説明

多軸押出機

【課題】
架橋高分子材料の再生において、処理を比較的高速化しても材料の劣化の生じにくい多軸押出機を提供する。
【解決手段】
架橋高分子材料製の発泡体を混練ゾーンを通過させて、再利用可能な材料に再生するための多軸押出機であって、前記混練ゾーンを少なくとも前後二つの混練ゾーンに分断し、前混練ゾーンと後混練ゾーンとの間に、通過する材料の温度を均一化するための温度平準化用送りゾーンを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋高分子材料の再生に利用する多軸押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の被覆材料に使われている架橋ポリエチレン等を多軸押出機により可塑化して再生する方法が開発されている。このような再生作業に使用される多軸押出機としては、投入される材料を供給する供給ゾーンと、この供給ゾーンを介して導入される材料の温度や圧力を管理しつつ、その材料に機械的な剪断力を加えて可塑化を促進する混練ゾーンと、この混練ゾーンを通過することにより可塑化された材料を再架橋反応を抑制しつつ押出す、押出しゾーンとを具備してなるものが知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3026270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような構成のものであると、架橋高分子材料製の発泡体の廃棄物を再生しようとした場合に、何らかの原因により劣化が発生しやすく、効率よく再生作業を進めることが難しいという不具合があった。
【0004】
本発明者らは、このような不具合の原因を究明すべく、鋭意研究を行った結果、密度の低い発泡体については温度条件の影響が過敏に現れるため、従来の温度制御では十分に劣化を抑えることが難しいことが判明した。
【0005】
すなわち、従来の多軸押出機においては、スクリューを内蔵するバレルに温度センサを取り付け、その温度センサからの検出結果に基づき、バレルの加熱や冷却制御を行って発泡体の温度を管理している。しかしながら、このような管理手法では、バレル内壁近傍の温度管理に留まり、バレル内壁近傍の発泡体温度と、スクリュー近傍の発泡体温度と間に、大きな差異、すなわち内外温度差が生じた場合、スクリュー近傍の発泡体温度が管理目標値を超えて高温化することがあり、それが原因で材料に劣化が生じることがわかった。
【0006】
本発明は、このような究明結果に基づいてなされたもので、処理を比較的高速化しても材料の劣化の生じにくい多軸押出機を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の多軸押出機は、架橋高分子材料製の発泡体を混練ゾーンを通過させて、再利用可能な材料に再生するための多軸押出機であって、前記混練ゾーンを少なくとも前後二つの混練ゾーンに分断し、前混練ゾーンと後混練ゾーンとの間に、混練ゾーンで剪断された発泡体の温度を均一化するための温度平準化用送りゾーンを設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、前混練ゾーンを通過する際に、生じつつあった内外温度差が温度平準化用送りゾーンを通過することにより緩和される。そのため前後混練ゾーンを直接連続させた場合に比べて、処理中の発泡体が予測し得ない温度にまで上昇することを抑制することが可能となる。
【0009】
温度平準化用送りゾーンの好適な態様としては、通過する発泡体に機械的な剪断力を作用させることのない構成をなすスクリューエレメントを配したものが考えられる。
【0010】
かかるスクリューエレメントを使用する場合、同方向に回転する二本の軸にそれぞれ前記スクリューエレメントを装着することにより、十分な作用が得られる。この場合、特には、それぞれの軸の同一位置におけるそれぞれのスクリューエレメントの取付方向が、相互に90度の角度を持って軸に取り付けられるものが好ましい。
【0011】
温度平準化用送りゾーン内の、一方のフライト間の側周面に沿って、他方のフライトが接していることにより生じる空間において、一方のスクリューエレメントの近傍を通過する発泡体の一部と他方のスクリューエレメントの近傍を通過する発泡体の一部が、スクリューが同方向に回転することにより、互いに異なる方向から接することになる。この空間において、剪断された発泡体が接することにより、発泡体が撹拌されながら第二混練ゾーンへと移動していく。このような構造により、スクリュー近傍の発泡体の一部が温度平準化用送りゾーンを通過する際に第二混練ゾーンの方向へと移動するのに伴い、内外温度差を緩和することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上説明したような構成であり、温度平準化用送りゾーンのバレル内の発泡体の内外温度差を無理なく少なくすることができる。そのため、処理速度を低下させることなく、材料の劣化を抑制することができ、架橋高分子材料の再生を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
以下に説明する実施形態の多軸押出機である二軸押出機1は、バレルとバレル内に同方向に回転可能に設けられる二本のスクリュー7とを備える構成で、図1に示すように、材料供給ゾーン2と、この材料供給ゾーン2に連続する前混練ゾーンである第一混練ゾーン3と、この第一混練ゾーン3に連続する温度平準化用送りゾーン4と、この温度平準化用送りゾーン4に連続する第二混練ゾーン5と、この第二混練ゾーン5に連続する押出ゾーン6とを備えるものである。スクリュー7は軸71に、それぞれのゾーンごとの所望のスクリューエレメントを組み合わせて装着することにより構成される。この実施形態のスクリュー7は、軸71の軸方向において、同位置にあるスクリューエレメントを、フライトが90度の角度ずれた状態で、一方のフライト間の側周面に沿って、他方のフライトが接している状態で配置して形成されるものである。
【0015】
材料供給ゾーン2は、ホッパー21から投入された発泡体を、剪断力を加えることなく押出方向に案内するための通常のものである。具体的には、材料供給ゾーン2は、スクリューエレメントの配置を図2に示すように、スクリューセグメントの長さが48mmから96mm程度のスクリューエレメント22及び23を複数連設したスクリュー7の部分を含んで構成される。
【0016】
第一混練ゾーン3は、押出側の端部に圧力保持部を備えたもので、温度や圧力を管理しつつ、その材料に機械的な剪断力を加えて可塑化を促進するように構成されている。具体的には、第一混練ゾーン3は、図2に示すように、長さが56mmのニーディングディスクやロータと呼ばれるスクリューエレメント31を複数連設したスクリュー7の部分を含んで構成されるもので、最終段に圧力保持部を構成するための長さが44mmのスクリューエレメント32を配している。同じスクリューエレメント31及び32の構成を配する二本の軸71は、軸71の同一位置におけるそれぞれのスクリューエレメント31及び32の取付方向が、相互に90度の角度を持って、軸71に取り付けられているものである。なお、この第一混練ゾーン3は、剪断を促進するために、加熱手段、例えばヒータや液体などでバレルを加熱制御し得るように構成されている。
【0017】
これらのスクリューエレメントは一例であって、その形態や長さは再生する材料により適宜変更可能である。
【0018】
温度平準化用送りゾーン4は、押出側の端部に圧力保持部を備え、前記第一混練ゾーン3から送り込まれる材料を押出方向に搬送するように構成されている。具体的には、温度平準化用送りゾーン4は、図2に示すように、長さが72mmの螺旋状のフライトを有し、その材料に機械的な剪断力を作用させることのない構成をなすスクリューエレメント41を複数連設したスクリュー7の部分を含んで構成されるもので、最終段に圧力保持部を構成するための長さが56mmのスクリューエレメント42を配している。
【0019】
同じスクリューエレメント41の構成を配する二本の軸71、71は、図4におけるA-A線に沿った断面図を図5(a)に示すように、軸71、71の同一位置におけるそれぞれのスクリューエレメント41の取付方向が、相互に90度の角度を持って、軸に取り付けられているものであり、一方のフライト41a間の側周面41bに沿って、他方のフライト41cが接していることにより空間が生じる。この空間において、前記の二本の軸71、71が同じ速度で同方向に回転することより、図5(b)に示すように、一方のスクリューエレメント41の近傍を通過する発泡体の一部と他方のスクリューエレメント41の近傍を通過する発泡体の一部が互いに異なる方向から接し、発泡体が撹拌されながら第二混練ゾーン5へと移動していく構造を有する。
【0020】
第二混練ゾーン5は、押出側の端部及び中間部に圧力保持部を備えたもので、温度や圧力を管理しつつ、その材料に機械的な剪断力を加えて可塑化を促進するように構成されている。具体的には、第二混練ゾーン5は、図2に示すように、長さが56mmのニーディングディスクやロータと呼ばれるスクリューエレメント51を複数連設したスクリュー7の部分を含んで構成されるもので、中間又は最終段に圧力保持部を構成するための長さが44mmのスクリューエレメント52を配している。
【0021】
押出ゾーン6は、第二混練ゾーン5を通過した材料を多孔板8に向けて付勢するための通常のものである。具体的には、押出ゾーン6は、図2に示すように、長さが72mm、56mm、44mmの螺旋状のフライトを有するスクリューエレメント61及び62を連設したスクリュー7の部分を含んで構成されるものである。
【0022】
この実施例においては、例えば、前記第一混練ゾーン3に第一の温度センサ3a、温度平準化用送りゾーン4に第二の温度センサ4a、第二混練ゾーン5に第三の温度センサ5a、押出ゾーン6に第四の温度センサ6aを設け、これらのセンサからの信号を用いて、少なくとも第一混練ゾーン3のバレル温度をPID制御するようにしている。
【0023】
以上のような二軸押出機1を用いて、架橋高分子材料製の発泡体を再生した例を以下に示す。
【0024】
実施例1
架橋高分子材料製の発泡体の廃棄物を、以上に説明した二軸押出機1により再生した。その際、第一混練ゾーン3、温度平準化用送りゾーン4、第二混練ゾーン5及び押出ゾーン6において、バレルの設定温度を150℃に設定し、スクリュー回転数は400r.p.m.とした。
【0025】
図6に示すような、本実施例による再生条件で得た30gの再生材料9を、70gのポリエチレン樹脂LF441(日本ポリエチレン株式会社製)、3gの発泡剤AC#3(永和化成工業株式会社製)、2gの発泡助剤ZnO、0.75gの架橋剤DCPと混合し、密閉金型(サイズ23×155×155mm)に充填し、加圧下で発泡条件を162℃、35分加熱し、除圧して発泡試作をおこなった。前記条件により見掛け密度95kg/m3の良好な再生発泡体を得ることができた。
【0026】
実施例2
第一混練ゾーン3、温度平準化用送りゾーン4、第二混練ゾーン5及び押出ゾーン6におけるバレルの設定温度を130℃とし、その他の条件を前記実施例1と全て同じ条件に設定し、二軸押出機1により再生作業を行った。
【0027】
図6に示すような、本実施例による再生条件で得た30gの再生材料9について、前記実施例1と同じ条件に設定した発泡試作を行った。前記条件により見掛け密度95kg/m3の良好な再生発泡体を得ることができた。
【0028】
比較例
本発明の温度平準化用送りゾーン4を設けることなく、かつ前後混練ゾーンを直接連続させた二軸押出機を用いて、バレルの設定温度を、混練ゾーン及び押出ゾーンにおいて、130℃に設定し、スクリュー回転数は400r.p.m.とした。
【0029】
図7に示すような、本比較例による再生条件で得た30gの再生材料10について、前記実施例1と同じ条件に設定した発泡試作を行った。前記条件により良好な再生発泡体を得ることができなかった。
【0030】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。上述の温度平準化用送りゾーンにあっては、バレルを放熱又は冷却するものではないが、放熱用フィン及び送風機や、冷却液又は冷媒用管路などをバレル外壁に設けるものであってもよい。また、冷却液用通路をバレル内壁に近い壁内に形成するものであってもよい。
【0031】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の二軸押出機の全体構成を説明する正面図。
【図2】同実施形態のスクリューの構成を示す平面図。
【図3】同実施形態の第一混練ゾーンにおけるスクリューエレメントの配列を示す平面図。
【図4】同実施形態の温度平準化用送りゾーンにおけるスクリューエレメントの配列を示す平面図。
【図5】図4におけるA-A線に沿った断面図。
【図6】同実施形態において得られた良好な再生発泡体を示す斜視図。
【図7】従来技術において得られた樹脂焼けした再生発泡体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1…多軸押出機
2…材料供給ゾーン
3…第一混練ゾーン
4…温度平準化送りゾーン
5…第二混練ゾーン
6…押出ゾーン
7…スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋高分子材料製の発泡体を混練ゾーンを通過させて、再利用可能な材料に再生するための多軸押出機であって、前記混練ゾーンを少なくとも前後二つの混練ゾーンに分断し、前混練ゾーンと後混練ゾーンとの間に、混練ゾーンで剪断された発泡体の温度を均一化するための温度平準化用送りゾーンを設けたことを特徴とする多軸押出機。
【請求項2】
温度平準化用送りゾーンは、通過する発泡体に機械的な剪断力を作用させることのない構成をなすスクリューエレメントを配したものである請求項1記載の多軸押出機。
【請求項3】
同方向に回転する二本の軸にそれぞれ前記スクリューエレメントを装着して成る請求項2記載の多軸押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−274354(P2009−274354A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128388(P2008−128388)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】