説明

多色両面ジャカード柄経編地の編成方法と該方法により編成される経編地

【課題】 多色ジャカード編糸により、両面に4色以上の自在な柄出しを可能とするとともに、ジャカード筬のみで編地の編成を可能とする多色両面ジャカード柄経編地の編成方法と、この編成方法により得られる経編地を提供することを目的とする。
【解決手段】 複列の編針列、及び各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能な少なくとも2列のジャカード筬を備えた経編機を用い、ジャカード筬の各列に通糸した少なくとも4色の編糸のうち、選択された1色の編糸にて、一方及び/又は他方の編針で、ニードルループを形成するとともに、この編糸により形成されるニードルループによるウエールも、前記編糸で連結編成させるようにする編成方法と、この編成方法により得られる多色両面柄経編地を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複列の編針列、及び各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能なジャカードガイドを設けてなるジャカード筬を備えた経編機を用いて編成される、多色両面ジャカード柄経編地の編成方法と経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
多色両面ジャカード柄経編地については、すでに知られているところであり、当出願人が特許権を取得済みの特許文献1において提案されている。
【0003】
この特許では、柄出しをジャカード糸のみにより行い、3色以上のジャカード柄を構成可能としたものであるが、配される3色以上のジャカード糸は、同一ウエール上で挿入と編み目形成がジャカード制御により選択されてなされるとともに、形成されるウエールは、別途に配されるジャカード糸以外の地糸により連結されることで基布が構成されることになる。
【特許文献1】特許登録第3607786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術において、形成されるウエールをつなぐものは、ジャカード糸以外の地糸によるものであるので、経編機の筬配列構成で、ジャカード筬以外に別途地糸を導糸するための地筬が必要となる。又、ジャカード糸について、柄出しを行わないものは、1列のウエール中に編み込まれることになるので、基布の緯方向での凹凸状態が顕著となり、プレーンな生地を必要とする用途には、適するものとはならなかった。
【0005】
本発明は、ジャカード編糸を用いた多色両面経編地の編成において、多色ジャカード編糸により両面で自在な柄出しを可能にするとともに、地糸を用いず、従って地筬が不要で、ジャカード編糸を通糸してなるジャカード筬のみで編成可能な経編機構造とすることができる編成方法と、該編成方法により編成される経編地を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、複列の編針列、及び各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能なジャカードガイドを設けてなる少なくとも2列のジャカード筬を備えた経編機を用い、前記ジャカード筬の各列に通糸してなる少なくとも4色の編糸のうち、柄構成に基づき選択された1色の編糸にて、一方及び/又は他方の編針列における所望の編針で、ニードルループの形成を行わせるとともに、ジャカードガイドに通糸した編糸により、前記ニードルループにより形成される表裏ウエールを緯方向に適宜連結させて、表裏面にニードルループによる多色ジャカード柄が構成された両面柄経編地を編成する構成としたものである。
【0007】
又、本発明は、両面において、少なくとも4色の編糸のうちの選択された1色の編糸のニードルループの集合により形成された両面異種ジャカード柄を有する平編部と、前記両面の基布を形成するウエールが2本以上集束された房部が、前記平編部の端に形成されてなる経編地としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の編成方法によれば、多色両面ジャカード柄経編地を構成する編糸はすべてジャカード編糸より構成可能となるので、経編機の筬配列構造において、全ての編筬をジャカード筬のみで構成可能となる結果、地筬に関わる編機設備が不要となり、所望の経編地編成のための経編機を合理的に構成可能となる。
【0009】
又、本発明の編成方法により得られる経編地は、表裏両面において4色以上の多色ジャカード柄が構成された平編部と、該平編部の端に形成される房部が一体に構成されたものであるので、特にマフラー、ショールなど房が付属される衣料品に適したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
編針列の針本数を、編機ゲージの半数分オフセットで配列し、配列された編針の本数と同数のジャカードガイドを備えたジャカード筬を用いて編成する構成とすることで、ジャカードガイドの変位量の制限により編成不能な編機ゲージの粗いものであっても、編機ゲージの半分の変位が可能なジャカードガイドを用いることでの編成が可能となるので、各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能な既存のジャカード筬を備えた経編機での編成が可能となる。
【0011】
表裏のウエールを2本以上集束する房部と、ウエールが連結された一定幅の平編部を編立て方向で交互に形成することで、房部が平編部に付属する構造のマフラー、ショールに代表される房付き衣料品に適した経編地の編成が可能となる。
【0012】
平編地中の所望編コース内で、所望ウエールを部分的に絞って穴部を形成することで、平編部に穴部が必要に応じて形成可能となるので、平編部における多色による柄効果とともに、平編部に地組織変化が加味されることで非常に興趣のある経編地が得られる。
【0013】
表裏面に形成するジャカード柄を、異なるジャカード柄に編成することで、例えば用途として供されるマフラーにおいては、リバーシブル使いが可能となるので、使用される時間や場所に応じた使い分けが1枚のマフラーで楽しめるものとなる。
【実施例】
【0014】
次に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の多色両面ジャカード柄経編地を編成するために使用してなる複列の編針列経編機の筬配列図の一例である。FNは前部編針列、BNは後部編針列であって、前後部編針列FN,BNに対しジャカード筬が配列されてなる。PJB1、PJB2は各1対のジャカード筬であって、各ジャカード筬PJB1,PJB2には、各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能なジャカード制御機構として代表される、圧電素子への通電により、個別に変位制御可能なジャカードガイドが各々に配設されている。各1対のジャカード筬PJB1,PJB2には、各々ジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2が編機ゲージに対し半分の本数分設けられており、それぞれ独立したジャカード筬(図示せず)は、編針列(FN,BN)の配設方向に、パターンホイールあるいはサーボモータ等の柄出し装置により、ラッピング可能に設けられている。
【0016】
図2は、前部編針列FNと後部編針列BNに対するジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2の配列位置関係を示す編成部分の模式図である。図中、FN1,FN2,FN3,FN4,FN5…は、前部編針列FNに配設される編針であり、BN1,BN2,BN3,BN4,BN5…は後部編針列BNに配設される編針である。破線で描かれている丸印は、編機ゲージに対応する編針の仮想位置を示しており、この位置には編針は配設されていない。
【0017】
ジャカードガイドPJB1−1,1−2は、編針FN1と編針FN2の間の仮想編針位置FP1と、編針FN1との略中央位置に設置され、編針列(FN)方向で、同ピッチ間隔でもって2枚のジャカード筬PJB1にセットされている。同様に、ジャカードガイドPJB2−1,2−2は、編針BN2と編針BN1の間の仮想編針位置BP1と、編針BN2との略中央位置に設置され、編針列(BN)方向で、同ピッチ間隔でもって2枚のジャカード筬PJB2にセットされている。
【0018】
上記のごとく設けられた各ジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2に、例えば、赤、青、黄、緑などの異色の編糸が仕掛けられたクリール(図示せず)から引き出された各色の編糸を、それぞれに色分けして通糸する。
【0019】
次に、本発明の編成方法について、具体的な編組織に基づいて説明する。図3は、本発明の編成方法を実施するための編組織の一実施例であり、図中、(a1)列に示される4種類の編組織は、ジャカードガイドPJB1−1,1−2に対するものであり、(b1)列に示される4種類の編組織は、ジャカードガイドPJB2−1,2−2に対するものである。図中、N0の段は、各ジャカードガイドPJB1−1,1−2及び、PJB2−1,2−2の基本組織、即ち、ジャカード筬への柄出し装置からのラッピング制御のみで、圧電素子への変位命令がない場合の編組織である。N1の段は、各ジャカードガイドPJB1−1,1−2及び、PJB2−1,2−2が、前部編針列FN及び、後部編針列BNに対しオーバラッピングを行うことでニードルループを形成させる場合のループ柄組織である。N2の段は、オーバラッピングを行わず、形成されたニードルループによる表裏ウエールを緯方向に連結する場合の連結挿入組織である。N3の段は、前記ウエールについて、2本以上を集束させることで房部の形成や、ループ柄組織の集合により形成される平編部の中に、部分的に房部を形成することでの穴部分を形成するための房・穴部組織である。
【0020】
基本的に、ジャカードガイドPJB1−1,1−2とジャカードガイドPJB2−1,2−2の基本組織1,2は同じであり、そのチェーン番号は、0−0/0−0/2−2/2−2//である。編組織図全体を通して示されているF1,F2は、前部編針列FNにおける各編コースを、B1,B2は、後部編針列BNにおける各編コースをそれぞれ示しており、編針のイラストは、配列される編針位置を、又、×印は、仮想編針位置をそれぞれ示している。更に矢印は、ジャカードガイドの圧電素子に、柄構成に基づいた変位信号が伝えられて、ジャカードガイドが基本位置から作用位置に変位する方向を示す。又、−1,0,1,2,3の各数字は、各ジャカードガイドが位置する編針間を示している。
【0021】
ループ柄組織N1におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織1より、変化組織1aに変わる際に、編コースF1においては、まず始めに、アンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“1”の位置へ変位し、次にオーバラッピングのタイミングの位置で、“1”から“0”に戻ることで前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースF2においては、オーバラッピングのタイミングの位置で、“2”から“3”に変位することで前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。
【0022】
次に、編コースB1においては、オーバラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“1”の位置へ変位することで、後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースB2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“2”の位置から“3”の位置へ変位し、次にオーバラッピングのタイミングの位置で、“3”から“2”に戻ることで後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。
【0023】
ループ柄組織N1におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織2より、変化組織2aに変わる際に、編コースF1においては、オーバラッピングのタイミングの位置で、“0”から“−1”に変位することで前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースF2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“2”の位置から“1”の位置へ変位し、次にオーバラッピングのタイミングの位置で、“1”から“2”に戻ることで前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。
【0024】
次に、編コースB1においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“−1”の位置へ変位し、次にオーバラッピングのタイミングの位置で、“−1”から“0”に戻ることで後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースB2においては、オーバラッピングのタイミングの位置で、“2”から“1”の位置へ変位することで後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。
【0025】
連結挿入組織N2におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織1より、変化組織1bに変わる際に、編コースF2,B2において、アンダラッピングのタイミングの位置で、“2”から“3”に変位することで、隣接ウエールを連結する挿入編を行う。
【0026】
又、連結挿入組織N2におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織2より、変化組織2bに変わる際に、編コースF1,B1において、アンダラッピングのタイミングの位置で、“0”から“−1”に変位することで、隣接ウエールを連結する挿入編を行う。
【0027】
房・穴部組織N3におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織1より、変化組織1cに変わる際に、編コースF1,B1においてアンダラッピングのタイミングの位置で、“0”から“1”に変位し、又、編コースF2,B2にてアンダラッピングのタイミングの位置で、“2”から“3”の位置へ変位することで、ジャカードガイドより導糸される編糸が、1つのウエールに対し絡みつく挿入編となり、隣接ウエールとの関連のない房部の形成がなされる。
【0028】
房・穴部組織N3におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織2より、変化組織2cに変わる際に、編コースF1,B1においてアンダラッピングのタイミングの位置で、“0”から“−1”に変位し、又、編コースF2,B2にてアンダラッピングのタイミングの位置で、“2”から“1”の位置へ変位することでジャカードガイドより導糸される編糸を、1つのウエールに対し絡みつく挿入編とすることで、隣接ウエールとの関連をなくして房部の形成を行う。
【0029】
ジャカードガイドPJB1−1,1−2とジャカードガイドPJB2−1,2−2によって、以上の通り、各々1つの基本組織1と基本組織2からニードルループによる柄構成を目的として形成されるループ柄組織1a,2aを用いて、両面にニードルループによる多色ジャカード柄を構成するとともに、連結挿入組織1b,2bにより、前記ニードルループより形成されるウエールを緯方向に連結させて平編部を形成する。又、適宜、房・穴部組織1c,2cを適用することで、前記平編部に連結する房部を、ウエールを2本以上集束させることで形成することができる。
【0030】
図4から図7に示す編組織は、本発明の編成方法を実施するための編組織の別実施例である。図4において、ジャカードガイドPJB1−1,1−2とジャカードガイドPJB2−1,2−2の基本組織11,21のチェーン番号は、0−0/0−0/4−4/4−4//である。この編組織における基本組織11,21は、図3で示す基本組織1,2に比べ2編針間隔分(1ゲージに相当)アンダラップが長いのみで、N1の段におけるループ柄組織11a,21a、N2の段における連結挿入組織11b、21b、N3の段における房・穴部組織11c,21cについては、基本的に変位量が1ゲージ分余分に変位されるのみで、編成方法は図3に示すものと同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
図5の編組織において、ジャカードガイドPJB1−1,1−2とジャカードガイドPJB2−1,2−2の基本組織12,22のチェーン番号は、1−0/0−1/3−3/3−3//である。
【0032】
ループ柄組織N1におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織12より変化組織12aに変わる際に、編コースF1においては、先ず始めに、アンダラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置から“2”の位置に変位し、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“2”の位置に留まり、基本組織12のオーバラッピングにより、前部編針FNに対するニードルループの形成が行われる。又、編コースF2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で“3”の位置に留まり、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“3”の位置から“4”の位置に変位することで、前部編針FNに対するニードルループの形成が行われる。
【0033】
次に、編コースB1においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“1”の位置に変位し、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置に留まり、基本組織12のラッピングにより、後部編針BNに対するニードルループの形成が行われる。又、編コースB2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で“3”の位置から“4”の位置に変位し、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“4”の位置から“3”の位置に戻ることで、後部編針BNに対するニードルループの形成が行われる。
【0034】
ループ柄組織N1におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織22より、変化組織22aに変わる際に、編コースF1においては、 “1”の位置に留まり、基本組織22のオーバラッピングにより前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースF2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“3”の位置から“2”の位置へ変位し、次にオーバラッピングのタイミングの位置で、“2”から“3”に戻ることで前部編針FNに対するニードルループの形成がなされる。
【0035】
次に、編コースB1においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置に留まり、基本組織22のオーバラッピングにより、後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。又、編コースB2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“3”の位置に留まり、オーバラッピングのタイミングの位置で“3”の位置から“2”の位置へ変位することで後部編針BNに対するニードルループの形成がなされる。
【0036】
連結挿入組織N2におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織12より変化組織12bに変わる際に、編コースF1においては、先ず始めに、アンダラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置に留まり、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置から“2”の位置に変位することで、基本組織12のラッピングの動きとで相殺され、結果的に“1”の位置に留まってオーバラッピングせずに挿入編となる。又、編コースF2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“3”の位置から“4”の位置に変位し、この位置を維持することで、挿入編となる。
【0037】
次に、編コースB1においては、まずアンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“1”の位置に変位し、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置から“0”の位置に戻ることで、基本組織12のラッピングの動きと相殺され、結果的に “1”の位置に留まり、オーバラッピングせずに挿入編となる。又、編コースB2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で“3”の位置から“4”の位置に変位し、次に、オーバラッピングのタイミングの位置で、“4”の位置に留まることで挿入編となる。
【0038】
連結挿入組織N2におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織22より、変化組織22bに変わる際に、編コースF1においては、先ず始めに、アンダラッピングのタイミングの位置で、“1”の位置から“0”の位置に変位し、オーバラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“1”の位置に戻ることで、基本組織22のラッピングの動きと相殺され、結果的に“0”の位置に留まってオーバラッピングせずに挿入編となる。又、編コースF2においては、アンダラッピングとオーバラッピングの両位置において、全く変位せずに基本組織と同じ動きで挿入編となる。
【0039】
次に、編コースB1においては、まずアンダラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置に留まり、オーバラッピングのタイミングの位置で、“0”の位置から“−1”の位置に変位することで、基本組織22のラッピングの動きと相殺され、結果的に “0”の位置に留まり、オーバラッピングせずに挿入編となる。又、編コースB2においては、アンダラッピングとオーバラッピングの両位置において、全く変位せずに基本組織と同じ動きで挿入編となる。
【0040】
房・穴部組織N3におけるジャカードガイドPJB1−1,1−2については、基本組織12より、変化組織12cに変わる際に、編コースF1,B1においては、連結挿入組織N2と同じであるので、説明を省略する。編コースF2,B2ではアンダラッピングのタイミングの両位置において全く変位せずに基本組織12と同じ動きで挿入編となる。
【0041】
房・穴部組織N3におけるジャカードガイドPJB2−1,2−2については、基本組織22より、変化組織22cに変わる際に、編コースF1,B1においては、連結挿入組織N2と同じであるので、説明を省略する。編コースF2,B2においては、アンダラッピングのタイミングの位置で、“3”から“2”の位置へ変位し、オーバラッピングラッピングはせずその位置に留まることで、挿入編となる。
【0042】
図6に示す実施例編組織においては、基本組織が0−0/0−0/2−3/3−2//であるが、この実施例の編組織と、図5に示す実施例編組織を比較すると、ニードルループを形成するためのオーバラッピングの編コースが、図5の場合、編コースF1,B1であるのに対して、図6の場合、編コースがF2,B2の違いのみで実質的な編成方法は変わらないので、説明は省略する。
【0043】
又、図7に示す実施例編組織においては、基本組織0−0/0−0/3−4/4−3//であるが、この実施例は、連結挿入組織N2における挿入編の緯方向の長さが、2ゲージ間となり、図4で示す連結挿入編N2における挿入編の緯方向の長さが3ゲージであるのに対し1ゲージ分短いものとなっているだけで、その他の編成方法は、基本的に同じであるので、説明を省略する。以上が編成方法の具体例を示す編組織図である。
【0044】
次に、本発明の多色両面ジャカード柄経編地の編成方法により編成される本発明経編地の一例としてのマフラーについて、その編構造を説明する。
【0045】
図8は、本発明の編成方法により編成されたマフラーの一実施例である。本マフラーの編成は、複列の編針列を有し、1対のジャカード筬を2列備えた24ゲージの経編機を用いて編成したもので、具体的筬配列は、図1に示すとおりである。ジャカードガイドPJB1−1,1−2、ジャカードガイドPJB2−1,2−2は、編機ゲージの半数分である12本/インチにオフセット配列で設けたものであり、編糸として、異色の4色、即ち、赤、青、黒、黄をクリールに載置して、編機に給糸することで編成した。
【0046】
図中、10aは、マフラーの一面、10bはマフラーの他面であり、一面10aと他面10bには、各々4色の編糸による柄出しがなされ、一面10aと他面10bが一体に平編部100として編成されてなる。又、平編部100の両端縁に接続して、房部200a,200bが設けられている。
【0047】
ここで、平編部100の編成構造について図9に基づいて説明する。図は平編部100の一部について示しており、ジャカードガイドPJB1−1には、編糸51が、ジャカードガイドPJB1−2には、編糸52がジャカードガイドPJB2−1には、編糸53が、ジャカードガイドPJB2−2には、編糸54がそれぞれ通糸され、各ジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2に通糸してなる編糸51,52,53,54が、編コースF1,B1〜編コースF6,B6において、ジャカード制御され、各編組織に変化されて両面のウエール列w1〜w6が形成される。
【0048】
図中、太実線が編糸51を、破線が編糸52を、細実線が編糸53を、点線が編糸54をそれぞれ示している。各ウエールw1〜w6において、ニードルループについては、編コースF1〜F6における各編糸の1つのニードルループが一面10aにおける柄構成の基本となる、いわゆる画素となり、編コースB1〜B6における各編糸の1つのニードルループが、他面10bにおける柄構成の画素となるものである。そして、各ウエールw1〜w6相互については、各編糸51〜54の連結挿入組織N2によって、緯方向に連結がなされ、全体として、平編部100が構成されてなるものである。
【0049】
次に、房部200a,200bの編成構造について図10に基づいて説明する。図は一方の房部200aの一部を示しており、前記同様ジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2に導糸した編糸51,52,53,54が各ウエールに1本宛配されている。A1,A2,A3,A4は房であって、房A1,A2,A3,A4は、ウエールw1,w2、ウエールw3,w4、ウエールw5,w6、ウエールw7,w8の各ウエール2本ずつが、1本に集束され形成されてなるもので、ここで房を代表して、房A1により説明する。
【0050】
房A1では、3本の編糸51によるニードルループの連結により、ウエールw1,w2を構成するとともに、残りの編糸52,53,54が房・穴部編組織を編成することで、ウエールw1とウエールw2が緯方向に連結されて両ウエールw1,w2は絞られて1本の房が構成される。同様にして房A2,A3,A4も構成されるものである。
【0051】
なお、平編部100における一面10aと他面10bに表現されている柄構成は、4種の異色の編糸を自在に用いて表現されており、一面10aと他面10bの柄構成は全く異なる柄構成とすることが可能であるので、使用される時間や場所に応じて使い分けが楽しめる、リバーシブル使いのマフラーとすることができた。
【0052】
図11に本発明の編成方法により編成されたマフラーの別実施例を示す。本編成は図8に示す一実施例同様、ジャカード糸として異色の編糸51,52,53,54を用い、両面に4色の柄構成を実施してなるものであるが、このマフラーの特徴は、平編部100の中に穴部300を構成してなることである。この穴部300の編成構造について、図12に基づいて説明する。
【0053】
図11図中における部分拡大図300aにおいて示すように、各ウエールが部分的に絞られて穴部を構成してなるもので、ウエールw2とウエールw3の間では、編コースF4,B4,F5,B5,F6,B6において、ウエール間で編糸の緯方向での連結がないように、房・穴部組織N3を用いて、編糸がウエールに絡みつく組織構造とすることで、穴部300a1を設ける。又、ウエールw3とウエールw4の間では、編コースF1,B1,F2,B2,F3,B3において、ウエール間で編糸の緯方向での連結がないように、房・穴部組織N3を用いて、編糸がウエールに絡みつく組織構造とすることで、穴部300a2を設ける。更に、ウエールw4とウエールw5の間では、編コースF4,B4,F5,B5,F6,B6において、ウエール間で編糸の緯方向での連結がないように、房・穴部組織N3を用いて、編糸がウエールに絡みつく組織構造とすることで、穴部300a3を設ける。
【0054】
上記編成の実施例においては、房部のあるマフラーを示しているが、むろん房部のないマフラーや、ショール、肩掛けなどの衣料品の他、アウター用の各種衣料についても、本発明の特許請求範囲を逸脱しない範囲において、含まれることは言うまでもない。又、使用される編糸は、特に限定されるものでなく、供される用途に見合う糸種の選択が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の経編地は、マフラー等の衣料品分野に限らず、使用される経編地の糸使い、柄構成などを適宜選択することで、アウターなどの衣料分野に利用できるほか、カーペット、ベッドシーツなど、その他の寝装、インテリア部門にも幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の多色両面ジャカード柄経編地を編成するために使用してなる複列の編針列経編機の筬配列図の一例である。
【図2】前部編針列FNと後部編針列BNに対するジャカードガイドPJB1−1,1−2,2−1,2−2の配列位置関係を示す編成部分の模式図である。
【図3】本発明の編成方法を実施するための編組織の一実施例である。
【図4】本発明の編成方法を実施するための編組織の別実施例の一つである。
【図5】本発明の編成方法を実施するための編組織の別実施例の一つである。
【図6】本発明の編成方法を実施するための編組織の別実施例の一つである。
【図7】本発明の編成方法を実施するための編組織の別実施例の一つである。
【図8】本発明の編成方法により編成されたマフラーの一実施例を示す斜視図である。
【図9】平編部100の一部の編成構造について示す編成組織図である。
【図10】房部200a,200bの編成構造について示す編成組織図である。
【図11】本発明の編成方法により編成されたマフラーの別実施例を示す斜視図である。
【図12】穴部300a1,300a2,300a3の編成構造について示す編成組織図である。
【符号の説明】
【0057】
FN 前部編針列
BN 後部編針列
F1〜F6 前部編針列FNにおける編コース
B1〜B6 後部編針列BNにおける編コース
PJB1,PJB2 ジャカード筬
PJB1−1,1−2、PJB2−1,2−2 ジャカードガイド
w1〜w8 ウエール
N0 基本組織を示す段
N1 ループ柄組織を示す段
N2 連結挿入組織を示す段
N3 房・穴部組織を示す段
1,11,12,2,21,22 基本組織
1a,11a,12a,2a,21a,22a 変化組織
1b,11b,12b,2b,21b,22b 変化組織
1c,11c,12c,2c,21c,22c 変化組織
51,52,53,54 編糸
10a 一面
10b 他面
100 平編部
200a,200b 房部
300a1,300a2,300a3 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複列の編針列、及び各編コースにおいてガイドニードルの変位を2回選択可能なジャカードガイドを設けてなる少なくとも2列のジャカード筬を備えた経編機を用い、前記ジャカード筬の各列に通糸してなる少なくとも4色の編糸のうち、柄構成に基づき選択された1色の編糸にて、一方及び/又は他方の編針列における所望の編針で、ニードルループの形成を行わせるとともに、ジャカードガイドに通糸した編糸により、前記ニードルループにより形成される両面ウエールを緯方向に適宜連結させて、両面にニードルループによる多色ジャカード柄が構成された両面柄経編地を編成することを特徴とする多色両面ジャカード柄経編地の編成方法。
【請求項2】
編針列の針本数を、編機ゲージの半数分オフセットで配列し、配列された編針の本数と同数のジャカードガイドを備えたジャカード筬を用いて編成することを特徴とする請求項1に記載の多色両面ジャカード柄経編地の編成方法。
【請求項3】
両面のウエールを2本以上集束する房部と、ウエールが連結された一定幅の平編部を編立て方向で交互に形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多色両面ジャカード柄経編地の編成方法。
【請求項4】
平編地中の所望編コース内で、所望ウエールを部分的に絞って穴部を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多色両面ジャカード柄経編地の編成方法。
【請求項5】
両面に形成するジャカード柄を、異なるジャカード柄に編成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多色両面ジャカード柄経編地の編成方法。
【請求項6】
両面において、少なくとも4色の編糸のうちの選択された1色の編糸のニードルループの集合により形成された両面異種ジャカード柄を有する平編部と、前記両面の基布を形成するウエールが2本以上集束された房部が、前記平編部の端に形成されてなることを特徴とする多色両面ジャカード柄経編地。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−308809(P2007−308809A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135906(P2006−135906)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000230168)日本マイヤー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】