説明

多芯式熱変色性筆記具

【課題】摩擦体と蓋部との強固な取り付けが得られるとともに、軸筒の後端開口部を閉鎖した際、蓋部と軸筒との確実な係合状態が得られる多芯式熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】
軸筒2の後端部の開口部23を開閉自在とする蓋部7を設け、蓋部7の外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な弾性材料からなる摩擦体8を設ける。摩擦体8が摩擦部81と筒状取付部82とからなる。軸筒2の後端部に、後方に突出する凸状係合部26を設ける。蓋部7に取付孔71を軸方向に貫設する。取付孔71の内面と摩擦体8の筒状取付部82の外面とを係合させるとともに、摩擦部81を蓋部7の外面より外部に突出させ、蓋部7による前記開口部23の開閉に伴い、凸状係合部26の外面と筒状取付部82の内面とを係脱自在に係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯式熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来、この種の多芯式熱変色性筆記具において、特許文献1には、軸筒の後端開口部に開閉自在の蓋部を設け、前記蓋部の外面に弾性材料からなる摩擦部を設けた多芯式熱変色性筆記具が開示されている。具体的には、特許文献1には、摩擦体を蓋部に取り付けるタイプ、及び蓋部と摩擦体とを一体に形成するタイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−260218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の多芯式熱変色性筆記具における、摩擦体を蓋部に取り付けるタイプの場合、摩擦体と蓋部との取り付けが緩んで、摩擦時、摩擦体がぐらついたり、摩擦体が脱落したりするおそれがある。また、前記特許文献1の多芯式熱変色性筆記具における、蓋部と摩擦体とを一体に形成するタイプの場合、蓋部の係合部と軸筒の被係合部との係合が緩んで、摩擦時、摩擦体がぐらついたり、蓋部の係合部と軸筒の被係合部との係合が解除されたりするおそれがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、摩擦体と蓋部との強固な取り付けが得られるとともに、軸筒の後端開口部を閉鎖した際、蓋部と軸筒との確実な係合状態が得られる多芯式熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「前」とは前端孔側及びペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、軸筒2内に複数の筆記体3を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し且つ前記各々の筆記体3の前端に前記熱変色インキが吐出可能なペン先31を備え、前記各々の筆記体3の後端に操作体4を取り付け、前記各々の操作体4を弾発体6により後方に付勢し、前記軸筒2の側壁に軸方向に延びる複数の窓孔22を径方向に貫設し、前記各々の窓孔22から径方向外方に前記各々の操作体4の操作部41を突出させ、一つの操作部41を窓孔22に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体4が取り付けられた筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体3のペン先31を軸筒2内に没入させ、前記軸筒2の後端に、前記各々の窓孔22を後方に開口させる開閉自在の開口部23を設け、前記開口部23を介して筆記体3及び操作体4を連結状態で軸筒2内から取り外し可能且つ軸筒2内に挿入可能に構成し、前記軸筒2の後端部に、前記開口部23を開閉自在とする蓋部7を設け、前記蓋部7の外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な、弾性材料からなる摩擦体8を設けた多芯式熱変色性筆記具であって、
前記摩擦体8が摩擦部81と筒状取付部82とからなり、前記軸筒2の後端部に、後方に突出する凸状係合部26を設け、前記蓋部7に取付孔73を軸方向に貫設し、前記取付孔73の内面と摩擦体8の筒状取付部82の外面とを係合させるとともに前記摩擦部81を蓋部7の後面より後方に突出させ、前記蓋部7による前記開口部23の開閉に伴い、前記凸状係合部26の外面と前記筒状取付部82の内面とを係脱自在に係合させたことを要件とする特徴とする。
【0008】
前記第1の発明の多芯式熱変色性筆記具1は、摩擦時(蓋部7が開口部23を閉鎖した際)、摩擦体8の筒状取付部82の内面と外面が、蓋部7の取付孔73内面と凸状係合部26外面とにより径方向に挟持される。それにより、摩擦体8と蓋部7との強固な取り付けが得られるとともに、軸筒2後端の開口部23を閉鎖した際、蓋部7と軸筒2との確実な係合状態が得られる。その結果、摩擦時(開口部23の閉鎖時)、摩擦体8がぐらついたり、摩擦体8が蓋部7から脱落したり、または蓋部7と軸筒2との係合が緩んで開口部23が開口したりするおそれがない。また、前記第1の発明の多芯式熱変色性筆記具1は、摩擦体8と蓋部7との取付強度を向上させるために摩擦体8の筒状取付部82の軸方向の長さを長くすることが不要となり、筆記具全体の軸方向の長さを長くする必要がない。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の多芯式熱変色性筆記具1において、前記筒状取付部82の内面に内向突起82bを形成し、前記凸状係合部26の外面に外向突起26aを形成し、前記蓋部7による前記開口部23の開閉に伴い、前記内向突起82bと前記外向突起26aとを係脱自在に乗り越え係合させることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明の多芯式熱変色性筆記具1は、筒状取付部82と凸状係合部26とのスムーズな係脱が可能となる。
【0011】
尚、本発明で、前記摩擦体8を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0012】
前記弾性材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗屑が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。
【0013】
尚、本発明で、前記熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
【0014】
本発明では、図7に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型の熱変色性インキが適用されることが好ましい。図7において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0015】
前記実質的二相保持温度域は、目的に応じて設定できるが、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦体8による摩擦熱で容易に変色することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多芯式熱変色性筆記具は、摩擦時、摩擦体と蓋部との強固な取り付けが得られるとともに、蓋部と軸筒との確実な係合状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の多芯式熱変色性筆記具の実施の形態の正面図である。
【図2】図1の拡大平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図3の要部拡大縦断面図である。
【図5】図1の開口部閉鎖状態の要部拡大斜視図である。
【図6】図1の開口部開口状態の要部拡大斜視図である。
【図7】熱変色性インキの変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図6に本発明の実施の形態を示す。
本実施の形態の多芯式熱変色性筆記具1は、軸筒2内に複数本(具体的には4本)の筆記体3が前後方向に移動可能に収容されている。前記各々の筆記体3は、弾発体6(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に付勢されている。
【0019】
(軸筒)
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端に接続される円筒状の後軸2bとからなる。前記前軸2aの後端開口部に前記弾発体支持体5の前端部が固着され、前記後軸2bの前端開口部に前記弾発体支持体5の後端部が固着される。前記弾発体支持体5によって、前記前軸2aの後端と、前記後軸2bの前端とが接続される。
【0020】
前記前軸2aの前端軸心には、各々の筆記体3のペン先31が突出可能な前端孔21が前後方向に貫設される。前記前軸2a及び後軸2bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得られる。
【0021】
前記後軸2bの後部の側壁には、複数本(具体的には4本)の前後方向に延びる細長状の窓孔22が、径方向に貫設される。前記4本の窓孔22は、互いに、円周方向に90度回転した位置に等間隔に形成される。前記窓孔22と窓孔22の間の後軸2b一つの側壁には、クリップ27が設けられる。
【0022】
前記後軸2bの各々の窓孔22相互間の側壁内面には、前後方向に延びるリブからなる係止壁部(図示せず)が一体に形成される。前記係止壁部に、ペン先突出状態の筆記体3の後端に取り付けられた操作体4の後端が係止される。
【0023】
(開口部)
図6に示すように、前記各々の窓孔22の後端は、軸筒2後端より後方に切り欠き状に開口する開口部23が形成される。
【0024】
(脚部)
前記窓孔22及び前記開口部23によって軸筒2の後端部側壁に前後方向に延びる複数本の脚部24が形成される。
【0025】
(連結部)
前記脚部24の後端には、前記開口部23が開口された状態において前記各々の脚部24の後端が互いに連結される連結部25が一体に形成される。前記連結部25は、前記軸筒2の後端の軸心に位置する軸心部25aと、前記軸心部25aから径方向外方に放射状に延び且つ前記各々の脚部24の後端に接続される複数の枝部25bとからなる。前記軸筒2(後軸2b)の後端の連結部25の軸心部25aには、摩擦体8の筒状取付部82と係合可能な凸状係合部26が後方に突設される。凸状係合部26の外面には外向突起26aが形成される。
【0026】
(蓋部)
前記クリップ27を備えた脚部24の後端(具体的にはクリップ27の基部)には、前記開口部23を開閉自在にする蓋部7が、ヒンジ部74により回動自在に取り付けられる。前記蓋部7は、頂壁71と、該頂壁71より前方に延設する筒状の周壁72とからなる。前記蓋部7の前面(周壁72の前端)には、ペン先没入時、筆記体3の後端に取り付けられた各々の操作体4の後端が当接可能な当接壁部となる。
【0027】
前記蓋部7の前面の中心部には、取付孔73が軸方向に貫設される。前記取付孔73には、摩擦体8が取り付けられる。
【0028】
(摩擦体)
前記摩擦体8は、摩擦部81と筒状取付部82とからなる。前記摩擦体8は、弾性材料により一体に形成される。
【0029】
前記筒状取付部82の外面には環状溝82aが形成される。前記蓋部7の取付孔73に前記筒状取付部82が挿入され、前記環状溝82aに、蓋部7の取付孔73内壁(取付孔73の内側から頂壁71)が軸方向に挟持される。それにより、前記取付孔73の内面と摩擦体8の筒状取付部82の外面とが係合される。このとき、前記摩擦部81が蓋部7の頂壁71後面より後方に突出され、且つ、前記筒状取付部82が蓋部7の頂壁71前面より前方に突出される。尚、前記摩擦部81の頂部は凸曲面となっている。
【0030】
前記摩擦体8の筒状取付部82の内面には、内向突起82bが一体に形成される。前記内向突起82bが、前記凸状係合部26の外向突起26aと係脱自在に乗り越え係合する。即ち、前記蓋部7が開口部23を閉鎖した際、前記摩擦部81の筒状取付部82の内面と、前記凸状係合部26の外面とが係合し、前記蓋部7が開口部23の閉鎖を解除した際、前記摩擦部81の筒状取付部82の内面と、前記凸状係合部26の外面との係合が解除される。
【0031】
前記内向突起82bは、筒状取付部82の外面の環状溝82aよりも僅かに前方に配置される。それにより、内向突起82bと外向突起26aとが乗り越え係合する際、筒状取付部82の径方向外方への弾性変形を容易にし、内向突起82bと外向突起26aとの乗り越え係合の係脱をスムーズにする。
【0032】
前記筒状取付部82内面と前記凸状係合部26外面とは、蓋部7が開口部23を閉鎖した際、互いに係合状態にあり、弾発体6の後方への付勢による操作体4と蓋部7前面の当接壁部との当接では、その係合状態は解除されず、蓋部7が開くことはない。
【0033】
摩擦体8の筒状取付部82の前端に、ペン先没入状態の筆記体3における操作体4の後端が当接する構成にしてもよい。その場合、筆記体3がペン先突出状態からペン先没入状態に移行した際の衝撃を緩和することができる。
【0034】
(弾発体支持体)
軸筒2の内壁(即ち前軸2aの後端開口部内壁及び後軸2bの前端開口部内壁)には、円筒状の弾発体支持体5が固着される。前記弾発体支持体5は、筆記体3が挿通される複数(具体的には4個)の内孔が軸方向に貫設されている。前記弾発体支持体5の後面と、各々の操作体4の鍔部45の前面との間には、弾発体6が配置される。前記各々の弾発体6の内部に筆記体3が遊挿される。前記各々の弾発体6の前端は弾発体支持体5の後面により係止され、前記各々の弾発体6の後端は操作体4の鍔部45の前面に係止される。前記弾発体支持体5は、合成樹脂の射出成形から得られる。
【0035】
(弾発体)
前記各々の弾発体6は、各々の操作体4(即ち各々の筆記体3)を、常時、後方に付勢している。前記各々の弾発体6は、ペン先突出状態及びペン先没入状態のいずれにおいても圧縮状態(即ち筆記体3が後方に付勢された状態)にあり、それにより、各々の操作体4の前後のがたつきが防止される。
【0036】
(筆記体)
前記各々の筆記体3は、ボールペンレフィルであり、前端にボールが回転可能に抱持されたボールペンチップ(即ちペン先31)と、該ボールペンチップを前端に備え且つ後端が開口されたインキ収容管33とからなる。前記インキ収容管33の内部には、熱変色性インキが収容される。前記熱変色性インキが、剪断減粘性を有する水性ゲルインキ、低粘度の水性インキ、または低粘度の油性インキの場合、インキ収容管33内のインキの後端には、インキの消費に伴い前進する高粘度流体からなる追従体が充填される。
【0037】
また、前記ボールペンチップは、前端に回転可能に抱持されたボールを弾発体等により前方に付勢し、前端縁部の内面にボールを密接させる構成でもよい。また、ボールペンチップは、インキ収容管33の前端開口部に圧入等により直接、取り付けてもよいが、本実施の形態ではペン先ホルダー32を介してインキ収容管33の前端開口部に固着される。
【0038】
(操作体)
前記各々の筆記体3の後端(即ちインキ収容管33の後端開口部)には、操作体4が取り付けられる。前記各々の操作体4は、後端部に形成され且つ軸筒2の窓孔22から外部に突出する操作部41と、該操作部41の径方向反対側の後端に設けられる第1の解除突起42と、該操作部41の径方向反対側の第1の解除突起42の前方に設けられる第2の解除突起43と、前端部に形成され且つインキ収容管33の後端開口部に嵌入される嵌入部44と、該嵌入部44の後方に形成される鍔部45とを備える。また、前記鍔部45の前面には、弾発体6の後端が係止される。また、前記操作体4の両方の側面には係止突起が形成される。前記係止突起は窓孔22の両側壁に係合可能である。前記操作体4は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等)の成形体により得られる。前記一つの操作体4を窓孔22に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体4が取り付けられた筆記体3のペン先31が軸筒2の前端孔21から前方に突出するとともに、先に突出状態にあった他の筆記体3のペン先31が軸筒2内に没入する。
【0039】
本実施の形態では、前記軸筒2の内部の軸心に、後方への移動が規制されるとともに径方向に変位可能な可動部28が配置され、前記可動部28を介して、各々の操作体4の後端と係止壁部との係止状態の解除がなされる。前記可動部28は、軸方向に延びる複数本の突条(図示せず)と、前記隣り合う突条と突条の間に形成される軸方向に延びる複数本の溝(図示せず)とを備える。前記各々の溝に、各々の筆記体3に連結された操作体4の第1の解除突起42及び第2の解除突起43が摺動可能に構成される。
【0040】
前記軸筒2の軸心には、軸方向に延び且つ径方向に撓み変形可能な軸部29が設けられる。前記軸部29の一端が軸筒2の内壁に固定され、前記軸部29の他端が径方向に変位可能に設けられ、前記径方向に変位可能な軸部29端部に、前記可動部28が設けられる。
【0041】
(出没作動)
本実施の形態の筆記体3のペン先31の出没作動について説明する。
一つの筆記体3のペン先31が前端孔21より突出状態にあるとき、前記ペン先突出状態にある筆記体3の後端に連結された操作体4が、前記係止壁部に係止されるとともに、前記ペン先突出状態の筆記体3の後端に連結された操作体4の第1の解除突起42または第2の解除突起43が、前記可動部28を径方向に押圧変位させている。前記ペン先突出状態において、ペン先没入状態にある他の筆記体3の後端に連結された操作体4を前方にスライド操作したとき、前記他の筆記体3の後端に連結された操作体4の第2の解除突起43が、前記可動部28の溝の後端開口縁に摺接することにより前記可動部28が径方向に押圧変位される。そして、前記可動部28が、先にペン先突出状態にある筆記体3の後端に連結された操作体4を径方向外方に押し上げ、前記ペン先突出状態にある筆記体3の後端に連結された操作体4と前記係止壁部との係止状態が解除される。
【0042】
(筆記体及び操作体の交換)
本実施の形態における筆記体3及び操作体4の交換について説明する。(図6参照)
筆記体3を交換する際、蓋部7が軸筒2の後端の開口部23を閉鎖した状態から、蓋部7のヒンジ部74と反対側の操作端部を後方に押圧し、筒状取付部82と凸状係合部26との係合を解除し、蓋部7を後方に回動させ、軸筒2の後端の開口部23を開口する。前記軸筒2の後端の開口部23が開口した状態で、操作体4を取り出すことにより、その操作体4と互いに連結状態にある筆記体3を前記開口部23を介して軸筒2内から取り出し、その後、互いに連結状態にある新たな筆記体3と新たな操作体4とを前記開口部23を介して軸筒2内に挿入する。そして、蓋部7の当接壁部に各々の操作体4を当接させ、各々の操作体4を前方に押圧しながら蓋部7を前方に回動させ、その後、筒状取付部82と凸状係合部26とを係合させ、開口部23を閉鎖する。これにより、筆記体3及び操作体4の交換作業が終了する。
【0043】
本実施の形態の多芯式熱変色性筆記具1は、摩擦時(蓋部7が開口部23を閉鎖した際)、摩擦体8の筒状取付部82の内面と外面が、蓋部7の取付孔73内面と凸状係合部26とにより径方向に挟持される。それにより、摩擦体8と蓋部7との強固な取り付けが得られるとともに、軸筒2後端の開口部23を閉鎖した際、蓋部7と軸筒2との確実な係合状態が得られる。その結果、摩擦時(開口部23の閉鎖時)、摩擦体8がぐらついたり、摩擦体8が蓋部7から脱落したり、あるいは蓋部7と軸筒2との係合が緩んで開口部23が開口したりするおそれがない。また、取付強度を向上させるために、摩擦体8の筒状取付部82の軸方向の長さを大きくする必要がない。
【0044】
本実施の形態の多芯式熱変色性筆記具1は、前記筒状取付部82の内面に内向突起82bを形成し、前記凸状係合部26の外面に外向突起26aを形成し、前記蓋部7による前記開口部23の開閉に伴い、前記内向突起82bと前記外向突起26aとが係脱自在に乗り越え係合することにより、筒状取付部82と凸状係合部26とのスムーズな係脱が可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 多芯式熱変色性筆記具
2 軸筒
2a 前軸
2b 後軸
21 前端孔
22 窓孔
23 開口部
24 脚部
25 連結部
25a 軸心部
25b 枝部
26 凸状係合部
26a 外向突起
27 クリップ
28 可動部
29 軸部
3 筆記体
31 ペン先
32 ペン先ホルダー
33 インキ収容管
4 操作体
41 操作部
42 第1の解除突起
43 第2の解除突起
44 嵌入部
45 鍔部
5 弾発体支持体
6 弾発体
7 蓋部
71 頂壁
72 周壁
73 取付孔
74 ヒンジ部
8 摩擦体
81 摩擦部
82 筒状取付部
82a 環状溝
82b 内向突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体の内部に熱変色性インキを収容し且つ前記各々の筆記体の前端に前記熱変色インキが吐出可能なペン先を備え、前記各々の筆記体の後端に操作体を取り付け、前記各々の操作体を弾発体により後方に付勢し、前記軸筒の側壁に軸方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体の操作部を突出させ、一つの操作部を窓孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体が取り付けられた筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を軸筒内に没入させ、前記軸筒の後端に、前記各々の窓孔を後方に開口させる開閉自在の開口部を設け、前記開口部を介して筆記体及び操作体を連結状態で軸筒内から取り外し可能且つ軸筒内に挿入可能に構成し、前記軸筒の後端部に、前記開口部を開閉自在とする蓋部を設け、前記蓋部の外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な、弾性材料からなる摩擦体を設けた多芯式熱変色性筆記具であって、
前記摩擦体が摩擦部と筒状取付部とからなり、前記軸筒の後端部に、後方に突出する凸状係合部を設け、前記蓋部に取付孔を軸方向に貫設し、前記取付孔の内面と摩擦体の筒状取付部の外面とを係合させるとともに前記摩擦部を蓋部の後面より後方に突出させ、前記蓋部による前記開口部の開閉に伴い、前記凸状係合部の外面と前記筒状取付部の内面とを係脱自在に係合させたことを特徴とする多芯式熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記筒状取付部の内面に内向突起を形成し、前記凸状係合部の外面に外向突起を形成し、前記蓋部による前記開口部の開閉に伴い、前記内向突起と前記外向突起とを係脱自在に乗り越え係合させる請求項1記載の多芯式熱変色性筆記具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−95016(P2013−95016A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238466(P2011−238466)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】