説明

多軸押出機

軸方向長さに沿って少なくとも部分的に重なり合う複数のバレル空洞が形成される単一のバレル(3)と、複数のバレル空洞の各々内に配置される1つの押出スクリュー(5a,5b)と、押出スクリュー(5a,5b)を回転駆動する少なくとも2つのモータ(M1,M2)とを備え、供給側(25a)と排出側(25b)とにそれぞれ設けられる1つの同期装置及び捩り力伝達装置(35,36)を介して協働する両押出スクリュー(5a,5b)を同期して駆動する多軸押出機、特に二軸押出機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載する多軸押出機、特に二軸押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機、特に、二軸押出機は、一般に周知である。特に、後工程で引き続き加工される樹脂材の加工に押出機が使用される。例えば、シート状樹脂の製造にこの種の押出機を使用するとき、押出機から排出されて加工される樹脂材を冷却ロールと後続の延伸装置にかけてシート状樹脂に加工することができる。
【0003】
多軸押出機、特に、二軸押出機では、各押出スクリューは、通常単一のモータ/歯車装置により駆動される。即ち、狭小な公差範囲内で押出スクリューを同期して駆動するのに、単一のモータ/歯車装置は、不可欠である。
【0004】
その場合に、相応の大きさのモータを作成した後に、歯車装置をモータに接続し、歯車装置を介してモータの動力を各押出スクリューに分配し、所望の回転方向を押出スクリューに予め付与するのが通例である。
【0005】
例えば、この種の歯車を介してモータの駆動軸から単一の押出スクリューを駆動する第1の被駆動軸に回転トルクを直接分配し、中間歯車を介して、同期して回転する第2の被駆動軸に回転トルクを分配して、第2の押出スクリューを回転することができる。この場合、例えば、いわゆる同期回転型の二軸押出機を想定できる。
【0006】
別の好適な実施の形態では、歯車を介して複数の押出スクリューを反対方向に回転し、これに応じて押出スクリューの幾何形状を合致させるいわゆる逆回転型の二軸押出機である。
【0007】
基本的に下記特許文献1から類型的な二軸押出機が知られている。特許文献1に開示される押出機の例では、互いに平行でなく小さい角度をもって配置されたテーパ状の一対の押出スクリューを設け、一対の押出スクリューを中央部で噛み合わせ、協働して回転させる。各押出スクリューを構成するロータを回転する個別の駆動モータは、押出スクリューのロータの同一側に配置される。各押出スクリューの押出機軸と各駆動モータとの間に一対の駆動歯車を各押出機軸に固定し、一対の駆動歯車は、互いに噛み合う。各ロータを同期して回転する同期回転装置となる一対の駆動歯車により、両押出スクリューは、互いに衝突せずに、回転方向に確実に噛み合い協働する。
【0008】
特許文献1に示される構造とは異なり、駆動側から徐々に縮径して細くなるテーパ状に螺旋状押出スクリューを配置して、回転するように両押出機軸を互いに平行に配置してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許公開第0775569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに対して、本発明の課題は、より少ない手間で複数個、即ち少なくとも2つの押出スクリューを駆動できる通常多軸押出機、特に二軸押出機を提供することにある。この二軸押出機では、運転トルクが異なる場合でも極めて狭小な公差範囲内で押出スクリューを同期回転できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、特許請求の範囲請求項1に記載する特徴により前記課題を解決する。本発明の有利な実施の形態を従属請求項に記載する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、2つの押出スクリュー軸間に駆動連結される一方の同期装置及び捩り力伝達装置を供給側に設け、他方の同期装置及び捩り力伝達装置を排出側に設ける。逆回転型の二軸押出機では、同期装置及び捩り力伝達装置を互いに噛み合う2つの歯車により構成することが好ましく、同方向回転型の二軸押出機では、同期装置及び捩り力伝達装置を互いに噛み合う3つの歯車により構成することが好ましく、一方の歯車は、一方の押出機軸に駆動連結され、他方の歯車は、他方の押出機軸に駆動連結される。
【0013】
従って、複数の歯車を介して間断なく動力が伝達されて、所望の同期駆動が達成される。
【0014】
また、押出スクリューの数に相当する数のモータが設けられ、各押出スクリューに少なくとも1つのモータが駆動連結される。
【0015】
二軸押出機では、例えば、二軸押出機の供給側の第1の押出スクリューに直接駆動装置の第1のモータを駆動連結し、二軸押出機の排出側の第2の押出スクリューに直接駆動装置の第2のモータを駆動連結する形態が好ましい。
【0016】
直接駆動装置、同期装置及び捩り力伝達装置を直接駆動装置に内蔵される軸受でそれぞれ支承することが好ましい。
【0017】
最後に、溶融材に対して軸受構造体を密封又は封止するガスケットを、高圧側となる排出側で相応する高圧に耐えるように設計しなければならず、各押出機軸に沿って供給側より長い軸方向距離にわたりガスケットを延伸させることが好ましい。
【0018】
特に、公知のカスケード(階段状)ガスケットにガスケットを作成して、特に押出側又は排出側で、例えば通常運転時に最大6000kPa(60bar)程度、高負荷運転時に最大15000kPa(150bar)程度であり得る圧力を達成することができる。因みに、高負荷運転時、最大300℃以上の熱負荷が生じることがある。
【0019】
また、例えば、スクリュー押出機の供給側又は排出側の同一側に両モータを配置することも基本的にできよう。この場合でも、供給側付近及び排出側付近に配置される同期装置及び捩り力伝達装置の両方を歯車形態とすることが好ましい。
【0020】
また、最後に、例えば、二軸押出機の同一押出機軸に駆動連結される一方のモータを供給側に配置すると共に、他方のモータを排出側に配置して、直接駆動装置で二軸を互いに駆動連結する好適な構造も可能であろう。この場合に、供給側と排出側とにそれぞれ配置される同期装置及び捩り力伝達装置を構成する2対の歯車の両方を介して、第2の押出スクリューは、第1の押出スクリューに駆動連結され駆動される。
【0021】
本発明の実施の形態を図面について以下詳細に説明する。図面は、下記事項を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】2つの押出スクリューを互いに平行に配置した二軸押出機型の本発明による多軸押出機の第1の実施の形態を示す概略平面図
【図1a】供給側と排出側とで共に駆動される押出スクリューの対応する軸に固定されかつ互いに噛み合う歯車の略示断面図
【図2】代替可能な押込口と突出口とを設けた図1に示す多軸押出機を角度90°回転して矢印II方向から見た断面図
【図3】スクリュー押出機の同一側に両モータを取り付けた図1の変形実施の形態を示す断面図
【図4】各押出スクリューの対向する両端面側に各モータを設け、導入側と排出側とで同期装置及び/又は捩り力伝達装置を介して第2の押出スクリューを第1の押出スクリューに駆動連結する更なる変形実施の形態を示す断面図
【図5】逆回転型でなく、少なくとも1つ又は例えば補助的に設けられる2つのガイドピニオンを使用して、2つの押出スクリューを共動して駆動する同方向回転型の二軸押出機の変形実施の形態を示す断面図
【図6】単一のガイドピニオンを使用して2つの押出スクリュー間を駆動連結する歯車の断面図
【図7】2つのガイドピニオンを使用する図6に対応する断面図
【図8】同方向回転型押出機に使用する単一の内歯歯車の断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2は、本発明の多軸押出機の第1の実施の形態を示す略示断面図である。
【0024】
図1の実施の形態の変形では、図示の実施の形態の二軸押出機1’に倣って作られる多軸押出機1が設けられる。
【0025】
図示の実施の形態では、多軸押出機1は、バレル3と、バレル3内に長さ方向にかつ互いに平行なスクリュー軸5’に沿って配置される第1の押出スクリュー5aと第2の押出スクリュー5bとを有する2つの押出スクリュー5とを備える。
【0026】
一対の押出スクリュー5は、いわゆる接触領域7で互いに噛み合う。即ち、押出スクリューに通常形成されるねじ山状に走るスクリューランド部(拡径部)(詳細には図示しない)が接触領域7に形成される。
【0027】
換言すれば、押出スクリュー5は、公知の形状を形成するスクリュー芯部と、周方向に一周してスクリュー芯部から半径方向に突出するスクリューランド部とを備える。従って、一方の押出スクリューの隣り合う2つのスクリューランド部の2つの螺旋部間に形成される間隙内に、他方の押出スクリューの単一のスクリューランド部が順次嵌合され又は接触せずに噛み合う。
【0028】
従って、図示の実施の形態では、スクリュー本体(「スクリュー芯部」とも呼ぶことがある)は円筒形に形成される。円筒形とは異なり、スクリュー軸5’を互いに平行に配置せずに、通常僅か数度の鋭角でスクリュー軸5’を交差させて、少なくとも頂角の小さい円錐形に押出スクリュー又はスクリュー本体を形成してもよい。その場合に、押出スクリュー、即ち、スクリュー本体又はスクリュー芯部は、小さい頂角の円錐形に形成されるので、図示の実施の形態では、図示しないが、例えば、20°未満(特に15°未満、又は10°未満)の鋭角に対応する中心軸又は回転軸(スクリュー軸5’)を配置できる。これに対し、図1に示す実施の形態では、2つのスクリュー軸(中心軸)5’は、互いに平行である。
【0029】
例えば、ランナー11からバレル内孔3’に加工すべき粒材(ペレット)を供給し、内孔3’内で押出スクリューにより粒材を調質し、協働する押出スクリュー5の反対方向回転運動により、押出スクリュー5に沿って内孔3’内で搬送され、排出側の排出通路111から溶融(液状)材料が排出される。
【0030】
換言すれば、単一のバレル3内に設けた少なくとも2つの空洞形式の内孔3’を有する二軸押出機であることが図1から理解できよう。2つの空洞は、バレル3の軸方向長さに少なくとも部分的に沿って互いに重なり合い、接触領域7を形成する。図示の実施の形態では、2個の押出スクリュー5、即ち各押出スクリュー5a,5bが2つの空洞内に配置される。
【0031】
図1及び図2に示す実施の形態では、二軸押出機の供給側25aの第1の押出スクリュー5aは、対応するモータM1により駆動されるが、排出側25bの押出スクリュー5bは、モータM2により駆動される。図示の実施の形態では、モータM1及びM2は、例えば電子制御装置(詳細に図示しない)により起動制御できる電動機を備える。
【0032】
図1に示す実施の形態では、両押出スクリュー5a,5bは、バレル3の空洞内でかつ密封状態で回転可能に支承される単一の駆動軸9をそれぞれ備える。同時に、駆動軸9は、モータM1及びM2により駆動される駆動軸19に接続される。換言すれば、モータM1及びM2は、駆動軸19及び駆動軸9並びに駆動軸19及び駆動軸9を介して押出スクリュー5a,5bにそれぞれ直接駆動連結され、駆動軸19は、既に形成された直接駆動装置の回転子になる。図1及び図2に示す実施の形態並びに図3及び図4に示す後続の実施の形態では、モータM1及びM2は、両押出スクリュー5a及び5bを反対方向に回転駆動する。その意味では、実施の形態は、「逆回転型押出機」を示す。
【0033】
しかしながら、各モータM1及びM2側では駆動軸9及び駆動軸19を介して押出スクリュー5a,5bを駆動する(モータから動力を受ける)が、押出スクリュー5a,5bを駆動しない反対側では、押出スクリュー5a,5bから支持軸部又は支持端部119を延伸する点も図面から理解でき、図示の構造では、支持端部119により、押出スクリュー5a,5bを支承する一方、他方では、回転を同期化し捩り力を伝達できることも理解できよう。この点は、後述する。
【0034】
押出機のバレル3に形成されるバレル内孔3’に供給される溶融材に対し軸受構造体を密封して、保護する相応のガスケットの必要性を図面から理解できよう。この目的で、供給側25aでは、バレル内孔3’に隣接して、駆動軸9、即ち駆動軸19に直接接することが好ましい供給側ガスケット29により、駆動軸9及び駆動軸19は、バレル内孔3’に対し密封される。供給側25aでは、第2の押出スクリュー5bに隣接して軸支される被駆動軸端部119も同様に、バレル内孔3’内の溶融材に対して、バレル内孔3’に隣接して軸端部119に直接接触することが好ましい同様の供給側ガスケット29を介して密封される。
【0035】
所与の高圧と、例えば300℃までの熱負荷とに耐えるように設計される相応の軸ガスケット39が排出側又は高圧側に設けられ、本実施の形態では、通常運転時に、最大圧力6000kPa(60bar)に達し、高負荷運転時には、例えば最大15000kPa(150bar)に達することがある。従って、第1の押出スクリュー5aの被駆動軸端部119を密閉する排出側25bのガスケット39は、モータM2の駆動軸19又は駆動軸9に沿い軸方向に延長された長さを有する。この場合に、例えば、公知のカスケード(階段状)ガスケットも使用できる。
【0036】
バレル内孔3’に隣接してかつ各軸9,19,119に直接接してガスケット30を配置することが好ましい。
【0037】
軸を支持する軸受、同期装置及び捩り力伝達装置を以下更に説明する。
【0038】
図1、図1a及び図2に示すように、例えば、供給側25aの第1のモータM1により駆動される駆動軸9又は駆動軸19には、駆動軸9又は駆動軸19に相対回転不能に固定される歯車39.1の形態をなす第1の捩り力伝達装置35が設けられ、同様に、第2の押出スクリューの軸端部119に(モータM2に対向して)相対回転不能に固定される別の歯車39.2の形態をなす別の第2の捩り力伝達装置36が設けられ、第1の捩り力伝達装置35は、第2の捩り力伝達装置36に協働して、互いに噛み合い、これにより、両押出スクリュー5a及び5bは、好適に同期して回転し、その結果、同一回転数、即ち同一回転速度で、反対方向に両押出スクリュー5a及び5bを回転駆動することができる。
【0039】
供給側25aと同一の捩り力伝達装置が排出側25bにも設けられる。即ち、排出側25bの第2のモータM2により駆動される第2の押出スクリュー5bの駆動軸9又は駆動軸19には、駆動軸9又は駆動軸19に相対回転不能に固定されて一体に回転する歯車39.1の形態をなす駆動側捩り力伝達装置35が設けられ、同様に、第1の押出スクリュー5aの軸端部119に相対回転不能に固定される別の歯車39.2の形態をなす別の第2の捩り力伝達装置36が被駆動端に設けられ、第1の捩り力伝達装置35は、第2の捩り力伝達装置36と協働して、互いに噛み合うので、両押出スクリュー5a及び5bは、好適に同期して回転し、同期装置及び捩り力伝達装置形態の動力伝達装置を実現できる。排出側25bでも、図1に示す噛み合う両歯車39.1及び39.2が同期装置及び捩り力伝達装置35,36に使用される。
【0040】
駆動側の捩り力伝達装置35と伝動側の捩り力伝達装置36(同期装置及び捩り力伝達装置ともいう)の両側にそれぞれ隣接して、押出スクリュー5a,5bの内側軸受装置45(バレル内孔3’に近い方)と外側軸受装置46(バレル内孔3’から遠い方)とが駆動軸9、駆動軸19及び被駆動軸端部119に設けられる。
【0041】
図1に示す通り、例えば、押出スクリュー5a,5bに向かう半径方向に(又は主に半径方向に)バレル内孔3’に連絡しかつ両押出スクリュー5a,5bの中心軸5’を少なくともほぼ含む平面内に調質すべきペレットを供給するランナー11が供給側25aに形成される。この形態に対応して、押出スクリュー5a,5bに向かう半径方向に(又は主に半径方向に)ランナー11を形成し、図示の実施の形態では、ランナー11に対向してスクリュー押出機の長手側の反対側ランナー111を同様に配置することが好ましい。
【0042】
代替となる図1に破線で示す圧入通路11’と押出通路111’を代替実施の形態として、図2に明示する。
【0043】
本発明の実施の形態では、圧入通路11’及び押出通路111’は、いずれもバレル内孔3’の長さ方向に対し垂直(直角)又はほぼ垂直にバレル内孔3’に接続され、供給側25aの圧入通路11’は、上流から下流のバレル内孔3’に接続され、排出側25bの押出通路111も、バレル内孔3’内で調質した押出成形材をバレル内孔3’外に押し出す。
【0044】
図3に示す実施の形態では、図1の構造とは異なり、スクリュー押出機の同一側に両モータM1及びM2を配置してもよく、例えば、図2の実施の形態のように排出側25bに配置してもよい。同様に、供給側25aに設けた両モータM1及びM2により両押出スクリュー5a,5bを駆動してもよい。図1及び図2の実施の形態では、更に別の構造も使用することができる。両押出スクリューの軸間距離より大きい直径のモータハウジングを取り付けるとき、駆動軸9、駆動軸19を軸方向に延長して、延長した軸方向長さ分だけ他方のモータに対して一方のモータをずれて配置し、押出機バレルに近い方のモータの脇を通り、駆動軸9又は駆動軸19を延伸させる構造形態も選択できよう。
【0045】
図4に示す実施の形態では、更に概略的に図示する通り、供給側25aと排出側25bの両モータM1及びM2を単一の押出機軸、例えば押出機軸5aに駆動接続して、供給側25aと排出側25bにそれぞれ設けられる同期装置及び/又は捩り力伝達装置35,36を介して第2の押出機軸5bを第1の押出機軸5aに駆動連結し、両押出スクリュー5a,5bを同期して駆動してもよい。
【0046】
いずれの場合も、例えば、第1の押出スクリュー5a及び駆動軸9,19に相対回転不能に第1の歯車39.1を固定し、第2の押出スクリュー5b及び軸端部119に第2の歯車39.2を相対回転不能に固定して、第1の歯車39.1と第2の歯車39.2とを噛み合わせて、第1の押出スクリュー5aと第2の押出スクリュー5bとを同期して同一回転数で回転することができる。
【0047】
歯車39.1と39.2との相互歯車連結により、第1の押出スクリュー5aと第2の押出スクリュー5bとの間に発生する捩り力を補償しかつ強制的にかつ相対的に整合させて、スクリューランド部の相互衝突を防止できる。
【0048】
前記実施の形態では、軸受45は、駆動軸9、駆動軸19及び被駆動軸端部119を支承し、端面端領域でガスケット29,39により密封されるバレル内孔3’がバレル3の中央部に形成される。ガスケット29,39に続く軸方向延長線上の供給側25aと排出側25bにそれぞれカバー又はバレル拡張部103が設けられ、複数の収容空間がバレル拡張部103に形成され、同期装置及び捩り力伝達装置35,36、外側軸受46を越える被駆動軸端部119の端部又はモータ側に直近の位置で軸9及び軸19を支承する軸受46が対応する収容空間内に配置される。同期装置及び捩り力伝達装置35,36により内側でバレル内孔3’付近に内側軸受45を配置し、バレル3の端面側33に直に隣接して(カバー状のバレル拡張部103を取外す時)内側軸受45を配置することが好ましい。
【0049】
基本的構造から比較できる図5に示す二軸押出機の一実施例を以下説明する。図1とは異なり、図5は、逆回転型の押出機(両押出スクリューを逆方向に回転駆動する)ではなく、同一速度でかつ同一方向に両押出スクリュー5aと5bを回転駆動する同期回転型の二軸押出機を示す。
【0050】
図5に示す第3の歯車39.3を使用して、同一方向の回転を実現でき、図1〜図2の実施の形態とは異なり、互いに噛み合わずに優先的に使用される歯車39.1及び39.2の形の同期装置及び捩り力伝達装置35,36は、少なくとも僅かな間隔をあけて配置され、中間歯車又はガイドピニオン39.3を介して一方の歯車39.1と他方の歯車39.2とが駆動連結され、一方の歯車39.1は、第1のスクリュー軸5’に相対回転不能に固定され、他方の歯車39.2は、第2のスクリュー軸5’に相対回転不能に固定される。供給側と排出側の同期装置及び捩り力伝達装置35,36の構造を図6の断面図に示す。
【0051】
図5の実施の形態では、図6に示す実施の形態とは異なり、例えば、別の第2のガイドスプロケット、ガイドピニオン又は中間歯車39.3’を追加して使用すれば、特に対称形の同期動力伝達と捩り力伝達を実現できる。この構造では、図7に示すように、両歯車39.1と39.2とに噛み合う第1のピニオン39.3に対向して、同様に両歯車39.1と39.2に噛み合う第2のピニオン39.3’が設けられる。歯車39.1と39.2とは互いに噛み合わない。
【0052】
図7に示す実施の形態とは異なり又はその代わりに、例えば、互いに対向する遠位部位(互いに径方向に更に離れる部位)で外歯歯車39.1及び39.2と噛み合う内歯歯車39.3’’を使用して、同様に、同期動力伝達と捩り力伝達を行う対称形の最適の動力伝達装置を実現することが好ましい。この場合に、供給側と排出側に2個の内歯歯車を設けることが好適であろう。しかしながら、例えば、供給側又は排出側に単一の内歯歯車を設け、排出側又は供給側の反対側に設けた図6又は図7に示す単一又は2つのガイドピニオンを両被駆動歯車39.1と39.2とに噛み合わせて、両被駆動歯車39.1と39.2を同期回転(同一方向に回転)させる混合型システムも可能であろう。
【0053】
図6及び図7について説明した同期回転型押出機の構造を図3及び図4に示す実施の形態でも同様に採用できよう。
【0054】
本発明の前記実施の形態から明らかな通り、2つのモータM1とM2は、押出スクリュー5a,5bに駆動連結される。図3に示す実施の形態の通りモータM1とM2を並置する限り、対称形のバレル構造では、各モータM1とM2の最大直径を押出スクリューの軸間隔に一致させることができる。そうしなければ、軸方向間隔を変えて互いに横方向にずらす状態でモータM1とM2とを配置しなければならない。この場合、第1のモータから軸方向に第2のモータをずらせて配置し、第1のモータハウジングからの横に配置される駆動軸は、第2のモータまで長く延伸する。長い駆動軸が比較的小さい外径を持つ限り、隣接する2つの押出スクリューの軸間隔より大きい直径でモータハウジングを基本的に形成できる。
【0055】
同様に、例えば二軸押出機の場合、両モータは、各駆動軸を介して別個の押出スクリューを駆動できよう。これにより、各モータの直径は、押出スクリューの軸間隔より大きいこともあり得る。単純化された実施の形態では、駆動軸を介して第1のモータのみを一方の押出スクリューに駆動連結させるのに対し、第2のモータを押出スクリューに直結駆動することもできよう。
【0056】
二軸押出機について本発明を前記の通り説明した。しかしながら、3つ以上の押出スクリューを含む多軸押出機にも本発明を適用できる。この場合、前記実施の形態を任意に拡張し変更して、実用化することができる。従って、少なくとも単一の更なる押出スクリューの他に、少なくとも2つの押出スクリューを単一構造中に包含する図1〜図4について説明した多軸押出機も実施できよう。
【0057】
前記実施の形態は、同期装置及び捩り力伝達装置35,36を構成する互いに直接噛み合う歯車39.1及び39.2(押出スクリューを反対方向に駆動する)か、歯車39.1,39.2及び39.3又は39.3’又は39.3’’(押出スクリューを同一方向に駆動する)かの何れかを使用する場合を対象とする。しかしながら、前記実施の形態とは異なり、例えばチェーン、ベルト又はその他の好適な同期継手、駆動継手等、相応の同期装置及び捩り力伝達装置35,36となる他のあらゆる代替手段も使用できる。
【符号の説明】
【0058】
(1)・・多軸押出機、 (3)・・バレル、 (3')・・バレル内孔、 (5)・・押出スクリュー、 (5')・・スクリュー軸、 (5a)・・第1の押出スクリュー、 (5b)・・第2の押出スクリュー、 (7)・・接触領域、 (9,19)・・駆動軸、 (11)・・ランナー又は圧入通路、 (25a)・・供給側、 (25b)・・排出側、 (29)・・ガスケット、 (33)・・端面側、 (35)・・同期装置、駆動側又は第1の捩り力伝達装置、 (36)・・同期装置、伝動側又は第2の捩り力伝達装置、 (39)・・軸ガスケット、 (39.1,39.2)・・歯車、 (39.3)・・歯車又はガイドピニオン、 (39.3')・・中間歯車、 (45,46)・・軸受、 (103)・・バレル拡張部、 (103)・・カバー、 (111)・・押出通路、 (119)・・支持端部又は軸端部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向長さに沿って少なくとも部分的に重なり合う少なくとも複数のバレル空洞が形成される単一のバレル(3)と、
複数のバレル空洞の各々内に配置される押出スクリュー(5a,5b)と、
押出スクリュー(5a,5b)を回転駆動する少なくとも2つのモータ(M1,M2)とを備える多軸押出機、特に二軸押出機において、
供給側(25a)と排出側(25b)とにそれぞれ設けられる1つの同期装置及び捩り力伝達装置(35,36)を介して協働する両押出スクリュー(5a,5b)を同期して駆動することを特徴とする多軸押出機。
【請求項2】
2つのモータ(M1,M2)の一方のモータ(M1)は、供給側(25a)又は排出側(25b)で押出スクリュー(5a,5b)の少なくとも一方の押出スクリュー(5a)を駆動し、
2つのモータ(M1,M2)の他方のモータ(M2)は、対向する排出側(25b)又は供給側(25a)で押出スクリュー(5a,5b)の少なくとも他方の押出スクリュー(5b)を駆動する請求項1に記載の多軸押出機。
【請求項3】
2つのモータ(M1,M2)の少なくとも一方のモータ(M1)は、供給側(25a)で押出スクリュー(5a,5b)の少なくとも一方の押出スクリュー(5a)を駆動し、
2つのモータ(M1,M2)の少なくとも他方のモータ(M2)は、排出側(25b)で同一の押出スクリュー(5a)を駆動し、
押出スクリュー(5a,5b)の少なくとも他方の第2の押出スクリュー(5b)は、供給側(25a)及び排出側(25b)にそれぞれ設けられる同期装置及び/又は捩り力伝達装置を介して一方の押出スクリュー(5a)に駆動連結される請求項1に記載の多軸押出機。
【請求項4】
両押出スクリュー(5a,5b)に対して少なくとも2つのモータ(M1,M2)を両方とも供給側(25a)又は排出側(25b)に配置し、
少なくとも1つの第1の押出スクリュー(5a)に少なくとも1つのモータ(M1)を駆動連結し、
少なくとも1つの第2の押出スクリュー(5b)に少なくとも1つの第2のモータ(M2)を駆動連結した請求項1に記載の多軸押出機。
【請求項5】
別個のモータ(M;M1,M2)を対応する押出スクリュー(5;5a,5b)に固定しかつ/又は無歯車結合し、
好ましくは、各モータ(M1,M2)により駆動されるモータ軸(9)を、軸方向延長線上で付属の押出スクリュー(5a,5b)の駆動軸(19)に駆動連結し又は結合して、直接駆動装置の形で連結する請求項1〜4の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項6】
ガスケット(29,39)を介してバレル内孔(3’)に対して密封される軸受構造体により駆動側で支持される駆動軸(9)又は駆動軸(9,19)を押出スクリュー(5a,5b)に設けた請求項1〜5の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項7】
ガスケット(29,39)を介してバレル内孔(3’)に対して密封される軸受構造体により被駆動側で支持される駆動端部(119)を押出スクリュー(5a,5b)に設けた請求項1〜5の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項8】
ガスケット(29,39)により排出側(25b)での圧力上昇及び/又は熱負荷増大が可能となる請求項6又は7に記載の多軸押出機。
【請求項9】
排出側(25b)のカスケード(階段状)ガスケット及び/又は冷却空隙ガスケットとしてガスケット(29,39)を配置する請求項8に記載の多軸押出機。
【請求項10】
被駆動軸端部(119)と同様に、駆動軸又は駆動軸(9,19)に隣接させて、好ましくはバレル内孔(3’)に直接面してガスケット(29,39)を配置する請求項1〜9の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項11】
駆動軸(9)又は駆動軸(19)を配置する領域内に設けられる同期装置及び捩り力伝達装置(35)を介して押出スクリュー(5a,5b)を対応する各モータ(M1,M2)に駆動連結する請求項1〜10の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項12】
対応する押出スクリュー(5a,5b)の被駆動側でかつ押出機バレル(3)の端面側で軸方向に突出する軸端部(119)の領域内に同期装置及び捩り力伝達装置(36)を設け、軸端部(119)により押出スクリュー(5a,5b)を支承する請求項1〜11の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項13】
押出機バレル(3)の端面側に取り付けられる拡張部(103)内に同期装置及び捩り力伝達装置(35,36)を配置する請求項11又は12に記載の多軸押出機。
【請求項14】
バレル拡張部(103)内の領域に設けられる軸受(46)により駆動軸(9)又は駆動軸(19)並びに軸端部(119)の最外部を支持し、
同期装置及び捩り力伝達装置(35,36)に対向してかつバレル内孔(3’)により接近して別の軸受(45)を押出機バレル(3)の端面側の捩じ力伝達領域に収納する請求項13に記載の多軸押出機。
【請求項15】
駆動されるベルト、チェーン等の動力伝達形態の同期装置及び/又は捩り力伝達装置を介して2つの押出スクリュー(5a,5b)を駆動連結する請求項1〜14の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項16】
モータ(M1,M2)により逆方向に回転駆動される少なくとも2つの逆回転型押出スクリュー(5a,5b)を多軸押出機に設ける請求項1〜15の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項17】
同期装置及び/又は捩り力伝達装置は、歯車(39.1,39.2)により構成され、
供給側(25a)及び排出側(25b)の各側で、モータ側の駆動軸(19)と、駆動側と反対側の軸端部(119)とに単一の歯車(39.1)を相対回転不能に固定し、
歯車(39.1)は、押出スクリューに相対回転不能に同一高さでかつ隣接して固定される歯車(39.2)に噛み合う請求項1〜16の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項18】
モータ(M1,M2)により同一方向に回転駆動される少なくとも2つの同期回転型押出スクリュー(5a,5b)を多軸押出機に設ける請求項1〜15の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項19】
同期装置及び/又は捩り力伝達装置は、歯車(39.1,39.2)により構成され、
供給側(25a)及び/又は排出側(25b)の各側で、駆動軸(19)及び/又は軸端部(119)に単一の歯車(39.1)を相対回転不能に固定し、
歯車(39.1)は、押出スクリューに相対回転不能に同一高さでかつ隣接して固定される歯車(39.2)に噛み合い、又は
2つの歯車(39.1,39.2)間に接続されるガイドピニオン(39.3)を介して、
2つの歯車(39.1,39.2)に噛み合う対向する2つガイドピニオン(39.3,39.3’)を介して若しくは
2つの歯車(39.1,39.2)に噛み合う内歯歯車(39.3’’)を介して、歯車(39.1)は、歯車(39.2)に噛み合う請求項1〜15又は18の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項20】
互いに隣接して協働する押出スクリュー(5;5a,5b)を駆動する2つの駆動装置(M;M1,M2)を、対応する駆動軸(9,19)の軸方向に沿ってずれて配置して、好ましくは、対応する2つの駆動軸(9,19)を垂直方向から見て重複させずに2つの駆動装置(M;M1,M2)を配置する少なくとも請求項4又は請求項1〜19の何れか1項に記載の多軸押出機。
【請求項21】
駆動軸(K1,K2)を介して互いに駆動連結される押出スクリュー(5;5a,5b)を少なくとも1つの駆動装置により駆動する請求項1〜20の何れか1項に記載の多軸押出機。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−524277(P2011−524277A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513901(P2011−513901)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003779
【国際公開番号】WO2009/152936
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331593)ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (2)
【Fターム(参考)】