説明

多芯超伝導ストランドを備えた複合導体

【課題】使用中に、複合導体特に磁気コイルの多芯ストランドが損傷した場合にも、損傷箇所の如何にかかわらず、ハンダ接合部を通って隣接するストランドに電流が流れ、連続的な電流の流れを確保することができる複合導体を提供する。
【解決手段】ハンダ接合された多芯超伝導ストランド(1、1’)を備えた複合導体であって、前記ストランドは、その全長にわたり連続的なハンダ接合部(2、2’)によって組み合わされ、前記ハンダ接合が低融点合金からなっていることを特徴とする複合導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯超伝導ストランドを備えた複合導体に関し、特に、巻かれて、超伝導磁気コイルを製造するための多芯超伝導ストランドを備えた複合導体に関する。
【背景技術】
【0002】
多芯超伝導ストランドを、銀マトリックス中でワイヤまたはテープクラッド形状に製造することが知られている。ストランドは、一般に、ビレットから製造される。ビレットは線引き加工され、他のビレットを線引き加工したものと束ねられる。このようにして得られた多芯ストランドは同じステップを繰り返し、このプロセスは単位面積当り所定数の芯線が得られるまで続けられる。線引き加工は、圧延によって行うことができる。
【0003】
上述した多芯ストランドは、巻き取られて超伝導磁気コイルが得られる。
米国特許No.6339047には、複数の超伝導ワイヤからワイヤをハンダ接合してケーブルを製造することが開示されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許No.6339047
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなコイルには次の問題点がある。
ワイヤまたはテープの形状の何れであっても、多芯ストランドは、薄く且つ非常に脆い。従って、ワイヤまたはテープに傷を付けることなく巻き取ることは非常に難しい。例えば、上述のように圧延によって成形されたテープは、厚さに対する幅の比が15から20の水準である。
【0006】
更に、ストランドは小さく、このことはコイルを得るためには多数回の巻き付けが必要であり、従って、相対的に長い多芯ストランドおよび相対的に長い巻取り時間が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の目的は、その相対的に大きな断面によって上述した技術的問題を解決した複合超伝導体を提供することにあり、この超伝導体は巻取りを容易にすることができる強度を有しており、巻き取り回数を少なくして巻取りができ、プロセスを最適化することができる。
【0008】
このために、この発明は、ハンダ接合された多芯超伝導ストランドを備えた複合導体であって、前記ストランドは、その全長にわたり連続的なハンダ接合部によって組み合わされ、前記ハンダ接合が低融点合金からなっていることを特徴とする複合導体を提供する。
【0009】
この発明は、次の重要な利点を有している。即ち、使用中に、複合導体特に磁気コイルの多芯ストランドが例えば破損によって損傷した場合に、損傷箇所の如何にかかわらず、ハンダ接合部を通って隣接するストランドに電流が流れ、連続的な電流の流れを確保する。このような場合には、ストランド間の電流の交換が行われて操作が続行され、コイルの操作点を制限することなく、低い臨界電流を有する多芯ストランドの部分を分流させることができる。
【0010】
電気的な接続は、連続的ハンダ接合部を備えているので、元々ハンダに必要な材料を備えている複合導体にハンダ付けすることによって容易に行うことができる。
【0011】
好ましい態様において、前記ハンダ接合部は、前記組み合わされたストランドを合金浴の中に通すことによって得られる。
前記合金が錫合金である。
前記ストランドが常伝導銀マトリックス中のBi2212芯線からなっている。
第1の態様において、前記ストランドが平らな超伝導テープからなっている。
【0012】
前記ストランドが好ましくは重ね合わされ、そして、平行である。
好ましくは、少なくとも1つの機械的補強板を備えている。
第2の態様において、前記ストランドが円柱状超伝導ワイヤである。
前記超伝導ワイヤは、円柱状支持材の周りに配置されている。
【発明の効果】
【0013】
使用中に、複合導体特に磁気コイルの多芯ストランドが例えば破損によって損傷した場合に、損傷箇所の如何にかかわらず、ハンダ接合部を通って隣接するストランドに電流が流れ、連続的な電流の流れを確保する。このような場合には、ストランド間の電流の交換が行われて操作が続行され、コイルの操作点を制限することなく、低い臨界電流を有する多芯ストランドの部分を分流させることができる。
電気的な接続は、連続的ハンダ接合部を備えているので、元々ハンダに必要な材料を備えている複合導体にハンダ付けすることによって容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明を、この発明の好ましい態様を示す図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、その全長にわたって連続的ハンダ接合部によって組み合わされた平らなテープ状の多芯超伝導ストランド1Aから1Cを備えた複合導体を示す。ハンダ接合部は、低融点合金からなっている。好ましい態様おいては、テープ1は、常伝導銀マトリックス内に配置されたBi2212芯線からなっている。
【0015】
合金は、好ましくは、錫合金である。代わりに、鉛、ビスマスまたはインジウムの合金を使用することができる。
テープ1は、重ね合わされ、平行になるように組み合わされて、合金浴、例えば錫合金浴中に浸漬され、連続的な接合部が形成され、サンドイッチ状の複合体が得られる。
【0016】
上述した合金浴中への浸漬間、機械的な補強板3A、3Bが、複合体の2つの長軸方向の面にハンダ付けされる。板3は金属例えばステンレス鋼または銅合金によって製造されている。
【0017】
図2は、その全長にわたって連続しているハンダ接合部2’によって組み合わされた円柱状の多芯超伝導ストランド1’Aから1’Fを備えた複合導体を示す。ハンダ接合部2’は、低融点合金からなっている。好ましい態様おいては、ワイヤ1’は、常伝導銀マトリックス内に配置されたBi2212芯線からなっている。
【0018】
合金は、好ましくは、錫合金である。代わりに、鉛、ビスマスまたはインジウムの合金を使用することができる。
ワイヤ1’は、円柱状金属、例えば、ステンレス鋼、または銅合金支持材3’の周りに配置されて組み合わされて、合金浴、例えば錫合金浴中に浸漬され、連続的な接合部が形成され、円柱状の複合体が得られる。
【0019】
上述した2つの好ましい態様から明らかなように、この発明の多芯超伝導ストランドを備えた複合導体は、多芯ストランド自体の面積の4から7倍の面積を有している。結局、その形状および複合体の故に、機械的により強固である。
多芯テープの場合には、図1に示すように、複合導体の厚さに対する幅の比は
著しく小さく、コンパクトな形状で、導体はより強固である。
【0020】
円柱状ワイヤの場合には、図2に示すように、同様に、円柱状支持材を使用した補強によって、コンパクトで堅個な構造が得られる。
従って、巻取って例えば磁気コイルを製造する際に、複合導体の操作が容易である。更に、示した態様において、コイルはより早く製造され、例えば4から6と回転数は少ない。
【0021】
複合導体の使用時、例えば、コイル状で使用される時に、多芯ストランドが損傷すると、電流はハンダ接合部を通って隣接するストランドに迂回し、全体としての電流の流れを維持する。
【0022】
勿論、この発明は、図示し上述した実施態様に限定されるものではなく、発明の精神から逸脱しないで当業者の能力範囲内での改良が可能である。特に、この発明の範囲内で、Bi2212を同一特性を有する他の材料で置き換えることができる。多芯ストランドの断面形状は矩形であっても円形であってもよく、例えば、異なった形状、例えば四角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の第1の態様の断面図である。である。
【図2】図2は、この発明の第2の態様の断面図である。である。
【符号の説明】
【0024】
・ 1A、1B、1C 多芯超伝導ストランド
2 ハンダ接合部
3、3A、3B 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ接合された多芯超伝導ストランド(1、1’)を備えた複合導体であって、前記ストランドは、その全長にわたり連続的なハンダ接合部(2、2’)によって組み合わされ、前記ハンダ接合が低融点合金からなっていることを特徴とする複合導体。
【請求項2】
前記ハンダ接合部(2、2’)は、前記組み合わされたストランド(1、1’)を合金浴の中に通すことによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の複合導体。
【請求項3】
前記合金が錫合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合導体。
【請求項4】
前記ストランド(1、1’)が常伝導銀マトリックス中のBi2212芯線からなっていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の複合導体。
【請求項5】
前記ストランドが平らな超伝導テープ(1Aから1C)からなっていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の複合導体。
【請求項6】
前記ストランド(1Aから1C)が重ね合わされ、そして、平行であることを特徴とする、請求項3に記載の複合導体。
【請求項7】
機械的補強板(3A、3B)を備えていることを特徴とする、請求項5または6に記載の複合導体。
【請求項8】
前記ストランドが円柱状超伝導ワイヤ(1’Aから1’F)であることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の複合導体。
【請求項9】
前記超伝導ワイヤは、円柱状支持材(3’)の周りに配置されていることを特徴とする、請求項1から8の何れか1項に記載の複合導体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−59811(P2006−59811A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−236201(P2005−236201)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】