方法は、交流エネルギーの複数の異なる大きさに対して繰り返し実施することが好ましい。
【0017】
前記交流エネルギーは、交流電圧及び交流電流を含むことが好ましい。
【0018】
また、前記電気的インピーダンススペクトルは、多相流体の一部に対し、一定の振幅強度を有するAC電圧及び一定の振幅強度を有するAC電流を印加することによって測定することが好ましい。
【0019】
さらに、前記交流エネルギーは、多相流体の一部において電極を通じて印加するようにすることが好ましい。
【0020】
ここで、前記“電極”とは、端子やワイヤ、あるいは電流及び電圧を印加することにより電気的インピーダンススペクトルを測定するための同様のポイントを含むような広義の意味に解釈すべきである。
【0021】
また、前記電極は、一定の距離離隔させて配置させ、電気的インピーダンスの測定は、前記電極間の前記離隔させた距離の範囲内で行うことが好ましい。
【0022】
本発明の好ましい一態様においては、多相流体混合物を特性化づけるための装置であって、
前記多相流体混合物のサンプルゾーンにおける、少なくとも1つの特性を測定するための1対の電極と、
前記電極間に形成された前記電場の特性を測定するための測定手段と、
前記測定手段からデータを集積し、所定の形態で出力するための計算手段と、
を含む多相流体混合物の特性化装置を提供する。
【0023】
本発明の一態様において、前記装置は2つの電極を含む。
【0024】
好ましくは、前記2つの電極を通じて、一定の電位差(電圧)に対するEISを計測することが好ましい。
【0025】
本発明の装置の他の態様において、前記装置は3つの電極を含む。
【0026】
本発明の装置の他の態様において、前記装置は4つの電極を含む。
【0027】
前記4つの電極は、好ましくは2組の電極を含む。それぞれの組の電極は、電極間に一定の強度の電流が流れるように構成されている。
【0028】
前記測定手段は、好ましくは一対の電極間の電圧変化を測定するようにして構成する。
【0029】
また、前記装置は、前記電極を通じて一定強度の電流が流れるように構成され、あるいは一定強度の電圧が印加されるように構成され、あるいは対応する、互いに隣接した電極を通じて一定強度の電流及び電圧が印加されるように構成された電極を含むことが好ましい。
【0030】
一定強度の電流は、一対の電極をグループ化することによって提供する。
【0031】
本発明の他の態様においては、前記電気的インピーダンススペクトルは、異なる定電圧値、あるいは周期的に変化する定電流値に対して測定することが好ましい。
【0032】
本発明の多相流体混合物における一態様においては、多相流体混合物内に位置する電極に対して交流電流あるいは電圧を印加する工程と、
励起信号における、少なくとも1以上の選択された強度において、前記電極を通じて得た電気的インピーダンススペクトルを測定する工程と、
前記測定された電気的インピーダンススペクトルを、特性抽出アルゴリズムを利用してインジケータ量(indicator quantities)に変換する工程と、
前記測定された電気的インピーダンススペクトルの前記インジケータ量から、予知数学的モデルを用いることにより、前記多相流体混合物中の少なくとも1相の、少なくとも1つの特性を決定する工程とを具える。
【0033】
本発明の一態様において、前記方法は、0.1Hz−1MHzの周波数範囲において、インピーダンスの実部と虚部とを測定する工程を含む。これらインピーダンスの実部及び虚部は、インピーダンス、アドミッタンス、モジュール、及び誘電率などの数学的に関連したパラメータを含むことが好ましい。インピーダンス検知手段は、前記2〜4の電極内において構成する。
【0034】
好ましくは、前記方法は、各測定周波数あるいは測定インピーダンススペクトルにおいて、前記多相流体混合物の温度及びpH値を測定する工程を含むことが好ましい。
【0035】
前記多相流体混合物は、気体、固体、液体あるいはこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0036】
前記方法は、好ましくは前記測定した電気的インピーダンススペクトルをインジケータ量に変換する工程を含む。前記変換工程は、さらに理解し易い平均的な数のデータを得る工程と、局所加重回帰などの2D−データスムーシングアルゴリズムを用いることにより、スムース化された電気的インピーダンススペクトルを計算する工程と、インジケータ量及び温度、pH値を適当な数値範囲内にスケーリングする工程とを含む。前記電気的インピーダンススペクトルの、前記インジケータ量は、選択された周波数における実数のインピーダンス値と虚数のインピーダンス値とを含み、また1次及び2次の微分値を含み、実数のインピーダンス値の選択された範囲における虚数のインピーダンス値の平均値を含み、前記インピーダンススペクトルを表現するための数学的モデルのパラメータを含み、潜在的変数を含む。前記潜在的変数は、元のインピーダンススペクトル中に含まれる情報を要約したものであり、主成分分析(PCA)及び部分最小二乗法(PLS)などの多変量統計手法に基づいて計算したものである。
【0037】
前記方法は、好ましくは、前記電気的インピーダンススペクトルを前記インピーダンススペクトルの数学的モデルに適合させてインジケータ量を計算する工程を含む。前記数学的モデルは、さらに電気的等価回路モデル及び経験的な回帰式を含むことができる。
【0038】
前記方法は、好ましくは、温度及びpH値が結合したインジケータ量から、予知数学モデルを用いることにより、前記多相流体混合物中の少なくとも1相の、少なくとも1つの特性を決定する工程を具えることが好ましい。前記特性は、さらに、多相流体混合物を構成する各相の比率、油/水乳濁液混合物のタイプ、液固スラリーにおける微粒子の粒子サイズ、及び気泡フロス相の特性を含む。前記予知数学モデルは、トレーニングされた人工ニューラルネットワーク及び多変数回帰モデルを含む。
【0039】
前記方法は、好ましくは人工神経ネットワークを、多相流体混合物の公知の特性に関連した多数のインジケータ量を用いて、トレーニングし、認証する工程を具える。
【0040】
また、前記方法は、パターンマッチングアルゴリズムを用いることによって、前記インピーダンススペクトルを解析する工程を含み、粒子が充填された気泡フロス相の特性が浮選凝縮物の品質及び収率に対して好ましいか否かを決定する工程を含むことが好ましい。
【0041】
さらに、前記方法は、パターンマッチングアルゴリズムを用いることによって、前記インピーダンススペクトルを解析する工程を含み、油/水懸濁液が油連続のタイプか水連続のタイプかを決定する工程を含むことが好ましい。
【0042】
本発明は、さらに 多相流体中の不要物を解析する方法であって、
インピーダンススペクトルデータを受信する工程と、
複数の時間間隔毎にインピーダンススペクトルを記録する工程と、
前記受信したインピーダンススペクトルデータに対して前記インピーダンススペクトルのインジケータ量を計算する工程と、
前記インピーダンススペクトルのインジケータ量を参照インジケータ量と比較する工程と、
前記比較工程から、前記多相流体における少なくとも1相の、少なくとも1つの特性を決定する工程とを含み、
前記インピーダンススペクトルデータは、前記流体中に位置する前記電極間で測定した、実数のインピーダンス値と虚数のインピーダンス値とを含むことを特徴とする、多相流体中の不要物解析方法を提供する。
【0043】
前記方法は、多相流体混合物の特性を数値あるいは質的指標の形態で決定する工程を含むことができる。
【0044】
なお、電気的インピーダンススペクトルは、EIS(Electrical Impedance Spectrum)と表示する。
【0045】
また、本願明細書において、任意の先行技術文献が引用されているとしても、前記文献中に記載された内容は、オーストラリアあるいはその他の国おいては、本技術分野の一般的技術レベルを構成するものではない。
【0046】
また、“具える(comprising)、有する(having)及び含む(including)”なる文言は広義に解釈すべきであり、付加的な特徴をも付け加えることができると解釈すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の具体例を、電極タイプ、電極数、及び電極間距離を固定させた特定の電極構造が開示された図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、異なる電極タイプ、異なる電極数及び異なる電極間距離に対する具体例をも当然に包含するものである。これらの具体例における電気的インピーダンススペクトルは、以下に例示されたものとは異なるようになる。
【0048】
本発明の一実施例によれば、多相流体混合物の電気的インピーダンススペクトルは、広範囲の周波数範囲において測定され、前記多相流体混合物中の、対象となる特性パラメータが同定された。また、前記多相流体混合物成分における電気的インピーダンス特性の、AC信号による励起依存性が変化することが示された。したがって、広範囲の周波数帯域における前記多相流体混合物の電気的インピーダンス特性が対象となる特性パラメータを推定するための十分な情報を含むと考えられた。
【0049】
また、固液懸濁液の電気的及び誘電的特性は、相組成のみでなく、固体の粒子径にも依存することが判明した。また、前記懸濁液に対してAC電流が流された際に、表面電荷及びそれに関連した粒子の電気的二重層は、前記表面電荷の電荷中和過程に起因して、前記AC電流の相シフトを生ぜしめる。懸濁粒子の体積分率が所定の値を呈する場合、粒子径が小さくなるにつれて、表面電荷量は高くなる。相シフトは、表面電荷量に比例するので、粒子径が小さくなれば、より高い相シフトを生ぜしめるようになる。
【0050】
また、フロス相成分の電気的及び誘電的特性は成分間で互いに異なる。
【0051】
フロス相の電気的挙動の観点からは、水及び固体を含む気泡間ラメラは、電気伝導性、インダクタンス及び容量の複合ネットワークとして考えることができる。このネットワーク構造は、フロス構造及び特性の変化に対して鋭敏に反応する。したがって、広範囲の周波数帯域におけるフロス相の電気的インピーダンス測定は、そのフロス構造及び/又は特性を探ることになる。
【0052】
図1に示すように、多相流体混合物を特性化づける装置は、多相流体混合物12中に浸漬された、1対の流体測定電極11a及び11b、温度センサ13、EIS及び温度測定ユニット14、計算ユニット15及び出力ユニット16からなる。
【0053】
図2A〜2Dに言及すると、測定電極は導管の内壁あるいは容器壁面において、タップ付きロッド20a及び20b、あるいはリング23a及び23bの形態で設けられている。また、前記電極は、ドット25a及び25bのような形態の非導電性ロッド24上に設けることもできるし、任意の形状とすることができる板27a及び27bのような形態の非導電性スペーサ26上に設けることもできる。板状電極27a及び27bの代わりに、一方の電極が他方のシリンドリカルな電極で同軸状に囲まれたような構成にすることもできる。導管壁あるいは容器壁が導電性の場合、電極20a及び20bは、導電性壁21から隔離する必要があり、また、非導電性層22を導電性壁21の内壁を覆うようにして設ける必要がある。非導電性層22は、セラミックス、キャスティングバジル、プラスチックなどの適当な材料を含む。
【0054】
EIS及び損度測定ユニット14は、計算ユニット15及び各電極に接続されている。測定ユニット14は、計算ユニット15からの信号を受信し、所定の信号を計算ユニット15へ送信する。前記信号は、電気的、光学的に送受信できる他、電磁石ワイヤレスなどを用いて送受信することができる。出力ユニット16は好ましくは計算ユニット15で提供された結果を表示するビジュアルな表示器、例えばLCDなどとすることができる。
【0055】
測定ユニット14は、好ましくは所定の振幅及び周波数のAC信号を生成するための信号生成モジュール、前記AC信号の前記振幅及び位相角を測定するための測定モジュール、温度測定回路、自己補正−診断回路、及び信号生成を制御し、モジュールを測定し、計算ユニット15に対する信号の送受信を行うための内蔵型マイクロプロセッサを含む。
【0056】
計算ユニット15は、好ましくは測定ユニット14に対して制御変数あるいは指令を出力するための出力手段、測定温度、複数の異なる周波数に対する実数及び虚数のインピーダンス値を受信するとともに記録するための受信記録手段、受信データの妥当性をチェックするためのチェック手段、受信したデータを所定のデータ範囲内にスケーリングするためのスケーリング手段、測定したEISからのインジケータ量を計算するための計算手段、データをデータパターンに分類するための分類手段、及び前記インジケータ量から多相流体混合物の、少なくとも1つの特性を決定するための決定手段を含む。
【0057】
流体測定電極11a及び11bを介して電気的インピーダンススペクトルを測定することによって、多相流体混合物の特性を同定することができる。前記多相流体混合物は、好ましくは気体、固体、液体あるいはこれらの混合物を含むことができる。
【0058】
図3A及び3Bに示す例において、スラリーの電気的インピーダンススペクトルに対する相組成の影響を確かめることができる。水のみ、20体積%の砂を含む水スラリー、12体積%のマグネタイトを含む水スラリー、10体積%のマグネタイト及び20体積%の砂を含む水スラリーそれぞれの電気的インピーダンススペクトルを31、32、33、34で示した。図3Aは、周波数帯域0.5Hz−1MHzにおけるスペクトルを示している。EISに対する相組成の影響を強調すべく、図3Bには、100Hz−1MHzの周波数帯域における同様のスペクトルを示した。図3A及び図3Bは、水性スラリー混合物の相組成の変化に対して前記EISが鋭敏に反応することを示している。このような相組成に対する感度が本発明の基礎となっている。また、相中におけるマグネタイトはスペクトルに対して砂と異なる影響を与えていることが分かる。マグネタイトが存在する場合は、砂が存在する場合と異なり、スペクトルの高周波数側にピークを示すようになる。
【0059】
本発明の装置における異なる分散相中の相対的な組成差を識別する能力は、スペクトルに対してその組成差が異なる影響を与えることに基づいている。図3A及び図3Bに示すスペクトルの測定は、励起信号の相異なる強度に対して繰り返し行うことができる。また、スペクトルの強度依存性において、その他のファクターがEISを変化させていることが分かる。
【0060】
図4A及び図4Bは、異なる結晶含有量の砂糖シロップに対して得たEISである。図4Aに示す白砂糖の場合、その未飽和シロップ41(20体積%の水と80体積%の飽和シロップを含む)のEISは飽和シロップ42のEISと相当程度に異なる。前記飽和シロップに対して10体積%の割合で白砂糖結晶を加えることにより、スペクトル43を得ることができる。未飽和砂糖シロップ、飽和砂糖シロップ及び砂糖結晶を10体積%の割合で含む飽和砂糖シロップの電気的インピーダンススペクトルは、それぞれ44、45及び46で示される。図4Bにおける砂糖シロップに対するEISと、図4Aにおける白砂糖のEISとを比較すると、砂糖シロップのスペクトルにおいては、白砂糖のスペクトルと比較して、実数のインピーダンス値が低い値を示し、異なるスペクトルパターンを有することがわかる。これは、砂糖シロップ中に、可溶性の不純物が高濃度に含有されていることによる。図4A及び図4Bに示すように、EISは、母液中の結晶濃度のみでなく、母液の純度をも検出することができる。
【0061】
図5A及び図5Bは、水−油懸濁液に対するEIS曲線を示すものである。曲線51は、25体積%の水を含む、水含有油懸濁液に対するEISを示すものであり、曲線52は、50体積%の水を含む懸濁液に対するEISを示すものである。図5Bは、油含有水懸濁液に関するEISを示すものであり、50体積%及び75体積%の水含有油懸濁液に対するEISは、それぞれ53及び54として示されている。水含有油懸濁液に対するEISパターンは油含有水懸濁液に対するEISパターンとは異なる。この相違は、EISを用いた懸濁液の種類を同定するための基礎となる。
【0062】
図6は、固体成分の体積濃度が同一の場合における、スラリーEISの、粒子径に対する変化を示すグラフである。粒子径が30μmにおけるEIS曲線61は、粒子径が20μmにおけるEIS曲線62と相当程度異なる。粒子径が50μmを超えると、EISは粒子径の大きさに対して鋭敏ではなくなる。しかしながら、粒子径が50μmよりも小さい場合は、EIS曲線の変化を観察することによって、粒子径をモニタリングすることが可能となる。
【0063】
気泡浮選工程におけるフロス相は、多相流体混合物の特殊なタイプである。この場合、各成分の電気的特性及び誘電的特性は互いに異なる。例えば、水の伝導率は鉱物粒子の伝導率よりも数桁のオーダで異なる。フロス相における電気的挙動を考慮すると、水及び固体を含む気泡間ラメラは、電気伝導性、インダクタンス及び容量の複合ネットワークとして考えることができる。このネットワーク構造は、気泡浮選工程における操作条件における変化に対して鋭敏に反応する。したがって、試薬注入、供給速度及びフロス深さなどの操作条件の、浮選能力に与える影響は、測定されたEISに反映されることになる。したがって、フロス相の広範囲な励起周波数に対する電気的インピーダンスの測定は、浮選工程能力を探るための指針となる。
【0064】
図7は、種々の操作条件下における、粉炭の気泡浮選工程におけるフロス相において測定した電気的インピーダンススペクトルである。78%、74%及び68%の浮選率に対するスペクトルは、それぞれ71、72及び73で表すことができる。この図から、EISスペクトルは、製品終了と密接に関係していることが分かる。上記粉体の場合においては、スペクトル71が好ましいことが分かる。この好ましいスペクトル71は、操作条件を最適化するための目的関数として簡便に使用することができる。鉱物のような他の材料の気泡浮選においては、フロス相のEISパターンは図7に示すEISパターンと異なる。しかしながら、前記浮選能力が操作条件の変化に敏感に影響を受ける限りにおいて、EISの好ましいパターン及び関連する操作条件はEISを用いることによって同定することができる。
【0065】
図3〜図7に示す例においては、電気的インピーダンススペクトルが多相流体混合物の特性に関して十分な情報を与えることができることを明確に示している。これらの情報を多相流体混合物の特性のオンライン評価のために用いるためには、前記EISと前記多相流体混合物の相当する特性との間において、数学的あるいはその他の関連性が要求される。解析的手法及び経験的手法では複雑すぎる現象を解明し、モデリングするための種々のアプローチの中で、人工知能的データ解析手法、特に人工神経ネットワーク(ANN)は、モデル構造に対する特別な知識がない場合においても、複雑な非線形の関係を同定し、マッピングするための方法として有効である。人工神経ネットワーク手法は、フィードフォワードに起因した計算において有効であり、他のパラメータ評価アプローチに比較して、入力データに対する誤りに対しての高い耐性を有する。したがって、マルチプレイヤーパーセプトロン人工神経ネットワーク(MLP−ANN)が、本発明においては好ましく、しかしながら限定的ではないアプローチであり、多相流体混合物の測定されたEISから対象となる特性を評価する。多変数回帰及びファジー理論などに基づくANNなどの他のアプローチは、測定されたEISと多相流体混合物の特性とを関連付けるために有用である。
【0066】
上述した装置を用いたEIS測定から得た観察に基づけば、自動化手順を用いることにより、多相流体混合物の特性を同定することができる。図8は、この自動化手順を実行するためのフローチャートである。
【0067】
図8に示すように、電源がオンされると、測定ユニット14は自己診断を行い、ステップ80において初期化される。計算ユニット15は、ステップ81において、制御変数を測定ユニット14に対して送信する。制御変数は測定ユニット14で生成されたAC信号の振幅、周波数帯域、前記周波数帯域における測定点の数などを含む。
【0068】
測定ユニット14が制御変数を受信すると、ステップ82において、上述した装置を用いることにより、電気的インピーダンススペクトル、温度及び場合によってはpH値が測定され、記録される。ステップ82における、EIS、温度及びpH値の測定は、短時間の内に複数回繰り返され、それらの平均値はさらなるプロセスのために使用される。ステップ83において言及されているように、前記データが特定の目的に対して妥当である場合において、計算ユニット14は、ステップ84で示されているように、データプロセッサを駆動させ、前記データを所定の範囲にスケーリングする。前記データが適切でない場合は、アラーム信号がディスプレイ上に表示され、観測者に対して、不適切なデータが発生し、測定及び記録ステップ82が繰り返されることを知らせる。
【0069】
データが、所定の範囲内にスケーリングされた後は、計算ユニット15がプログラムされ、ステップ85に示されるように、スケーリングされたEISデータからインジケータ量を計算する。その後、ソフトウエアプログラムは、ステップ86においてデータパターンの分類解析を行い、EISデータパターンが人工神経ネットワーク(ANN)のトレーニング段階あるいは多変数回帰モデルの開発段階において確認されていないかどうかを同定する。答えが“YES”の場合は、アラーム信号がディスプレイ上に表示され、観測者に対して、新規のデータパターンが発生し、測定及び記録ステップ82が繰り返されることを知らせる。新規のデータパターンが繰り返し発生すると、計算ユニット15は、ANNモデルを再トレーニングする、あるいは前記データパターンを含むデータ群を用いることによって、多変数回帰モデルを再設定するようにプログラムされる。前記データパターンが新規なものでない場合は、多相流体混合物の特性の内の少なくとも1つの出力を、ステップ87において計算ユニット15によって生成する。マニュアル的な中断が生じない場合は、ステップ82における測定及び記録の工程が繰り返されることになる。
【0070】
ステップ83で示されるデータ認証ステップにおいて、精度の低いデータや、事前に特定された制限値に近接した値及び重大なノイズなどは廃棄され、データ品質を制御してさらなるプロセスを実行するようにする。ANNや多変数解析において、メインとなる解析を行う以前に、測定したEISや他のデータをスケーリングすることが必須となる。これは、測定したEISや他の変数が異なる群に属し、異なる値を示すことによる。本発明で有用なスケーリング方法は、カラムセンタリング、標準化及びレンジスケーリングを含む。レンジスケーリングは、種々の値を0から1の範囲、あるいは−1から1の範囲にスケーリングする。これらのスケーリングはカラム(すなわち、異なる測定において同一の周波数で得たデータポイント)に対してのみ適用される。
【0071】
周波数及び信号強度に依存した重要な情報を獲得するために、通常は、EISの測定に対して数多くの周波数ポイントが用いられ、前記測定は、励起信号の異なる強度に対して繰り返し実行する。人工神経ネットワークや多変数回帰などの数学的アプローチを適用し、測定したEISから特性を予測するに際して、スペクトルにおける総てのデータポイントを使用することによって、入力変数のディメンションを極めて大きくすることができる。しかしながら、入力変数のディメンションが不必要に大きくなると逆効果である。トレーニングデータパターンの数が固定された状態では、入力変数が増大すると、多次元空間において前記トレーニングデータパターンはよりまばらに存在するようになり、したがって、学習能力を損なうことになる。トレーニングされたANNモデルの一般性は、無関係なあるいは重要でない入力変数が取り込まれることによって、失われてしまう恐れがある。入力変数のディメンションを大幅に増大させてしまうような無関係あるいは重要でない変数は別として、互いに近接した周波数で測定して得たEISデータポイント間には相関性が存在する場合がある。相関性のある入力変数は、そのモデルを特定のデータサンプルの統計的特異性に対してより敏感に反応させ、オーバーフッティングの問題をより強調するようにするとともに、一般化を妨げてしまう。したがって、本発明においては、EISインジケータ量からより少ない数の変数を計算するあるいは抽出し、元のスペクトルの重要な情報を保持することは重要なステップである。
【0072】
電気的インピーダンススペクトルのインジケータ量は、種々の選択された周波数における実数のインピーダンス値と虚数のインピーダンス値とを含むとともに、前記スペクトルの1次及び2次の微分値、選択された実数のインピーダンス値の所定の範囲内における虚数インピーダンス値の平均値、前記インピーダンススペクトルを表現するための数学的モデルのパラメータを含み、潜在的変数(主要成分)を含む。前記潜在的変数は、元のインピーダンススペクトル中に含まれる情報を要約したものであり、主成分分析(PCA)及び部分最小二乗法(PLS)などの多変量統計手法に基づいて計算したものである。
【0073】
前記方法は、好ましくは、前記電気的インピーダンススペクトルを前記インピーダンススペクトルの数学的モデルに適合させてインジケータ量を計算する工程を含む。前記数学的モデルは、さらに電気的等価回路モデル及び経験的な回帰式を含むことができる。
【0074】
図9に示すように、ヘッブの学習則または同様な規則が適用された人工神経ネットワークを用いて実行されたPCAは、ローバスト性に対するインジケータ量を計算するために用いられる。PCAを解析的に実行するような公知のアルゴリズムが存在するが、これらのアルゴリズムでは、特異値分解に関係した行列式を解かなければならない。マトリックスが適当でないと数値解析は上手く行かず、PCA神経ネットワークは、より骨の折れる数値解析を行うようになる。
【0075】
インジケータ量がANNモデルのトレーニング段階あるいは多変数回帰モデルのディベロップ段階において見られなかったようなパターンを示す場合、前記インジケータ量を入力した際に得たこれらモデルの出力はエラーとなる。したがって、新たなデータのパターンが新しいか否かについてチェックする必要がある。データパターンの分類は、ANNに基づいたアプローチを用いることによって遂行することができる。前記アプローチとしては、無監視のベイズクラスタリングシステム(unsupervised Bayesian clustering system)あるいはPCAと関連したデータ再構築アプローチ(data reconstruction approach)などを例示することができる。測定したEIS(x)から計算されたインジケータ量がベクトルyで表される場合、再構築されたEISは
x’=W
で表すことができる。ここで、Wは重み行列である。
【0076】
再構築されたEIS、x’及び測定されたEIS、x間の相違が所定の閾値よりも大きい場合、測定されたEISのデータパターンは新たなものとして処理される。この新たなパターンが繰り返し生じる場合は、ANNモデルを再トレーニングし、多変数回帰モデルを再フィットさせる必要がある。
【0077】
ステップ87に示される予測工程では、前記ANNモデルは多変数回帰モデル、パターンマッチングアルゴリズムあるいはルックアップテーブルで置き換えることもできる。ステップ87において、ルックアップテーブルが用いられたとすると、測定されたEISのインジケータ量を参照インジケータ量と比較することによって、多相流体混合物の特性を決定することができる。トレーニングされたANNモデルあるいはルックアップテーブルなどの他のタイプのモデルから得た出力は、分類インデックスなどのような数値あるいは量的指標とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に従った多相流体混合物を特性化づけるための測定装置のブロック図である。
【図2】電気的インピーダンススペクトルの測定に際して用いることのできる電極対の可能な態様を示す図である。
【図3】相異なる組成を有する液固スラリーの電気的インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【図4】異なる砂糖結晶含有量の砂糖シロップにおける電気的インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【図5】水−油懸濁液の電気的インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【図6】相異なるサイズの粒子を含む液固スラリーの電気的インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【図7】相異なる特性を有するフロス(すなわち発泡)相の電気的インピーダンススペクトルを示すグラフである。
【図8】本発明の一実施例に従った、多相流体混合物を特性化づけるための方法に対するブロック図である。
【図9】DからM次元のデータを投影するPCA神経ネットワークである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相流体混合物の少なくとも1つの特性を決定するための方法であって、
前記多相流体混合物の一部に所定の強度の交流エネルギーを印加する工程と、
前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、
前記多相流体混合物の前記特性を前記測定された電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする、多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項2】
前記多相流体混合物の前記一部に異なる強度の交流エネルギーを印加する工程と、
前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、
前記多相流体混合物の前記特性を前記測定された電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項3】
前記多相流体混合物の前記一部に、互いに異なるとともに、それぞれが一定の振幅を有する複数の交流電流を印加する工程と、
前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、
前記多相流体混合物の前記特性を、前記振幅毎に測定して得た電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項4】
前記多相流体混合物の前記一部に、互いに異なるとともに、それぞれが一定の振幅を有する複数の交流電圧を印加する工程と、
前記多相流体混合物の前記一部から電気的インピーダンススペクトルを測定する工程とを含み、
前記多相流体混合物の前記特性を、前記振幅毎に測定して得た電気的インピーダンススペクトルから決定することを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項5】
少なくとも2つの電極を設ける工程と、
前記電極間における前記多相流体混合物の前記一部に対して、前記所定強度の前記交流エネルギーを印加する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項6】
3以上の電極を設け、前記交流エネルギーを印加する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項7】
前記測定した電気的インピーダンススペクトルを、特徴抽出アルゴリズムを用いることによって、複数のインジケータ値に変換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項8】
前記インジケータ値から、前記多相流体混合物中における少なくとも1相の、少なくとも1つの特性を決定する工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項9】
予知数学的モデルを用いることによって、前記多相流体混合物の1以上の特性を決定する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項10】
0.1Hz〜1MHzの範囲において、前記電気的インピーダンススペクトルの、実数部と虚数部とを測定する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項11】
前記多相流体混合物の温度及びpH値を、各測定された電気的インピーダンススペクトル毎に測定する工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項12】
前記変換工程は、スムーシングアルゴリズムを用いることによって得たスムース化された電気的インピーダンススペクトルを計算する工程を含むことを特徴とする、請求項11に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項13】
前記変換工程は、前記電気的インピーダンススペクトルをその数学的モデルに合致させることによって、インジケータ値を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項12に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項14】
前記数学的モデルは、電気的等価回路モデル及び経験的な回帰式を含むことを特徴とする、請求項13に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項15】
前記決定工程は、予知数学的モデルを用いる工程を含むことを特徴とする、請求項14に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項16】
前記予知数学的モデルは、トレーニングされた人工神経ネットワーク及び多変数回帰モデルを含むことを特徴とする、請求項15に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項17】
前記人工神経ネットワークを、多相流体混合物の公知の特性に関連した多数のインジケータ量を用いて、トレーニングし、認証する工程を含むことを特徴とする、請求項16に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項18】
パターンマッチングアルゴリズムを用いることによって、前記インピーダンススペクトルを解析し、粒子が充填された気泡フロス相の特性が浮選凝縮物の品質及び収率に対して好ましいか否かを決定する工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項19】
パターンマッチングアルゴリズムを用いることによって、前記インピーダンススペクトルを解析し、油/水懸濁液が油連続のタイプか水連続のタイプかを決定する工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の多相流体混合物の特性決定方法。
【請求項20】
多相流体混合物を特性化づけるための装置であって、
前記多相流体混合物のサンプルゾーンにおける、少なくとも1つの特性を測定するための、少なくとも1対の電極と、
前記電極間に電場を生成するための電場生成手段と、
前記電極間に形成された前記電場の少なくとも1つの特性を測定するための測定手段と、
前記測定手段からデータを集積するとともに加工し、前記電場生成手段によって生成された、一定強度の電圧又は電流に対して実数のインピーダンスデータと虚数のインピーダンスデータとを出力するデータプロセッシング手段と、
を具え、
前記サンプルゾーンは、前記電極間に位置することを特徴とする、多相流体混合物の特性化装置。
【請求項21】
前記特性化装置は3つの電極を有し、この3つの電極の内の、第1の電極及び第2の電極に一定の電圧を印加し、第2の電極及び第3の電極に一定の電圧を印加するように構成したことを特徴とする、請求項20に記載の多相流体混合物の特性化装置。
【請求項22】
前記特性化装置は4つの電極を有し、この4つの電極の内の、第1の電極及び第2の電極間、並びに第3の電極及び第4の電極間に一定の電流が流れるように構成したことを特徴とする、請求項20に記載の多相流体混合物の特性化装置。
【請求項23】
前記特性化装置は複数の電極対を含み、これら複数の電極対の内の、少なくとも1対の電極間に一定の電流を流すとともに、残りの電極間に一定の電圧を印加するように構成したことを特徴とする、請求項20に記載の多相流体混合物の特性化装置。
【請求項24】
前記電場生成手段は、0.1Hz〜1MHzの範囲内の周波数を有する電場を生成するように構成したことを特徴とする、請求項20に記載の多相流体混合物の特性化装置。
【請求項25】
前記サンプルゾーン内の多相流体混合物の温度を測定するための温度センサと、
前記サンプルゾーン内の多相流体混合物のpH値を測定するためのpHセンサと、
を含むことを特徴とする、請求項24に記載の多相流体混合物の特性化装置。
【請求項26】
多相流体中の不要物を解析する方法であって、
インピーダンススペクトルデータを受信する工程と、
電極間に所定強度のエネルギーが印加された状態で、複数の時間間隔毎にインピーダンススペクトルを記録する工程と、
前記受信したインピーダンススペクトルデータに対して前記インピーダンススペクトルのインジケータ量を計算する工程と、
前記インピーダンススペクトルのインジケータ量を参照インジケータ量と比較する工程と、
前記比較工程から、前記多相流体における少なくとも1相の、少なくとも1つの特性を決定する工程とを含み、
前記インピーダンススペクトルデータは、前記流体中に位置する前記電極間で測定した、実数のインピーダンス値と虚数のインピーダンス値とを含むことを特徴とする、多相流体中の不要物解析方法。
【請求項27】
前記インジケータ量は、元の電気的インピーダンススペクトルをモデル化するに際して要求される、最少数の量を含むことを特徴とする、請求項26に記載の多相流体中の不要物解析方法。
【請求項28】
前記インジケータ量は、選択された周波数において、1以上の実数のインピーダンス値及び虚数のインピーダンス値、並びに1次及び2次の微分値を含み、実数のインピーダンス値の選択された範囲における虚数のインピーダンス値の平均値、前記インピーダンススペクトルを表現するための数学的モデルのパラメータ、及び元のインピーダンススペクトル中に含まれる情報を要約し、少なくとも1つの多変量統計手法に基づいて計算した潜在的変数(主要成分)を含むことを特徴とする、請求項27に記載の多相流体中の不要物解析方法。
【請求項29】
前記多変量統計手法は、人工神経ネットワークを用いた主成分解析を含むことを特徴とする、請求項28に記載の多相流体中の不要物解析方法。
【請求項30】
前記不要物解析方法は、新たなインジケータ量のパターンが予め決められたパターンに合致するか否かをチェックするチェック手段を含むことを特徴とする、請求項29に記載の多相流体中の不要物解析方法。
【請求項31】
前記チェック手段は、測定したEIS(x)から計算されたインジケータ量をベクトルyで表す工程と、
再構築されたEISを、Wを重み行列とした場合に、x’=Wyなる式から計算する工程とを含み、
前記再構築されたEIS、x’と測定されたEIS、xとの差が所定の閾値よりも大きい場合に、前記測定されたEISのデータパターンを新たなものとして記録することを特徴とする、請求項30に記載の多相流体中の不要物解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518838(P2006−518838A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501364(P2006−501364)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000187
【国際公開番号】WO2004/077036
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(591269435)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (23)
【氏名又は名称原語表記】COMMONWEALTH SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH ORGANIZATION
【Fターム(参考)】