説明

多色フィルムを製造する方法

【課題】支持フィルムに少なくとも2枚の異なる色のトップフィルムを重ね合わせることにより、多色フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】支持フィルム(4)に少なくとも2枚の異なる色のトップフィルム(2、3)を重ね合わせることにより、多色フィルムを製造する方法であって、トップフィルムの及び/又はフィルムアセンブリの表面に表面構造が設けられ、使用される支持フィルムは熱可塑性発泡材料のフィルムであり、トップフィルムは、それぞれ、時間的に連続してかつ支持フィルムに重なるようにして重ね合わせられる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持フィルムに少なくとも2枚の異なる色のトップフィルムを重ね合わせて、所望の場合には、被覆材料の又は接着剤のさらなる層を適用することにより、多色フィルムを製造する方法に関するものであり、トップフィルムの及び/又はフィルムアセンブリの表面には、有利にはエンボス加工され、その後所望の場合には細長い切り込みが入れられた表面構造が設けられる。この表面構造は、たとえば、革状構造又は技術的に作られた粒状構造からなる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、異なる色のポリマー材料のさらなるフィルム又は層を有するポリマー物質からなる支持フィルムを覆うために特別に成形された押出ダイを使用することにより、たとえばダッシュボードのための、2色の又は多色のフィルムを製造する方法及び装置について開示している。このため、この押出ダイは、支持フィルムの押出物のための細長い切り込み又は出口断面を特徴とし、この上に、着色された外部層のための2つのさらなる出口断面が置かれ、前記さらなる断面の流出経路又は流出路が、支持フィルム上の着色されたトップ材料/外部層材料の配置場所の少し前で、くさび形の又は三角形の突出部によって分離される。このような配列により、外部層のための押出物は、支持フィルム上に当たる箇所の少し前に集まり、これにより、異なる色の領域と領域との間にかなり良い継ぎ目の筋が作られるが、最終的に、移行領域内で色がわずかに混ざることを回避することができない。したがって、この方法は、色の深みがわずかに異なるもの同士が互いに接している、したがってたとえば異なるグレーシェードの、適用形態により適している。
【0003】
特許文献2では、外部層で発泡フィルムの支持下層を覆うことにより、2色の又は多色の発泡フィルムを製造するプロセスについて開示しており、この外部層は、少なくとも2つの層、即ち、支持層と少なくとも1つのさらなる層とからなる。この配列の支持層は、第1の色内では、圧延によって導入された又は他の何らかの方法で形状が形作られた圧痕を有し、この中に異なる色のさらなる層が挿入されて、支持層とさらなる層との間に平らな外面が作られる。これらの層は、押出しプロセスによって適用される。この結果生じる色の移行は非常に良好であるが、必要とされる許容差の厳しい倣い加工、及び複数の押出機により、生産プロセスに必要な機械及び時間的なリソースがかなりのものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第19530757号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10121518号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、鋭くかつはっきりとした輪郭を有し、区間同士が混ざることなく、個々のカラー層のきれいな色の分離を達成するのに使用され得る、多色フィルムを製造するプロセスを提供することであり、このプロセスは、簡単かつ費用対効果の高い方法で行われ、製造上の複雑さが比較的低く、その品質は、はっきりと異なる色同士の重ね合わせであってもそれを好適とするようなものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、主請求項の特徴により達成される。使用される支持フィルムは、熱可塑性発泡ポリマーのフィルムであり、異なる色のトップフィルムが、それぞれ、支持フィルム上に時間的に連続して重ね合わせられ、後に重ね合わせられたフィルムは、いずれの場合も、先に重ね合わせられたフィルムにその継ぎ目領域において少なくとも重なる。
【0007】
この種の手順により、所謂「バッキング層のない発泡フィルム」、つまり、裏面上の発泡層と外部層とが設けられたフィルムが作られるが、この外部層は、さらなる支持/強化中間層を有さず、2つのカラー層の間を正確にかつ真っ直ぐに走る分割継ぎ目を有し、色が消えたり流れたりすることがなく、また継ぎ目領域が曲がりくねったりすることもない。このような「バッキング層のない発泡フィルム」又は「バッキング層のない発泡剤」は、その後の変形中の、つまりたとえば、自動車用のダッシュボード支持材又はドア張り支持材に適用中の、比較的高い度合いの成形に耐えることができる。したがって、これらは、合成皮革に対する変形性に極めて優れており、たとえば紡織繊維製の支持層が、製品内に固着されて、さらなる処理中にもそこに留まっている。
【0008】
この非常に簡単なプロセスの場合の継ぎ目領域の驚くべき品質は、トップフィルムを時間的にずらして適用することにより、支持発泡フィルム上のそれぞれのトップフィルムに既に一定の固定ができていることに起因すると考えられ、この結果、それぞれ後のトップフィルムの定義された結合及び重なりが、実質的により信頼できかつより容易なものとなる。ここで従来のプロセスが使用される場合、つまり加熱されたトップフィルムが同時に重ね合わせられる場合、これに関連する引っ張り応力、蓄熱、及び温度管理の特性により、トップフィルムに横方向の断面収縮が生じ、このため、不定形で曲がりくねった重なりが大きくなり得る。
【0009】
1つの好ましい実施形態においては、表面構造は、支持フィルム上の重ね合せ後の圧延作業により、有利にはエンボスロールにより導入され、トップフィルムの重なり領域/継ぎ目領域の層厚が減少する。時間的にずらして配置することにより個々のトップフィルムが固定されることとの相互作用により、またここではこのような実施形態の助けにより、さらなる1製造ステップで、互いに隣接するカラー層の層厚、及び継ぎ目移行領域を、非常に高度な精密度で設定することができる。これは、きれいな継ぎ目の筋を作るのに重要である。
【0010】
さらに好ましい実施形態においては、重ね合せの前に、トップフィルムが、それぞれ、加熱されたローラベッド上を案内され、これにより予め加熱される。このことにより、支持発泡フィルムに対するトップフィルムの反応、またこの結果としての個々のトップフィルムの支持フィルムに対する初期の固定に影響を及ぼすことができる。これは、その後の生産ステップにとって非常に重要である。
【0011】
各トップフィルムは、所望の場合にはこれも同様に加熱されるコンタクトロールの助けにより、圧力のかかった状態で支持フィルムに適用される。このため、トップフィルムは、加熱されたローラ及びロールにより、90から180℃まで、有利には150℃までの温度に予め加熱されることが好ましい。コンタクトロールのロール圧力との相互関係により、これらの温度は、このプロセスにとって特に好ましい温度となる。
【0012】
さらに好ましい実施形態においては、少なくとも時間的に後のトップフィルムは、製造方向を横切る方向に、支持フィルムへの重ね合せに必要なその配置位置に関して、案内手段を介して制御下に変位可能である。このようにして、十分に正確かつ容易な一軸制御を実現することができ、これにより、各トップフィルムが、きれいな継ぎ目領域を作るような形で、温度及び配置圧力の他のパラメータとの相互関係により、正確に位置決めされ得る。勿論、幾分複雑さが増すであろうが、製造方向を横切る方向の、時間的に先のトップフィルムの配置、又は支持発泡フィルムの位置も制御され得る。
【0013】
この種の生産プロセスの最良の可能な利用のために、支持フィルムは発泡ポリオレフィンポリマーからなり、トップフィルムは熱可塑性オレフィンからなることが好ましい。両方の種類のポリマーが、上述の温度及び圧力管理により代表的な温度で容易に処理され、必要な液体/ペースト状の生産状態で取り扱われ得る。PVCポリマー又はポリウレタンからなる支持フィルム及びトップフィルムの場合も同様である。
【0014】
作業例を用いて、本発明のプロセスをより詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2色の上面を有する、本発明のバッキング層のない発泡フィルム1用の生産プラントを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この点に関して、図1は、2色の上面を有する、本発明のバッキング層のない発泡フィルム1用の生産プラントを示した概略図である。このバッキング層のない発泡フィルム1は、発泡ポリマー4の支持層上にトップフィルム2及び3として重ね合わせられた、異なる色のポリマー片からなる。
【0017】
このために、ロール又は重ね合わせユニットのベッドが役立ち、この場合、理解を容易にするために、最後のコンタクトローラ5及び6のみがそれぞれ示されている。この配列のトップフィルム2は、加熱されたコンタクトロール5の下を、発泡ポリマー4から作られた支持発泡フィルム(支持フィルム)へと走り、圧力及び熱を用いてこの配置で固定される。この支持フィルムは、1〜5mmの厚さを有する。
【0018】
次いで、時間的にずらしてかつ製造方向7において、トップフィルム3が、この場合は、支持層(発泡フィルム)4の上及び先に適用されたトップフィルム2の上の重なり領域8内の両方に、これも加熱されたコンタクトロール6から圧力及び熱によって固定されるような形で適用される。
【0019】
重ね合せの後のステップにおいて、トップフィルム2及び3に表面構造が設けられる。これは、支持ロール10によって支えられたエンボスロール9によって行われる。したがって、トップフィルムの重なり領域/継ぎ目領域の層厚が減少し、かつ完全に固定される。トップフィルム2及び3に被覆材料の層を前もって設けることができるが、これは、様々な目的を果たす。たとえば、機械的な損傷から保護すること、UV照射による脆化を防止することなどである。背面接着ワニス6が支持層4の底面に前もって塗布され、これにより、たとえば自動車のドア張りなどの、立体物品に対するその後の接合が容易となる。
【符号の説明】
【0020】
1 バッキング層のない発泡フィルム
2、3 トップフィルム
4 発泡ポリマーの支持フィルム
5 コンタクトロール
6 コンタクトロール
7 製造方向
8 重なり領域
9 エンボスロール
10 支持ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムに少なくとも2枚の異なる色のトップフィルムを重ね合わせて、所望の場合には、被覆材料の又は接着剤のさらなる層を適用することにより、多色フィルムを製造する方法であって
前記トップフィルム及びフィルムアセンブリの少なくとも一方の表面に、エンボス加工された、その後所望の場合には細長い切り込みが入れられた表面構造が設けられ、
使用される前記支持フィルムが熱可塑性発泡ポリマーのフィルムであり、
前記異なる色のトップフィルムが、それぞれ、該トップフィルムを時間的にずらして配置することにより前記支持フィルムに重ね合わせられ、後に重ね合わせられた前記トップフィルムが、いずれの場合も、先に重ね合わせられた前記トップフィルムに、その継ぎ目領域において少なくとも重なり、前記支持フィルム上に先に重ね合わされた前記トップフィルム、又は後に重ね合わせられた前記トップフィルムの直前に重ね合わされたトップフィルムは既に前記支持フィルムに固定されていて、
前記表面構造が、エンボスロールを用いて、前記支持フィルムへの重ね合せ後の圧延作業により導入され、前記トップフィルムの前記重なり領域又は継ぎ目領域の層厚が減少することを特徴とする方法。
【請求項2】
重ね合せの前に、前記トップフィルムが、それぞれ、加熱されたローラベッド上を案内され、これにより予め加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トップフィルムが、90℃から180℃まで、有利には90℃から150℃までの温度に予め加熱されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記時間的に後のトップフィルムが、製造方向を横切る方向に、前記支持フィルムへの重ね合せに必要なその配置位置に関して、案内手段を介して制御下に変位可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持フィルムが発泡ポリオレフィンポリマーからなり、前記トップフィルムが熱可塑性オレフィンからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセスにより製造された、熱可塑性ポリマーの2色以上の色を有する発泡フィルム。
【請求項6】
前記支持フィルム及びトップフィルムが、PVCポリマー又はポリウレタンポリマーからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセスにより製造された、熱可塑性ポリマーの2色以上の色を有する発泡フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6420(P2013−6420A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172241(P2012−172241)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2008−544912(P2008−544912)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(599004139)ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Benecke−Kaliko AG
【Fターム(参考)】