説明

多翼送風機の羽根車

【課題】 羽根効率の向上と、性能寿命の延命を図ることができる多翼送風機の羽根車を得る。
【解決手段】 その羽根車1は、肉厚の均等な多数の湾曲した羽根2を有する。羽根2の湾曲は、回転方向に後退していて、主板3と側板4とにカシメ付けられている。主板3の中央には、回転方向に湾曲して後退する複数の補助翼5が放射状に等間隔で羽根2から離して設けられている。羽根2の湾曲形状と補助翼5の湾曲形状は略同じになっていて、バランスの良い旋回気流を作ることができる。補助翼5の内側の一辺は主板3に設けられたボス部6の外周に固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロッコファンと称される、主に空調用の多翼送風機の羽根車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
騒音の低減とファン効率の向上を図った多翼送風機(遠心式送風機)として、インデューサを羽根の内側に連設したものや、各羽根の前半部を負圧面側については膨出させ、正圧面側については湾曲させたものがある。なお、この種の多翼送風機についての従来技術としては特許文献1や特許文献2に開示された技術がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−70793号公報
【特許文献2】特開2002−285996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に多翼送風機は羽根車の構造上、流体力学的に相当無理な昇圧を行っているので、効率は悪く、騒音も高い。そのため騒音の低減とファン効率の向上が特許文献1,2のように課題となっていることが多い。そして換気装置等、空調用の多翼送風機では小形化の要請も強い。多翼送風機の本体サイズを決定付ける要因の一つに羽根車の形状がある。羽根車の羽根巾を短くすることで小形化は可能であるが、羽根効率が悪化するといった問題が伴う。羽根効率が悪化した分、電動機でカバーしようとすれば、電動機が大形になり、結果的に多翼送風機のサイズは小形にならない。
【0005】
また、軸流送風機の羽根車に比べ、多翼送風機の羽根車は塵埃が付着し易く、塵埃の付着によって送風性能が悪化する。騒音の軽減やファン効率の向上を図った従来の多翼送風機では、インデューサにより気流との接触延面距離が長く塵埃が付き易く、羽根形状を前半部を膨らめたものも、羽根間が狭くなり、どちらも塵埃の付着による羽根の性能寿命は短くなる。
【0006】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、羽根効率の向上と、性能寿命の延命を図ることができる多翼送風機の羽根車を得ることで有り、多翼送風機の小形化を推進することができる多翼送風機の羽根車を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、肉厚の均等な多数の湾曲した羽根を有する多翼送風機の羽根車について、回転軸に取付けるための主板の中央に、回転方向に湾曲して後退する複数の補助翼を放射状に等間隔で羽根から離して設ける手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助翼による旋回流を形成して羽根の吸込み側に案内するので、羽根効率がよく風量が増す。羽根は均等な肉厚であり、掃除し易い補助翼に塵埃が付くが羽根には付着し難く、目詰まりによる性能寿命の低下を改善することができる。結果的に羽根幅を薄くしても補助翼により羽根効率が改善されるので、多翼送風機の小形化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の多翼送風機の羽根車は、肉厚の均等な多数の湾曲した羽根を有する。羽根車を回転軸に取付けるための回転軸とは直角をなす主板の中央には、回転方向に湾曲して後退する複数の補助翼が放射状に等間隔で羽根から離して設けられている。補助翼の一辺は主板に設けられたボス部の外周に固着されている。
【0010】
この羽根車によれば、補助翼による旋回流を形成して羽根の吸込み側に案内するので、羽根効率がよく風量が増す。羽根は均等な肉厚であり、掃除し易い補助翼に塵埃が付くが羽根には付着し難く、目詰まりによる性能寿命の低下を改善することができる。結果的には羽根幅を薄くしても補助翼により羽根効率が改善されるので、多翼送風機の小形化を図ることができる。また、補助翼によりボス部が補強されるのでボス部の肉をその分、薄くでき軽量化も推し図ることができる。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の多翼送風機の羽根車の正面図、図2は、同じく羽根車の側断面図、図3は、他の羽根車の側断面図である。この多翼送風機は、換気装置等に使われるものであり、その羽根車1は、図1に示すように肉厚の均等な多数の湾曲した羽根2を有する。羽根2の湾曲は、回転方向(図1の破線矢印方向)に後退していて、主板3と側板4とにカシメ付けられている。主板3は羽根車1を回転軸に取付けるため、回転軸とは直角をなしており、主板3の中央には、回転方向に湾曲して後退する複数の補助翼5が放射状に等間隔で羽根2から離して設けられている。羽根2の湾曲形状と補助翼5の湾曲形状は略同じになっていて、バランスの良い旋回気流を作ることができる。補助翼5の内側の一辺は主板3に設けられたボス部6の外周に固着されている。図1,図2の羽根車1は両吸込式であり、小形化を図るため片側のみ補助翼5を設け、補助翼5の無い側に電動機を入り込ませるようにしているが、図3に示すように双方に補助翼5を設けても良い。
【0012】
この羽根車1によれば、補助翼5による旋回流を図1の実線矢印のように略S字状に形成して羽根2の吸込み側に案内して押出すので、羽根効率がよく風量が増す。羽根2は均等な肉厚であり、掃除し易い補助翼5に塵埃が付くが羽根2には付着し難く、目詰まりによる性能寿命の低下を改善することができる。結果的には羽根幅を薄くしても補助翼5により羽根効率が改善されるので、多翼送風機の小形化を図ることができる。また、補助翼5によりボス部6が補強されるのでボス部6の肉をその分、薄くでき軽量化も推し図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】羽根車の正面図である。(実施の形態1)
【図2】羽根車の側断面図である。(実施の形態1)
【図3】他の羽根車の側断面図である。(実施の形態1)
【符号の説明】
【0014】
1 羽根車、 2 羽根、 3 主板、 5 補助翼、 6 ボス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚の均等な多数の湾曲した羽根を有する多翼送風機の羽根車であって、回転軸に取付けるための主板の中央に、回転方向に湾曲して後退する複数の補助翼を放射状に等間隔で前記羽根から離して設けた多翼送風機の羽根車。
【請求項2】
請求項1に記載の多翼送風機の羽根車であって、補助翼の一辺を主板のボス部に固着した多翼送風機の羽根車。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の多翼送風機の羽根車であって、羽根の湾曲形状と補助翼の湾曲形状を略同じにした多翼送風機の羽根車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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