説明

多芯プラスチック光ファイバ裸線、それを用いた多芯プラスチック光ファイバケーブル及び多芯プラスチック光ファイバ裸線の製造方法

【課題】大径化することなく、かつ芯の密度を少なくすることなく、曲げ時の漏光を抑制することができる多芯プラスチック光ファイバ裸線を提供する。
【解決手段】複数の芯11と前記複数の芯11の外周に被覆形成された鞘層12を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線1であって、その軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域A1と前記中心領域A1の外側に形成された外周領域A2とを少なくとも有し、前記外周領域A2は、前記中心領域A1と略同心に配置されており、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線1の端断面において、中心領域と外周領域の合計領域における前記芯11の1本当たりが占める鞘層面積が22μm以下であり、前記外周領域A2に存在する前記芯11の1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域A1における前記中心領域A1に存在する前記芯11の1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯プラスチック光ファイバ裸線、それを用いた多芯プラスチック光ファイバケーブル及び多芯プラスチック光ファイバ裸線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多芯プラスチック光ファイバが医療用途、特に内視鏡として使用され始めている。内視鏡は、人体等の体腔内部を観察することを目的とした医療機器であり、硬性内視鏡、軟性内視鏡、カプセル型内視鏡に大別される。これらの中でも、多芯プラスチック光ファイバは、フレキシブルな光学系を組み込んだ軟性内視鏡(ファイバスコープ等)に使用されている。一般に、軟性内視鏡は可とう性を有する管と、その中に挿入される多芯プラスチック光ファイバと、から構成されており、観測対象の観測は、多芯プラスチック光ファイバの一方の端面を観測対象に近づけて、他方の端面に出力される出力画像をルーペやマイクロスコープ等で拡大して直接目視をすることで行われる。多芯プラスチック光ファイバの先端には、必要に応じて対物レンズや接眼レンズ等が設けられる。
【0003】
上記したような軟性内視鏡(以下、単に「内視鏡」という場合がある。)に用いられる多芯プラスチック光ファイバとして、例えば、特許文献1には、画像伝送性の島を50〜30000なる範囲で海部に配置した構造を有するマルチフィラメント型プラスチック光ファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−018725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内視鏡用途の多芯プラスチック光ファイバ裸線には、細い部位に挿入できるように細径であること、そして鮮明(解像度が高い)で明るい画像を得られることが求められているが、特許文献1をはじめとする従来技術の多芯プラスチック光ファイバ裸線は、以下の理由により上記要求を満たすことができない。
【0006】
多芯プラスチック光ファイバ裸線は、複数の芯と、複数の芯の外周に被覆形成された鞘層と、から構成されるが、得られる画像をなるべく解像度が高くかつ明るい画像とするためには、多芯プラスチック光ファイバ裸線中の芯数をなるべく多くし(解像度の向上)、かつ、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面に占める芯の面積をなるべく大きく(明るさの向上)する必要がある。従って、解像度が高く明るい画像を得ようとした場合、必然的に多芯プラスチック光ファイバ裸線の芯1本当たりに占める鞘層の面積は小さいものとなる。また、多芯プラスチック光ファイバ裸線を細径にすると、芯1本当たりが占める鞘層の面積はより小さいものとなる。
【0007】
ところで、体内部の体腔等に挿入された多芯プラスチック光ファイバ裸線は、極めて小さい曲率半径で曲げられて使用されるため、多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周領域にある鞘層には強い引張応力がかかり、延びて薄くなる。外周領域にある鞘層が薄くなるため、芯1本当たりに占める鞘層の面積が小さい多芯プラスチック光ファイバ裸線では、外周領域に存在する芯から光が漏れ、漏れた光が隣接する芯に入光してしまい、結果、外周領域の画像がぼやけてしまう(漏光)。この問題は、鞘層に樹脂を用いた多芯プラスチック光ファイバ裸線に特有の問題であり、特に、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、後述する中心領域と外周領域の合計領域における芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下の場合にかかる問題が顕著になる。
【0008】
この曲げによる漏光を抑制する方法として、単純に多芯プラスチック光ファイバ裸線中の鞘樹脂の量を多くする方法や、多芯プラスチック光ファイバ裸線の径を一定にした上で、芯樹脂の割合を減らし、鞘樹脂の割合を増やすという方法が考えられるが、この場合、従来の多芯プラスチック光ファイバ裸線では上述したように細径化ができないという問題や、解像度が高く、明るい画像を得ることができないという問題がある。
【0009】
このように、従来技術の多芯プラスチック光ファイバ裸線は、曲げ時の漏光、細径、画像の鮮明さ、明るさを全て満たすことは困難である。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、樹脂製の多芯プラスチック光ファイバ裸線に特有の課題を解決するものであり、大径化することなく、かつ、得られる画像の解像度と明るさを損なうことなく、曲げ時の漏光を抑制することができる多芯プラスチック光ファイバ裸線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究した結果、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面での中心領域と外周領域の合計領域における芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下となる多芯プラスチック光ファイバ裸線において、外周領域における外周領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積が、中心領域における中心領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい構成とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下のものを提供する。
〔1〕
複数の芯と、前記複数の芯の外周に被覆形成された鞘層と、を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線であって、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線は、その軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、
前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記中心領域と前記外周領域の合計領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、
前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい、多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔2〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の前記端断面において、前記芯の各々の断面積が略等しい、〔1〕に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔3〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(1)の関係を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数1】

〔4〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(2)の関係を満たす、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数2】

〔5〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(3)の関係を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数3】

〔6〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記芯の断面形状が略円形状である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔7〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記芯の断面形状が、略正六角形状である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔8〕
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の直径が、200μm〜1500μmである、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔9〕
前記端断面において、前記芯が俵積み状に配置されている、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔10〕
前記芯の数が、5000芯以上である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔11〕
前記芯の数が、14000芯以上である、〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
〔12〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周に被覆層を設けてなる多芯プラスチック光ファイバケーブル。
〔13〕
複数の芯と、前記複数の芯の外周に被覆形成された鞘層と、を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法であって、
前記芯となる溶融状態の芯樹脂を、前記鞘層となる溶融状態の鞘樹脂で被覆して、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本得る工程と、
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本束ねて溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を作製する工程と、
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を延伸しながら漸次細化させる工程と、
前記漸次細化させた溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を硬化させることにより、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線を得る工程と、
を有し、かつ、
下記式(4)の関係を満たすように制御することで、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面にいて、前記中心領域と前記外周領域の合計領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい、多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。

B/Nb>A/Na ・・・(4)

(式中、
Aは、前記中心領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Naは、前記中心領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数であり、
Bは、前記外周領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Nbは、前記外周領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数である。)
〔14〕
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の体積量が、それぞれ略同一である、〔13〕に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。
〔15〕
前記溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束を構成する前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の数M、前記各溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の体積量Sm(ここで、mは1〜Mまでの整数)、下記式(5)で表される前記各溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の平均体積量Sbが、下記式(6)の関係を満たす、〔13〕又は〔14〕に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。
【数4】

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大径化することなく、かつ、得られる画像の解像度と明るさを損なうことなく、曲げ時の漏光を抑制することができる多芯プラスチック光ファイバ裸線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の多芯光ファイバ裸線の第一実施形態の端断面図である。
【図2】本実施形態の多芯光ファイバ裸線1の中心領域A1及び外周領域A2を説明するための概念図である。
【図3】本実施形態の多芯光ファイバ裸線1において、中心領域A1及び外周領域A2にまたがって配置された芯11を説明するための概念図である。
【図4】本実施形態の製造方法において用いる複合紡糸ダイの一例を示す概略縦断面図である。
【図5】実施例における画像確認試験を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0016】
図1は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線の第一実施形態の端断面図である。本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1は、複数の芯11と、前記複数の芯11の外周に被覆形成された鞘層12と、を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線であって、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線1は、その軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域A1と、前記中心領域の外側に形成された外周領域A2と、を少なくとも有し、前記外周領域A2は、前記中心領域A1と略同心に配置されており、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における、中心領域と外周領域の合計領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きく構成されている。
【0017】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1は、海島構造の多芯プラスチック光ファイバ裸線である。即ち、芯11(島部)が鞘層12(海部)により被覆されている構造である。本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1では、島部に相当する芯11において画像を伝送する。
【0018】
多芯プラスチック光ファイバ裸線1の中心領域A1及び外周領域A2は、以下のように規定される。まず、多芯プラスチック光ファイバ裸線1の全ての芯11を包含する最小の円(第1の円)を規定し、第1の円の略同心上に第1の円の半分の面積である円(第2の円)を規定し、この第2の円が光ファイバ裸線1の中心領域A1とする。そして、第1の円から第2の円を除いた領域を外周領域A2とする。ここで、図2を用いながら、中心領域A1及び外周領域A2について、より具体的に説明する。図2は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の中心領域A1及び外周領域A2を説明するための概念図である。第1の円C1(半径をr1とする。)を規定した後、その半分の面積である第2の円C2(半径をr2とする。)を規定する。第2の円C2は第1の円C1と略同心である。したがって、第2の円C2の半径r2は、第1の円C1の半径r1の1/√2である。このようにして規定された第2の円C2の領域が中心領域A1に相当し、第1の円C1の領域から第2の円C2の領域を除いた残りの領域が外周領域A2に相当する。
【0019】
なお、多芯プラスチック光ファイバ裸線1において、多芯プラスチック光ファイバ裸線1の全ての芯11を包含する最小の円(第1の円)に含まれない領域が存在する場合、かかる領域は中心領域A1にも外周領域A2にも該当しない領域である。例えば、図1の外周領域A2の更に外周側に領域A3が存在するが、領域A3は中心領域A1にも外周領域A2にも該当しない領域である。
【0020】
中心領域A1と外周領域A2にまたがって位置する芯11が存在する場合、当該芯11の断面積のうち、中心領域A1に含まれる断面積を当該芯11の中心領域A1の面積とし、外周領域A2に含まれる断面積を当該芯11の外周領域A2の面積として計算する。ここで、図3を用いながら、より具体的に説明する。図3は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1において、中心領域A1及び外周領域A2にまたがって配置された芯11を説明するための概念図である。図3に示される芯11では、芯11の断面積の2/3が中心領域A1に含まれており、芯11の断面積の1/3が外周領域A2に含まれている。この場合、中心領域A1に属する芯11の面積は、芯11の断面積の2/3として計算し、外周領域A2に属する芯11の面積は、芯11の断面積の1/3として計算する。
【0021】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線では、その端断面における、中心領域と外周領域の合計領域における芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、かつ、外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい構成をとる。外周領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積(以下、「外周領域の平均鞘層面積」という場合がある。)とは、外周領域A2に占める鞘層面積の総和を、外周領域A2に存在する芯11の数で除したものを意味する(下記式(i)参照)。

外周領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積=(外周領域A2に占める鞘層面積)/(外周領域A2に存在する芯数) (i)

中心領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積(以下、「中心領域の平均鞘層面積」という場合がある。)とは、中心領域A1に占める鞘層面積の総和を、中心領域A1に存在する芯11の数で除したものを意味する(下記式(ii)参照)。

中心領域に存在する芯1本当たりが占める鞘層面積=(中心領域A1に占める鞘層面積)/(中心領域A1に存在する芯数) (ii)

多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における、中心領域と外周領域の合計領域において前記芯1本当たりが占める鞘層面積(以下、「全体の平均鞘層面積」という場合がある。)とは、中心領域A1及び外周領域A2に占める鞘層面積の総和を、中心領域A1及び外周領域A2に存在する芯11の数で除したものを意味する(下記式(iii)参照)。

全体の平均鞘層面積=(中心領域A1及び外周領域A2に占める鞘層面積の総和)/(中心領域A1及び外周領域A2に存在する芯数) (iii)
【0022】
上述したように、従来の多芯プラスチック光ファイバ裸線では、体内部の体腔等への挿入時に折り曲げられた場合、外周領域に強い引張応力がかかり、外周領域の鞘樹脂が延びて厚みが薄くなってしまうことで、漏光が引き起こされてしまうという問題がある。かかる問題は、実用上、特に全体の平均鞘層平均面積が22μm2以下という細径かつ芯の本数と端断面における芯の占める面積が大きい高密度な多芯プラスチック光ファイバ裸線において顕著になる。かかる問題に対して、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1は、外周領域の平均鞘層面積が中心領域の平均鞘層面積よりも大きいため、全体の平均鞘層面積が22μm2以下といった曲げ時の漏光が大きくなる多芯プラスチック光ファイバ裸線であっても、大径化や芯の低密度化をすることなく、曲げ時の漏光を抑制することができる。これは、多芯プラスチック光ファイバ裸線の曲げ時に引張応力が強くかからない中心領域の鞘層を薄くして、その分、外周領域の鞘層を厚くするとの発想に基づくものである。このような構成とすることで、多芯プラスチック光ファイバ裸線の径の大きさや芯の密度を変化させることなく、曲げ時の漏光が少ない多芯プラスチック光ファイバ裸線とすることができる(但し、本実施形態の作用はこれに限定されない。)。
【0023】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1は、その端断面において、芯11の各々の断面積が略等しいことが好ましい。芯11の断面積を略等しくすることにより、多芯プラスチック光ファイバの解像度のばらつきを抑えることができる。その結果、出力画像を目視で観察した際に違和感の少ない、見やすい画像となる。より具体的には、多芯プラスチック光ファイバ裸線1中に含まれる芯11の数N、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線1の前記端断面における前記芯11の平均断面積Sa、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線1の前記端断面における各芯11の面積Snが、下記式(1)の関係を満たすことがより好ましく、下記式(2)の関係を満たすことが更に好ましく、下記式(3)の関係を満たすことがより更に好ましく、下記式(7)の関係を満たすことが特に好ましい。
【数5】

【0024】
上記関係式を満たす多芯プラスチック光ファイバ裸線1とすることにより、多芯プラスチック光ファイバとした際の解像度のばらつきが少なく、出力画像を目視で観察した際に違和感の少ない、見やすい画像となる。
【0025】
なお、上記式(1)、(2)、(3)、(7)において、中心領域A1と外周領域A2にまたがって配置されている芯11が存在する場合、上述したように、当該芯11の面積のうち、中心領域A1に存在する面積を当該芯11の中心領域A1の面積とし、外周領域A2に存在する面積を当該芯11の外周領域A2の面積として、それぞれ配分計算する。当該芯11の本数の配分については、中心領域A1に存在する面積と外周領域A2に存在する面積の比率に応じて、当該芯11の本数(1本)を配分計算する。例えば、図3を一例にして説明すると、中心領域A1と外周領域A2にまたがって芯11が配置されており、芯11aの断面積の2/3が中心領域A1に含まれており、芯11の断面積の1/3が外周領域A2に含まれている場合、中心領域A1に属する芯11の本数は2/3本として計算し、外周領域A2に属する芯11aの本数は1/3本として計算する。
【0026】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1を構成する各芯11の形状は、特に限定されないが、芯の各々の断面形状は、略同一であることが好ましい。芯11の断面形状が略同一である多芯プラスチック光ファイバ裸線1を用いることにより、多芯プラスチック光ファイバの解像度のばらつきを抑えることができ、人間の目で見たときに見やすい画像となる。さらに、人間の目で見た時の見やすさの観点から、各芯11の断面形状は線対称かつ点対称な形状であることがより好ましい。特に、製造の容易さの観点から、各芯11の断面形状は略円形状又は略正六角形状であることが好ましい。
【0027】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の直径は、特に限定されないが、内視鏡としての用途の観点から、200μm〜1500μmが好ましく、200μm〜1200μmがより好ましく、200μm〜1000μmが更に好ましい。
【0028】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の端断面における芯11の配置は、特に限定されず、ランダム状配置、放射状配置、俵積み状配置等を採用することができる。これらの中でも、芯を高密度に配置できるという観点から、俵積み状配置が好ましい。ここでいう、俵積み状配置とは、隣接する芯11の間に形成される谷間に、さらに他の芯11を積み重ねていく配置をいう。この構成により、芯11の配置において無駄な空間を極力低減することができ、芯11の充填率を向上させることができるため好ましい。
【0029】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の芯11の総数Nは、特に限定されないが、芯の数は多いほど画像の解像度が高くなり好ましい。具体的には、芯11の総数Nの下限は、好ましくは芯の数が5000芯以上、より好ましくは7000芯以上、更に好ましくは14000芯以上であり、特に好ましくは20000芯以上である。また、芯11の総数Nの上限は、製造容易性の観点から好ましくは50000芯以下であり、より好ましくは30000芯以下である。
【0030】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の芯11の材料については、特に限定されない。芯11の材料としては各種の透明樹脂が使用できる。芯11を構成する透明樹脂(以下、「芯樹脂」という場合がある。)としては、メチルメタクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、下記式(a)で表されるラクトン系化合物、及びアモルファスのポリオレフィン樹脂が好ましく、これらの中でもメチルメタクリレート系樹脂が好ましい。
【化1】

(式中、R1は、メチル基、エチル基又はプロピル基を表し、Xは下記式(b)又は式(c)で表される。)
【化2】

(式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)
【0031】
メチルメタクリレート系樹脂としては、公知の樹脂が使用できる。例えば、メチルメタクリレート単独重合体;メチルメタクリレート50質量%以上と、メチルメタクリレートと共重合可能な他の成分(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルのメタクリル酸エステル類、マレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、スチレン等)1種類以上との共重合体が挙げられる。メチルメタクリレート系樹脂は透明性が高いので長距離の画像伝送が可能であるという利点を有する。
【0032】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン単独重合体;スチレンと共重合可能な他の成分(アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−六員環酸無水物共重合体等)1種類以上との共重合体が挙げられる。スチレン系樹脂は吸湿性が低いので、水の影響を受け難いという利点を有する。
【0033】
上記式(a)で表されるラクトン系化合物としては、例えば、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン(βMMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−ブチロラクトン(βEMBL)、α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトン(βPMBL)、α−メチレン−β−メチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(βMγMMBL)、α−メチレン−β−メチル−γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン(βMγDMMBL)、α−メチレン−β−メチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン(βMγEMBL)、α−メチレン−β−メチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン(βMγPMBL)、α−メチレン−β−メチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン(βMγCHMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(βEγMMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン(βEγDMMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン(βEγEMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン(βEγPMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン(βEγCHMBL)が挙げられる。芯11の材料としてラクトン系化合物を使用する場合は、ラクトン系化合物のみに限定されず、前記ラクトン系化合物と(メタ)アクリル酸エステル単位を少なくとも加えてなる共重合体、若しくはこれらを混合したものであってもよい。ラクトン系化合物の単位(A)と(メタアクリル酸エステル単位(B)の含有割合は、樹脂のガラス転移温度(Tg)や機械的強度等の諸物性が、プラスチック光ファイバの用途や使用環境に適した値となるように適宜決めれば選択することができるが、通常、単位(B)に対する単位(A)の割合((A)/(B))は、5/95〜50/50(質量比)の範囲であることが好ましい。
【0034】
特に、式(b)において、R2、R3が共に水素原子である化合物、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン(βMMBL)、α−メチレン−β−エチル−γ−ブチロラクトン(βEMBL)、α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトン(βPMBL)は、非常に高い光学的透明性が得られるため、好ましい。これらの中でも、βMMBL、βEMBLは、少量の添加でガラス転移温度を大きく向上させることができるため、より好ましい。
【0035】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリカーボネートや芳香族ポリカーボネート等、またこれらと4,4−ジオキシフェニルエーテル、エチレングリコール、p−キシレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオキシ化合物との共重合体や、カーボネート結合の他にエステル結合をも有するヘテロ結合共重合体等が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性が高く、吸湿性が低いという利点を有する。
【0036】
アモルファスのポリオレフィン樹脂としては、日本合成ゴム社製の商品名「アートン」、三井化学社製の商品名「アペル」、日本ゼオン社製の商品名「ZEONEX」等のような市販品を用いることができる。アモルファスのポリオレフィン樹脂は耐熱性に優れているという利点を有する。
【0037】
鞘12を構成する材料として、樹脂(以下、「鞘樹脂」という場合がある。)を用いることができる。鞘樹脂は、特に限定されないが、芯樹脂の屈折率よりも0.005〜0.25低い屈折率を有する樹脂が好ましく、0.005〜0.04低い屈折率を有する樹脂がより好ましい。芯樹脂と鞘樹脂の屈折率を調節することにより、開口数を調節することができる。ここでいう屈折率とは、アッベ屈折計を用いて23℃の恒温室内で、ナトリウムD線を光源として測定したときの値である。
【0038】
鞘樹脂の種類は、特に限定されないが、メタクリレート系樹脂、アクリレート系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、下記式(d)で表されるラクトン化合物等が好ましい。
【化3】

(式中、R4及びR5は、各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R4及びR5の炭素数の合計が1〜3である。)
【0039】
メタクリレート系樹脂としては、例えば、フッ化メタクリレート(トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、オクタフルオロプロペンチルメタクリレート等)、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリレート系モノマーの単独重合体; メタクリレート系モノマー50質量%以上と、メチルメタクリレートと共重合可能な他の成分1種類以上との共重合体が挙げられる。メタクリレート系樹脂は、透明性が高く、光の伝送損失が小さいという利点を有する。
【0040】
アクリレート系樹脂としては、フッ化アクリレート(トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート等)、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリレート系モノマーの単独共重合体;アクリレート系モノマー50質量%以上と、アクリレート系モノマーと共重合可能な他の成分1種類以上との共重合体が挙げられる。
【0041】
また、上記したメタクリレート系モノマーと上記したアクリレート系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0042】
上記式(d)で表されるラクトン化合物としてはα−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、R4及びR5のいずれか一方が水素原子を表し、他方がメチル基を表す、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンは、少量の添加でガラス転移温度を大きく上昇させることができ、フルオロアルキル(メタ)アクリレートとの共重合性、及び得られる共重合体の透明性が高いという点から好ましい。
【0043】
上記ラクトン化合物との共重合に好ましいフルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、メタクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル(17FMA)、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(3FMA)、(メタ)アクリル酸2、2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(5FMA)、メタクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル(17FMA)、α−フルオロアクリル酸2、2、2−トリフルオロエチル(α3FA)、α−フルオロアクリル酸2、2、3、3、3−ペンタフルオロプロピル(α5FA)、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(4FMA)、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(8FMA)、α−フルオロアクリル酸メチル(αFMe)等が挙げられる。特にメタクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル(17FMA)との共重合体が、透明性と機械的強度の観点から好ましい。
【0044】
フッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂;フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な他の成分(テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、ヘキサフロロアセトン等)1種以上との共重合体が挙げられる。
【0045】
鞘樹脂は、上記した樹脂1種単独で用いてもよいし、2種以上のブレンド物でもよい。さらに、所望に応じ、上記した樹脂100質量部に対して5質量部以下の範囲で、メタクリル酸、o−メチルフェニルマレイミド、マレイミド、無水マレイン酸、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸六員環化物などの成分を導入して変性させることもできる。このような変性(共)重合体の具体例としては、例えば、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、テトラフルオロプロピルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、トリフルオロエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ペンタフルオロプロピルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートとテトラフルオロプロピルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートとトリフルオロエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートとトリフルオロエチルメタクリレートとテトラフルオロプロピルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0046】
各モノマーの組成は、鞘樹脂の屈折率が芯材の屈折率等を考慮して適宜選択することができる。耐熱性、透明性、機械的特性などのバランスから考えて、フッ化ビニリデン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0047】
また、芯樹脂のメルトインデックス(MI)は0.5〜10g/10分の範囲が好ましい。ここでいう、メルトインデックスは、ASTM−D1238に従い、試験温度230℃、荷重3.8kg、ダイスの内径2.0955mmの条件で測定したものである。メルトインデックスを上記範囲とすることにより、上記鞘樹脂との複合紡糸が容易となる。
【0048】
また、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1を構成する各芯11の材料(芯樹脂)は、同一であることが好ましい。同じ芯樹脂を用いて芯11をそれぞれ構成することにより、伝送損失のばらつきを抑えることができる。その結果、芯ごとの明るさの違いが少ない出力画像を得ることができ、出力画像を直接目視で観測したときの違和感が少なくなる。
【0049】
また、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線1の外周に被覆層を設けて多芯プラスチック光ファイバケーブルとすることができる。被覆層の材料は、特に限定されないが、好ましい具体例としては、ビニリデンフロライド系樹脂、及びポリアミド樹脂が挙げられる。ビニリデンフロライド系樹脂は、ビニリデンフロライド構造単位を含有する透明、又は不透明な樹脂であり、具体的には、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンとクロロトリフロロエチレンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、ナイロン12、ナイロン11が適している。なお、被覆層に用いる材料には、必要に応じてワックスなどの添加物を微量添加してもよい。なお、被覆層の厚みは50μm〜300μmが好ましい。
【0050】
<多芯プラスチック光ファイバ裸線の製造方法について>
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線の製造方法は、
前記芯となる溶融状態の芯樹脂を、前記鞘層となる溶融状態の鞘樹脂で被覆して、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本得る工程と、
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本束ねて溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を作製する工程と、
前記溶融状態の光ファイバ裸線束を延伸しながら漸次細化させる工程と、
前記漸次細化させた溶融状態の光ファイバ裸線束を硬化させることにより、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線を得る工程と、
を有し、かつ、
下記式(4)の関係を満たすように制御することで、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記中心領域と前記外周領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい、多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法である。

B/Nb>A/Na ・・・(4)

(式中、
Aは、前記中心領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Naは、前記中心領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数であり、
Bは、前記外周領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Nbは、前記外周領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数である。)
【0051】
本実施形態の製造方法は、上記条件を満たすものであればよく、例えば、複合紡糸ダイを用いた紡糸法が挙げられる。
【0052】
以下、本実施形態の製造方法について、複合紡糸ダイを用いた方法を一例としてより具体的に説明する。図4は本実施形態の製造方法において用いる複合紡糸ダイの一例を示す概略縦断面図である。本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法としては、例えば、溶融状態の芯樹脂と溶融状態の鞘樹脂を複合紡糸ダイ(以下、単に「ダイ」という場合がある。)に供給し、溶融状態の芯樹脂を多芯プラスチック光ファイバの画素数に対応する数の孔が設けられた分配板に流入させ、そこから溶融状態の芯樹脂を押し出し、溶融状態の芯を用意する。続いて、溶融状態の芯の周りに溶融状態の鞘樹脂を満遍なく供給することにより、コアとなる溶融状態の芯(芯樹脂)の周りを溶融状態の鞘樹脂で直接被覆した、溶融状態の単芯プラスチック光ファイバ裸線を複数本(分配板に設けられた孔の数)作製する。その後、ダイの吐出口付近において溶融状態の単芯のプラスチック光ファイバ裸線を一体化して、溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束とした後に、これを引き落とし、ファイバ状に延伸し、硬化させる方法が好ましい。以下、工程順に説明する。
【0053】
まず、本実施形態の製造方法では、芯となる溶融状態の芯樹脂を、鞘層となる溶融状態の鞘樹脂で被覆して、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本得る工程と、前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本束ねて、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を作製する工程と、を行い、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を得る。これらの工程は、例えば、上記したダイ2を用いて、溶融状態の芯樹脂と鞘樹脂を押し出すことにより行うことができる。以下、ダイ2についてより詳細に説明する。なお、ここでは、断面形状が略円形である多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する場合を一例として説明する。
【0054】
ダイ2は、上部分配板21と、上部分配板21の垂直下部に配置される下部分配板22と、下部分配板22の垂直下部に配置される集合口金23と、管24と、から構成される。
【0055】
上部分配板21は、それぞれの芯を構成するように溶融状態の芯樹脂を分配供給するための芯樹脂分配室211を有する。芯樹脂分配室211の底面には、管24を導入する第1貫通孔H1が複数設けられている。
【0056】
下部分配板22は、溶融押出しされた芯樹脂(溶融状態の芯)をそれぞれ被覆するように溶融状態の鞘樹脂を分配供給するための鞘樹脂分配室221を有する。鞘樹脂分配室221の底面には溶融した鞘樹脂の流路となる略円形状の第2貫通孔H2が複数設けられている。
【0057】
集合口金23には、上部分配板21から圧送された溶融状態の芯樹脂と、下部分配板22から圧送された溶融状態の鞘樹脂とが合流する倒立円錐台形状の空隙部H3が設けられており、集合口金23の底面には溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線を外部に吐出する吐出孔H4が設けられている。
【0058】
管24は、上部分配板21の第1貫通孔H1と、下部分配板22の第2貫通孔H2の両方に挿通することで、上部分配板21と下部分配板22の両方に嵌挿されている。
【0059】
集合口金23の吐出孔H4の傾斜角α(「ダイ角度」と呼ばれることもある。)は、15〜35度が好ましい(図4参照)。傾斜角αを15〜35度とすることにより、分配板2の底面から吐出された芯樹脂(島成分樹脂)及びその周囲を覆う鞘樹脂(海成分樹脂)を集合口金23にスムーズに集合させることができる。
【0060】
吐出孔29の孔径(直径)は、多芯プラスチック光ファイバ裸線の直径の1.50〜15.5倍であることが好ましい。吐出孔29の孔径の大きさを上記値にすることにより、充分な延伸が可能となり、多芯プラスチック光ファイバ裸線の折損を抑えることができると共に、適切な引落率となるため、画素欠陥が少なくなる。
【0061】
芯樹脂分配室211に供給された芯樹脂は、管24を通り、下部分配板223の底面から吐出される。鞘樹脂分配室221に供給された鞘樹脂は、第2貫通孔H2を通り、下部分配板22の底面から吐出される。これにより、溶融状態の芯樹脂により形成された溶融状態の芯1本の周囲を、溶融状態の鞘樹脂が夫々被覆された、溶融状態の単芯プラスチック光ファイバ裸線が吐出される。そして、これらの溶融状態の単芯プラスチック光ファイバ裸線は、集合口金23において束ねられ、溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束となる。
【0062】
芯樹脂及び鞘樹脂の流量を正確に制御する観点から、流量制御にはギアポンプ(図示せず)を使用することが好ましい。
【0063】
多芯プラスチック光ファイバ裸線の芯の配置は、第1貫通孔H1及び管24の配置を変更することで適宜調節することができる。例えば、画素密度が高い多芯プラスチック光ファイバとするためには、第1貫通孔H1及び管24を俵積み状に配置することが好ましい。
【0064】
本実施形態において、多芯プラスチック光ファイバの画素数は多芯プラスチック光ファイバ裸線の芯の数に対応するものであり、ダイ2の第1貫通孔H1、及び管24の数に対応する。芯の面積及び形状は、対応する管24の内径の大きさ及び形状に対応する。また、各芯の配置は、第1貫通孔H1の及び管24の配置に対応する。上述した鞘厚は、第2貫通孔H2を通る溶融状態の鞘樹脂の流量に対応する。
【0065】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ裸線は、その軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における、前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きく構成されており、下記式(4)の関係を満たすように制御することで、かかる構成とすることができる。

B/Nb>A/Na ・・・(4)

(式中、
Aは、前記中心領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Naは、前記中心領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数であり、
Bは、前記外周領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Nbは、前記外周領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数である。)
【0066】
具体的には、多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周領域の鞘層を構成する鞘樹脂の体積量を、多芯プラスチック光ファイバ裸線の中心領域の鞘層を構成する鞘樹脂の体積量よりも大きくする方法が挙げられる。外周領域の鞘樹脂の体積量を中心領域の鞘樹脂の体積量よりも大きくする方法としては、例えば、複合紡糸ダイ外縁の温度を中心点より高く設定する方法が挙げられる。
【0067】
下部分配板22外縁の温度を中心点より高く設定する方法としては、具体的には、分配板の外周部表面に電熱線を配置して、外縁の温度を中心点より高く設定する方法が考えられる。この場合、制御容易の観点から、多芯プラスチック光ファイバ裸線中の各芯の大きさはなるべく均一であることが望ましいため、各管24の大きさは、分配板の中心部、外周部で一定にした上で、外周部における鞘材の流量を中心部における鞘材の流量よりも多くする方法を採用することが好ましい。複合紡糸ダイ中心点の温度と複合紡糸ダイ外縁の温度は、所望の芯の密度、鞘層の厚み、そして使用する鞘材の種類によって適宜変更すればよい。
【0068】
例えば、分配板の外周部表面に電熱線を配置して、外周部の温度を中心部より高く設定する方法の場合の好適な一例について説明する。まず、管24は、断面が内径0.20mm〜1.00mmの円形で、(第2貫通孔H2の断面積−管24の外径の断面積)をE1、(管24の内径の断面積)をE2としたときの、E1/E2の値が0.1〜5.0倍、第2貫通孔H2の間隔が等間隔でかつ俵積み状に配置された分配板2を使用する。さらに、上部分配板21と下部分配板22とから構成される分配板は、直径15cm〜30cm、厚み0.3cm〜4cmの円盤状の分配板であることが好ましい。
【0069】
さらに、分配板の外周部だけではなく、必要に応じて、分配板の中心部や、分配板の中央部と外周部の間(中間部)に電熱線を更に配置してもよい。これにより、より高精度の温度制御が可能となる。
【0070】
さらに、鞘材にビニリデンフロライド系樹脂を主成分とする鞘材を使用した場合、分配板の外縁の温度は230℃〜250℃程度が好ましく、分配板の中心点の温度は外縁の温度よりも2℃〜20℃程度低く設定することが好ましい。より好ましくは3℃〜15℃低く設定することが好ましい。なお、複合紡糸ダイの中心点と外縁との中間地点(中間点)の温度は、複合紡糸ダイの中心点と外縁の温度の平均であることが好ましい。
【0071】
鞘材にフッ化アクリレート系透明樹脂を主成分とする鞘材を使用した場合、複合紡糸ダイ外縁の温度は220℃〜250℃程度が好ましく、複合紡糸ダイ中心点の温度は外縁の温度よりも2℃〜20℃低く設定することが好ましい。より好ましくは3℃〜15℃低く設定することが好ましい。尚、複合紡糸ダイの中間点の温度は、複合紡糸ダイの中心点と外縁の温度の平均であることが好ましい。
【0072】
鞘材にエチレンーテトラフロロエチレン系透明樹脂を主成分とする鞘材を使用した場合、複合紡糸ダイ外縁の温度は220℃〜260℃程度が好ましく、複合紡糸ダイ中心点の温度は外縁の温度よりも2℃〜20℃低く設定することが好ましい。より好ましくは3℃〜15℃低く設定することが好ましい。尚、複合紡糸ダイの中間点の温度は、複合紡糸ダイの中心点と外縁の温度の平均であることが好ましい。
【0073】
多芯プラスチック光ファイバ中の各芯の大きさを略同一にするという観点からに、前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を構成する前記複数本の溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線それぞれの芯樹脂の体積量を略同一とすることが好ましい。さらに、多芯プラスチック光ファイバの構成の制御を容易にするという観点から、各管24の内径及び外径が全て略同一であることや、管24とそれに対応する第2貫通孔H2の外径の比率が、各管24において全て略同一であることが好ましい。
【0074】
より具体的には、前記溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束を構成する前記溶融状態の単芯プラスチック光ファイバ裸線の数M、前記各溶融状態の単芯プラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の体積量Sm(式中、mは1〜Mまでの整数)、下記式(5)で表される前記各溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の平均体積量Sbが、下記式(6)の関係を満たすことが好ましく、下記式(8)の関係を満たすことがより好ましく、下記式(9)の関係を満たすことが更に好ましく、下記式(10)の関係を満たすことがより更に好ましい。下記関係式を満たすように制御することにより、多芯プラスチック光ファイバ裸線の各芯の大きさを略同一にすることが可能となり、解像度のばらつきが少ない、直接の目視観察に適した多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造することができる。
【数6】

【0075】
上述のように、ダイ2から押し出された(紡出された)溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束を延伸しながら漸次細化させる。延伸倍率は、特に限定されないが、好ましくは1.1〜10倍である。延伸工程は、複数回としてもよい。
【0076】
続いて、漸次細化された溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を硬化させることにより、多芯プラスチック光ファイバ裸線を得る工程を行う。硬化方法に限定は無いが、通常は冷却によって行われる。また、多芯プラスチック光ファイバ裸線を作製した後、その外周に被覆層を設ける工程を行って多芯プラスチック光ファイバケーブルとしてもよい。
【0077】
<医療用内視鏡>
医療用内視鏡は一般に、軟性内視鏡は可とう性を有する管と、その中に挿入される多芯プラスチック光ファイバ裸線と、から構成されており、必要に応じて多芯プラスチック光ファイバ裸線の先端に対物レンズや接眼レンズ等を設けたり、照明用のライトガイドを含む構成をとり得る。
【実施例】
【0078】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0079】
<視覚による画像のぼやけ確認試験(画像確認試験)>
図5は、実施例における画像確認試験を説明するための概念図である。図5に示すように、5cm角のガラス基板上に2mm角の「A」の文字が描かれたターゲットを用意し、LEDライトパネル(ルミテクノ社製、「A4G−L1316−SFR23」)上に載置した。次に、多芯プラスチック光ファイバ裸線を1mとり、先端を前記ターゲットに密着させ、多芯プラスチック光ファイバ裸線の中間点(端面から50cmの部分)の曲率半径が3mmとなるように配置し、もう一方の先端から出力される出力画像をマイクロスコープ(東海産業社製、「ピーク・スタンド・マイクロスコープ75X」)で75倍に拡大し、目視観察を行った(図5参照)。観察された画像について、多芯プラスチック光ファイバ裸線断面内で、画像のぼやけを感じない場合を「○」、画像のぼやけを感じる場合を「×」として評価を行った。
【0080】
<全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積の測定方法>
多芯プラスチック光ファイバ裸線の端面をLEDライトパネル(ルミテクノ社製、「A4G−L1316−SFR23」)に密着させ、もう一方の端面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、「VH−5500」)で200倍に拡大し、撮像した。デジタルマイクロスコープの対物レンズにはキーエンス社製、「VH−Z100」を用いた。次に、撮像した多芯プラスチック光ファイバ裸線の端面画像をコンピューターに取り込み、画像解析ソフト(アドビ社製、「photoshop」)を用いて、芯が白、その他の部分が黒となるように二値化した。続いて、二値化した画像上に白表示部分(芯部分)を全て含む最小の円(第1の円)を描画し、第1の円の略同心上に第1の円の半分の面積である円(第2の円)を描画し、この第2の円をプラスチック光ファイバ裸線の中心領域、第1の円から第2の円を除いた領域を外周領域とした。
【0081】
次に、外周領域の面積から外周領域に含まれる白表示部分の面積を引くことで外周領域に占める鞘の総面積を算出した。同様に、中心領域の面積から中心領域に含まれる白表示部分の面積を引くことで中心領域に占める鞘の総面積を算出した。そして、二値化した画像から中心領域に含まれる芯の本数と外周領域に含まれる芯の芯数を測定し、以下の計算式により全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積を算出した。

中心領域の平均鞘層面積=中心領域に占める鞘の総面積/中心領域に含まれる芯の本数

外周領域の平均鞘層面積=外周領域に占める鞘の総面積/外周領域に含まれる芯の本数

全体の平均鞘層面積=(中心領域に占める鞘の総面積+外周領域に占める鞘の総面積)/(中心領域に含まれる芯の本数+外周領域に含まれる芯の本数)
【0082】
<各芯の半径の測定>
上記<全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積の測定方法>で用いた二値化した画像を用いて、各芯の半径を測定した。芯(白表示部分)が円以外の形状の場合は、芯(白表示部分)の形状を含む最小の円の半径を芯の半径とした。
【0083】
(実施例1)
芯を構成する樹脂(芯樹脂)としてポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)、鞘層を構成する樹脂(鞘樹脂)としてビニリデンフロライド72質量%とテトラフルオロエチレン28質量%の共重合体(屈折率1.40)を、図4の複合紡糸ダイの芯樹脂分配室と鞘樹脂分配室に入れた。なお、屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ社製、「アッベ屈折計1型」)を用いて23℃の恒温室内で、ナトリウムD線を光源として測定した。
【0084】
複合紡糸ダイの下部分配板としては、等間隔かつ俵積み状に貫通孔が13003個設けられている分配板を使用した。管24は内径0.6mm、外径1.0mmの円形断面である。第2通孔H2と管24の内径との直径比は2.2で、下部分配板は円盤形状であり、その直径は22cm、厚みは1cmであった。
【0085】
次に、下部分配板の中心部表面と外周部表面に埋め込まれている電熱線に電流を流し、下部分配板の中心点の温度が232℃になるまで加熱した。このとき、分配板の中心点と外縁の中間点の温度は236℃であり、分配板の外縁の温度は240℃であった。
【0086】
続いて、複合紡糸ダイを使用して多芯プラスチック光ファイバ裸線を紡糸した。得られた多芯プラスチック光ファイバの端断面は、外周領域の直径が1000μm、コア比((中心領域の面積+外周領域の面積)中に占める芯の総面積の割合)が0.7、全体の平均鞘層面積が18.1μm2、中心領域の平均鞘層面積が13.7μm2、外周領域の平均鞘層面積が23.3μm2であった。また、外周領域中の芯の本数は5988本、中心領域中の芯の本数は7015本、各芯の半径は3.49μm〜3.85μmであった。多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における前記芯の平均断面積をSa、多芯プラスチック光ファイバの端面における前記各芯の面積をSn(ここで、nは1〜13003までの整数)としたとき、全ての芯で0.95<Sn/Sa<1.05を満たしていた。作製した多芯プラスチック光ファイバ裸線を用いて、画像確認試験を行ったところ、画像のぼやけを感じなかった。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
下部分配板の中心部の温度、下部分配板の中心点と外縁の中間点の温度、下部分配板の外縁の温度を表1に記載の条件とし、延伸条件を出来上がった多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周領域の直径が1.0mmとなるように調節した以外、実施例1と同様の条件で多芯プラスチック光ファイバを作製した。コア比、全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積、外周領域中の芯の本数、中心領域中の芯の本数、各芯の半径は表1のようになった。また、全ての実施例で、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における前記芯の平均断面積をSa、前記多芯プラスチック光ファイバの端面における前記各芯の面積をSn(ここで、nは1〜13003までの整数)としたとき、全ての芯で0.95<Sn/Sa<1.05を満たしていた。作製した多芯プラスチック光ファイバ裸線を用いて画像確認試験を行ったところ、画像のぼやけを感じなかった。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
下部分配板の中心部、中間点、外縁の温度を233℃で均一とし、延伸条件を出来上がった多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周領域の直径が1.0mmとなるように調節した以外、実施例1と同様の条件で多芯プラスチック光ファイバ裸線を作製した。コア比、全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積、外周領域中の芯の本数、中心領域中の芯の本数、各芯の半径は表1のようになった。また、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における前記芯の平均断面積をSa、前記多芯プラスチック光ファイバの端面における前記各芯の面積をSn(ここで、nは1〜13003までの整数)としたとき、全ての芯で0.95<Sn/Sa<1.05を満たしていた。作製した多芯プラスチック光ファイバ裸線で画像確認試験を行ったところ、外周領域で画像のぼやけを感じた。結果を表1に示す。
【0089】
(参考例1)
下部分配板の中心部、中間点、外縁の温度を238℃で均一とし、延伸条件を出来上がった多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周領域の直径が1.0mmとなるように調節した以外、比較例1と同様の条件で多芯プラスチック光ファイバ裸線を作製した。コア比、全体の平均鞘層面積、中心領域の平均鞘層面積、外周領域の平均鞘層面積、外周領域中の芯の本数、中心領域中の芯の本数、各芯の半径は表1のようになった。また、多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面における前記芯の平均断面積をSa、前記多芯プラスチック光ファイバの端面における前記各芯の面積をSn(ここで、nは1〜13003までの整数)としたとき、全ての芯で0.95<Sn/Sa<1.05を満たしていた。作製した多芯プラスチック光ファイバ裸線を用いて、画像確認試験を行ったところ、画像のぼやけは感じなかったが、コア比が小さいため実施例1及び実施例2に比べ暗い画像となった。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1からも明らかなように、実施例1、2の多芯プラスチック光ファイバ裸線は、曲げ時の漏光を抑制することができ、画像のぼやけがない多芯プラスチック光ファイバ裸線であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る多芯プラスチック光ファイバ裸線は、医療用内視鏡をはじめとする画像伝送用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1…多芯プラスチック光ファイバ裸線、11、11a、11b…芯、12、12a、12b…鞘層、2…複合紡糸ダイ、21…上部分配板、22…下部分配板、23…集合口金、24…管、211…芯樹脂分配室、221…鞘樹脂分配室、H1…第1貫通孔、H2…第2貫通孔、H3…空間部、H4…吐出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の芯と、前記複数の芯の外周に被覆形成された鞘層と、を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線であって、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線は、その軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、
前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記中心領域と前記外周領域の合計領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、
前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい、多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項2】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の前記端断面において、前記芯の各々の断面積が略等しい、請求項1に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項3】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(1)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数1】

【請求項4】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(2)の関係を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数2】

【請求項5】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線に含まれる前記芯の数N、前記端断面における前記芯の平均断面積Sa、前記端断面における各芯の断面積Snが、下記式(3)の関係を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【数3】

【請求項6】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記芯の断面形状が略円形状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項7】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面において、前記芯の断面形状が、略正六角形状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項8】
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の直径が、200μm〜1500μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項9】
前記端断面において、前記芯が俵積み状に配置されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項10】
前記芯の数が、5000芯以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項11】
前記芯の数が、14000芯以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線の外周に被覆層を設けてなる多芯プラスチック光ファイバケーブル。
【請求項13】
複数の芯と、前記複数の芯の外周に被覆形成された鞘層と、を有する多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法であって、
前記芯となる溶融状態の芯樹脂を、前記鞘層となる溶融状態の鞘樹脂で被覆して、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本得る工程と、
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線を複数本束ねて溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を作製する工程と、
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を延伸しながら漸次細化させる工程と、
前記漸次細化させた溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線束を硬化させることにより、前記多芯プラスチック光ファイバ裸線を得る工程と、
を有し、かつ、
下記式(4)の関係を満たすように制御することで、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の軸方向に対して直交する方向に断面視した端断面において、中心領域と、前記中心領域の外側に形成された外周領域と、を少なくとも有し、前記外周領域は、前記中心領域と略同心に配置されており、
前記多芯プラスチック光ファイバ裸線の端断面にいて、前記中心領域と前記外周領域の合計領域における前記芯1本当たりが占める鞘層面積が22μm2以下であり、前記外周領域における前記外周領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積が、前記中心領域における前記中心領域に存在する前記芯1本当たりが占める鞘層面積よりも大きい、多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。

B/Nb>A/Na ・・・(4)

(式中、
Aは、前記中心領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Naは、前記中心領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数であり、
Bは、前記外周領域を構成する、鞘樹脂の体積の総和であり、
Nbは、前記外周領域を構成する、溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の本数である。)
【請求項14】
前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の体積量が、それぞれ略同一である、請求項13に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。
【請求項15】
前記溶融状態の多芯プラスチック光ファイバ裸線束を構成する前記溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の数M、前記各溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の体積量Sm(ここで、mは1〜Mまでの整数)、下記式(5)で表される前記各溶融状態のプラスチック光ファイバ裸線の芯樹脂の平均体積量Sbが、下記式(6)の関係を満たす、請求項13又は14に記載の多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造する方法。
【数4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54241(P2013−54241A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193056(P2011−193056)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】