説明

多色熱転写プリンタ

【課題】多色熱転写プリンタにおける送りムラやしわの発生を低減する。
【解決手段】複数の色インクの画像を印刷する熱転写ユニットを備え、原反を当該熱転写ユニットに供給し、当該原反が当該熱転写ユニットにおいてインクリボンと共にサーマルヘッド13とプラテン12とで挟まれ、前記サーマルヘッド13の各発熱素子36に熱エネルギを通電することによって、各色インクの画像が重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおいて、前記プラテン12を加温するプラテン加温手段と、前記サーマルヘッド13を加温するサーマルヘッド加温手段と、各色インクの印刷開始前に前記プラテン12及びサーマルヘッド13を加温制御する加温制御手段と、を具備し、前記サーマルヘッドの発熱素子36には、当該原反の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部41の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43にインクが転写しない程度の熱エネルギが通電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色インクを転写して画像を形成する熱転写ユニットを備えた多色熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各々所定の色インクを転写して画像を形成する複数の熱転写ユニットを備えた熱転写プリンタが知られている。この熱転写プリンタは、各熱転写ユニットにおいて、インクリボンのフィルム基材と共に連続状原反をサーマルヘッドとプラテンとで挟み当該フィルム基材のインクに所定の熱エネルギを加えることによって、各色インクの画像を連続状原反に転写するようになっている。
【0003】
一方で、本願発明のプリンタの構成とは異なるものの、他のプリンタにおいて、一般に、印刷紙は、インクが転写される印画部と、インクが転写されない非印画部と、を有し、印刷時におけるこの印画部と非印画部の熱量差によって摩擦力の差を起因とする速度変動が生じ、送りムラ(濃淡ムラ)となることが知られている。
【0004】
また、印刷時の幅方向における、印画部と、非印画部の熱量差によって摩擦力の差を起因とする張力差が生じ、しわを発生することが知られている。
【0005】
また、このような課題を解決するために、印画開始時に印刷開始端よりも下流側の非印画部に予熱をかけて、摩擦係数の違いによる送りムラを低減する感熱プリンタが知られている(参考文献1参照)。
【0006】
また、印刷紙の幅方向における非印画部に予熱をかけて、インクリボンのフィルム基材巻上げ時の印画部と非印画部の張力差をなくし、しわの発生を防止する熱転写プリンタが知られている(参考文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3197136号公報
【特許文献2】特許第3329267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の多色熱転写プリンタは、フィルム等の原反を走行させるフィードローラを、熱転写ユニットごとにユニット下流側に配置し、各フィードローラをステッピングモータで回転させることによって原反を送るようになっている。この送り方式によれば、原反に速度変動が生じやすくなり、これに起因して送りムラが発生しやすくなって、高精度の網点印画が困難になるという問題がある。すなわち、従来の多色熱転写プリンタでは、各熱転写ユニットにおいてサーマルヘッドの下流側で原反を牽引するため、印刷中の原反に速度変動が生じるのを防止し難い。速度変動が生じると送りムラや色ずれが発生したりする。また、このような多色熱転写プリンタにおいて、単にインクを転写するのみでは、上述したように、印画部と、非印画部の熱量差によって摩擦力の差を起因とする張力差や速度変動が生じ、しわや送りムラが発生する。
【0009】
本発明は、このような問題の解消を課題の一つとし、送りムラやしわの発生を低減し、印刷紙に熱可塑性樹脂インクによって画像を高精細で多色刷りすることができる多色熱転写プリンタを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。なお、本発明の理解を容易にするため括弧付きの符号を付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
すなわち、請求項1に係る多色熱転写プリンタは、複数の色インクの画像を印刷する熱転写ユニットを備え、原反を当該熱転写ユニットに供給し、当該原反が当該熱転写ユニットにおいてインクリボンと共にサーマルヘッドとプラテンとで挟まれ、前記サーマルヘッドの発熱素子に熱エネルギを通電することによって、各色インクの画像が重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおいて、前記プラテンを加温するプラテン加温手段と、前記サーマルヘッドを加温するサーマルヘッド加温手段と、各色インクの印刷開始前に前記プラテン及びサーマルヘッドを加温制御する加温制御手段と、を具備し、前記サーマルヘッドの発熱素子には、当該原反の印刷すべき印画部の印刷開始端に至る前から前記印画部の印刷終了端に至るまでの非印画部にインクが転写しない程度の熱エネルギが通電されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る多色熱転写プリンタは、請求項1に記載の多色熱転写プリンタにおいて、前記熱転写ユニットのプラテンには、速度一定制御式サーボモータの回転軸が直結されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る多色熱転写プリンタは、請求項2に記載の多色熱転写プリンタにおいて、前記多色熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を印刷する複数個の熱転写ユニットがタンデム型に配列され、連続状原反を各熱転写ユニットに供給し、当該連続状原反が各熱転写ユニットにおいてインクリボンと共にサーマルヘッドとプラテンとで挟まれ、前記サーマルヘッドの各発熱素子に熱エネルギを通電することによって、各色インクの画像が重ねられるように転写される多色熱転写プリンタであって、全熱転写ユニットのプラテンに各々速度一定制御式サーボモータの回転軸が直結されることにより、連続状原反が全熱転写ユニット内を同じ一定速度で走行可能に、プラテンの回転が制御されるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る多色熱転写プリンタは、請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、いずれか一つの熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度を基準にして、他の熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度が制御されるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る多色熱転写プリンタは、請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、連続状原反を走行させるフィードローラが所定箇所に設けられ、このフィードローラの回転速度を基準にして、熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度が制御されるようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に係る多色熱転写プリンタは、請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、所定位置に連続状原反の張力を検出する張力検出器と、サーボモータで駆動される張力調整ローラとが設けられ、上記張力検出器で検出された張力に基づいてサーボモータの回転数が制御されることによって、連続状原反の張力が加減されるようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に係る多色熱転写プリンタは、請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、プラテンとサーマルヘッドとの間を通る連続状原反を、サーマルヘッドの前後でプラテンに対して各々押圧するニップローラが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラテン及びサーマルヘッドを加温し、さらに印加部と非印加部の熱量差を少なくすることでシワや送りムラを低減又は防止し、詳細な多色画像を安定して印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る多色熱転写プリンタによって印刷された転写箔の層構成を示す模式図である。
【図2】転写箔の画像が転写された射出成形品の層構成を示す模式図である。
【図3】本発明に係る多色熱転写プリンタの一実施形態の概略正面図である。
【図4】多色熱転写プリンタにおける一つの熱転写ユニットの概略正面図である。
【図5】プラテンの加温方式の一例を示し、図5(a)はプラテンと加温用ローラの配置例を示す外観図、図5(b)はプラテンと加温用ローラの断面図である。
【図6】サーマルヘッドの構成例を示す断面図である。
【図7】本発明の多色熱転写プリンタにより印刷される連続状転写箔原反の印画部と非印画部を示す図である。
【図8】本発明に係る多色熱転写プリンタの他の実施形態を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
<実施の形態1>
最初に、この多色熱転写プリンタによって印刷された転写箔について説明する。
【0022】
図1に示すように、この転写箔1は、基材層2の上に、離型層3、保護層4、インク受容層5、インク層6が順に積層された層構造になっている。このうち基材層2からインク受容層5に至る層構成部分が連続状原反の一種である連続状転写箔原反7とされ、後述する多色熱転写プリンタに供されて印刷される。
【0023】
基材層2は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルム、紙、箔等によって形成され、保護層4は例えばUV硬化型のアクリル樹脂によって形成される。離型層3や保護層4も、例示するまでもない周知の材料で形成される。保護層4及びインク受容層5は、インク層6で形成される画像を透視することができるように、透明材又は半透明材で形成される。
【0024】
インク層6は、公知の熱可塑性樹脂インクによって形成される。インク層6は、黄、赤、藍等各色の熱可塑性色インクが連続状転写箔原反7のインク受容層5上に刷り重ねられることによって形成され、これにより所望の画像を担持した転写箔1が作られる。
【0025】
図2に示すように、上記転写箔1は射出成形品8の表面を所望の画像で装飾するために用いられる。
【0026】
すなわち、上記転写箔1をその基材層2が射出成形の金型(図示せず)のキャビティ面に接するように金型内に貼り付けたうえで、溶融した合成樹脂を金型内に射出すると、射出成形と同時に射出樹脂9の表面に転写箔1がそのインク層6側から貼り付く。射出成形品8を金型から取り出したのちに、転写箔1の基材層2等を除去することによって、射出成形品8の表面に転写箔1から写し取られた画像が露出する。これにより、精細で美麗な画像が表示された射出成形品8が完成する。インク層6は保護層4によって表面を覆われ保護されることから、射出成形品8の表面は長期にわたり美麗な画像で装飾される。
【0027】
次に、上記転写箔1を印刷するための多色熱転写プリンタについて説明する。
【0028】
図3に示すように、この多色熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を連続状転写箔原反7に印刷する複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVが、直列で配列されることにより構成される。
【0029】
連続状転写箔原反7の多色熱転写プリンタ内における流れ方向に見て、上流側には未印刷の連続状転写箔原反7を繰り出す繰り出しロール7aが設置され、下流側には既印刷の連続状転写箔原反7を巻き取る巻き取りロール7bが設置される。繰り出しロール7aと巻き取りロール7bの各巻芯には、各々ベクトルインバータモータ24,25の回転軸が連結される。両ロール7a,7bは、連続状転写箔原反7が両ロール7a,7b間を所定速度で走行するようにベクトルインバータモータ24,25によって回転を制御される。
【0030】
熱転写ユニットI,II,III,IVは、上記繰り出しロール7aと上記巻き取りロール7bとの間において、連続状転写箔原反7の上流側から下流側に向かって、藍、赤、黄、白の各色インクを刷るように並べられる。もちろん、この熱転写ユニットI,II,III,IVの配列は、藍、赤、黄、白の順に限られるものではない。また、四ユニットに限られるものでもなく、三色刷りの三ユニット、二色刷りの二ユニットにしてもよいし、他の色インクをさらに印刷することができるようにユニットを四基からさらに増設してもよい。
【0031】
図4に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIには、水平方向に走行する連続状転写箔原反7を上方向に迂回させるためのガイドローラ10,11が設けられる。これらガイドローラ10,11の上方には、迂回する連続状転写箔原反7を走行させるプラテン12が配置される。プラテン12の上方には、サーマルヘッド13がプラテン12に対向するように配置される。プラテン12とサーマルヘッド13との間には藍色のインクリボン14が配置される。
【0032】
プラテン12は、表面がゴムで覆われたロールである。プラテン12には、速度一定制御式サーボモータ22の回転軸が直結される。
【0033】
図4に示すように、プラテン12とサーマルヘッド13との間を通る連続状転写箔原反7を、サーマルヘッド13の前後でプラテン12に対して各々押圧するニップローラ15,15が必要に応じて設けられる。このニップローラ15,15により連続状転写箔原反7がプラテン12の表面に押し付けられることによって、連続状転写箔原反7とプラテン12との間での滑りが防止される。これにより、画像がより精細、美麗に印刷されることとなる。
【0034】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、プラテン12を加温する加温手段を備えている。この加温手段には、例えば、図4に示すように、遠赤外線ヒータ16が用いられ、この遠赤外線ヒータ16は、プラテン12の下方に設置される。この遠赤外線ヒータ16は、この多色熱転写プリンタが印刷を開始する前にプラテン12が所定の温度(好ましくは連続印刷時の飽和温度)に加温制御される。プラテン12はその表面がゴムでできているため、印刷し続けることにより蓄熱し、径が変動し、それに伴い連続状転写箔原反7の走行速度が変化するが、この加温手段によってプラテン12をあらかじめ連続印刷時の飽和温度まで加温しておくことによって、そのような不都合を解消することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、加温手段として遠赤外線ヒータ16を用いたが、例えば、図5(b)に示すように、電気を印加する電源部35と接続されたコイル状に巻回されたニクロム線32を内部に備えた加温用ローラ30を用いても構わない。この場合、当該加温用ローラ30は、図5(a)に示すように、前記プラテン12と接触させるようにして配置される。この加温用ローラ30は、電気の印加によってニクロム線32が加熱されることによってその表面が加熱制御される。そして、当該加熱された加温用ローラ30との接触によりプラテン12は加温され、サーマルヘッド13周辺の温度とプラテン12周辺の温度がほぼ一定に保たれるように制御される。
【0036】
また、その他、熱風などをプラテン12の表面にあてるなど、プラテン12を加温する加温方式は、従来から知られている公知の技術を用いることが可能である。
【0037】
サーマルヘッド13は、垂直方向に上下に移動可能であり、画像を印刷する際には、図4に示すようにインクリボン14をプラテン12に向かって押し付けるようになっている。
【0038】
このサーマルヘッド13は、ライン状に配列され解像度分の抵抗を備えた複数の発熱素子36を備えている。また、サーマルヘッド13は、図6に示すように、当該発熱素子36が取り付けられるセラミック基板37と、このセラミック基板37に伝導性の良い接着剤などを介して取り付けられているアルミニウムなど熱容量の大きい材料からなる放熱体38と、を備えている。さらに、この放熱体38には、この放熱体38に蓄熱された熱を良好に外部に放熱するための放熱フィン39やファン40が備えられる。
【0039】
そして、サーマルヘッド13の各発熱素子36に所定の熱エネルギを加え、各発熱素子36に対応する当該インクリボン14のインクが連続状転写箔原反7に転写されることで所定の印刷画像を形成するためのインク層6が形成される。
【0040】
また、印刷時において、連続状転写箔原反7における印刷すべき部分を示す印画部と印刷すべき部分を除く非印画部との間の熱量差により、この印画部と非印画部との境界において摩擦力の変化が生じ送りムラ(濃淡ムラ)やシワが発生する。そこで、本実施形態の多色熱転写プリンタでは、印画部41へのインク転写時において、連続状転写箔原反7の非印画部43には(図7参照)、インクが転写しない程度の熱エネルギが前記サーマルヘッド13の各発熱素子36に通電されるようになっている。
【0041】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、サーマルヘッド13を加温する加温手段を備えている。本実施形態の加温手段は、例えば、図6に示すように、放熱フィン39に電気を印加する電源部46と接続されたニクロム線47を巻き付け、電気をニクロム線47に印加することでニクロム線47を加熱しその熱を放熱フィン39に伝導することでサーマルヘッド13を加温するようになっている。そして、この加温手段は、印刷前にサーマルヘッド13が所定の温度(連続印刷時の飽和温度)まで加温制御され、サーマルヘッド13周辺の温度とプラテン12周辺の温度とがほぼ一定に保たれるように制御される。
【0042】
なお、このようなサーマルヘッド13を加温する加温手段は、上記ニクロム線47に限られず、従来から公知の他の加温手段を適用することができる。
【0043】
ところで、図3に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIにおけるインクリボン14は、連続状フィルム等の表面に藍色インクが塗布されてなるもので、その繰り出しロール14aと巻き取りロール14bが、プラテン12及びサーマルヘッド13を連続状転写箔原反7の上流側と下流側から挟むように配置される。インクリボン14の繰り出しロール14aと巻き取りロール14bは、図4に示す印刷時において、インクリボン14がプラテン12の回りを連続状転写箔原反7と同じ速度で走行するように制御される。
【0044】
速度一定制御式サーボモータ22によって、プラテン12が速度一定で回転すると、連続状転写箔原反7がプラテン12の周速度と同じ一定速度でプラテン12とサーマルヘッド13との間をインクリボン14と重なった状態で通過しつつ、その表面に藍色インクの画像が熱転写される。
【0045】
藍色インクの熱転写ユニットIは、以上のように構成されるが、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVも同様に構成される。ただ、インクリボン14のインクの色が異なるのみである。従って、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVについての詳細な説明は省略する。
【0046】
上記各色の熱転写ユニットI,II,III,IVの各プラテン12を駆動する速度一定制御式サーボモータ22は、それらすべてが連続状転写箔原反7を同じ一定速度で走行させるように制御部17によって制御される。具体的には、プラテン12を駆動する速度一定制御式サーボモータ22は印刷色数と同数の四基設けられるが、そのうち所望の一基の回転数を基準にして他の三基の回転数が同じ回転数となるように制御される。これにより、連続状転写箔原反7は各色のプラテン12によって一方向に送られ、その表面に各色の画像が色ずれを生じることなく刷り重ねられる。
【0047】
上述したように、連続状転写箔原反7は各色の熱転写ユニットI,II,III,IVのプラテン12によって各ユニットI,II,III,IV内のサーマルヘッド13下を互いに同一の一定速度で走行するが、その状態で印刷を続行すると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化し、これが色ずれの発生の原因となる。張力が低すぎると連続状転写箔原反7が弛んで蛇行や印刷開始時の位置ずれの原因となり、張力が高すぎるとフィルムが駆動ローラとの間でスリップして正常に搬送されなくなる。
【0048】
これを防止するために、図3に示すように、所定箇所、例えば連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと先頭の熱転写ユニットIとの間や、後尾の熱転写ユニットIVと巻き取りロール7bとの間に、張力検出器18及び張力調整ローラ19a,19bが各々設けられる。
【0049】
張力調整ローラ19a,19bの一方には例えばサーボモータ23が接続される。張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレは図示しない他の制御部を介しサーボモータ23に送られるようになっている。このサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19bに伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、色ずれのない画像が印刷される。
【0050】
また、張力検出器18は、上記連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bを各々回転させるベクトルインバータモータ24,25に対しても設けられる。この張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレも上記図示しない他の制御部を介しベクトルインバータモータ24,25に送られる。このベクトルインバータモータ24,25の制御された駆動力が繰り出しロール7aと巻き取りロール7bに各々伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれる。
【0051】
本実施形態の多色熱転写プリンタは、特に、印画部41へのインク転写時に加えられる熱エネルギの、印画部と非印画部との間の熱量差やその周辺の環境温度変動によって発生する摩擦力の変化により送りムラやシワが発生することを防止すべく、プラテン12やサーマルヘッド13の加温制御によって、環境温度を一定に保ち、印刷時に加えられる印画部と非印画部の熱量差を近づけて、摩擦力を一定に保ち、送りムラやシワの発生を防止するようになっている。この時、本実施形態の多色熱転写プリンタにおいて、その周囲環境に応じてプラテン12やサーマルヘッド13を加温する各加温手段は、どちらか一方、又は両方が用いられる。
【0052】
そして本実施形態の多色熱転写プリンタは、プラテン12、サーマルヘッド13のいずれか一方、又は両方を加温し、さらには印画部41の幅方向両端部の非印画部43において、インクが転写しない程度の熱エネルギを前記サーマルヘッド13の各発熱素子36に通電して張力差によるシワの発生を低減し、一方で、印画部41の印刷開始端42の印刷上流側の非印画部43において、インクが転写しない程度の熱エネルギを前記サーマルヘッド13の各発熱素子36に通電して摩擦力の差による送りムラの発生を低減し、このようにして印刷時に加えられる印画部41と非印画部43の熱量差を少なくすることでシワや送りムラを低減又は防止し、刷り出しから印刷終了まで安定した印画を得ることができる。
【0053】
次に、上記多色熱転写プリンタの動作等について実施例1乃至実施例3に基づいて説明する。
【0054】
―実施例1−
本実施例は、タンデム式多色熱転写プリンタにおいて、プラテン12及びサーマルヘッド13を加温制御し、且つ、印画部41へのインク転写時における、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部41の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43には、インクが転写しない程度の熱エネルギを与えて送りムラやしわを低減し、詳細な画像を印画できるようにしたものである。
【0055】
印刷の開始にあたり、上述したようにプラテン12の加温手段、サーマルヘッド13の加温手段の両方を用いて、プラテン12やサーマルヘッド13を連続印刷時の飽和温度まで加温制御する。
【0056】
また、連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bとが各々のベクトルインバータモータ24,25の駆動によって回転し、連続状転写箔原反7が各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内を走行する。
【0057】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内では、プラテン12が速度一定制御式サーボモータ22の駆動によって一定速度で回転しつつ連続状転写箔原反7をその上流側から下流側へと送る。その際プラテン12上にサーマルヘッド13がインクリボン14を連続状転写箔原反7に押し付け、該当する色インクを画像として連続状転写箔原反7に転写させる。
【0058】
なお、この色インクを転写させる際において、前記サーマルヘッド13の各発熱素子36には、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43に、インクが転写しない程度の熱エネルギが通電される。
【0059】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IVにおける全プラテン12は、制御部17による速度一定制御式サーボモータ22の制御によって同一の一定速度で回転することから、連続状転写箔原反7には各色の画像がずれることなく刷り重ねられる。
【0060】
全色が刷られることにより画像が形成された連続状転写箔原反7は連続状の転写箔1として巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0061】
上記印刷が続行されると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化する可能性がある。そこで、印刷中張力検出器18により連続状転写箔原反7の張力が検出され、適正張力と比較されたうえでズレを解消するための信号が図示しない制御部を介しベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23に送られる。
【0062】
このベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19aや繰り出しロール7a、巻き取りロール7bに伝達されることにより、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、これにより、色ずれのない精細かつ美麗な画像が印刷される。
【0063】
巻き取りロール7bに巻き取られた連続状転写箔原反7は、巻かれた状態で成型機に取り付けられて転写箔1として使用される。
【0064】
―実施例2−
本実施例は、タンデム式多色熱転写プリンタにおいて、サーマルヘッド13を加温制御し、且つ、印画部41へのインク転写時における、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部41の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43には、インクが転写しない程度の熱エネルギを与えて送りムラやしわを低減し、詳細な画像を印画可能としたものである。
【0065】
印刷の開始にあたり、上述したようにサーマルヘッドの加温手段のみを用いて、サーマルヘッド13を連続印刷時の飽和温度に加温制御する。
【0066】
また、連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bとが各々のステッピングモータ10,11の駆動によって回転し、連続状転写箔原反7が各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内を走行する。
【0067】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内では、プラテン12が速度一定制御式サーボモータ22の駆動によって一定速度で回転しつつ連続状転写箔原反7をその上流側から下流側へと送る。その際プラテン12上にサーマルヘッド13がインクリボン14を連続状転写箔原反7に押し付け、該当する色インクを画像として連続状転写箔原反7に転写させる。
【0068】
なお、この色インクを転写させる際において、前記サーマルヘッド13の各発熱素子36には、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43に、インクが転写しない程度の熱エネルギが通電される。
【0069】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IVにおける全プラテン12は、制御部17による速度一定制御式サーボモータ22の制御によって同一の一定速度で回転することから、連続状転写箔原反7には各色の画像がずれることなく刷り重ねられる。
【0070】
全色が刷られることにより画像が形成された連続状転写箔原反7は連続状の転写箔1として巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0071】
上記印刷が続行されると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化する可能性がある。そこで、印刷中張力検出器18により連続状転写箔原反7の張力が検出され、適正張力と比較されたうえでズレを解消するための信号が図示しない制御部を介しベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23に送られる。
【0072】
このベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19aや繰り出しロール7a、巻き取りロール7bに伝達されることにより、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、これにより、色ずれのない精細かつ美麗な画像が印刷される。
【0073】
巻き取りロール7bに巻き取られた連続状転写箔原反7は、巻かれた状態で成型機に取り付けられて転写箔1として使用される。
【0074】
―実施例3−
本実施例は、タンデム式多色熱転写プリンタにおいて、プラテン12を加温制御し、且つ、印画部41へのインク転写時における、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部41の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43には、インクが転写しない程度の熱エネルギを与えて送りムラやしわを低減し、詳細な画像を印画可能としたものである。
【0075】
印刷の開始にあたり、上述したようにプラテンの加温手段のみを用いて、プラテン12を連続印刷時の飽和温度まで加温制御する。
【0076】
また、連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bとが各々のベクトルインバータモータ24,25の駆動によって回転し、連続状転写箔原反7が各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内を走行する。
【0077】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内では、プラテン12が速度一定制御式サーボモータの駆動によって一定速度で回転しつつ連続状転写箔原反7をその上流側から下流側へと送る。その際プラテン12上にサーマルヘッド13がインクリボン14を連続状転写箔原反7に押し付け、該当する色インクを画像として連続状転写箔原反7に転写させる。
【0078】
なお、この色インクを転写させる際において、前記サーマルヘッド13の各発熱素子36には、連続状転写箔原反7の印刷すべき印画部41の印刷開始端42に至る前から前記印画部の印刷終了端42aに至るまでの非印画部43に、インクが転写しない程度の熱エネルギが通電される。
【0079】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IVにおける全プラテン12は、制御部17による速度一定制御式サーボモータ22の制御によって同一の一定速度で回転することから、連続状転写箔原反7には各色の画像がずれることなく刷り重ねられる。
【0080】
全色が刷られることにより画像が形成された連続状転写箔原反7は連続状の転写箔1として巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0081】
上記印刷が続行されると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化する可能性がある。そこで、印刷中張力検出器18により連続状転写箔原反7の張力が検出され、適正張力と比較されたうえでズレを解消するための信号が図示しない制御部を介しベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23に送られる。
【0082】
このベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19aや繰り出しロール7a、巻き取りロール7bに伝達されることにより、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、これにより、色ずれのない精細かつ美麗な画像が印刷される。
【0083】
巻き取りロール7bに巻き取られた連続状転写箔原反7は、巻かれた状態で成型機に取り付けられて転写箔1として使用される。
【0084】
<実施の形態2>
本実施の形態2は多色熱転写プリンタの他の構成例である。図8に示すように、この実施の形態2では、多色熱転写プリンタ内の所定箇所に、連続状転写箔原反7を走行させるための一対のフィードローラ20a,20bが設けられる。
【0085】
一方のフィードローラ20aは、表面がゴムで覆われたローラであり、他方のフィードローラ20bは表面が金属で覆われたローラである。そして、ゴムで覆われたローラ20bが例えばサーボモータ21によって駆動される。
【0086】
フィードローラ20a,20bは、望ましくは四基の熱転写ユニットI,II,III,IVの列中、それらの中央部における連続状転写箔原反7の走行路に設置される。
【0087】
すべての熱転写ユニットI,II,III,IVの各プラテン12に直結されたサーボモータ22は、サーボモータ21によって駆動されるフィードローラ20a,20bの回転速度を基準にして駆動され、全熱転写ユニットI,II,III,IVの各プラテン12は互いに同一の一定速度で回転するように制御される。
【0088】
かくて、連続状転写箔原反7は色ずれを生じることなく画像を印刷された後、巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0089】
その他、実施の形態2において実施の形態1における部分と同一の部分には同一の符号を付して示すのみとし、詳細な説明は省略する。
【0090】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、本発明は、連続状転写箔原反にインクを転写可能であって、複数の熱転写ユニットを備えたタンデム型の多色熱転写プリンタに限られるものではなく、一般的に公知な枚葉紙からなる原反にインクを転写可能であって、熱転写ユニットを備えた多色熱転写プリンタであっても構わない。
【符号の説明】
【0091】
I,II,III,IV…熱転写ユニット
7…連続状転写箔原反
12…プラテン
13…サーマルヘッド
14…インクリボン
15…ニップローラ
16…予熱手段
18…張力検出器
19a,19b…張力調整ローラ
20a,20b…フィードローラ
22…速度一定制御式サーボモータ
23…サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色インクの画像を印刷する熱転写ユニットを備え、原反を当該熱転写ユニットに供給し、当該原反が当該熱転写ユニットにおいてインクリボンと共にサーマルヘッドとプラテンとで挟まれ、前記サーマルヘッドの発熱素子に熱エネルギを通電することによって、各色インクの画像が重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおいて、
前記プラテンを加温するプラテン加温手段と、
前記サーマルヘッドを加温するサーマルヘッド加温手段と、
各色インクの印刷開始前に前記プラテン及びサーマルヘッドを加温制御する加温制御手段と、を具備し、
前記サーマルヘッドの発熱素子には、当該原反の印刷すべき印画部の印刷開始端に至る前から前記印画部の印刷終了端に至るまでの非印画部にインクが転写しない程度の熱エネルギが通電されることを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載の多色熱転写プリンタにおいて、
前記熱転写ユニットのプラテンには、速度一定制御式サーボモータの回転軸が直結されていることを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載の多色熱転写プリンタにおいて、
前記多色熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を印刷する複数個の熱転写ユニットがタンデム型に配列され、連続状原反を各熱転写ユニットに供給し、当該連続状原反が各熱転写ユニットにおいてインクリボンと共にサーマルヘッドとプラテンとで挟まれ、前記サーマルヘッドの各発熱素子に熱エネルギを通電することによって、各色インクの画像が重ねられるように転写される多色熱転写プリンタであって、
全熱転写ユニットのプラテンに各々速度一定制御式サーボモータの回転軸が直結されることにより、連続状原反が全熱転写ユニット内を同じ一定速度で走行可能に、プラテンの回転が制御されるようにしたことを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、いずれか一つの熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度を基準にして、他の熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度が制御されるようにしたことを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項5】
請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、連続状原反を走行させるフィードローラが所定箇所に設けられ、このフィードローラの回転速度を基準にして、熱転写ユニットにおけるプラテンの回転速度が制御されるようにしたことを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項6】
請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、所定位置に連続状原反の張力を検出する張力検出器と、サーボモータで駆動される張力調整ローラとが設けられ、上記張力検出器で検出された張力に基づいてサーボモータの回転数が制御されることによって、連続状原反の張力が加減されるようにしたことを特徴とする多色熱転写プリンタ。
【請求項7】
請求項3に記載の多色熱転写プリンタにおいて、プラテンとサーマルヘッドとの間を通る連続状原反を、サーマルヘッドの前後でプラテンに対して各々押圧するニップローラが設けられたことを特徴とする多色熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212996(P2011−212996A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84110(P2010−84110)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】